日本外科系連合学会誌
Online ISSN : 1882-9112
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ISSN-L : 0385-7883
22 巻, 2 号
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  • 里見 佳昭, 福田 百邦
    1997 年 22 巻 2 号 p. 125-140
    発行日: 1997/04/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    外科系医師を対象に腎癌の診断と治療に関する基本的な考え方を述べた。1) 腎癌の生物学的特徴を知ることは治療の原点であり, (1) 術後10~20年に亘り再発し死亡する, (2) rapid growigとslow growing症例である, (3) 免疫機構の関与を受けやすい, (4) 造血臓器の性質をもつ, (5) 性ホルモン特にprogesteroneと関係がある, (6) 周囲への浸潤の少ない癌である, (7) 初期にはリンパ行性転移が少ないなどの特徴を理解する必要がある。2) 手術に際しては, (1) 転移のある腎癌の腎摘除術, (2) 腎部分切除術, (3) リンパ節郭清術, (4) 副腎摘除術の意義などについてはまだcontroversialである現状をのべた。3) 転移巣の治療に際しては原則としては, slow growing症例は長期生存が可能であり積極的に手術する, rapid growing症例では多くは1~2年で死亡するので保存的治療をする。その分類法も示した。4) 化学療法は有効なものはないに等しい。5cmを越える腎癌は術後半数以上が再発するので, 術後補助法の必要性を痛感するが現状では良い方法がない。腫瘍血管新生阻害剤でもあるmedroxyprogesterone acetateの再検討が望まれる。
  • 小原 勝敏
    1997 年 22 巻 2 号 p. 141-147
    発行日: 1997/04/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    食道・胃静脈瘤の治療法には各種内視鏡治療, IVRによる各種治療法, 外科治療と多くの選択肢があり, 適切な治療法を選択できる時代を迎えた。しかし, 静脈瘤治療は基礎疾患の治療ではないので, 安全かつ効果的治療でなければならない。硬化療法の導入は本邦における内視鏡治療の幕開けとなった。硬化療法は短期間にめざましい進歩を遂げ, 安全かつ確実な治療法として完成され, 静脈瘤治療の第1選択となった。一方, 硬化療法禁忌例に対する食道静脈瘤結紮術や孤立性胃静脈瘤治療における組織接着剤 (cyanoacrylate系剤) の導入は, 静脈瘤に対する内視鏡治療の適応をさらに拡大させた。今や, 静脈瘤治療は安全でかつ出血再発のない治療法であること, さらに患者のQOLを考慮した治療法であることが要求される。そのためには, 1つの治療法に固執することなく, 患者の病態に応じた合理的な治療法を選択, あるいは併用して確実な治療を行うことが大切である。
  • 土屋 敦雄, 野水 整, 阿部 力哉
    1997 年 22 巻 2 号 p. 148-150
    発行日: 1997/04/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    家族性乳癌の臨床的特徴は若年発症と両側乳癌を含む重複癌の頻度が高いことである。そこで家族性乳癌を第1度近親者に3名以上の乳癌患者がいる場合としてアンケート調査を実施した。全国46施設より上記条件に当てはまる 50家系170人を家族性乳癌とし, 教室における家族歴を有しない乳癌症例を対照群として乳癌発生部位, 二次癌の発生頻度について検討した。乳癌患者の発端者および家族性乳癌家系の全乳癌患者における両側乳癌の頻度は対照群に比較し, 有意に高かった。また他臓器二次癌の発生頻度も対照群に較べ有意に高かった。家族性乳癌は家族歴の無い乳癌に比較し, 対側乳癌を含めた二次癌の発生頻度が高く術後のfollow-upに際し十分に留意すべきである。
  • 森崎 善久, 吉住 豊, 小池 啓司, 愛甲 聡, 杉浦 芳章, 島 伸吾, 田中 勧
    1997 年 22 巻 2 号 p. 151-154
    発行日: 1997/04/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    過去17年間に経験した全胸部食道癌切除例284例のうち, 組織学的口側断端陽性例14例 (4.9%) に関して臨床病理学的特徴を明らかにし, 口側断端因子の予後におよぼす意義を検討した。組織学的口側断端陽性例は, 主占拠部位別にはIu症例が29例中5例 (17%) と最も多かったが, うち3例はCeにおよぶ症例であった。Ceにおよばない11症例中10例は断端のリンパ管内に腫瘍を認める症例 (リンパ管型) であった。また, リンパ管型陽性例10例中6例はn3 (+) またはn4 (+) の高度進行例であった。Im以下の9例中5例は主病巣の口側に壁内転移巣を認めた。術後は7例に放射線療法 (2例には化学療法併用), 2例に化学療法を施行したが, 5例がリンパ節転移, 他の4例が血行性転移で死亡した。しかも, 1年以上生存が3例のみで, 予後は不良であった。一方, 断端再発の認められた症例はなかった。よって, 組織学的口側断端陽性の胸部食道癌症例に対しての術後補助療法は, 化学療法を優先すべきと考えられた。
  • とくに頸胸境界部食道癌について
    弓場 健義, 中尾 量保, 仲原 正明, 野崎 俊一
    1997 年 22 巻 2 号 p. 155-158
    発行日: 1997/04/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    頸部食道癌とくに頸胸境界部食道癌では占拠部位あるいは深達度により適切な術式を選択することが重要となる。頸部および頸胸境界部食道癌11例を対象に術式の選択および問題点について検討した。Ce 1例, CeIu5例に対して食道部分切除, 頸部郭清兼遊離空腸移植を行い, CeIu例に対し上縦隔の郭清のために胸骨縦切開を行った。IuCe 2例およびCe+Im 1例に右開胸による3領域郭清を伴う食道亜全摘兼胃管再建を行った。IuCeの低肺機能患者2例において胸骨縦切開による非開胸食道亜全摘兼胃管再建を施行することにより, 肺合併症を避けることができ, 上縦隔の郭清も可能であった。開胸例3例中2例に術後肺炎を認めたが, 非開胸例8例には術後肺合併症は認められなかった。術後反回神経麻痺をきたしたものが8例(一過性3例)あった。
  • 梅本 敬夫, 佐治 重豊, 杉山 保幸
    1997 年 22 巻 2 号 p. 159-162
    発行日: 1997/04/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    1991年より1996年7月までに咽喉癌, 下咽頭頸部食道癌に対し, 耳鼻咽喉科の依頼により頸部食道再建術17例 (遊離空腸移植 : 10例, 胃管つり上げ : 7例) を共同で施行した。遊離空腸移植例は, 平均年齢61歳, 男女比8 : 2, 下咽頭癌7例, 下咽頭癌再発例2例, 喉頭癌1例で, 組織型は全例が扁平上皮癌で, 低分化型;1例, 中分化型;8例, 高分化型;1例であった。胃管つり上げ例は, 平均年齢60歳, 男女比3 : 4で, 胸部食道癌を合併した下咽頭癌, 舌根部咽喉癌, 喉頭癌が各1例, 下咽頭頸部食道癌が4例であった。組織型は全例が扁平上皮癌で, 中分化型;6例, 高分化型;1例であった。術後合併症の比較では, 遊離空腸移植例では移植腸管壊死が3例にみられ, 胃管つりあげ例では, 縫合不全, 呼吸器合併症, 他臓器不全などの重得な合併症がみられた。手術時間, ICU管理日数, 経口摂取開始日には差はなかった。共同手術では, 患者状態の把握, 術式, 術後管理において意思疎通の重要性が考えられた。
  • 富田 凉一, 滝沢 秀博, 阿部 義蔵, 丹正 勝久
    1997 年 22 巻 2 号 p. 163-168
    発行日: 1997/04/25
    公開日: 2010/02/09
    ジャーナル フリー
    早期胃癌幽門側胃亜全摘術 (Billroth I法, D2リンパ節郭清, 根治度A) 後24症例を対象に, 直接問診法 (全身症状陽性例の有無について) を用い, 非ダンパー (18例) とダンパー (6例) の2群に分類した。そして, それらの十二指腸空腹期強収縮帯と血中モチリンとソマトスタチン値の変動について検討し, 以下の結果を得た。 (1) 空腹期強収縮帯は, 非ダンパーでは多くの例に認めたが, ダンパーでは全例に認めなかった。 (2) 血中モチリン値は, 空腹期強収縮帯陰性例では陽性例に比較して, phase I, IIより低値を, phaseIIIより明らかに低値を示した。 (3) 血中ソマトスタチン値は, 空腹期強収縮帯陰性例では陽性例のphase I, II, IIIに比較し明らかに高値を示した。以上より, 早期ダンピング症候群例には空腹期消化管運動異常が存在し, その発生にモチリンとソマトスタチンが関与し, 両者の協調不全により, 生ずる可能性が示唆された。
  • 梨本 篤, 田中 乙雄, 佐々木 壽英
    1997 年 22 巻 2 号 p. 169-178
    発行日: 1997/04/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    腹膜播種(P)陽性胃癌966例を5年毎の年代別に分け比較検討したところ,P因子別頻度,P3症例の遠隔成績には変化がなかったが,P1,P2症例の1生率,2生率には若干の改善傾向がみられた。次に1994年12月末までの7年間に当科で切除したH0,T3,4胃癌476例の治療効果が検討した。(1)術中洗浄細胞診(cy)陽性116例の5生率は,P0,cy(+)16.9%,P111.5%であり,根治Bは根治Cに比し予後良好であった。(4)CA 125の陽性率は,P0(10.7%),P1(17.9%),P2(20.0%),P3(35.7%)であり,平均値はP0,P1の21.5U/mlに対し,P2,P3は38.3U/mlと高値であった。(6)CA125陰性例の5生率(34.3%)は,CA 125陽性例(16.0%)に比べ良好であった。(7)術中CDDP70~100mg/m2の1回腹腔内投与およびリザーバー留置によるCDDP 25~50mg/bodyの反復投与では延命効果はなかった。【結語】1.根治Bが可能ならば,Douglas窩peritonectomyも含め,できるだけP因子の外科的除去に努めるべきである。2.根治Bが不可能なP3に対しては,無理をせずbest supporive careも考慮すべきである。P因子においても根治Bで予後の向上がみられ,早期治療が奏効するものと思われた。
  • 可及的切除, 化学温熱腹膜灌流, 大動脈内動注療法および腹膜亜全摘術
    藤村 隆, 米村 豊, 伏田 幸夫, 西村 元一, 宮崎 逸夫
    1997 年 22 巻 2 号 p. 179-185
    発行日: 1997/04/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    P234例, P362例の胃癌腹膜播種に対して, 癌減量切除術 (CRS) を 63例, 化学温熱腹膜灌流 (CHPP) を59例, 大動脈内動注療法 (IAC) を30例に施行し非施行群と予後を比較した。さらに1994年1月より11例の腹膜播種を有する胃癌に対してCHPP併用による腹膜亜全摘術 (SP) を施行した。CRS施行群とCRS非施行群の生存率は, 施行群の1年生存率, 2年生存率は47%, 10%であり, 非施行群の9%, 0%より有意に良好であり (p<0.001), 癌減量切除術としての意義が認められた。CHPP施行群, IAC施行群ともに非施行群より予後は良好で (それぞれp=0.04, p<0.01), 特にCHPPはtubecular typeに (p=0.04), IACはdiffuse typeに (p=0.02) 有効性が示唆された。SPは厳重な管理下に行えば安全に行える術式であり, 完全切除の行われた症例の予後は遺残のあった症例より良好であった (p<0.01) 。以上より腹膜播種の治療は, SPを含めた可及的な切除をめざすとともに, CHPPとIACによるsandwich療法を行うことが重要である。
  • 西村 元一, 伊藤 博, 佐藤 貴弘, 伏田 幸夫, 谷 卓, 藤村 隆, 橋本 哲夫, 清水 康一, 八木 雅夫, 米村 豊, 三輪 晃一 ...
    1997 年 22 巻 2 号 p. 186-190
    発行日: 1997/04/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    肝, 肺を主として血行性転移に対する治療において外科的切除は重要な位置を占めている。今回, 当科で施行した大腸癌肝, 肺および脳転移巣切除例について検討をおこなった。治癒的切除を施行した肝転移症例66例の3年生存率は50.3%, 5年生存率は32.2%であり, 残肝再発は23例35%に認めた。また治癒的切除が可能であった肺転移症例10例の3年および5年生存率は70.0%, 平均生存期間が3.7年であった。脳転移の切除は3例に施行し, 全例QOLの改善を認め一旦退院可能であった。以上より, 大腸癌の肝, 肺転移は治癒的切除が可能であれば積極的な切除により良好な予後が得られ, 外科的切除は非常に有効であると考えられた。また脳転移に対しては根治性が無くても単発性であり切除可能であればQOLの改善の可能性を考え, 手術も考慮すべきと思われた。
  • 小森 義之, 杉岡 篤, 蓮見 昭武
    1997 年 22 巻 2 号 p. 191-197
    発行日: 1997/04/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    教室で経験した転移性肝癌に対する肝切除103例の成績について検討した。まず大腸癌肝転移切除90例のうち, 治癒的肝切除を施行し得た80例の肝切除後累積生存率は2年66.6%, 5年38.3%で, 特に片葉性・単発性例の予後は両葉性, 多発性例に比しそれぞれ有意に良好で, 肝切除の良い適応と考えられた。しかし原発巣手術から肝転移診断までの期間 (DFI) が1年未満の異時性転移例, ならびに病理組織学的に肝転移巣周囲に類洞内浸潤infもしくは門脈腫瘍栓vpを認めた例の予後は, いずれも不良であった。また肝切除後も残肝内に微小転移巣が遺残している可能性のある症例に対する予防的補助化学療法としては, 5FUの経門脈性投与が良好な成績を示した。一方, 大腸以外の臓器癌からの肝転移切除13例では, 10例が2年以内に再発死したが, 胃癌2例, 卵巣癌1例で肝切除後5年以上の生存が得られ, 積極的肝切除の有用性が示された。
  • 藤崎 滋, 三宅 洋, 中山 寿之, 大井田 尚継, 根津 健, 天野 定雄, 黒須 康彦
    1997 年 22 巻 2 号 p. 198-201
    発行日: 1997/04/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    過去10年間の当科において悪性肝腫瘍の疑いで切除された非悪性肝腫瘍11症例について臨床的検討を行った。術前診断は, 肝細胞癌8例, 転移性肝腫瘍2例, 肝嚢胞腺癌1例であった。肝細胞癌の診断の8例中, 肝炎ウイルスマーカー陽性は4例, AFP高値, CA 19-9高値は各1例, 背景肝は肝硬変4例, 慢性肝炎2例であった。転移性肝腫瘍の診断の2例は, S状結腸あるいは盲腸が原発巣と考えられた。肝嚢胞腺癌の診断の1例は画像上一部に乳頭状発育を伴う嚢胞性腫瘍であった。肝部分切除が9例 (81.8%) に, 区域切除以上の肝切除が2例 (18.2%) に行われ, 術後合併症はなく, 術後平均在院期間は26.2日であった。最終診断は肝血管腫5例, 再生結節2例, 腺腫様過形成1例, 限局脂肪化1例, 炎症性腫瘍類似病変1例, 肝嚢胞1例であった。画像診断の発達した今日でも肝腫瘍の質的診断に苦慮することがあり, 肝癌を否定し得ない場合は肝切除が必要と考えられた。
  • 竹下 浩二, 古井 滋, 伴 茂之, 原澤 有美, 神武 裕, 山内 禎祐, 佐々木 泰志, 鈴木 滋, 白井 辰夫, 菊池 善郎
    1997 年 22 巻 2 号 p. 202-208
    発行日: 1997/04/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    ヘリカル CT による肝, 胆, 膵疾患の3次元表示方法と臨床的有用性について, 術前検査として実施された81例の自験例をもとに検討した。肝腫瘍では腫瘍の区域診断や周囲血管との立体的位置関係の把握, 術前のシュミレーションや容積計算に有用であった。膵腫瘍や慢性膵炎では門脈系静脈の評価や病変との位置関係の把握に有用であった。胆道系病変では門脈系静脈の評価や3 D-CT cholangiographyによる胆道解剖の把握に有用であった。これらの3次元画像は非侵襲的で多くの情報を得ることが可能であり術前検査としての有用性が示唆された。
  • 至適凍結条件の検討
    宮本 正章, 大柳 治正, 田中 勝喜, 剣持 敬, Yoko Mullen
    1997 年 22 巻 2 号 p. 209-214
    発行日: 1997/04/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    凍結保存リンパ球は, 移植前後の種々の組織適合性試験におけるtypingやmatchingあるいは移植後のdonor graftに対するrecipientの免疫反応の評価等, 移植免疫研究において非常に有用であり, さらに反復した試験の再現をも可能とする。われわれは, recoveryに優れたブタ膵ラ島凍結保存法開発を最終目的とした種々の基礎的な至適凍結条件検索のため, そのpreliminary testとしてtrypan blue染色により凍結解凍リンパ球の% viability を算出し検討を加えたので報告する。その結果, 成熟ブタリンパ球に対する最も優れた至適凍結保存条件は, 凍害防御剤としてのDMSO濃度は5%とし, programmed freezerを使用し, 凍結用 mediumとしてRPMI 1640 を使用し, さらに10% FBS を添加した場合と判明した。これらの基礎的な検討結果は, 今後種々の動物種のリンパ球および膵ラ島凍結保存法に応用できうる可能性がある。
  • 予後と随伴膀胱癌について
    三方 律治
    1997 年 22 巻 2 号 p. 215-218
    発行日: 1997/04/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    外科的治療を行った36例の腎盂尿管癌について, その生命予後と膀胱癌の随伴 (併発, 続発) とを中心に検討した。腎盂尿管癌の生存率は1年0.859, 3年0.713, 5年0.615であったが, 生命予後を左右する因子は組織分化度よりも, 進展度が優位であった。また膀胱癌を併発していた9症例では, 予後不良の傾向がみられたが, 有意差はなかった。初回手術後の累積膀胱続発率は1年0.123, 3年0.3238と5年0.420であった。続発率は分化度および進展度には関係なく, 膀胱癌を併発していた症例では有意に続発率は高かった。膀胱癌の続発は生命予後に影響を与えていなかった。
  • 林 明照, 藤尾 幸司, 丸山 優
    1997 年 22 巻 2 号 p. 219-223
    発行日: 1997/04/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    三次元画像を形成外科領域の三次元計測や定量評価, 手術シミュレーション等に応用するため, われわれは, laser light scanner (LLS) による表面計測とcomputer graphics (CG) を利用した画像処理を行い, 興味ある知見を得ている。方法は, Cyberware社LLSでカラー表面計測し, IRIS Indigo (Silicon Graphics) で処理したのち, (1) 顔面, 胸部領域の三次元画像表示, 計測, 術前後の評価, エデュケーション, シミュレーション, (2) milling machineによる実体モデルの応用, (3) CG照明モデルによる顔面形態, 輪郭や顔面神経麻痺の評価を行った。3次元画像は, 視覚的効果が大きく, 病態の理解や把握が容易となり, 診療記録の一部として今後活用されるものと思われた。本法による計測は, 患者負担を軽減し, また新たな評価法の開発が示唆された。実体モデルによるエピテーゼは, 患者の負担が少ないのに加え, 座位・開瞼状態で型取りができるため, 形態的にもより理想に近い製品を作製することができる。3D照明モデルでは, 光源や観察方向を任意にシミュレートでき, 視覚・心理的効果, さらに表情を加味した新しい視点からの顔面輪郭や表情の観察, 計測, 評価法のひとつとなるものと思われた。
  • 腹腔内浮遊細胞におけるトリプシノーゲン遺伝子の発現について
    北川 裕久, 藤村 隆, 太田 哲生, 伏田 幸夫, 米村 豊, 三輪 晃一, 宮崎 逸夫
    1997 年 22 巻 2 号 p. 224-228
    発行日: 1997/04/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    われわれはdiffuse typeの胃癌において, 癌細胞の多くが, セリン系プロテアーゼであるトリプシノーゲンを産生しており, 細胞外マトリックス分解酵素として癌の浸潤, 転移に関与する可能性を指摘してきた。一方, 正常の腹腔内にはトリプシノーゲン産生細胞は存在しないことより, 癌細胞が漿膜層を越え, 腹腔内に撒布されている場合には, 腹腔内浮遊細胞の中にトリプシノーゲン産生細胞が証明されると考えられる。そこで今回RT-PCR法にてトリプシノーゲンを遺伝子レベルで検索することにより, 腹膜播種の術前診断への応用を試みた。腹膜播種が疑われ, 術前に腹腔内洗浄液を採取した8例中で, 手術時に肉眼的に腹膜播種が存在したのは3例であったが, mRNA レベルでのトリプシノーゲンの発現は3例全例にみられた。また腹膜播種のみられなかった5例中3例にも, mRNAレベルでトリプシノーゲンの発現が認められ, 今後腹膜播種再発に対して厳重な経過観察が必要と思われた。
  • 高橋 慶一, 森 武生, 安野 正道
    1997 年 22 巻 2 号 p. 229-236
    発行日: 1997/04/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    大腸癌肝転移に対する肝切除法や肝門部リンパ節郭清の意義および残肝再発予防目的の肝動注の効果や動注後肝切除の成績について検討した。対象は大腸癌肝転移肝切除例143例 (同時性80例, 異時性63例) で, 肝切除法やTWの距離と残肝再発の関係の評価のため, 肝転移1個症例80例で比較したが, 肝切除法やTWの距離と残肝再発の間に有意な相関はなく, 転移巣の局在から安全で容易に確実に切除できる方法を選択すべきである。肝門部リンパ節転移症例の予後は不良で, 郭清が予後延長にはつながらず, 黄疸予防という患者のQOLの向上という点で意義があるだけで, 転移陽性例にはsampling程度の郭清にとどめるべきである。肝切除後予防的肝動注療法は5FUの総投与量が15g以上症例で有意に残肝再発予防効果を認め, また切除不能肝転移例に対する動注後肝切除例は非切除例より有意に予後の延長を認め, neo-adjuvant chemotherapyとして今後期待できる治療方法である。
  • 上田 順彦, 小西 一朗, 広野 禎介
    1997 年 22 巻 2 号 p. 237-241
    発行日: 1997/04/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    過去9年7ヵ月間に当科で経験した異所肝管症例20例を対象に術前胆道造影所見よりみた胆摘術に際しての問題点を検討した。20例の型別の例数はI型3例 (15%), II型2例 (10%), III型9例 (45%), IV型2例 (10%), V型4例 (20%) であった。異所肝管の支配肝区域は後区域16例 (80%), 前区域4例 (20%) であった。異所肝管損傷は2例で, 型別ではI型とIII型の1例ずつであった。この2例の術前胆道造影はDICで, 術前には異所肝管の走向および胆嚢管の分岐形態が把握されていなかったが, retrospectiveな検討では造影されていた。一方, 術前これらの関係が描出されなかった4例でも, 詳細な読影により2例は異所肝管の認識と胆嚢管の合流関係が類推された。異所肝管の損傷防止には術前の胆管像の読影に際して異所肝管を含めた胆管枝の合流形態や胆嚢管の分岐形態の把握に意識を持ち, 読影に精通することが重要である。
  • 桜井 健一, 秦 怜志, 天野 定雄, 森 健一郎, 萩原 紀嗣, 榎本 克久, 杉藤 公信, 秋山 太津男, 黒須 康彦, 野崎 幹弘, ...
    1997 年 22 巻 2 号 p. 242-246
    発行日: 1997/04/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    胸部食道癌の手術後2年目に頸部食道に発生した異時性多発癌に対して, 胸骨縦切開を付加し, 遊離空腸移植により再建を行った1治験例を経験したので報告する。症例は60歳男性, 2年前にIm領域の胸部食道表在癌にて右開胸開腹, 胸部食道全摘術, 頸部食道胃管物吻合術を受けている。術後経過観察中に上部消化管内視鏡検査にて頸部食道に直径2cmの1型腫瘤を指摘され, 食道異時性多発癌の診断にて手術を行った。術野を確保するために胸骨縦切開を施行した後に喉頭を温存し腫瘍を摘出した。断端陰性を確認した後, 再建に遊離空腸移植を用いた。術後経過は良好であった。最近の集学的治療の進歩などによる食道癌の予後の向上に伴い, 再発癌や重複癌および異時性多発癌が増加することが予想される。これらを念頭におき, 術後の厳重なfollow upを行い, 早期発見による積極的治療が有効であると考えられた。
  • 山内 希美, 田辺 博, 可知 宏隆
    1997 年 22 巻 2 号 p. 247-253
    発行日: 1997/04/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    汎発性腹膜炎を呈した壊死型虚血性大腸炎の3例を経験したので文献的考察を加え報告する。症例1 : 73歳, 男性。既往歴として高血圧, 痛風・突然下腹部痛と下血が出現した。直腸に限局して壊死性変化を認め, 壊死腸管は小骨盤腔に連続していたため腹会陰式直腸切断術を施行した。症例2 : 83歳, 男性。既往歴に慢性肝炎, 狭心症, 肺気腫。突然腹痛を覚えた。下行結腸が広範に壊死に陥っており, 壊死腸管を切除するHartmann手術を施行した。症例3 : 68歳, 男性。既往歴に脳梗塞, 糖尿病, 心不全, 高血圧・貧血の精査のため入院中, 突然腹痛が出現した。上行結腸に壊死腸管と穿孔部を認めたため右半結腸切除術を施行した。病理組織所見は3症例いずれも壊死型血性大腸炎であった。虚血性大腸炎は高血圧, 心疾患, 糖尿病など基礎疾患が先行することが多く, 特に重篤化する壊死型のものは注意を要する。高齢者で基礎疾患をもつ腹痛所見には細心の注意を要すると思われた。
  • 富家 隆樹, 西田 勝則, 笠原 勝彦, 馬場 靖雄, 丹生 徹, 北村 善男, 安達 実樹, 宮澤 幸久, 冲永 功太, 田中 文彦
    1997 年 22 巻 2 号 p. 254-258
    発行日: 1997/04/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は65歳男性, 心窩部痛にて発症し, 疼痛は増強するとともに下腹部に移動した。翌日, 当院内科を受診し, 急性腹膜炎を疑われ当科を紹介された。右下腹部に強い圧痛と筋性防御が認められたが, 腹部単純X線撮影では遊離ガス像は存在しなかった。腹部超音波検査で, ダグラス窩に腹水の貯留が認められたが, 虫垂は描出されなかった。血液検査で白血球数増多, CRP高値のため, 急性腹膜炎と診断し緊急手術を施行した。開腹時, 膿性腹水の貯留と同盲弁より4cm口側の回腸の腸間膜側に, 膿苔の付着した径0.5cm大の陥凹部が認められた。盲腸および上行結腸に憩室が散在していた。回盲部切除術を施行し, 術後は順調に経過した。病理学的所見では陥凹部に一致する回腸粘膜が筋層を貫いて嵌入し, 強い炎症細胞浸潤が認められ回腸憩室炎穿孔と診断された。回腸憩室炎穿孔は比較的稀な病態であり, 文献的に考察を加えた。
  • 菅谷 宏, 鳥居 和之, 木村 彰良, 金田 友之, 江崎 哲史, 小森 義之, 杉岡 篤, 蓮見 昭武
    1997 年 22 巻 2 号 p. 259-264
    発行日: 1997/04/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    後腹膜脂肪肉腫における外科的治療上の問題として, 摘除後の再発率が高いことが挙げられ, 再発機序としては腫瘍偽被膜の周囲への浸潤の取り残し (tumor spillage) が重要視されている。自験例は65歳男性で, 1987年の初回摘除術後も局所再発を反復し, その都度, 計7回の摘除術を行いpolysurgeryとはなったが, 初回術後9年余の現在, 良好なQOLを保持しつつ健在である。本症の切除範囲に関する安全確実な指標はなく, また無用な広範囲合併切除も手術侵襲, QOLなどの面から慎むべきで, 本例は本症の治療方針の選択に貴重な示唆を与える例と考えられた。
  • 今村 正之
    1997 年 22 巻 2 号 p. 265
    発行日: 1997/04/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
  • 立石 昭夫
    1997 年 22 巻 2 号 p. 266
    発行日: 1997/04/25
    公開日: 2009/08/13
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