日本外科系連合学会誌
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22 巻, 6 号
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  • 大内 浩, 上田 恵介, 横手 祐二, 渡辺 拓自, 許 俊鋭, 朝野 晴彦, 尾本 良三
    1997 年 22 巻 6 号 p. 845-849
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    腹部大動脈瘤手術症例連続150例を手術時期, 症状別に分類し臨床像, 手術成績を検討した。瘤破裂をI群 (29例), 有症状をII群 (47例 : 緊急手術IIa群24例, 待期手術IIb群23例), 無症状をIII群 (74例) に分類した。瘤最大横径 (mm) はI群78±11, IIa群67±14, IIb群59±12, III群60±13でI群が他群に比し有意に大きく (p<0.001), IIa群もIIb群およびIII群に比し有意に (p<0.05) 大きかった。症状はI群では全例に腹痛, 腰痛を認めショックを半数以上に合併した。II群の症状は腹痛, 腰痛, 間歇性跛行, 発熱などであった。病院死亡率はI群17%, IIa群8%, IIb群12.5%, III群3%であった。結論 : 1.破裂例および有症状で緊急手術施行例は瘤径が有意に大きかった。2.有症状の腹部大動脈瘤は手術時期に拘わらず死亡率が高い傾向であった。
  • 症例に応じた変法の試み
    飯田 浩司, 長井 千輔, 岡村 吉隆, 望月 吉彦, 知元 正行, 池田 康紀, 杉田 和彦, 石濱 洋美, 森 秀暁, 山田 靖之, 嶋 ...
    1997 年 22 巻 6 号 p. 850-853
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    1993年4月から1997年4月までに9例の漏斗胸患者に対して手術を施行した。胸骨翻転重畳術 (sternal turnover and overlap, STO-O) または胸肋挙上術 (sterno-costalel evation, SCE) を基本術式とし, 若干の工夫, 症例に応じた変法を加えた。両術式の改良として肋骨弓の突出を矯正するために第6, 7肋骨を短縮した後に20~30度回転させて再縫合した。肋軟骨の縫合面がずれるのを予防するため接合面を軟骨の長軸に対して斜めにした。筋の萎縮を防ぐため筋層の修復に留意した。皮膚切開, 縫合に形成外科的手法を応用した。また変法として1例では翻転させる胸骨を1肋間少なくし, 上部の肋軟骨に短縮を加えた。2例で左右非対称の数の肋軟骨を短縮した。これらの変法, 改良によって良好な結果が得られた。
  • 龍村 俊樹, 宮崎 幹也, 小山 信二, 山口 敏之, 鈴木 衛, 富田 国男
    1997 年 22 巻 6 号 p. 854-862
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    T3, T4諸隣接臓器浸潤をみる肺癌の拡大手術を34症例に施行した。全症例の1, 3, 5生率は, それぞれ62.0%, 35.3%および24.0%であった。一方, 近年において徐々に判明されつつあるように, 胸壁, 心膜および左房浸潤例はその合併切除により予後を著明に改善し, われわれの該当臓器の5生率も33.4%, 41.7%および17.0%と満足すべき結果を得た。しかし残念ながら, 大動脈系および横隔膜の浸潤例の予後が不良であった。なお, 組織型と予後との相関をみると, 扁平上皮癌は腺癌に比べて良い予後を示した。多臓器にわたって浸潤を示す症例に比べ, 単一臓器の方が予後が良かった。また, リンパ節転移陽性度の高いものほど予後が不良であった。今までの経験から, 浸潤の有無, 浸潤範囲の把握および手術方針の決定等に, 経食道内視超音波および術中超音波診断法が有効で, 肺癌外科に積極的に取り入れるべき補助診断法と考えている。
  • 徳原 太豪, 東野 正幸, 大杉 治司, 木下 博明
    1997 年 22 巻 6 号 p. 863-867
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    根治手術の施行された胃癌13例 (以下M群) および大腸癌7例 (以下C群) に, 末梢静脈栄養管理を行い, 栄養学的評価を行うとともに, 各種の代謝変化について検討した。血中プレアルブミン, トランスフェリン, レチノール結合蛋白はいずれも術後有意に低値を示した。インスリンはM群で術後有意な変動を示した。尿中17-OHCSは, 術翌日M群, C群ともに術前に比べて有意に高値であった。また術後第3および4病日においてC群はM群に比べ有意に高値を示した。尿中総カテコールアミンはM群において術翌日は術前に比べて有意に高値であった。M群の窒素バランスは術後1週目まで負で推移したのに対し, C群は術翌日より正で推移していた。1週間の累積窒素バランスはM群はC群と比較して有意に低値であった。胃癌術後では窒素バランスの正常化にアミノ酸や中間輸液などの末梢静脈栄養が必要であると思われた。
  • 荒井 邦佳, 北村 正次, 岩崎 善毅
    1997 年 22 巻 6 号 p. 868-871
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    胃癌取扱い規約によるとA領域癌におけるNo.4sbは第1群リンパ節に分類されているが, その妥当性について検討を加えた。対象はNo.4sbの完全郭清を行ったA領域癌511例であり, これらについてNo.4sb転移 (+) 例の特徴, 他のリンパ節との転移率の比較および予後の面から解析した。その結果, 1) 壁深達度別転移率あるいは他のリンパ節からみた併存転移率がきわめて低率で第2群相当であること, 2) 他の第1群リンパ節にみられる単独転移がなく一次リンパ節とは考えがたいこと, 3) No.4sb転移例は第2群に規定されているリンパ節転移例に比較して予後の優位性がないことが明かとなった。No.4sbに連続するNo.10が第3群に設定されている不整合性の改善の意味からも, A領域癌のNo.4sbは第2群に改正すべきと考えられた。
  • 桜井 健一, 柴田 昌彦, 秦 怜志, 坂本 明子, 木村 知, 永田 靖彦, 堀井 有尚, 藤崎 滋, 大原 守貴, 天野 定雄
    1997 年 22 巻 6 号 p. 872-877
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    家族歴のない散発性大腸癌原発巣におけるp21wafl, RB, PCNAの発現とその臨床的意義について検討した。大腸癌48例を対象とし, RT-PCR法および定量化PCR法を用いてmRNAレベルでの検討を行った。RB, PCNAは全例の癌部, 非癌部に発現しており, p21は26例の癌部と7例の非癌部に発現していた。臨床病理学的諸因子との関係では臓器腫瘍部においてp21-mRNAとPCNA-mRNAの発現が負に相関し, PCNA-mRNAの発現はDukes分類と正の相関を示した。その他の臨床病理学的因子との関連は見られなかったが, p21-mRNAおよびRB-mRNAの発現は術後の累積生存率と相関し, p21-mRNAとRB-mRNAの発現量の増減は予後因子となりうる可能性が示唆された。
  • 大畑 昌彦, 小山 勇, 松本 隆, 藤内 伸子, 小川 展二, 大塚 健二, 沼尻 良克, 渡辺 拓自, 門倉 正樹, 篠塚 望, 安西 ...
    1997 年 22 巻 6 号 p. 878-885
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    過去10年間の大腸低分化腺癌17例中, 非切除となった4例を除いた13例の臨床病理学的特徴について, 高・中分化腺癌を合わせた分化型腺癌424例 (以下分化型腺癌) と比較検討した。なお低分化腺癌はすべてss (a 1) 以上の深達度だったため, 低分化腺癌とss (a 1) 以上の分化型腺癌症例についての検討を加えた。低分化腺癌の占拠部位は右側結腸に多く, 肉眼型は浸潤型 (とくに3型) が多く, 壁深達度はse (a 2) 以上の高度進行例が多かった。リンパ節転移陽性率は77%, 腹膜播種陽性率は23%と高かった。以上の結果は, ss (a 1) 以上の深達度の分化型腺癌症例との検討でもほぼ同様であった。低分化腺癌症例は13例中, 根治度Aとなったのは4例 (30.8%) で, 分化型腺癌症例の根治度A 354例 (83.5%) に比べて明らかに低かった。低分化腺癌全症例の5生率は15.7%と, 分化型腺癌症例の66.5%に比べ不良だったが, 治癒切除例では分化型腺癌症例と差はなく根治術を行うことにより予後の改善が得られるものと考えられた。
  • 富田 凉一, 五十嵐 誠悟, 萩原 紀嗣, 丹正 勝久
    1997 年 22 巻 6 号 p. 886-889
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    1995年1月から12月までの過去1年間に, 排便時に何らかの愁訴を訴え, 当科外来を受診した患者64例 (男性28例 : 15~73歳, 平均44.9歳 : 女性36例 : 18~79歳, 平均54.5歳) にdefecographyを行い, rectoceleと診断された21症例について以下の結果を得た。1) 女性のみに認められた。2) 主訴では残便感が最も多かった。3) 排便時怒責を有する例が明らかに多かった。4) 経産婦において明らかに多く認められた。5) 併存疾患では明らかに痔核が多かった。6) 会陰下降を伴う例が最も多かった。
  • 能登 啓光, 松下 通明, 木村 純, 藤堂 省
    1997 年 22 巻 6 号 p. 890-894
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    胆汁酸の肝細胞に対する障害性を, MTT (3- (4, 5-dimethylthiazol-2-yl) -2, 5-diphenyltetrazolium bromide) assay法を用いて検討した。肝障害時に増加する4種の胆汁酸すなわちグリココール酸 (GC), タウロコール酸 (TC), グリコケノデオキシコール酸 (GCDC), タウロケノデオキシコール酸 (TCDC) から1-4種等量胆汁酸を混合した培養液を作成した。培養液の総胆汁酸濃度を0.5-4mMとしてラット肝細胞を静置培養し, 胆汁酸の濃度, 組成, C (総コール酸濃度) /CDC (総ケノデオキシコール酸濃度) 比が培養肝細胞生存率に与える影響を検討した。その結果, 肝細胞障害性はC/CDC比が0.5以下で総胆汁酸濃度が2mM以上, GCDCとTCDCの合計が2mMで有意に認めた。個々の胆汁酸の障害度はTCDC>GCDC>GC〓TCの順であった。GCとTCの肝細胞障害度はTCDC, GCDCに比較して低かったが, TCDC, GCDC存在下にGCまたはTCを付加して総胆汁酸量を増加することにより肝細胞障害が招来するものと考えられた。
  • 城原 直樹
    1997 年 22 巻 6 号 p. 895-905
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    肝虚血再灌流障害における凝固線溶系の変動とトロンボモジュリンの有用性について, 雑種成犬による脾静脈-左外頸静脈バイパス設置の肝虚血モデルを用いて検討した。トロンボモジュリン非投与群ではthrom-bin-antithrombin complexとplasmin-α2-plasmin inhibitor complexは肝血行遮断時より急激に上昇し凝固線溶系亢進状態であった。ヒアルロン酸は虚血後有意に上昇し, 肝組織血流量は再灌流後有意に低下, AST・ALTも再灌流後より有意に上昇した。トロンボモジュリン投与群ではthrombin-antithrombin complexとplasmin-α2-plasmin inhibitor complexの上昇は有意に抑制され凝固線溶系の亢進も抑制された。またヒアルロン酸の上昇は有意に抑制され, AST・ALT・肝組織血流量も有意に改善された。肝虚血再灌流障害においては凝固亢進状態にあり, ヒト尿由来の可溶性トロンボモジュリン投与はその凝固亢進を抑制し肝保護効果を有することが示唆された。
  • 八木 雅夫, 伊藤 博, 根塚 秀昭, 佐藤 貴弘, 谷 卓, 橋本 哲夫, 清水 康一, 三輪 晃一
    1997 年 22 巻 6 号 p. 906-909
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    continous ambulatory peritoneal dialysis (CAPD) 実施時の腹膜炎の診断基準を, 発熱, 腹痛と回収液の白濁または白血球数の増加とすると, 61例 (90回) のカテーテル留置例のうち29例に腹膜炎を経験した。腹膜炎発症例での回収液中の菌検出率は28%で, staph.epidermidisが最も高頻度に認められたことから, 腹膜炎の感染経路として, トンネル外口からの逆行性感染が疑われた。外科的治療を必要とした腹膜炎症例は20例で, 18例はカテーテルの抜去で腹膜炎は軽快したが, 2例では腹腔内のドレナージを必要とした。腹膜炎の治療で抗生剤投与を一週間以上必要とする症例では早期のカテーテルの抜去が必要で, さらに, 腹膜炎の予防ではトンネル感染の防止とカテーテル外口形成術が有用であると考えられた。
  • 武田 多一, 田中 秀治, 松田 博青, 島崎 修次
    1997 年 22 巻 6 号 p. 910-913
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    細胞培養を利用した人工皮膚の臨床応用では, 手技の複雑さ・長期的生着率の悪さ・高額な費用などの問題点が指摘され, さらに, 表皮細胞の分離・培養で用いられる基質や酵素などの異種蛋白の混入や過敏反応などの副作用が懸念される。われわれは, 簡単で, 細胞増殖因子以外はすべて人工の材料を用い, 酵素すら使わない自家培養表皮移植の方法を開発した。重症熱傷患者例を対象に, 正常皮膚の細胞を分層採皮片から細切法で分離し, フィルムコーティングされた培養プレートで表皮細胞培養し, 約3週間後に患者熱傷創をデブリドマンした後の肉芽組織にup-side-down法で移植した。移植1週間後に細胞-フィルム複合体が創面に密着していることを観察し, その後約40%以上に長期的生着を確認した。酵素を使わない新しい自家培養表皮移植法の有用性が示唆された。
  • 松岡 伸一, 秦 温信, 真鍋 邦彦, 斎藤 正信, 服部 優宏, 佐野 文男
    1997 年 22 巻 6 号 p. 914-917
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    当科で腹腔鏡下胆嚢摘除術 (以下LCと略する) を開始した当初は, 胆嚢造影で胆嚢が造影されない症例はLCの適応外としたが, 最近は胆嚢造影陰性例に対しても積極的に試みるようになった。今回は胆嚢陰性例に対するLCを陽性例に対するそれと比較検討した。1992年8月から1997年2月までにLCを試みた197例 (男91例, 女106例, 平均年齢52.5歳) のうち胆嚢造影陰性例は41例 (20.8%) であった。術中開腹に移行したのは陰性例では9例 (22.0%) で, 陽性例の12例 (7.9%) と比較して有意に開腹移行率が高かった。平均手術時間は陰性例では150分で, 陽性例の108分より有意に長かった。しかし, 術後の入院期間や合併症の頻度に関しては両者間に差を認めなかった。胆嚢造影陰性例に対するLCは陽性例に対するそれと比較して困難な場合が多いと考えられるが, 陰性例でも約80%はLCが可能であったので, 積極的に試みるべきと考える。
  • 小外傷術後の抗菌薬使用に関するアンケート調査より
    山内 仁, 小林 英司, 藤村 昭夫, 宮田 道夫
    1997 年 22 巻 6 号 p. 918-921
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    小外傷縫合術後の感染予防に経口抗菌薬の投与が行われているが, 投与の是非や至適投与日数などに関しては一定の見解は得られていない。自治医大卒業の外科系医師で全国の医療施設に勤務する医師を対象に, 小外傷縫合術後の経口抗菌薬投与の実体についてアンケート調査を行い, 117名より回答を得た。小外傷の術後に全例抗菌薬を投与していると答えたものは48.7%, ケースバイケースとしたものは50.4%であった。第一選択薬はセフェム系が72.6%であった。投薬の判断基準は肉眼所見で決めているものが多く, また投薬日数は3日間が約70%であった。副作用は薬疹や胃腸障害が多かったが, 横紋筋融解症, 全身痙攣, 肺水腫などの重篤な副作用の経験者もみられた。小外傷に対する予防的抗菌薬投与は, 有効性ならびに副作用防止の面から無作為割り付け試験が必要と思われた。
  • 深田 代造, 佐治 重豊, 川口 順敬, 梅本 敬夫, 宮 喜一, 下川 邦泰
    1997 年 22 巻 6 号 p. 922-924
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は53歳の女性。平成8年10月, 偶然左乳房の乳輪内側縁直下に大豆大の腫瘤を触知し来院した。超音波検査 (US), 乳腺撮影 (MMG) では境界明瞭な腫瘤像が認められ悪性所見に乏しかったが, 生検にて乳頭腺管癌と診断された。乳房温存療法が可能と思われたが, dynamic magnetic resonance imaging (dynamic MRI) にて乳房内に多数の造影陽性結節が認められたため乳房温存手術を断念し, 両胸筋温存乳房切除術を行った。摘出標本の病理検索にて広汎な乳管内進展病巣が確認されたことから, dynamic MRIにより従来のUSやMMGでは診断不能であった乳癌病巣の診断が可能になると思われ, 今後, 乳房温存療法の適応可否や切除範囲の決定に極めて有用な検査法になるものと考えられた。
  • 細谷 好則, 牧野 駿一, 金澤 暁太郎
    1997 年 22 巻 6 号 p. 925-928
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は13歳の女児で胸部異常陰影を指摘され来院した。左前縦隔に位置する内部に石灰化を伴う縦隔腫瘍と診断された。腫瘍は胸腺左葉原発で左横隔神経を巻き込んでおり, これらを合併切除することにより摘出した。摘出した腫瘍は4×5×7cmで比較的軟らかく, 暗赤色調の割面を呈しており, 病理組織所見では, 平滑筋線維性結合織の中に大小の血管が豊富に見られる腫瘍で, 海綿状血管腫と診断された。縦隔海綿状血管腫は全縦隔腫瘍の中でも稀な疾患とされている。術前診断は未だ難しく, また殆どが良性腫瘍にもかかわらず, しばしば周囲の脈管や神経との癒着が見られ, 外科的切除に際してはこれらの合併切除に対する配慮が重要と考えられた。
  • 矢後 岳志, 治部 達夫, 横畠 徳行, 関根 敏行, 小林 暁, 白石 賢子, 福島 亮治, 北村 善男, 沖永 功太, 今村 哲夫
    1997 年 22 巻 6 号 p. 929-933
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    今回われわれは, 胃穹窿部の径5.5cmの平滑筋肉腫を先進部とし胃壁が全層性に十二指腸球部に重積して, 激烈な心窩部痛, 嘔気, 反復する嘔吐というball valve syndromeをきたした症例を経験した。稀な病態であるが, 上部消化管内視鏡検査で内腔の著明な変形, 粘膜の絡み合い嵌入, 上部消化管造影検査で胃体上部から胃角部方向へ集中するレリーフ像, 腹部CT検査で十二指腸球部の充実性腫瘤陰影と重積時の所見が得られており, 典型的な症例と考えられた。手術は胃前庭部に併存病変の存在が確認されていたため, 胃全摘術が施行された。切除標本では, 胃穹窿部大彎に粘膜欠損を伴った鶏卵型の粘膜下腫瘍を認めた。また, 噴門部小弯と前庭部にII a型早期胃癌, 前庭部にATP, 過形成性ポリープと計4個の病変が存在した。隆起性胃病変の十二指腸への脱出は報告によると, 大部分は前庭部や幽門輪上の上皮性腫瘍であり, 筋層に達しない病変が多い。一方, われわれの検索し得た胃上部腫瘍の十二指腸への脱出症例は自験例を含め40例で, 胃の他の部位の腫瘍の脱出例と比べ, 非上皮性で径5cm以上の大きな腫瘍の比率が高率であった。
  • 小西 一朗, 上田 順彦
    1997 年 22 巻 6 号 p. 934-936
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    胃癌の神経周囲浸潤 (PNI) の臨床病理学的意義に関する検討は少なく, わずかに散見される報告では, T2すなわちmp, ss癌では, PNI陽性例と陰性例の5年生存率に有意の差が認められたと報告されている。今回, 私どもは, mp胃癌で高度のPNIを認めたが, 3年10ヵ月を経た現在, 再発の徴がなく健在な1例を経験したので文献的考察をまじえ報告した。症例は47歳, 男性で, 胃の検診で異常を指摘されたため胃内視鏡検査を受けたところ, 胃下部にIIc病変を, 胃中部にIIc進行形病変を認めたため, 胃全摘膵体尾部脾合併切除術 (D2)が施行された。組織学的所見では, 胃下部病変はpor, sm, n0, ly0, v0, PNI (-) で, 胃中部病変はpor, mp, n0, ly2, v1, に加え, 高度のPNIが認められた。
  • 松倉 則夫, 恩田 昌彦, 徳永 昭, 加藤 俊二, 長谷川 博一, 吉行 俊郎, 内藤 善哉, 山田 宣孝, 京野 昭二, 山下 精彦, ...
    1997 年 22 巻 6 号 p. 937-941
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    日本で胃癌が多い理由として, 高塩分を特徴とする食生活にその原因が求められてきた。近年, H.pylori感染と胃癌発生との関係が論じられている。一方, 胃体上部, 噴門部癌ではEpstein-Barr virusの感染が比較的多い。今回この両方に感染した胃粘膜から発生した多発早期癌を経験したので報告する。65歳男性, 心窩部痛を主訴として胃内視鏡検査を施行。胃角上小攣にH1 stage潰瘍を認めた。H.pylori検査のため幽門部大攣, 胃角小攣, 胃体部大攣の定点生検を施行したところ, 幽門部と胃体部生検がGroup Vの病理診断をうけ幽門側胃切除術を施行す。切除胃を全割して病理検査し, 胃角上潰瘍周辺にsmに浸潤する充実型低分化腺癌を, 幽門部口側に腺腫-高分化型管状腺癌のm癌を肛門側に乳頭腺癌のm癌を認めた。低分化腺癌の癌組織ではISH法でE-B virusを認め, 胃角部粘膜はH.pylori陽性であった。また血清抗体価はE-Bvirus, H.pylori共に陽性であった。感染症を起因とする早期胃癌と考えられた。
  • 奥田 栄樹, 東野 正幸, 大杉 治司, 徳原 太豪, 竹村 雅至, 木下 博明
    1997 年 22 巻 6 号 p. 942-945
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    直腸癌に対するdouble stapling techniqueを用いた低位前方切除術後, staple lineを中心とした吻合部再発をきたした症例を経験したので報告する。症例は, 64歳, 女性。低位前方切除の術後6ヵ月目頃より便の細小化がみられ, 精査の結果肝転移と吻合部再発を認めた。再入院後, 肝部分切除と直腸再発部の切除を行った。切除標本では, 前回の吻合部のstaple lineを中心にそれに沿う境界明瞭な隆起性病変を認め, 吻合部への癌細胞の生着による再発が疑われた。器械吻合では手縫い吻合に較べ, 吻合部の全層が内腔に露出するため, 吻合部への癌細胞のimplantationが生じやすいと考えられる。従って器械吻合施行時には吻合部再発の予防のため徹底した腸管内洗浄が求められると考えられる。
  • 阪本 研一, 金武 和人, 二村 直樹, 柴田 雅也, 林 勝知, 広瀬 一
    1997 年 22 巻 6 号 p. 946-949
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者の肛門周囲膿瘍より続発したFournier's gangreneの1例を経験したので報告する。症例は糖尿病治療中の55歳, 男性。肛門周囲の疼痛を主訴とし来院した。肛門周囲膿瘍と診断し切開排膿処置を施行するも, 膿瘍腔は肛門周囲から陰嚢, 臀部へと拡大した。さらなる切開排膿処置と洗浄, 抗生物質の投与, 絶食, 中心静脈栄養, 糖尿病治療を行うも十分な治療効果が得られなかった。壊死性筋膜炎となったためFournier's gangreneと診断し, 全身麻酔下にデブリドメントを施行し, 良好な経過が得られた。膿の培養検査では好気性菌のE. coli, E. faecalisと嫌気性菌のP. asaccharolyticusの混合感染が確認された。本邦報告79例の死亡率は14%と予後不良であるが, 自験例では3回の外科的処置を施行することと頻回の感受性検査に基づく適切な抗生物質投与により救命しえた。
  • 山内 希美, 田辺 博, 可知 宏隆
    1997 年 22 巻 6 号 p. 950-956
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    肝海綿状血管腫は, 画像診断の進歩によりその発見頻度が高くなってきているが, 外科的手術の対象となるものは比較的少ない。今回われわれは, 巨大肝海綿状血管腫の2例を経験した。症例1;52歳, 女性。腹痛, 嘔吐があり, 体重減少も認めた。臍下5横指まで腫瘤を触知した。肝左葉にダイナミックCTにて経時的に濃染され, MRIにてT1でlow, T2でhigh intensityを示す腫瘤を認め, 血管造影にて左肝動脈領域にcotton wool like pooling像が得られた。肝血管腫と診断し, TAE後肝左葉切除術を施行した。切除標本の重量は2680gであった。症例2;54歳, 女性。上腹部痛を認め, 精査したところ, 肝右葉に造影CTにて周囲より濃染され, MRIにてT1でlow, T2でhigh intensityを示す腫瘤を認めた。肝血管腫と診断し, 肝右葉切除術を施行した。切除標本の重量は1200gであった。巨大肝血管腫の手術適応, 手術術式について文献的考察を加え, 検討し報告した。
  • 松尾 篤, 日下部 光彦, 佐藤 功, 来見 良誠
    1997 年 22 巻 6 号 p. 957-960
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は44歳, 女性。平成7年9月21日右季肋部痛に気づき来院, 精査加療目的で入院となった。内視鏡的胆管造影検査 : 胆嚢管は右肝管と併走していた。胆嚢底部に結石と思われる陰影を認めた。ヘリカルCT所見 : 経静脈性胆道造影後に再構成し胆管系を三次元的に描出した。胆嚢管が螺旋構造を呈しながら右肝管の前面より直接右肝管に合流するのが認められた。以上より胆嚢管が右肝管に合流した胆石症と診断し, 平成7年10月5日に腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した。手術所見 : ヘリカルCTの画像の如く右肝管に直接合流している胆嚢管を確認し, これを切離し標本を摘出した。結語 : 今回われわれはヘリカルCTを施行することにより三次元的に胆嚢管の走行を把握できたため, 胆嚢管合流異型症例に対し手術操作が非常に安全で的確に行いえた。所見 : 経静脈性胆道造影後に再構成し胆管系を三次元的に描出した。胆嚢管が螺旋構造を呈しながら右肝管の前面より直接右肝管に合流するのが認められた。以上より胆嚢管が右肝管に合流した胆石症と診断し, 平成7年10月5日に腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した。手術所見 : ヘリカルCTの画像の如く右肝管に直接合流している胆嚢管を確認し, これを切離し標本を摘出した。結語 : 今回われわれはヘリカルCTを施行することにより三次元的に胆嚢管の走行を把握できたため, 胆嚢管合流異型症例に対し手術操作が非常に安全で的確に行いえた。
  • 小林 利彦, 木村 泰三, 数井 暉久
    1997 年 22 巻 6 号 p. 961-966
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は69歳, 男性。心窩部不快感を主訴に近医を受診し, 7年前より指摘されていた膵頭部腫瘤に対し加療を勧められ入院となった。現症として特記すべきことなく, 75gOGTTは糖尿病型であったがPFD値は正常範囲内であった。腹部USおよびCTでは膵頭部~体部に, 多胞性で大きさ約3cm径の嚢胞性病変が認められた。なお, 同病変はERPにて主膵管との交通がみられた。術前診断は膵粘液性嚢胞腺腫であり, 体尾部切除では膵切除率が高いと考え, 横断切除+胃膵吻合術 (嵌入法) が行われた。術後のminor leakageは保存的に軽快したが, 7カ月目頃より胃膵吻合部の閉塞がみられ, CTでは膵管の拡張と膵実質の萎縮が認められた。術後2年目には膵内分泌能も低下し, 外科的ドレナージの時期も逸し現在に至っている。本術式のような臓器, 機能温存手術を施行するにあたっては, 術後長期管理をふまえたinformed consentが重要である。
  • 小林 英司, 原田 和博, 山崎 晶司, 徳江 章彦, 藤村 昭夫
    1997 年 22 巻 6 号 p. 967-972
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    近年, 患者に医薬品情報を提供し, 薬物療法に対してインフォームド・コンセントを得ることが重要であるとされている。著者らは, 癌治療薬 (経口抗癌薬または鎮痛薬) に関する情報提供のあり方を検討するために, 全国130カ所の地域医療施設に勤務する医師を対象に癌告知の現状を調査した。消化器癌, 呼吸器癌, 泌尿器癌, 婦人科癌, 脳腫瘍, その他の癌を扱う者がそれぞれ111, 55, 19, 12, 5, 49名であった (重複あり) 。癌治療薬使用にあたり病名を告知するか否かに関しては, 全例行うが6%, ケースバイケースが74%であり, 告知しないが17%であった。さらに自治医科大学臨床薬理学教室および同大薬剤部で行った「くすりのしおり」の経験をもとに地域医療の現場での今後の癌治療薬に関する情報提供のあり方について論じた。
  • 松田 公志
    1997 年 22 巻 6 号 p. 973
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
  • 恩田 貴志, 吉川 裕之, 武谷 雄二
    1997 年 22 巻 6 号 p. 974
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
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