日本外科系連合学会誌
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23 巻, 2 号
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  • 喜多村 陽一, 鈴木 博孝, 井手 博子, 鈴木 衛, 今泉 俊秀, 吉川 達也, 高崎 健
    1998 年 23 巻 2 号 p. 153-159
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    高齢者消化器癌の外科治療に関して, 検討を行った。今回, 高齢者群は75歳以上とし, それ未満を対照群として検討した。検討期間は過去10年間 (1981~1991年) とした。対象症例は食道癌756例で高齢者群は72例, 胃癌2,796例で高齢者群は285例, 大腸癌1,355例で高齢者群は174例, 肝臓癌は473例で高齢者群は11例, 胆道癌385例で高齢者群は45例, 膵頭部癌は221例で高齢者群は21例であった。検討は各臓器の手術法, 手術侵襲が大きく異なるため臓器別に行った。検討項目は, 術前の併存疾患, 癌進展の特徴, 術後合併症, 術後生存率などである。各臓器検討の結果, 以下の点が明らかとなった。1. 食道癌高齢者群は術前呼吸器障害を併存すると, 術後高度の呼吸器合併症を惹起させる率が高い。2. 胃癌高齢者群には対照群と比べて特徴的なことはなにもなかった。3. 大腸癌高齢者群は術後合併症発生率が高率であり, 特に呼吸器障害の発生率が高かった。4. 肝癌の高齢者群は対照例に比べHb陽性率が低く, 肝硬変併存例も少ないため, 広範な肝切除が術後合併症をともなわず可能であった。5. 膵頭部高齢者群は術後せん妄の発生頻度が高い以外特徴はなかった。このため, 食道癌の術前呼吸器障害併存例以外は, 高齢を理由に手術術式を考慮する必要は無い。
  • 富田 凉一
    1998 年 23 巻 2 号 p. 160-168
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2010/02/09
    ジャーナル フリー
    直腸癌手術において,リンパ節郭清程度,残存直腸の長さ,自律神経温存程度などの詳細な検討から,根治性とQOL(排便,性,排尿機能)の向上を目指したより良い術式の選択が可能となってきている。今回,直腸癌自然肛門温存術式である前方切除術について,良好な排便機能を得るために残存すべき直腸の長さ,更にこれに加え,良好な排尿・性機能も得るための側方リンパ節郭清の適応基準,および,いかなる自律神経温存術を各々の症例に合わせて選択すべきか,などについて概説を加えた。機械吻合器の進歩により結腸肛門吻合術は安全かつ容易に行われるようになったが,最近,貯留能確保のため新直腸をJ型結腸嚢としたJ型結腸嚢肛門吻合術が頻便やurgencyの予防に有効であることが報告されつつある。
  • 加納 宣康, 武士 昭彦, 笠間 和典, 渡井 有, 草薙 洋, 山田 成寿, 佐久間 隆, 増野 智彦, 内田 千博
    1998 年 23 巻 2 号 p. 169-172
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    現在の保険診療における内視鏡下手術の手術料についての問題点を明らかにしてその改善索を提案する。1996年6月から1997年3月までの10ヵ月間に当院で施行した腹腔鏡下胃部分切除術12例および腹腔鏡補助下結腸切除術21例を対象として, その手術材料費を分析した。腹腔鏡下胃部分切除術施行例のうち1ヵ所のみの切除に終わった例でも, 166,000円の材料費となり, 健康保険での手術料268,000円から差し引くと102,000円となり, 開腹による胃切除術 (良性) の178,000円をも下回った。内視鏡下手術についていえば, 材料費込みでの現在の健保での手術料は, 新しい高度な手技を習得した外科医の評価, および手術時間の延長など手術の困難性克服への評価を反映したものとはいえない。改善方法として以下の2点を提案する。1.健保診療での現在の内視鏡下手術の診療報酬点数は純粋な手術手技料とする。2.手術材料費は別途請求可とする。
  • 桜井 健一, 秦 怜志, 天野 定雄, 木村 知, 坂本 明子
    1998 年 23 巻 2 号 p. 173-177
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    術前未治療で術死を除いた食道扁平上皮癌64例において, 細胞周期制御因子であるcyclinD1蛋白, 増殖細胞核抗原 (proliferating cell nuclear antigen : PCNA) 蛋白の発現を免疫組織学的に検索し, 予後を含めた臨床病理学的因子と比較検討した。cyclinD1蛋白は30例 (46.9%) に発現が見られ, PCNA蛋白は全例に発現が見られた。cyclinD1蛋白の発現は組織学分化度において高分化型癌に陰性例が多く, 低分化型癌に陽性例が多かった。さらにリンパ節転移陽性症例に陽性例が多く, cyclinD1蛋白陽性群はPCNA蛋白の発現率が高かった。また, cyclinD1蛋白陽性群は群に比べて術後累積生存率が不良であった。cyclinD1蛋白の発現は, 食道扁平上皮癌における予後因子となる可能性が示唆された。
  • 山本 真, 上田 恵介
    1998 年 23 巻 2 号 p. 178-189
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    今回われわれは間欠的大動脈遮断法の主要機序としてischemic preconditioning (IP) に注目し、開心術をモデルとした犬実験系でIPが誘導されるか否かを検討した。 (方法) 体外循環下, 40分虚血を作成した後再灌流した群を対照群、40分虚血前に5分虚血-5分再灌流を3回反復した群をIP群とし体外循環離脱後の心機能, 心筋内ヌクレオチド変化および病理組織学的変化を両群間で比較した。 (結果) 体外循環離脱後, IP群は対照群と比較して良好な心機能を維持し, また心筋組織構造も良好に保存されていた。 (結論) 本実験におけるIP群の心筋組織構造の保存と心筋内ヌクレオチドの特徴的な変化とから, 短時間大動脈遮断の反復によるIPの誘導が示唆され, それによりglobal ischemiaにおける心筋組織のdamageが軽減されたと推測された。
  • 河内 和宏, 横手 祐二, 許 俊鋭, 上田 恵介, 朝野 晴彦, 田邊 大明, 尾本 良三
    1998 年 23 巻 2 号 p. 190-193
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    49歳以下の冠動脈バイパス手術のQOLを評価するため予後と就労状況に関し検討した。1981年以後の耐術115例を対象とした。遠隔死亡は12例で, 10年生存率は88%であった。生命予後不良の危険因子として不完全血行再建が挙げられた。現在の就労状況に関するアンケート回答者95名のうち, 離職は15例であり10年就労率は86%であった。現在就労している80例において, 手術後に肉体労働からデスクワークへ30例が変更した。これら労働内容を軽減化した症例では労働時間も有意に減少しており就労状況は不良と思われた。
  • 小坂 健夫, 上繁 宣雄, 瀬島 照弘, 菅谷 純一, 中野 泰治, 秋山 高儀, 冨田 冨士夫, 斎藤 人志, 喜多 一郎, 高島 茂樹
    1998 年 23 巻 2 号 p. 194-198
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    播種性転移を抑制することを目的に, 根治度Cを除く漿膜浸潤胃癌203例中54例を対象に, 手術時閉腹前の腹腔内にMitomycin C 20mg/m2およびcisplatin 30mg/m2を投与し, 体内薬物動態及び臨床効果を検討した。その結果, 各薬剤の血中のAUCとC maxは有効な濃度が得られた。予後では, 全症例では腹腔内化学療法 (以下IP) の有無別に差がなかったが, S2でIP施行例の予後が非施行例より良好な傾向を示した (p=0.15) 。さらに, S2症例に限り, 肉眼型別に検討すると, 浸潤型ではIP施行例の予後が有意に良好であった (p<0.01) 。S2かつ浸潤型に限り胃癌の再発形式を検討すると, IPの有無別に再発率や再発形式の頻度に差はなかった。以上から, 術中のIPは腹膜再発の抑制には効果がなかったが, とくに浸潤型の漿膜浸潤胃癌の生存期間を延長させる可能性が示され, 胃癌に対する局所療法として有用であること推測された。
  • 北村 正次, 荒井 邦佳, 岩崎 善毅
    1998 年 23 巻 2 号 p. 199-203
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    胃癌の腹膜播種によるイレウス52例を対象として手術術式の選択および外科治療の効果を経口摂取可能期間から検討した。術式の中では人工肛門造設術が42%と最も多く,次にバイパス術29%,腸管切除と人工肛門あるいは吻合術が15%であった。術式別の生存期間では人工肛門造設術が19カ月と最も長かった。術式別の経口摂取可能期間では切除術+αが13カ月と最も長かった。化学療法の有無別に経口摂取期間を比較すると,化学療法施行群の方が切除術+αと人工肛門造設術群で長かったが,症例の偏りが見られることより結論的なことは言えない。腹膜播種の形態と経口摂取可能期間の比較では直腸型が最も良好であった。以上,胃癌の腹膜播種によるイレウスに対しては,その患者に最も適した解除術を行うことにより経口摂取をはじめとするQOLの改善につながるものと考えられた。
  • 山村 卓也, 赤石 治, 月川 賢, 山口 晋
    1998 年 23 巻 2 号 p. 204-208
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    56例の大腸進行癌治癒切除例を対象として持続門注療法の肝転移再発予防効果および予後への影響を検討した。発生部位, Dukes分類などの背景因子に差はない。術直後より5FU350~500mg/m2/dayを7日間持続投与した。5FUの総投与量4g未満と4g以上に分けた。門注群全例の肝転移再発率は7.1%, コントロールでは16.0%で差はみられなかったが総投与量が4g以上では肝転移再発例は1例もなく, コントロールと比べ有意に低率であった。進行度別ではDukesCで4g以上投与の門注群の再発率が有意に低かった。4g以上投与例の5年生存率は92.8%でコントロールと比べ有意に高率であった。肝機能障害は軽度であった。以上より5FUの総投与量が4g以上の持続門療法は大腸癌術後の肝転移再発予防効果が極めて高く, 予後の向上に有効であることが示唆された。
  • 周術期の抗凝固療法管理について
    谷口 英治, 伊藤 壽記, 上池 渉, 岩瀬 和裕, 根津 理一郎, 西田 俊朗, 籾山 卓哉, 打越 史洋, 大竹 重彰, 瀧口 修司, ...
    1998 年 23 巻 2 号 p. 209-213
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    人工弁置換術後症例ではワーファリンを中心とした抗凝固療法が施行されているが, 比較的短時間の凝固能亢進でも重篤な合併症の発生する可能性が高いと考えられるため, 腹部手術を行う際には周術期においても抗凝固療法を継続して行う必要がある。一方, 腹腔鏡下手術においては, 止血手技の困難さゆえ, 従来, 易出血性疾患は禁忌とされていた。しかし腹腔鏡下手術手技の進歩とその低侵襲性の評価によりその適応は広がってきており, われわれは抗凝固療法施行症例に対しても積極的に同手技を導入している。今回, 人工弁置換術後症例に対する腹腔鏡下胆嚢摘出術 (LC) の成績をまとめ, 周術期抗凝固療法の問題点について検討した。LCを施行した人工弁置換術後症例は10例であった。ワーファンは術4日前に中止し, 出血時に中和したり止血後に再投与したりといった対応が可能な速効性のヘパリンを使用して手術を行った。合併症としては皮下血腫を2例, 創部皮下血腫に伴う創離開を1例に認めた。開腹手術に移行した症例はなく, その他, 術後腹腔内出血, 心肺機能障害や血栓形成に伴う合併症などは認めなかった。人工弁置換術後症例といえども, 注意深い抗凝固療法の継続により, 安全に腹腔鏡下手術が施行できると考える。
  • 福井 明
    1998 年 23 巻 2 号 p. 214-219
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    当院での2,000ml以上の術中出血症例に対する血液製剤使用の現状を過去10年間にわたり検討した。自己血輸血がある群では,ない群に比して同種血輸血使用量減少,術中出血量減少,ヒト赤血球濃厚液(CRC)投与を開始する時点での術中出血量の増加と同種血液輸血開始時のヘマトクリット値低下,CRCのcrossmatchtransfusion ratio(C/Tratio)低下を認めた。そして,自己血輸血が存在することは,術者並びに麻酔科医の輸血に対する意識の変化をもたらし,同種血輸血を可能な限り回避し,血液製剤の有効利用を行う努力をもたらした。しかし,予定・緊急手術別でC/Tratioを検討した場合,緊急手術症例でC/Tratioが高くなり,緊急手術時での準備血液量予想が困難であった。
  • 山田 直人, 内沼 栄樹, 村下 一晃, 新澤 博子, 根本 充, 三田 麻津子
    1998 年 23 巻 2 号 p. 220-224
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2010/02/09
    ジャーナル フリー
    身体各部の創傷に対する処置の基本な考え方はどの部位においても大きく変わるものではない。しかし頭部, 顔面, 頸部, 手, 躯幹, 下肢などの創傷処置の実際は, どこも同じかというと必ずしもそうではない。皮膚・皮下組織の厚さ, 解剖, 機能などをみても各部位では全く異なり, それぞれの部位に適した方法が要求される。頭部における創傷処置においてその多くは外傷によるもので, 局所の処置を行う前に頸椎, 頭蓋内損傷などの有無を確認する必要がある。局所処置では (1) 創部周囲の頭髪を十分に剃毛し, 創部を十分に確認できるようにする。 (2) 麻酔 (局所/全身) 施行後に創の深さ, 範囲, 組織損傷などの確認を行う。 (3) 混入した異物を摘出し挫滅された組織を切除する。頭皮に関しては血行がよいため過剰な切除はしない。 (4) 止血を十分に行い創閉鎖する。 (5) 創閉鎖時に単純縫縮ができないときは皮弁形成術や植皮術を用い, 必要に応じてドレーンを挿入する。以上が頭皮における創傷処置の基本的考えである。
  • 横山 利光, 中川 隆夫, 須賀 弘泰, 出口 善純
    1998 年 23 巻 2 号 p. 225-230
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    1991年より1997年5月まで当院救急部に入院した外傷総数は444例であり,このうち多発外傷症例は43例(男性28例,女性15例)であり,その平均年齢は50.6±22.8歳で,平均ISS,平均APACHEIIはそれぞれ,33.1±12.8,17.6±12.5であった。これらの症例を生存群,死亡群の2群に分け,それぞれの群で年齢,ISS,APACHEII,身体部位別のAIS,受傷身体部位数と死亡率,ACTH,TSH,cortisol,TBG,T3,T4,FT3,FT4値を測定し検討した。その結果,年齢では有意差がみられず,受傷身体部位数では受傷部位数が多いほど死亡率が高く,各身体部位別のAISでは頭頸部,胸部に,また,ISS,APACHEII,受傷より病院搬入までの時間,第0病日のTBG,T3,T4,FT4値にそれぞれ有意差が認められ,予後の示標として有用であると考えられた。
  • 川井 真, 大泉 旭, 原 義明, 加藤 宏, 野崎 正太郎, 山本 保博
    1998 年 23 巻 2 号 p. 231-236
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    多発外傷患者の初期診断は, 致死的病態とその合併損傷を瞬時に判断し, 治療しなければならず, 今だに挑戦的な事柄である。今回, 初期診断が困難であった問題例の原因究明および対処法を検討した。missed injury症例は, 14例 (2%) /574例であり, ISS;13~50 (平均26.9±13.6), ショック例;7例, GCSは, 4~15 (平均10.4±4.4), 部位は, 上位頸椎に多く, その他は四肢の転位の少ない骨折が多かった。原因は, 意識障害患者や循環動態の不安定な患者が多くISSも高かった。予防するには, 全身状態が安定した時期や意識が改善したときに再度繰り返し診察および画像診断を行うことが大切である。
  • 沖 貞明, 柴田 大法, 石丸 公平, 首藤 貴
    1998 年 23 巻 2 号 p. 237-243
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    四肢の骨原発性悪性腫瘍の治療としては, 過去には切断術が行われるのみであった。近年発達してきた患肢温存手術により, 術後のQOLの向上が得られたかどうかを調べる目的でretrospectiveに調査した。短期のQOLを手術後1-2年における日常生活への復帰の状態から調べ, 長期のQOLを日常生活・心理的・社会的側面に関して調べた。調査の結果, 短期・長期とも患肢温存手術症例のほうが切断術症例よりも高いQOLを得ていた。しかし骨原発性悪性腫瘍のうちでも骨肉腫による切断術症例を, 外傷による切断術症例と比較すると, QOLに差は認められなかった。
  • 中川 隆雄, 横山 利光, 須賀 弘泰, 津田 武嗣, 藤田 邦博, 出口 善純, 村岡 隆介
    1998 年 23 巻 2 号 p. 244-249
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    大学での卒後救急医学教育の一環として, 研修医の救急部ローテイト研修を行い, 救急部専任医師5名と研修医数名による24時間の救急医療体制を組んだところ, 救急患者数は大幅に増加した。研修医の救急部ローテイト研修 (2カ月) の成果を日本救急医学会認定医療診療実績表で評価したところ, 手技の評価に不満が残るが, 知識, 症例経験の各項目はほぼ満足できる評価であった。救急部ローテイト研修を終了した医師へのアンケート結果では, ローテイト研修は, 有意義で現在の診療に役立っているとする意見がほとんどであった。以上の結果から, 大学救急部での卒後救急医学教育は可能で, 研修医も救急部研修の意義を評価していることが明らかになった。今後, 卒後救急医学教育を充実させるためには, より多くの救急患者を確保するための大学全体でのシステム作りが必要と考えられる。
  • 鈴木 茂彦, 新家 佳代子, 河合 勝也, 西村 善彦
    1998 年 23 巻 2 号 p. 250-254
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    頚部の重度瘢痕拘縮の解除後の再建には, 採皮部の犠牲が少なく, おとがい部から頚部へかけての側貌のアングルが得られやすいことから, 遊離皮弁, 遠隔皮弁よりも植皮が好ましい。植皮による再建を成功させるには術後の再拘縮をいかに防止するかがポイントとなる。そのためには皮膚切開線を側正中部よりも後ろまで入れ, 完全に拘縮を解除した上で植皮を行うことが必要である。さらに術直後から, 植皮片の収縮を予防するための後療法を開始することが必要である。
  • 上田 順彦, 小西 一朗
    1998 年 23 巻 2 号 p. 255-259
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    過去4年2カ月間に著者が主治医となった消化器癌のうち,退院後に施行したアンケートが回収された112例を対象として癌告知の問題点を検討した。対象症例を告知方法により以下の3期に分類した。家族と相談の上で患者への告知内容を決定した時期を第I期(88例),事前に患者に病状説明に関する意識調査を行い,その結果と家族の意向で患者への告知内容を決定した時期を第II期(18例),事前の意識調査の結果に基づき,まず患者に説明を行い,その後家族に対して説明を行った時期を第III期(6例)とした。第1期から第III期になるにしたがって告知率は64%,89%,100%と上昇した。とくに第III期では全例本人の希望に沿った情報提供をおこなうことができた。以上よりICの基本理念に沿った告知を実践するには,医療の情報提供から家族に対する説明内容まで患者本人の意向を最優先する必要があると考えられた。
  • メッシュプラグ法
    西口 幸雄, 長山 正義, 金村 洙行, 加藤 保之, 澤田 鉄二, 曽和 融生
    1998 年 23 巻 2 号 p. 260-266
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    再発例7例を含む成人鼠径ヘルニア50例を対象として,外来にて局麻下メッシュプラグ法でのsame day surgeryを行い,若干の知見を得たので報告した。手術方法は、局所麻酔後, ヘルニア門の露出とヘルニア嚢の遊離後, ヘルニア嚢が翻転するようにメッシュプラグを挿入し, プラグを2-3針固定し, 腹壁を閉鎖し手術を終了する。その結果, 全例局所麻酔で手術が完遂され, 手術時間は平均55分であった。術後合併症は術後皮下出血2例と創感染1例を認めたが, 全例とも再発はみられなかった。成人鼠径ヘルニアに対するBassiniやiliopubic tract法などの従来からある手術は, 入院の上術後1カ月程度は十分に労働ができない。また腹腔鏡下手術は術後QOLは良好であるが, 全身麻酔を要し手術の習熟に時間を要する。一方, メッシュプラグ法はプラグの挿入と固定だけでよく, 従来の手術に比して容易であり, same day surgeryが可能で, 術後QOLも良好な事から有用な手術方法であると思われた。
  • 鶴井 裕和, 中島 祥介, 久永 倫聖, 庄 雅之, 蜂須 賀崇, 中野 博重, 市島 國雄
    1998 年 23 巻 2 号 p. 267-271
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    原発性横隔膜腫瘍はまれな疾患である。今回われわれは, 原発性横隔膜神経鞘腫の1切除例を経験した。症例は37歳, 女性。1996年5月に胸痛を主訴に近医受診。諸検査の結果, 後腹膜腫瘍と診断され, 手術目的で当科入院となった。同年6月10日, 開胸開腹による腫瘍摘出術施行。腫瘍は横隔胸膜と壁側腹膜に覆われており, 横隔膜原発腫瘍と診断した。腫瘍は重量980g, 大きさは14×14×10cm, 灰白色の被膜に覆われており内部は淡黄色であった。免疫染色の結果, schwannomaと診断された。自験例は, 原発性横隔膜腫瘍では本邦報告80例目, 横隔膜神経鞘腫では6例目にあたると考えられる。原発性横隔膜腫瘍80例では, 組織学的には良性は嚢腫が, 悪性は横紋筋肉腫が最も多かった。術前診断は未だ困難であり, 悪性40例の予後は極めて不良であった。従って, 治療は腫瘍の完全摘出が最善であると考える。
  • 笠巻 伸二, 川瀬 吉彦, 安田 一彦, 西村 和彦, 森脇 稔, 杉谷 通治
    1998 年 23 巻 2 号 p. 272-276
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    術前検査で診断しえた回腸悪性リンパ腫の1例を経験した。症例は67歳男性で主訴は右腹部痛。腹部CT・MRI・小腸二重造影・Gaシンチ検査で画像診断上回腸悪性リンパ腫が疑われ, 大腸内視鏡下生検で術前に確定診断しえた。手術は回盲部切除・回腸広範囲切除・リンパ節郭清術を施行した。病理組織学的検査でmalignant lymphoma (B cell type), diffuse typeと診断された。
  • 高瀬 真, 長尾 二郎, 斉田 芳久, 草地 信也, 柁原 宏久, 炭山 嘉伸, 石塚 俊一郎, 吉本 一哉, 高橋 啓, 木庭 郁朗
    1998 年 23 巻 2 号 p. 277-281
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    近年,大腸内視鏡検査は広く普及し,さらに深達度診断として超音波プローブを用いた内視鏡的超音波断層法が施行されるようになり,術前に,より正確な深達度診断が可能になってきた。今回われわれは術前に内視鏡的三次元超音波断層法(以下3-DEUS)を施行し,腹腔鏡下手術にて切除し得た盲腸mp癌症例を経験したので報告する。症例は47歳男性であり,便潜血陽性のため近医で精査目的で大腸内視鏡を施行された。内視鏡にて盲腸部のIIa+IIc型癌との診断にて手術目的で当院紹介入院となる。術前3-DEUSにてsm深層までの浸潤を認めた。平成9年4月1日D2郭清を含む腹腔鏡下回盲部切除術を施行した。摘出検体の組織学的検索では,大きさ17×15mmの高分化型腺癌でありsm層の広範な進展による圧排性浸潤に加え,mp浅層への浸潤を伴っていた。
  • 肝転移巣切除の意義についての検討
    柳田 龍一, 佐藤 勤, 浅沼 義博, 古屋 智規, 三毛 牧夫, 小山 研二
    1998 年 23 巻 2 号 p. 282-287
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    小腸平滑筋肉腫切除後の再発部位としては, 肝転移が最も多い。今回われわれは回腸平滑筋肉腫切除から2年8ヵ月後に肝転移をきたした症例を経験し, これに対し肝切除を行った。これまでに報告されている小腸平滑筋肉腫肝転移切除13例の予後を調査し, 肝切除の意義について検討した。その結果, (1) 肝切除を行った症例はすべて1年以上生存していた。 (2) 肝切除後の無再発例は認められなかった。 (3) 肝転移巣が単発のものは多発例に比較し長期生存していた。 (4) 長期生存例は肝切除後の再発巣に対して再切除を行った症例であった。以上から, 小腸平滑筋肉腫肝転移に対して肝切除を行う意義はあるが, 切除後の再発は高頻度である。しかし, 肝切除後の再発巣に対し再切除を行うことで, 患者の延命を図ることが可能と考えられた。
  • 平野 正満, 藤村 昌樹, 木下 隆, 山本 育男, 西 崇男, 廣川 隆一, 小川 勝彦
    1998 年 23 巻 2 号 p. 288-291
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2010/02/09
    ジャーナル フリー
    精神遅滞 (精神発達年齢0.5~3歳) を有する重度心身障害者の6例に腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した。手術適応は患者の症状を正確に把握できないため腹部超音波所見に基き決定した。患者は脳性麻痺による運動障害の他, てんかんや緑内障, 副甲状腺機能低下症などを合併していた。術後は術翌日から食事を開始し早期離床に努めた結果, 術後合併症はなく術後在院日数は平均2.5日であった。重度心身障害者における胆石症治療には腹腔鏡胆摘術が良い適応と考えられた。
  • 松友 寛和, 飯田 豊, 松原 長樹, 嘉屋 和夫
    1998 年 23 巻 2 号 p. 292-296
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は58歳,女性。1995年12月に他院で腹腔鏡下胆?摘出術を施行されているが,1996年9月初旬より,臍左側の腹壁腫瘤に気付き当科を受診した。腹部CTでは,臍左側の皮下脂肪織内に円形の異常影を認めた。腹壁瘢痕ヘルニアと診断し,手術を施行した。脱出部位は腹腔鏡を挿入した手術瘢痕の直下で,筋膜欠損部は拇指頭大,脱出臓器は大網であった。欧米での報告では腹腔鏡下胆?摘出術後における腹壁瘢痕ヘルニアの発生頻度は0.05%から0.77%,発生までの期間は平均8カ月,全例が10mm以上のトロッカーを留置した創部に発生したとされている。筋膜欠損部が小さい場合,腸管壁の一部が嵌頓するいわゆるRichter型ヘルニアを発生することが多く,報告例も散見されるようになっている。自験例では腸管の陥入を認めなかったが,10mm以上のトロッカーを留置した部位の筋膜はすべて縫合閉鎖すべきと考えた。
  • 森脇 稔, 笠巻 伸二, 川瀬 吉彦, 野口 肇, 安田 一彦, 西村 和彦, 杉谷 通治, 豊田 忠之, 岡野 匡雄
    1998 年 23 巻 2 号 p. 297-302
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    膵腺扁平上皮癌は, 膵癌のなかでも比較的稀で, その頻度は, 1.6~4.2%までといわれている。今回われわれは, 左腰背部痛にて入院し, 術前診断に苦慮し, 術後の病理組織検査にて判明した, 膵腺扁平上皮癌の1例を経験したので報告する。症例は58歳男性で, 左腰背部痛を主訴に当科入院する。入院後38.0℃以上の発熱が続いたが, 腹部CT検査にて, 膵尾部に内部がlow densityの大きな腫瘤陰影を認め, ERCP検査にても, 主膵管の膵尾部に向かう部分の途絶があり, 腹部血管造影でも, 脾動脈にencasementを認めた。以上より, 内部がabscess様になった膵尾部の膵癌を疑い, 手術を施行した。術後の病理組織検査にて, 稀な膵腺扁平上皮癌と判明した。
  • 山内 希美, 田辺 博, 可知 宏隆
    1998 年 23 巻 2 号 p. 303-307
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    近年, 画像診断の進歩により外傷性脾損傷の存在については比較的容易に診断が可能となったが, 合併症の有無も含めて手術適応については苦慮することが多く, 特に小児例については手術術式に対しても問題点が多いと考えられる。今回, われわれは1986年から1996年までに手術を必要とした小児外傷性脾損傷の3例について検討した。症例1;10歳, 男児。鉄棒より落下し, 左側腹部を強打した。脾は脾門部より完全離断しており, 脾損傷分類IIIb+HV型であり, 脾臓摘出術を施行した。症例2;4歳, 女児。自動車事故にて腹部を打撲した。小腸穿孔と脾損傷分類II型を認め, 小腸穿孔部閉鎖術および脾縫合修復術を施行した。症例3;4歳, 男児。父親と遊んでいて, 腹部を打撲した。脾損傷分類IIIa型を認め, 脾縫合修復術を施行した。小児期における脾損傷は身体的予備力が少なく, 急速に悪化するため早急な対応がせまられる。脾の免疫学的機能を考慮して的確に対応する必要がある。
  • 村國 均, 柴 忠明, 小澤 哲朗, 山口 宗之, 蛭田 啓之, 亀田 典章
    1998 年 23 巻 2 号 p. 308-312
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    48歳の女性。鈍痛を伴う下腹部腫瘤で受診。US,CT,MRIなどにより後腹膜漿液性嚢胞を疑い開腹した。9×7×11cm大の単房性嚢胞で周囲組織との癒着はなく摘出は比較的容易であった。術後の嚢胞内容液のCEA,CA125を測定したところ著明に増加していた。組織学的には嚢胞壁は異型性のない単層円柱上皮に被われた嚢胞腺腫であった。免疫組織学的検討によりCEA,CA125ならびにCA19-9は嚢胞壁に陽性であった。組織学的に良性であることから発生起源としてミュラー管などの胎生期遺残物の関与を想定している。
  • 山吹 啓介, 須磨 幸蔵
    1998 年 23 巻 2 号 p. 313-315
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    末梢血管疾患のうちでも比較的稀な, 先天性の上肢, 体幹部の血管形成異常の1例を経験したので報告する。症例は42歳男性で, 右上肢の静脈怒張を主訴に来院した。同部位に血管雑音を聴取し, 右上肢は左上肢に比べ発達が良好であった。外傷の既往はなかった。血管造影, CT, MRI施行し, 右鎖骨下動脈, 腋窩動脈, 上腕動脈領域に, 動静脈間に交通を持ち, 腫瘤様に発達した血管形成異常を認めた。手術適応と判断し, 2期的に流入動静脈の結紮切離術を施行した。右上肢の機能は温存され, 患者は現在外来通院中である。
  • 自律神経温存手術兼J型S状結腸嚢肛門吻合術の工夫
    藤崎 滋, 富田 凉一, 柴田 昌彦, 桜井 健一
    1998 年 23 巻 2 号 p. 316-320
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    下部直腸癌患者の術後の排便機能障害及び排尿・性機能障害の軽減を目的とした自律神経温存手術兼J型S状結腸嚢肛門吻合術の適応および手術手技の工夫について述べる。本術式の適応は, 上方向および側方リンパ節転移が陰性, 壁深達度がMP以下, AWが2cm確保できる限局型下部直腸癌で, 組織型が高分化あるいは中分化腺癌であることである。便貯留能確保のために結腸嚢はS状結腸を用いている。下腸間膜動脈・左結腸動脈・S状結腸動脈を温存し, S状結腸嚢の血行を可及的に温存するべく努める一方, 下腸間膜動脈根リンパ節253番・下腸間膜動脈幹リンパ節252番のすだれ状郭清を行い根治性にも配慮している。同時に, 術後の排尿・性機能障害の軽減目的で行っている自律神経温存手術も, 根治性に十分配慮し完全な側方郭清を行っている。本術式は, 直腸癌の根治性を損なうことなく, かつ直腸癌に特有な排便機能障害や排尿・排尿性機能障害等の術後のQOLの低下を軽減しうる術式と考えられる。
  • 齋藤 英昭
    1998 年 23 巻 2 号 p. 321
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
  • 林 成之
    1998 年 23 巻 2 号 p. 322
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2009/08/13
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