日本外科系連合学会誌
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23 巻, 5 号
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  • 三方 律治
    1998 年 23 巻 5 号 p. 747-751
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    泌尿器科患者544症例の, 1,144血清については前立腺特異抗原を2抗体法, 固相法およびタンデム法で同時に測定して, 3測定法による前立腺特異抗原値を比較検討した。固相法=1.85+1.25×2抗体法 (r=0.645), タンデム法=0.29+1.39×2抗体法 (r=0.914) および固相法=-1.15+1.11タンデム法 (r=0.939) の強い正の相関をしめしたが, 前立腺特異抗原の濃度別に検討するとその回帰係数は一致するものが少なかった。前立腺癌症例の治療による前立腺特異抗原値の変化をみると, 各症例毎の3測定法間の回帰直線は一致するものが例外的であった。
  • 石井 洋光, 畑田 卓也, 一井 重利, 岡田 薫, 山村 武平
    1998 年 23 巻 5 号 p. 752-756
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    1978年から1996年までの23年間に教室において経験した乳癌手術症例 (393例) の内, 原発性両側性乳癌の臨床的特性を検討した。比較対象としたのは一側性乳癌である。原発性両側性乳癌の発生頻度は15例 (3.8%) であった。そのうち, 同時性は3例 (0.8%), 異時性は12例 (3.0%) であった。同時性の手術時平均年齢は, 52.7歳で異時性の平均年齢は第1癌42.8歳, 第2癌50.9歳であった。第2癌の発症の累積頻度は, 第1癌術後10年目までに86.7%であったが, 20年以上の症例が2例認められた。臨床的特徴として原発性両側性乳癌は, 一側性乳癌に比して家族内および若年発症, さらには他臓器癌との合併頻度が有意に高率であった。
  • 単発性と多発性の比較検討
    服部 良信, 杉村 修一郎, 入山 正, 渡辺 浩次, 根木 浩路, 山下 満, 武田 功, 須田 隆, 杉村 裕志, 星野 竜, 山本 徹
    1998 年 23 巻 5 号 p. 757-761
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    1985年1月より1995年12月に, 当科で手術を施行した転移性肺腫瘍の多発群19例と単発群23例を検討した。年齢は多発群平均55.2歳, 単発群平均56.4歳。原発巣の手術から肺転移が発見されるまでの期間 (DFI) は多発群平均31.8ヵ月, 単発群平均24.6ヵ月であった。多発群が部分切除10例, 肺葉切除術以上9例, 単発群が部分切除13例, 肺葉切除術以上8例であった。5年生存率は全症例では57.5%, DFIが1年未満では60%, 1年以上2年未満では58%, 2年以上では59%で, 多発群では48%, 単発群では71%であった。多発群の5年生存率は男性70%, 女性0%で, 単発群では男性69%, 女性75%であった。多発群でのDFIが1年未満は75%, 2年以上では0%であった。単発群でのDFIが1年未満は75%, 2年以上では64%であった。多発群の一側性は78%, 両側性は25%であった。多発性転移性肺腫瘍においても, 手術的に切除可能であれば, 積極的に手術療法を考慮すべきと考える。
  • 吉住 豊, 杉浦 芳章, 愛甲 聡, 小池 啓司, 田中 勧
    1998 年 23 巻 5 号 p. 762-765
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    1995年迄の17年間に防衛医科大学校第2外科で切除再建術を施行した食道浸潤噴門部腺癌105例を対照とし, 食道浸潤長が, 1-20mm迄をI群 (I a群 : 1-10mm, I b群 : 11-20mm), 21-40mmをII群, 41mm以上をIII群に分類し臨床病理, 手術成績, 外科治療上の問題点等について検討した。 (1) 食道浸潤長は3-80mmで平均21mmであった。 (2) 開胸を付加する事によりow (+) のみで非治癒切除となることをほとんど回避できる。 (3) 縦隔リンパ節転移は食道浸潤長が長くなると転移率が高くなるが, 転移陽性例は腹腔内リンパ節転移を有する事から, まず, 腹腔内リンパ節郭清に重点をおくべきである。 (4) 食道浸潤長が長くなるにしたがい生存率が低下するが, その主因は根治度C症例が多くなるためであった。根治度が同一であれば生存率に差を認めないので, H, P, N等で明らかな非治癒因子のない症例では食道浸潤長が長くとも, 十分な食道切除・縦隔・腹腔内リンパ節を行うべきである。
  • 肥田 圭介, 池田 健一郎, 佐藤 信博, 大塚 幸喜, 青木 毅一, 木村 祐輔, 岩谷 岳, 石田 薫, 斎藤 和好
    1998 年 23 巻 5 号 p. 766-771
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    CYFRA 21-1の食道扁平上皮癌における腫瘍マーカーとしての臨床的有用性を検討することを目的に, 食道扁平上皮癌初発59例, 再発7例を対象に血清CYFRA 21-1値を測定し, SCC antigen, CEAと臨床病理学因子および治療効果との関連について比較検討した。初発例での陽性率はCYFRA 21-1 42.4%, SCC antigen 27.1%, CEA 28.8%で, CYFRA 21-1の進行度別陽性率は Stage0, I 14.3%, StageII 22.2%, StageIII 42.3%, StageIV 88.9%であった。血清CYFRA値はT4, N1, M1でT3以下, N0, M0例に対し有意な高値を認めた。術前CYFRA 21-1陽性例はすべて術後正常値以下に低下し, 放射線化学療法施行例では奏効例において有意な低下が認められた。以上より, 食道扁平上皮癌においてCYFRA 21-1は治療前進行予測および治療効果判定において有用な腫瘍マーカーと考えられた。
  • 斎藤 正行, 三浦 一浩, 小川 健治
    1998 年 23 巻 5 号 p. 772-779
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    がんの浸潤, 転移にはMMP-2やTIMP-2の関連が予測される。そこで, 胃癌原発巣と所属リンパ節におけるMMP-2, TIMP-2遺伝子の発現をRT-PCR法で検索し, その発現状況やリンパ節転移との関連を検討した。MMP-2 mRNAはがん部で, TIMP-2 mRNAは逆に非がん部で高い発現がみられた。がん部について, リンパ節転移陽性例ではMMP-2 mRNAは高発現する一方TIMP-2 mRNAの発現は低下した。陰性例ではMMP-2 mRNAは高発現したがTIMP-2 mRNAの発現は保たれていた。転移陽性リンパ節では, MMP-2 mRNAの発現は原発巣と差はなかったがTIMP-2 mRNA発現は低下していた。陰性リンパ節では, 両者の発現は原発巣と差はなくTIMP-2 mRNAの発現が優位であった。以上より, 胃癌のリンパ節転移の形成には, 胃癌組織におけるMMP-2, TIMP-2 mRNAの発現とそのバランスがつよく関連すると考えられる。さらに, リンパ節転移巣の浸潤, 転移能は, 原発巣よりも高いことが示唆される。
  • 阪口 晃行, 渡辺 明彦, 澤田 秀智, 山田 行重, 江本 宏史, 平尾 具子, 中野 博重
    1998 年 23 巻 5 号 p. 780-783
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    当科で経験した残胃の癌手術症例21例を臨床病理学的に検討した。初回病変は良性15例, 悪性5例, 乳頭部癌 1例で, 初回術式はBillroth I (BI) 法6例, Billroth II (BII) 法13例, 分節的胃切除術1例, Roux-enY法1例であった。介在期間は良性群, 特に, BII良性群が22.2年と長かった。発生部位を初回術式別にみると, BII群では有意に吻合部に発生した癌が多くみられた。組織学的分化度については, 吻合部癌は他の部位の癌より未分化癌が多い傾向にあった。予後は, 根治度Cの症例は当然のことながら不良であったが, 根治度A, Bの症例の5年生存率は74%と良好であった。したがって, 残胃の癌は治癒切除ができれば, 良好な治療成績が得られると考えられ, 胃切除後の患者に対しては早期発見および治療成績の向上のため長期にわたっての定期的な経過観察が重要である。
  • 篠塚 望, 小山 勇, 鈴木 義隆, 中村 聡美, 小川 展二, 大塚 健二, 沼尻 良克, 渡辺 拓自, 大畑 昌彦, 安西 春幸, 山崎 ...
    1998 年 23 巻 5 号 p. 784-788
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    肝硬変症計40例に対し, 超音波ドプラ法を用いて肝静脈血流を分析し, 慢性肝炎群および健常人群と比較した。中肝静脈における平均血流速度は肝静脈中枢側では群間で差を認めなかったが, 末梢側では肝硬変群が健常人群に比し有意に高値を示した。また, 肝硬変群における平均血流速度はICGR15と負の相関を示した。肝静脈流速波形の分析では, 肝硬変群における末梢側の拡張期最高速度は健常人群に比し有意に高値を示し, また収縮期最高速度と拡張期最高速度との差, および比は健常人群が有意に高値を示した。肝硬変群におけるchild-pugh分類と肝静脈流速波形との間には明らかな関係は認めなかった。肝硬変症では肝の末梢レベルにおいては, 肝の線維化の影響により肝静脈血流に変化をきたしている可能性が示唆された。
  • 吉本 次郎, 北畠 俊顕, 岩田 豊仁, 高森 繁, 渡邊 心, 児島 邦明, 深澤 正樹, 別府 倫兄, 二川 俊二
    1998 年 23 巻 5 号 p. 789-794
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    p53, c-myc遺伝子に関して癌遺伝子産物の染色を行い, 肝細胞癌の予後判定因子としての有用性を検討した。対象は教室で施行した肝切除例のうち, 病理組織学的に変性壊死のない52例である。肝細胞癌の分化度別にp53染色の陽性率を比較してみると, 分化度が低くなるにつれ, 陽性率は高値を示した。またp53染色陽性症例では陰性症例と比較し, 増殖活性を示すKi-67 labeling indexは有意に高値を示した。p53染色陽性例と陰性例で累積生存率を比較してみたが有意差は認められなかった。しかし, c-myc染色陰性症例でp53染色陽性例と陰性例の累積生存率を比較してみると, 陰性症例で有意に高値であった。以上よりp53・c-myc蛋白染色は予後判定因子として有用であることが示唆された。
  • 高橋 禎雅, 若原 正幸, 梅本 敬夫, 深田 代造, 佐治 重豊
    1998 年 23 巻 5 号 p. 795-802
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    原発性肝癌症例で, 術前TAEによる腫瘍壊死部が比較的軽度な43例を対象に, 癌部と非癌部におけるproliferating cell nuclear antigen (PCNA) と変異型p53蛋白 (p53) を免疫組織学的に検索し, 臨床病理学的因子や予後との関連を比較検討した。その結果, 1) HCV陽性者でアルコール過飲歴有り群は無し群に比べ有意に硬変併存率が低く, 腫瘍最大径が大きく, PIVKA2陽性率が高かった。2) PCNA labeling index (LI) 値は癌部が非癌部に比べ有意に高く, 非癌部ではアルコール過飲歴有り群は無し群に比べ有意の低値を示した。3) 変異型p53蛋白は癌部で27.9%が陽性で, 非癌部では全例陰性であった。4) 癌部でp53陽性例のLI値は陰性例に比べ高値を示し, HCV陽性例は陰性例に比べ有意に予後不良であった。以上の結果, 肝癌症例に対しPCNAやp53蛋白発現の有無を検索することは, 残肝再発や予後予測に有用である可能性が示唆された。
  • 竹内 賢, 渡辺 敦, 浦野 正人, 加藤 元久, 宮 喜一, 佐治 重豊
    1998 年 23 巻 5 号 p. 803-809
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    教室では凍結融解処理肝組織 (freeze-thawed hepatic tissue : FTHT) をラット皮下に移植・前感作することによりナチュラル型の肝細胞増殖因子 (HGF) が誘導されることを明らかにし, 脾内移植肝細胞の増殖促進効果, 部分肝切除後の肝再生促進効果, 四塩化炭素肝障害に対する肝保護作用, などについて検討し先に報告してきた。今回, FTHT前感作による脾内移植肝細胞に免疫組織学的検索を加え, その生着状態をApop Tagとbcl-2染色から, 増殖促進程度をPCNAと変異型p53染色から推察した。その結果, FTHT前感作により誘導されるHGF様因子は, 移植肝細胞のアポトーシスを抑制することにより生着肝細胞数を増加させ, 結果的に肝細胞の増殖促進と保護作用が誘起される可能性が推察された。
  • 勝又 健次, 山本 啓一郎, 葦沢 龍人, 壽美 哲生, 村野 明彦, 山下 晋矢, 三坂 武温, 森 康治, 北村 慶一, 小柳 泰久
    1998 年 23 巻 5 号 p. 810-814
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    大腸疾患26例に対して腹腔鏡下手術を行い, 低侵襲手術としての利点について合併症を認めなかった腺腫・stage I症例で開腹手術を行った14例を対照として検討した。腹腔鏡下手術は手術時間は開腹手術例と比較して有意に長い傾向にあった (p<0.01) 。26例中5例に術後腸閉塞などの合併症を併発し, 26例全例と開腹手術例と比較して食事開始時期・入院期間・診療点数などに差を認めないが, 合併症を認めない21例ではいずれにも有意差 (p<0.01) を認め, 腹腔鏡下手術の利点が認められた。前期症例と後期症例を比較すると食事開始時期, 入院期間などに有意差を認め (p<0.01), 手術手技の技術的問題も改善していた。癌手術としてD2郭清を16例中11例に行い, 再手術症例は2群リンパ節転移を認めた1例で再発例は認めない。以上より腹腔鏡下手術は低侵襲手術としての意義が認められ, 癌手術としての郭清も充分行われるものと考えられた。
  • 須郷 広之, 岩田 豊仁, 児島 邦明, 深澤 正樹, 別府 倫兄, 二川 俊二
    1998 年 23 巻 5 号 p. 815-818
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    嚥下時の違和感を初発症状とした機能性上皮小体嚢腫の稀な1例を経験したので報告する。症例は68歳女性, 主訴は嚥下時違和感。頸部に腫瘤は触知されなかったものの, 食道造影で頸部食道の壁外性圧排所見と, MRI検査で同部位に一致する3×5cm大の嚢胞性腫瘤を認めた。また上皮小体シンチグラムではこれに一致する強い集積を認め, 血液検査では上皮小体機能亢進を認めた。以上の所見から機能性上皮小体嚢腫を疑い摘出術を施行した。自験例は上皮小体機能亢進を伴うこと, 嚢胞内容の性状, また病理検査所見から上皮小体腺腫の腺腫内出血による二次的嚢胞性変化を呈した機能性上皮小体嚢腫と考えられた。本症は稀な疾患であるものの, 上皮小体機能亢進と特徴的な画像所見が術前診断に役立つものと思われた。
  • 小村 伸朗, 柏木 秀幸, 青木 照明, 森永 泰良
    1998 年 23 巻 5 号 p. 819-823
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    吐血のみを主訴とし, 胃食道逆流症状を認めない逆流性食道炎合併の広範囲Barrett食道の1症例を経験した。症例は59歳, 男性。吐血を主訴に来院した。上部消化管エックス線造影では横隔膜上3cmの滑脱型食道裂孔ヘルニアを認め, 内視鏡検査では切歯列より約25cmまで全周性に連続するルゴール不染の円柱上皮が観察された。また正常食道粘膜との境界にはSavary & Miller III度, Los Angeles分類grade Dの食道炎を認めた。さらに食道内pHモニタリング検査ではpH<4時間は31.8%と著明に延長していた。以上より, 吐血の原因はBarrett食道口側の逆流性食道炎であると診断し, 胃食道逆流症状は認めないものの手術適応と判断した。腹腔鏡下Nissen噴門形成術を施行後, 食道炎は治癒しpH<4時間も5.7%まで減少した。Barrett食道長に関しては今後長期的な経過観察を実施する予定である。
  • 小西 一朗, 上田 順彦
    1998 年 23 巻 5 号 p. 824-827
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    狭窄型虚血性小腸炎 (以下, 本症) の1例を経験した。症例は55歳, 男性。主訴は右側腹部痛。2ヵ月前に突然主訴を認め, 近医にて治療を受けるも軽快せず, 精査のため当院に入院した。血液, 尿検査成績は正常範囲内であったが便潜血反応が陽性であった。腹部US, CT, 上部・下部消化管検査で異常はなく, 小腸造影にて回盲部近傍に限局性の狭窄像が認められた。狭窄部を含めた小腸部分切除術を施行した。組織学的に, 全周性のUL-IIの潰瘍とその底部に小円形細胞浸潤を伴う肉芽組織が認められた。小腸間膜の動脈には, 内弾性板が途切れその内側には繊維化がみられ, 閉塞した動脈内腔に再疎通を示す血管が認められた。以上より, 本症と診断された。予後は良好で, 7年6ヵ月を経て再発はなく健在である。
  • 横山 正人, 成高 義彦, 細川 俊彦, 梶原 哲郎, 高橋 宣胖
    1998 年 23 巻 5 号 p. 828-832
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    悪性線維性組織球腫malignant fibrous histiocytoma (MFH) は軟部組織悪性腫瘍のうち最も頻度の高いものとされている。しかし, 消化管に原発するMFHは稀なもので, 本邦での報告例も少ない。今回, われわれは消化管穿孔という特異的な形で発症した小腸, 腸間膜原発と思われるMFHの1例を経験した。外科的広範囲切除および補助化学療法にて良好な結果がえられたので, 若干の文献的考察を加えて報告する。
  • 野中 健一, 阿部 達彦, 小林 浩司
    1998 年 23 巻 5 号 p. 833-836
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は, 82歳の女性。腰痛を主訴に当院整形外科へ来院。骨粗鬆症の診断にて入院加療を開始されたが, 疼痛, 発熱は軽快しなかった。骨盤部CTにて左腸腰筋内と左腰背部にガス像を認め, MRIでは左腸腰筋大腿骨頭付近の腫脹と変性がみられた。以上より左腸腰筋膿瘍の診断で, 腹膜外経路にて病巣郭清術とドレナージ術が施行された。術後, 再び症状が増悪し, 腸骨部の皮下に便臭を伴う膿の貯留を認めたため当科転科となった。膿瘍腔造影を行ったところ, 左結腸への造影剤の流入を認め, 大腸穿孔による腸腰筋膿瘍と診断した。人工肛門造設術と膿瘍腔ドレナージを施行し, 症状は消失した。自験例は原因不明の発熱と腰痛がある場合には, 腸腰筋膿瘍も念頭におき, 消化管の精査を行う必要があることを示唆した症例と考えられた。
  • 松友 寛和, 飯田 豊, 松原 長樹, 嘉屋 和夫, 森 美樹
    1998 年 23 巻 5 号 p. 837-841
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    特発性大腸穿孔10例について検討した。3対7で女性に多く, 平均年齢は72.8歳であった。穿孔部位は横行結腸1例, S状結腸7例, 直腸2例であり, 発症から手術開始までの時間は1時間から21時間, 平均7時間20分であった。術式は, loop colostomy 7例, Hartmann手術2例であった。横行結腸穿孔の1例は穿孔部切除と一期的吻合を施行した。死亡例は3例で, いずれも敗血症から多臓器不全に陥り死亡した。生存例においても4例の合併症 (創感染2例, 縫合糸膿瘍1例, イレウス1例) を経験した。発症から手術までの時間は, 死亡例と生存例との間で有意差を認めなかった。しかし, 生存例の術前白血球数は, 死亡例に比較して有意に高値であった。結語, 術後合併症の頻度が高率であり, 注意深い術中術後管理が重要であると思われた。また, 術前白血球数は予後を左右する因子の一つであると考えられた。
  • 山内 希美, 田辺 博, 可知 宏隆
    1998 年 23 巻 5 号 p. 842-846
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    近年, 高齢者の増加に伴い虚血性心疾患を合併した患者の急性膜症を扱う場合も多い。われわれは虚血性心疾患に対しPTCAを施行後, 急性虫垂炎のため腹腔鏡下虫垂切除術 (LA) を施行し, 良好な経過を得たので報告する。症例 : 68歳, 男性。既往歴 : CABG, PTCA。腹痛, 発熱あり当院を受診した。右下腹部に圧痛, Blumberg徴候を認め, WBC 11300/mm3, CRP 19.08, CPK 993IU/lと上昇を認めた。腹部超音波, CT検査にて急性虫垂炎に伴う腹腔内膿瘍と診断し, LAを施行した。手術時間24分, 出血量は極少量であった。術後経過は良好であり, 第8病日に退院した。重症心疾患を有する患者が急性腹症を呈した場合, 緊急性を要するため術前に十分に心機能の把握ができない場合もある。腹腔鏡下手術は早期診断が得られるのみならず, 治療が同時に可能であり, また手術侵襲が少ないために術後の回復も早く, 重症心疾患を有する症例には有効な手段と思われた。
  • 笠巻 伸二, 川瀬 吉彦, 野口 肇, 安田 一彦, 西村 和彦, 森脇 稔, 杉谷 通治, 倉井 亮
    1998 年 23 巻 5 号 p. 847-850
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    患者は72歳男性。平成8年10月より顔面紅斑・筋力低下に気付くも放置していた。平成9年2月より便秘が持続するようになり近医を受診。検査の結果, 下行結腸癌の診断で当科入院となった。入院時, 歩行困難をきたす程の筋力低下が認められた。血液検査成績ではGOT, LDH, ALD, CPKなどの筋原性酵素の上昇を認めた。注腸造影検査では下行結腸にapple core signを認め, 大腸内視鏡検査で全周性の狭窄を認めた。また, 腹部CT検査で肝左葉 (S3) に転移を認めた。以上より, 皮膚筋炎を合併した下行結腸癌および肝転移の診断で, 平成9年3月17日左半結腸切除術+肝部分切除術を施行した。皮膚筋炎症状は術後1週間で著明に改善し, その後, 術後経過とともに異常血液検査値もほぼ正常化した。経過良好で, 術後第21病日に独歩にて軽快退院した。
  • 小棚木 均, 菊池 俊樹, 小山 研二
    1998 年 23 巻 5 号 p. 851-855
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    肛門周囲Paget病は比較的稀であるが, 病変が肛門内から膣や尿道口に及ぶことがある。このような場合の治療では, 根治性と, 排便・排尿・性機能温存の両面を考慮しなければならない。今回, 肛門周囲Paget病の2例を経験した。1例では根治性の面から排便機能と性機能を犠牲にせざるを得なかったが, 術中迅速診断を併用した多科共同手術にて排尿機能の温存を図った。他の1例では肛門上皮と一部直腸粘膜を切除したが肛門括約筋を温存し, 排便機能を残した。多科の領域にまたがって発生する肛門周囲Paget病においては, 各科の専門的知識や技術を結集させて, 根治性を保ちつつ, 可及的に排便・排尿・性機能を温存させた手術を行うことが重要である。
  • 今村 幹雄, 三上 幸夫, 山内 英生
    1998 年 23 巻 5 号 p. 856-860
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    当科で扱ったクローン病症例27例中3例 (11%) で高アミラーゼ血症がみられたので, これらの症例につき検討した。症例1は23歳・男性, 小腸大腸型で胃・十二指腸病変も有し, 十二指腸狭窄に対し胃空腸吻合術がなされた。術前, S-Amy 281IU/lと高値を示したが, 上部消化管造影ではバリウムの膵管への逆流は認めなかった。症例2は34歳・女性, 大腸型で, 手術は難治性痔瘻に対しseton法によるドレナージ術を施行した。術後, 外来通院中, 妊娠時にS-Amy 264~273IU/lと高値を呈した。症例3は28歳・女性, 小腸大腸型で, 8年前, 狭窄に対し回腸部分切除と右半結腸切除を受け, 今回, 再燃による吻合部狭窄に対し吻合部切除がなされた。術前, S-Amy 293IU/l, リパーゼ131IU/l, トリプシン2830IU/l, 膵ホスホリパーゼA2 1230ng/dlといずれも高値を呈し, Caは8.1mg/dlと低値を示したが, CTおよびERCPでは異常所見はなかった。全例で腹痛など膵炎の臨床症状はみられなかった。
  • 池内 浩基, 楠 正人, 山村 武平
    1998 年 23 巻 5 号 p. 861-864
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は51歳男性。39歳時, 右下腹部痛で発症。腸閉塞症状が改善しないため近医で開腹。術後の病理検査でクローン病の確定診断がなされた。再度, 腸閉塞症状出現したため回腸部分切除の後, 当院内科に紹介された。成分栄養療法にて約7年間比較的良好に経過観察していたが, 平成7年2月, 小腸穿孔を生じ緊急手術。小腸部分切除術を行った。その後も狭窄, 出血, 瘻孔形成と多彩な病態を呈し, それぞれ小腸部分切除術を余儀なくされた。最終的に残存小腸は, 60cmとなり, 短腸症候群の状態となった。術後は, 低濃度の成分栄養療法を開始するとともに, Total Parenteral Nutrition (TPN) によるHome-Hyperalimentationも考慮し静注ポートの挿入術を行った。現在, 術後1年を経過しているが, 内科的に経過観察中である。
  • 谷川 隆彦, 永野 浩昭, 後藤 満一, 梅下 浩司, 蓮池 康徳, 金井 俊雄, 堂野 恵三, 中森 正二, 左近 賢人, 門田 守人
    1998 年 23 巻 5 号 p. 865-869
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は62歳男性。黄疸と体重減少を主訴に当科受診。術前の画像診断および経皮経肝胆道造影検査にて, 三管合流部より左右肝管および肝門部胆管癌と診断し, 肝右葉切除および尾状葉切除術, 総胆管切除術を施行した。術後の放射線療法により局所のコントロールは十分であったが, 術前挿入したPTBD-tubeに起因する癌性胸腹膜炎により再発癌死した。死因については最終的に剖検により確認された。閉塞性黄疸症例におけるPTBD-tube挿入の有用性とその留意点などについて, 若干の文献的考察を加えて報告する。
  • 上田 順彦, 小西 一朗
    1998 年 23 巻 5 号 p. 870-873
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    集学的治療によりQOLの向上が図れたBinf3胆嚢癌の1例を報告した。症例は66歳, 男性。肝床部, 肝十二指腸間膜, 膵頭部に広範囲に浸潤した胆嚢癌と診断し, 非観血的治療を選択した。放射線療法として6MV X線で胆嚢および肝門部胆管を含めて52Gy/28fr/63daysを施行した。放射線療法終了後総肝動脈内に留置した動注チューブより5FU, CDDPを中心とした化学療法を施行した。また放射線療法終了後stentによる胆管内瘻化を行った。腹部CT所見では動注化学療法3クール終了時点では原発部位の腫瘍はほとんど捉えられなくなり, その後も増大はなかった。治療開始より1年3ヵ月目に死亡したが, それまでQOLは良好であった。
  • 向川 智英, 渡部 高昌, 本郷 三郎, 中野 博重
    1998 年 23 巻 5 号 p. 874-878
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    68歳の男性が臍下部の有痛性腫瘤と頻尿を主訴に来院した。腹部CT, 超音波検査から腹壁sarcomaあるいは尿膜管腫瘍と診断し, 手術を施行した。腫瘤は臍と連続し, 腹膜面に浸潤していたが, 腹腔内臓器との癒着はなかった。手術により周囲腹壁を含めて腫瘤を完全に切除した。病理組織像にて放線菌塊を認め, 尿膜管原発の放線菌性肉芽腫症と診断した。泌尿器系の放線菌症の中でも尿膜管放線菌症は稀で, 自験例を含め14例が報告されているのみである。自験例では臍との連続性から臍経路の感染が示唆されたが確証は得られなかった。腫瘤は著明な線維化のため非常に硬く, また術前の画像診断でも悪性腫瘍との鑑別は困難であった。自験例では外科的切除のみで抗生物質の投与を行っていないが, 術後2年経過した現在, 再発の徴候は認められない。
  • 窪田 覚, 後藤 友彦, 吉雄 敏文
    1998 年 23 巻 5 号 p. 879-882
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    今回, われわれは初回大腸癌手術時に組織学的に卵巣に転移を認めた4症例につき以下の知見を得た。1) 教室例の過去9年間の女性大腸癌191例のうち, 4例 (2.1%) に初回手術時に卵巣転移を認めた。2) 発症年齢は30歳代, 40歳代にそれぞれ1例と60歳代に2例認められた。3) 臨床病理学的特徴として, 壁深達度のse以深で, このうち3例 (75.0%) はsi症例であった。4) リンパ節並びにリンパ管侵襲の高度な症例で, 腹膜播種を3例 (75.0%) に認めた。
  • 飯田 豊, 嘉屋 和夫, 松友 寛和, 松原 長樹
    1998 年 23 巻 5 号 p. 883-885
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は脳梗塞により左半身麻痺がある64歳の女性。2日程前より腹痛が次第に増強, 悪心・嘔吐も伴うようになった。来院時すでに意識レベルが低下, 血圧も収縮期で70mmHgとショック状態であり, 腹部全体に圧痛と腹膜刺激症状が著明であった。血液検査では, WBC32500/mm3, CRP13.6mg/dlと炎症所見を認め, 胸部X線写真で右横隔膜下に遊離ガスを, 超音波, CTでは腹腔内に液体貯溜を認めたため下部消化管穿孔を疑い緊急手術を施行した。腹腔内には膿性腹水が多量に存在したが消化管に異常はなく, 子宮体上部前壁に穿孔を認めた。穿孔部周囲は炎症性変化が激しく, 一部壊死に陥っていたため膣上部子宮亜全摘を施行した。子宮留膿腫はactivity of daily life (ADL) 不良の高齢女性に多い婦人科疾患であるが, 極めて稀に穿孔を起こすこともあるため, 腹膜炎の原因疾患として念頭に置くべき疾患と考えられた。
  • 今津 浩喜, 松原 俊樹, 船曵 孝彦, 落合 正宏, 桜井 洋一, 長谷川 茂, 内村 正史, 神保 康子, 服部 秀明, 永井 吉蔵
    1998 年 23 巻 5 号 p. 886-890
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は89歳, 男性。約2年前, 腹部腫瘤にて他院受診。CT上脂肪肉腫と診断されたが高齢であり手術困難といわれ外来にて経過観察されていた。しかし腫瘍の増大により次第に食欲不振, 腹部膨満およびこれに伴う呼吸困難が増強し緊急入院。超音波検査上腹部全体に高エコーと低エコー部分が混在するtumorを, 腹部CT検査で右腎下極から前方, 内方へ拡がり右腸骨窩へ至る内部multilocularな被膜を有し脂肪濃度に近いmixed density massを認めた。腎は頭側へ消化管は左へ圧排され, 腎盂尿管造影で右腎が頭側へ偏位し両側の腎盂尿管が拡張していた。高齢で全身状態が不良なため酸素投与と中心静脈栄養を行っていたが次第に呼吸困難が増強したため, 硬膜外麻酔下に手術施行した。腫瘍はほとんどが被膜に覆われ一塊として摘出した。重量は17.8kg。病理組織学的には高分化型脂肪肉腫と診断した。
  • 土井 卓子, 西山 潔, 大滝 修司, 山岸 茂, 若杉 純一, 吉田 謙一, 田口 智也, 富久尾 信, 中村 秋彦
    1998 年 23 巻 5 号 p. 891-896
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は58歳, 女性。左下腹部腫瘤を主訴に受診した。血液検査所見ではCA-125がやや高値である以外異常は無かった。CTスキャン, MRI, 超音波検査など画像所見より大網腫瘍の疑いとなり, 手術を施行した。大網には多数の腫瘤があり, ダグラス窩にも播種性と思われる腫瘤が数個みられた。右卵巣に嚢腫があり大網と右卵巣を摘出した。病理結果は腹膜原発のSerous Papillary Carcinomaの診断となり, 予後改善のため播種性腫瘤の切除を施行した。播種性腫瘤とともに合併切除した左卯巣は肉眼的には異常無かったが, 病理組織像では内部に多数の癌細胞があり, この症例は卵巣癌であり, Normal Sized Ovary Carcinoma Syndromeであったことが分かった。稀な症例を経験したので報告する。
  • 奥山 公道
    1998 年 23 巻 5 号 p. 897-898
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
  • 最近の話題
    辻井 博彦
    1998 年 23 巻 5 号 p. 899
    発行日: 1998/10/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
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