日本外科系連合学会誌
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23 巻, 6 号
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  • 再発死亡症例における検討
    小島 誠人, 大矢 正俊, 赤尾 周一, 石川 宏
    1998 年 23 巻 6 号 p. 903-909
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    乳癌治癒切除後の腫瘍マーカー測定の再発診断上の有用性, および再発治療や生命予後に及ぼした効果・影響について, 教室で治癒切除と定期的な術後経過観察を受け, 乳癌再発で死亡した初発乳癌女性43例を対象として検討した。腫瘍マーカー測定が再発部位の診断や再発後の治療に与える影響力は独自の基準を用いて測定し, 初回手術・再発確認からの生存期間を再発診断上の有用性と再発後の治療への影響力によって比較した。その.果, 腫瘍マーカー測定は43例中23例 (53.5%) で再発診断に有用, 19例 (44.2%) で再発治療上の影響力ありと判定された。初回手術からの生存期間は再発診断上の有用性や再発治療上の影響力による差はなかったが, 再発確認からの生存期間は再発診断に有用であった例, 再発治療上で影響力のあった例で短かった。今回の対象例では, 乳癌治癒切除後の腫瘍マーカー測定は患者の生命予後改善には寄与していなかった。
  • 宋 圭男, 佐藤 博信, 村山 公, 鈴木 武樹, 大塚 善久, 山形 基夫, 深瀬 知之, 小林 秀昭, 稲見 直邦, 岩井 重富
    1998 年 23 巻 6 号 p. 910-913
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    食道重複癌は食道癌の治療成績の向上により近年増加傾向にある。1997年12月末までに当教室で経験した食道癌は738例であり, そのうち重複癌は96例 (13.0%), 三重重複癌は9例 (1.2%) で, これらを対象として検討した。同時性重複癌は96例中44例 (45.8%) にみられ, 胃癌の合併は三重複癌を含め25例, 頭頸部癌との合併が16例と多かった。異時性で他癌先行は38例あり, 先行癌は胃癌13例, 頭頸部癌10例, 大腸・直腸癌7例であった。食道癌先行は11例にみられ, 後発癌は腎管癌が6例と多く, 術後2年~21年後に発見され全例が胃癌病巣を切除された。食道重複癌は胃癌, 咽頭・喉頭癌との合併が多く, 上部内視鏡検査時には充分な観察が必要である。食道癌術後の胃管癌は, 早期発見と各症例の再建術式を工夫することにより切除が可能であった。
  • 大関 泰麿, 砂川 正勝
    1998 年 23 巻 6 号 p. 914-919
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    26例の食道癌症例に対し癌部および非癌部組織のテロメラーゼ活性をFluorescence based TRAP法を用いて測定, 定量化した。結果は, 癌組織では中央値で66.7TPGunitを示し, 25percentile, 75percentileは, それぞれ46.9, 98.9と強い活性を認めた。非癌部組織では中央値で0 TPBunit, 75percentileで12.3と弱いながら活性を認める症例が存在した。また組織型別では, 低分化型扁平上皮癌のテロメラーゼ活性が高分化型, 中分化型に比し有意に高い値を示し生物学的悪性度の指標の一つとなる可能性が示唆された。組織型以外の臨床病理学的諸因子 (深達度, 転移, 進行度等) とテロメラーゼ活性との相関は認められなかった。dysplasiaのテロメラーゼ活性は, 癌より低く正常粘膜より高い傾向にあり, また早期癌においても高い活性を有する事などからテロメラーゼ活性の上昇は, 発癌過程の早期にみられる事象であると推察された。
  • 石川 啓, 三根 義和, 吉田 一也, 南 寛行, 本庄 誠司, 佐々木 伸文, 中村 譲
    1998 年 23 巻 6 号 p. 920-923
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    大腸低分化腺癌における予後規定因子について検討した。対象症例は1982年から1996年までの初発大腸癌手術例922例中, 低分化腺癌の28例である。治癒切除症例16例の中で11例は無再発生存中であり, 5例は再発死亡した。両群間の背景因子では, 占居部位, 肉眼型, 壁深達度, リンパ節転移, 血管侵襲で有意差を認めず, リンパ管侵襲 (P=0.0102) で有意差を認めた。平均生存期間においてもリンパ管侵襲陰性症例では1904.0日であり, 陽性症例の767.9日と比較して有意に生存期間の延長を認めた (P=0.0214) 。以上より, リンパ管侵襲は大腸低分化腺癌の予後を規定する因子となりうると考えられた。
  • 大畑 昌彦, 小山 勇, 安西 春幸, 鈴木 義隆, 新井 庸倫, 沼尻 良克, 渡辺 拓自, 篠塚 望, 松本 隆, 山崎 達雄, 尾本 ...
    1998 年 23 巻 6 号 p. 924-930
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    大腸粘液癌16例について, 高・中分化型腺癌 (以下, 分化型腺癌) と比較した。粘液癌はすべてmp以上の深達度のため, mp以上の例でも検討した。粘液癌はリンパ管侵襲, 静脈侵襲, リンパ節転移陽性率, 腹膜播種率が高く, mp以上でも静脈侵襲, 腹膜播種率が高かった。治癒切除率は分化型腺癌より低く, 5生率も不良だったが, 治癒切除例では差はなく治癒切除により予後の改善が得られるものと考えられた。また粘液癌を組織学的特徴からpapillotubular type (以下, PT型), mucocellular type (以下, MC型) に亜分類するとMC型はPT型に比較しリンパ節転移陽性率, 腹膜播種陽性率が高かった。一方肝転移例はいずれもPT型であった。治癒切除率, 生存率はMC型はPT型に比べ低率だった。粘液癌とくにMC型は局所浸潤性が高く, 広範なリンパ節郭清により治癒切除をめざす必要があると思われた。
  • 河原 秀次郎, 平井 勝也, 青木 照明
    1998 年 23 巻 6 号 p. 931-936
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    1980年~1993年の14年間に当教室で経験した下部直腸進行癌根治度A症例で側方リンパ節郭清をD2郭清またはD3郭清により施行した171例を対象とし, 下部直腸進行癌における側方D3郭清の位置づけについて検討した。stageII, IIIa, およびstageIIIbの側方第2群以上にリンパ節転移をみない症例, つまり全対象症例の約90%の症例では側方D2郭清群とD3郭清群に累積生存率で有意差は認められなかった。一方, 全対象症例の約10%であるD3郭清を施行した側方第2群以上のリンパ節転移陽性例では, その約半数に5年以上の長期生存をみた。実際の臨床では側方D3郭清の真の適応となる症例は全下部直腸進行癌症例の10%程度であると考えられ, これらの症例に対する側方D3郭清は基本的にはその郭清効果を有するものと考えられる。従って, 側方第2, 3群リンパ節転移例を如何に正確にpick upするかがqualityの高いtype oriented therapyにつながるものと考えられた。
  • 富田 涼一, 五十嵐 誠悟, 萩原 紀嗣, 福澤 正洋, 丹正 勝久
    1998 年 23 巻 6 号 p. 937-941
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    最近2年間に経験したrectocele50症例 (すべて女性) の内訳は, 排便時に残便感, 排便困難, 慢性便秘などの有症状症例34例 (24-79歳, 平均55.4歳) と, 無症状 (正常排便) 症例16例 (24-74歳, 平均44.3歳) であり, 両者の臨床的特徴を比較検討した。その結果, 1) 有症状例の主訴は残便感が最も多かった。2) 排便回数は有症状例に比較して無症状例では1回/日が明らかに多かった。3) 排便時怒責を有する例が両者ともに明らかに多かった。4) 経産婦が有症状例では明らかに多く, 無症状例でも多かった。5) 会陰下垂を伴う例が両者とも最も多かった。6) 大きさは, 有症状例では2cm以上, 無症状例では2cm未満の例が多かった。
  • 篠塚 望, 小山 勇, 鈴木 義隆, 新井 庸倫, 沼尻 良克, 長島 直樹, 松本 隆, 大畑 昌彦, 安西 春幸, 尾本 良三
    1998 年 23 巻 6 号 p. 942-947
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    原発性肝癌計32例を対象とし, 肝癌症例におけるNK活性測定の意義を検討した。肝癌におけるNK活性はIAPとの間に負の相関を認めたが, 癌の進行度, 腫瘍の大きさ, 併存する肝硬変の程度との間には明らかな関係を示さなかった。一方, 手術が施行された19例におけるNK活性比 (術前のNK活性/術後7日目のNK活性) と手術時間, 術中同種血輸血量との間には負の相関を認めた。また, 術中輸血の種類により自己血群と同種血群に分類すると, NK活性は自己血群では術後明らかな変動を示さなかったが, 同種血群では術後7日目に低下し, 自己血群との間にも有意差を認めた。原発性肝癌におけるNK活性は, 手術侵襲や輸血による免疫能への影響などのよき指標と成りうる可能性が示唆された。
  • 首藤 太一, 広橋 一裕, 久保 正二, 田中 宏, 塚本 忠司, 半羽 宏之, 三上 慎一, 葛城 邦浩, 大場 一輝, 池辺 孝, 木下 ...
    1998 年 23 巻 6 号 p. 948-952
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    [対象と方法] 1981年から1995年末までの肝細胞癌 (肝癌) 切除455例中, 主病巣径2cm以下の小型肝癌114例を対象に術式と予後について検討した。 [結果] 切除術式は葉切除11例, 区域切除13例, 亜区域切除27例, 部分切除63例であり, 1990年以降は部分切除が多く施行された。肝内転移巣 (im) または門脈内腫瘍栓 (vp) が36例にみられ, その5年生存率は35%にすぎなかったが, 系統切除症例の予後は良好であった。また副病巣を伴った49例 (43%) にはa) 主腫瘍と一括切除, b) 追加部分切除, c) マイクロ波焼灼orエタノール注入が施行された。1990年以降, 副病巣に対してb) c) を実施したところ, その累積生存率は向上していた。 [結語] im, vp併存小型肝癌に対しては系統切除を行う方針であるが, 不可能な症例には縮小手術を, また多発病巣例に対して他の治療法を併行する手術適応の拡大で, 小型肝癌に対する外科治療の予後は向上した。
  • 高橋 禎雅, 山口 和也, 杉山 保幸, 宮 喜一, 佐治 重豊
    1998 年 23 巻 6 号 p. 953-959
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    原発性肝癌中, TAEによる腫瘍壊死部が比較的軽度で組織学的検索が可能であった43例を対象に, 癌部と非癌部においてアポトーシス抑制因子からbcl-2を, 誘導因子からBAXとAPOP TAGを用い, その発現程度を免疫組織学的に検索し, 臨床病理学的所見, 予後および既報7) のp53, PCNAとの関連を比較検討した。その結果, bcl-2は全例陰性で, BAXは32例 (74.41%) が陽性であった。APOP TAGAI値は癌部が非癌部に比べ有意に高く, アルコール過飲歴有り群は癌部・非癌部とも高値を示し, アルコール過飲によりアポトーシスが促進される可能性が示唆された。また, 腫瘍最大径が20mm未満群のAI値は以上群に比べ有意に高値で, 20mm以上群でAI高値群の予後は低値群に比べ有意に不良であった。以上の結果, ウイルス感染やアルコール過飲が硬変併存率や多中心性発癌と密接に関連し, これらがアポトーシスとの関連で細胞増殖に影響を及ぼす可能性が推察された。
  • 上田 順彦, 小西 一朗
    1998 年 23 巻 6 号 p. 960-964
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    分枝型粘液産生膵疾患の診断と治療方針を明らかにすることを目的に8例11病変を対象とし, これらを腫瘍, 非腫瘍性病変に大別しERP所見の嚢胞径とその交通枝の太さを中心に検討した。ERPで嚢胞の大きさが30mm未満では7病変中3病変が腫瘍性で, 4病変が非腫瘍性であった。このうち腫瘍性の1病変の交通枝の太さは5mmであったが, 非腫瘍性の4病変は2mm以下であった。大きさが30mm以上の病変では4病変中3病変が腫瘍性で, 1病変が非腫瘍性であった。交通枝は腫瘍性病変は5mm以上であったが, 非腫瘍性病変は2mmであった。ERPで嚢胞の大きさが30mm未満で交通枝が2mm以下の症例は非腫瘍性病変の可能性が高く経過観察でよいと考えられた。ただし交通枝が太い症例では腫瘍性病変の可能性を考慮する必要がある。一方, 嚢胞の大きさが30mm以上, とくに交通枝が5mm以上では腫瘍性病変の可能性が高いため外科治療が必要であると考えられた。
  • 吉田 和弘, 青儀 健二郎, 大崎 昭彦, 香川 佳寛, 澤村 明弘, 平井 敏弘, 峠 哲哉, 杉野 隆
    1998 年 23 巻 6 号 p. 965-969
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    細胞は分裂と共に染色体末端が短縮して来ることが知られている。これがある一定の長さになると細胞は死滅してしまう。テロメラーゼはこの短縮した染色体末端を修復する酵素で, 細胞が不死化する上で必要な酵素であり, 多くの癌細胞で活性化していることが知られている。今回膀胱癌, 大腸癌, 乳癌および甲状腺癌でテロメラーゼ活性をTRAP assayにて検索したところ, それぞれ86%, 92%, 73%および81.8%で陽性であった。さらにこれらの癌での臨床応用が可能かどうか検討する目的で, 膀胱癌患者の尿, 大腸癌切除標本の洗浄細胞, 乳癌および甲状腺癌の穿刺細胞診材料を用いテロメラーゼ活性を検討した。これらの癌症例の大部分で陽性所見を認め, 癌の分子診断として有用である可能性が示唆された。しかしながらTRAP assay自体Taq inhibdtorやtelomerase inhibitor等のバランスの上に成り立っている方法であることに留意する必要がある。
  • 塚本 忠司, 広橋 一裕, 久保 正二, 田中 宏, 半羽 宏之, 首藤 太一, 檜垣 一行, 坂田 親治, 葛城 邦浩, 大場 一輝, 上 ...
    1998 年 23 巻 6 号 p. 970-974
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    切除不能悪性門脈狭窄4例に対し, 経皮経肝的に狭窄部門脈内にexpandablemetallicstent (以下EMS) を留置した。症例の内訳は肝門部胆管癌, 再発転移性肝癌の各1例, 胆管細胞癌2例である。4例ともEMS留置により門脈狭窄部は拡張し, 門脈圧は低下した。側副血行路の認められた症例ではEMS留置によりその軽減が確認された。EMS留置に伴う合併症は認められなかった。悪性門脈狭窄に対するEMS留置は安全で, 門脈圧亢進症状を発現させないためQOLの向上に寄与すると考えられた。
  • 佐原 博之, 長谷川 泰介, 北林 一男, 秋山 高儀, 斎藤 人志, 小坂 健夫, 喜多 一郎, 高島 茂樹
    1998 年 23 巻 6 号 p. 975-979
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    教室で施行した腹腔鏡下胆嚢摘出術161例のうち肝外胆道に走行異常を認めた7例 (4.3%) について検討した。久次による副肝管分類では, I型1例, II型2例, III型1例, IV型1例, V型2例であった。副肝管に対する術前診断は内視鏡的逆行性胆道造影 (ERC) では60% (3/5), 経静脈性胆道造影 (DIC) では0% (0/4), DIC後3D-CTでは100% (2/2) であった。術中検査では腹腔鏡下超音波検査 (LUS) で区域枝以上の副肝管は全例 (3/3) に描出し得たが, 亜区域枝以下では描出できなかった (0/2) 。術中胆道造影 (10C) では造影不良の1例を除き全例で診断が可能であった。胆道損傷はIII型とV型の各1例に認め, いずれもERC不成功例であった。副肝管損傷の予防にはERC, DIC後3D-CTでの術前診断と, 術中胆嚢管剥離時LUSによる位置関係の確認, さらにはIOCによる副肝管損傷の有無を含めた最終確認が重要である。
  • 山田 直人, 中北 信昭, 石黒 匡史, 新澤 博子, 内沼 栄樹
    1998 年 23 巻 6 号 p. 980-983
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    北里大学救命救急センターは昭和61年独立型の救命救急センターとして開設し, 各科から専門の医師が集まり一つの集団となって診療を行っている。1995年4月から1998年3月までの3年間に救命救急センターを受診した5,546例の中で形成外科医が診療した975例について検討した。救命救急センターにおける形成外科診療として重症熱傷, 多発外傷に伴う顔面, 四肢の損傷, 早急に手術が必要となる手指の外傷症例などが診療の中心であった。内容は手の外傷400例, 顔面外傷357例, 熱傷127例, その他91例であった。各分野での専門知識を必要とする多発外傷や, 重症熱傷症例において迅速に対応することができた。緊急手術や早急に処置が必要な症例に対し, X線撮影, CTスキャン, 血管造影, 各種血液検査などが迅速に行うことができ, 手術室への搬送や処置室での対応が迅速に行えた。
  • 辻仲 利政, 小川 稔, 高見 元敞, 門田 守人
    1998 年 23 巻 6 号 p. 984-986
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    2年間の外科病棟入院患者2,480名を対象に, カテーテル敗血症の疑い, 抗生剤不応性発熱と身体部位よりの真菌の検出を条件に眼底検査を行った。6例に真菌性眼内炎が発見され, 両側性4例片側性2例であった。有症状者は1名であり, 残る5例は無症状であった。全例カテーテル敗血症を伴っていた。治療により全例眼内炎は改善した。真菌症の高リスク患者に対して眼底検査は必須であり, 真菌性眼内炎の早期発見と治療が必要である。
  • 広瀬 和郎, 粟田 浩史, 藤田 邦博, 飯田 敦, 片山 寛次, 山口 明夫
    1998 年 23 巻 6 号 p. 987-990
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は77歳男性で, 69歳時に前庭部大弯の2型進行胃癌に対し, 幽門側胃切除術 (D3) を受けた。病理診断は, 粘液癌, medullary, INFα, mp, ly2, vO, n1 (+) で, 幽門下リンパ節 (6) の1個にのみ, 被膜に及ぶ広汎な転移を認めた。術後MitomycinC, Picibanilに続き, 2年10カ月間クレスチンが投与され, 無症状で経過した。術後6年9カ月後に虫垂炎穿孔手術を受けた後7カ月目に (術後7年6カ月), 下腹部痛, 血清CEA上昇 (8.3ng/ml), 及び, 注腸透視でS状結腸に全周性狭窄を認め, 腹膜再発と診断し, 回腸直腸吻合, 人工肛門造設術を行ったが, 再発後約1年で死亡した。本症例では, 手術時に転移リンパ節またはリンパ管侵襲に由来する微量な粘液癌の播種巣が遺残し, 虫垂炎穿孔手術を契機に, 晩期再発を生じたと推測された。
  • 山内 希美, 山内 一, 田辺 博
    1998 年 23 巻 6 号 p. 991-995
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    原発性小腸癌は一般に術前診断に難渋する疾患とされている。今回, われわれは胃癌術後30年目に下血を主訴として来院し, 術後の検索で原発性小腸癌と診断された異時性重複癌の1例を経験したので報告する。症例は81歳, 男性。既往歴として胃癌にて胃亜全摘出術を受けている。近医にて貧血の治療を受けていたところタール様便が出現し, さらに腹部膨満感も伴ったため精査加療目的にて入院となった。入院後の検査にて高度の貧血を認め, 腹部X線にて拡張した小腸を認め, 注腸造影検査にて回腸末端部に輪状狭窄像を認めた。小腸の腫瘍性病変による腸閉塞状態と同部よりの出血による高度貧血と診断し手術を施行したところ回腸末端部より約3cm口側に母指等大の腫瘤を認めたため同部を含めた回盲部切除を施行した。組織学的所見にて深達度mpの原発性小腸癌と診断された。近年, 高齢社会をむかえ, 重複癌に遭遇する機会も増加すると考えられ柔軟で多様性のある対応が必要と思われる。
  • 竹村 雅至, 岩本 広二, 合志 至誠
    1998 年 23 巻 6 号 p. 996-999
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    今回われわれは, 腹部鈍性外傷後に小腸腹壁瘻を形成した1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する。症例は33歳, 男性。仕事中に下腹部をフォークリフトに挟まれ当院へ搬送された。来院時には下腹部に皮下出血斑と軽度腹膜刺激症状を認めたが, 腹部単純写真では腹腔内遊離ガスはなく, CT検査でも腹腔内に液体の貯留はなく経過観察とした。しかし, 入院23病日に白血球増多と右下腹部痛の増強を認め, 再度CT検査を行ったところ右腹壁を中心に膿瘍の形成を認めた。試験開腹したところ, 回腸末端より30cm口側で穿孔し, 腹壁と癒着しており, この部位で瘻孔形成しているものと思われた。腹部鈍性外傷に伴う消化管損傷は比較的頻度が高く, 診断には腹部症状が重要であるとされている。しかし, 稀に本例のように長時間が経過したのちに症状を伴ってくることもあり厳重な経過観察が必要である。
  • 松友 寛和, 後藤 明彦, 仁田 豊生
    1998 年 23 巻 6 号 p. 1000-1003
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    最近9年間に施行した人工肛門閉鎖術症例16例について検討した。6対10で女性に多く, 平均年齢は48.9歳。原疾患は悪性10例, 良性6例, また人工肛門造設の直接の理由は, 腸閉塞6例, 腹膜炎3例, 縫合不全予防目的7例であった。人工肛門の種類別ではloop colostomy, end colostomyが各8例であった。造設から閉鎖までの期間は, 平均105日であった。腸切除なしで閉鎖した症例は2例のみで残りの14例はすべて腸切除を施行した。術後合併症は重複例を含めて創感染4例, 縫合不全1例, 縫合糸膿瘍1例であり, 創感染の頻度が高かった。創感染はいずれも術後早期に発生し, 原因菌の多くは腸内細菌であった。また縫合不全の症例では再び回腸瘻を造設した。今後, 術後合併症の発生を低減させるためには, 肛門側の術前腸管処置が課題であり, 合併症を念頭においた注意深い手術操作が重要であると思われた。
  • 林 昌俊, 広田 俊夫, 市橋 正嘉, 多羅 尾信, 後藤 明彦
    1998 年 23 巻 6 号 p. 1004-1007
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例1は作業用重機にて下腹部を強打, 症例2は交通事故にて腹部を強打し入院した。それぞれ受傷2日後, 受傷翌日に汎発性腹膜炎の診断にて手術を施行した。症例1は回盲部より15cmから口側に向かい約50cmにわたり回腸辺縁で小腸と腸間膜の断裂を認め, 阻血により壊死した回腸を切除した。症例2はS状結腸間膜に約8cmにわたる断裂を認め, 阻血により壊死したS状結腸を切除した。2症例とも腸管辺縁の腸間膜付着部の断裂で比較的太い血管の損傷がなく出血は軽度で止血されたこと, 腸管に外傷による穿孔, 破裂を伴わなかったことが症状発現を遅延させた。腸間膜単独損傷では諸検査で異常を指摘することが困難なことがあり理学所見を重視するとともに, 経時的に検査を行い時期を逸せず開腹する必要があると考えられた。
  • 田中 英則, 炭山 嘉伸, 柁原 宏久, 中村 光彦, 中村 順哉, 渡辺 学, 確井 貞仁, 武田 明芳
    1998 年 23 巻 6 号 p. 1008-1011
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    肝外側区域より被膜外に発育するFocal Nodular Hyperplasia (以下FNH) の1例を経験した。患者は22歳男性, 持続する悪心, 腹部膨満感のため近医受診し腹部超音波にて腫瘤指摘され当科紹介となった。CTにおいてcentral scarを, 血管造影においてspoke-wheel appearanceを認め, FNHと診断し, 有症状例であることから腫瘤摘出術を施行した。FNHの報告は, われわれが文献上検索し得た範囲では現在までに約230例を数える。しかし, 術前診断が可能であった症例は10%前後にすぎない。その原因は, FNHの特徴的な所見とされるcentral scarとspoke-wheel appearanceの描出率が低いためだと考えられた。
  • 浜田 吉則, 毛利 隆, 高田 晃平, 加藤 泰規, 佐藤 正人, 日置 紘士郎, 佐々木 洋
    1998 年 23 巻 6 号 p. 1012-1015
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    全内臓逆位症 (以下, 本症) は正常に対して解剖が鏡像的関係にある稀な先天的奇形である。今回われわれは本症に合併した肝細胞癌の1例を経験したので報告する。症例は60歳の女性で発熱, 全身倦怠感, 腹部膨満を訴え来院した。胸部・腹部単純撮影, 腹腔動脈造影, 門脈CT検査, 血清AFP値高値などから, 本症に合併した肝細胞癌と診断した。腫瘍は径3cm, 肝左葉 (正常では右葉S6-7) に発生した単発性の病巣で, 肝部分切除術を施行した。術前肝機能評価から耐術可能と判断したが, 術後第28病日に肝不全にて失った。解剖が左右逆であるための手術の困難性はなかったが, 通常の視野とは異っているため, 本症合併例における肝切除に対しては, 血管造影を含めた綿密な術前の画像診断と耐術評価, および術中超音波検査を駆使した解剖の把握と, 的確な手術手技が必要であると考えられた。
  • 吾妻 司, 吉川 達也, 新井田 達雄, 高崎 健
    1998 年 23 巻 6 号 p. 1016-1019
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は57歳, 女性。腹部超音波検査 (US) で胆嚢結石が, 経口経静脈的胆道造影 (OC-DIC) で総胆管内に透亮像が認められたため入院となった。内視鏡下超音波検査 (EUS) などの所見から, 総胆管内の透亮像は直径約9mmの有茎性ポリープであると診断した。胆嚢摘出術施行時に胆道鏡検査を行ったところ, 下部胆管に有茎性で表面平滑のポリープが認められた。癌は否定的であったため胆道鏡下にポリペクトミーを施行し手術を終了した。切除標本の病理組織学的所見から総胆管腺腫と診断した。術後経過は良好で, 2年10カ月経過した現在でも再発の兆候はない。総胆管ポリープが疑われた場合には, EUSを施行することにより, 診断の手がかりとなる多くの情報を得ることができる。さらに, 胆道鏡検査を行えば質的診断が可能となるだけでなく, 症例によってはポリペクトミーのみで治療が完了する。
  • 立川 大介, 稲田 繁充, 古藤 剛, 二見 喜太郎, 有馬 純孝
    1998 年 23 巻 6 号 p. 1020-1024
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は27歳女性。生来健康で妊娠中に数度上腹部痛あるも放置した。症状軽減したが再度出現したため近医受診した。US, CTにて膵体部から膵尾部にかけての巨大嚢胞と診断され当科受診となった。精査にて膵尾部に接して約10cmの嚢胞病変をみとめ隔壁があり多房性巨大膵嚢胞と診断し膵体部切除術を施行した。嚢胞液は透明な粘液でありCEA, CA19-9はそれぞれ22000, 10000以上と高値を示した。病理組織学的には膵癌と境界領域の粘液性膵嚢胞腺腫であった。一般に粘液性膵嚢胞腺腫は漿液性膵嚢胞腺腫に比しmalignant potentialが高いとされている。その臨床的対応については多くの問題を抱えているが嚢胞液中のCEA, CA19-9は悪性で高値を示すとの報告もあるので術後の経過観察が必要である。
  • 三方 律治
    1998 年 23 巻 6 号 p. 1025-1027
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    播種性骨髄癌症は固形癌の禰漫性骨髄転移によってleuko-erythroblastosisや血小板減少を来す転移癌の1病型である。骨痛と貧血および白血球分画異常をきたした68歳の男性が入院した。骨髄穿刺で播種性骨髄癌症と診断され, 前立腺生検を行い前立腺癌原発と確定診断した。去勢術を行い両側精巣にも転移を認めた。この症例の臨床経過を報告し, 前立腺癌の精巣転移と播種性骨髄癌症について若干の文献的考察を行った。
  • 浦出 雅昭
    1998 年 23 巻 6 号 p. 1028-1031
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    胸膜中皮腫に比し腹膜中皮腫は稀な疾患である。鼠径ヘルニア手術を契機に発見された腹膜中皮腫の1例を経験した。症例は81歳, 男性。左鼠径ヘルニアで近医より紹介, 術前超音波で腹水を認め腹水細胞診はclass II, 腹水CA125は350, 血清CA125は45であった。肝機能は正常で, 腹腔内臓器の癌腫による癌性腹膜炎を疑い各種検査を行ったが原発巣は不明であった。患者の希望によりヘルニア根治術を施行し, ヘルニア嚢に3mmほどの小結節を認めた。組織学的には異型中皮細胞が乳頭状に増殖浸潤し, 非結節部腹膜にも異型中皮細胞の増殖を認めた。異型中皮細胞はアルシアンブルー陽性の酸性ムコ多糖類を分泌しヒアルロニダーゼで消化され, 免疫組織化学的にCA125陽性であった。以上より, びまん性悪性中皮腫と診断された。腹膜の悪性中皮腫は特徴的所見に乏しくその臨床像は未だ不明な点が多い。ヘルニア嚢を病理学的に検索して確定診断された腹膜悪性中皮腫の1例を報告した。
  • 小西 一朗, 上田 順彦
    1998 年 23 巻 6 号 p. 1032-1034
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    成人では稀な仙骨前部epidermoid cystの1例を経験し報告した。患者は42歳, 男性。主訴はなく, 尿管結石治療中のCT検査にて偶然仙骨前部の腫瘤が発見された。CT像では, 仙骨前面で直腸左後方に約4cmの腫瘤を認め, MRIではT1強調像で低信号, T2強調像でやや高信号の腫瘤像を認めた。直腸指診, 下部消化管検査で異常は認めなかった。経仙骨的に, 尾骨とともに腫瘤摘出術を施行した。内容物は灰白色のカニミソ状のもので, 細菌培養は陰性であった。組織学的に, 内壁は重層扁平上皮で構成され, 処々で異物巨細胞を伴う肉芽反応巣をみるが, 皮膚付属器などは認められず, epidermoid cystと診断された。術後3年を経て再発は認めていない。
  • 北村 唯一
    1998 年 23 巻 6 号 p. 1035-1036
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
  • 長野 昭
    1998 年 23 巻 6 号 p. 1037
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
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