日本外科系連合学会誌
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25 巻, 1 号
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  • 岡田 昌義
    2000 年 25 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2000/02/29
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
  • チタン製ミニプレートシステムと比較して
    根本 充, 田中 正英, 柏木 慎也, 村上 博則, 橋本 信子, 内沼 栄樹
    2000 年 25 巻 1 号 p. 10-14
    発行日: 2000/02/29
    公開日: 2010/02/09
    ジャーナル フリー
    生体吸収性素材によるミニプレートシステムは金属製ミニプレートシステムの問題である機械的刺激の持続や骨接合周囲の骨の脆弱化, 骨成長障害などを解決するために開発されてきた。われわれは顔面骨骨折の骨接合にポリL乳酸製ミニプレートシステムを導入し, その有用性や問題点についてチタン製ミニプレートシステムと比較検討した。ポリL乳酸製ミニプレートシステムの術中操作性はベンディングやタッピングの必要性など若干の煩雑さがある。術中の固定性はいずれのミニプレートシステムでも他の内固定法を併用したものはなく, 十分な固定性が得られた。ポリL乳酸製ミニプレートシステムは術後感染や再転位などの術後合併症, 術後経過において問題は認められず, 抜釘術が不要なことから, チタン製と比べ骨接合数あたり約4.2倍という材料自体のコストが改善されれば, チタン製ミニプレートシステムと同様に有用である。
  • 河野 淳, 間 三千男
    2000 年 25 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 2000/02/29
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    人工内耳装用者のコミュニケーション状況を知るため, 環境音における聴取能を調べた。また中等度難聴者および補聴器装用者との聴取能を比較検討した。環境音においては, 多くの音を理解できていた。特に電話のベルの音, 掃除機, 洗濯機の音, 水の音は100%で, 手を叩く音, クラクションの音は93%, 足音でも64%とよく聞き取れていた。また人工内耳装用者の聴取能は, 中等度難聴者の情報伝送量に, 補聴器装用者では平均聴力レベル90-100dBの聴取能に匹敵していた。いずれにせよ, 人工内耳装用者が多大な恩恵を被っていることがわかった。
  • 加藤 智栄, 河村 勉, 浜野 公一, 善甫 宣哉, 江里 健輔
    2000 年 25 巻 1 号 p. 21-27
    発行日: 2000/02/29
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    種々の工夫で急性A型大動脈解離の手術成績が向上し, 最近の連続10症例の病院死はなかった。成績向上の貢献因子を検討した。1989年5月から99年1月の急性A型解離手術22例を対象とした。病院死と術後合併症 (再出血, 脳合併症, 脊髄虚血, 腹部臓器虚血, 腎不全, 下肢虚血, 縦隔炎) の関与因子として年齢, 術前ショック, 心タンポナーデ, 発症から手術までの時間, Entry部位, 解離の範囲, 術式, 付加手術, 補助手術, アプロチニン使用, GRF糊使用, 体外循環時間, 大動脈遮断時間, 脳分離体外循環 (SCP) 時間, 手術時間を検討した。病院死は6例 (再解離2, 出血死1, 低心拍出症候群1, MOF 1, 誤嚥1), 術後合併症は12例 (腎不全4, 脳合併症2, 腹部臓器虚血2, 再出血1, 対麻痺1, 下肢虚血1, 縦隔炎1) であったSCP, GRF糊により病院死, 術後合併症はともに有意に減少し, アプロチニンで術後合併症が減少した。急性A型解離の手術にSCP, GRF糊, アプロチニン使用が重要と考えられた。
  • 富田 凉一, 藤崎 滋, 青木 信彦, 朴 英智, 君塚 圭, 丹正 勝久, 福澤 正洋
    2000 年 25 巻 1 号 p. 28-31
    発行日: 2000/02/29
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    胃中・下部早期癌に対する迷走神経・幽門輪温存幽門側胃切除兼J型空腸嚢間置術後10症例 (D1+7, 8aリンパ節郭清, 根治度A : A群) と幽門側胃切除術後30症例 (D1+7, 8aリンパ節郭清, 根治度A : B群) について, 術後1年以上経過 (平均1年2カ月) した時点でのQOLを比較検討し, 以下の結果を得た。1) A群では, B群に比較して, 有意に食欲が有り (p=0.0448), 食事摂取量も多く (p=0.0001), 体重減少は少なかった (p=0.0001) 。また, 有意に腹部膨満感と腹鳴も少なかった (それぞれp=0.0350, p=0.0168) 。2) A群では, B群に比較して, 早期ダンピング症状 (全身症状), 晩期ダンピング症状, 逆流性食道炎症状 (胸やけ, 逆流感, つかえ感など), 悪心, 腹痛, 下痢なども少なかったが有意差はなかった。以上より, A群はB群に比較して, 術後QOLは良好であった。
  • 合併切除の意義について
    阪口 晃行, 澤田 秀智, 山田 行重, 中野 博重
    2000 年 25 巻 1 号 p. 32-35
    発行日: 2000/02/29
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    他臓器浸潤胃癌の合併切除の意義を明かにするために, 過去10年間に教室で経験した組織学的他臓器浸潤胃癌37例を中心に検討した。浸潤臓器では膵が最も多く, 次いで横行結腸および結腸間膜, 肝の順であった。組織型では, 低分化型が, また, 腫瘍径は非常に大きいものが多く, 治癒切除症例に限ってもリンパ節転移は85%と高頻度であった。治癒切除例の生存率は非治癒切除例に比し有意に高率であり, 他臓器合併切除症例 (治癒切除例) におけるpT4症例とpT3症例生存率の比較では, この2群間に生存率の差は認められなかった。治癒切除症例において, 転移個数が16個以上の症例は, 転移個数が16個未満の症例よりも有意に生存率が低く, 長期生存例も認めなかった。以上より, 他臓器浸潤胃癌症例の手術に際しては, 治癒切除を得るべく最大限の努力をはらうべきであるが, リンパ節転移個数が高度の症例においては慎重に治療方針を決定する必要があるものと思われた。
  • 加藤 俊二, 恩田 昌彦, 松倉 則夫, 木山 輝郎, 吉行 俊郎, 長谷川 博一, 山下 精彦, 徳永 昭
    2000 年 25 巻 1 号 p. 36-42
    発行日: 2000/02/29
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    胃癌術後の長期生存例で骨粗鬆症様症状の訴えがしばしば見受けられる。これは胃切除後の骨代謝障害に起因する可能性がある。骨代謝障害を評価する目的で簡便なMD (microdensitometry) 法にて胃切症例の骨塩量, 骨皮質幅を測定し, MD/MS (Multiplescanning X-ray photodensitometry) 法によるスコア評価および年齢・性別平均基準値との差を基準値の1標準偏差 (SD) で除した指数 (%SD値) で検討した。MD/MS法にて判定された骨障害の発生は, 胃癌症例, とくにステージIII症例に多く認められたが, 術式との相関は認められなかった。骨塩量 (ΣGS/D) の%GSD値が骨粗鬆症様症状と有意に相関するとともに (<0.01), 胃切除により骨量が有意に減少 (<0.05), さらに術後1年から2年の症例と術後10年以上経過した症例で%GSD値の著明な低値がみられた。一方, 骨皮質幅 (MCI) の%MCI値はむしろ増加しており, 骨塩量の低下を骨皮質幅の増加で代償しているものと考えられた。MD/MS法によるスコア値より, 骨塩量 (ΣGS/D) の%SD指数値は・術後の経時的変化の指標として胃切除後の骨代謝障害評価に有用と考えられた。
  • 棚田 稔, 青儀 健二郎
    2000 年 25 巻 1 号 p. 43-47
    発行日: 2000/02/29
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    当院外科で切除した下部進行直腸癌根治度A症例は187例で, 内21例 (11%) に局所再発を認めた。これら症例の臨床病理学的特長と治療成績について検討した。局所再発率は, ai (si), n3, ly3, v3, 側方リンパ節転移陽性例で高く, 腫瘍占居部位や手術術式では差を認めなかった。治療成績は50%生存期間16カ月で, 再発後の治療法別では化学療法 (n=5) 11カ月, 放射線療法 (n=10) 15カ月, 手術 (n=6) 17カ月で, 各群間に差を認めなかった。手術は6例中2例のみが治癒切除で, そのうち1例が94ヵ月無再発生存中であった。局所再発治療後の予後因子の検討では, 若年者と, 原発巣のリンパ節転移のない症例が予後良好であった。以上, 局所再発の予後は不良であったが, 唯一治癒切除例に長期生存が認められたため, 手術適応症例には周囲臓器の合併切除を含めた積極的な切除が必要である。
  • ERCPおよび腹腔鏡下術中胆道造影との併用
    篠塚 望, 小山 勇, 安西 春幸, 俵 英之, 上笹 直, 美濃島 卓哉, 渡辺 拓自, 松本 隆, 許 俊鋭
    2000 年 25 巻 1 号 p. 48-53
    発行日: 2000/02/29
    公開日: 2010/02/09
    ジャーナル フリー
    総胆管結石症症例に対し, 内視鏡的逆行性胆膵管造影 (ERCP) 及び腹腔鏡下手術における術中胆道造影時に細経プローブを用いた胆管内超音波検査 (IDUS) を施行し, その有用性を検討した。ERCP施行28例中3例 (11%) はERCPで総胆管結石を確認できず, 経乳頭的IDUSでのみ確認することができた。術中経胆嚢管的にIDUSを施行した5例のうち2例に内視鏡的乳頭括約筋切開術 (EST) 後の遺残結石を認め, うち1例は術中胆道造影にて明らかな結石を認めずIDUSにてのみ確認できた。総胆管結石症におけるIDUSは, ERCPでは確認が困難な小結石やESTなどによる切石後の遺残結石の有無の診断に有用と思われた。また, 腹腔鏡下手術における経胆嚢管的IDUSは術中胆道造影と併用することにより, 総胆管結石の拾い上げに有用となりうる可能性があると思われた。
  • ハムスターの胆道発癌におけるヒト膵液の影響
    安藤 達也, 豊坂 昭弘, 能勢 勝義, 岡本 英三
    2000 年 25 巻 1 号 p. 54-60
    発行日: 2000/02/29
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    膵管胆道合流異常における胆道発癌の病因・病態を解明すべく, 生理的に長い共通管を有するハムスターの膵液酵素組成をヒトと比較した。その結果, ハムスターではヒトに比しtrypsin, elastase-1, phospholipase-A2の蛋白分解酵素が著しい低値を示した。この結果に基づいて, 膵胆道系の発癌剤であるN-nitrosobis (2-oxo-propy1) amine (BOP) を投与したハムスターに, 外胆・瘻よりヒト膵液を注入することにより, 胆道癌の発現がより誘発されるかについて検討した。その結果, 胆・瘻よりヒト膵液を注入した群では, コントロールと比較して, 胆道系の腺腫及び癌の発現頻度が有意に高値を示した。ヒト膵液のみを注入した群では総胆管は著しい拡張を示し, また経時的に粘膜上皮の過形成性変化の増強を示し, PCNAの陽性率も有意に高値を示した。以上, ヒト膵液は胆道癌の発癌促進に強い影響を与えることを示した。
  • 本山 覚望, 望月 愼介, 竹内 聡, 赤山 由起, 山辺 晋吾, 丸尾 猛
    2000 年 25 巻 1 号 p. 61-65
    発行日: 2000/02/29
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    目的 : 人工造腟術として, 酸化セルロース製の組織代用人工繊維布 (TC7) を新腟腔へ添付し, 腟本来の扁平上皮粘膜の新生誘導を検討した。方法 : 6例の先天性腟欠損症に対し, 腟前庭粘膜の十字切開により解剖学的腟経に沿い子宮下部に達する新腟腔を形成した。切開で生じた4点の腟前庭粘膜縁を新腟腔内壁へ縫合後, TC7で包まれた膣型を新腟腔へ充填し手術を終了した。成績 : 平均手術時間は25.8分, 平均出血量は14.2ml, 入院期間は2日, 合併症発生率は0%であった。全例において, 術後2~5カ月で添付TC7膜下で腟前庭粘膜縁より新生した重層扁平上皮で新腟腔全域は被覆された。また, 新生腟扁平上皮粘膜は正常腟粘膜と同様に卵巣周期に呼応した分泌能と形態の変化を示した。結論 : 本法は現行造腟法と比較して低侵襲性でDay Surgeryも可能であり, また, 本法の腟粘膜は腟本来の自然性を示すため, 患者QOLの向上に役立つものと思われる。
  • 腋窩アプローチ法 (T1法) による手技の確立と手術成績
    佐々木 裕三, 高見 博, 池田 佳史, 新見 正則
    2000 年 25 巻 1 号 p. 66-69
    発行日: 2000/02/29
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    従来の甲状腺・上皮小体の開放手術には, 前頸部の襟状切開創の瘢痕による美容上の問題点と嚥下時の違和感・ひきつれ, 皮膚の触覚鈍麻・感覚異常などがある。それらに対して, 内視鏡を用いた種々の工夫がなされている。今回, 我々は腋窩より頸部まで剥離し甲状腺に達する腋窩アプローチ法による内視鏡下上皮小体摘出術を考案した。術前の局在診断で単発と診断された原発性上皮小体機能亢進症例6例に対して, 腋窩アプローチ法により内視鏡下上皮小体摘出術を行った。平均手術時間は171分, 摘出重量は平均281mg, 病理診断は全例腺腫であった。反回神経麻痺, 皮下気腫などの術後合併症は認められなかった。患者の精神的苦痛も少なかった。本術式は頸部, 前胸部に手術創が全くなく, 患者のQOLは高く, 安全, かつ確実に施行できるため, 優れた術式の一つと考えられた。
  • 神谷 欣志, 高見 博, 中村 達
    2000 年 25 巻 1 号 p. 70-72
    発行日: 2000/02/29
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    バセドウ病に対する甲状腺亜全摘術を, 最近開発された超音波駆動メス (ハーモニック・スカルペル(R), ジョンソン・エンド・ションソンメディカル社) およびバイポーラシザーズ (パワースター(R), 同) を用いて行い (ハーモニック法), コッヘル鉗子で圧座しながら甲状腺を切離する従来の方法 (コッヘル法) と臨床的有用性を比較した。それぞれ甲状腺機能を正常化させたバセドウ病5例ずつに対し, ハーモニック法, コッヘル法にて甲状腺亜全摘術を施行した。術中出血はハーモニック法93±72 (Mean±SD) ml, コッヘル法196±137ml, 術後総出血はそれぞれ63±51ml, 161±135mlで有意差は認めないもののハーモニック法で術中, 術後出血量が少なかった (p=0.18, p=0.17) 。術後合併症は両群ともに認められなかった。ハーモニック・スカルペル(R)は止血, 凝固能に優れ, バセドウ病に対する甲状腺亜全摘術に有用であると考えられた。
  • 鶴井 裕和, 渡辺 明彦, 佐道 三郎, 山田 貴, 頼木 領, 楠本 祥子, 仲川 昌之
    2000 年 25 巻 1 号 p. 73-77
    発行日: 2000/02/29
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    現在, 胆嚢良性疾患に対する腹腔鏡下胆嚢摘出術 (以下, LC) は標準術式として確立されたと考えられる。われわれはLC導入当初より術中胆道を造影をルーチンに行っていることに着目し, 術前, 術中胆道造影の意義について検討した。対象は1992年から1998年までの363例のうちの338例とした。術前胆道造影所見を大橋らのGrade分類に基づき分類したところ, 胆嚢造影不良のGradeIIIで有意に手術時間が長く, 開腹移行率も高いという結果であった。術中造影による総胆管結石発見率は3.4%であった。総胆管損傷発症率は0.3%と, 諸家の報告よりも低く, 術中造影を行うに際し, 剥離操作を十分行った結果と考えられる。以上よりGrade分類は手術難易度の推定に, 術中胆道造影施行は総胆管結石発見や胆管損傷予防に有用であると考えられた。
  • 大谷 泰介, 加藤 博之, 遠藤 俊吾, 吉松 和彦, 橋本 雅彦, 梅原 有弘, 塩澤 俊一, 芳賀 駿介, 梶原 哲郎
    2000 年 25 巻 1 号 p. 78-82
    発行日: 2000/02/29
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    患者は23歳, 女性。14歳時にBCG接種を受けている。発熱, 下痢, 腹痛を主訴に当院小児科に入院した。大腸内視鏡検査では上行結腸に多発性潰瘍と狭窄を認め, 生検にて非乾酪性肉芽腫を認めた。さらに, 小腸造影検査所見でcobblestone-like appearanceを認めたためCrohn病と診断し, ステロイド療法を開始した。4カ月後に急性汎発性腹膜炎を併発したため, 緊急手術を施行した。手術所見では回腸に穿孔を認め, さらに回腸~上行結腸下部にかけて多発する輪状潰瘍を認めたため, 穿孔部を含め狭窄が強度であった範囲を切除した。術中に採取した腸液中に抗酸菌を検出し, 病理組織標本に乾酪性肉芽腫を認めた。以上より, 腸結核と診断し, 術後に抗結核療法を行った。術後第38病日に小児科転科となり, 約2年を経過した現在, 結核の再燃は認めていない。
  • 石川 啓, 三根 義和, 吉田 一也, 南 寛行, 原 信介, 佐々木 伸文, 中村 譲, 岩崎 啓介
    2000 年 25 巻 1 号 p. 83-86
    発行日: 2000/02/29
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    同時性, 異時性に肝転移再発を来した大腸sm癌症例の臨床病理学的な特徴について検討した。頻度は大腸sm癌手術例71例中の3例で, 4.2%であった。症例1は67歳, 男性, S状結腸Is型早期癌切除後2年6カ月後の肝転移で, 2回の肝切除術を行った。症例2は66歳, 男性, S状結腸Isp切除後3年5カ月後の肝転移, 肺転移で, 症例3は72歳, 男性, RsのIs病変で, 同時性であった。3例をまとめると, 部位はS状結腸とRsで, 肉眼型はIsとIps, 組織型はすべて高分化腺癌であった。壁深達度はsm2が1例, sm3が2例で, 2例でリンパ節転移が陽性であった。再発までの期間は2年6カ月, 3年5カ月と長い傾向であった。
  • 渡邊 正志, 中崎 晴弘, 長谷部 行健, 鈴木 康司, 瀧田 渉, 瀬尾 章, 小林 一雄, 赤坂 善清
    2000 年 25 巻 1 号 p. 87-92
    発行日: 2000/02/29
    公開日: 2010/02/09
    ジャーナル フリー
    症例は53歳女性。右季肋部痛, 発熱, 便秘にて当院へ入院となった。右上腹部に可動性のない手拳大の圧痛を伴う腫瘤を認め, CEA, CA19-9の上昇を認めた。USおよびCTでは胆嚢と連続した6×8cmの充実性の腫瘤があり, 腹壁, 十二指腸, 結腸肝彎曲部が一塊になっている所見であった。注腸では肝彎曲部より口側へ造影剤は全く流れず, 血管造影では胆嚢動脈と中結腸動脈の末梢よりほぼ均等に栄養される腫瘤を認めた。右半結腸切除, 膵頭十二指腸切除, 肝床部切除, 腹壁合併切除を伴う拡大胆嚢摘出術を行い, 術後6年8カ月経過した現在再発所見を認めない。組織学的所見では胆嚢と結腸に同等に浸潤する高分化型の管状腺癌を認め, 肝, 十二指腸, 膵への直接浸潤はなかった。リンパ節に転移はなく, 神経周囲浸潤も認めなかった。原発巣の由来が胆嚢か結腸か不明であったが広範囲浸潤癌にもかかわらず予後良好であった興味ある症例である。
  • 池田 太郎, 富田 凉一, 萩原 紀嗣, 五十嵐 誠悟, 越永 従道, 福澤 正洋
    2000 年 25 巻 1 号 p. 93-96
    発行日: 2000/02/29
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は48歳, 女性。出生時に直腸肛門奇形と診断され, 7歳時に人工肛門造設術を施行された。その後27歳時に当院初診し, 肛門腟前庭部瘻の診断下に肛門移動術 (Potts法) が施行された。排便機能は, 臨床的評価法で4点 (Fair) で, 失禁・汚染は下痢時のみで, ガスと便の識別は不可能で排便感覚はなく, 下剤による排便コントロールをしている。直腸肛門内圧検査では, 内外括約筋機能・直腸感覚・直腸貯留能の低下を認め, 肛門管粘膜電流感覚閾値測定検査では, 肛門管上・中・下部ともに感覚閾値の低下を認めた。また, 排便注腸造影検査 (ディフェコグラフィー) では, 肛門弛緩不全と直腸瘤を認めた。したがって, 直腸肛門奇形術後排便障害では, 直腸肛門内圧検査の他に, 肛門管粘膜電流感覚閾値測定検査や排便注腸造影検査を加え, その原因を評価すべきである。
  • 井上 貴至
    2000 年 25 巻 1 号 p. 97-100
    発行日: 2000/02/29
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は67歳, 女性。主訴は発熱と左胸部痛である。血液生化学検査では白血球, CRPが高値を, また軽度の貧血と胆道系酵素の軽度の上昇を認めた。腹部超音波検査では肝左葉外側区域に直径5.0×3.8cm大の境界不明瞭, 内部不均一な低エコー領域を認め, 腹部単純CT検査では同部に低吸収陰影を, また造影CTでは周囲がリング状に造影される腫瘤影を認めた。肝血管造影検査にて異常所見は認めなかったが悪性腫瘍を否定できず, 肝左葉外側区域切除術を施行した。肉眼的に腫瘍は黄白色, 充実性を呈し, 組織学的には全体に線維性結合組織の増生を認め, 中心部では好中球, 泡沫細胞, 形質細胞, リンパ球の浸潤が混在してみられ, inflammatory pseudotumor (以下, IPT) と診断された。肝のIPTはまれな疾患で悪性腫瘍との鑑別が困難である。われわれは, IPTの1例を経験したので文献的考察を加えて報告した。
  • 永田 直幹, 柴尾 和徳, 日暮 愛一郎, 平田 敬治, 中山 善文, 岡本 好司, 伊藤 英明
    2000 年 25 巻 1 号 p. 101-105
    発行日: 2000/02/29
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は59歳男性, 主訴は発熱, 心窩部痛。腹部単純X線検査, 超音波検査, 腹部CT検査で胆のう周囲と内腔のガス像が認められ, 気腫性胆のう炎と診断された。全身状態が良好で腹膜刺激症状がなかったため, 抗生剤の投与による保存的療法が行われたが, 炎症所見が改善せぬため経皮経肝胆のうレナードジ (PTGBD) が施行された。その後, 炎症が改善し, DIC併用ヘリカルCT検査で胆のう管が同定出来たため腹腔鏡下胆のう摘出術を施行し, 経過良好で術後8日目に退院した。本症は重症例が多く穿孔の危険性が高いため, 早急な外科治療が必要と言われてきたが, 最近ではPTGBD施行症例も増加しておりその有用性が報告されている。今回, われわれは気腫性胆のう炎に対してPTGBD施行後に腹腔鏡下胆のう摘出術を施した。また, DIC併用ヘリカルCT検査は重症胆のう炎に対して腹腔鏡下手術の決定に役立つ有効な検査と思えた。
  • 中川 国利, 大内 清昭
    2000 年 25 巻 1 号 p. 106-109
    発行日: 2000/02/29
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した1688例中, 術後に腹腔内膿瘍を形成した3例について, その原因と対策について検討した。症例1は63歳の男性で, 慢性胆嚢炎例であった。術中に腹腔内に結石を散石し, 2カ月後に腹腔内膿瘍を来した。開腹下に遺残結石の摘除とドレナージを施行し, 治癒した。症例2は65歳の男性で, 肝硬変症と糖尿病を合併した急性胆嚢炎例であった。炎症が著明なため, 胆嚢部分切除 (以下mucoclasis) を施行し, 術後に右肝下面に留置したドレーンから膿汁が排出した。抗生剤投与と洗浄により腹腔内膿瘍は消失し, 術後41日目に退院した。症例3は49歳の女性で, 急性胆嚢炎例であった。mucoclasis後に腹腔内膿瘍を形成したが, 抗生剤投与と洗浄にて, 術後33日目に退院した。遺残結石例や急性胆嚢炎におけるmucoclasis施行例では, 術後に腹腔内膿瘍を来すことがあり, 慎重なる経過観察が必要である。
  • 上田 順彦
    2000 年 25 巻 1 号 p. 110-113
    発行日: 2000/02/29
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    併存した後腹膜脂肪肉腫に浸潤をきたした退形成性膵管癌の1例を報告した。症例は65歳, 女性。主訴は心窩部痛。腹部CT検査では膵体尾部に大きさ約11×9×6cm, 境界不明瞭で内部は不均一に造影される腫瘍を認めた。また膵腫瘍の背側の後腹膜には, 隔壁を有し内部にわずかな網状構造を伴うfat densityの領域を認めた。退形成性膵管癌と診断し開腹したが, 高度な腹膜播腫のため試験開腹となり, 術後20日目に癌死した。剖検所見では膵体尾部の腫瘍は周囲の臓器および膵腫瘍の背側に存在した長径約15cmの黄色の結節状の腫瘍と一塊となっていた。膵腫瘍は肉腫様の異型の強い紡錘形細胞が主体をなし, 一部には異型細胞による腺管形成も認められ, 退形成性膵管癌の紡錘形細胞型と診断された。一方, 後腹膜の腫瘍は脂肪肉腫のwell differentiated typeと診断された。両腫瘍の境界部では膵の腫瘍細胞が脂肪肉腫内に浸潤している像がみられた。
  • 石橋 敬一郎, 加藤 博之, 遠藤 俊吾, 吉松 和彦, 橋本 雅彦, 高橋 直樹, 芳賀 駿介, 梶原 哲郎
    2000 年 25 巻 1 号 p. 114-118
    発行日: 2000/02/29
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    大腸癌の治癒切除後の再発形式として, 脾への転移はまれである。今回, われわれは結腸癌の異時性脾転移およびDouglas窩の腹膜播種性転移を切除し得た1例を経験したので報告する。症例は44歳, 男性。他院にて盲腸癌の診断で右結腸切除術を受け, 経過観察されていた。術後1年9カ月後に血清CEA値が上昇し, CT・注腸検査にて脾転移およびDouglas窩の腫瘤を指摘された。手術目的に当院紹介され, 脾摘出術, 腹膜播種巣切除を伴う低位前方切除術を施行した。補助化学療法として, Leucovorin/CDDP/5-FUによる化学療法を施行したが, 1年2カ月後に肺転移, 2年4カ月後に腹膜播種性転移, 3年1カ月後に脳転移を来し, 3年3カ月後に死亡した。大腸癌の異時性脾転移は血行性転移と考えられており, 脾転移巣に対する脾切除術は予後の改善が期待できるが, 他部位の転移に対する経過観察ならびに化学療法が必要と考えられる。
  • 許 俊鋭
    2000 年 25 巻 1 号 p. 119-120
    発行日: 2000/02/29
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
  • 大城 俊夫
    2000 年 25 巻 1 号 p. 121
    発行日: 2000/02/29
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
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