日本外科系連合学会誌
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26 巻, 4 号
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  • 安藤 陽夫, 永廣 格, 青江 基, 清水 信義
    2001 年 26 巻 4 号 p. 1020-1025
    発行日: 2001/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    胸部領域における胸腔鏡下手術は, 診断と治療の両面において非常に有用性が高く, 適応は大きく拡大している。診断では, 肺小腫瘤性病変 (術前CTガイド下マーキング施行1) ) ・縦隔腫瘤・胸膜胸水貯留性病変・禰漫性肺疾患の診断に胸腔鏡下手術の有用性が高い。治療では, 気胸・肺気腫・血胸・乳び胸・膿胸・良性縦隔腫瘍2) ・重症筋無力症 (MG) 3) ・良性肺腫瘤・転移性肺腫瘍4) ・肺癌 (TIN0M0・多汗症・良性食道疾患・食道癌などが適応となる。今後, 胸腺腫の一部に対しても胸腔鏡下手術の適応が拡大できる可能性がある。前縦隔病変 (MG) に対する手術方法として頸部襟状切開を併用した胸腔鏡下拡大胸腺摘出術3) を考案したが, MG18例の術後改善率94.4%, 寛解率44.4%と良好な成績を示している。肺病変に対する胸腔鏡下手術 (VATS lobectomyとリンパ節郭清術) においては, 小開胸器を使用せずに新しい開創器ラッププロテクターHを使用した手術方法を施行しており有用性が高い。cT1N0M0の肺癌68例に対して胸腔鏡下手術の適応として手術を施行したが, Kaplan-Meier法による5年生存率は98%であり, 良好な成績を示していた。
  • 質的研究の視点から
    長嶋 隆, 大館 敬一, 今村 智, 森田 幹太, 高橋 克之介, 金子 英彰, 伊崎 友利, 木村 正之, 竹村 和郎, 山口 晋
    2001 年 26 巻 4 号 p. 1027-1034
    発行日: 2001/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    上部胃の早期胃癌に対して, 胃全摘に代えて噴門側胃切除を行う術式の縮小は, はたして, 患者のニーズに基づくものであるか否かを検討した。当教室で, 胃全摘および噴切を施行された症例を対象に, 質的研究 (qualitative research) の手法で, 効用分析 (utility analysis1) 2) ) を用いて検討した。従来, 手術後の患者の状態を反映するとされたパラメータ (体重, 食事回数, face-scale) で見ても, また効用分析で見ても, 全摘患者と噴切患者の間に術後状態の差はなく, 全摘を噴切に縮小することが, 必ずしも, 患者の側のニーズに基づいた行為とは考えられなかった。上部胃の早期癌には, 臓器温存の点から噴切が望ましいと思われるが, 患者のQOLの点では必ずしも噴切にこだわる必要はないとわれわれは考える。
  • 宇山 一朗, 杉岡 篤, 松井 英男, 小森 義之, 藤田 順子, 蓮見 昭武
    2001 年 26 巻 4 号 p. 1035-1041
    発行日: 2001/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    リンパ節郭清を必要とする早期胃癌に対し, 開腹術と同等な縮小手術を腹腔鏡下に施行しているので手技と成績を報告する。適応 : (1) 内視鏡的粘膜切除の適応外でcT1 (M), cN0の症例。 (2) cT1 (SM), cN0で分化型では1.5cm以下, 未分化型では1.0cm以下の症例を対象としている。術式 : M癌では神経温存D1+#7, もしくはD1+#7, 8a郭清を, SM癌では神経を切離したD1+#7, 8a郭清を行っている。切除範囲は癌腫の占拠部位により, 幽門側切除 (DG), 幽門保存切除 (PPG), 噴門側切除 (PG) を選択している。結果 : 合計33例のリンパ節郭清を伴う腹腔鏡下縮小手術を施行した。開腹移行例, 術中輸血症例はなく, 術後合併症も開腹術と同等の発生頻度であった。結語 : 腹腔下に施行されている現行の縮小手術は腹腔鏡下に施行可能であり, 早期胃癌に対する腹腔鏡下縮小手術は標準術式になりうると考えられる。
  • 井上 暁, 梅北 信孝, 真栄 城剛, 宮本 幸雄, 北村 正次
    2001 年 26 巻 4 号 p. 1042-1044
    発行日: 2001/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    早期胃癌に対する縮小手術としての腹腔鏡補助下胃切除術の成績を検討し, 適応と限界について考察した。適応は中部または下部のM癌でEMRの適応外の症例を原則とし, リンパ節郭清はD1+No.7で行った。20例に幽門側胃切除 (LADG) を, 10例に幽門保存胃切除 (LAPPG) を施行し, 開腹D1郭清症例 (OG) 29例と比較した。手術時間, 出血量, リンパ節郭清個数ともに各群に差はなく, 術後の鎮痛剤使用頻度と在院日数はLADG群でOG群より少ない傾向があった。またLADG群, LAPPG群ともに重篤な合併症はみられなかった。術前深達度Mと診断した27例中, 2例はSM2でn1が1例あった。SM2と術前診断した2例はともにn1で小開腹D2に移行した。現時点ではリンパ節転移がみられた場合, 開腹D2に移行しているが, 郭清技術と術前診断能の向上によって本術式の適応は拡大しうると思われる。
  • 丸野 要, 山川 達郎
    2001 年 26 巻 4 号 p. 1045-1051
    発行日: 2001/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    著者らがhand-assisted laparoscopic gastrectomy (HALG) を施行した早期胃癌症例は, 分化型のm癌7例, sm2およびsm3癌各1例である。上腹部のやや左季肋部よりに約7cmの横切開をおいて開腹し, Hand Port Systemを装着した後, 手を腹腔内に挿入し気腹する。hand-assisted laparoscopic distal gastrectomy (HALDG) ではD1+No.7, 8a, hand-assisted laparoscopic total gastrectomy (HALTG) ではD1+No.4d, 5, 6, 7, 8aのリンパ節郭清施行後, 開腹創より直視下に胃と十二指腸を切離し, 自動吻合器を用いてHALDGではB-I, HALTGではρRoux-Yにて再建する。リンパ節転移を疑われた症例では, 開腹創から9, 11p, 12a, 14vリンパ節郭清を追加する。平均手術時間は4時間35分, 平均出血量は219mlであった。最長2年3か月の観察で全例再発を認めていない。HALGのもたらす数々の利点により, 手術適応の拡大がはかられ, 多くの外科医が容易で安全に施行できる術式として, 本法がより広く普及していくものと考える。
  • 下山 省二, 瀬戸 泰之, 山口 浩和, 清水 伸幸, 青木 文夫, 安田 秀光, 上西 紀夫
    2001 年 26 巻 4 号 p. 1052-1058
    発行日: 2001/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    早期胃癌に対する胃局所切除の適応について検討した。1976年から1997年までの単発早期胃癌624例と, そのなかで1987年以降にD1+7郭清術を施行された128例を対象とし, 癌の大きさ, 占拠部位, 深達度とリンパ節転移部位の関係を検討した。術前深達度診断がMで大きさ4cm以下であれば, リンパ節転移は潰瘍 (瘢痕) をともなう胃癌にのみ認められ, その率はたかだか2.3%であり, 転移リンパ節は癌の近傍の1部位に限られていた。また, 大きさ1cm以下であれば, 潰瘍 (瘢痕) をともなう胃癌でも腫瘍触知例はなかった。したがって, 術前深達度診断がM, 大きさが潰瘍 (瘢痕) をともなう場合は1cm以下, ともなわない場合は4cm以下の胃癌で, 癌近傍のリンパ節に癌の転移陰性が術中迅速診断で確認され, 術後病理診断で深達度mとリンパ節転移陰性が確認されれば, 腹腔鏡下の胃局所切除で治療が完結できると考えられた。
  • 大山 繁和, 高山 祐一, 太田 恵一朗, 山口 俊晴, 太田 博俊, 高橋 孝, 中島 聰総, 武藤 徹一郎
    2001 年 26 巻 4 号 p. 1059-1066
    発行日: 2001/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    単発早期胃癌1,177例を対象に, 組織型, 腫瘍径, 深達度別にリンパ節転移率およびその部位を解析した。分化型癌では, 術後病理診断がm癌であれば転移はなく, 術前診断Mで, 隆起型, 30mm以下, 陥凹型では, M, 20mm以下では転移は稀である。未分化型癌では, m, 20mm以下で1.6%, m癌全体で4%のリンパ節転移率である。リンパ節転移のパターンは複雑であるが, 胃上部前後壁の多くの病変において転移は小弯側に認められ, この領域の癌に対しては, 小弯側のみのリンパ節郭清により根治性は確保される。その他の領域では, 安易に郭清範囲を縮小することは慎むべきであり, 現時点では, 神経や幽門の温存に勤め, 術後QOLの向上を目指すべきである。
  • 梨本 篤, 薮崎 裕, 田中 乙雄
    2001 年 26 巻 4 号 p. 1067-1071
    発行日: 2001/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    早期胃癌 (EGC) に対する縮小手術の妥当性を確認する目的で臨床成績を中心に検討した。対象は1998年末までの外科的胃局所切除術 (SLR) 126例, 幽門保存胃切除術 (PPG) 104例, 噴門側胃切除術 (PGR) 69例である。適応はSLRでは胃上中部3cm以下の隆起型とEGCと2cm以下の陥凹型m癌であるPPGは胃中部のEGCであり, PGRは胃上部EGCである。【成績】1) SLR : 再治療を要したのは6例 (再発2例, 多発4例) であった。他病死を除くと1例以外は全例生存中である。相対的適応として姑息的に施行した症例もあり, 他病死も含む5生率は81.8%である。2) PPG : 再手術が3例あり, 1例は原病死したが, 他は全例外来通院中である。3) PGR : 深達度診断の誤診もあり10生率は85.6%であったが, EGCに限ると10生率は100%であった。【結語】局在に応じてQOL, 遠隔成績を損なうことなく種々の縮小手術が可能であった。しかし, 再手術を余儀なくされた症例もあり, 根治性を損なわないよう細心の注意が必要である。
  • 伏田 幸夫, 木南 伸一, 林 智彦, 西島 弘二, 藤村 隆, 三輪 晃一
    2001 年 26 巻 4 号 p. 1072-1075
    発行日: 2001/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    早期胃癌に対し, intraoperative endoscopic lymphatic mappingを行ったところ, 染色リンパ節のsentinel lymphnodeとしての精度は, 敏感度90% (28/31), 特異度100% (136/136), 正診率98% (164/167) であった。偽陰性の3例は肉眼的転移例であり, 染色リンパ節以外にも転移を認めた13例の転移リンパ節は全て染色リンパ領域に属していた。転移を認めない症例は縮小手術の適応となり, 胃癌の占拠部位および染色リンパ流域によって, 局所切除, 分節的胃切除, 小範囲幽門側胃切除が選択された。縮小手術施行1年以上経過した症例を対象にアンケート調査したところ, 従来の幽門側胃切除群に比較して, 食事の回数, 所要時間, 摂取量に比較して, 食事の回数, 所要時間, 摂取量や消化器症状の出現頻度および体重の回復程度や下痢の頻度において良好な回答が得られた。
  • リンパ節転移からみた縮小手術の適応について
    山本 重孝, 田中 康博, 伊藤 壽記, 弓場 健義, 岩瀬 和裕, 北川 透
    2001 年 26 巻 4 号 p. 1076-1080
    発行日: 2001/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    mp胃癌の臨床病理学的諸因子ならびにリンパ節転移状況を検討し, さらに腫瘍占居部位別に縮小手術が適応となりうるか否かを検討した。1974年から1998年の間に当院で切除したmp胃癌231例を対象とした。mp胃癌全体のリンパ節転移率は42.2%であったが, n3以上は1.7%と低率であった。リンパ節転移率は小腫瘍径, 早期癌類似型, 脈管侵襲のない症例において低頻度であった。とくに腫瘍径2cm以下の早期癌類似型の症例にはリンパ節転移を認めなかった。腫瘍占居部位別のリンパ節転移率は, U・UM領域癌では23.1%, M・ML領域癌では34.3%であったが, 腫瘍径2cm以下の症例では各領域ともリンパ節転移は近傍の1群リンパ節に留まっていた。これらの結果よりmp癌における噴門側胃切除術あるいは幽門輪保存胃切除術の適応は, 腫瘍径2cm以下の早期癌類似型症例を対象とするのが望ましいと考えられた。
  • 術後再発例の検討
    北郷 邦昭, 平山 廉三, 前島 静顕
    2001 年 26 巻 4 号 p. 1081-1082
    発行日: 2001/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
  • 矢部 慎一, 中野 正人, 内田 靖之, 坂野 茂, 前田 敏樹, 山本 俊二, 山本 正之
    2001 年 26 巻 4 号 p. 1085-1087
    発行日: 2001/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    総胆管結石症に対する神鋼病院の治療の現状を検討した。1998年から2年間に入院治療を要した胆石症207例のうち, 総胆管結石を認めた67例 (胆結石合併47例) を対象とした。61例に89回のESTを中心としたIVRがまず行われていた。3例が切石不成功に終わり, 出血3例, 急性膵炎2例の合併症を生じた。33例はIVRで症状が軽快し退院した。しかし, うち5例は症状が再発し再治療を要した。手術が行われた33例 (胆嚢結石合併32例) のうち, 術前IVR非施行例は4例 (手術単独例), IVR施行例は29例 (IVR→手術例) だった。手術単独例の術式はすべて開腹胆嚢摘出術・総胆管切石術だった。IVR→手術例では14例で腹腔鏡下胆嚢摘出術が可能となった。全入院日数・費用は手術単独例とIVR→手術例で差がなかった。これらの結果をふまえ, 患者の希望, 満足度も考慮しながら総胆管結石症の治療方針を決定していく必要がある。
  • 関戸 仁, 永野 靖彦, 遠藤 格, 渡会 伸治, 長堀 薫, 嶋田 紘
    2001 年 26 巻 4 号 p. 1088-1091
    発行日: 2001/08/30
    公開日: 2010/02/09
    ジャーナル フリー
    1999年より総胆管結石症に対して腹腔鏡下総胆管切石術 (LCBD) を行い良好な結果を得た。LCBDにおいては, 平均手術時間240分, 平均出血量46g, 術後鎮痛剤を必要とする期間は2.3日, 術後経口摂取開始は, 24時間以内, 経口摂取量の回復に要した時間は平均2.0日, 術後平均在院日数は8.3日, 術後合併症は無かった。これらの成績をこれまでの教室の治療方針であった, 開腹総胆管切石, 胆摘, T-tube留置 (GT) または, RTBD tube留置 (GR) と比較したところ, LCBDは手術時間がGT, GRに比して長く, 遺残結石対策が必要という問題点があった。しかし, 手術侵襲は小さく, 術後の回復も良好, 乳頭機能も温存され, 美容面にも優れていた。手術時間は今後の鏡視下手技の習熟により短縮出来ると考えられ, LCBDは今後の総胆管結石の標準的治療と考えられた。
  • 北川 裕久, 太田 哲生, 萱原 正都, 芳炭 哲也, 森田 晃彦, 山崎 徹, 西村 元一, 藤村 隆, 清水 康一, 三輪 晃一
    2001 年 26 巻 4 号 p. 1092-1097
    発行日: 2001/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    胆管結石治療において, 遺残結石がない, 再発しない, 良好な長期予後が得られる, 低侵襲で早期退院できる, の4点すべてをみたすのが理想的な治療法である。胆管結石は成因からみると, 胆嚢からの落下結石と胆管に原発する結石の2種類があり, 後者には乳頭機能の異常が関与していると考えられるため, それぞれ異なった治療戦略をうち立てるべきである。我々は1973年より術中胆道内圧測定で乳頭機能の評価を行っているが, その結果より内圧測定で器質的乳頭狭窄, 器質的乳頭不全と診断した場合に胆管結石が原発すると考えた。したがって器質的な乳頭異常には胆道付加手術が, それ以外の場合には乳頭機能を温存した切石術が適応であるとした。さらに内圧正常でかつ遺残結石のおそれのない症例には胆管横切開一次閉鎖術を行っており, 短期間での退院が可能となっている。
  • 大里 浩樹, 植田 俊夫, 後藤 邦人, 濱 直樹, 石飛 真人, 尾田 一之, 相原 智彦, 菅 和臣, 福永 睦, 今本 治彦, 冨田 ...
    2001 年 26 巻 4 号 p. 1098-1103
    発行日: 2001/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    平成3年1月より平成10年12月までに当科において総胆管結石治療として開腹下総胆管切開切石術した102例と経皮経肝胆道鏡 (PTCS) 下砕石術を施行した56例を対象に平成12年8月までの追跡調査を行い, 臨床成績の比較を行った。観察期間中 (平均5年10カ月) に, 総胆管切開術では3例 (2.9%), PTCSでは4例 (5.7%) に総胆管結石の再発を認め, 両者で有意な差は認められず, 手術療法と同等の治療成績が得られた。PTCS治療のほうが入院期間は長く, 穿刺に伴う合併症として気胸, 胆道出血などが認められたが, 砕石操作に伴う重篤な合併症はなかった。肝内胆管及び胆嚢両者のドレナージや, 胆嚢管経由の総胆管ドレナージなどで胆石も除去した症例では, 観察期間中に総胆管結石は再発しなかったが, 胆石を放置した症例と比較して有意な差は認められなかった。このことは, 総胆管結石に対する当初の治療として合併する胆石に対する治療を付加するにこしたことはないが, あえて必要とはしないと考えられた。内視鏡や周辺機器の進歩とともに様々な工夫により, 総胆管結石に対する治療成績が向上し, 適応の拡大が期待された。
  • 宮本 昌之, 江上 格, 吉岡 正智, 加藤 圭介, 渡辺 秀裕, 和田 雅世, 飯田 信也, 藤田 逸郎, 鈴木 成治, 中村 慶春, 寺 ...
    2001 年 26 巻 4 号 p. 1104-1108
    発行日: 2001/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    当科における1993年から1999年までの腹腔鏡下総胆管結石手術35例について検討した。その内訳は, 腹腔鏡補助下総胆管切開・Tチューブ法 (LA - CBDE + T - tube) 16例, 腹腔鏡下総胆管切開・Tチューブ法 (L - CBDE+T-tube) 7例, 腹腔鏡下総胆管切開あるいは, 経胆嚢管的総胆管結石摘出・Cチューブ法 (L-TCCBDE or LCBDE + C - tube) 3例, 一期的縫合閉鎖 (CBDE + PTCD or ENBD) 3例, その他1例であった。各々の群について, 手術時間, 術中出血量, 術後入院期間を比較した。平均手術時間はLA=CBDE (233.6分), L-CBDE (343.2分) と110分短縮が見られた。術中出血はLA - CBDEが最も多く約127ml, 術後在院日数はTチューブ留置時の23例が約32.4日と他群に比し明らかに長かった。総胆管切開, Tチューブ法の基本術式としての意義について考察した。また, CBDE後ドレナージ法としてのCチューブの適応の拡大, 手術時間短縮の意味での腹腔鏡補助下切開法の位置付けが再認識された。
  • 江本 宏史, 山田 行重, 渡辺 明彦, 高山 智燮, 中島 祥介
    2001 年 26 巻 4 号 p. 1109-1113
    発行日: 2001/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    当科にて過去14年間に経験した食道癌153例 (手術死を除く) のうち, 他臓器に癌を合併した21例 (男性19例, 女性2例, 平均年齢63.4歳) に対し臨床病理学的因子, p53蛋白発現, 予後に関して検討を行った。1) 重複臓器としては頭頸部11例, 胃5例, 肺4例などであった。2) 単発例との比較では, 重複例では食道内多発癌の合併頻度に差を認めたが, 他の臨床病理学的因子には, 差を認めなかった。また, p53蛋白発現にも差を認めなかった。3) 異時性例の続発間隔は平均4.6年 (最長14年) であった。4) 予後に関する検討では, 他臓器癌重複食道癌は, 単変量解析で単発癌と生存率に差を認めず, 多変量解析でも予後不良因子として差を認めなかった。今回の検討より重複例でも単発例と臨床病理学的因子に大きな差を認めず, 単発癌と同様な治療選択が, 食道原発巣に適応しえることが示唆された。
  • 胸骨正中切開開心術および Heart Port 法との比較
    枡岡 歩, 許 俊鋭, 朝野 晴彦, 大内 浩
    2001 年 26 巻 4 号 p. 1114-1120
    発行日: 2001/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    教室では1994年以来, 小柄な日本人にも臨床応用可能なPCPS (経皮的心肺補助装置) を応用した末梢動静脈カニュレーションを用いた埼玉医大式PCPS-MICSシステムの開発に取り組み, その臨床的安全性と有効性に関して検討してきた。対象は1997年7月より1999年12月までの埼玉医大式MICS-PCPS群 (P群) 36例, Heart Port法 (H-P群) 24例および通常開心術症例群 (C群) 32例の3群間で手術成績および関連因子を比較検討した。病院死亡はP群で2例 (脊髄梗塞1例, 不整脈1例) に見られたが, H-P群およびC群で病院死亡はなかった。平均手術時間, 人工心肺時間, 大動脈遮断時間および心室細動時間, 術中溶血, 術後の平均ICU滞在日数において3群間に有意差は無かった。皮切長はP群で平均8.0±1.1cmと明らかに小さく, 穿刺による送脱血管挿入部も, 退院時には殆ど目立たなくなっていた。末梢血管より経皮的に送脱血カニューレを挿入する埼玉医大式MICS-PCPS法は, 安全な低侵襲心臓外科手術法であることが確認された。
  • 道清 勉, 吉川 澄, 江本 節
    2001 年 26 巻 4 号 p. 1121-1125
    発行日: 2001/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    胃癌における大動脈周囲リンパ節部分郭清の意義について検討した。対象は#16b 1 preおよびinterを郭清した胃癌121例である。この内, 転移陽性は14例で, 深達度は全例ss以上であった。そこで, 予後の検討を行うために, 転移陰性例の内, 深達度ss以上の63例をControlとした。再発率は転移陽性例がControlに比し有意に高く, 生存率も転移陽性例が有意に不良であった。再発形式には両群間で明かな差を認めなかった。以上より, 進行胃癌における大動脈周囲リンパ節部分郭清は予後の予測に有用であると考えられる。
  • 特に迷走神経肝枝・腹腔枝温存胃切除術について
    二村 浩史, 高山 澄夫, 樫村 弘隆, 佐野 芳史, 青木 照明, 藤崎 順子, 池上 雅博
    2001 年 26 巻 4 号 p. 1126-1129
    発行日: 2001/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    内視鏡的粘膜切除術適応外のリンパ節郭清が必要な早期胃癌に対して, 術後機能温存を考慮した迷走神経温存術を行ってきた。sm癌309例中39例12.6%にリンパ節転移を認めた。80mm未満のsm2まででは, 14例で4.5%であった。分化型の80mm以上のsm2で1例に, sm3では20mm以上で3例に2群リンパ節転移 (n2) を認めた。未分化型では80mm以上のsmlbで2例に, sm3では20mm以上で2例にn2を認めた。術前術中NOで, 80mm未満のsm2までであれば少なくともn2の可能性は極めて低いことからD1+No.7および8aりンパ節重点郭清をともなう迷走神経肝枝・腹腔枝温存胃切除術の適応は, 80mm未満のsm2までとしてよいと考えられた。
  • 木下 壽文, 青柳 成明, 福田 秀一
    2001 年 26 巻 4 号 p. 1130-1134
    発行日: 2001/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    1969年1月から1999年12月までに経験した早期乳頭部癌28例を対象とし治療方針について検討した。深達度はm : 14例, od : 14例で, 術式は膵頭十二指腸切除術 (PD) : 26例, 乳頭部切除術 (RP) : 2例であった。PD症例について進行癌と比較すると肉眼型は腫瘤型が大部分を占めており, 脈管・神経浸潤はないかあっても軽微なものが多かった。リンパ節転移陽性例は3例で, 全例第1群リンパ節転移であった。再発死は1例で2年後に (14) 再発で死亡した。RP症例は2例で高齢者および高度肝硬変合併例であった。2例共に切除断端陽性で, 1例は4年10カ月の現在生存中である。早期癌といえどもリンパ節転移を認めることよりPD (PpPD) +D2郭清が原則と考えている。RPは全身状態不良例, 高齢者, ポリープ型で癌が先端にのみ限局している症例が適応と思われる。
  • 佐藤 浩一, 前川 武男, 矢吹 清隆, 玉崎 良久, 前川 博, 工藤 圭三
    2001 年 26 巻 4 号 p. 1135-1139
    発行日: 2001/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    大腸穿孔56例の病態とエンドトキシン吸着療法;PMX (polymyxinB吸着カラム) 療法の適応について検討した。術前ショックおよび白血球減少の発現頻度はそれぞれ28.6%, 26.8%で, 発現例の死亡率はそれぞれ43.8%と46.7%と極めて高率であった。また発症から手術まで24時間以上経過した症例は39.1%と多く, その死亡率も38.9%と高率であった。PMX療法の治療効果を検討すると, 術前ショックおよび発症から手術まで24時間以上経過例では, PMX療法による効果は認められなかった。一方, 術前白血球減少例では, PMX療法施行群の死亡率は16.7%で, 非施行群は66.7%であり両者間に有意差を認めた。以上よりPMX療法は大腸穿孔症例のうち, 術前白血球減少例に対して有用な治療法となり得ると考えられた。
  • 尾崎 公彦, 小山 勇
    2001 年 26 巻 4 号 p. 1140-1145
    発行日: 2001/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    心停止後ドナーを用いた臓器移植では, 温阻血障害をいかに軽減するかが大きな問題である。従来の自然落下式の冷保存液による死体内灌流を用いた臓器摘出法では, 移植後の臓器不全がほとんど必発であった。新たに導入された人工心肺を用いた死体内灌流のコアークーリング法は心停止後ドナーを用いた献腎移植において有用であることが報告されている。この方法は酸素化した自己の血液で死体を灌流する方法であるが, いまだ有効性の機序は明らかでない。今回, この人工心肺コアークーリング法の有効性をブタを用いて従来法のFlushing法と比較検討した。60分の温阻血腎および肝の灌流後の組織ATP量およびエネルギーチャージは両者で有意差は認められなかった。臓器の中心温度はコアークーリング法で有意に低下がみられ効果的な臓器の冷却が行われていることが明らかとなった。これにより遷延化した温阻血による障害を防ぐ可能性が示唆された。
  • 胸骨挙上法と胸骨下ハンドアシスト法
    城戸 哲夫, 内海 朝喜, 濱中 雄幸, 福井 伸哉, 仲原 正明
    2001 年 26 巻 4 号 p. 1146-1151
    発行日: 2001/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    低侵襲手術を目的に, 前縦隔腫瘍に対して新しい鏡視下手術の胸骨挙上式ならびに胸骨下ハンドアシスト胸腔鏡下手術を施行した。本手術成績からその有用性と問題点について検討した。1997年5月から2000年5月までの3年間に行った重症筋無力症15例, 胸腺嚢胞8例, 成熟型奇形腫3例, 胸腺腫2例, その他5例の33例を対象とした。手術は胸骨下部を胸骨吊り上げ器で挙上し, 前縦隔に生じた空間に胸腔鏡, 内視鏡器具を同時に挿入し鏡視下手術を行うinfrasternal approach法で行った。重症筋無力症例に対しては拡大胸腺摘出術を行う目的で頸部にも横小切開を加え, 胸腺上極周囲脂肪織の郭清と上方からの左腕頭静脈剥離を行った。胸腺腫1例を含む6例は術中, 手術操作性と安全性の向上を目的にハンドアシスト法を追加した。左腕頭静脈との強度の癒着 (奇形腫) や損傷 (カルチノイド) の2例が胸骨縦切開へ移行された。鏡視下手術を完遂しえた31例の手術時間は平均165分, 術中出血量は平均88mlであった。重症筋無力症の2例に術後crisisを認めたが, その他に術後合併症は認められなかった。術後在院日数はcrisisの2例を除いて平均5.6日であった。重症筋無力症の予後は, 寛解4例, 改善8例, 不変3例で有効率80%と良好であった。前縦隔疾患に対する胸骨挙上式鏡視下手術は低侵襲で術後成績からも満足できる術式と思われる。胸骨下ハンドアシスト法は鏡視下手術の弱点を補える方法で, 悪性例にも適応可能と思われる。本手術時の左腕頭静脈損傷は重大な合併症であり, 腫瘍の大血管への癒着, 浸潤の際には, 速やかな胸骨縦切開への移行が必要である。
  • 矢野 由希子, 八代 享
    2001 年 26 巻 4 号 p. 1152-1155
    発行日: 2001/08/30
    公開日: 2010/02/09
    ジャーナル フリー
    今回われわれは術前の骨シンチグラムで乳癌原発巣に一致して強い集積像を認めた症例を経験したので報告する。症例は48歳女性。左乳房腫瘤を自覚して外来を初診した。左乳房外側に径11cmの境界明瞭な腫瘤を触知した。超音波検査で境界明瞭, 辺縁不整, 内部不均一の低エコー腫瘤を認めた。穿刺吸引細胞診で乳癌と診断した。術前に遠隔転移検索の骨シンチを施行し, 左乳房腫瘤に一致して強い集積像を認めた。左乳癌の診断で胸筋温存乳房切除術を施行した。病理組織は浸潤性乳管癌で腫瘍内に壊死を認め, 石灰沈着を認めなかった。本症例の99mTc-MDPの集積に腫瘍内壊死が関与していると考える。
  • 榎本 克久, 天野 定雄, 大原 守貴, 秦 怜志, 櫻井 健一, 福澤 正洋
    2001 年 26 巻 4 号 p. 1156-1159
    発行日: 2001/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    線維腺腫内に発生した浸潤性乳頭腺管癌の1例を経験したので報告する。症例は65歳女性で, 約30年前に右乳房の腫瘤を自覚したが線維腺腫の診断にて某医で経過観察していた。平成11年3月頃より増大傾向を認め当科を初診した。局所所見では, 占拠部位は右乳腺D領域で, 卵形, 境界明瞭, 弾性硬, 大きさ1.5cm×1.5cmであった。乳房の皮膚および皮下組織への癒着は認めなかった。超音波検査, マンモグラフィーでも悪性所見は認めなかった。細胞診はclassIIの診断であった。しかし, 増大傾向があったことを考慮して, 局所麻酔下に腫瘤の摘出生検を施行した。病理組織診断にて線維腺腫内に乳頭腺管癌を認め, 生検後49日目に右乳房円状切除および右腋窩リンパ節郭清術を施行した。自験例は線維腺腫内に発生した浸潤性乳頭腺管癌であり, 本邦報告例では, 16例目であると思われる。
  • 小林 元, 大井田 尚継, 森 健一郎, 永田 靖彦, 朴 英智, 根津 健, 三宅 洋, 天野 定雄, 福澤 正洋
    2001 年 26 巻 4 号 p. 1160-1164
    発行日: 2001/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    今回われわれは胃小細胞癌の1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する。症例は46歳男性。主訴は心窩部痛。胃内視鏡にて胃体上部小轡側の病変を指摘され, 当科入院となる。血液生化学検査所見では異常を認めず, 腫瘍マーカーも正常範囲内であった。胃X線造影および胃内視鏡では, 胃体上部小彎側に, type2型様腫瘍を認めた。進行胃癌の診断にて胃全摘, D2郭清, Roux-en-Y再建術を施行。肉眼所見は, T2N1H0P0M0 : StageIIであった。病理組織学的診断は, Small cell carcinoma, t3 (se), ly2, v3, n1 : stageIIIaであった。術後経過良好で, 5-FU300mgおよびMMC10mgの後療法施行後, 術後24日目に退院, 外来にて同化学療法を継続したが, 術後6カ月多発肝転移にて再発, 入院, FP療法を2週間, EAP療法を行ったものの, 術後7カ月で死亡した。胃小細胞癌は, 稀な疾患であるが, その予後は, きわめて不良であり, さらなる補助療法の検討が必要と考えられる。
  • 大久保 和隆, 佐藤 滋, 山崎 達之, 馬島 辰典, 須田 健, 小野 充一, 鳥巣 良一, 望月 衛, 林 治, 小柳 泰久
    2001 年 26 巻 4 号 p. 1165-1169
    発行日: 2001/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は52歳, 男性。平成11年10月27日, 突然の腹痛を認め, 症状増強したため救急車にて当院救急外来受診。腹部触診所見にて筋性防御, 胸部単純X線写真にてfree airを認めたため, 消化管穿孔による腹膜炎の診断にて緊急開腹手術を施行した。開腹すると腸液に汚染された混濁黄色腹水を中等度認めトライツ靱帯から約30cm付近の空腸に4×4cm大の腫瘍性病変を認め辺縁に穿孔部が認められた。周囲リンパ節の腫大は無く, 腫瘍を含め約40cmの空腸を切除し, 端々吻合を施行。病理所見にて, HE染色では小型~中型の異型リンパ球のびまん性増殖が小腸の全層に認められた。また免疫染色ではCD3陽性UCHL-1が部分陽性であった。以上より小腸原発のT細胞悪性リンパ腫と診断された。術後経過は良好で, CHOP療法を4クール施行した。術後1年3カ月で再発の徴候はなく健在である。
  • 高橋 公一, 北條 浩, 横手 祐二, 許 俊鋭
    2001 年 26 巻 4 号 p. 1170-1174
    発行日: 2001/08/30
    公開日: 2010/02/09
    ジャーナル フリー
    症例は63歳, 男性。平成11年4月頃より下血を認めたため, 当院を受診した。直腸癌の診断にて超低位前方切除術予定で麻酔導入したところ, 突然心室細動となり手術は中止となった。その後の冠動脈造影術 (CAG) にて左主幹部 (LMT) 入口部90%狭窄認め, 心拍動下冠動脈バイパス術 (off-pump CABG) を施行した。その2週間目に超低位前方術を施行した。術後経過良好にて現在外来通院中である。本症例は直腸癌の麻酔導入中に心房細動に至ったLMT入口部狭窄病変であり, 準緊急的にoff-pump CABGを施行したことは有効であると考えられた。
  • 井桁 千景, 金子 英彰, 山田 恭司, 山口 晋
    2001 年 26 巻 4 号 p. 1175-1178
    発行日: 2001/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は66歳男性。1年前, 他院で関節リウマチを指摘され治療開始したが, 軽快せず, 治療目的にて当院に紹介入院となる。入院時の超音波検査で胆嚢内に腫瘤陰影, 腹部CTで肝S4, S5領域に結節性の低吸収域, 血管造影で肝同部位にring-shape enhancementを認めた。画像診断より肝浸潤を伴う胆嚢癌の疑いで肝切除術を施行し, 慢性炎症性肉芽腫と診断された。肝肉芽腫は良性疾患であり, 保存的治療が原則と考える。そのため肝肉芽腫の術前診断は重要であり, 術前エコー下針生検や術中迅速病理が有用であると考える。
  • 中川 国利
    2001 年 26 巻 4 号 p. 1179-1182
    発行日: 2001/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した2010例中, 手術中に腸管を損傷した4例 (0.2%) について, その要因と対応について検討した。損傷部位は十二指腸2例, 小腸1例および大腸1例であった。腸管損傷の要因としては, 十二指腸および大腸を損傷した3例では慢性および急性胆嚢炎による著明な癒着があげられた。また小腸を損傷した例では, 胃癌術後による小腸と腹膜との癒着があげられた。手術中に損傷に気づいた3例では, 1例で腹腔鏡下に, 2例で小開腹下に修復した。他の1例ではドレインからの腸内容物の流出にて気づき, 手術翌日に腹腔鏡下に修復した。腹腔鏡下胆嚢摘出術における腸管損傷は稀ではあるが, 腹膜炎や敗血症を伴う重篤な合併症である。トロカール挿入時や周囲臓器から胆嚢を剥離する際には慎重に行うと共に, 終了時には腸把持鉗子を用いて腸管損傷がないことを確認する必要がある。
  • 本告 正明, 蓮池 康徳, 辻仲 利政, 武田 裕
    2001 年 26 巻 4 号 p. 1183-1186
    発行日: 2001/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は47歳男性。発熱, 腹痛にて近医受診し, 胆嚢炎の診断にて開腹胆摘術を施行された。術後3カ月後より黄疸が出現し, 当院紹介受診した。精査にて胆嚢管癌と診断し, 胆管切除術, 総肝管空腸吻合術施行するも姑息的手術に終わった。近年, 胆石症や胆嚢炎などの良性胆嚢疾患に対しては腹腔鏡下胆嚢摘出術が標準術式となっているが, 胆嚢管内の小結石や早期癌病変が見逃される危険性がある。そのため, 術中胆道造影を施行し, 胆嚢管の病変を検索することが必須と考えられた。
  • 山崎 誠, 岸渕 正典, 弥生 恵司
    2001 年 26 巻 4 号 p. 1187-1190
    発行日: 2001/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    術前CTで嵌頓腸管が描出されたことにより術前診断が可能であった3例の閉鎖孔ヘルニアを経験した。全例女性で平均年齢は80歳と高齢であった。これらは, CTによる本症の診断が可能であった。閉鎖神経刺激症状 (Howship-Romberg徴候, 以下HRS) は2例で認めた。手術は以前の2例では全身麻酔下下腹部正中切開 (以下開腹法) が行われ, 最近1例は腰椎麻酔下鼠径法 (以下鼠径法) が施行された。腸切除は開腹法の2例に行った。発症より手術までの日数は, 開腹法症例で平均8日, 鼠径法では2日であった。本症は, 高齢の痩せた女性に起こりやすく, 腸閉塞を発症することが多いことから, 早期診断・治療が重要となってくる。高齢女性の原因不明の腸閉塞では本症の可能性も念頭に置き, HRSも参考にしながら早期のCT検査が必要と考える。早期に確定診断がつけば, より侵襲の少ない鼠径法による手術も可能である。
  • 医療事故防止の観点から
    弥山 秀芳, 三箇山 宏樹, 川瀬 泰裕, 寺村 重郎, 鎌野 尚子, 米倉 康博, 長谷川 健司, 柳屋 義郎, 奥野 雅史, 山田 修, ...
    2001 年 26 巻 4 号 p. 1191-1196
    発行日: 2001/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    医療事故の約1/5は薬物療法に起因するもので, これら薬剤関連事故 (ADEs) の発生率は全入院患者の6.5%にも達するとの報告がある。当院では, 7年前から薬剤師が入院患者の薬物療法に関して薬学的見地から積極的に病棟でのチーム医療に参画している。薬剤師は毎日患者と面談すると共に回診にも参加し, 薬学的観点から得られた患者や薬剤に関する情報を医療スタッフ間で共有できるように, 薬剤師もカルテに直接コメントを記載した。この結果, 質の高いチーム医療が行われるようになった。薬剤師のチーム医療への参画で重篤なADEsを回避し得ることについて言及した。多くの医療従事者が関与するチーム医療では, 医療情報を共有することが前提となるとともに, 良い成果を上げるにはチームリーダーである医師の姿勢が重要である。薬剤師を含めたチームメンバーがそれぞれの専門性を出し合って緊密な協力体制が整った場合, 医療事故を防ぐ有効な手段になると思われた。
  • 山崎 洋次
    2001 年 26 巻 4 号 p. 1197
    発行日: 2001/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
  • 星 和彦
    2001 年 26 巻 4 号 p. 1198
    発行日: 2001/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
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