日本外科系連合学会誌
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26 巻, 6 号
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  • 坂本 俊樹, 松井 聡, 小平 祐造, 田中 茂夫
    2001 年 26 巻 6 号 p. 1373-1380
    発行日: 2001/12/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    肝臓は他の臓器と比較して, 移植後の免疫寛容を誘導しやすいと考えられているが, その機序の詳細は未だ研究途上にある。胎生期の肝臓は活発な造血臓器として機能しているが, 造血を終えて分化した成熟期の肝臓は, 多彩な固有機能を備えると共に, 造血系と免疫系 (hematolymphoid system) の統御に関わる臓器 (hematolymphoid organ) として生後も機能する潜在能力を保持している。この能力は肝臓の持つ旺盛な再生能力と密接に関係しており, 肝臓に特徴的な臓器背景と考えられる。肝臓移植後に, 移植された肝臓が生着しうるか否かは宿主に一方的に制御されるのではなく, 肝臓自身がこれらの潜在能力を介して, 宿主に対する免疫寛容の導入, 維持に積極的に関与している可能性がある。この発想は, 宿主と移植臓器との間に起こる二方向性の反応を強調したmicrochimerismの概念に共通する。肝臓移植後の免疫寛容の機序が, 肝臓の潜在能力をも含めた臓器特性の視点から更に解明されることが期待される。
  • 相原 正記, 松崎 恭一, 石田 寛友, 熊谷 憲夫
    2001 年 26 巻 6 号 p. 1382-1387
    発行日: 2001/12/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    今回, シンポジウムにあたり, 聖マリアンナ医科大学形成外科で実際にどのようにマイクロサージャリーを行っているのか検討した。当形成外科では, 微小血管外科の比重が非常に高く, とくに遊離組織移植術が大部分を占める。そのなかでも前腕部皮弁, 鼠径部皮弁, 肩甲部皮弁, 広背筋筋皮弁, 腹直筋筋皮弁が多くを占めていた。他科合同手術は耳鼻咽喉科との頭頸部再建例が多かった。
  • 浦野 正美
    2001 年 26 巻 6 号 p. 1388-1392
    発行日: 2001/12/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    近年の光学器械と電子機器の進歩により, 耳鼻咽喉科治療に導入できる内視鏡が豊富となってきたため, 内視鏡下鼻内手術をはじめとした鏡視下手術が急速に普及してきている。今回, 使用した内視鏡はSTORZ製硬性内視鏡で, 耳用, 鼻用, 喉頭用の3種類を用いた。内視鏡をCCDカメラに接続し, モニターで観察して手術を行った。内視鏡下手術は画像が広角で, 立体視ができないことや, 片手操作になることなど, 若干の訓練が必要であるが, 一度, 慣れてしまえば, 操作の応用範囲が広がり, 耳鼻咽喉科領域に有用だと思われる。また, モニターによる拡大視ができるため, 術者の加齢による視力低下にも対応でき, 研修医の教育や研究記録にも役立つと考えられる。これらのシステムはCCDカメラやモニター, ビデオ, 画像処理コンピュータが共用でき, コストパフォーマンスの上でも有利である。
  • 岩武 博也, 富沢 秀雄, 信清 重典, 加藤 功, 肥塚 泉
    2001 年 26 巻 6 号 p. 1393-1397
    発行日: 2001/12/30
    公開日: 2010/02/09
    ジャーナル フリー
    当科における早期喉頭癌に対するレーザー手術の成績を検討した。対象は1989年から1998年までの10年間に初回治療を行った声門癌T1症例52例である。局所制御率はレーザー手術群 (13例) 84.6%, レーザー手術+放射線治療群 (7例) 100%, 放射線治療群 (32例) 93.8%であった。5年喉頭保存率, 5年生存率は3群とも100%であった。レーザー手術の最も良い適応は, 腫瘍が前連合や声帯突起に浸潤していないT1症例であることが確認された。腫瘍のボリュームが大きい場合はレーザー手術により減量術後, 放射線治療を追加するのが望ましい。再発時, 腫瘍が声帯に限局していればレーザー手術の適応となる。以上より, レーザー手術は早期喉頭癌において有用な治療法の一つであり, 放射線治療と比べ治療期間が短く合併症も少ないなどQOLを向上させる手段になりうると考えた。
  • 出口 義雄, 梨本 篤, 藪崎 裕, 田中 乙雄, 佐々木 壽英
    2001 年 26 巻 6 号 p. 1398-1402
    発行日: 2001/12/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    Sentinelnode conceptの胃癌治療への応用を検証する目的で, 組織学的に1個のリンパ節のみに転移があった症例を対象とし, 腫瘍占拠部位と転移リンパ節の関連を分析した。胃癌占拠部位によって転移リンパ節には, いくつかの傾向がみられた。胃上部および胃中部癌の転移リンパ節は左胃動脈領域を中心に認められることが多く, また, 特に胃中部では総肝動脈周囲リンパ節への転移 (いわゆる跳躍転移) もみられた。sentinelnode biopsyを施行する際にはこの領域への検索が必要である。また, 胃下部癌においてはfirst drainage lymphnodeが多岐に亘り, 多領域の検索を必要とする領域であった。癌腫占拠部位による転移リンパ節の傾向を把握しておくことは, sentinelnode biopsyにおいて有用である。
  • 富田 凉一, 藤崎 滋, 池田 太郎, 朴 英智, 柴田 昌彦, 福澤 正洋
    2001 年 26 巻 6 号 p. 1403-1406
    発行日: 2001/12/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    十二指腸潰瘍穿孔症例における保存的治療14例 (A群;男性12例, 女性2例, 21.9~64.1歳, 平均47.3歳) および外科治療28例 (男性20例, 女性8例, 26.1~85.3歳, 平均52.7歳) について, 入院時腹部理学的所見と臨床検査成績から保存的治療の適応をretrospectiveに検討した。その結果, 1) 空腹時発症, 2) 発症から入院まで10時間以内, 3) 腹部理学的所見は上腹部の限局性腹膜炎, 4) 白血球数は15,000/mm3未満, 5) CRPは0.6mg/dl未満, 6) 腹部単純レントゲン検査では小腸ガス像を認めない。7) 腹部超音波所見ではモリソン窩に腹水は認めない, などの項目を満たす症例が保存的治療の良い適応となると思われた。なお, 保存的治療から外科治療に移行した症例は1例のみであったが, 本症例の経験から保存的治療を行う際には, 腹部理学的所見の経時的観察の重要性が示唆された。
  • 山村 卓也, 今村 大朗, 菅原 章隆, 堀越 邦康, 瀬田 真一, 陣内 祐二, 野田 真一郎, 猪飼 英隆, 大越 修, 山田 恭司, ...
    2001 年 26 巻 6 号 p. 1407-1411
    発行日: 2001/12/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    われわれが大腸進行癌に行っている小切開併用による腹腔鏡補助下大腸切除術LAC mini (laparoscopic assisted colectomy with node dissection via minilaparotomy) は, 開腹手術と同じ手技によりリンパ節廓清を行うものである。手術手技, 短期の治療成績を結腸進行癌16例について報告する。手術手技は腹腔鏡補助下に結腸を授動し, 小切開窓からリンパ節廓清, 再建を行う。手術侵襲については開腹手術と比べ, 手術時間はLAC mini法の方が長いが出血量には差がなかった。鎮痛剤の使用回数はLAC mini法の方が少なかった。術前および術後1日目の白血球数の推移に差はみられなかった。廓清したリンパ節個数には差はみられなかった。小切開窓からのリンパ節廓清を行う腹腔鏡補助下大腸切除術は有用であり, 今後繁用して良い手術術式であると思われる。
  • 東野 健, 加納 寿之, 門田 卓士
    2001 年 26 巻 6 号 p. 1412-1414
    発行日: 2001/12/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    血管造影下CTの発達により小病変の拾い上げが増え, 肝切除時の術中超音波検査の重要性が増している。本研究では汎用機を用いた術中エコーに経静脈性超音波造影剤レボビストを使用して有用性を検討した。肝細胞癌13結節のうち, 5結節には造影前に明らかな血流信号を認め, うち4例では造影後さらに増強した。8結節では造影前に血流信号を同定できなかったが, うち5例は造影後に明らかな血流信号を認めた。併せて13結節中, 10結節 (77%) において血流信号を認め, また, 同機種による術前エコーと比較すると陽性症例がやや増加しており, 術中造影超音波検査の有用性が示唆された。しかしながら, 最新機種を使用した報告と比較すると陽性率は高くはなく, 汎用機による診断の限界と思われた。今後さらなる検討が必要と思われた。
  • 石井 要, 西村 元一, 二宮 致, 北川 裕久, 藤村 隆, 萱原 正都, 清水 康一, 太田 哲生, 三輪 晃一
    2001 年 26 巻 6 号 p. 1415-1419
    発行日: 2001/12/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    大腸癌肝転移治癒切除81例を対象として, 残肝再発を中心に検討した。治癒切除例の3年, 5年生存率は51%, 37%であった。初回肝切後の再発は49例 (60%) に認めた。残肝再発は34例 (42%) で, うち残肝のみの再発は18例であった。残肝再発率を臨床病理学的因子別にみると, 転移病巣数で2個以上の症例で残肝再発率が有意に高率であったが, 時性別, H因子, 腫瘍径, 切除術式, 原発巣の組織型, リンパ節転移程度においては有意差は認められなかった。残肝再発例34例に対し再肝切除を施行したのは16例 (47%) で, そのうち同時性18例中13例 (72%) に, 異時性で16例中3例 (19%) に再肝切除を行った。再肝切除症例の3年生存率は57%であり, 有意に良好であった。肝切除後の残肝再発に対しても積極的な再肝切除に取り組むべきものと考えられた。
  • 三方 律治
    2001 年 26 巻 6 号 p. 1420-1423
    発行日: 2001/12/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    1986年から2000年までの15年間に当科で初めて入院治療を行った尿路性器癌1026例中135例 (13.2%) が重複癌で, 胃癌との重複癌は34例 (3.3%) 大腸癌との重複癌は25例 (2.4%) であった。これらの重複癌は全尿路性器癌1026例と比べると高齢であったが, 重複癌135例との年齢に有意差はなかった。また胃癌や大腸癌との重複癌の50%以上が喫煙の習慣をもっていたが, 全尿路性器癌の頻度と差はなかった。重複癌発生の時期および間隔に関しては, 胃癌と大腸癌で有意差はなかった。尿路性器癌領域からみた胃癌および大腸癌との重複癌の頻度と, 胃癌および大腸癌に尿路性器癌を合併する頻度について文献的考察を行った。
  • 山本 裕司, 野口 芳一, 森永 聡一郎, 山田 六平, 佐藤 勉, 吉田 悟, 佐々木 良介, 松本 昭彦
    2001 年 26 巻 6 号 p. 1424-1428
    発行日: 2001/12/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    スポーツヘルニア19例に対し, 早期に発症前のスポーツレベルに復帰することを目的に, 鼠径管後壁にtensionのかからないtension free repairを行い, その治療成績を検討した。右側7例, 左側10例, 両側2例であった。疼痛部位は外鼠径輪周囲が最も多く18例にみられ, 大腿内側8例, 鼠径管5例であった。10例に対し, 腹腔鏡下の腹壁補強を行った。腹腔内からの観察では, 気腹時に患側の膀胱上窩が健側と比較して陥凹しているのが全例にみられ, 腹壁補強に際してはこの部の補強が重要と思われた。9例に対し, PHS法を行った。腹腔鏡の所見から, PHS法においては内側は恥骨結合までunder lay patchを留置した。術後3ヵ月目では外鼠径輪周辺および大腿内側の疼痛は全例消失したが, 鼠径管の疼痛は1例において残存した。発症前のスポーツに復帰可能であった症例は18例95%であった。スポーツヘルニア症例に対する鼠径管後壁のtension freerepairはスポーツへの早期復帰に有効な手術法であり, 鼠径管後壁の補強には内側は恥骨結合までの十分な補強が必要と思われた。
  • 北原 光太郎, 宮下 薫, 大橋 泰博, 山口 和也, 浅海 信也, 大黒 善彌
    2001 年 26 巻 6 号 p. 1429-1433
    発行日: 2001/12/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    当科における直腸癌側方郭清の適応と現況を把握するために直腸癌側方リンパ節転移陽性例について, とくに臨床病理学的背景因子を中心に検討した。1993年7月から1999年12月までに当科における直腸癌開腹手術症例109例について検討し, 側方郭清を行った51例を対象とした。うち10例に側方転移が認められた。臨床病理学的背景因子として上方向リンパ節n-numberが増加するに従い側方転移率は増加する傾向にあった。壁深達度はmpまでの症例, 腫瘍径は30mm以下の症例に側方転移は認められなかった。組織型では分化度が低くなるに従って側方転移率は増加する傾向にあった。側方郭清症例の5年生存率は60.0%であり転移陰性症例で66.5%, 陽性症例で40.0%であった。51症例中, 術後の機能障害は4例で, うち1例は自己導尿を余儀なくされた。また局所再発は8例に認められた。
  • 原 尚人, 八代 享
    2001 年 26 巻 6 号 p. 1434-1438
    発行日: 2001/12/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は51歳女性, 10年前に他院で左乳癌の手術を受けている。1997年12月呼吸困難にて近医受診。左側胸腔全体を占める著明な胸水貯留を認め, 乳癌再発の疑いで入院。胸腔ドレーン挿入し持続吸引施行。数回提出した血性胸水中の細胞診, 結核菌を含む培養いずれも陰性であった。諸検査においても局所再発, 遠隔転移を思わせる所見はなく, 血清腫瘍マーカーは正常であったが, 胸水中のCA15-3が異常高値を示したため, 確定診断のため12月22日胸腔鏡下胸膜生検を施行した。10カ所の生検でも悪性所見なく, その後胸水はさらに減少し, ドレーン抜去後も貯留なくなったため退院。しかし退院直後血清腫瘍マーカーが急激に上昇してきたため, CMF開始したところ直ちに正常化。6クール終了後はtamoxifen, doxifluridine投与にて経過観察しているが, 3年経過した現在も腫瘍マーカーは正常値を保ち, 胸水貯留も認めていない。
  • 再建挙上空腸残存のみでの経口栄養
    高田 登, 原田 和則, 吉仲 一郎, 前田 将臣, 那須 二郎, 池田 良一
    2001 年 26 巻 6 号 p. 1439-1443
    発行日: 2001/12/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    胃全摘術後早期の上腸間膜動脈閉塞症を救命し, 在宅での経口摂取可能例を経験した。67歳男性。心房細動治療中。胃癌 (MU, 3型) で胃全摘+膵体尾部・脾・胆嚢合併切除, ρ型-Roux-Y再建を施行した (3T3, H0, P1, n3+M (16a1)) 。術後15日目に茶褐色水様便, 発熱出現。術後17日目腹痛はないが腹部膨満があり, 腹単写にて麻痺性イレウスを認めた。術後18日目呼吸状態の急速な悪化など敗血症性ショックに陥り, 腸管麻痺性イレウス, Kerckring皺壁の消失, 腹水にて再開腹した。上腸間膜動脈幹部拍動なく, 大半の小腸は壊死し, 小腸は挙上空腸のみ血流が保たれていた。上腸間膜動脈閉塞症の診断で小腸亜全摘 (胃全摘時の再建腸管のみ温存) +腸瘻造設を施行し, CHDFエンドキシン吸着療法等により救命した。再手術後45日目に腸瘻閉鎖+腸吻合術を施行し経口摂取可能となり, 初回術後5ヵ所月で軽快退院した。非経十二指腸再建腸管のみの短小腸病態ではあるが, 経口摂取 (普通食+成分栄養) のみで在宅日常生活が可能であった。
  • 中野 達夫, 月岡 雄治, 佐久間 寛, 上野 桂一, 石川 義麿
    2001 年 26 巻 6 号 p. 1444-1448
    発行日: 2001/12/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    胃のgastrointestinal stromal tumor (GIST) に, IIc型早期胃癌を合併した稀な1例を経験したので報告する。症例は86歳, 女性。貧血によるめまいを訴え, 精査にて胃体部の巨大粘膜下腫瘍と, 前庭部のIIc型早期胃癌を認めた。幽門側胃切除を施行し, 胃体部の粘膜下腫瘍は茶褐色の内容液を有する腫瘍で免疫組織化学的にGISTと診断した。免疫組織化学的には平滑筋マーカー, 神経系マーカーのいずれも陰性で, CD34およびc-kitが陽性であり, uncommitted typeと診断した。胃にGISTと早期胃癌が合併した稀な1例であり文献的考察を加え報告した。
  • 今北 正道, 松下 一行, 土居 聖, 桑原 幹雄, 西田 豊, 土生 秀作, 豊川 泰勲, 八幡 朋子, 若狭 研一
    2001 年 26 巻 6 号 p. 1449-1453
    発行日: 2001/12/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    今回, われわれはgastrointestinal stromal tumor (GIST) の4切除例 (十二指腸原発2例, 胃原発2例) を経験したので報告する。4例のうち近年に経験した症例1は47歳の女性, 主訴は出血に伴うタール便と貧血。精査の結果, 十二指腸水平脚の粘膜下腫瘍を認め, 十二指腸部分切除術を施行した。病理組織学的には紡錘形細胞の増殖を認める腫瘍で, 免疫組織化学的検索にて狭義のmalignant GISTと診断した。GISTは比較的新しい概念で, その診断, 治療, 予後についてまだ確立されていないため, 今後さらに検討する必要がある。
  • 櫻井 丈, 山田 恭司, 吉田 和彦, 金子 英彰, 嶋田 久, 山口 晋
    2001 年 26 巻 6 号 p. 1454-1458
    発行日: 2001/12/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は71歳の男性で糖尿病, アルコール性肝硬変にて当院内科入院中に上腹部不快感を訴え, 施行した胃内視鏡検査で, 胃穹窿部後壁に3cm大の中心潰瘍を伴う隆起性病変と胃体下部小彎側のIIc病変を認めた。IIc病変の組織検査にて高分化型腺癌の診断を得た。一方, 隆起性病変の生検は正常であった。胃癌, 胃粘膜下腫瘍の診断で胃全摘術を施行した。摘出標本では粘膜下腫瘍部は壁外, 壁内性に発育し, 大きさは22×25×30mmで中心潰瘍を有していた。病理組織診断では紡錘形細胞の増生を認め, 核分裂像も確認された。免疫染色ではS100 (+), NSE (-), CD34 (-), SMA (-), HHF (-), Desmin (-) にて悪性神経鞘腫と診断された。癌部はIIc, 11×17mm, 深達度m, 高分化型腺癌であった。術後1年10カ月に他病死された。胃悪性神経鞘腫の頻度は極めて低く, 本邦における報告は過去に55例に過ぎず, 癌と合併していた症例は本症例が2例目である。
  • 柴田 聡, 水口 直樹, 小林 美樹, 加藤 健, 盛 裕之, 向島 偕, 南條 博, 杉山 達郎
    2001 年 26 巻 6 号 p. 1459-1462
    発行日: 2001/12/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    早期胃癌を合併した胃原発悪性リンパ腫の1例を経験した。症例は79歳, 女性。心窩部痛を主訴として近医を受診し, 上部消化管造影検査で胃腫瘍を疑われ, 当院に紹介された。内視鏡検査で胃体下部前壁に陥凹を伴う隆起性病変を認め, 生検で悪性リンパ腫と診断した。平成13年1月31日に幽門側胃切除術を行った。標出標本の観察で, 胃体下部前壁の悪性リンパ腫に加えて, その小彎側に直径0.5cmの早期胃癌を認めた。組織学的検討にて胃悪性リンパ腫はdiffuse large cell type, B cell typeであり, 胃癌はwell differentiated adenocarcinoma, m, ly0, v0であった。胃悪性リンパ腫と胃癌が同時に発生する事は比較的稀であり, 報告する。
  • 上田 順彦
    2001 年 26 巻 6 号 p. 1463-1467
    発行日: 2001/12/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    病理学的に乳頭部癌と鑑別が可能であった乳頭周囲部原発の十二指腸癌の1例を報告した。症例は65歳, 男性。主訴は黄疸。腹部CT所見では膵内胆管末端部まで胆管の拡張を認めた。PTCD所見では総胆管は乳頭部で完全閉塞し, 閉塞部より10mm肝側の胆管壁左背側に長径18mmの平滑な圧排を認めた。内視鏡所見では主乳頭に一致して表面が粗大顆粒状の腫瘤を認め, この周囲に十二指腸粘膜ひだが収束し, bridging foldを呈していた。腫瘤部よりの生検で中分化型管状腺癌を認めた。乳頭部癌の診断にて膵頭十二指腸切除術を施行した。切除標本では主乳頭部に15×10mmの粗大顆粒状の病変を認めた。病理学的には主乳頭より5mm背側の陥凹部の十二指腸粘膜から粘膜下層, 筋層, 膵実質に中分化型管状腺癌が浸潤していたが, 主乳頭および総胆管, 膵管壁近傍までに留まっていた。以上の病理所見より乳頭周囲部原発の十二指腸癌と診断した。術後1年6カ月肝転移再発にて死亡した。
  • 保田 尚邦, 草野 満夫
    2001 年 26 巻 6 号 p. 1468-1470
    発行日: 2001/12/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例1は18歳, 男性で下腹部痛を主訴に来院した。腹膜炎の診断で緊急手術を施行した。手術所見では, 腹腔内全体に膿性腹水を認め, 小腸Crohn病による穿孔と判断し病変部を含めた腸切除を施行した。症例2は22歳, 女性で腹痛を主訴に来院した。開腹時に腹腔内全体に膿性腹水を認めた。回盲部より60cmの腸管に腸間膜付着部よりやや対側に離れた部位に約5mm大の穿孔部を認めた。穿孔部を含めた局所切除後に単純閉鎖を施行した。小腸穿孔を伴ったCrohn病に対しても, 小腸切除は可能な限り小範囲にとどめ, 術後の保存的療法によりQOLを高く保つことが重要と考えられた。また可能と判断すれば単純閉鎖術も考慮すべき術式であり, その適応として (1) 肛門側に完全狭窄がない, (2) 腸管の炎症性硬化が高度でなく縫合が可能, (3) 穿孔部位が明らかであることが考えられた。
  • 中川 国利
    2001 年 26 巻 6 号 p. 1471-1475
    発行日: 2001/12/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    過去12年間に, 虫垂粘液膿腫8例を経験したので報告する。年齢は平均57.6歳で, 男性3例, 女性5例であった。右下腹部痛を主訴とした例は5例で, 内4例は急性虫垂炎を疑い緊急手術を施行し, 手術中に虫垂粘液膿腫に気付いた。一方, 右下腹部痛の軽い1例および便潜血反応陽性3例の計4例では種々の検査を施行したが, 虫垂粘液膿腫と術前診断できたのは2例のみであった。他は直腸腫瘍およびS状結腸癌の術前診断が各1例で, 虫垂の病変は指摘できなかった。手術時, 虫垂が穿破していた例は2例で, また1例では虫垂が盲腸内に重積していた。手術は, 回盲部切除2例および虫垂切除6例で, 腹腔内を大量の生理食塩水にて洗浄した。病理学的には粘液嚢胞腺腫5例および粘膜過形成3例であり, 腹膜偽粘液腫をきたした例はない。
  • Nobuaki SAKAMOTO, Keizoh YONEDA, Jiroh OGATA, Munetaka MORI, Tatehiko ...
    2001 年 26 巻 6 号 p. 1476-1480
    発行日: 2001/12/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    A 76-year-old woman, presented with positive fecal occult blood. She underwent a resection of the pancreatic body and tail under a diagnosis of serous cystadenoma of the pancreas on July 21, 1999.The patient had no particular subjective symptoms, but laboratory examination during a follow-up visit revealed occult blood in the feces. Based on the findings of a barium study and colorectal endoscopy, she was diagnosed as having cancer of the vermiform appendix. Resection of the ileocecum and regional lymph node dissection (D2) were performed. The tumor filled the lumen of the appendix and resembled a polypoid Is tumor, protruding into the cecum. The tumor was a well-differentiated adenocarcinoma arising from the mucosa, with a papillary to tubular structure. The pathological stage of the tumor was rated as 0 (well-differentiated adenocarcinoma in a tubulo-villous adenoma). The depth of tumor invasion was m, ly (0), v (0), and no signs of lymph node metastasis were found. Primary cancer of the vermiform appendix is rare, and early detection is very uncommon. We report a case of primary carcinoma of the vermiform appendix that was detected at an early stage and discuss the relevant literature.
  • 三松 謙司, 矢嶋 幸浩, 上原 秀一郎, 永田 靖彦, 五十嵐 誠悟, 福澤 正洋
    2001 年 26 巻 6 号 p. 1481-1485
    発行日: 2001/12/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は67歳男性, 腹痛と右下腹部腫瘤を主訴に当院初診, 腸閉塞の診断にて入院精査となった。大腸内視鏡検査にて盲腸に易出血性の潰瘍性病変を認め, 生検による病理組織学的検査にてB細胞型リンパ腫と診断された。盲腸悪性リンパ腫と診断し, 腫瘍による閉塞でイレウス症状が出現したため手術を施行した。手術は, 結腸右半切除術 (D3) が施行された。手術標本の病理組織学的診断は, MALTリンパ腫で腫瘍は漿膜下に達していた。術後化学療法として, CHOPを3クール終了し術後1年6カ月無再発, 生存中である。大腸MALTリンパ腫の報告は少なく, 今回, 稀な盲腸原発MALTリンパ腫の1例を経験したので報告する。
  • 中山 壽之, 青木 信彦, 増田 英樹, 柴田 昌彦, 天野 定雄, 福澤 正洋
    2001 年 26 巻 6 号 p. 1486-1489
    発行日: 2001/12/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    術後せん妄が長期遷延することは稀である。今回, 肝切除後にせん妄を呈し6ヵ月以上精神不安状態を認めた1例を経験したので報告する。症例は66歳, 男性。健康診断で胸腺腫を指摘され入院した。腹部CT検査にて肝細胞癌の併発を認めた。癌告知を行い肝切除を先に行うことを説明した。術前より手術に対する不安を訴えていたが, 病状と治療法の説明を繰り返し行い同意を得た。肝右葉切除術が施行された翌日より興奮状態を呈した。精神科医指導により鎮静剤を投与したが第14病日においてもせん妄は持続した。術後6ヵ月経過しても不眠, 俳徊を断続的に繰り返した。術後せん妄の遷延を予防するには医療従事者とのコミュニケーションを密に取る必要があり, 特に複数のせん妄誘発因子を持つ患者に対しては術前から精神科医と協力し精神的看護や薬物治療を行うことが必要である。また手術侵襲を抑制し, 周術期の呼吸・循環・代謝動態の安定に努めることが重要であると考えられた。
  • 奈良 啓悟, 道清 勉, 荻野 信夫, 相馬 大人
    2001 年 26 巻 6 号 p. 1490-1496
    発行日: 2001/12/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    今回われわれは, 胃・腎の同時性重複癌と診断し, 一期的に切除しえた4症例を経験したので報告する。4症例とも胃癌の術前精査にて偶然腎癌が発見された。胃癌はstage I Aが3例, stage III Bが1例であり, 腎癌はstage IIが3例, stage IIIが1例であった。各癌の進行度に応じて, 一期的に根治術がなされた。本邦での, 胃腎同時性重複癌に対する一期的手術例は自験例を含め, 57例であった。
  • 池田 正孝, 関本 貢嗣, 瀧口 修司, 山本 浩文, 池永 雅一, 川端 良平, 林 昇甫, 辻 慶久, 門田 守人
    2001 年 26 巻 6 号 p. 1497-1500
    発行日: 2001/12/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡下脾臓摘出術後に門脈, 脾静脈血栓症を合併した1例を経験したので報告する。症例は31歳女性。平成12年3月感冒薬服用後紫斑・口腔内出血出現し, 近医にて血小板減少性紫斑病と診断された。プレドニン療法抵抗性のため, 平成13年4月腹腔鏡下脾臓摘出術施行した。手術時間は66分, 出血量極少量で術中問題点はなかった。術後4日目にCRP上昇を認めたため緊急造影CT施行。脾静脈内と門脈左枝に造影不良部位を認め血栓症と考えられた。超音波ドップラー検査にても門脈左枝の血流低下が認められた。至急抗凝固療法を開始した。術後11日目まで肝酵素の上昇を認めたがそれ以降正常化したため退院し抗凝固療法を外来にて続け, 3カ月後のMRIにて門脈内血栓は消失した。脾静脈・門脈血栓症は進行すると腸間膜静脈血栓症となり非常に重篤な病態である。非特異的症状で発症することがあり, 腹腔鏡下脾臓摘出術後は脾静脈・門脈血栓症を念頭に置いた術後観察が必要と考えられた。
  • 漆原 直人
    2001 年 26 巻 6 号 p. 1501
    発行日: 2001/12/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
  • 藤元 治朗
    2001 年 26 巻 6 号 p. 1502
    発行日: 2001/12/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
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