日本外科系連合学会誌
Online ISSN : 1882-9112
Print ISSN : 0385-7883
ISSN-L : 0385-7883
27 巻, 2 号
選択された号の論文の34件中1~34を表示しています
  • 北川 雄光, 北島 政樹
    2002 年 27 巻 2 号 p. 144-149
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    乳癌や悪性黒色腫のみならずその他の固形癌でもsentinel node navigation (SNN) の臨床応用への期待が高まっている。消化器癌についてはその妥当性の検証が開始されて間もないが, 多彩なリンパ流を有する消化器癌においてもRI法の導入などにより安定した再現性のある手法として実用できる可能性が報告されはじめている。多施設共同研究によるvalidation studyの推進, 手技の標準化, 縮小手術の導入に向けてのfeasibility studyの実施, 術中迅速診断の精度向上など臨床実施にいたるまでには課題が山積しているものの, 将来的にはSNNを用いて消化器癌外科治療の個別化が推進されるものと期待される。
  • 井本 滋, 佐伯 俊昭
    2002 年 27 巻 2 号 p. 150-152
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    乳癌の外科治療は, ここ10年で乳房全切除から乳房温存術へと大きく術式が転換した。さらに腋窩リンパ節郭清から腋窩リンパ節温存へと所属リンパ節の郭清がいま大きく変わろうとしている。乳癌におけるセンチネルリンパ節生検は, その仮説の信頼性の検証を経て, 世界中で急速に普及した新しい手術手技である。日本でも数十施設で試行され, いくつかの先進施設ではすでに腋窩リンパ節郭清が省略されている。欧米では腋窩リンパ節の郭清の有無を比較する大規模な臨床試験が進行中であり, 数年先にはセンチネルリンパ節生検が乳癌の標準的な外科治療の一つに位置付けられるものと考える。
  • 皮膚悪性黒色腫における臨床的意義
    山崎 直也, 山本 明史
    2002 年 27 巻 2 号 p. 153-159
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    1992年, Mortonらは皮膚悪性黒色腫の治療にintraoperativelymphaticmappingとsentinelnodebiopsyという概念を導入し, その有用性について報告した。今日では欧米を中心に, 悪性黒色腫はsentinelnodeconceptの成立する腫瘍として知られており, この方法の確立によって, 所属リンパ節郭清の適応がより厳密に規定される可能性があり注目されている。一方, わが国においては, 現在, 主に下肢原発の肢端黒子型黒色腫に対してvital dyeを用いた色素法によるintraoperative lymphatic mappingとsentinel node biopsyの手技が確立されつつあるというのが現状である。今後は下肢だけでなく全身の原発巣に対して核医学的な手法を併用した幅広い応用が必要となると考えられる。
  • 杉 和郎
    2002 年 27 巻 2 号 p. 160-164
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    肺癌におけるセンチネルリンパ節 (SN) 同定を試みた自験例の結果を報告するとともに, 欧米における現状, 今後の展望を検討した。cTIN0M0の非小細胞肺癌患者40例を対象とした。色素法25例, RI法15例によるSN同定を試みた。色素には1%isosulfan blue, 3~5mlを, RIには99mTc-Snコロイド (2mCi, 1.5ml) を用い, それぞれ腫瘍近傍に注入した。注入は色素法で25例中23例, RI法で15例中12例で適切な場所に注入してきた。色素法では23例中11例 (48%) で, RI法では12例中11例 (92%) でSNが同定できた。これらのSNが同定できた22例中, 3例は転移陽性であり, かつpN陽性症例であった。偽陰性症例はなかった。SN同定には未だ技術的な問題点が多いものの, 術中の正確なN因子評価, 転じてリンパ節郭清に伴う潜在的な合併症の回避, QOLの保持などの利点があり, 今後の研究の展開が望まれる。
  • 中野 静雄, 上之園 芳一, 東 泰志, Sameer W. QUBAIN, 喜島 佑子, 愛甲 孝
    2002 年 27 巻 2 号 p. 165-168
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    甲状腺癌に対するsentinel node (SN) conceptの妥当性について, 色素法, RI法を用いて検討した。甲状腺乳頭癌術前NO症例27例を対象とした。色素法では, 手術時に腫瘍近傍上下にLymphazurinO.2ml×2カ所注入し, 染色されたリンパ節をSNとした。後期の13例ではRI法 (99mTc-tincolloid) を併用し, lymphoscintigraphy, ガンマプロープによるRIの取り込みによりSNを同定した。色素法では, SN同定率93% (25/27), 正診率96% (24/25), 感度92% (11/12) であった。RI法ではSN同定率100% (13/13), 正診率92% (12/13), 感度80% (4/5) であった。甲状腺癌においてもSNconceptが成立する可能性が示唆された。臨床応用の具体的方法として, SN conceptに基づく積極的wait andsee policy, 術中RIカウントに基づく郭清の均質化, 内視鏡下手術の適応症例の選択などが考えられる。
  • 元村 和由, 菰池 佳史, 稲治 英生, 南雲 サチ子, 春日井 務, 小山 博記
    2002 年 27 巻 2 号 p. 169-172
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    乳癌において腋窩リンパ節郭清を省略する際に, センチネルリンパ節の正確な術中転移診断が必要となる。迅速組織診は数十枚の切片について免疫組織染色を行うという詳細な検討を要するが, 細胞診は短時間で簡便に正確な転移診断が可能である。
  • 局所麻酔下のwide excision + sentinel node biopsy
    沢井 清司, 中嶋 啓雄, 大江 信哉, 水田 成彦, 阪口 晃一, 鉢嶺 泰司
    2002 年 27 巻 2 号 p. 173-179
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    小切開で乳癌のsentinel node biopsy (SNB) を行うことが出来るならば, 小さな乳癌を局所麻酔下のdaysurgeryで根治することも可能と考えられる。そこで研究1では, 32例の乳癌症例を対象として99mTc-HSA-Dを用いたγ-Probe法と1%メチレンブルーを用いた色素法の併用法によるSNBを2.5~3.5cmの小切開で行った。その結果, 検出率96.9%, 正診率96.8%の好成績がえられた。この結果をもとに研究2では, 画像を含む腫瘍径が1.5cm以下で, 視触診, CT検査でリンパ節転移を認めない23例の乳癌症例を対象として局所麻酔下のwide excision+SNBをdaysurgeryで行った。SNは全例で検出することができ, うち2例 (8.7%) に微小転移を認めた。また, 入院治療への移行例は1例もなかった。以上から適応を厳密に選べば, 局所麻酔下のdaysurgeryで乳癌を根治させることは可能であると考えられた。
  • 上笹 直, 篠 塚望, 小山 勇
    2002 年 27 巻 2 号 p. 180-185
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    アデノウイルスベクター (Ad.CMVβ-gal) を用いたマウス腹腔内マクロファージへのLacZ遺伝子導入におけるM-CSFおよびGM-CSFの有用性を検討した。CSF非存在下におけるLacZ遺伝子導入率は感染前培養日数, 感染濃度および感染時間と密接な関係を示した。CSF存在下において, マクロファージを感染前に1~7日間培養し, Ad.CMVβ-galを投与したが, M-CSF, GM-CSF単独および併用下で培養したマクロファージでは, いずれの時期においてもCSF非存在下に比し, Lacz遺伝子導入率は高値を示した。CSF投与濃度と遺伝子発現率との間には明らかな関係を認めなかった。アデノウイルスベクターを用いたマウス腹腔内マクロファージへのLacZ遺伝子高効率導入において, M-CSFおよびGM-CSFはきわめて有用であると思われた。
  • 佐藤 博重, 許 俊鋭, 福島 由紀夫, 田邉 大明
    2002 年 27 巻 2 号 p. 186-190
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    重症呼吸不全を伴った補助人工心臓 (LVAS) 装着に対し, ECMO (extra-corporeal membrane oxygenation) による呼吸補助法としてのVAB (veno-arterial bypass) とVLAB (veno-left atrial bypass) の有効性を実験的に比較検討した。ブタ6頭を用い, 呼吸不全による低酸素状態は気管内挿管人工呼吸管理下で吸入酸素濃度を10%として作成した。ECMO補助流量は吸入酸素濃度100%とした時の心拍出量の30%とした。2つの方法によるECMO補助下で可能な限り高流量でLVAS補助を施行し, (1) 大動脈基部動脈血酸素分圧 (PaO2), (2) LVAS流量を測定した。大動脈基部動脈血酸素分圧 (PaO2) はVAB補助に比べVLAB補助で有意に高く (VAB vs VLAB=90.8±36.4mmHg vs137.4±59.5mmHg, p=0.047) また, LVAS流量に関しても有意差 (VAB vs VLAB=350.0±164.3ml vs1086.0±471.1ml, p=0.0069) を認めた。
  • 多賀 誠, 渡辺 拓自, 比企 太郎, 小山 勇
    2002 年 27 巻 2 号 p. 191-196
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2010/02/09
    ジャーナル フリー
    静脈の閉塞性疾患の治療として近年, ステント挿入が行われるようになってきた。本邦では, 主にbare stentが使用されており, 内腔の閉塞を予防するためのcovered stent使用の実験的報告は少ない。現在までの数少ないcovered stentの静脈内留置の報告では, ステントの外面のみをカバーした外張り型のステントを使用しており, ステント内腔に血栓や新生内膜の増生を認めている 。われわれは初めて, ステントの内外面をPTFE (polytetrafluoloethylene) によってカバーされている胆道用ステントを7匹の犬の下大静脈内に留置し, このステントが静脈に対して適しているか実験的に検討した。平均観察期間は8.6カ月 (最長20カ月) で, 全例内腔は開存しており, ステント内腔には, 血栓や内膜の増生を認めなかった。内外面カバー型PTFEステントは静脈ステントとして有用である事が示唆された。
  • 人工食道, 食道バイパス術との比較検討
    逢坂 由昭, 佐藤 滋, 高木 融, 岡田 了祐, 篠原 玄夫, 尾形 高士, 青木 達哉, 小柳 泰久
    2002 年 27 巻 2 号 p. 197-201
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    (目的) 切除不能食道癌にQOL改善を目的とした金属ステント療法を人工食道, バイパス手術と比較検討した。 (対象と方法) 1989年~2000年に施行した金属ステント (A群 : 13例), 人工食道 (B群 : 10例), バイパス手術 (C群 : 10例) を対象とした。検討項目は食事摂取改善度 (食事摂取状況をスコア化し, 治療前後の点数差で評価), 有効率, 合併症, 生存期間と食事摂取期間の比, 在院死亡率とした。 (結果) 食事摂取改善度, 有効率はB群, A群, C群の順に良好だったが, 各群間で有意差を認めなかった。合併症では, 吐・喀血はA群で有意に少なかった。またC群で縫合不全を高率に認めた。生存期間と食事摂取期間の比ではC群は他の2群と比べ有意に劣っていた。在院死亡率ではC群はA群と比べ有意に高率だった。 (総括) 金属ステントは合併症, 生存期間と食事摂取期間の比, 在院死亡率の点から, 切除不能食道癌に対するQOL改善に最も有効と思われた。
  • 森田 誠市, 梨本 篤, 薮崎 裕
    2002 年 27 巻 2 号 p. 202-206
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    胃癌リンパ節に対し, CAM5.2を用いて通常の病理検索の如く一切片の免疫染色を行い, 本法の臨床応用の可能性を検討した。1999年1月から2001年2月までに経験した胃癌手術症例のうち, センチネルリンパ節を中心に検討した252例, 3,260個 (A群) とNo.16リンパ節を検討した58例, 653個 (B群) を対象とし, 通常の一切片H-E染色にCAM5.2による免疫染色を付加した。 [結果] A群ではH-Eの転移頻度が10.6%であったのに対し, 免疫染色では11.4%であった。微小転移は15例に認めたが, リンパ節転移程度が増加したのは3例のみであった。B群では微小転移リンパ節は6個 (0.8%) と低率であったが, H-E染色でNo.16リンパ節転移陰性とされた症例の7.5%に微小転移がみられた。 [結語] 一切片法でのCAM5.2を用いた微小転移は低率で, 通常の病理検索に取り入れる意義は見いだせなかった。No.16リンパ節に関してはさらなる検討が必要である。
  • 松浦 一生, 二宮 基樹, 池田 俊行, 高倉 範尚
    2002 年 27 巻 2 号 p. 207-212
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    1991年から1999年までの9年間に当科で手術した胃癌症例1,193例のうち, 40歳未満の34例を若年者とし, 40歳以上70歳未満を壮年者, 70歳以上を高齢者として比較検討した。若年者胃癌は, 34例 (2.8%) であった。若年者胃癌の特徴として, 1) 男女比は女性に多い傾向にあった。2) 肉眼型は早期癌では全例IIc, IIIなどの陥凹成分を含み, 進行癌ではBorr.1, 2型は認めず, Borr.3, 4型が高率であった。3) 組織型では低分化型が75%と有意に多く, 特に印環細胞癌が47%と有意に高率であった。4) 壁深達度はSE, SIが29%と高率であった。5) 組織学的進行程度は, stageIII, IVがそれぞれ18%と高率であったが, 累積生存率において, 有意差は認められなかった。若年者胃癌は他の年齢層に比べて, 進行した症例が多いにもかかわらず, 予後が劣るということがなく, 積極的な治療が必要と考えられた。
  • 須原 貴志, 早川 雅弘, 国枝 克行, 佐治 重豊, 田中 千凱, 種村 廣巳, 大下 裕夫
    2002 年 27 巻 2 号 p. 213-218
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    腹膜播種早期診断法として教室の辻らは細胞膜表面に疎水結合しているCEA抗原を, phosphatidylinositol phospholipaseC (以下, PIPLC) により強制的に遊出させ, 腹腔洗浄液中のCEA濃度増強を検出するPIPLC法を開発したが, 血清CEAと原発巣組織CEAが共に陰性でもPIPLC法で陽性反応を示す例が存在した。そこで, 今回PIPLC法による感度増強程度と組織CEA発現程度との関連を検索した。CEA非産生培養細胞株MKN-28を用いた検討ではPIPLC法によるCEA遊出効果は認められなかったが, 胃癌開腹症例83例を用いた検討では, 原発巣組織CEA陰性かつ腹腔洗浄細胞診陽性例の50%がPIPLC法陽性であり, これらすべてで腹膜転移巣での組織CEA発現が確認された。PIPLC法は癌の多様性と悪性化段階で獲得したCEAをも効率よく検出できる可能性が示唆された。
  • 加藤 俊二, 田尻 孝, 松倉 則夫, 小野寺 浩之, 土屋 喜一, 池田 研吾, 木山 輝郎, 吉行 俊郎, 笹島 耕二, 徳永 昭, 恩 ...
    2002 年 27 巻 2 号 p. 219-223
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    5FU系抗癌剤の投与効果を規定する重要な因子にdihydropyrimidinedehydrogenase酵素があるが, チトクローム系酵素 (CYP) も種々の物資の代謝活性化酵素として, とくにCYP2A6やCYP2E1はFutrafulから5FUへの変換に関与してその効果に影響をおよぼしていると報告されている。5FU系抗癌剤 (5FUもしくはUFT) +CDDPによるネオアジュバント療法を施行した進行胃癌25例, 食道癌症例18例の組織学的 (grade I b以上) 抗腫瘍効果は, CYP2E1遺伝子のプロモーター領域の多型性がC2遺伝子タイプで23例中11例 (48%), C1ホモタイプで20例中2例 (10%) と, C2タイプがC1ホモタイプに比較しodds比で8.25と有意に高かった。遺伝子多型性とmRNA発現レベルとの関係を39例の肝癌切除例の非癌部肝組織で検討した結果, 肝に強く発現するCYP2E1のmRNAレベルは内因性コントロールであるGAPDH比でC1ホモタイプ (76.8±118.5) がC2タイプ (23.1±31.2) に比較して有意に高かった。cyp2E1遺伝子多型性がもたらす遺伝子発現の差やそれがもたらす酵素活性の強弱が5FU系+CDDP抗癌剤の抗腫瘍効果に影響をおよぼしている可能性がある。
  • 富田 涼一, 池田 太郎, 藤崎 滋, 柴田 昌彦, 丹正 勝久, 福澤 正洋
    2002 年 27 巻 2 号 p. 224-228
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    排便障害を主訴として来院した男性71例にdefecographyを行った。その結果, rectoceleを伴う症例は8例 (A群 : 15~73歳, 平均48.6歳), 伴わない症例は63例 (B群 : 28~74歳, 平均52.6歳) であった。A群はB群より明らかに, 残便感, 手術既往 (前立腺摘出術, 低位前方切除術, 痔核切除術), 直腸壁と骨盤底筋群の異常, などを多く認めた。よって, 男性のrectoceleの成因には, 前立腺切除, 手術操作による骨盤底筋群や直腸周囲支持組織の脆弱化などの関与が考えられた。しかし, rectoceleは2cm以下と小さく, その他の直腸壁異常と骨盤底筋群異常とを認めたことから, 残便感の原因とは考えにくかった。
  • 高見 博, 池田 佳史
    2002 年 27 巻 2 号 p. 229-232
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    小切開法 (2~3cmの皮膚切開) による低侵襲性甲状腺・副甲状腺手術の臨床的有用性を検討するために, 小切開法で行われた症例を従来の大きな切開創 (従来法) で行われた症例と対比した。甲状腺濾胞腫瘍17例では, 小切開法 (3cm) は従来法と比べ手術時間は若干長かったが, 入院期間は短かった。術後2日目の創部痛, 術後1カ月目の美容面, 愁訴からみた満足度は小切開法の方が明らかに優れていた。微小癌 (3cm) 4例では両側の気管周囲のリンパ節郭清が行われた。バセドウ病 (3cm) 5例では摘出重量は56gから118gと大きかった。原発性副甲状腺機能充進症 (2cm) 20例, 腎性副甲状腺甲状腺機能元進症 (3cm) 10例ではともに甲状腺濾胞癌と同様の結果を示した。全例で反回神経麻痺, 術後出血などの合併症は認められなかった。小切開法は従来法に比べ手術時間は若干延長するが, 入院期間は短く, 術後の創部痛, 愁訴は明らかに少なく, QOLの高い優れた術式であると考えられた。
  • 石田 秀之, 龍田 眞行, 桝谷 誠三, 今村 博司, 清水 潤三, 増田 慎三, 木谷 光太郎, 江角 晃治, 加藤 仁, 川崎 高俊, ...
    2002 年 27 巻 2 号 p. 233-237
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    近年手術などの治療行為の危険性に関する患者への説明義務とともに, それぞれの施設での成績を示すことが求められている。今回われわれは当院で1985年から2000年の間に待期的に手術した大腸癌のべ794症例を対象とし, 手術操作に起因する合併症と全身的な合併症について検討した。手術操作に起因する合併症は縫合不全 : 4.7%, 早期イレウス : 3.1%の順に多かった。術後の合併症のため3.3%に何らかの観血的治療を要した。手術関連死は1.0%で, 手術操作に起因する死亡が0.5%, 全身的な合併症による死亡が0.5%であった。手術操作に起因する死亡は減少しているが, 全身的な合併症による死亡が起きている。今後全身的な合併症を予防する工夫が必要である。
  • 荻原 正規, 許 俊鋭, 山本 真, 田邊 大明
    2002 年 27 巻 2 号 p. 238-241
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    左冠動脈主幹部完全閉塞による心肺停止・意識障害にて発症した1例を経験した。本症例では一般市民によるbystander CPRと救命救急士による除細動が奏効し, 引き続く院内での救急集中治療により全身状態の改善が得られた。また循環器内科による重篤な不整脈に対する管理と心臓外科手術 (Dor手術, 冠動脈バイパス術) を行うことにより心不全・不整脈イベントや中枢神経の後遺症なく完全社会復帰が可能となった。来院時心肺停止症例に対する適切なプレホスピタルケアを含む救急医療のさらなる充実のために, 本症例は示唆に富む貴重な1例であると考えられた。
  • 松尾 兼幸, 大山 和一郎
    2002 年 27 巻 2 号 p. 242-245
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は49歳,女性。舌右縁後方の20mm大の腫瘤を指摘され当院受診した。細胞診にては明らかな異常所見は認められなかったが,生検にて舌紡錘細胞癌と診断された。全身麻酔下に単発性舌腫瘤に対する舌部分切除術を施行した。しかし,術後1カ月目に,残存舌の切除部近傍に腫瘍再発が認められたため,舌紡錘細胞癌の局所再発と診断し,舌部分切除術を再度施行した。さらに再発防止目的で,192Irピンによる放射線治療を行った。しかし,再手術より1カ月後,頸部超音波検査にてリンパ節転移を確認し,頸部リンパ節郭清術を施行した。両側頸部リンパ節郭清術後2カ月後,呼吸困難を訴え,当院を再受診した。胸部レントゲン写真上,多発肺転移像が認められ,急速に呼吸状態は悪化し初回手術よりわずか6カ月で死亡した。今回,急速な進行を示した舌紡錘細胞癌の1例を経験したので,治療方針を含めた文献的考察を加え報告する。
  • 田中屋 宏爾, 小長 英二, 竹内 仁司
    2002 年 27 巻 2 号 p. 246-248
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は62歳, 女性。1976年, 右乳房腫瘤の摘出生検を施行された。乳管乳頭腫症を主体とする乳腺症であった。1995年, 再び右乳房に腫瘤を自覚し当科を受診した。右乳房A領域に3cm長の手術瘢痕を認め, 瘢痕直下に径0.8cm大の腫瘤を触知した。乳癌と診断し手術を施行した。術後病理診断は乳頭腺管癌で, 乳癌の発生部位と一致して瘢痕様線維性結合織が認められた。乳癌の危険因子について若干の考察を加えて報告した。
  • 広瀬 由紀, 山本 広幸, 藤井 秀則, 田中 文恵, 馬場園 豊
    2002 年 27 巻 2 号 p. 249-253
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は55歳男性, 主訴は腹部膨満感で, 近医にて腹水と腹部腫瘤と診断され当院へ紹介された。腹部超音波検査, CT, MRIにて血液を内容成分とする?胞性部分と充実性部分が混在した膵尾部に連続する腫瘍であり, 腹腔側に突出する膵のsolid-pseudopapillary tumor (SPT) と診断された。開腹時, 血性腹水と腹腔側に破裂した約15cmの腫瘍を認め, 胃部分切除, 脾合併膵体尾部切除により腫瘍を切除した。腫瘍は胃と強固に付着し, また胃脾間膜の腹側に存在し, その原発部位は膵ではなく胃上部前壁大彎側であった。Myoglobin強陽性で胃のgastrointestinal stromal tumor (GIST) と診断された。腫瘍の存在部位, 画像診断の所見からは膵のSPTとの鑑別診断は極めて困難であった。また腹腔内出血をきたしたGISTは比較的稀で, その文献的考察を加えた。
  • 中川 国利
    2002 年 27 巻 2 号 p. 254-257
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    胃切除後に, 柿胃石による小腸閉塞をきたした1例を経験したので報告する。症例は61歳の男性で, 6年半前, 胃癌にて幽門側胃切除術を受けた。下腹部痛と嘔吐を主訴として来院し, 腸閉塞と診断してイレウスチューブを留置した。小腸造影では回腸に境界明瞭な陰影欠損像を, 腹部CT検査では含気性の海綿状腫瘤を認めた。保存的療法にて腸閉塞が改善しないため, 小腸腫瘍による腸閉塞と術前診断して開腹手術を施行した。回腸未端に鶏卵大の腫瘤が存在し, 回腸を5cmほど縦切開して腫瘤を摘出した。腫瘤は暗褐色で, 表面は凹凸不整, 弾性硬, 6×3×3cm大であった。発症前に柿を多食し, 成分分析でタンニンを検出したため, 柿胃石と診断した。胃切除後には稀ながら胃石にて腸閉塞をきたす例もあるため, 詳細な問診とCT検査などの画像診断を行うことが大切である。
  • 道清 勉, 吉川 澄, 江本 節
    2002 年 27 巻 2 号 p. 258-262
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    胃癌術後の直腸転移に対して直腸切除を行い2年以上良好なQOLの下, 生存した1例を経験したので報告する。症例は60歳, 女性。平成7年11月16日, 胃癌に対して, 幽門側胃切除術を施行した。por, se, n0, ly1, v0, stageIIであった。平成9年10月頃より便秘がちになり, 同年12月, 注腸検査にて直腸Rsの全周性狭窄を認めた。内視鏡検査では同部の粘膜は浮腫状で, 半周性の不整隆起を認めたが, 生検ではGroup1であった。胃癌術後ダグラス窩転移による直腸狭窄の疑いで平成10年1月20日, 低位前方切除術を施行した。切除標本では全周性の壁肥厚を認めた。病理組織学的にはスキルス様の低分化腺癌であり, 胃癌からの転移と診断した。平成12年4月6日, 癌性腹膜炎のため死亡した。
  • 池内 浩基, 中村 光宏, 山村 武平
    2002 年 27 巻 2 号 p. 263-266
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は49歳, 男性。昭和60年 (33歳時) に腹痛にて発症のクローン病。それ以後, 入退院を繰り返していたが, 栄養障害が著明になり当院内科を紹介され入院。入院後の精査で, 小腸に多発性の狭窄と著明な拡張を認め, 手術目的で当科転科となった。開腹所見はTreitz靱帯から160cmの部位より回腸末端 (455cm) までの間に14カ所のskip lesionを認め, 母指通過が不可能であった10カ所に対し狭窄形成術を行った。術後は良好に経過し, 術後2週間目に行った小腸造影検査では小腸の拡張は残存するものの, 結腸への通過性は良好であったため, 成分栄養療法を開始した。術後は栄養状態の改善も認められ, 現在まで, 再狭窄症状は認めず, 外来通院加療中である。
  • 楠本 祥子, 渡辺 明彦, 仲川 昌之, 佐道 三郎, 阪口 晃行, 玉置 英俊, 大槻 憲一
    2002 年 27 巻 2 号 p. 267-271
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は54歳, 男性。51歳時, 腫瘤形成性慢性膵炎にて膵体尾部切除術を受けた。上腹部痛を主訴に来院し, 腹部レントゲン検査でニボーを認めたため腸閉塞と診断した。直腸指診で血便を認めたため大腸内視鏡検査を施行し, 回腸末端より15cm口側に重積した腸管の先進部が観察され, 回腸―回腸型の腸重積と診断した。注腸造影では回腸に蟹の爪様の像を認め, 同日緊急手術を施行した。開腹所見では回腸末端から約10cm口側に約15cmにわたる重積がみられ, 重積した腸管は一部壊死に陥っていたため, 回腸部分切除術を施行した。切除標本において, 先進部の5cm口側に腸重積の原因と考えられる隆起性病変を認め, 病理組織学的に腺管腺腫と診断された。腸重積は, 注腸造影検査, 超音波検査, CTなどで診断されることが多いが, 本症例では血便の精査目的に施行した大腸内視鏡検査により腸重積の診断が可能であった。
  • 大東 雄一郎, 阪口 晃行, 松田 雅彦, 中島 祥介
    2002 年 27 巻 2 号 p. 272-275
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は49歳, 女性。便秘と腹痛を主訴に当院を受診した。大腸内視鏡検査でS状結腸に全周性の腫瘤性病変を認め, 生検で腺癌と診断された。腹部CT検査では脾臓に7×5cmの造影効果の弱い腫瘤を認め, MRI検査と併せて脾転移と診断した。他臓器に転移は認めなかった。以上よりS状結腸癌, 同時性孤立性脾転移と診断し, S状結腸切除術, 脾臓摘出術を施行した。S状結腸の病理組織検査は高分化型腺癌で, 脾腫瘍も同様の組織型であり, 脾転移と診断された。術後経過は良好であったが, 術後9カ月目の腹部CT検査で多発性肝転移を認め, 肝動注化学療法を施行した。肝転移巣の増大は比較的緩徐であったが, 術後1年7カ月目の頸椎MRIで頸椎転移を認め, 椎弓切除術を施行した。その後全身リンパ節転移を認め, また頸椎転移の増大による全身麻痺も出現した。次第に状態は悪化し, 術後2年4カ月目に死亡した。
  • 上田 順彦
    2002 年 27 巻 2 号 p. 276-280
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    非閉塞性胆嚢炎の3例を検討したので報告する。全例既往歴に動脈硬化性の脳血管障害を有していた。主訴, 2例は突然の右季肋部痛, 1例は心窩部痛と嘔気であった。画像所見のうちUSでは全例胆嚢壁の肥厚は軽度で明確な3層構造は認めなかったが, 胆嚢内壁の不整と胆泥を認めた。3例とも腹水を認めたが画像上胆汁か浸出液かの鑑別は困難であった。2例は待機手術がなされたがうち1例は胆嚢部分切除となり, 2例とも胆嚢管まで壊死に陥っており処理が不確実であった。残る1例は緊急手術がなされたが全身状態が不良のため壊死胆嚢からの胆汁漏出に対する局所ドレナージのみ施行した。摘出された2例の胆嚢壁は全域にわたり全層性の壊死に陥っていた。非閉塞性胆嚢炎は典型的な臨床所見に乏しいため, 胆嚢動脈根部の閉塞する危険因子を有する症例は念頭に置く必要がある。またUSで胆泥貯留, 胆嚢内壁の不整, 腹水貯留などの所見が診断に有用であった。
  • 山田 卓也, 広瀬 一, 阪本 研一, 安村 幹央, 森 美樹, 仁田 豊生
    2002 年 27 巻 2 号 p. 281-285
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例, 68歳, 男性。主訴, 上腹部痛。腹部超音波検査で, 肝腫瘍を指摘され, 紹介入院した。腹部CT・MRIで転移性肝癌, 上部消化管内視鏡検査で十二指腸乳頭下部の2型腫瘍を認めた。原発性十二指腸癌および肝転移と診断し, 横行結腸間膜浸潤部合併切除, リンパ節郭清を伴う膵頭十二指腸切除および肝前区域切除を施行した。術後経過は良好で, 肝動注用リザーバー留置後, 間歇的肝動注療法を外来で施行した。現在肝右葉全体に多発肝転移再発を認めているが, 術後1年担癌生存中である。原発性十二指腸癌は比較的稀な疾患であり, 肝転移を伴う症例に対して肝膵同時切除 (HPD) を施行した報告はない。残肝再発に対する治療が問題となるが, 術後リンパ節転移再発, 局所再発は認めておらず, HPDが安全に施行可能で, 根治的切除が可能な場合は検討されるべき術式であると考えられる。
  • Hiroyuki SUGO, Shunji FUTAGAWA, Tomoe BEPPU, Masaki FUKASAWA, Kuniaki ...
    2002 年 27 巻 2 号 p. 286-290
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    We report a case of metastatic seeding along the catheter tract after percutaneous transhepatic biliary drainage (PTBD). A 77-year-old Japanese woman was admitted due to the presence of a hard mass in the right lateral abdominal wall. The patient had a past medical history significant for bile duct carcinoma which was treated by a radical pancreatoduodenectomy with preoperative PTBD 4 years and 9 months before. On physical examination, the hard mass was located on the right frank at the entry site of the previous PTBD. She underwent a exicision of the tumor and a fistulectomy. A histologic examination revealed adenocarcinoma which was compatible with metastasis from the primary bile duct tumor. A review of the world literature found 21 other patients with such complication. In a review of these patients, all nineteen which described detail were underwent the manipulation of the tumor by inserting the catheter through the tumor or biopsy of the cancer. Their postrecurrence 1-and 3-year survival rates were 40 and 32%.In conclusion, metastatic seeding along the catheter tract is an unusual complication, but almost all such cases result in a poor prognosis. For prevention such complications, the frequent exchange of catheter or insertion through the tumor should be avoided in such patients in whom a possible curative resection is considered.
  • 渡瀬 誠, 下村 淳, 魚住 尚史, 門脇 隆敏, 刀山 五郎, 山田 毅, 丹羽 英記, 小川 嘉誉
    2002 年 27 巻 2 号 p. 291-295
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は79歳, 女性で嘔気, 嘔吐, 腹痛を主訴に来院された。術前CTにて総胆管結石, 胆嚢十二指腸気腫を認めるとともに結石の腸管内嵌頓を認め胆石イレウスと診断し緊急手術を施行した。回腸末端から40cmの回腸に直径3cm大の胆石が嵌入しており小腸切開, 胆石除去術を施行した。
  • 宮澤 秀彰, 安藤 秀明, 伊藤 正直, 小棚木 均, 小山 研二
    2002 年 27 巻 2 号 p. 296-300
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    1997年1月以降, meshを用いた腹壁瘢痕ヘルニア修復術後の合併症として, 腸瘻形成1例, 皮下漿液貯留1例, 術後再発を2例経験した。腸瘻形成したのはprolene meshを用いて腹腔鏡下ヘルニア修復術を施行した症例で, 3年9カ月後創より膿の排出がみられ再手術を施行。腹膜に覆われず腹腔内に露出していたmeshに小腸が強度に癒着し穿通した状態で, meshを介し小腸皮膚瘻を形成していた。術後再発の2例は, meshの留置部位, 大きさに問題があったと思われた。それらの反省をふまえ, 現在では, 腹膜を縫合閉鎖できない場合は必ずComposix meshを使用し, 腹直筋後面を健常な組織まで剥離したのち十分な大きさのmeshを固定し, mesh前面に持続吸引ドレーンを留置するようにしており, 良好な結果が得られている。
  • 渡辺 学, 炭山 嘉伸, 柁原 宏久, 中村 光彦, 児玉 淳, 田中 英則, 寺田 武史, 榎本 俊行, 長尾 二郎, 草地 信也, 斉田 ...
    2002 年 27 巻 2 号 p. 301-305
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    子宮内膜症は, 子宮に主病変の存在する内性子宮内膜症と子宮以外の部分に子宮内膜組織が発育する外性子宮内膜症に分類される。中でも肝に発生する外性子宮内膜症は非常に稀である。今回われわれは, 肝嚢胞と術前診断した肝臓外性子宮内膜症の1例を経験したので報告する。症例は26歳, 女性。心窩部痛を主訴に受診。画像診断にて, 肝左葉を中心とする16×10cmの多房性巨大嚢胞が認められた。巨大肝嚢胞の診断にて腹腔鏡下肝嚢胞開窓術を施行した。切除した嚢胞壁の病理組織学検査にて, 異所性の子宮内膜組織が認められ, 肝臓子宮内膜症と診断した。
  • 安村 幹央, 飯田 辰美, 後藤 全宏, 二村 直樹, 阪本 研一
    2002 年 27 巻 2 号 p. 306-310
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は75歳, 女性。検診で便潜血陽性を指摘され当院内科を受診した。右下腹部に弾性硬, 辺縁整な結節状の腫瘤を触知した。腹部CT上, 盲腸部に連続する石灰化を伴う球形腫瘤を認め, 大腸内視鏡検査で盲腸に辺縁不整な潰瘍と乳頭状腫瘤を認めた。生検で高分化型腺癌, 管状腺腫および扁平上皮と診断された。盲腸癌と診断し, 回盲部切除および右卵巣切除, 2群リンパ節郭清を施行した。5×5cm大の卵巣腫瘍が盲腸の漿膜面に癒着し, 粘膜面には潰瘍が形成され, 潰瘍底に毛髪が認められた。割面では毛髪, 黄色充実性部分, 石灰化部分が混在した。病理組織学的に卵巣腫瘍は盲腸の筋層を分断し粘膜に達しており, 骨, 軟骨, 気管粘膜, 皮膚組織に分化した成熟奇形腫と診断された。奇形腫由来の表皮および気管支粘膜で覆われた腺組織に高分化型腺癌が認められた。術後5年を経過した現在まで再発の徴候を認めていない。
feedback
Top