日本外科系連合学会誌
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29 巻, 6 号
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  • 市倉 隆, 帖地 憲太郎, 三枝 晋, 坂本 直子, 望月 英隆
    2004 年 29 巻 6 号 p. 965-967
    発行日: 2004/12/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    患者サイドからみた食道癌治療に対する意識を調べる目的で, 当科で食道癌に対し右開胸・開腹による根治切除を受けた症例に対し, 仮想状況を設定して手術と化学放射線療法 (CRT) のいずれを選ぶかについてアンケート調査を行った。45名中41名 (91%) から回答が得られた。CRTにより癌が治る可能性が手術と同じと仮定した場合, 手術を選ぶ, CRTを選ぶと回答したものは各々44%, 54%であった。CRTにより癌が治る可能性が手術より5%, 10%, 15%, 20%低いと仮定した場合, 手術を選ぶと回答したものは各々61%, 66%, 76%, 78%と順に上昇した。CRTを選ぶと回答したものにはT1症例が多かったが, 他の背景因子や術後の食事摂取, 身体愁訴と回答との間に明らかな関連はみられなかった。Informed consentの際, 各治療の評価は医師サイドと患者サイドとで必ずしも一致しない可能性を念頭におくべきと考える。
  • 術後栄養状態の変化
    牧野 知紀, 藤谷 和正, 辻仲 利政, 平尾 素宏
    2004 年 29 巻 6 号 p. 968-972
    発行日: 2004/12/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    はじめに : 上部早期胃癌に対する噴門側胃切除・空腸pouch間置再建術の意義を胃全摘・Roux-en-Y再建術と比較検討した。方法 : 術前診断T1N0 (Stage I A) の上部早期胃癌に対して, 迷走神経温存噴門側胃切除・空腸pouch間置再建術を施行した12例 (以下P群) と胃全摘・Roux-en-Y再建術を施行した14例 (以下R群) について, 周術期因子, 術後の栄養状態を比禁した。結果 : リンパ節郭清においてR群でD2郭清が多かった (p=0.002) 以外は, 背景因子に両群間で偏りはなかった。周術期因子に関しては, 手術時間がP群においてやや長いが (p=0.057), 術後在院日数はP群が有意に短かった (p=0.037) 。術後合併症の頻度は両群間で差はなかった。術後体重減少率は, P群において術後6, 12カ月目とR群に比べ有意に少なく (それぞれp=0.026, 0.031), 同様の傾向が術後2年まで続いた。他の栄養指標因子に関しては, 両群間に有意な差は認めなかった。考察 : P群は手術時間は多少かかるが, 術後合併症でR群と差はなく, 術後在院日数・術後体重減少においてR群よりも有利であった。
  • 岡田 豪, 塚田 健次, 田中 真伸, 須田 寸実人, 仙石 博信, 根上 直樹, 國井 康弘, 松岡 隆, 坂本 一博, 鎌野 俊紀
    2004 年 29 巻 6 号 p. 973-979
    発行日: 2004/12/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    大腸癌患者における血管新生にかかわる因子の臨床的意義を検討した。対象) 当教室で手術を施行した大腸癌患者41例と非担癌者21例を対象とした。方法) 対象血清のendostatin (以下ES) およびvascular endothelial growth factor (以下VEGF) をELISA法で測定し, 術前後のES, VEGFの動態, これらの因子と臨床病理学的背景因子および腫瘍内血管密度との関連を検討した。結果) 癌患者術前ES値は非担癌者に比べ有意に (p=0.001) 高値を示した。術前ES, VEGFともに臨床病理学的諸因子との間において相関はみられなかった。癌患者においてES値は術後に有意に低下し (p=0.01), VEGFは術後有意に上昇した (p=0.03) 。結論) ESはMMP, cathepsin L等の酵素および他の因子が多段階に関与し, 腫瘍あるいは腫瘍外の血管内皮細胞より分泌されている可能性が考えられた。一方, 術後VEGFが有意に上昇したのは手術による創部の状態などの影響も十分に考えられた。
  • Hideyuki ISHIDA, Kazuo SHIRAKAWA, Hiroshi NAKADA, Masaru YOKOYAMA, Tom ...
    2004 年 29 巻 6 号 p. 980-987
    発行日: 2004/12/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    Purpose : This study examined whether preoperative plasma big ET-1 concentrations may be a predictor of liver metastasis of patients with colorectal cancer. Methods : Big endothelin (ET) -1 was measured in plasma of 46 patients with colorectal cancer (Dukes'B ;10, Dukes'C ;14, Dukes'D ; 22) and 15 healthy volunteers. Expression of ET-1 mRNA was also examined in samples from 9 patients with synchronous liver metastasis (Dukes'D) by semiquantitative RT-PCR method. Results : The ratio of levels above the cutoff determined by the plasma from healthy volunteers (0.83 fmol/ml) was exclusively higher in patients with synchronous liver metastasis (68%, p < 0.01). In addition, the big ET-1 level was not different between patients without recurrence for three years or more (n=12) and those who developed liver metastasis after curative resection (n=12, p=0.61). The big ET-1 levels were positively correlated with the volume of liver metastasis (p=0.02, n=9). Relative ET-1 mRNA expression was not different between primary lesions and matched liver metastases (n=9, p=0.34). Conclusions : (1) Plasma big ET-1 level may not be a predictor for the development of liver metastasis of colorectal cancer after curative resection. (2) Elevated plasma levels of big ET-1 is possibly due to increased tumor burden.
  • 若月 幸平, 成清 道博, 山田 行重, 中島 祥介
    2004 年 29 巻 6 号 p. 988-992
    発行日: 2004/12/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は69歳男性, 嚥下困難を主訴に当科受診した。上部消化管造影および内視鏡検査で胸部中部食道に約13cm大の隆起性病変を認めた。生検で扁平上皮癌と診断し, 食道亜全摘出術およびリンパ節郭清術を施行した。切除標本では3カ所に有茎性の隆起性病変を認めた。病理組織像ではHE染色にて扁平上皮癌成分と紡錘細胞からなる肉腫様成分とがみられ, 両者の移行部も認めた。また, 特殊染色では移行部において上皮由来を示すkeratinと非上皮性由来を示すvimentinが陽性であったため“いわゆる癌肉腫”と診断した。食道癌肉腫は食道癌よりも比較的予後が良好といわれているが, 早期より脈管侵襲およびリンパ節転移の割合が多く, 今回PCNA (proliferating cell nuclear antigen) 染色で上皮成分より非上皮成分の増殖能が高い可能性が考えられ, 食道癌に準じた手術および補助療法が必要と考えられた。
  • 山戸 一郎, 青松 幸雄, 藤本 平祐, 桑田 博文, 中島 祥介
    2004 年 29 巻 6 号 p. 993-997
    発行日: 2004/12/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は58歳, 男性。胃潰瘍のため, 近医に通院していた。上部消化管内視鏡検査で十二指腸水平脚に径6mm大のIIc病変を指摘され, 生検の結果, 低分化腺癌が検出された。精査加療目的に当院紹介となった。腹部CT, USにて肝転移, リンパ節腫大を認めなかった。病変部位を術前に点墨した上で, 開腹下に術中内視鏡で同部を確認し, 十二指腸楔状切除術を施行した。組織学的検査の結果はカルチノイド腫瘍 (sm3, ly0, V0) であった。術後, 12カ月を経過した現在, 外来で経過を観察しているが局所再発や遠隔転移は認めていない。十二指腸カルチノイドの中でも水平脚に発生する頻度は3%と比較的稀な疾患である。また, 上部消化管内視鏡検査の際は, 可及的に深部まで観察する必要があると考えられた。
  • 遠藤 公人, 中川 国利, 鈴木 幸正
    2004 年 29 巻 6 号 p. 998-1001
    発行日: 2004/12/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    胃石による腸閉塞と術前診断し, さらに腹腔鏡下に胃石が存在した小腸を同定すると共に小開腹下に胃石を摘出したので報告する。症例は60歳の女性で, 28年前に十二指腸潰瘍にて選択的迷走神経切離術兼幽門形成術を受けた。下腹部痛と嘔吐を主訴として来院し, 腸閉塞と診断してイレウスチューブを留置した。上部消化管内視鏡検査では胃内に結石を, 腹部CT検査では胃および小腸に含気性の海綿状腫瘤を認めたため, 胃石による腸閉塞と診断した。保存的療法で改善しないため, 腹腔鏡下に胃石が存在した小腸を同定し, 小開腹下に小腸を縦切開して摘出した。胃石は4.5×3.0cm大で, 成分分析より柿胃石と判明した。また胃内の結石は内視鏡下に粉砕し, 経口的に摘出した。胃石による腸閉塞と術前診断するためには, 詳細な問診とCT検査での小腸内海綿状腫瘤の確認が大切であった。また腹腔鏡下手術を行うことにより, 小開腹創から小腸内の胃石を摘出することができた。
  • 本邦報告119例の統計的観察
    篠原 玄夫, 森 崇高, 三室 晶弘, 坂本 啓彰, 野牛 道晃, 冨岡 英則, 土田 明彦, 青木 達哉
    2004 年 29 巻 6 号 p. 1002-1006
    発行日: 2004/12/30
    公開日: 2010/02/09
    ジャーナル フリー
    患者は69歳, 女性。右下腹部痛を主訴に来院, 腹部単純X線写真にて小腸ガスを認め, 腸閉塞の診断で入院となった。入院時の血液生化学検査では強い炎症所見を認め, また腹部CT検査において圧痛部位に一致して層構造を示す4cm大の腫瘤とその尾側に5cm大に拡張した腸管を認めた。以上より腸重積, 腹腔内膿瘍, 絞扼性イレウス等を疑い, 緊急開腹手術を行った。開腹すると回盲弁より約60cm口側の回腸腸間膜付着部対側に8×5cm大のMeckel憩室を認め, 一部が穿孔して膿瘍を形成しこれを大網が被覆していた。手術は憩室の楔状切除を行った。病理組織学的検査では, 一部に穿孔を伴う急性潰瘍が認められ, 部分的に異所性の幽門腺が存在していた。Meckel憩室は一般に20歳以下で発見される例が多く, 穿孔は比較的稀である。今回われわれは老年期に穿孔で発症したMeckel憩室の1例を経験したので報告する。
  • 明石 諭, 山本 雅敏, 内本 和晃, 細井 孝純, 今川 敦史, 八倉 萬之助
    2004 年 29 巻 6 号 p. 1007-1010
    発行日: 2004/12/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は54歳男性。右下腹部痛を主訴に来院した。腹部CT検査にて回盲部に約4cm大の腫瘤とその内部に約1.5cm長の線状石灰化を認めた。また大腸内視鏡検査にて虫垂開口部の発赤および同部位からの膿汁の排泄を認め, 魚骨の虫垂穿通による盲腸周囲炎と診断し, 回盲部切除術を施行した。切除標本軟線撮影および割面にて魚骨が虫垂を穿通しているのが確認された。誤嚥された魚骨による消化管損傷は時にみられるが, その約3割が肛門で虫垂は稀である。またその術前診断は困難とされているが, 本症例は緩徐な経過であったため諸検査が施行可能であり, 正確な術前診断を得ることが出来た。時間的な余裕があれば種々の検査を併用することによって, より正確な術前診断, さらには低侵襲治療が可能になるであろうことが示唆された症例であった。
  • 川崎 篤史, 三松 謙司, 大井田 尚継, 加納 久雄, 久保井 洋一, 天野 定雄
    2004 年 29 巻 6 号 p. 1011-1013
    発行日: 2004/12/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は55歳男性, 右下腹部痛および右鼠径部膨隆を主訴に来院。腹部所見は右下腹部に圧痛およびBlumberg徴候を認め, 右鼠径靱帯頭側に鶏卵大の膨隆を認めた。血液生化学検査では白血球数, CRPおよびクレアチニンキナーゼ (以下CK) の上昇を認めた。右鼠径ヘルニア嵌頓の診断で緊急手術を施行。手術所見はdirect typeの鼠径ヘルニアを認めた。ヘルニア内容は大網であったが絞扼の所見はなかった。膿性腹水の貯留を認めたため, 腹腔内を検索したところ回盲部に虫垂炎による膿瘍が形成されていた。同一創にてiliopubic tract repair法によるヘルニア修復および虫垂切除を施行した。非還納性の鼠径ヘルニアに急性虫垂炎を併発した報告例はない。本症例のようにヘルニア手術中に, ヘルニア内容の嵌頓が否定されて腹腔内に膿性腹水などを認めた場合, 十分に腹腔内を検索する必要があると思われた。
  • 北東 大督, 小山 文一, 藤井 久男, 西沼 亮, 中島 祥介
    2004 年 29 巻 6 号 p. 1014-1017
    発行日: 2004/12/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    腸重積にて発症したS状結腸癌の1症例を経験した。初診時, 下部直腸を占拠する巨大腫瘤を認め, 進行直腸癌と診断した。しかし, 病変はCTでは同心円状腫瘤に描出され, MRIでは直腸内への口側腸管の陥入像を認めた。大腸腫瘍が先進部となった腸重積と診断し, 緊急手術を施行した。術中, 重積部を用手的に整復し, S状結腸癌による腸重積と診断し, S状結腸切除術を行った。大腸癌に起因する腸重積の場合, 重積部を整復するか否かは議論の余地があるが, 本症例では未整復のままでは括約筋温存手術が困難であり, 整復後にS状結腸切除術を施行できたことで, 十分なQOLの向上を得ることができた。
  • 坂口 大介, 石田 秀行, 横山 勝, 小高 明雄, 橋本 大定, 糸山 進次
    2004 年 29 巻 6 号 p. 1018-1022
    発行日: 2004/12/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    びまん浸潤型大腸癌が穿孔することはほとんど知られていない。非癌部口側穿孔を契機に診断された, びまん浸潤型形態を呈したS状結腸高分化型腺癌の極めて稀な1例を経験したので報告する。症例は75歳, 男性。便秘を主訴に近医を受診。緩下剤を処方されたが軽快せず, 2週間後に腹痛が増強したため近医を再受診したところ, 腹部単純X線写真でfree-airを認めた。大腸穿孔が疑われ当科紹介入院。緊急手術を施行したところ, びまん浸潤型S状結腸癌の非癌部口側穿孔による糞便性腹膜炎であった。S状結腸切除・口側人工肛門・肛門側粘液痩造設術を施行した。切除標本の組織学的検索では, 粘膜下層の腫瘍形成や強いlymphoid reactionを伴い, わずかに固有筋層に浸潤する高分化型腺癌 (stageI) であった。術後23カ月目の時点で再発を認めず, 腸管の再建を行った。
  • 五井 孝憲, 高村 敬晴, 小畑 真介, 澤井 利次, 片山 寛次, 山口 明夫
    2004 年 29 巻 6 号 p. 1023-1026
    発行日: 2004/12/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は65歳, 男性。検診時に便鮮血陽性を指摘され近医受診, 精査にて直腸癌と診断, 当科紹介となった。手術所見は下部直腸後壁に1.8×2.0cm, 1型の癌腫が認められ, 病理診断にてpoorly differentiated>signet ring cell>moderately differentiated carcinoma of the rectum, 深達度mp, 脈管浸潤ly3, v1, n2 (+) (下腸間膜リンパ節転移) であった。術後は順調に回復, 歩行状況ならびに食事摂取も良好であったが, 術後10日目に突然両下肢の全知覚麻痺, 運動麻痺および背部疼痛が出現した。椎骨MRIにて胸椎, 腰椎に多発性の転移巣を認め, 特にTh8の骨腫瘍が脊髄に圧排, 浸潤しており症状の原因病巣であった。緊急に脊椎腫瘍摘出, 人工椎体固定, 後方固定術を施行した。切除椎体の病理診断はpoorly differentiated carcinomaであった。現在 (術後4カ月) 自立歩行可能となっている。
  • 村上 泰介, 中川 国利, 鈴木 幸正
    2004 年 29 巻 6 号 p. 1027-1031
    発行日: 2004/12/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    胸腔鏡下肺転移巣切除後に, ポートサイト再発をきたした直腸癌の1例を経験したので報告する。症例は66歳の女性で, 2年9カ月前に直腸癌にて直腸前方切除術を施行した。切除1年後にCT検査で左肺に腫瘍を認め, CT誘導下に針生検を施行したが悪性とは診断できなかった。腫瘍が次第に増大し, さらに近傍に1個の腫瘍を認めた。そこで直腸切除1年3カ月後に胸腔鏡下に2カ所の左肺楔状切除を行い, 直腸癌転移と診断した。肺転移巣切除1年6カ月後に, ポートサイトにくるみ大の腫瘤を認めたため切除した。病理学的に直腸癌と同様な組織構造を呈し, ポートサイト再発と診断した。胸腔鏡下手術は大腸癌の肺転移に対しても積極的に施行されつつあるが, ごく稀ながらポートサイト再発をきたす例がある。自験例は再発巣切除後いまだ4カ月しか経過していないが, 他部位に転移を認めない例では積極的に転移巣を摘出することにより, 予後の改善が期待できると思われた。
  • 谷島 聡, 柳本 澄孝, 名越 大起
    2004 年 29 巻 6 号 p. 1032-1035
    発行日: 2004/12/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    尋常性乾癬の発症や増悪因子と大腸癌の関係の詳細は不明とされている。今回われわれは, もともと尋常性乾癬のある患者に直腸癌が発生した1例を経験した。症例は54歳, 男性。13年前に尋常性乾癬に罹患した。直腸の病変は, Rsの亜全周性2型病変で2003年11月6日に, 高位前方切除およびD2リンパ節郭清を施行した。T3N1P0H0M0 : Stage IIIaで根治度A1) であった。術後7カ月間, 直腸癌の再発徴候を認めていない。皮膚症状は術後一時的に改善傾向を呈したが, 2カ月後頃より再び増悪を認めた。従って自験例において皮膚症状は, 直腸癌とは関係ないことが示唆された。また, 尋常性乾癬皮疹部の手術創はkobner現象は生じず, 通常の治癒過程を辿った。
  • 櫻井 健一, 天野 定雄, 柏尾 光彦, 榎本 克久, 斉藤 良人, 松尾 定憲, 三宅 洋, 根岸 七雄
    2004 年 29 巻 6 号 p. 1036-1039
    発行日: 2004/12/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    直腸肛門部悪性黒色腫 (ARMM) の発生頻度は稀であり, 極めて予後不良である。症例は53歳, 男性。下血を主訴に当科を受診。直腸診にて直腸後壁に弾性軟の腫瘤を触知し, 注腸造影検査および大腸内視鏡検査にて直腸 (Rb) に易出血性で横径約2.5cmの隆起性病変を認めた。2度にわたる生検時の病理診断がGroupIIIであったため, 確定診断目的にpolypectomyを施行したところ悪性黒色腫の診断を得た。深達度はmp, 断端陽性であった。Microwave coaglation therapy (MCT) とcisplatin, vindesine, dacarbazineからなるCVD療法を開始した。20カ月を経過した時点で腫瘍の増大を認め, 疼痛が増強してきたため, 経肛門的腫瘍切除, 人工肛門造設術を施行。23カ月目に肺, 肝転移を認め, 27カ月時に原病死となった。本邦ではARMMの大多数に対して腹会陰式直腸切断術が選択される。本症例は原発巣の局所コントロールと化学療法により, 従来の報告例と比較して長期生存を示した1例である。
  • 中島 崇裕, 海保 隆
    2004 年 29 巻 6 号 p. 1040-1044
    発行日: 2004/12/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    十二指腸原発消化管間葉系腫瘍 (gastrointestinal stromal tumor : 以下GIST) の異時性肝転移に対し, 再々肝切除を施行した症例を経験したので報告する。[症例] 47歳, 男性。平成10年7月, 下大静脈に接する径5cm大の腫瘤を認め, 十二指腸平滑筋肉腫の疑いにて, 同年9月, 全胃幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行。術後病理ではleiomyosarcomaと診断。経過観察中の平成14年6月, 肝機能異常より肝S8の転移性肝腫瘍を発見し, 同年7月, 肝S8亜区域切除術を施行。術後病理ではGIST肝転移との診断。翌平成15年4月のCTにてさらに肝外側区域に転移を発見し, 同年7月肝左葉切除術を施行し, 術後病理ではGIST肝転移であった。現在まで無再発生存中である。[考察] 近年メシル酸イマチニブ著効例の報告が散見されるが, 外科的切除可能な症例は積極的に切除すべきと考える。
  • 蓮尾 公篤, 田中 淳一, 井野 裕代, 利野 靖, 高梨 吉則
    2004 年 29 巻 6 号 p. 1045-1049
    発行日: 2004/12/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は63歳女性, 人間ドッグにて胆嚢ポリープを指摘され, 精査加療のため当院紹介入院となる。腹部超音波検査, 腹部造影CT検査, 内視鏡的逆行性膵胆道造影検査にて, 胆嚢ポリープを伴う先天性胆道拡張症と診断された。膵胆管合流異常も伴い, 胆嚢ポリープも増大傾向にあったので手術の方針となり, 胆嚢摘出術, 拡張胆管切除術, 総肝管空腸吻合術を施行した。組織学的には胆管系には中等度の異型性があるのみで癌細胞は存在しなかったが, 胆嚢ポリープは固有筋層に限局する早期の高分化腺癌であった。手術後3年10カ月経過し, 現在外来で経過観察中であるが, 再発の徴候はなく本人の愁訴もない。先天性胆道拡張症は胆道癌の高危険群と考えられるので, 診断後早急に肝外胆管切除および胆道再建を行う事が望ましい。
  • 森脇 稔, 三橋 宏章, 李 慶文
    2004 年 29 巻 6 号 p. 1050-1056
    発行日: 2004/12/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は52歳女性, マイコプラズマ肺炎の精査のため当院にて胸部CT検査を施行したところ, 左副腎背側の腫瘤を指摘され, 平成15年3月当科受診した。精査にて腹腔内巨大腫瘤の診断にて手術を施行した。術中の迅速病理組織検査にて後腹膜から発生した脂肪肉腫と判明した。脂肪肉腫は比較的稀な疾患で, 最近脱分化型の脂肪肉腫なども報告されており, 自験例も脱分化がみられた。抗癌剤感受性テストを施行し, 術後化学療法を施行したが, 術後8ヵ月目に再発をきたし再切除を行った。再手術後平成16年11月現在, 再発所見なく外来通院中である。脱分化型の脂肪肉腫は比較的予後が良いとの報告があるが, 厳重な経過観察が必要と考えられた。
  • 楢原 克典, 小野 由雅, 酒井 優, 猛尾 弘照, 松熊 晋, 土田 明彦, 青木 達哉
    2004 年 29 巻 6 号 p. 1057-1063
    発行日: 2004/12/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    原発性小腸癌は, 比較的稀な疾患で, 術前診断が困難なことが多い。今回, 盲腸癌の術中に偶然小腸癌を認め, 重複癌と診断。術後1年で卵巣・膀胱に転移を認めた症例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する。症例は61歳, 女性。入院時貧血, 腫瘍マーカー上昇を認めた。盲腸癌の診断で回盲部切除を予定した。術中, 回腸末端に腫瘍性病変を認め, 回腸も含め切除した。病理診断は盲腸と回腸の重複癌であった。1年後腫瘍マーカーの上昇, CT上骨盤内腫瘍を認め精査を行った。確定診断目的にて2003年5月第2回手術を施行, 骨盤内腫瘍は右卵巣であり, 膀胱漿膜面にも腫瘍を認めた。卵巣腫瘍・膀胱腫瘍は転移性で, 盲腸癌か小腸癌か, 原発巣判定は困難であった。2004年4月現在, 外来通院中である。
  • 山崎 有浩, 金子 弘真, 野中 博子
    2004 年 29 巻 6 号 p. 1064-1069
    発行日: 2004/12/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は80歳, 男性。早期胃癌を認め, 本人希望にてレーザー治療を施行。その際に腫瘍径50mmの肝腫瘍の指摘をうけるも, 本人が精査加療を望まず経過観察となった。その2年後, 上行結腸癌の腸閉塞前状態で再入院となったが, 肝腫瘍は径70mmに増大しており, 画像検査等より肝細胞癌と診断した。肝細胞癌に対しては外側区域切除, 上行結腸癌に対しては右半結腸切除を施行, 胃癌に対しては本人希望もありレーザー療法を施行した。肝細胞癌は病理学的検討より高分化型肝細胞癌と診断された。現在, 術後約4年間経過するが, 無再発生存の良好な結果を得ている。今回, 2年の期間をあけて画像検査の比較が可能であった腫瘍径70mmの高分化型肝細胞癌に, 同時性胃癌, 異時性大腸癌を重複した極めて稀な3重複癌の1切除症例を経験したので報告する。
  • 村田 宣夫
    2004 年 29 巻 6 号 p. 1070-1071
    発行日: 2004/12/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
  • 綾部 琢哉
    2004 年 29 巻 6 号 p. 1072-1073
    発行日: 2004/12/30
    公開日: 2009/08/13
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