日本外科系連合学会誌
Online ISSN : 1882-9112
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30 巻, 4 号
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  • 山口 浩彦, 笠巻 伸二, 渡部 智雄, 冨木 裕一, 坂本 一博, 中井 克也, 日野 眞子, 鎌野 俊紀
    2005 年 30 巻 4 号 p. 569-575
    発行日: 2005/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    [目的] ホルモン補充療法 (hormone replacement therapy, 以下HRT) 中に発生した乳癌について臨床病理学的に検討した。[対象と方法] 対象はHRT中に発症した乳癌 (以下, HRT乳癌) 8例で, HRT未施行乳癌 (以下, non-HRT乳癌) 22例を対照とし病理組織学的, 免疫組織化学的検討を行った。[結果] HRT乳癌は腫瘍径が小さく (平均腫瘍径15.1±11.1mm), リンパ節転移を認めず (8/8,100%), non-HRT乳癌と比較して有意差を認めた。免疫組織化学的検討ではp53, VEGF陽性例が多い傾向にあった。[結語] HRT乳癌は, 腫瘍径が小さく, リンパ節転移を認めず, 臨床病理学的には悪性度が低い乳癌であった。しかし, 免疫組織化学的には一般の原発性乳癌と同じように潜在的な悪性度をもつ乳癌であることが示唆された。
  • Mitsutaka SHOJI, Masahiro OCHIAI, Ikuo YOSHIDA, Shuhei TONOMURA, Kazuk ...
    2005 年 30 巻 4 号 p. 576-583
    発行日: 2005/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    We have encountered five cases of gastritis cystica polyposa (GCP) in the resected specimens for the gastric carcinoma during the past 18 years. All of them were found in the remnant stomachs after distal partial gastrectomy being coexistent with stump carcinomas. The cell kinetics and p53 gene aberrations in the GCP tissues were investigated to assess their precancerous nature, because these tissues have been speculated to have a close relationship with cancerous lesions. At the same time, the normal epithelial and the cancer cells in the same resected stomach were both examined similarly for comparison.
    The cell kinetics of these tissues was examined by immunohistochemical staining of Ki-67 to reveal accelerated cell kinetics in both of the cancer and the GCP tissues but not in the normal mucosae. The accumulation of p53 protein in the nuclei was examined also by immunohistochemical staining and was highly noted in the cancer tissues and was moderately noted in the GCP tissues but none in the normal mucosae. The mutations of p53 gene were examined by PCR-SSCP methods and were detected in 25% of the cancer and 50% of the GCP tissues, but none in the normal mucosae. From these results, we think that p53 gene mutations occurred in the GCP tissues may lead the cell cycles to uncontrolled acceleration, which is quite similar to those we see in the cancer tissues.
  • 石崎 康代, 池田 聡, 岡島 正純, 浅原 利正
    2005 年 30 巻 4 号 p. 584-589
    発行日: 2005/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    過去33年間に31例の家族性大腸腺腫症 (familial adenomatous polyposis : FAP) 手術症例を経験し, これらについて臨床的検討を行った。FAP症例31例 (男性18例, 女性13例) の初回手術時の年齢は14歳から66歳 (中央値32歳) であった。術式は結腸全摘+回腸直腸吻合術が19例と最多であり, 1996年以降, 従来の開腹手術に加え腹腔鏡下でも手術を行っている。術前に大腸癌を認めなかったものの, 後年残存直腸に癌が発生したために直腸切断術を行った症例が3例存在した。また, 大腸外病変として胃癌, 十二指腸癌の発生をそれぞれ1例, 2例で認めた。FAPでは手術時期, 術式の選択も重要な事項であるが, 手術はあくまでも治療の一部であり, その患者の生涯, 世代を通じたフォローアップや治療計画を念頭におく必要があると考えられる。
  • 浅井 浩司, 炭山 嘉伸, 渡邉 学, 田中 英則, 榎本 俊行, 大沢 晃弘, 松清 大, 斉田 芳久, 草地 信也, 長尾 二郎
    2005 年 30 巻 4 号 p. 590-595
    発行日: 2005/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    今回われわれは, 当教室で経験した膵切離症例において, その切離方法別による術後膵液瘻発生に関する検討を行った。[対象並びに方法] 1985年4月から2004年4月に当教室で経験した膵頭十二指腸切除術 (以下, PD) 109例, 尾側膵切除術 (以下, DP) 86例を対象とした。膵切離法は電気メス, メス, 超音波外科吸引装置 (以下, CUSA), 超音波凝固切開装置が用いられており, 各膵切離法において患者背景, 術後合併症, 術後在院期間, 在院死亡率に関する検討を行った。[結果] PD症例, DP症例ともに術後膵液瘻発生はCUSA群が最も少ない結果となった。合併症総数, 術後在院期間, 在院死亡率に関してもCUSA群で良好な結果となった。[考察] CUSAによる膵切離は他手技と比較し有用であると考えられ, 膵液瘻発生を減少させうる手技であると考えられた。
  • 鈴木 興秀, 横山 勝, 桑原 公亀, 長嶺 寿秋, 岡田 典倫, 大澤 智徳, 中田 博, 石田 秀行, 橋本 大定
    2005 年 30 巻 4 号 p. 596-599
    発行日: 2005/08/30
    公開日: 2010/02/09
    ジャーナル フリー
    S状結腸軸捻転症は, 腸間膜基部が短い割に結腸が長いという解剖学的特徴から小切開手術のよい適応であるが, その報告は少ない。今回, 腹部小切開によりS状結腸切除を施行した4例を経験したので報告する。4例の内訳は年齢26~69 (平均50) 歳, 男女比1 : 1, Body mass index : 18.2~28.9 (平均23.9) kg/m2で, 初発が2例であった。1例にI型筋緊張性ジストロフィーの合併を認めた。全例大腸内視鏡による捻転解除後に待期的に4~7 (平均5.5) cmの小切開をおき, S状結腸切除を行った。手術時間85~155 (平均115) 分, 出血量は全例が30g以下であった。経過は1例に術後イレウスを認めたが保存的に軽快した。S状結腸軸捻転症に対する小切開根治術は, 特殊なトレーニングを必要とせずに安全にS状結腸切除術を施行できる有用な方法であり, 今後も試みる価値があると考えられる。
  • 中川 国利, 村上 泰介, 遠藤 公人, 鈴木 幸正
    2005 年 30 巻 4 号 p. 600-604
    発行日: 2005/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    過去3年間にDIC-CTを術前に施行した腹腔鏡下胆嚢摘出例687例を対象として, 胆嚢管閉塞例における問題点について検討した。対象は, 胆嚢結石症646例, 胆嚢腫瘍41例で, 総胆管結石症72例, 急性胆嚢炎108例および胆嚢癌7例を含んでいた。開腹移行例は, 胆嚢管が完全に描出されなかった7例では1例 (14.3%), 胆嚢管が一部造影された169例では14例 (8.3%) であった。また開腹移行の理由は, 癒着剥離困難11例, 胆管損傷2例, 進行胆嚢癌判明2例であった。一方, 胆嚢管が開存していた521例では, 開腹移行例は4例 (0.8%) のみであった。また開腹移行の理由は, 進行胆嚢癌判明2例, 出血1例, 機器の故障1例であった。胆嚢管閉塞例では炎症による癒着のため開腹移行率が高く, また胆管損傷を起こす危険性がある。したがって術前に胆道の位置関係をDIC-CTで把握すると共に, 手術操作が困難な場合には躊躇することなく開腹移行する必要がある。
  • 朝村 真一, 磯貝 典孝, 大滝 小百合, 上石 弘
    2005 年 30 巻 4 号 p. 605-607
    発行日: 2005/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    大胸筋皮弁の壊死の原因を究明し, 生着を向上させるため, 当科における過去3年間に経験した大胸筋皮弁再建例について, 臨床的検討を行った。2002年4月より2005年3月までの3年間に, 頭頸部悪性腫瘍切除後に施行された大胸筋皮弁症例26例を対象とした。完全生着は21例 (92%), 不全生着は2例 (8%) であった。大胸筋皮弁の壊死を防ぎ, 生着率を向上させるためには, 術前にカラードップラーを用いて分布血管の解剖学的血行動態を詳細に把握することが極めて重要であり, 外側胸動脈を温存することによって, 皮弁の血行はさらに安全性が高まると考えられた。
  • 榎本 克久, 天野 定雄, 櫻井 健一, 根岸 七雄, 根本 則道
    2005 年 30 巻 4 号 p. 608-611
    発行日: 2005/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    乳癌の中でも0.08~0.72%の頻度であり, “いわゆる癌肉腫”とよばれる組織型の一つである乳腺紡錘細胞癌の1例を経験したので報告する。症例は70歳, 女性。平成14年1月に左乳房違和感および腫瘤を触知したため, 近医受診。精査加療を目的に当院紹介。左乳房A areaに大きさ約4×4cm大の辺縁平滑な腫瘤を触知した。マンモグラフィでは同部位に微細な石灰化を認めた。超音波検査では, 嚢胞内腫瘤像を呈していた。FNACではclass IVであった。以上より嚢胞内癌の疑いで手術目的に入院となった。lumpectomyを施行するも, 術中迅速病理診断にてcarcinomaと診断されたため, 胸筋温存乳房切除術 (Auchincloss法) およびlevel I郭清を施行した。術後病理組織診断では, Spindle cell carcinoma T2 N0 M0 stageII A ER (-) PGR (-) であった。早期に血行性転移を起こすこともあり厳重な経過観察が必要と考えている。
  • 谷津 尚吾, 今中 和人, 加藤 雅明, 荻原 正規, 西村 元延, 朝野 晴彦, 横手 祐二, 許 俊鋭, 清水 禎彦
    2005 年 30 巻 4 号 p. 612-615
    発行日: 2005/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    上行大動脈の関与したacute aortic syndromeは, 通常迅速な診断と治療が必要である。今回われわれは, 試験開胸を必要とした特発性上行大動脈破裂の1例を報告する。症例は82歳, 女性。主訴は胸背部痛。急速な発症からacute aortic syndromeの可能性が考えられたが, 諸検査で大動脈解離や動脈硬化性疾患などの所見を欠いた。しかし胸背部痛が持続し, 心嚢水が血性である可能性も否定できず, 試験開胸を行った。上行大動脈の外膜下血腫と後壁の内膜欠損を認めたが偽腔は形成されておらず, 上行大動脈人工血管置換術を施行した。切除標本では, 全層性の壁断裂を認めたが, 動脈硬化・中膜変性とも軽微で, 特発性上行大動脈破裂と診断された。
  • 若原 智之, 塚本 忠司, 加地 政秀, 椋棒 英世, 辻村 敏明, 豊川 晃弘, 大西 律人, 濱辺 豊
    2005 年 30 巻 4 号 p. 616-619
    発行日: 2005/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌に対する鏡視下局所凝固療法は侵襲が少なく徐々に普及しつつある。今回右横隔膜直下の病変に対して, 胸腔鏡下に経横隔膜的にマイクロウェーブ凝固療法を施行し, 術後に難治性胸水が出現した症例を経験した。症例は63歳, 女性。肝S4/8およびS8の肝細胞癌の再発に対して, 深部凝固用電極および鏡視下用の経皮経管用モノポーラー電極を用いて経横隔膜的に凝固療法が行われた。術中横隔膜穿刺部より腹水が胸腔内にわずかに流入するのが認められたが, 自然に軽快する程度と判断し胸腔ドレーンを留置し閉創した。その後約9カ月にわたり多量の胸水貯留が繰り返し認められ, その都度穿刺排液が施行された。鏡視下用電極を用いて経横隔膜的に凝固療法が行われたことにより, 横隔膜に小孔が形成されたことが胸水貯留の一因と考えられ, 鏡視下用電極を用いた経横隔膜的凝固療法を行う際は横隔膜を切開して行うか, または穿刺部位の縫縮が必要と考えられた。
  • 佐々木 章, 旭 博史, 大塚 幸喜, 川村 英伸, 中嶋 潤, 大渕 徹, 目黒 英二, 早川 善郎, 入野田 崇, 斎藤 和好
    2005 年 30 巻 4 号 p. 620-624
    発行日: 2005/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    Crohn病の十二指腸狭窄に対して腹腔鏡下Jaboulay型幽門形成術を施行した1例を経験したので報告する。症例は30歳の男性。22歳時より小腸大腸型Crohn病で経腸栄養剤, 薬物療法を施行していた。27歳時に回腸末端, 結腸の狭窄所見が増悪し, 腹腔鏡補助下大腸亜全摘術を施行した。29歳時より食事毎の嘔気, 嘔吐を認め, 30歳時には経腸栄養剤も摂取困難となった。上部消化管造影検査では, 十二指腸球部の著明な変形と長径3cmの狭窄を認め, 十二指腸下行部への排出は不良であった。上部消化管内視鏡検査では, 十二指腸球部は内視鏡が通過不能な全周性狭窄を認め, 手術適応となった。術式は腹腔鏡下Jaboulay型幽門形成術を選択し, 自動縫合器で吻合口を作製した。術後3日から経口摂取を開始し, 術後14日に退院した。現在, 術後6ヵ月であるが食事摂取が可能で, 経過は良好である。
  • Report of a Case
    Takeshi SHIOYA, Tetsuo SHIBUYA, Akira TOKUNAGA, Koshi MATSUMOTO
    2005 年 30 巻 4 号 p. 625-628
    発行日: 2005/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    We report an exceedingly rare case of peritoneal encapsulation presenting with small bowel obstruction. A 34-year-old man was presented with colicky pain, abdominal fullness, and vomiting. An examination revealed the existence of a right inguinal hernia but no incarceration. He was diagnosed of ileus, and a nasogastric suction was performed for decompression. After 2 days from admission, abdominal pain increased. An examination revealed Blumberg sign and abdominal defense. An emergency laparotomy was decided on with suspicion of strangulated ileus. The ileal loops were encapsulated and strangulated inside a peritoneum like sac, which occurred on the left side of the mesocolon. The sac occurred between the omentum and mesocolon, and encapsulated the small bowel and caused ileus. A division of the neck of the sac and excision of the enveloping membrane was completed, and it then released from strangulation. Histopathology of the sac showed peritoneal tissue. The patient recovered uneventfully.
  • 清水 貞利, 西口 幸雄, 玉森 豊, 池田 克実, 中澤 一憲, 山片 重人, 大川 清孝, 山崎 修
    2005 年 30 巻 4 号 p. 629-633
    発行日: 2005/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    今回われわれは, 下剤が誘因となった閉塞性大腸炎の1例を経験したので報告する。症例は76歳女性。平成14年7月2日下血の精査目的に下部消化管内視鏡検査を施行したところ, 直腸癌と口側腸管粘膜の壊死性変化が認められた。腹部症状は認められなかったが, 直腸癌および閉塞性大腸炎と診断し, 同日緊急入院し, 7月5日手術を施行した。術中所見では, 直腸Rs部に半周性の癌腫を認めた。口側腸管の漿膜面には明らかな虚血性変化は認められなかった。術中内視鏡を用いて粘膜面を観察し, 切除範囲を決定した。切除標本にて口側腸管粘膜の壊死性変化は消失しており, 粘膜の脱落, 発赤を認めた。以上の経過より, 下部消化管内視鏡検査の前処置により, 閉塞性大腸炎が誘発されたものと考えられた。下剤により腸管蠕動の亢進, 腸管内圧が上昇し, 粘膜血流障害がひきおこされ発症したものと考えられた。
  • 田中屋 宏爾, 竹内 仁司
    2005 年 30 巻 4 号 p. 634-637
    発行日: 2005/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は48歳, 女性。腹痛にて発症し, 上行結腸進行癌の治療目的で入院した。家族歴の聴取によりアムステルダム診断基準IIに合致する遺伝性非ポリポーシス大腸癌と診断した。子宮筋腫の合併を認めたことも考慮し, 患者の希望によりインフォームドコンセントを得て, 大腸亜全摘術, 子宮・両側付属器切除術を施行した。術後排便状況は良好であった。遺伝性非ポリポーシス大腸癌には大腸多発癌や他臓器癌を好発するため, 発癌リスクの高い大腸や子宮などの予防的切除が術式のオプションとして挙げられているが, 現時点ではコンセンサスを得るには至っておらず, 文献的考察を加えて報告した。
  • 角田 文彦, 中川 国利, 遠藤 公人
    2005 年 30 巻 4 号 p. 638-641
    発行日: 2005/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    S状結腸憩室症による結腸膀胱瘻および結腸穿孔をきたした1例を経験したので報告する。症例は73歳の男性で, 既往歴に肝硬変症を有し, 頻尿と糞尿を主訴として来院した。大腸内視鏡検査や注腸造影検査ではS状結腸に多数の憩室を認め, さらに注腸造影検査時に施行したCT検査では膀胱内に空気と造影剤を認めた。以上から, 結腸膀胱瘻を伴うS状結腸憩室症と診断した。手術を考慮中に, S状結腸憩室穿孔による汎発性腹膜炎が生じたため, 緊急手術を施行した。開腹すると, S状結腸憩室穿孔および結腸膀胱瘻を認めた。全身状態が不良なため, 憩室穿孔部および結腸膀胱瘻部を含むS状結腸を切除し, 人工肛門を造設した。また結腸膀胱瘻が存在した膀胱壁は縫合閉鎖した。術後2カ月現在, 経口摂取可能で膀胱炎は治癒している。
  • 椿 昌裕, 藤田 昌紀, 渡邊 理, 砂川 正勝, 小島 勝
    2005 年 30 巻 4 号 p. 642-647
    発行日: 2005/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    比較的稀な直腸gastrointestinal stromal tumor (GIST) を経験したので報告する。症例は60歳女性。肛門から脱出する約6cmの易出血性腫瘤を主訴に近医を受診し, 精査目的で当科を紹介された。精査中に大量出血を来たし緊急入院となった。大腸内視鏡検査では赤褐色, 表面脆弱な腫瘍で, 生検では確定診断が得られず, 経肛門的腫瘤切除を行った。免疫組織学的病理検査によりc-kit, CD34陽性, S100蛋白, 平滑筋アクチン陰性でuncommitted typeのGISTと診断された。切除断端陽性であったため, 直腸切断術を施行した。術前, 術中診断では遠隔転移はみられず, 切除標本ではリンパ節転移陰性であり, 腫瘍も筋層に残存しているのみで完全切除された。術後3年の現在再発を認めていないが, 10年以上経過した症例でも再発例が報告されており, 長期にわたる経過観察が必要である。
  • 小島 豊, 鎌野 俊紀, 坂本 一博, 冨木 裕一, 菅野 雅彦, 渡部 智雄, 奥澤 淳司, 笠巻 伸二, 瀧田 尚仁
    2005 年 30 巻 4 号 p. 648-651
    発行日: 2005/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は75歳, 男性。平成16年10月4日, 自慰行為で肛門にヨーグルトの瓶を挿入したところ, 抜去できなくなり10月6日近医受診。摘出困難で10月7日に当院紹介, 同日入院となった。腹部に圧痛, 腹膜刺激症状は認めず, 直腸指診で異物を触知した。腹部単純X線検査で直腸内に径5.7cm長さ10cm大の異物が認められた。入院後, 経肛門的に用手, また大腸内視鏡を用いて摘出を試みたが摘出できず, 腰椎麻酔下で児頭吸引器を使用し経肛門的に摘出した。術後経過良好で翌日退院となった。経肛門的直腸異物の摘出に, 今回用いた児頭吸引器は, 有用な一方法であると考えられた。
  • 石田 秀之, 主島 洋一郎, 渡辺 康則, 中口 和則, 甲 利幸
    2005 年 30 巻 4 号 p. 652-655
    発行日: 2005/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    オクトレオチドは持続性のソマトスタチンアナログ製剤である。症例は74歳, 男性。原発部位不明の癌性腹膜炎で保存的に加療していた。嘔気・嘔吐・全身倦怠のため入院となった。腹部CT検査, 上部内視鏡検査で腸閉塞と診断した。胃管チューブを留置して, 絶飲・絶食とした。糖尿病のため輸液内にインシュリンを混注した。本人の希望で胃管チューブを抜去したところ, 嘔気が持続し, 1日に数回嘔吐するため, オクトレオチド300μg/dayの持続皮下注を始めた。嘔気は消失し, 嘔吐は激減した。胃管チューブを留置することなく, 後日飲水が可能となった。一方, オクトレオチド投与後意識障害, 尿失禁あり。血糖値は38であった。オクトレオチドは末期癌患者の消化管症状に有効であるが, インシュリン使用中の患者では低血糖を生じることがあるので十分な注意が必要である。
  • 山本 淳史, 福本 行臣, 三鴨 肇, 二村 直樹, 堀谷 喜公
    2005 年 30 巻 4 号 p. 656-659
    発行日: 2005/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    胃切除術後の単純性イレウスに門脈ガス血症を合併し, 保存的に改善した1例を経験したので報告する。症例は75歳の男性。胃癌の診断にて平成15年7月に幽門側胃切除術を施行した。第8病日より発熱を認めるようになり, 腹部CT検査上, 残胃・小腸の拡張, 門脈ガス血症, 残胃・小腸壁内ガス, 少量の腹水を認めた。腹部は平坦・軟で腹膜刺激症状を認めず絞扼性イレウスは否定的であり, 術後の単純性イレウスによるものと診断した。第12病日に施行した腹部CT検査では, 門脈ガス血症は消失していた。イレウスは保存的に軽快したが, その際に肺炎を併発しARDSとなり, 人工呼吸管理などの全身管理を行ったが術後第165病日に呼吸不全のため死亡した。門脈ガス血症は腸管壊死を伴う絞扼性イレウスに伴うものが多く緊急手術も考慮する必要があるが, 単純性イレウスに併発するものもあり治療方針を慎重に決定する必要があると思われた。
  • Toshiyuki TANAHASHI, Shinji OSADA, Yasuyuki SUGIYAMA
    2005 年 30 巻 4 号 p. 660-664
    発行日: 2005/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    We present a relative rare case of extrahepatic biliary cystadenoma communicated with biliary system. A 75-year-old man consulted with low grade fever up and abnormal liver function results were demonstrated by routine blood examination. In abdominal ultrasound and helical triple phase computed tomography scan, a cystic septated lesion, measuring 3 cm in diameter, was found. And endoscopic retrograde cholangiography showed mucinous filling defects in the common bile duct, which was not noted malignant findings by histological examination. Intraoperatively, the cystic lesion was identified toconnect with left hepatic biliary duct. Simple cystectomy was indicated to be enough, since a frozen sectionof the mass stump was negative of mucinous epithelium and malignant area. No evidence of cellular atypiaor tissue invasion to suggest malignancy was found by pathological examination. With immunohistochemicalstudy, positive cells were noted for Ki-67 in the epithelium of cystic wall, while they were negative for p53 and CA19-9.
  • 山崎 将人, 安田 秀喜, 安原 洋, 仲 秀司, 手塚 徹, 竹上 智浩, 杉本 真樹, 済陽 義久
    2005 年 30 巻 4 号 p. 665-670
    発行日: 2005/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は63歳, 女性。糖尿病, 蛋白尿, 浮腫にて入院精査中に膵腫瘍を指摘された。CTにて膵体部に直径2cm大の境界明瞭な膵実質内から尾側へ突出する腫瘤を認め隔壁を有する嚢胞部と充実部の二つの領域を疑った。MRIT2強調像にて共にhigh intensityに描出された。超音波内視鏡では隔壁を有する嚢胞部と内部不均一高エコー部に描出された。ERPでは末梢膵管の拡張や腫瘤との交通は認められなかった。MRCPでは水分豊富な腫瘤で嚢胞が疑われた。血管造影では脾動脈より分枝する腫瘍血管が描出された。手術は脾を温存した膵体尾部切除を行った。標本上腫瘍は27×20mm大で尾側に突出する部分は均一な非常に小さい嚢胞の集簇であった。同部は術前CT, 超音波内視鏡にて充実様に描出され術前診断困難な領域であった。これより頭側は大きな嚢胞の集簇であり多様な嚢胞形態を示した漿液性嚢胞腺腫であった。術後2カ月再発なく生存中である。
  • Shinsuke SATO, Takeo MAEKAWA, Koichi SATO, Hiroshi MAEKAWA, Kazutomo O ...
    2005 年 30 巻 4 号 p. 671-674
    発行日: 2005/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    Small bowel obstruction caused by food impaction is uncommon and difficult to diagnose accurately, because there are no characteristic symptoms. We report here the case of small bowel obstruction caused by the seed of a Japanese apricot, and leading to acute renal failure. Surgery is the preferred treatment for most cases. We first attempted to treat the food impaction by milking the mass into the cecum. Enterotomy or small bowel resection should be performed when milking is unsuccessful. Investigating the dietary habits of the patient played an important role in diagnosing small bowel obstruction caused by food impaction.
  • 岡田 克也, 高橋 公一, 山田 正己, 小澤 修太郎, 小山 勇
    2005 年 30 巻 4 号 p. 675-678
    発行日: 2005/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は55歳の男性。右下腹部痛を主訴に当院受診。腹部CT施行したところ大網捻転と診断され緊急手術を施行した。腹腔内には暗赤色に変色し, 一部小腸に癒着した大網を認めたため, これを切除した。また右鼠径ヘルニアも合併していたが, ヘルニア嚢と大網の間には癒着はなく, 本病変とは無関係と判断した。術後経過は良好で, 外来通院中である。大網捻転は急性腹症として発症する比較的稀な疾患であり, 特有の症状はなく, 術前診断は困難とされる。続発性大網捻転症の報告は少ないため, 文献的考察を加えて報告する。
  • 小田 慶太郎, 橋本 大定, 大澤 智徳, 中田 博, 石田 秀行
    2005 年 30 巻 4 号 p. 679-684
    発行日: 2005/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は53歳, 男性。8年前に他院で巨大骨盤内腫瘍の診断で開腹術を受けたが, 腫瘍の授動のみで大量出血 (約8000ml) を生じたため, 生検のみ行い (組織学的に悪性線維性組織球腫が疑われた), 摘出は断念された。2年後に別施設でも, 摘出不能と判定され, 放射線・温熱療法が行われた。その後も徐々に腫瘍が増大し, 嘔吐, 食事摂取不能, 体重減少を認めたため, 当科へ入院した。各種画像診断では著明な側副血行を伴い, 骨盤腔を占拠する後腹膜腫瘍ではあるが, 摘出可能と判断し, 十分なインフォームド・コンセントの後, 再手術が選択された。前回手術による瘢痕組織の硬化と発達した側副血行, 巨大腫瘍による術野の制限などで出血量は58000mlに及んだが, 回収式自己血輸血装置の使用で, 一時的な血圧低下を認めたものの, 安全に腫瘍を摘出しえた。組織学的には神経線維腫であった。術後6カ月後にメチシリン耐性ブドウ球菌による腰椎骨髄炎をきたしたが保存的治療で軽快し, 腫瘍摘出3年3カ月後の現在, 再発の徴候を認めていない。
  • 崎元 雄彦, 横山 勝, 石田 秀行, 橋本 大定
    2005 年 30 巻 4 号 p. 685-688
    発行日: 2005/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は53歳, 女性。近医でイレウスと診断され症状の増悪を認めたために, 紹介入院となった。来院後イレウス管による減圧により症状は軽快した。入院後2日目より右上腕の腫脹・発赤・疼痛を認め, ショック状態を呈した。右上肢のガス壊疽の診断にて, 緊急に右上肢切断術・デブリードマンを施行した。全身状態の改善を待ち, 入院後7日目に開腹手術を施行したところ, 左子宮広間膜ヘルニアの嵌頓を認めた。嵌頓腸管は壊死していたが, 巨大な子宮筋腫により高度に圧排されていた。小腸部分切除, 回腸瘻・粘液瘻増設術を施行した。その後, 人工肛門閉鎖術などを行い退院となった。ガス壊疽発症時の動脈血培養よりClostridium septicumが, 右上肢切断部より同様にClostridium septicumが検出された。本症例は子宮広間膜ヘルニアによる絞扼性イレウスが原因となったガス壊疽である。若干の文献的考察を加え報告する。
  • 落 雅美
    2005 年 30 巻 4 号 p. 689-690
    発行日: 2005/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
  • 高浪 巌
    2005 年 30 巻 4 号 p. 691-692
    発行日: 2005/08/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
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