日本外科系連合学会誌
Online ISSN : 1882-9112
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30 巻, 5 号
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  • 佐藤 洋樹, 梨本 篤, 藪崎 裕
    2005 年 30 巻 5 号 p. 707-711
    発行日: 2005/10/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    高齢者 (80歳以上) 胃癌と若年者 (40歳未満) 胃癌の治療成績, 臨床病理学事項を比較検討し, 高齢者胃癌の実態を明らかにした。対象は2002年12月末までの13年間に入院加療した高齢者胃癌153例と若年者胃癌90例である。腫瘍占拠部位は高齢者でL領域, 若年者でM, LMU領域が多かった。早期癌の肉眼型に差はなかったが, 進行癌では高齢者に限局型, 若年者に浸潤型が多かった。組織型は高齢者に分化型, 若年者に未分化型が多かった。リンパ節郭清度は高齢者では郭清度の低い症例が多かった。術前合併症の頻度は高齢者に50.3%と多かったが, 術後合併症には差がなかった。両群の5年生存率は, 他病死を含めると若年者73.5%, 高齢者59.8%と有意に若年者群が良好であったが, 他病死を除くと差はみられなくなった。高齢者胃癌に対しては根治性の追求のみならず, 個々の全身状態, 社会的因子を考慮した治療方針を選択すべきである。
  • 岩瀬 和裕, 保木 昌徳, 位藤 俊一, 水野 均, 水島 恒和, 相馬 大人
    2005 年 30 巻 5 号 p. 712-715
    発行日: 2005/10/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は77歳, 男性。16年前に胃全摘術を受けており, 経口摂取量低下に対し2年前から経腸成分栄養剤および活性型ビタミンB1 (Vit B1) 製剤を投与されていた。4ヵ月間の在宅中心静脈栄養の後, 末梢静脈栄養 (非タンパク熱量300kcal/日) を連日受けていたが, 体重減少により入院となった。入院後は2000ml/日, 糖質熱量600kcal/日の末梢静脈栄養が行われていたが, 入院10日目にめまい, 11日目に健忘症状, 複視, 12日目に側方視での眼振が出現し, Wernicke脳症と診断された。Vit B1の投与を開始したところ症状は改善し, 後日結果を得た入院12日目の血中Vit B1濃度は14 (正常域20-50) ng/mlであった。胃切除術後状態など不顕性Vit B1欠乏状態の併存が懸念される症例においては, 低下カロリーの末梢静脈栄養といえどもVit B1欠乏症発症に注意する必要があると考えられる。
  • 牧野 知紀, 増田 慎三, 竹田 雅司, 多根井 智紀, 真能 正幸, 辻仲 利政
    2005 年 30 巻 5 号 p. 716-722
    発行日: 2005/10/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    (症例1) 58歳女性。右乳房腫瘤を主訴に受診。右ACE領域に境界明瞭な50×40mmの腫瘤を, また右腋窩に10mmのリンパ節を触知した。術前生検にて乳房原発扁平上皮癌と診断し (T4bN1Mo : StageIIIB), 術前化学療法施行後 (臨床学的効果PR), 根治術 (Bt+Ax) を施行した。病理結果は扁平上皮癌, ER (+) ・PgR (-) ・HER-2 (-) で, 組織学的効果は1aであった。Arimidex投与中で術後13カ月無再発生存中である。 (症例2) 45歳女性。左乳房腫瘤の急速な増大を主訴に受診。左BD領域に80×60mmの境界明瞭な腫瘤を触知し, 一部皮膚発赤を認めた (T4bN1M0 : Stage III B) 。針生検にて乳房原発扁平上皮癌と診断し, 根治術 (Bt+Ax) を施行した。病理結果は扁平上皮癌, ER (-) ・PgR (-), HER-2 (-) であった。HDRA薬剤感受性テスト結果を参考にレジメを決定した化学療法を施行し, 術後16ヵ月現在無再発生存中である。
  • 澤田 晃暢, 柏瀬 立尚, 伊達 由子, 鈴木 研也, 草野 満夫
    2005 年 30 巻 5 号 p. 723-728
    発行日: 2005/10/30
    公開日: 2010/02/09
    ジャーナル フリー
    症例は70歳女性。右乳房腫瘤 (3cm) を主訴に当院を受診した。MMG (mammography), 乳US (乳房超音波検査), FNAC (fine needle aspiration cytology) の結果はclass Vであり, T2N1M0 (StageIIb) の乳癌の診断のもとBt+Ax (Auchincloss法) を行った。術後FEC 60mg/mm2/triweekを6クール投与したが, 2000年3月のCTで肺転移を確認した。もともとTamoxifenを内服すると副作用が出るため, 抗エストロゲン剤は本人の希望で投与していなかった。ドセタキセル40mg/mm2/weekを2002年10月まで投与, パクリタキセル80mg/mm2/weekを2003年6月まで投与するも肺転移は進行した。その時期に発売となったExemestane (アロマターゼ阻害剤) を投与したところ, 肺転移は消失し, 腫瘍マーカーも正常化した。ところが投与途中でわかったことだが, 副作用の出現を嫌い, この薬を患者本人は3日に1錠しか内服していなかったのである。その後は現在も3日に1錠内服を続けている。特殊な投与方法で著効を示した再発乳癌の経験例を文献的な考察を加え報告する。
  • 岡村 長門, 許 俊鋭, 荻原 正規, 枡岡 歩, 阿部 馨子, 朝野 晴彦
    2005 年 30 巻 5 号 p. 729-731
    発行日: 2005/10/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    骨形成不全症とは, I型コラーゲンの質的ないし量的異常を来す遺伝性疾患で, 易骨折性・進行性の骨変形などの骨脆弱性に加え, 毛細血管の脆弱性も報告されている。心臓外科手術においては, 人工心肺による出血傾向に加え, 組織脆弱性によると考えられる心血管系の破綻とそれに伴う大量出血のリスクが高く, 手術成績は極めて不良であるとされている。20歳の骨形成不全症の男性で心不全歴のある重症僧帽弁閉鎖不全症に対してSJM弁で僧帽弁置換術を施行した。経過良好で周術期の出血などなく, 無輸血で退院した。術後15ヵ月の現在も特に問題なく外来通院中である。
  • 直居 靖人, 黒川 英司, 山本 仁
    2005 年 30 巻 5 号 p. 732-737
    発行日: 2005/10/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    診断に難渋した悪性胸膜中皮腫の1例を経験したので報告する。症例は65歳男性。主訴は左胸部, 背部痛。胸部レントゲン検査にて左胸水を指摘され, 疼痛コントロールと胸水精査目的にて入院した。胸腔穿刺ドレナージ術を施行し, 胸水細胞診, 胸水培養検査, 胸腹部CTなどを頻回に施行するも, 確定診断を得ることができなかった。その間にも疼痛は増悪傾向にあり, モルヒネ類などを施用するも有効な疼痛対策にはならなかった。悪性胸膜中皮腫を疑い胸腔鏡下胸膜生検術を考慮するも, 十二指腸潰瘍出血や, 嚥下性肺炎などの合併症の為全身状態が悪化し, 施行することができなかった。入院後80日目に左前胸部に2cm大の硬結が出現し, 2回目の生検にて悪性胸膜中皮腫と診断されたが, その9日後に永眠された。近年発症頻度が増加傾向にある悪性胸膜中皮腫は, 発育形態が特異なため, 診断に難渋することが多く, 予後不良な疾患である。
  • 本邦報告十二指腸GIST79例の検討
    清水 哲也, 城戸 泰洋, 小林 俊介, 渡会 伸治, 嶋田 紘
    2005 年 30 巻 5 号 p. 738-743
    発行日: 2005/10/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    肝転移, リンパ節転移を認めた十二指腸GISTの1例を経験したので本邦報告例の検討を加え報告する。[症例] 78歳女性。主訴, 貧血。2001年10月近医にて貧血を指摘。消化管出血の精査目的で入院となった。[検査] 上部消化管内視鏡にて十二指腸球部から下行脚に約半周性の潰瘍を伴う隆起性病変を認めた。胃十二指腸造影では十二指腸球部後壁側に陰影欠損を認め, 腹部血管造影では腫瘍部分に一致した濃染像がみられた。[手術] 十二指腸粘膜下腫瘍の診断で膵頭十二指腸切除術を施行した。術後病理診断でリンパ節転移, 肝転移を認めた。[免疫・組織学的所見] 腫瘍はc-kit, CD-34は陽性, desmin, SMA, S-100は陰性。肝転移, リンパ節転移を認める悪性の十二指腸GIST uncommitted typeと診断した。また, 本症例を加えた十二指腸のGIST79例について検討した。
  • 当院ガイドラインにおける診断指針
    松橋 延壽, 安藤 公隆, 宮原 利行, 杉山 保幸, 小倉 真治
    2005 年 30 巻 5 号 p. 744-747
    発行日: 2005/10/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は72歳, 男性。交通外傷により当院救急外来救急車にて搬送された。当院救急部における診断, 治療指針のガイドラインに沿って循環呼吸状態が安定していることを確認した後に, FAST (Focused Assessment with Sonography for Trauma) を行い2度のCT検査で経時的変化を踏まえて小腸穿孔を疑い緊急開腹術を施行した。開腹すると一部, 大網が炎症により肥厚し, 穿孔部を覆うように存在していた。さらにその周囲に少量の消化液を認め, 穿孔部位はTreitz靱帯から120cmの空腸で, IIa型の穿孔であった。術式は縫合閉鎖で終了した。術後経過は良好であり, 術後13病日に退院となった。2004年6月に大学病院開院に伴い腹部外傷における当院救急部のガイドラインが作成され, それに準じて早期に診断治療できたため, 若干の文献的考察を加えて報告する。
  • 中田 博, 大澤 智徳, 横山 勝, 石田 秀行
    2005 年 30 巻 5 号 p. 748-752
    発行日: 2005/10/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    回腸脂肪腫による腸重積症の2例を経験したので, 文献的考察を含めて報告する。症例1 : 52歳, 女性。腹痛・黒色下痢便を主訴に来院。CTで右下腹部に重積腸管を認めた。回腸回腸結腸型の腸重積に対し, 回盲部切除を行った。終末回腸から約60cm口側に3.0×2.5×2.5cm大の粘膜下腫瘍を認めた。症例2 : 52歳, 男性。間欠的腹痛を主訴に来院。CTで上行結腸内に腸管が重積しており, 先進部に円形の3.0×2, 5cm大のlow density massを認め, CT値から脂肪腫による腸重積を強く疑った。終末回腸から約10cmの腫瘍を含む小腸部分切除を待期的に行った。2例とも, 組織学的に脂肪腫と診断された。自験2例を含む本邦報告50例の小腸脂肪腫の大きさと術前CTでの診断率について検討したところ, 大きな腫瘍ほど術前診断率は高くなる傾向を認めたが, 診断可能であった症例とされなかった症例の間で腫瘍の大きさに統計学的に有意差を認めなかった。
  • 新見 行人, 渡辺 明彦, 石川 博文, 山本 克彦, 大山 孝雄, 中村 卓
    2005 年 30 巻 5 号 p. 753-756
    発行日: 2005/10/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は80歳男性。主訴は腹痛・嘔吐。現病歴は平成15年9月1日と11月に2度腹痛あるも, 自然軽快していた。平成16年1月14日より腹痛・嘔吐を生じ, 改善しないため当院内科に腸閉塞の診断で入院した。腹部CT検査で左上腹部に大きさ4cm大の内部に層構造を伴う拡張した小腸像を認めた。腸重積の診断で1月21日当科紹介, 同日緊急手術を施行した。空腸腫瘍を先進部とする空腸・空腸・空腸型の腸重積を認め, 空腸部分切除術を行った。全周性の輪状狭窄型腫瘍で, 病理組織検査では一部に粘液変性を伴った空腸原発の高分化腺癌であった。小腸腫瘍の発生頻度は全消化管腫瘍の約3%で, その中でも十二指腸を除く小腸癌は全消化管癌の0.1~0.3%と比較的稀である。今回腸重積により発症した原発性空腸癌の稀な1例を経験したので報告する。
  • 白相 悟, 中川 国利, 村上 泰介
    2005 年 30 巻 5 号 p. 757-760
    発行日: 2005/10/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    虫垂粘液嚢腫に対してtotal biopsyとして腹腔鏡下盲腸部分切除術を施行し, 過大な手術侵襲を避けることができたので報告する。症例は55歳の男性で, 2ヵ月前から軽い右下腹部痛が生じた。腹部は平坦, 軟で, 腹部超音波検査やCT検査では右下腹部に10.5×3.5cm大の腫瘤を認めた。注腸造影検査では盲腸内下方に円球状の陰影欠損像を, 内視鏡検査では隆起性病変を認めた。以上から虫垂粘液嚢腫と診断した。腹腔鏡下に観察すると, 虫垂が盲腸底部に重積していた。超音波凝固切開装置を用いて盲腸を周囲から剥離し, 虫垂根部を含めた盲腸を自動縫合器で切除した。虫垂の表面は平滑で, 内腔にはゼリー状物質が充満していた。組織学的には腫瘍性粘液上皮は認めず, 過形成と診断した。虫垂粘液嚢腫における良悪性の術前診断は困難であり, total biopsyとしての腹腔鏡下盲腸部分切除術は有意義な手術術式と思われた。
  • 辻村 敏明, 豊川 晃弘, 若原 智之, 椋棒 英世, 塚本 忠司, 浜辺 豊
    2005 年 30 巻 5 号 p. 761-765
    発行日: 2005/10/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は68歳女性で, 検診にて便潜血陽性を指摘され当院を受診された。注腸検査, 大腸内視鏡検査にて上行結腸に直径約4cm大の粘膜下腫瘍を認めた。生検にてGroup2であったが, Gaシンチにて集積像を認め, sarcomaあるいはlymphomaが疑われた。CT検査, 超音波検査では腹腔内リンパ節腫大, 他臓器病変は認めず。本症例に対し, D3郭清による腹腔鏡補助下結腸右半切除術が施行された。病理学的検査にてmalignant lymphoma, diffuse, small, B cell typeと診断された。術後化学療法施行され, 現在外来通院中である。大腸原発悪性リンパ腫 (primary colorectal malignant lymphoma;以下PCMLと略記) は稀であり, 腹腔鏡手術により切除された報告は少ない。以上の症例に文献的考察を加えて報告する。
  • 國枝 克行, 田村 大宗, 太和田 昌宏, 太田 博彰, 福井 貴巳, 伊藤 元博, 加藤 浩樹, 河合 雅彦
    2005 年 30 巻 5 号 p. 766-770
    発行日: 2005/10/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    5FU+LV療法が奏効した4型横行結腸癌の1例を経験した。症例は69歳男性。H14年9月, 検診にて便潜血陽性を指摘され近医でCF検査を受けたが, 粘膜変化のみで経過観察された。翌年4月の再検査にて横行結腸癌が認められたため, 当科に紹介された。腹部CTにて著明な大動脈周囲リンパ節転移が認められたが, 姑息的結腸切除術を施行した。腫瘍は腹膜播種を伴い, 切除標本では70×40mm大の4型で, 著明なリンパ管侵襲を伴う低分化腺癌であった。術後に5FU+LV療法を施行した。2コース終了後のCTで大動脈周囲リンパ節の著明な縮小が認められ (PR), 血清CEA値は正常化した。CEAが再上昇したためMMC+CPT-11療法に変更し, PRは12ヵ月継続した。その後急速に悪化し, 術後20ヵ月で死亡した。4型大腸癌は稀な疾患で, 化学療法無効例が多いとされるが, 5FU+LV療法は施行する価値があると考えられた。
  • 野口 卓郎, 鈴木 康弘, 高橋 基夫, 近藤 哲
    2005 年 30 巻 5 号 p. 771-774
    発行日: 2005/10/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は47歳女性。腹痛, 下血に対して大腸内視鏡を施行し, S状結腸に粘膜下腫瘍を認めた。生検で悪性所見は認めなかった。大腸脂肪腫と考えられたが, 表面にびらんを伴っており, CTで内部が不均一であったことから肉腫様変化も疑われた。大きさから内視鏡的切除は困難と考え, リンパ節郭清を伴う結腸切除術を施行した。術後病理診断は大腸脂肪腫で, 表面のびらんは細菌感染によるものであり, 内部不均一なCT像は高度炎症による線維性隔壁の増生であることが示された。非典型所見を示す大腸脂肪腫を経験したので報告した。
  • 宮崎 道彦, 黒水 丈次
    2005 年 30 巻 5 号 p. 775-779
    発行日: 2005/10/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は89歳の女性。直腸脱の主訴で来院。患者は3年前に当院で痔核根治術を受けていた。その際のdefecographyで直腸重積を指摘されていた。今回, 全身麻酔下に腹腔鏡下直腸固定術 (黒水法) を施行した。術後は順調に経過し退院した。本症例は他の原因は考えられず, 直腸重積が完全直腸脱に移行することを示唆する貴重な症例である。現在, 再発兆候なく外来通院中である。
  • 四方 裕夫, 北林 一男, 上野 桂一, 飛田 研二, 高島 茂樹, 松原 純一
    2005 年 30 巻 5 号 p. 780-784
    発行日: 2005/10/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    腎癌の下大静脈への浸潤・進展は稀なことではないが, 腎癌の転移先としての膵臓は稀な臓器である。今回72歳, 女性が貧血を主訴として入院し, 内視鏡検査と腹部CT検査で膵頭部腫瘤から十二指腸管腔内へ持続性の出血, さらに下大静脈浸潤して腫瘍栓をもつ腎腫瘍を認めた。手術手技によって腫瘍栓が肺塞栓子となることを防ぐ目的で術前より内頸静脈から腫瘍栓直上に一時的下大静脈フィルターを留置して, 大腿動脈, 静脈部分体外循環を用いて下大静脈に浸潤した腎癌と膵頭部腫瘤を一期的に切除した。肺塞栓症状を来すこともなく退院となった。病理組織診断の結果膵頭部の腫瘤は腎癌の孤立性膵転移と判明した。術後2年半の現在, 生存中であり再発徴候はない。
  • 森岡 伸浩, 宮下 薫, 藍澤 喜久雄, 清永 英利, 奥村 直樹
    2005 年 30 巻 5 号 p. 785-789
    発行日: 2005/10/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は67歳, 男性。主訴は左側腹部痛。平成16年6月21日から腹痛が出現した。6月28日再度腹痛出現, また38.2°Cの発熱を認めたため近医を受診し, 当院紹介受診となった。受診時左側腹部に圧痛およびBlumberg徴候を認め, 白血球5120/mm3), CRP13.61mg/dlであった。細菌性腸炎の診断で入院した。入院後抗生剤を投与するも腹部所見, 炎症反応とも改善せず6月30日再度腹部CT検査を施行し, 腸管の近傍に低濃度領域を認め内部に高densityの線状影を認めた。魚骨による腹腔内膿瘍・腹膜炎の診断で手術を施行した。下行結腸間膜に膿瘍を認め, 同部位から25mmの魚骨を確認した。魚骨による消化管穿孔・穿通では特異な臨床症状がなく, 診断が困難となりやすい。しかし, 詳細な問診・病歴の聴取や, CT・超音波検査などの画像診断により術前診断できた症例も散見される。原因不明の腹膜炎・腹腔内膿瘍を認めた場合, 本疾患も念頭に置く必要があると思われた。
  • 遠藤 光史, 土田 明彦, 小澤 隆, 斉藤 準, 池田 隆久, 青木 達哉
    2005 年 30 巻 5 号 p. 790-794
    発行日: 2005/10/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は38歳, 男性。腫瘤形成性慢性膵炎, アルコール性肝障害にて近医通院中に右下肢痛とチアノーゼが出現し, 右下肢急性動脈閉塞症と診断され, ウロキナーゼ投与を開始した。投与開始後3日目に腹痛, 下血が出現したため, 当院に転院した。腹部CTで腹水および膵前面に高濃染像を認め, 腹腔穿刺で血性腹水を認めた。腹部血管造影で, 出血源は同定できず, 緊急手術を行ったところ, 血性腹水と大網に凝血塊, 壊死物質の付着を認めた。腹腔内出血の原因は大網内血管の破綻と判断し, 大網を切除した。病理組織学的に, 大網は器質化を伴う脂肪壊死および血腫と診断された。自験例は, 術後49日目に全治退院したが, 慢性膵炎を合併しており, これに伴う炎症が, 長期間大網の細血管に作用して脆弱化し, ウロキナーゼ投与を契機にこれらの細血管が破綻したため, 出血を起こしたものと考えられた。
  • 小向 慎太郎, 植木 匡, 石塚 大, 若桑 隆二
    2005 年 30 巻 5 号 p. 795-798
    発行日: 2005/10/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    特発性大網捻転症の1例を経験しその成因と素因に関係した興味ある所見がえられたので報告する。症例は49歳男性で急性腹症の診断にて入院した。発熱, および臍周囲に強い圧痛と筋性防御を認め, また腹部CT検査にて渦巻き状の層構造を呈する腫瘤を認めたため腸重積症の診断にて手術を施行した。術中所見では大網が時計方向に5回転捻転し大部分が壊死に陥っていた。大網の横行結腸付着部は横行結腸中央部やや左側寄りにて約10cmのみであった。本症例では腹痛の出現の数日前から過度の腹筋運動をしていたことが判明した。そのため急激な体位変換と大網の不完全固定が大網捻転の成因であった可能性が考えられた。特発性大網捻転症は術前診断が困難とされているが腹部CT検査にて渦巻き状の層構造を呈する腫瘤を認めた時は本疾患も鑑別にいれておくべきであると考えられた。
  • 高橋 保正, 長田 明, 大河内 信弘
    2005 年 30 巻 5 号 p. 799-802
    発行日: 2005/10/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は84歳, 女性。十二指腸球部前壁の潰瘍穿孔に対し腹腔鏡下大網充填術および腹腔ドレナージ術を施行した。手術終了時右中腹部の11mmのポートサイトからドレーンを挿入した。術後, 同ポートサイトに皮下膿瘍を形成したが改善し退院した。術後約4ヵ月目に右ポートサイトの膨隆を認め入院した。CT上約3cm大の腹壁瘢痕ヘルニアを認めた。皮下には横行結腸の脱出を認めた。全身麻酔下に手術を施行したところ右ポートサイトに直径約4cmのヘルニア門を認めた。腹膜および筋膜を縫合し閉創した。ヘルニアの原因の一つとしてはポートサイトの感染が考えられた。ヘルニアの防止のため, 10mmを超えるポートサイトの筋膜を縫合閉鎖することが重要だといわれているが, ポートサイトをドレーン孔に使う場合はさらにそれに伴う感染に十分な注意が必要と考えられた。
  • 岡山 順司, 北東 大督, 丸山 博司
    2005 年 30 巻 5 号 p. 803-806
    発行日: 2005/10/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は71歳, 男性。主訴肛門部痛, 腫瘤触知。現病歴平成16年12月中旬頃, 夕方より肛門部腫瘤を触知し, 還納を試みるが困難であった。翌日3時に強い肛門部痛を認めたため, 午前4時に当院救急外来受診。直腸脱と診断し還納を試みたが, 困難で, 緊急入院となった。午前9時に再度還納を試み, 施行可能であった。その後, 経過観察を行っていたところ午後1時頃より腹痛が出現し, 腹部CT検査を施行したところ, freeairを認めた。また, 直腸S状結腸と思われる大腸に憩室を多数認めた。憩室穿孔性腹膜炎と診断し, 同日緊急手術を施行した。腹膜翻転部より約10cm口側に穿孔部を認め, ハルトマン術を施行した。病理組織学的に固有筋層の断裂とリンパ球の浸潤を認めた。今回, 直腸脱に対し用手的還納処置を試みたが, これを契機に発症した憩室穿孔性腹膜炎を経験した。今後は還納の際の手技ならびに還納後の腹部症状に十分に注意する必要があると思われた。
  • 神藤 修, 鈴木 昌八, 坂口 孝宣, 川村 欣也, 福本 和彦, 太田 茂安, 稲葉 圭介, 新井 義文, 三浦 克敏, 今野 弘之
    2005 年 30 巻 5 号 p. 807-813
    発行日: 2005/10/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は53歳, 女性。舌癌 (TINOMO) に対する放射線治療7年後の腹部CT検査で肝下部下大静脈を左側に圧排する腫瘍を認めた。舌癌の再発はなく, 下大静脈原発平滑筋肉腫の術前診断で開腹術を行った。下大静脈右壁から発生していた腫瘍を下大静脈壁の一部を含めて切除した。静脈壁欠損部は浅大腿静脈パッチを用いて再建した。術後合併症なく第15病日に退院した。病理組織検査では腫瘍の一部に肉腫成分を有する平滑筋腫と診断された。Desminなどの筋原性マーカーは筋腫成分に陽性であったが, 肉腫部分では陰性であった。消化管間質腫瘍のマーカーとして知られるc-kitが肉腫成分のみに陽性を示した。術後1年2ヵ月の現在, 再発なく社会復帰している。組織発生の面からも興味深い症例であり, 下大静脈原発平滑筋肉腫本邦報告43例の検討を加え症例報告する。
  • 今野 弘之
    2005 年 30 巻 5 号 p. 814-815
    発行日: 2005/10/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
  • 島田 光生
    2005 年 30 巻 5 号 p. 816-817
    発行日: 2005/10/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
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