日本外科系連合学会誌
Online ISSN : 1882-9112
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31 巻, 4 号
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  • 竹村 雅至, 大杉 治司, 李 栄柱, 西川 隆之, 福原 研一朗, 岩崎 洋
    2006 年 31 巻 4 号 p. 657-660
    発行日: 2006/08/01
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    腹膜播種陽性胃癌に対しては, これまで様々な治療法が試みられてきたが, その治療成績は不良で予後は悪い。しかし, 最近になり胃癌に対して新規抗癌剤であるTS-1やタキサン系が投与可能となり, その治療成績の向上がみられる。われわれの施設で経験した36例の腹膜播種陽性胃癌に対してTS-1を投与したところ有害事象は軽度で外来での加療が可能であった。経口摂取不能例にはRoux-Y型の胃空腸吻合を行い, 経口路を確保している。2年生存例は1例のみで, 1年生存率は45.4%で, 2年生存率は5%であった。胃切除の有無・主病巣の分化度では生存率に差がなかった。腹膜播種陽性胃癌に対するTS-1療法は有害事象も軽度で有用な治療法であるが, さらなる治療成績の向上のためには併用薬や腹腔内化学療法などの確立が望まれる。
  • 柏木 慎也, 齋藤 智尋, 高山 敦子, 内沼 栄樹
    2006 年 31 巻 4 号 p. 661-665
    発行日: 2006/08/01
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    乳房外Paget病は外陰部発生例が圧倒的に多いとされている。今回われわれは外陰部原発の乳房外Paget病の1例を経験し, gluteal fold flapにて再建した。その術後管理に褥瘡予防用のベッドマットとして使用されていたウレタンマットを使用して皮弁管理し, 良好な結果を得た。このマットの使用に対して検討した。
  • 佐々木 啓成, 和田 敏史, 森谷 雅人, 水村 泰夫, 山本 啓一郎, 土田 明彦, 青木 達哉
    2006 年 31 巻 4 号 p. 666-670
    発行日: 2006/08/01
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    2002年4月より2004年3月までの2年間に, 腹部CT所見にて急性虫垂炎と診断し, 入院治療を要した50例中, 初回に手術を行った11例を除いた39例の保存的治療群の再燃予測因子に関する検討を行った。39例中, 再燃したのは11例 (28.2%) で, うち9例で手術治療を行い, 2例で再度保存的治療を行った。再燃に対する予測因子の解析をCox回帰分析で行った結果, (1) 男性, (2) 初診時のCRP値が低値, (3) 糞石を有する症例, が再燃する可能性の高い予測因子であった。保存的治療により, 炎症所見および腹部症状が消退した後の治療方針には一定の見解は得られていない。再燃に対する予測因子を解析した結果, 上述した症例は, 再燃する可能性が高く, 再燃時に穿孔性虫垂炎による緊急手術となる場合があるため, 初発時もしくは炎症消退後の手術治療が望ましいと考えられた。
  • 東海林 安人, 和田 邦敬, 吉田 秀明, 近藤 哲
    2006 年 31 巻 4 号 p. 671-675
    発行日: 2006/08/01
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は71歳の女性。高血圧で近医通院中, 検診の超音波検査で左頸部リンパ節腫大を認め, 当院に紹介となった。当院での超音波検査でさらに甲状腺左葉に径約5mm大の腫瘤を認め, リンパ節の穿刺吸引細胞診ではclass IIIb, 切除生検では乳頭癌の転移の診断で甲状腺原発が疑われた。甲状腺の穿刺吸引細胞診ではclassII, 頸部CTや甲状腺シンチでは病変を指摘できず, 全身精査で異常を認めなかった。診断的治療を兼ねて甲状腺左葉切除・頸部リンパ節郭清を施行した。病理診断では腫瘤は5×7mm大で, 一部に被膜浸潤を有する乳頭癌であった。甲状腺癌は微小であってもリンパ節転移や被膜浸潤を認めることもあり, 頸部リンパ節腫大を認めた場合は本症も念頭におく必要があり, 原発巣として甲状腺が疑われた場合は外科的切除を考慮すべきであると考えられた。
  • 櫻井 健一, 天野 定雄, 榎本 克久, 松尾 定憲, 北島 晃, 根本 則道
    2006 年 31 巻 4 号 p. 676-679
    発行日: 2006/08/01
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は32歳, 女性。約1カ月前に幼児と遊んでいて, 右胸部を打撲した。その後, 右乳房の疼痛が持続し, 同部に腫瘤を自覚するようになり当科を受診した。理学的には, 右乳房AC領域に直径6cmの, 辺縁整で, ほぼ円形の硬く可動性良好な腫瘤を触知した。マンモグラフィでは右MU領域にfocalasymmetric densityを認め, カテゴリーIIIと判定した。超音波検査では同部位に結節状で平滑な腫瘤を認めた。MRIでは直径65mmのmultilobular massとして描出され, 葉状腫瘍や乳癌が疑われる所見であった。穿刺吸引細胞診ではclassIIの診断であり, 好中球などの急性炎症細胞を認めたが, 悪性を示唆する所見は認めなかった.Core needle biopsyでは肉芽腫性乳腺炎の診断であった.結核菌染色を施行したところ, 結果は陰性であった。腫瘤摘出術を施行後, 2年あまり経過観察中であるが, 特に再発の徴候を認めていない。
  • 前田 浩幸, 本多 桂, 村上 真, 廣野 靖夫, 五井 孝憲, 石田 誠, 飯田 敦, 片山 寛次, 山口 明夫, 今村 好章
    2006 年 31 巻 4 号 p. 680-684
    発行日: 2006/08/01
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は47歳, 女性, 閉経前。右腋窩腫瘤と右乳房腫脹を主訴に, 2002年に当科を紹介受診した。右乳房全体の発赤, 硬結と両側腋窩リンパ節腫脹あり, 針生検にて硬癌と診断され, T4d, N2, M1 (LYM), 病期IVと診断した。3回の動注化学療法後, 右胸筋温存乳房切除術と左腋窩リンパ節生検を施行した。切除標本では, 右乳腺の約50%は硬癌で, 残り約50%の乳腺と両側腋窩リンパ節にinvasive micropapillary carcinoma (以下IMPCと記す) を認めた。治療開始後11カ月で, 左乳房左腋窩リンパ節転移, 胸椎転移を認め, 左胸筋温存乳房切除術と放射線治療を施行した。左乳腺, 左腋窩および左胸骨傍リンパ節に, IMPCの組織像を認めた。治療開始後1年8カ月で肝転移が出現し, 治療開始後3年1カ月で癌性髄膜炎を併発し, 永眠された。IMPCの成分を認めた稀な炎症性乳癌の1例を報告した。
  • 櫻井 健一, 天野 定雄, 榎本 克久, 松尾 定憲, 北島 晃, 根本 則道
    2006 年 31 巻 4 号 p. 685-688
    発行日: 2006/08/01
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は58歳, 女性。5年前に右乳房非浸潤癌 (DCIS) の診断で手術を受けている。経過観察中の超音波検査で左乳房E領域とC領域に辺縁不整な腫瘤を認めた。超音波検査で左乳房Eareaに14mmとCareaに8mmの辺縁不整なlow echoic massを認めた。造影MRI検査では, 造影効果のある腫瘤として認められ, time intensity curveはpeak and plateau patternを示し, 悪性が疑われた。穿刺吸引細胞診では2つの腫瘤ともにClassIII (鑑別困難 : indeteminate) であった。診断目的で腫瘤摘出術を施行。病理組織診断は両腫瘤ともにintraductal papillomaであり, 周囲にmastopathyやapocrine meta plasiaを伴っていた。末梢性乳管内乳頭腫の診断には筋上皮細胞の同定が重要であるが, 凍結標本では診断が困難な場合がある。これらのことを考慮して, 本疾患には慎重に対応することが重要であると思われた。
  • 北條 浩, 尾崎 公彦, 枡岡 歩, 横手 祐二, 許 俊鋭
    2006 年 31 巻 4 号 p. 689-692
    発行日: 2006/08/01
    公開日: 2010/02/09
    ジャーナル フリー
    症例は, 64歳, 女性。大動脈弁狭窄症にて手術を予定していたところ, 入院直前に血小板減少が出現し, 精査にて特発性血小板減少性紫斑病と診断された。入院時の血小板数4.6万/mm3と低値であったが, 手術7日前よりγ-グロブリン (400mg/Kg/day) の5日間投与を行い, 手術当日には13.4万/mm3まで増加し, 大動脈弁置換術を施行した。術中, 術後ともに出血傾向は認めず, 血小板輸血を行ったが, 良好な経過を得た。特発性血小板減少性紫斑病合併症例の開心術では, 術前の大量γ-グロブリン療法は, 有効であると思われたので報告する。
  • 石田 秀之, 秋田 裕史, 渡辺 康則, 中口 和則, 甲 利幸, 沖野 毅
    2006 年 31 巻 4 号 p. 693-697
    発行日: 2006/08/01
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    一般に姑息手術に終わった症例のQOLおよび予後は不良である。症例は76歳, 男性。胃癌による通過障害あり。2004年9月, CY1・T4 (膵) で胃空腸吻合術を施行した。10月よりTS-1を投与した。2005年1月のCTで心嚢液が出現しPDと判断した。2月よりタキソールを投与した。2コース目にアレルギー症状 (G2) が出現した。3月よりCPT-11+CDDPを投与した。有害事象のため投与量を順次減量した。2006年3月現在, CPT-11を30mg/body, CDDPを15mg/bodyで2週に一度投与中。病変は残存しているが通過障害はなく, PSは0である。胃癌の化学療法は5-FU系・タキサン系・イリノテカン・プラチナの4剤を有効に使うことが重要と考える。
  • 石井 淳, 金子 弘真, 田村 晃
    2006 年 31 巻 4 号 p. 698-702
    発行日: 2006/08/01
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例はvon Recklinghausen病の41歳, 女性。消化管出血を主訴に来院。上部消化管内視鏡検査にてファーター乳頭部近傍に露出血管を伴う隆起性病変を認め, 諸検査にて十二指腸粘膜下腫瘍と診断した。幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を行い, 術中トライツ靱帯から約150cmの空腸漿膜面に米粒大の腫瘍を認め局所切除を行った。免疫染色にて両腫瘍ともKIT陽性であることからgastrointestinal stromal tumor (GIST) と診断した。また十二指腸GISTは血管内浸潤と考えられる所見を認めた。これまでにvon Recklinghausen病に合併し, KIT陽性またはCD34陽性よりGISTと診断された本邦報告例の臨床像とともに, 若干の文献的考察を加え報告する。
  • 塚本 忠司, 大西 律人, 豊川 晃弘, 濱辺 豊, 寺村 一裕
    2006 年 31 巻 4 号 p. 703-707
    発行日: 2006/08/01
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は68歳, 女性。黄疸を主訴に来院し, 精査にて十二指腸乳頭部の内分泌細胞癌と診断。膵頭十二指腸切除術, リンパ節郭清 (D3) が施行された。切除標本の免疫組織化学的検索にて, CD56・synaptophysin・NSE陽性, chromograninA弱陽性, CEA, CA19-9は陰性で, 内分泌細胞癌と確定診断された。術後経過は良好であったが, 術3カ月後に多発肝転移および腹腔内リンパ節転移を認め, 癌死した。自験例を含めた十二指腸乳頭部原発内分泌細胞癌の本邦報告例 (会議録を除く) は16例と少ないものの, その多くは急速に発育進展し, 高率に脈管侵襲と転移をきたし, 予後が非常に悪いきわめて悪性度の高いものがほとんどである。これら症例の検討から, 早期発見とともに化学療法を組み入れた集学的治療が予後改善につながるものと考えられた。
  • 北東 大督, 井村 龍麿, 岡山 順司, 久下 博之, 辰巳 満俊
    2006 年 31 巻 4 号 p. 708-711
    発行日: 2006/08/01
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は37歳, 男性, 精神発達遅延があり福祉施設に入所中, 腹部膨満と嘔吐を認め来院した。右下腹部に腹膜刺激症状を認め, 腹部CT検査にてイレウス, free air, 右下腹部の5×4cm大の膿瘍所見を認め消化管穿孔の疑いで緊急開腹術を施行した。手術所見ではイレウス, 腹膜炎所見を認め, 膿瘍を吸引するとプラスチック性の異物が回腸を閉塞し, 同部位で異物の一部が小腸壁外に露出していた。異物を含め20cmの小腸部分切除術を行った。術後経過は良好で術後16日目に退院した。異物誤飲による小腸穿孔は比較的稀な疾患でこれまで魚骨や爪楊枝, PTP (press-through-package) によるものなどが報告されているがプラスチック異物誤飲による報告例は非常に稀であり, 若干の文献的考察を加えて報告する。
  • 鵜瀞 条, 関 英一郎, 権田 厚文
    2006 年 31 巻 4 号 p. 712-716
    発行日: 2006/08/01
    公開日: 2010/02/09
    ジャーナル フリー
    症例は57歳, 男性。食欲低下と立ちくらみを主訴に当院を受診した。来院時はHb値4.6g/dlであり, 上部消化管内視鏡にて胃切除後吻合部潰瘍が大腸に穿通し瘻孔形成している所見を認めた。待期的に手術を行い, 胃切除Roux-en-Y再建後吻合部潰瘍の横行結腸穿通による瘻孔形成の所見であった。吻合部切除および横行結腸部分切除を行い, 再びRoux-en-Y法にて再建した。胃切除後吻合部潰瘍の横行結腸穿通による瘻孔形成は比較的稀ではあるが外科的な根治術を要することが多く, また吻合部潰瘍を繰り返すことも多い。自験例においても術後に吻合部潰瘍の再発をみたがproton pump inhibitor (PPI) 投与にて治癒しえた。胃切除後吻合部潰瘍の外科的治療においては慎重な術式の選択と術後PPIの投与を組み合わせることが重要と思われた。
  • 北東 大督, 高山 智燮, 岡山 順司, 井村 龍麿, 辰巳 満俊
    2006 年 31 巻 4 号 p. 717-720
    発行日: 2006/08/01
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は60歳, 男性。他院で絶食のみで軽快するイレウスを4回繰り返し, 精査加療目的に当院紹介となった。イレウス管を挿入後, 造影検査にて回盲部より約30cm口側に長さ1cmの狭窄部位を認めた。虫垂切除の既往があり, 癒着性イレウスや小腸腫瘍による狭窄の可能性があると判断した。イレウス管による腸管減圧後, 腹腔鏡下に手術を開始した。狭窄部は膀胱漿膜に浸潤する小腸腫瘍で, 腹腔鏡補助下に回腸部分切除術を施行し, 術中迅速病理検査で回腸悪性リンパ腫と診断した。術前診断の困難な小腸病変に対して, 腹腔鏡を用いた手術は診断, 治療を同時にかつ最小限の侵襲で行いうる有効な手段と考えられた。
  • 佐々木 啓成, 和田 敏史, 森谷 雅人, 水村 泰夫, 山本 啓一郎, 鴇田 博美, 土田 明彦, 青木 達哉, 岡田 進
    2006 年 31 巻 4 号 p. 721-723
    発行日: 2006/08/01
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は35歳時の子宮筋腫での開腹術と85歳時の術後イレウスでの開腹の既往を有する93歳, 女性。今回腹部膨満と腹痛を主訴に搬送された。腹部所見および腹部CT検査にて, 術後の単純性イレウスと診断し, イレウスチューブによる減圧治療を開始した。しかし数時間後にイレウスチューブを自己抜去した後, 意識障害が出現し血圧低下とともにショック状態に至った。その際, 腹満が増強したため, 腹部の緊急CT検査を施行した結果, 入院時の腹部CT検査では認めなかったガス像が, 肝内門脈のほぼ全域と肝外門脈系, 肝皮膜下, 大循環系にまで認められ, 腹腔内にはfree airとともに出血と考えられる腹水を認めた。その後, 全身状態は急激に悪化し, 救急蘇生を行ったが, 入院から約13時間後に死亡した。病理解剖を行えなかったため, 原疾患は明らかでないが, 急激な経過を呈した比較的稀な門脈ガス血症を経験したので, 若干の文献的考察を加え報告する。
  • 新見 行人, 渡辺 明彦, 石川 博文, 山本 克彦, 大山 孝雄, 中村 卓, 中谷 敏也, 菊池 英亮
    2006 年 31 巻 4 号 p. 724-727
    発行日: 2006/08/01
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    60歳代後半, 男性。主訴 : 心窩部不快感。現症 : 平成16年2月に心窩部不快感を認め近医受診。上腹部腫瘤を指摘され当院内科紹介受診。腹部CT検査, 超音波検査で肝外側区域に径15cmの巨大な腫瘤を認め, 診断確定のため行った生検により悪性リンパ腫 (Non-Hodgkin's lymphoma diffuse large Bcell type) と診断。化学療法CHOP6クール施行後腫瘍は径5cmまで縮小したが, それ以上の縮小を認めず, 同年7月肝外側区域切除術を行った。病理検査では腫瘍はすべて壊死組織に陥り, 腫瘍細胞の残存は認めなかった。肝原発悪性リンパ腫は稀な疾患であり, 切除例の報告も, 報告例の約30%と低い。今回, 化学療法後に切除した1例を経験したので, 若干の文献的考察を加えて報告する。
  • 川崎 篤史, 三松 謙司, 大井田 尚継, 久保井 洋一, 加納 久雄, 天野 定雄
    2006 年 31 巻 4 号 p. 728-731
    発行日: 2006/08/01
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は79歳, 女性。平成13年1月より右季肋部痛を自覚するも放置していた。同年5月初旬より同部位に圧痛を伴う腫瘤を触知するようになり当院を受診した。初診時右季肋部は暗赤色に変色し, 圧痛を伴う腫瘤を触知, 血液生化学検査で強い炎症反応を認めた。腹部CTで胆嚢底部に近接した腹腔内と腹壁に膿瘍を, また胆嚢壁は肥厚し胆嚢結石を認めた。胆石・胆嚢炎による腹壁膿瘍と診断し, 同部位を切開しドレナージチューブを留置した。切開後14日目のドレナージチューブ造影で胆嚢皮膚瘻を確認し, 腹壁膿瘍が軽快した後に開腹下胆嚢亜全摘を施行し, 閉腹後に腹壁膿瘍はopen drainageとした。術後経過は良好で術後2週間目に退院した。胆石発作放置例で腹壁腫瘤が自覚された場合, 本症を念頭に入れ, ドレナージを行い腹壁膿瘍の軽快と瘻孔形成後に開腹手術施行の方針が良いと考えられた。
  • 白相 悟, 中川 国利, 村上 泰介
    2006 年 31 巻 4 号 p. 732-735
    発行日: 2006/08/01
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は81歳の女性で, 心窩部痛を主訴として来院した。入院時, 心窩部に圧痛を認めた。また白血球数やCRPは著しく上昇し, 腹部DIC-CT検査では胆嚢は緊満し, 壁は著明に肥厚していた。また胆嚢管は一部が造影されたが, 胆嚢は造影されなかった。以上の所見から急性胆嚢炎と術前診断し, 来院3時間後に腹腔鏡下に手術を施行した。腹腔内を観察すると, 胆嚢は暗赤色を呈して著明に腫大していた。また胆嚢床付着部は僅かで, 胆嚢頸部で約270度捻転していた。胆嚢の捻転を整復した後, 胆嚢を摘出した。病理組織検査では, 胆嚢壁は全層にわたり出血性壊死を呈していた。術後経過は良好で, 術後9日目に退院した。胆嚢捻転症の術前診断はいまだ困難であるが, 確定診断から治療まで連続して行える腹腔鏡下手術は大変有用であった。また胆嚢捻転症では周囲との癒着はなく肝臓から遊離しているため, 腹腔鏡下胆嚢摘出術のよい適応と考えられた。
  • Koichi TAKAHASHI, Akihiko TAKEDA, Katsuya OKADA, Nozomi SHINOZUKA, Isa ...
    2006 年 31 巻 4 号 p. 736-739
    発行日: 2006/08/01
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    Lymphangiomatosis is usually a benign tumor consisting of a dilated lymphatic system, but its occurrence is unusual. Most such instances are found in the head and neck area. Less than 5% are diagnosed intra-abdominally and they are very infrequently encountered in the retroperitoneal area. However, splenic lymphangiomatosis is thought to be extremely rare. We herein report the case of a 23 year-old woman who had a huge splenic lymphangiomatosis, which presented as a left upper abdominal mass when she was pregnant. She underwent a splenectomy after childbirth. This is the first case of a pregnant woman with splenic lymphangiomatosis who successfully underwent a splenectomy after childbirth. The clinical manifestations, imaging features, and management of this patient are described and previously published studies in the literature are also reviewed.
  • 野口 肇, 杉谷 通治, 西村 和彦, 落合 匠, 岡田 豪, 大内 昌和, 山田 正樹, 河合 尚基, 前野 俊雄, 岡野 匡雄
    2006 年 31 巻 4 号 p. 740-743
    発行日: 2006/08/01
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    後腹膜嚢腫は比較的稀な疾患のため, 日常診療において遭遇することは少ない。今回後腹膜漿液性嚢胞の1例を経験したので報告する。症例は43歳, 女性。平成14年6月健診で腹部CT検査をうけ腹腔内腫瘤を指摘されたため当院婦人科紹介受診, 右卵巣嚢腫と診断され入院となった。経膣超音波検査, 腹部MRI検査で右卵巣嚢腫と診断し平成14年9月手術を施行した。開腹の結果上腹部から下腹部を占める巨大な後腹膜腫瘍を認めたが浸潤の有無や消化管, 腸管膜血管系との解剖学的位置関係が不明のためそのまま閉腹した。術後精査を施行した結果, 巨大後腹膜漿液性嚢腫と診断しこれを摘出した。嚢腫内容液は約1,500mlで性状は無色漿液性であった。
  • 榎本 拓茂, 林 京子, 仙石 紀彦, 半田 喜美也, 蔵並 勝, 渡邊 昌彦
    2006 年 31 巻 4 号 p. 744-747
    発行日: 2006/08/01
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は19歳, 女性である。徐々に増大する右頸部腫瘤を主訴に当院を受診した。甲状腺右葉に充実性腫瘤を認め, 濾胞腺腫の診断にて右葉切除術を施行したが, 術中所見にて右反回神経を従来の走行部位に確認することができなかった。輪状軟骨の高さで右鎖骨下動脈が高位分岐しており, 右迷走神経から分かれた右反回神経はこの部位を通り内側に横走して喉頭に達していた。時に遭遇する右鎖骨下動脈起始異常に伴ういわゆるnon-recurrentinferior laryngeal nerveとは異なるが, 同じように反回神経が気管食道溝を上行せずに外側から横走して直接喉頭に入る稀な走行異常の1例を経験したので報告する。
  • 宮地 智洋, 内藤 広郎
    2006 年 31 巻 4 号 p. 748-752
    発行日: 2006/08/01
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    [症例] 75歳, 男性。上腹部痛を主訴に近医を受診し, 急性腹症の診断で当院へ搬送された。来院時CTおよび血液検査で総胆管結石による急性膵炎を疑い入院した。[入院後経過] 入院後の精査で左肝門部胆管癌と進行胃癌の重複癌が認められた。入院後に発作性心房細動, 一過性右下全麻痺を伴う脳梗塞を発症した。高齢で, 閉塞性呼吸障害もみられたことから, ハイリスク症例と判断されたが充分なインフォームドコンセントの上, 肝左葉・尾状葉切除術および胃全摘術を一期的に行った。出血量は812g, 手術時間は632分であった。術後, 右不全片麻痺や呼吸不全が出現し, 一過性の心肺停止に陥るなど術後管理に難渋したがいずれも軽快し, 術後第61病日で元気に退院した。[結語] 肝門部胆管癌と進行期胃癌を合併した高齢者重複癌に対し, 一期的切除術を施行した。このような症例の治療法については, 一定の見解はなく, 今後, 同様の症例の蓄積, 検討が必要である。
  • 小林 照忠, 田中 洋一
    2006 年 31 巻 4 号 p. 753-756
    発行日: 2006/08/01
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は41歳, 男性。健診の便潜血検査が陽性のため前医で注腸造影検査を受け, S状結腸ポリープを指摘, 当センターを紹介された。大腸内視鏡検査でS状結腸癌と診断し, 腹腔鏡視下大腸切除術を開始したが, 空腸内に腫瘍性病変の存在が疑われたため, 開腹術へ変更した。Treitz靱帯近傍に腫瘍を認め, 空腸切除・S状結腸切除術, リンパ節郭清を行った。切除標本では空腸に浸潤潰瘍型の腫瘍を認め, 病理組織学的には中分化腺癌で, 漿膜下層に達しており, 脈管侵襲陽性, リンパ節転移陰性であった。S状結腸癌は, 中分化腺癌, sm1, ly0, v0, n0, stage Iであった。術後20日目に退院し, 3年後の現在, 再発の兆候なく生存中である。腹腔鏡視下手術に際しては, 十分な腹腔内の観察と, 必要時には躊躇することなく開腹術へ変更することが重要と考えられた。
  • 若林 剛
    2006 年 31 巻 4 号 p. 757-758
    発行日: 2006/08/01
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
  • 久保田 哲朗
    2006 年 31 巻 4 号 p. 759-760
    発行日: 2006/08/01
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
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