日本外科系連合学会誌
Online ISSN : 1882-9112
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32 巻, 5 号
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原著
  • 高橋 公一, 竹田 明彦, 小澤 修太郎, 篠塚 望, 小山 勇
    2007 年 32 巻 5 号 p. 733-737
    発行日: 2007/10/30
    公開日: 2008/10/03
    ジャーナル フリー
    目的 : 直腸癌術後の早期経口摂取の有効性と安全性について検討した。方法 : 対象は当施設で直腸癌と診断され, 人工肛門造設を伴わずに直腸切除術を施行した88例とした。術後3日間以上の絶食の後, 経口摂取を開始した2001~2002年のA群 (n=42) と, 術翌日から経口摂取を開始した2005~2006年のB群 (n=46) の2群に分け, 術後経口摂取カロリー, 初回排便, 術後入院期間, 合併症の発生率について比較検討した。結果 : 患者の背景因子や術後合併症の頻度に, 両群間で優位差はなかった。術後排便が認められるまでの期間の平均値はA群4.7±3.0日, B群3.2±1.9日とB群で優位に短時間であった。体重減少率はA群 (-5.3±4.0%) と比較してB群 (-3.7±5.0%) と有意に少なかった (p=0.0099)。平均術後入院期間はA群19.5±24.8日, B群14.7±14.0日とB群で有意に短時間であった (p=0.261)。結語 : 開腹による直腸癌の術後早期経口摂取の有効性と安全性が確認された。
臨床経験
  • 児玉 章朗, 磯谷 正敏
    2007 年 32 巻 5 号 p. 738-743
    発行日: 2007/10/30
    公開日: 2008/10/03
    ジャーナル フリー
    過去10年間に経験した急性上腸間膜動脈閉塞症 (以下SMA閉塞症) 11例について検討した。症例は男性5例, 女性6例で年齢は61~92歳 (平均76歳) であった。全例心血管疾患を併存しており, 心房細動を7例に認めた。来院時すでに全身状態が極めて不良な症例が多く, 5例がショック状態であった。術前の理学所見および諸検査から全例に緊急開腹手術を行った。広範な腸管虚血から試験開腹を行った1例を除き全例壊死腸管を切除し, 最近の3例には血栓除去術を追加した。手術直接死亡3例を含め7例が入院死亡した。しかし生存退院4例も術後平均14カ月で死亡していた。生存退院群と入院死亡群での予後因子の検討では, 術前ショックの有無のみで有意差が認められた。SMA閉塞症は現在でも予後不良な疾患であると考えられた。
症例
  • 武本 昌子, 乾 浩己, 綿谷 正弘, 橋本 幸彦, 大和 宗久, 塩崎 均
    2007 年 32 巻 5 号 p. 744-748
    発行日: 2007/10/30
    公開日: 2008/10/03
    ジャーナル フリー
    乳頭部びらんを呈するが, その病態が全く異なる乳頭部腺腫とPaget病の2例を経験した。症例1は53歳, 女性。左乳頭部難治性びらんに対する皮膚生検の結果, 乳癌を疑われ当院受診。生検標本の再検討より, 乳管上皮の著しい増生は認められたが核異型が少なく, 二相性は保たれていたため乳頭部腺腫と診断。乳頭部分切除を施行した。症例2は46歳, 女性。右乳頭部難治性びらんに対して, 乳頭部生検の結果Paget病と診断。さらに乳腺造影CTで同側乳頭乳輪部から3cm下外側に径9mmの濃染像を認めた。よって, 乳頭・乳輪およびこの濃染部分を含めた乳房部分切除術を施行。切除標本では乳頭乳輪部のPaget病と, CTの濃染部に一致して非浸潤癌が認められた。乳頭部腺腫とPaget病は乳頭部びらんを形成するが, 前者は限局性の良性疾患であり, 後者は悪性で, しばしば同側乳房内に乳癌を併発する。乳頭部びらんでは両者を鑑別し, 適切な範囲の外科的切除が求められる。
  • 大井 正貴, 田中 光司, 毛利 靖彦, 楠 正人
    2007 年 32 巻 5 号 p. 749-753
    発行日: 2007/10/30
    公開日: 2008/10/03
    ジャーナル フリー
    食道粘膜下腫瘍を覆う上皮に癌が存在した報告は比較的稀で, その原因もまだ解明されていない。症例は69歳, 男性。症状はなく, 胸部CTで偶然に見つかった。上部消化管内視鏡所見では胸部中部食道に黄色調粘膜下腫瘍を認め, それを覆う粘膜上に表面結節状の隆起性病変を認め, 生検で食道癌と診断した。以上より, 食道脂肪腫上に併存した食道癌と診断し右開胸開腹による胸部食道亜全摘術, 胸腔内食道胃管吻合術を施行した。病理組織学的にも脂肪腫と食道癌の併存を認めた。食道癌と食道粘膜下腫瘍が併存する場合, 内視鏡や超音波内視鏡による, より正確な術前診断が必要と考えられた。
  • 松橋 延壽, 安藤 公隆, 八幡 和憲, 小倉 真治
    2007 年 32 巻 5 号 p. 754-757
    発行日: 2007/10/30
    公開日: 2008/10/03
    ジャーナル フリー
    消化管穿孔はSIRS状態から管理に難渋すると臓器不全に移行することがある. そのため治療はSIRSから敗血症ならびに多臓器不全に移行しないように細心の注意を払い治療遂行することが望まれる. 今回われわれは初診時に心原性ショックまで呈していたが救命できた, 統合失調症を合併した重症胃潰瘍穿孔の1例を経験したため報告する. 症例は40歳, 男性. 他院より穿孔性腹膜炎, ショック状態の診断で救急車にて当院搬送された. 来院時すでにカテコラミンを大量に使用しないと循環動態が維持できない状態に悪化し, EF34%と低下している状態であった. 術式は開腹下にて大網充填術施行した. 術後ICUにて集学的治療施行し, 第42病日精神科に転科するに至った. またその過程IL-6を測定しており, 高cytokine血症が心機能をmodulationすることも報告されており, その意味からも救命できた症例であり報告する.
  • 佃 和憲
    2007 年 32 巻 5 号 p. 758-760
    発行日: 2007/10/30
    公開日: 2008/10/03
    ジャーナル フリー
    症例は55歳, 男性。横行結腸癌と肝転移に対し, 横行結腸切除術および肝外側区域切除術を施行した3日目に十二指腸潰瘍穿孔を発症したため, 緊急手術を行った。初回手術で大網を切除していたため, 肝円索を用いて穿孔部を被覆した。術後は順調に回復し, 7日目より経口摂取再開し, 25日目に退院した。穿孔性十二指腸潰瘍に対し, 大網が利用できない場合には肝円索を用いる被覆法も有用であると思われた。
  • Satoshi IKESHIMA, Masafumi KURAMOTO, Akinobu MATSUO, Tetsuji TASHIMA, ...
    2007 年 32 巻 5 号 p. 761-764
    発行日: 2007/10/30
    公開日: 2008/10/03
    ジャーナル フリー
    A 90-year-old Japanese male was referred to our hospital with severe abdominal pain and vomiting. A diagnosis of strangulation of the small intestine was made, and emergency surgery was performed. Intraoperative exploration revealed that a loop of small intestine was strangulated in an opening formed by adhesion of the thickened tip of a Meckel's diverticulum to the mesentery of the small intestine. Pathological examination confirmed severe chronic inflammation at the tip of the Meckel's diverticulum. In the classification by Rutherford and Akers this type of strangulation is included in a rare group of intestinal obstructions following inflammation of Meckel's diverticulum.
  • 北川 敬之, 黒水 丈次, 江上 聡, 大倉 充久, 高橋 一昭, 山崎 誠
    2007 年 32 巻 5 号 p. 765-768
    発行日: 2007/10/30
    公開日: 2008/10/03
    ジャーナル フリー
    盲腸癌に後腹膜膿瘍を合併することは稀であり, 術前診断は困難であることが多い。今回術前に虫垂炎による後腹膜膿瘍と診断された盲腸癌の1例を経験したので報告する。症例は50歳の女性。右下腹部のしこりとひきつれるような痛みを自覚し4カ月程経過をみていたが, 症状が増強したため受診した。腹部CTにて右腎下極から大腿基部まで続く90×70×165mmの周囲が造影される低濃度腫瘤を認め, 盲腸辺りと連続性があることから虫垂炎の後腹膜への穿通による膿瘍形成と診断し, 同日緊急に盲腸部分切除とドレナージ術を施行した。しかし, 病理診断にて盲腸癌と診断され, これによる虫垂炎の併発から後腹膜へ穿通, 膿瘍形成を起こしたと考えられた。若干の文献的考察を加え報告する。
  • 新川 寛二, 上西 崇弘, 金田 和久, 栄 政之, 田中 肖吾, 山本 隆嗣, 石原 寛治, 大野 耕一, 久保 正二
    2007 年 32 巻 5 号 p. 769-773
    発行日: 2007/10/30
    公開日: 2008/10/03
    ジャーナル フリー
    症例は右下腹部痛を主訴とする80歳, 女性。腹部CTおよび超音波検査像上, 回盲部に連続する径3cmの嚢胞性腫瘤がみられ, 血清CEA値および血清CEA19-9値はそれぞれ7.9ng/ml, 95U/mlと高値であった。大腸内視鏡検査で盲腸部にvolcano sign陽性の球状の粘膜下腫瘍様病変が認められたため, 虫垂粘液嚢腫, あるいは嚢胞腺癌の可能性があると診断するも, 患者が手術を希望しなかったため, 経過観察していた。しかし, 右下腹部痛を繰り返し, 1年3カ月後のCT像上, 腫瘤は径5cmに増大していた。このため患者の同意を得て回盲部切除術を施行した。病理組織学的検索により虫垂粘液嚢胞腺癌と診断された。術後経過は良好で, 腫瘍マーカーは正常化し, 術1年後の現在無再発生存中である。
  • 小松 昇平, 豊川 晃弘, 田中 賢一, 加地 政秀, 塚本 忠司, 脇田 和幸, 大西 律人, 濱辺 豊, 石田 武, 寺村 一裕
    2007 年 32 巻 5 号 p. 774-777
    発行日: 2007/10/30
    公開日: 2008/10/03
    ジャーナル フリー
    症例は50歳代, 男性。S状結腸癌, 小腸浸潤, 肝転移に対し2004年1月S状結腸切除術, 小腸合併切除術施行。同年2月, 肝外側区域切除術施行。術後UFT/ユーゼル内服にて経過観察されていた。2005年4月多発性肺転移と診断され, 同年7月よりmFOLFOX6療法を開始した。第1回目化学療法開始12日後に呼吸苦を主訴に救急外来受診し, 3度気胸と診断された。気管支鏡による精査の結果, mFOLFOX6療法施行前では右下幹起始部入口部を完全に閉塞させていた腫瘤の縮小を認め, これに伴いB6気管支への開口部がみられた。以上より肺転移巣の縮小に伴いS6への含気が改善され, 形成された気瘤の破裂によって気胸を生じたと考えられた。大腸癌転移性肺腫瘍による気胸発症の報告例は検索した限りでは認めなかった。今回われわれは, S状結腸癌肺転移巣に対するmFOLFOX6療法施行後に気胸を来たした稀な1例を経験したので, 若干の文献的考察を加えて報告する。
  • 傍島 潤, 大澤 智徳, 岡田 典倫, 横山 勝, 石橋 敬一郎, 石田 秀行
    2007 年 32 巻 5 号 p. 778-782
    発行日: 2007/10/30
    公開日: 2008/10/03
    ジャーナル フリー
    結腸癌右卵巣転移によるpseudo-Meigs症候群を呈した稀な1例を経験したので報告する。症例は54歳, 女性, 下腹部腫瘤と右胸腹水の精査のため, 婦人科入院。諸検査でS状結腸に2型病変と, 卵巣に約20cm大の多胞性の腫瘍を認めた。術前に右胸腔ドレナージ施行 (1,000mlの漏出液, Class I)。開腹所見はS状結腸に全周性腫瘍, 右卵巣腫瘍, 大網に多数の腹膜播種, 約1,000mlの漿液性腹水を認めた。高位前方切除 (D3), 両側卵巣切除, 大網切除 (CurB相当) を行った。組織学的には結腸・右卵巣の腫瘍のいずれもがcytokeratin 7陰性, cytokeratin 20陽性の中分化型腺癌であり, 結腸癌の卵巣転移と診断した。第4病日には左胸水貯留に対しても, ドレナージを施行した。その後, 胸腹水の再貯留なく, 第23病日に軽快退院。術後18カ月目に後腹膜再発に対し, 腎瘻造設を施行するも, 徐々に状態が悪化し, 術後20カ月後に原癌死した。
  • 五十畑 則之, 渡辺 修, 道本 薫, 石橋 敬一郎, 藤本 崇司, 横溝 肇, 吉松 和彦, 成高 義彦, 小川 健治
    2007 年 32 巻 5 号 p. 783-786
    発行日: 2007/10/30
    公開日: 2008/10/03
    ジャーナル フリー
    髄膜炎による意識障害を契機に発見され, 肝膿瘍, 右横隔膜下膿瘍, 左膿胸, 肛門周囲膿瘍などの多発感染巣を合併した直腸癌の1例を経験したので報告する。症例は69歳, 男性。糖尿病で内服治療中。意識障害を主訴に入院, 髄液検査で細菌性髄膜炎と診断し治療を開始した。また肝膿瘍, 右横隔膜下膿瘍, 左膿胸, 肛門周囲膿瘍がみられ, さらに肛門縁から5cmの部位に2型の直腸癌を認めた。これらの感染巣は癌の穿通による膿瘍形成と敗血症が原因と推測した。各膿瘍をドレナージし, 全身状態の改善を待って, まず人工肛門を造設した。さらに会陰部の感染コントロールを行った後, 根治手術として腹会陰式直腸切断術を施行した。
  • 中村 寧, 斉田 芳久, 長尾 二郎, 中村 陽一, 榎本 俊行, 片桐 美和, 金井 亮太, 岡本 康, 草地 信也, 渡邉 学, 炭山 ...
    2007 年 32 巻 5 号 p. 787-789
    発行日: 2007/10/30
    公開日: 2008/10/03
    ジャーナル フリー
    直腸癌悪性狭窄に金属ステント挿入後遅発性に口側腸管穿孔をきたした症例を報告する。症例 : 70歳代, 男性。直腸癌全周性狭窄によるイレウス症状にて前医を受診, 当院紹介転院となった。転院後ただちに透視・内視鏡下に金属ステントよる狭窄解除を行った。直後より排便・排ガスを認め, 同日夕より飲水, 中粥食を開始した。前医入院中より肛門部に癌性疼痛を認めておりNSAIDで改善が充分でないため麻薬性鎮痛剤の処方を行い疼痛コントロールを行った。周囲臓器への癌の浸潤が疑われたため術前放射線化学療法を予定し経過観察中, ステント挿入13日目に突然ショック・心肺停止状態となり蘇生術行うも死亡した。病理解剖にてステントの上端から30mm口側に穿孔が2箇所認められ, 便塊閉塞による内圧の上昇に起因した直腸穿孔が疑われた。ステント留置後は緩下剤投与, 注腸などで厳重に管理する必要があることが示唆された。
  • 天野 邦彦, 石橋 敬一郎, 中田 博, 岡田 典倫, 崎元 雄彦, 権田 剛, 石田 秀行
    2007 年 32 巻 5 号 p. 790-794
    発行日: 2007/10/30
    公開日: 2008/10/03
    ジャーナル フリー
    症例は88歳, 男性。5年前から肛門周囲の皮疹を自覚していたが放置していた。右下肢浮腫を認めたため皮膚科受診。肛門周囲Paget病と診断されたが, 病変が肛門内へ連続していると考えられたため当科紹介。肛門管内に顆粒~結節状の扁平隆起を認め, 生検で肛門周囲と肛門管内に腺癌が認められた。両側鼠径部と傍大動脈リンパ節転移を認めたため, 両側鼠径リンパ節と大動脈周囲リンパ節郭清を伴う腹会陰式直腸切断術および筋皮弁形成術を施行。肛門管内の扁平病変は中分化腺癌であり, 皮膚側にPaget細胞を含む腺癌の進展を認めた。免疫組織化学染色ではGCDFP15陰性, CK20陽性であり, 4型肛門管癌によるPagetoid spreadと診断した。高齢のため化学療法は施行しなかった。Pagetoid spreadを伴った肛門管癌は, 臨床症状が酷似している皮膚付属腺原発Paget病とは治療方針が異なるため, GCDFP15とCK20を免疫染色することで鑑別診断することが重要である。
  • 吉松 和彦, 横溝 肇, 藤本 崇司, 大谷 泰介, 大澤 岳史, 板垣 裕子, 塩澤 俊一, 勝部 隆男, 成高 義彦, 小川 健治
    2007 年 32 巻 5 号 p. 795-798
    発行日: 2007/10/30
    公開日: 2008/10/03
    ジャーナル フリー
    内痔核手術後の晩期出血の1例を経験したので報告する。症例は42歳, 男性。下血, 脱肛を主訴に来院した。Goligher II度およびIV度の内痔核を認め, Vessel Sealing Systemを用いた半閉鎖式結紮切除術を施行した。術後経過は良好で第3病日に退院, 外来通院していたが排便困難で, 緩下剤を投与したが排便時はかなりのいきみを必要とした。第27病日, 排便後の下血で来院, 肛門鏡で凝血塊を認め術後の晩期出血と診断した。内視鏡的止血を試みたが困難で同日止血術を施行し, その後の経過は良好であった。内痔核手術後の晩期出血は第7~10病日に多く, 術後2週間以降は稀である。本症例は術後の排便困難が出血の原因と考えられ, その予防には, きめ細かい排便状態の観察とその改善が必要と考えられる。
  • 川崎 篤史, 三松 謙司, 大井田 尚継, 久保井 洋一, 荒牧 修, 天野 定雄
    2007 年 32 巻 5 号 p. 799-802
    発行日: 2007/10/30
    公開日: 2008/10/03
    ジャーナル フリー
    症例は59歳, 女性。2週間前から右上腹部痛を自覚し来院した。軽度発熱を認め右季肋部に圧痛を伴う小児頭大の腫瘤を触知した。腹部CTで肝右葉に巨大嚢胞が存在した。感染性の肝嚢胞と診断し, 経皮的嚢胞ドレナージを施行したところ大量の茶褐色の排液を認めた。ドレナージ11日後に腹腔鏡下肝嚢胞天蓋切除術を施行。嚢胞を穿刺し内容液を吸引し, 嚢胞を肝実質近傍で切離し嚢胞壁を切離・摘出した。肝実質側の嚢胞壁をアルゴンビームコアグレーターで焼灼し, 出血・胆汁瘻の有無を確認し手術終了とした。術後経過は良好で術後第8病日に退院となった。巨大肝嚢胞に対して腹腔鏡下天蓋切除術が有効であった1例を経験したので報告する。
  • Koichi SATO, Takeo MAEKAWA, Hiroshi MAEKAWA, Mutsumi SAKURADA, Hirofum ...
    2007 年 32 巻 5 号 p. 803-807
    発行日: 2007/10/30
    公開日: 2008/10/03
    ジャーナル フリー
    The patient was a 48-year-old man who had been found to have a hepatic tumor 6.6 cm in diameter on a CT scan and was admitted to our hospital for further examination. His past medical history included left nephrectomy for papillary renal cell carcinoma in December 2003. An abdominal CT scan revealed a multilocular cystic mass showed 75 mm in diameter in S7 of the right lobe of liver. Abdominal ultrasonography showed a highly echoic mass 70 mm in diameter in the right lower abdomen. On abdominal MRI a multilocular cystic mass measuring 80 mm×65 mm was seen in S7 of the right lobe of liver, and it was depicted as mild high intensity on the T1-weighted images and very high intensity on the T2-weighted images. Celiac arteriography showed a hypervascular mass in the arterial phase and a tumor stain in the venous phase. Based on these findings, a diagnosis of cystadenocarcinoma of the liver was made, and surgery was performed. Intraoperative exploration revealed that the tumor was located in the right lobe of the liver. Right lobectomy was performed, and macroscopic examination of the surgical specimen showed that the tumor measured 70 mm×70 mm×50 mm. The cut surface was cavenous and brown. The histopathological diagnosis was papillary carcinoma, and the histological findings resembled those of the papillary renal cell carcinoma in the surgical specimen obtained previously. The multilocular cystic mass in the liver misdiagnosed as a cystadenocarcinoma of the liver was a metastasis from the papillary renal carcinoma in the previous surgical specimen.
  • Norio YUKAWA, Yasushi RINO, Masahiro KANARI, Hiroyuki SAEKI, Nobuyuki ...
    2007 年 32 巻 5 号 p. 808-813
    発行日: 2007/10/30
    公開日: 2008/10/03
    ジャーナル フリー
    A Japanese man with chronic hepatitis C underwent distal pancreatectomy because of intraductal papillary-mucinous tumor (IPMT) located in the pancreas tail. Seven years later, when the patient was 72, liver tumor was detected by computed tomography in the anterior superior segment. Eight months after angiography, CT-A and CT-AP showed a hypervascular tumor which was enlarging gradually and a small satellite tumor. Subsegmental hepatectomy was performed in August, 2005. The two tumors were different from each other immunopathologically. The main tumor was diagnosed as cholangiocellular carcinoma (CCC), and the satellite tumor as hepatocellular carcinoma (HCC). Both liver tumors differed from metastasis of IPMT which was previously resected. The patient is still alive without recurrence 17 months after resection of the liver.
    Triple primary cancers with IPMT, CCC and HCC are very rare. No combination like this was found in a PubMed search.
  • 柴尾 和徳, 平田 敬治, 日暮 愛一郎, 中山 善文, 岡本 好司, 小西 鉄巳, 永田 直幹
    2007 年 32 巻 5 号 p. 814-819
    発行日: 2007/10/30
    公開日: 2008/10/03
    ジャーナル フリー
    症例は77歳, 男性。右上腹部痛を主訴として来院した。血液検査で強い炎症所見を認め, 腹部CT, MRCPで緊満した胆嚢と胆嚢内から左肝管に渡るガス像を認めたため気腫性胆嚢炎と診断した。全身状態不良のため, 入院後, まず経皮経肝胆嚢ドレナージ術を施行した。全身状態改善後, PTGBD挿入23時間後 (発症から56時間後) に腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した。術中所見では胆嚢の炎症, 浮腫は高度であり, 胆嚢の把持, 剥離には注意を要したが, 術前のPTGBDによる感染胆汁ドレナージのため, より容易に操作を行い得た。線維性の癒着はなく, 剥離は比較的容易で胆嚢摘出術を安全に施行し得た。胆汁培養ではClostridium perfringens が検出された。術後経過は良好で術後12日目に退院した。本術式は特に重篤な合併症や全身状態不良な気腫性胆嚢炎患者のQOLに貢献する有用な治療法であると考えられた。
  • 中村 幸生, 弓場 健義, 山崎 芳郎, 籾山 卓哉, 伊藤 章, 赤丸 祐介
    2007 年 32 巻 5 号 p. 820-824
    発行日: 2007/10/30
    公開日: 2008/10/03
    ジャーナル フリー
    非機能性膵内分泌腫瘍は比較的稀な疾患である。今回われわれは, 膵外性に発育した非機能性膵内分泌癌の1切除例を経験したので報告する。症例は61歳, 女性。平成18年3月近医にて, 脂肪肝の経過観察のため腹部超音波検査を施行され, 膵体部に5cm大の腫瘤を指摘された。腹部造影CTでは, early phaseおよびlate phaseいずれでも造影される腫瘤を認めた。FDG-PETでは, 同部位に淡い集積を認めた。血液検査上, 膵ホルモンに異常値を認めなかった。悪性の可能性を否定できず手術を施行した。術中迅速診断にて膵内分泌癌と診断され, 膵頭十二指腸切除術 (D2) を施行した。病理組織診断は膵内分泌癌であり, 核分裂像を10視野 (×400倍) にて15個以上認められ, 悪性と考えられた。免疫組織学的検索ではホルモン産生を示す所見を認めず, 非機能性膵内分泌癌と診断した。術後8カ月の現在, 無再発生存中である。
  • 鈴木 幸正, 中川 国利, 遠藤 公人
    2007 年 32 巻 5 号 p. 825-828
    発行日: 2007/10/30
    公開日: 2008/10/03
    ジャーナル フリー
    症例は94歳の女性で, 1931年肺結核にて安静加療を受けた。2カ月前から左下腹部に圧痛を伴う3cm大の腫瘤を触知して来院した。腹部超音波検査, CT検査, MRI検査では, 左下腹部の腹壁に境界明瞭な腫瘤を認めた。またPET検査で腫瘤にFluodeoxyglucoseの集積を認めたことから悪性腫瘍も否定できないため, 腫瘤を含む腹壁を切除した。腫瘤は3×3×2cm大で, 内部に白色膿が存在した。膿瘍壁の病理学的検討では, 乾酪壊死とその周囲に類上皮肉芽腫およびラングハンス型巨細胞を認めた。またZiel-Neelsen染色で赤染される抗酸菌が散見された。さらに膿, 喀痰および胃液の抗酸菌培養検査は陽性であった。以上から腹壁結核と診断し, 抗結核剤による加療を行った。腹壁結核は稀な疾患であるが, 結核既往を有する高齢者における腹壁腫瘤の鑑別診断では考慮する必要がある。
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