日本外科系連合学会誌
Online ISSN : 1882-9112
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ISSN-L : 0385-7883
34 巻, 6 号
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総説
  • 戸倉 夏木, 金澤 真作, 片桐 敏雄, 石井 淳, 齊藤 芙美, 金子 弘真
    2009 年 34 巻 6 号 p. 993-998
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/12/30
    ジャーナル フリー
     2006年に成立した「がん対策基本法」を契機に,がんの診断時から多職種による緩和ケアが求められている.そこで外科医の緩和ケアへの関わりについて,外科医がどう認識しているのか,外科系学会と緩和ケアの専門学会である日本緩和医療学会での外科医の発表内容を調査し検討した.外科系学会では現状報告,消化器症状のケア,緩和ケアチームに関する報告が多く,緩和医療学会では消化器症状のケア,疼痛コントロール,患者,家族とのコミュニケーション,精神的ケアに関しての発表が多かった.
     緩和ケアは患者の痛みをトータルペインとして考えるべきで,精神的ケアやコミュニケーションスキルも必要であり,外科医にはそのためのスキルアップも必要と考えられる.
原著
  • 大澤 岳史, 吉松 和彦, 横溝 肇, 松本 敦夫, 矢野 有紀, 板垣 裕子, 大谷 泰介, 藤本 崇司, 梅原 有弘, 小川 健治
    2009 年 34 巻 6 号 p. 999-1004
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/12/30
    ジャーナル フリー
     治癒切除大腸癌症例を対象に,周術期の輸血と予後との関連,さらにその要因につき検討した.対象はStage II,III,pCur A大腸癌170例.輸血例(35例)は無輸血例(135例)に比べ,高齢,小野寺栄養指数低値,CEA高値,腫瘍径50mm以上,低分化腺癌,リンパ節郭清D2以下,出血量1,000ml以上の症例が多かった.予後は,輸血例の生存率は無輸血例と比べ不良であったが,独立した予後因子ではなかった.死因は他病死が多く.他病死例を除くと差は認めなかった.輸血時期別に,術前輸血例は予後不良であったが,術中・術後輸血例は無輸血例と差はなかった.さらに再発率にも両者間で差はなかった.以上より,輸血が大腸癌患者に与える影響は軽微で,輸血例の予後不良要因は,輸血を要する宿主要因が主であり,輸血例の予後改善には栄養や免疫能を含めた宿主全身状態改善が必要と考える.
  • 塩澤 俊一, 金 達浩, 碓井 健文, 猪瀬 悟史, 会澤 雅樹, 土屋 玲, 吉松 和彦, 勝部 隆男, 成高 義彦, 小川 健治
    2009 年 34 巻 6 号 p. 1005-1011
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/12/30
    ジャーナル フリー
     目的:胆管非拡張型膵・胆管合流異常症の治療成績から,今後の治療上の問題点を検討した。方法:対象は1981年1月から2007年12月に当科で治療した膵・胆管合流異常症51例.非拡張型(21例)と拡張型(30例)に分類し,診断経緯,腹部超音波(US)所見,合併病変,病理組織学的所見,治療成績を比較した.結果:(1)非拡張型は拡張型に比べ約20年遅れて診断されていた.(2)US所見では非拡張型の胆嚢壁は拡張型と比較し有意に肥厚していた.病理組織学的には胆嚢壁の肥厚は粘膜上皮の過形成が主体で,検索した15例中13例(87%)で粘膜が1mm以上であった.(3)非拡張型には膵・胆道癌が高率に合併し,進行癌が多かった.(4)非拡張型で膵・胆道癌の合併のない9例中8例に胆嚢摘出術を施行したが,約13年の平均観察期間内に温存した胆管に癌の発生はなかった.結語:非拡張型の本症に対する術式は,現時点では胆嚢摘出術が妥当と評価できるが,今後は非拡張型で胆嚢摘出術のみを施行した症例を集積し,さらなる長期的な経過観察でその安全性を証明する必要がある.
  • 塩澤 俊一, 金 達浩, 碓井 健文, 猪瀬 悟史, 会澤 雅樹, 土屋 玲, 吉松 和彦, 勝部 隆男, 成高 義彦, 小川 健治
    2009 年 34 巻 6 号 p. 1012-1018
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/12/30
    ジャーナル フリー
     【目的】当科ではCBDsの治療は内視鏡的(EPBD/EST)切石術(EC)を第一選択とし,胆嚢結石(GBs)があれば,腹腔鏡下胆嚢摘出術(LC)を併施する方針としている.今回,この治療法を治療成績,合併症,経済的な側面から検討した.【対象・方法】対象は過去9年間に治療したCBDs 186例で,本治療法の治療成績,合併症,在院日数,保険請求点数を評価した.【結果】(1)ECを146例(78.5%)に施行し,このうち135例(92.5%)にLCを併施した.ECが未遂の40例は開腹下に胆嚢摘出術・胆管切石術(CCL)を施行した.(2)合併症はECで高amylase血症22例,急性膵炎8例,胆管炎6例であったが,いずれも対症療法で軽快した.CCLではSSIが有意に多かった(p<0.0001)(3)治療成績:観察期間中にCCLで1例にCBDsの再発を認めECを追加した.(4)在院日数はEC(LC併施)が平均9.6日で有意に短く(p<0.0001),1日あたりの保険請求点数も有意に高額であった(p<0.0001).【結語】本治療法は治療成績,合併症,経済的な側面からも概ね妥当な治療法と評価した.
症例報告
  • Kazuhide MATSUNAGA, Shinichi ASAMURA, Hirohisa KUSUHARA, Mitsuhiro WAD ...
    2009 年 34 巻 6 号 p. 1019-1023
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/12/30
    ジャーナル フリー
    The patient was a 24–year–old male with traumatic nasal defect on the right side. We performed reconstruction of the nasal defect with a forehead flap 4 months after injury. However, the patient chose not to attend our outpatient clinic for follow up. Then the patient consulted our hospital 8 months after the reconstruction due to stricture of the nasal cavity on the right side. The length of the nasal cavity on the right side was half as long as that on left side. We performed reconstruction of the nasal–alar with an auricular helix and cartilage composite graft (20×12 mm) 9 months after the initial reconstruction. Perioperatively, we applied basic fibroblast growth factor (bFGF) in order to promote vascularization between the stump of the composite graft and the alar tissue. The composite graft took and the shape of nose was fairly good postoperatively. This outcome suggests that perioperative application bFGF to the stump of the soft tissue was a useful method to promote take of the composite graft.
  • Minoru MORIWAKI, Shigeo NOHARA, Tetsuji KUNIYASU, Mutsumi SAKURADA, Ha ...
    2009 年 34 巻 6 号 p. 1024-1030
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/12/30
    ジャーナル フリー
    We herein report a case of bilateral mucinous carcinoma, a very rare type of breast cancer. The patient was a 54–year–old woman with a large mass in her right breast. And we found a smaller mass in her left breast on imaging, but she had not noticed this tumor.
  • 村野 明彦, 三浦 康之, 船橋 公彦, 中村 博志, 鈴木 正文
    2009 年 34 巻 6 号 p. 1031-1035
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/12/30
    ジャーナル フリー
     症例は62歳,女性で,右乳房C領域に腫瘤を認めたため針生検を施行し,右乳癌と診断した.2002年9月右乳癌(T1,N0,M0)で非定形的乳房切除術(Bt+Ax)を施行した.病理結果はinvasive ductal carcinoma,ER陽性,t1n1M0病期IIaであった.術後CEF(CPA 100mg/EPI 40mg/5-Fu 500mg)を7コース施行したが,その後,通院加療を怠り2008年1月に右側胸部痛で再来院した.来院時の胸部X-Pおよび胸部造影CTで中等量の右胸水を認め,エコー下で胸水穿刺を施行した.吸引胸水量は約370ml漿液性,細胞診はclass Vの癌性胸膜炎と診断された.Tamoxifen 20mgとtegafur-uracil(UFT)300mgの内服を開始したが,症状の改善がなくUFTを600mgに増量した.その後,胸痛が軽減し胸部CT所見で右胸水が消失した.腫瘍マーカーのCA15-3は最高値の104U/mlが約1年後の2009年8月には19.7U/mlに減少した.薬物有害事象は白血球数減少,食欲不振および色素沈着で,いずれもgrade 1であった.
  • 境 雄大
    2009 年 34 巻 6 号 p. 1036-1040
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/12/30
    ジャーナル フリー
     症例は52歳,女性.心窩部痛を主訴に近医を受診した.上部消化管内視鏡検査で幽門狭窄があり,生検で胃癌と診断された.CTで膵浸潤はなく,小彎側リンパ節腫大がみられた.開腹すると,上腸間膜静脈周囲を含めて広範なリンパ節腫大がみられた.胃全摘術,D2郭清を行った.リンパ節郭清には主に超音波凝固切開装置を用いた.腫瘍は3型,52×30mm,充実型低分化腺癌で,総合所見はT2,N3,H0,P0,CY0,M0,Stage IVで,根治度Bであった.術後第2病日から経管栄養を開始したが,同日夕方から乳び腹水が出現した.絶食と中心静脈栄養法で保存的治療を開始した.排液が減少しないため,術後第31病日に流動食を開始した.術後第40病日頃から腹水は減少傾向を示し,術後第46病日にドレーンを抜去した.術後第63病日に独歩退院した.上腸間膜動脈周囲の郭清ではリンパ漏予防に留意した手術操作が必要である.術後リンパ漏は食事を継続したままで治癒する可能性がある.
  • 村瀬 茂, 曽我 直弘, 竹尾 幸子, 藤田 俊広
    2009 年 34 巻 6 号 p. 1041-1045
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/12/30
    ジャーナル フリー
     症例は79歳,女性.約30年前に胃切除の既往がある.2008年3月,腹痛と嘔吐が持続するため当院を受診した.腹部単純X線検査では,腸管内にガス像は多いものの鏡面像など明らかなイレウス所見はなく,排便,排ガスもみられた.血清アミラーゼ値,CRP値の上昇,腹部CT検査での主膵管拡張,胆嚢腫大,肝内胆管拡張と十二指腸,空腸の著明拡張を認めたが症状は軽度で,精査のため内科に入院,経過観察した.入院3日後,腹痛が増強したため当科に紹介され,筋性防御を認め緊急手術を施行した.既往の胃切除はBillrothII法結腸後再建であった.輸入脚の一部が癒着による索状物で絞扼され,壊死に陥っており,輸入脚絞扼性イレウスと診断した.壊死腸管を切除し,残った輸入脚同士を端々吻合した.輸入脚絞扼性イレウスは稀な疾患で早期治療が必要であるが,初期にはイレウス症状に乏しい.診断にはCT検査が有用であるが,本症が念頭になければ診断が遅れることがある.胃全摘術後・胃切除術後患者の急性腹症は,本病態を念頭におく必要がある.
  • 松橋 延壽, 國枝 克行, 兼松 昌子, 山田 敦子, 佐々木 義之, 田中 千弘, 西科 琢雄, 長尾 成敏, 河合 雅彦
    2009 年 34 巻 6 号 p. 1046-1050
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/12/30
    ジャーナル フリー
     症例は60歳,男性.主訴は悪心,嘔吐.平成19年8月,悪心,嘔吐にて近医を受診し,閉塞性黄疸および貧血を指摘され,同月当院消化器内科に紹介された.上部消化管内視鏡検査において十二指腸下行脚に3型の十二指腸癌を認めたため,当科に紹介となった.身長169cm,体重130kg,BMI 45.5と超高度肥満であったが,膵頭十二指腸切除術目的で開腹術施行した.開腹すると肝S3に転移を認めたため,胃空腸バイパス術のみ行った.術後S-1(day1-21 経口投与)+CDDP(day 8)療法を行い,5コース終了後画像診断においてPRとなった.合計12コース施行後もPRであった.平成21年1月胆管閉塞による敗血症性ショックが原因により死亡したが,S-1+CDDP療法が有用であったため若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 筒井 敦子, 佐藤 武郎, 内藤 正規, 中村 隆俊, 小野里 航, 井原 厚, 渡邊 昌彦
    2009 年 34 巻 6 号 p. 1051-1056
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/12/30
    ジャーナル フリー
     症例は40歳代,女性で13歳頃より,鉄欠乏性貧血を指摘され,輸血をくり返し施行されていた.今回,出血源の精査と貧血の治療を目的に当院を受診した.出血シンチグラフィーでは小腸出血が最も疑われ,小腸造影では下部空腸に結節状の隆起が認められた.小腸鏡では下部空腸に大小の隆起からなる粘膜下腫瘍様の変化が認められ,海綿状血管腫の診断のもと,同部に点墨を行った.急激な貧血を呈したため,緊急手術とし,腹腔鏡下に点墨部漿膜面の結節状隆起を同定し,同部位の小腸部分切除を行った.術後経過は良好で,第6病日に退院となった.
     消化管出血の原因として,小腸血管腫は比較的稀で,術前に確定診断することは困難である.本症例のように長年にわたる原因不明の貧血を呈する患者には,本疾患を念頭に小腸の精査を行うことは重要である.とくに小腸鏡による診断とマーキングは,腹腔鏡手術など低侵襲治療につながると考えられた.
  • 山田 美千代, 大田 貢由, 熊本 宣文, 成井 一隆, 清水 哲也, 野村 真人, 秋山 浩利, 市川 靖史, 嶋田 紘, 遠藤 格
    2009 年 34 巻 6 号 p. 1057-1061
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/12/30
    ジャーナル フリー
     下血を繰り返し手術に至った,NSAIDsが誘因と考えられる多発小腸潰瘍の1例を経験したので報告する.症例は59歳,男性.C型慢性肝炎によるHCCに対して肝動脈塞栓術を施行した.術後の発熱に対し非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAIDs)を投与した.第10病日に下血し緊急下部消化管内視鏡検査を施行したところ,回腸末端に浅い多発潰瘍を認めた.第16病日,再度下血し出血性ショックに陥ったので緊急開腹術を施行した.回腸末端の潰瘍からの出血と判断し回盲部切除術を施行した.UL-IからIVの潰瘍が多発し,種々の程度の線維化,出血,血管増生を伴っていたがNSAIDsによる潰瘍として診断された.
  • 藤本 崇司, 熊沢 健一, 梅原 有弘, 高岡 和彦, 宮内 竜臣, 矢野 有紀, 猪瀬 悟史, 横溝 肇, 吉松 和彦
    2009 年 34 巻 6 号 p. 1062-1065
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/12/30
    ジャーナル フリー
     症例は28歳の男性,下痢,腹痛を主訴に来院.急性腸炎の診断で入院した.入院時の腹部超音波検査,CT検査で腸重積症を疑い,さらに注腸造影検査で確定診断し,非観血的に整復,腹痛は消失した.翌日施行した大腸内視鏡検査では盲腸に潰瘍と発赤を伴う浮腫状病変を認めたが,腸重積の原因となるような病変はなかった.入院後も下痢が継続したため便培養検査を行ったところO-157陽性で,前記内視鏡所見はO-157大腸炎によるものと確認した.下痢は入院当初からのホスホマイシン投与で軽快し,第8病日に再び施行した内視鏡検査では前記の病変は著明に改善していた.以上より,本症例の腸重積はO-157による大腸炎が原因と考えた.O-157感染症に合併した腸重積症の報告はほとんどが小児例で,成人ではきわめて稀であるため報告した.
  • 遠藤 貢, 成高 義彦, 五十畑 則之, 浅香 晋一, 山口 健太郎, 村山 実, 勝部 隆男, 小川 健治, 布田 伸一, 大塚 邦明
    2009 年 34 巻 6 号 p. 1066-1070
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/12/30
    ジャーナル フリー
     今回われわれは,心臓移植14年後に発症した悪性リンパ腫による腸閉塞の1例を経験したので報告する.
     症例は37歳の男性.23歳時に拡張型心筋症で心臓移植の既往がある.2008年2月より,下血で発症した悪性リンパ腫に対し化学療法を2クール施行したが,腸閉塞を発症した.イレウス管造影で空腸に高度な狭窄像を認め,外科的治療を施行した.病理組織所見では悪性リンパ腫による腸管狭窄であった.周術期は免疫抑制剤の投与量を調節しながら,厳重な術後管理により良好に経過した.
     心臓移植後に消化管手術を施行した報告は少なく,周術期における免疫抑制剤の投与法や術後管理に関する知見も極めて少ない.本症例は貴重な経験と考え報告した.
  • Satoshi IKEDA, Yasuyo ISHIZAKI, Masazumi OKAJIMA
    2009 年 34 巻 6 号 p. 1071-1073
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/12/30
    ジャーナル フリー
    The case of a 14–year–old Japanese female who had a past history of Hirschsprung′s disease is reported. Five members of her family had been diagnosed as having familial adenomatous polyposis (FAP). She had multiple polyps in her large intestine, stomach, and duodenum. She was also diagnosed as having FAP and underwent surgery at our hospital. To the best of our knowledge, this is the first report of Hirschsprung′s disease associated with FAP.
  • 松橋 延壽, 國枝 克行, 櫻谷 卓司, 兼松 昌子, 山田 敦子, 佐々木 義之, 田中 千弘, 西科 琢雄, 長尾 成敏, 河合 雅彦
    2009 年 34 巻 6 号 p. 1074-1078
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/12/30
    ジャーナル フリー
     症例は68歳,男性.腹痛および腹部膨満を自覚し近医受診し,腹部CTにおいて両側副腎転移,大動脈周囲リンパ節転移を伴う盲腸癌と診断され当科紹介となった.また入院後の頭部MRIにて小脳腫瘍を認め,盲腸癌の転移と診断した.腸閉塞症状を認めていたため,はじめに回盲部切除術+D2リンパ節郭清を施行した.その後小脳転移に対して全脳照射30Gy,小脳照射6Gy,ステロイド療法を施行した後にFOLFOX4および途中からmFOLFOX6に変更し合計15クール治療を継続した.その間腫瘍マーカーは正常化し,画像上も一時はCRを得た.しかし術後1年経過し多発肺転移の再発を確認し,初回治療から1年3カ月後に死亡した.大腸癌同時性脳転移は比較的稀であり,集学的治療により術後1年以上生存した症例は極めて稀であるため,若干の文献的考察を含めて報告した.
  • 太和田 昌宏, 高橋 孝夫, 野中 健一, 奥村 直樹, 徳山 泰治, 山口 和也, 長田 真二, 川口 順敬, 吉田 和弘
    2009 年 34 巻 6 号 p. 1079-1086
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/12/30
    ジャーナル フリー
     症例1は58歳,女性.胸腹水貯留を伴う右卵巣癌との診断にて広汎子宮全摘術施行中,S状結腸に腫瘤性病変を認めたためS状結腸切除術を同時に施行した.症例2は50歳,女性.胸水貯留を伴う卵巣腫瘍・S状結腸癌との診断にて広汎子宮全摘術とハルトマン手術を施行した.症例3は52歳,女性.腹水貯留を伴う卵巣腫瘍・直腸癌との診断にて広汎子宮全摘術とハルトマン手術を施行した.すべての症例で大腸・卵巣腫瘍ともに,免疫染色にてサイトケラチン7陰性・20陽性を示し,大腸癌の卵巣転移と診断された.
     大腸癌卵巣転移は比較的稀で,発見時には病期が進行していることが多く,予後不良である.しかし全症例にて術後の胸腹水消失と,腫瘍による腹部圧排症状を解除することで患者のquality of life(以下QOLと略記)改善を認めた.化学療法による更なる予後の延長が期待されるため,今後は積極的な外科的治療の適応があると考えられた.
  • 米山 公康
    2009 年 34 巻 6 号 p. 1087-1091
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/12/30
    ジャーナル フリー
     大腸癌の卵巣転移は比較的稀な転移形式である.今回治癒切除後異時性転移2例を経験したので報告する.
     症例1:58歳,女性.上行結腸癌術後,両側卵巣腫瘍に対して両側付属器切除を施行した.術後2年生存中である.症例2:48歳,女性.S状結腸癌術後,左卵巣腫瘍に対して左付属器切除を施行した.術後5カ月生存中である.両者とも免疫染色においてCK20染色陽性,CK7染色陰性であり,大腸癌の卵巣転移と診断された.大腸癌卵巣転移の予後は不良であるが,なかには長期生存例も報告されている.外科的切除は患者の苦痛を軽減し,症状緩和のためには有効な手段であり,卵巣転移に対しては積極的な切除が望ましい.
  • 八岡 利昌, 西村 洋治, 坂本 裕彦, 田中 洋一, 西村 ゆう, 黒住 昌史
    2009 年 34 巻 6 号 p. 1092-1096
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/12/30
    ジャーナル フリー
     症例は68歳,女性.S状結腸癌術後の下部消化管内視鏡検査によって,新たに横行結腸癌を指摘されて手術を施行した.初発のS状結腸の早期癌に対しては2004年1月に腹腔鏡下S状結腸切除術を施行した.また,2004年5月に左肺癌に対して左肺S6区域切除術を施行した.さらに,2007年3月には食道癌に対して内視鏡的粘膜切除術を施行した.今回,右結腸曲に近い横行結腸に2型進行癌を認め,2008年6月に用手補助下腹腔鏡結腸右半切除術を行った.切除標本では18×17mmの小型進行癌であり,SS,NO,Stage IIであった.4多重がんにおける異時性大腸癌に対してそれぞれ腹腔鏡手術を行う経験をしたので,術式の工夫や注意点などについて考察を加えて報告する.
  • 森 隆太郎, 長谷川 啓, 藤井 博之
    2009 年 34 巻 6 号 p. 1097-1101
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/12/30
    ジャーナル フリー
     症例は84歳,女性.2007年10月,循環器内科で貧血,便潜血反応陽性を指摘され,当科を紹介され受診した.大腸内視鏡検査で上行結腸に全周性2型の腫瘍を認め,生検では粘液腺癌であった.さらに,腹部CT検査で,腫瘍は多結節状の低吸収域として描出され,十二指腸水平脚まで進展しており,リンパ節転移陽性と診断し手術を施行した.開腹所見で腫瘍は上行結腸から連続して回結腸動静脈に沿い伸展し十二指腸に近接していたが直接浸潤は認められず,右半結腸切除術を施行し一塊として摘出した.病理組織検査では,リンパ節転移と考えていたものは全て壁外性に進展した腫瘍であった.壁外性発育型大腸癌は,腸管腔内への発育に乏しいため症状が発現しにくく診断時には巨大となっていることが多いが,リンパ節転移や遠隔転移をきたす頻度は比較的低く,腫瘍の完全な切除が可能であれば長期予後が期待できると考えられた.
  • 鵜瀞 条, 野中 英臣, 山本 哲朗, 瀧田 尚仁, 鈴木 義真
    2009 年 34 巻 6 号 p. 1102-1105
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/12/30
    ジャーナル フリー
     直腸癌の局所再発はしばしば寛骨,仙尾骨浸潤や腰仙骨神経叢浸潤を起こし激しい疼痛を伴う.特に神経浸潤による神経障害性疼痛は厳しく,コントロールに難渋し,著しくQOL(quality of life)を低下させる.抗痙攣剤のカルバマゼピン(テグレトール(r))は,神経障害性疼痛に対する鎮痛補助薬として,1990年代にはその有効性の報告が相次いでいる1)2).現在本邦でも,緩和ケアを中心に鎮痛補助薬としても広く使用されている.今回われわれは,Miles手術後の寛骨,仙尾骨に浸潤する径13cmの巨大な局所再発巣を経験した.腰仙骨神経叢浸潤による強度の神経障害性疼痛を認め,これ対してカルバマゼピンが奏効した.骨浸潤痛に対するNSAIDs使用法の工夫とともに,文献的考察を加えて報告する.
  • 桑原 公亀, 石橋 敬一郎, 大澤 智徳, 横山 勝, 石田 秀行, 糸山 進次
    2009 年 34 巻 6 号 p. 1106-1109
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/12/30
    ジャーナル フリー
     潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis以下,UC)に併発した直腸inflammatory fibroid polyp (以下,IFP)の稀な1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.症例はUCに対し10年間の内服治療歴を有する78歳,女性.近医で下血の精査のため大腸内視鏡検査を受けたところ,Matts分類3度のUC,中部直腸に径25mm大の有茎性ポリープが認められた.ポリープの生検では悪性所見は認められなかったが,確定診断はできなかった.当科で,大腸亜全摘・回腸嚢肛門管吻合を施行した.切除標本の病理組織学的検索では,活動期のUC粘膜を背景に,肉芽組織と炎症性細胞浸潤を特徴とするIFPを認めた.UCに併発した大腸IFPの本邦報告例は自験例を含め3例のみであり,本症例はIFPの発生を考える上で貴重な症例と考えられる.
  • Nobuhisa MATSUHASHI, Kazunori YAWATA, Shinji OGURA
    2009 年 34 巻 6 号 p. 1110-1114
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/12/30
    ジャーナル フリー
    Acute pancreatitis is rare during pregnancy with hyperlipidemia found in only about 100 cases reported in Japan. We used divided plasma exchange (PE) and hemodia–filtration (HDF) for treatment.
    A 28–year–old pregnant woman was examined at 29 weeks of gestation. Laboratory data on admission revealed an increased white blood cell count of 16,300/mm3, total cholesterol 1,072mg/dl, triglycerides 4,288mg/dl, serum amylase 850IU/L, elastase 1,002ng/dL, and phospholipase A2 2,850ng/dL. The acute pancreatitis diagnosis with CT evaluation was grade IV. In addition, the Acute physiology and chronic health evaluation (APACHE) II score was 14 points, Sequential organ failure assessment (SOFA) score 7 points, Ranson score 4 points. First, we performed PE and HDF, but filtration was impossible due to hyperlipidemia. Subsequently, we succeeded with our new method, divided PE and HDF. The patient was discharged from the hospital on the 17th hospital day. Both the patient and her baby are in good health. This is the first report of a new therapy for acute pancreatitis during pregnancy with hyperlipidemia. The experience of this case and a review of the English literature suggested that divided PE and HDF are recommended to treat this rare hyperlipidemia.
  • 蓮田 憲夫, 高野 邦夫, 腰塚 浩三, 鈴木 健之, 松本 雅彦
    2009 年 34 巻 6 号 p. 1115-1118
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/12/30
    ジャーナル フリー
     患児は15歳,男児.既往に血友病Aがあり第VIII因子製剤を自己注射管理中であった.上腹部をソファーにぶつけ,第VIII因子製剤1,000単位を自己注射.その後次第に腹痛が増悪し受傷から10時間後に近医でCTと腹部超音波検査を施行し明らかな腹腔内臓器損傷や腹水を認めなかったため第VIII因子製剤を2,000単位追加投与し経過を観察した.その後も腹痛は増悪,しだいに腹部膨満も呈するようになり受傷から16時間後に再受診,CTで肝の周囲を中心とする広範な腹水と貧血の進行があり,さらに第VIII因子製剤を3,000単位追加投与の後当院を紹介された.
     CTで肝の周囲を中心とする広範な腹水を認めた.CTを再検討しIa型の被膜下損傷(日本外傷学会肝損傷分類)が破綻したことによる腹腔内出血と診断し,第VIII因子製剤4U/Kg/hと新鮮凍結血漿を持続輸注投与しながら保存的に経過観察し軽快した.
  • 坂口 孝宣, 鈴木 淳司, 稲葉 圭介, 福本 和彦, 目黒 史織, 馬場 聡, 鈴木 昌八, 今野 弘之
    2009 年 34 巻 6 号 p. 1119-1125
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/12/30
    ジャーナル フリー
     われわれは左上・中腹部多臓器の合併切除を要した巨大な後腹膜脂肪肉腫の1例を経験したので報告する.症例は62歳,女性.左側腹部痛および腹部腫瘤,体重減少を主訴に近医より紹介受診.種々の画像にて脾,膵,左腎・副腎,左横隔膜への浸潤を有する最大径28cmの後腹膜原発脂肪肉腫を第一診断とした.開腹開胸下に腫瘍とともに左横隔膜,脾,膵体尾部,左腎,左副腎を合併切除した.組織診断は粘液型と多形型の混在した混合型脂肪肉腫であった.術後10カ月の現在,再発なく経過観察中である.後腹膜脂肪肉腫は発見時には巨大であり,本症例のように周囲臓器合併切除が必要なことが多く,文献的考察を加えて報告する.
  • 川崎 篤史, 三松 謙司, 大井田 尚継, 吹野 信忠, 久保井 洋一, 加納 久雄, 天野 定雄
    2009 年 34 巻 6 号 p. 1126-1130
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/12/30
    ジャーナル フリー
     大網裂孔ヘルニアは,大網の異常裂孔に腸管が嵌入して起こる比較的稀な内ヘルニアの一つである.症例は85歳の男性.右上腹部痛を主訴に近医受診,急性腹症の診断で当科紹介.来院時,右上腹部を中心にBlumberg徴候,筋性防御を認めた.腹部CTにおいて腹水貯留,上行結腸の腹側に拡張した小腸像,腸間膜の収束像および拡張した腸間膜血管像を認めた.大網裂孔ヘルニアによる絞扼性イレウスの診断で緊急開腹手術を施行.開腹時血性腹水が存在し右上腹部に色調不良の小腸を認めた.大網に直径3cmの裂孔を確認,約30cmにわたり小腸が裂孔に嵌入し壊死に陥っていた.裂孔を切離開放し壊死腸管を切除した.術後経過は良好で術後11日目に退院.本疾患の術前診断は比較的困難とされている.過去10年間に本邦で報告された48例のCT所見をretrospectiveに検証し,本疾患のCT所見について考察したので報告する.
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