日本外科系連合学会誌
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34 巻 , 5 号
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原著
  • 海堀 昌樹, 松井 康輔, 石崎 守彦, 斎藤 隆道, 權 雅憲
    2009 年 34 巻 5 号 p. 743-751
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/30
    ジャーナル フリー
     [目的]C型肝炎(HCV)関連肝癌および非HCV(B型および非BC型肝炎)関連肝癌における系統的および非系統的肝切除(以下,部分切除)の予後について検討した.[対象と方法]非HCV関連肝癌143例(系統切除40例,部分切除103例),およびHCV関連肝癌326例(系統切除55例,部分切除271例)での両術式における術後生存率を比較検討した.[結果]非HCV関連肝癌では術後生存率において系統切除群が良好である傾向を示し,腫瘍径5cm以上,また術前PIVKA-II>100mAU/ml症例においては系統切除群が有意に良好であった.HCV関連肝癌は,術後生存率において両群で有意差は認めず,また生存率に対する多変量解析においても手術術式は予後因子とは成りえなかった.術前肝機能は部分切除群が有意に不良であったが,術後1年までの肝機能は部分切除群が良好であった.[考察]罹患肝炎ウイルスにより治療戦略を変える必要があり,非HCV関連肝癌では多発,大型肝癌やPIVKA-II高値症例に対しての系統切除が推奨される.HCV関連肝癌では術前後の肝予備能の低下と術後の高頻度の再発を考慮し,耐術的に系統的切除が不可能な症例に対しては,肝部分切除術も有用と考えられた.
臨床経験
  • 園田 一郎, 寿美 哲生, 石崎 哲央, 野村 朋壽, 尾形 高士, 安田 祥浩, 勝又 健次, 土田 明彦, 島津 元秀, 青木 達哉
    2009 年 34 巻 5 号 p. 752-758
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/30
    ジャーナル フリー
     2001年から6年間に施行された当科イレウス手術66症例のうち,開腹歴のない12例の詳細を検討,さらに開腹歴のある54例と比較した.開腹歴のない12例のうち絞扼性イレウスは6例で,単純性イレウス6例との術前背景因子の比較で,有意に脈拍数,CPK値は高値,PaCO2,BEは低値,筋性防御は多く認めた.CTによる絞扼性イレウスの診断能は,特異度が低く,偽陽性が多いとの評価であった.開腹歴の有無で背景因子をみると,来院から手術までの時間が開腹歴のない単純性イレウス症例で有意に短時間であった.開腹歴のないイレウスは,稀な原因疾患もあり診断に難渋する場合もあるが,絞扼の有無を早期に診断することが腸切除の回避に重要である.臨床所見,画像診断で絞扼性イレウスを疑い,絞扼性イレウスの補助診断として有用なSIRS発症,SOFA score 2点以上を認めた場合は,積極的に外科的治療を考慮すべきと考えられる.
  • 柏木 慎也, 内沼 栄樹
    2009 年 34 巻 5 号 p. 759-764
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/30
    ジャーナル フリー
     尿膜管遺残症は若年者に発症することが多く,整容的な面を考慮すると,臍の再建も同時に行うほうが望ましい.今回尿膜管遺残症に対し,嚢腫の切除と臍形成を一期的に施行した4例を経験した.嚢腫切除後の臍形成は,白線への縫着,皮膚移植,ボルスター固定による皮膚への引き込み,3通りの方法を試みた.結果的には皮膚移植による臍窩再建が長期間深い臍窩を維持できていて,一般外科医でもできる簡便な臍形成法として有用と考えられた.
症例報告
  • 細野 芳樹, 高橋 孝夫, 山口 和也, 長田 真二, 川口 順敬, 吉田 和弘
    2009 年 34 巻 5 号 p. 765-770
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/30
    ジャーナル フリー
     化学療法抵抗性で腫瘍からの出血が制御困難であった局所進行乳癌に対して、経カテーテル的動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization: TAE)など集学的治療が奏効した1例を経験したので報告する.症例:55歳,女性.主訴:右乳房腫瘤.初診時現症:右乳房A領域に成人手拳大の腫瘤を認めた.針組織診:浸潤性乳管癌.胸部CT:多発肺転移あり.全身化学療法を行いエピルビシン,シクロフォスファミド併用療法にて腫瘍,転移巣ともにやや縮小した(SD).ドセタキセル,パクリタキセル,トラスツズマブにて化学療法を継続したが,いずれも腫瘍が増大し(PD),腫瘍から大量出血し入院を要した.腫瘍切除は適応とならず,内胸,外側胸動脈にTAEを行った.更に放射線照射,凍結療法を追加した結果,腫瘍は著明に縮小し,出血はなくなった.TAEなど局所の集学的治療はQOLを考慮した治療として有用である.
  • 久保 慎一郎, 石井 辰明, 重西 邦浩
    2009 年 34 巻 5 号 p. 771-775
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/30
    ジャーナル フリー
     症例は41歳,女性.検診mammography(MMG)にて要精査となり,当院受診となった.左乳房内上部に直径1.5×1.0cm大の腫瘤を認め,腋窩リンパ節は触知しなかった.MMGでは,長径1.5cm大で楕円形の高濃度腫瘤を認め,辺縁は一部境界明瞭であるが,微細鋸歯状の部分も伴っていた.USにて直径9×8mm大,縦横比の高い低エコーの腫瘤形成性病変を認めた.穿刺吸引細胞診にて,乳頭状に増生した大型の細胞集塊が認められ,良悪性の断定困難との診断であった.針生検では旺盛に増生する乳管上皮を認めるも,免染にて筋上皮の二相性は保持されており,悪性の他,良性の乳頭状増殖を伴う病変が鑑別にあがったため,切除生検を行い,病理検査にて乳管腺腫と診断された.乳管腺腫は,悪性との鑑別を要する場合があり,鑑別疾患として念頭においておく必要があると考えられた.
  • 門川 佳央, 中嶋 早苗, 川部 篤, 山本 剛史, 高折 恭一
    2009 年 34 巻 5 号 p. 776-780
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/30
    ジャーナル フリー
     症例は66歳,女性.左乳房に腫瘤を自覚し,左乳癌の診断にて手術予定であったが,その当日に黄疸が発現した.手術を延期してERCPを施行したところ,下部胆管に狭窄を認めた.胆管生検で高分化型腺癌を認め,左乳癌と下部胆管癌の重複癌と診断し,これらに対して左乳房温存術,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を同時に施行した.両者ともに根治切除で,術後約1年6カ月経過した現在再発は認めていない.本症例のように,乳癌と下部胆管癌の重複癌を同時に根治切除しえた症例は稀であり,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 水谷 尚雄
    2009 年 34 巻 5 号 p. 781-787
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/30
    ジャーナル フリー
     術前のFDG-PET/CTで生理的集積としたが,術後経過中に縦隔鏡下生検で診断した直腸癌の稀な縦隔リンパ節転移を報告する.症例:患者は63歳の直腸癌の男性.術前のFDG-PET/CTで他臓器転移は認めず,縱隔リンパ節に軽度のFDGの集積を認めたが生理的集積と判断.腹会陰式直腸切断術を施行.病理検査では低分化型腺癌でリンパ節転移と高度脈管侵襲を伴い,補助化学療法を施行した.補助療法終了時にPET/CTを再検したが,縦隔リンパ節への集積も変化はなかった.PET/CTの3週間後に40°Cの発熱で入院.胸部CT検査で肺野に異常はないが縦隔・肺門リンパ節の増大を認めた.可溶性IL-2レセプターが1,630 U/mlと高値で,リンパ腫も否定できず,縦隔鏡下リンパ節生検を施行.組織は直腸癌の主病巣と類似し,リンパ腫は否定された.化学療法が開始されたが癌性リンパ管症で死亡した.まとめ:直腸癌でも縦隔リンパ節転移の可能性を考慮して,疑わしい症例では縦隔鏡も考慮される検査法と考えた.
  • 荒井 宏雅, 利野 靖, 禹 哲漢, 湯川 寛夫, 和田 修幸, 古屋 充子, 李 進, 中谷 行雄, 益田 宗孝
    2009 年 34 巻 5 号 p. 788-794
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/30
    ジャーナル フリー
     症例は44歳の女性.右背部痛を主訴に前医CTで右胸膜の肥厚を指摘され当院を紹介された.胸壁切除術+胸壁再建を施行し,術後診断は胸壁発生のデスモイド腫瘍であった.デスモイドは病理組織学的には良性腫瘍に分類されるが,高頻度に局所再発を来たす稀な結合織腫瘍である.原則的に治療は手術による切除であるが,特に胸壁発生のデスモイドの場合,切除後の胸壁再建を必要とするため,術式や不完全切除であった際の術後補助療法を含めた治療戦略の検討も課題となる.遠隔転移を伴わずに局所再発を来たすという腫瘍の臨床的特徴から,患者のQuality of lifeを損なわない治療方針が肝要であり,その後も厳重な経過観察が必要である.
  • 篠原 玄夫, 逢坂 由昭, 鈴木 彰二, 星野 澄人, 太田 喜洋, 高木 融, 土田 明彦, 青木 達哉
    2009 年 34 巻 5 号 p. 795-800
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/30
    ジャーナル フリー
     症例は61歳,女性.鯵の骨を誤飲後に咽頭異物感が出現するも放置,次第に頸部痛が出現したため,発症より4日後に前医耳鼻科に受診し,その後当院紹介となる.来院時の単純CT検査にて咽頭食道移行部に魚骨と思われる石灰化像を認め,上部消化管内視鏡検査にて食道入口部に魚骨を認めたため,これを内視鏡的に摘出した.CT検査にて食道左側にわずかにガス像を伴った貯留液を認めたが,穿孔部位よりのドレナージに期待して絶食にて経過観察とした.Follow upのCT検査では明らかな貯留液の減少は認めなかったものの,身体所見および炎症所見が徐々に改善していたため保存的加療を継続したが,第8病日のCT検査で貯留液はむしろ増加していたため,ドレナージ術を施行した.術中所見では貯留内容は膿性で,明らかな穿孔部位を認めなかった.術後経過は良好で,術後第14病日に退院となった.
  • 松田 佳奈, 弓場 健義, 山崎 芳郎, 別府 直仁, 森本 芳和, 藤井 眞, 赤丸 祐介
    2009 年 34 巻 5 号 p. 801-806
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/30
    ジャーナル フリー
     発症後早期の一期的縫合閉鎖術により救命しえた,特発性食道破裂の2例を報告する.症例1は69歳,男性.飲食後の嘔吐により発症した.胸部CTで縦隔気腫を認め,上部消化管内視鏡で確定診断した.発症後11時間30分で一期的縫合閉鎖術と胃底部縫着を行い,術後縫合不全なく治癒した.症例2は76歳,男性.上部消化管内視鏡処置中の嘔吐により発症した.胸部CTで縦隔気腫を確認し,発症後4時間で一期的縫合閉鎖術と胃底部縫着を行い,術後合併症なく治癒した.特発性食道破裂の治療では,発症から治療までの時間が予後に関係するとされる.また,手術術式は一期的縫合閉鎖術が第一選択で,胃底部縫着により術後縫合不全が減少するという報告がある.自験例は2例とも,発症後早期の積極的な診断と手術により良好な結果が得られたと考えている.
  • 横山 貴司, 辰巳 満俊, 北東 大督, 川崎 敬次郎, 新見 行人, 久下 博之, 樫塚 久記, 鎌田 喜代志, 丸山 博司
    2009 年 34 巻 5 号 p. 807-812
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/30
    ジャーナル フリー
     症例は77歳の女性で,2003年12月に食道表在癌stage I(T1b,N0)に対して手術を受けた.2008年4月に下腹部痛と嘔吐が出現し当科を受診し,下腹部手術創に3cm大の圧痛を伴う腫瘤を触知した.CTにて腹壁瘢痕ヘルニア嵌頓,小腸腫瘍,癌性腹膜炎を疑ったが,確定診断には至らず試験開腹術を施行した.術中所見では癌性腹膜炎の所見はなく,小腸楔状切除術,腫瘍摘出術を施行した.摘出標本の病理組織では肉腫様に発育した低分化型扁平上皮癌の転移と診断した.術後,腹痛と腹満感が遷延しCTにて癌性胸膜炎・腹膜炎と診断され,急速に病状が悪化し術後43日目に死亡した.剖検では胸膜,腹膜,横隔膜,腸間膜,心,肺,肝,子宮,腰椎,膀胱,リンパ節に腫瘤を形成せず,び慢性に浸潤する癌細胞を認めた.食道表在癌術後5年目に急激な経過をたどり,剖検にて臨床診断と乖離した全身の播種性転移を確認できた症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
  • 岡本 浩一, 上田 順彦, 中野 達夫, 押野谷 実
    2009 年 34 巻 5 号 p. 813-819
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/30
    ジャーナル フリー
     症例は54歳,男性.胸部下部に全周性3型食道癌を認め,同時性多発肺転移,肝転移,脳転移,左鎖骨上窩・縦隔・傍大動脈リンパ節転移を認めた.食道の原発巣および左鎖骨上窩リンパ節転移に対してはNovalisによる強度変調放射線治療(intensity modulated radiation therapy:IMRT)を,脳転移巣に対してはγ-ナイフによる定位放射線治療を行い,病変の著明な縮小を認め,原発巣の通過障害は著明に改善した.またS-1内服と Cisplatin 肝動注化学療法を施行することで,肝・肺病変は著明に縮小し,長期間PRを維持できた.切除不能進行食道癌症例に対する体幹部IMRTを含む化学放射線療法は,低侵襲でありながらも癌による多彩な症状の緩和を図ることができ,がん患者のQOLの長期維持が大いに期待される治療法であると考えられた.
  • 大目 祐介, 河本 和幸, 深田 一平, 池田 博斉, 守本 芳典
    2009 年 34 巻 5 号 p. 820-823
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/30
    ジャーナル フリー
     症例は82歳,女性.食欲不振,全身倦怠感を主訴に近医を受診した.血液検査で著明な貧血を認め,上部消化管内視鏡検査にて胃噴門部小彎側の出血性腫瘍を指摘され当院紹介となった.CTにて胃噴門直下から壁外に突出し,肝に直接浸潤する腫瘍を認めた.胃癌肝浸潤の術前診断で手術を施行した.腫瘍は胃噴門直下に存在し,肝,左横隔膜に直接浸潤しており,胃全摘術,肝外側区域切除術,Roux-Y吻合術を行った.経過良好で術後第17日目に退院となった.病理組織学的に著明な肝浸潤をきたした胃腺扁平上皮癌と診断した.肉眼的には治癒切除であったが,手術7カ月後に再発により死亡した.
  • 若杉 正樹, 菊一 雅弘, 南村 圭亮, 梅村 彰尚, 平田 泰, 坂本 昌義, 藤井 晶子
    2009 年 34 巻 5 号 p. 824-829
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/30
    ジャーナル フリー
     症例は78歳,女性.2004年10月にCT検査で左鎖骨上窩,縦隔リンパ節腫大を認めサルコイドーシスが疑われたが経過観察されていた.貧血精査目的で2008年1月に胃内視鏡検査を行い,前庭部大彎に周堤を伴う腫瘍性病変を認め,生検で中~低分化腺癌であった.CT検査では腹腔動脈周囲,左腎門,腹部大動脈周囲リンパ節に腫大を認めたが,2004年10月のCT検査所見と変化はなく,サルコイドーシスによるリンパ節腫大と診断し,2008年3月に幽門側胃切除術(D1+α郭清Billroth I 法再建)を行った.術中,多数のリンパ節腫大を認めたが,迅速病理検査ではサルコイドーシスに合致する類上皮細胞肉芽腫であった.総合所見は胃癌 tub2, pT1(SM2), pN1, sH0, sP0, sM0, fStage IIであった.胃粘膜固有層や郭清リンパ節に類上皮細胞肉芽腫を認めた.補助化学療法は施行していないが,術後1年5カ月の現在,無再発生存中である.
  • 稲葉 毅, 堀川 昌宏, 小川 越史, 山崎 江里子, 岩崎 晃太, 福島 亮治
    2009 年 34 巻 5 号 p. 830-835
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/30
    ジャーナル フリー
     胃全摘Roux-Y再建後の機転の異なるY脚閉塞3例を報告する.症例1は64歳,男性.主訴は腹痛.16年前に他院で胃全摘を受けた.CTでY脚閉塞と診断し手術を施行した.閉塞機転は吻合部の瘢痕狭窄であり,直線型吻合器で吻合部拡張し軽快した.症例2は69歳,男性.主訴は腹痛.1年前に他院で胃全摘を受けた.CTで内ヘルニアによるY脚閉塞と診断し手術を施行.ヘルニアの原因はY脚過長と挙上空腸の固定不良であり,腸管整復と挙上空腸再固定を行い軽快した.症例3は69歳,男性.当院での胃全摘術後に嘔気が続くためCTを施行しY脚拡張が判明した.Y脚から挿入した栄養管の刺入点を中心としたY脚の屈曲が原因と診断し,その管を十二指腸側に挿入し直して減圧を行い軽快した.胃全摘Roux-Y再建後のY脚閉塞は稀だが,緊急手術となることが多い.術後期間や原因に特徴はなく,診断には,迅速なCTとその注意深い読影が重要である.
  • 大内 晶, 磯谷 正敏, 金岡 祐次, 前田 敦行
    2009 年 34 巻 5 号 p. 836-842
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/30
    ジャーナル フリー
     症例は78歳,女性.下血を主訴に受診し,腹部CTで膵頭部に腫瘤を認め,肝内胆管・総胆管,主膵管の拡張を伴っていた.ERCPでは下部胆管・主膵管が狭窄しており膵頭部癌を疑った.下部消化管内視鏡検査でS状結腸に3/4周性の2型病変を認め,生検にてS状結腸癌と診断した.さらに上部消化管内視鏡検査では胃角部後壁に0-IIc病変を認め,生検にて胃癌と診断した.以上より,胃癌,S状結腸癌,膵頭部癌の同時性3重複癌の術前診断で手術を施行した.術式は膵頭十二指腸切除術,S状結腸切除術で各々治癒切除が可能であった.膵癌を含む同時性3重複癌は稀で,その一期的治癒切除症例の報告は少なく,文献的考察を含めて報告する.
  • 佐野 文, 国枝 克行, 山田 敦子, 佐々木 義之, 松橋 延壽, 田中 千弘, 長尾 成敏, 河合 雅彦
    2009 年 34 巻 5 号 p. 843-850
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/30
    ジャーナル フリー
     われわれは比較的稀な外傷性十二指腸損傷を4例経験した.3例は交通事故,1例は衝突によるものであった.日本外傷学会の損傷分類(Table 11)ではIIb(D3,rp),IIa(D4,rp),IIc(D4),IIb(D2)であった.IIa,IIbの3例には縫合閉鎖+十二指腸空置法(憩室化),十二指腸外瘻付加を施行した.IIcの症例はTreitz靭帯近傍での完全断裂であったため,断裂部の口側十二指腸を後腹膜より脱転し,それを上腸間膜動脈の背側から右側腹腔内に脱出させておき,断端の肛門側空腸と胃を吻合した.ついで,胃空腸吻合の肛門側約20cmの部位に十二指腸空腸端側吻合を行いRoux-Y方式に吻合を完成させ,さらに十二指腸外瘻を付加した.十二指腸損傷は初期には画像所見に乏しい症例があり診断が遅れがちである.また,手術までの時間がかかった症例での縫合不全などの発生頻度が高い.損傷の程度,時間経過などによりその術式に工夫を要する.
  • 境 雄大
    2009 年 34 巻 5 号 p. 851-855
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/30
    ジャーナル フリー
     症例は13歳,男性.心窩部痛を主訴に近医を受診した.発症から2日後のX線検査で腹腔内遊離ガス像を認め,消化管穿孔の診断で黒石病院外科を紹介された.腹膜刺激症状はなかったが,血液生化学検査でCRP値が上昇していた.腹部CTでは十二指腸潰瘍穿孔が疑われた.保存的治療を行い,症状・所見は改善した.入院第8病日に食事を開始した.入院第16病日に上部消化管内視鏡検査で,十二指腸球部前壁と後壁にS1潰瘍があり,kissing ulcerを形成していた.入院第17病日に退院した.精査でH. pylori感染が確認され,除菌療法を行い陰性化した.十二指腸潰瘍穿孔は小児の急性腹症の鑑別診断の1つとして念頭に置くべきである.自験例は発症から2日を経過していたが,保存的治療を選択した.小児十二指腸潰瘍穿孔に対する保存的治療は良好な成績が報告されている.H. pylori感染の検索は不可欠であり,陽性例では除菌治療を行うべきである.
  • 青山 芳樹
    2009 年 34 巻 5 号 p. 856-859
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/30
    ジャーナル フリー
     症例:60歳代,女性.6年前に全身性強皮症と診断されていた.突然の強い腹痛を自覚し救急搬送された.腹膜刺激症状および筋性防御を認め,腹部単純レントゲンおよびCTにて腹腔内遊離ガスを認めたため汎発性腹膜炎と診断し緊急手術を施行した.中等量の腹水および上腸間膜動静脈を軸とした全小腸および小腸間膜の時計方向180度の軸捻転,また小腸の拡張,軽度の血流傷害を認めたが消化管穿孔や腫瘍は認めなかった.脾彎曲の結腸に嚢胞様気腫症を認め,遊離ガスは強皮症に伴う気腹症と考えられた.小腸の血流障害は軽度であったため整復のみとした.
     全身性強皮症にはしばしば,嚢腫様気腫症・気腹症が合併するとされている.開腹手術例の予後はきわめて不良であるとの報告もあり,手術適応の慎重な決定が求められる.しかし本症例では著明な腹膜刺激症状を呈しており,実際絞扼性イレウスも併発していた.個々の症例に応じた臨機応変な判断が必要と考えられた.
  • 太和田 昌宏, 高橋 孝夫, 奥村 直樹, 徳山 泰治, 野中 健一, 細野 芳樹, 山口 和也, 長田 真二, 川口 順敬, 吉田 和弘
    2009 年 34 巻 5 号 p. 860-866
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/30
    ジャーナル フリー
     症例は65歳,女性.腹部膨満感を自覚し近医を受診,腹水貯留を指摘されたが原因は不明で当科を紹介された.入院時に腹腔内遊離ガス像と腹部膨隆,腸閉塞症状,腹水貯留を認めたが,腹膜炎を示す所見はなかった.しかし手術適応が否定しきれず,また患者が開腹術による原因検索を望んだために緊急手術を施行した.術中、消化管穿孔は認められず,腹腔内遊離ガス像と腹水貯留の原因は不明であった.翌年、同症再発にて入院した際にCT検査にて腸管嚢腫様気腫症を認めた.またRaynaud現象,抗セントロメア抗体陽性などから皮膚生検を施行し強皮症と診断された.なお,薬物治療にて症状は改善した.
     われわれは,消化管穿孔を伴わずに腹腔内遊離ガス像と腹水貯留を呈し,のちに腸管嚢腫様気腫症を合併した強皮症との診断が得られた1例を経験した.本疾患を念頭に置くことで,不要な手術が回避できると共に,消化器症状に対する対症療法が重要と考えられた.
  • Minoru FUJISAWA, Toshiaki KITABATAKE, Kuniaki KOJIMA
    2009 年 34 巻 5 号 p. 867-870
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/30
    ジャーナル フリー
    We report a patient with a ruptured middle colic artery aneurysm who underwent emergency surgery. The patient was a 47–year–old woman who visited our hospital with a chief complaint of abdominal pain. She developed shock during examination, and was immediately admitted to the ICU. On admission, plain abdominal CT demonstrated a large mass in the left upper abdominal cavity. On the third day after admission, the Hb level dropped rapidly. Emergency contrast–enhanced CT revealed rupture of the middle colic artery aneurysm ; therefore, emergency surgery, including hematoma removal, aneurysm resection, and partial transverse colectomy, was performed. Pathological examination of the aneurysm showed segmented arterial mediolysis (SAM).
  • 湯川 寛夫, 利野 靖, 菅野 伸洋, 村上 仁志, 松浦 仁, 高田 賢, 大城 久, 影山 裕, 益田 宗孝
    2009 年 34 巻 5 号 p. 871-877
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/30
    ジャーナル フリー
     大腸は他臓器に比べ多発癌を合併する頻度が高く,また診断治療技術の向上に伴いその頻度は増加している.一方,4型大腸癌はその頻度は低くその悪性度は高いとされている.
     今回,われわれは4型上行結腸癌と2型S状結腸癌の同時性多発癌症例を経験したので報告する.症例は69歳の男性.心筋梗塞の既往のためサイファーステントが冠動脈に留置されており抗凝固剤が中止出来なかった.2007年9月腹部膨満感,腹痛が出現し近医を受診した.下部消化管内視鏡(CF)を施行したところS状結腸に2型腫瘍,上行結腸に4型腫瘍を認めた.2007年11月当院初診.CTにて肝左葉の大部分を占める肝転移の他,肝右葉前区域に小転移巣,多発肺転移を認めた.上行結腸の狭窄が強くまた進行性の貧血を認めたため,原発巣切除の方針となった.11月右結腸切除+前方切除を施行した.開腹時,腹膜播種(P3)も認めた.術後FOLFIRI療法,mFOLFOX6療法を施行し20カ月を経過し治療継続中である.
  • 川部 篤, 園田 憲太郎, 門川 佳央, 中嶋 早苗, 山本 剛史
    2009 年 34 巻 5 号 p. 878-882
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/30
    ジャーナル フリー
     症例は91歳,男性.下血を主訴に近医受診,精査目的に当院へ紹介された.内視鏡にてS状結腸に全周性の2型腫瘍を認め,同部からの出血を認めた.基礎疾患として74歳時に他院にて特発性血小板減少性紫斑病(ITP)と診断され,約1カ月の加療を受けたが副作用で中止された.入院時の血小板数は1.6×104/μl,ヘモグロビンは6.3g/dlであった.術前にγグロブリン20g/日×5日間連日先行投与および血小板輸血を施行し血小板数を25.5×104/μlまで改善し,S状結腸切除+D2郭清を施行した.術中特に止血困難なく,周術期においても出血傾向は認めなかったが,血小板は術後2日目には2.4×104/μlまで低下していた.以後の経過は良好であった.高齢のITPを合併する出血性S状結腸癌患者に対し,術前γグロブリン大量先行投与および血小板輸血を施し,安全に手術を施行し得た症例を経験したので報告する.
  • 湯川 寛夫, 利野 靖, 村上 仁志, 松浦 仁, 菅野 伸洋, 高田 賢, 山中 正二, 益田 宗孝
    2009 年 34 巻 5 号 p. 883-888
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/30
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     大腸は他臓器に比べ多発癌が発生する頻度が高く,また診断治療技術の向上に伴い日常診療で遭遇する機会も徐々に増加している.今回,われわれはS状結腸癌3病変,直腸癌1病変の同時性4多発癌症例を経験したので報告する.症例は64歳,男性.2006年はじめより頻回便,血便が出現し,同年7月前医受診するも経過観察となる.2007年8月起立時めまいを主訴に同院を受診し著明な貧血(Hb 4.2g/dl)を認めた.大腸内視鏡(CF)を施行したところS状結腸癌3病変,直腸癌1病変の多発病変を認めた.当院を紹介受診し2007年9月入院となる.CFを再検したところS状結腸に2型2cm大,3型3cm大,2型1.5cm大,直腸2型5cm大の大腸癌を認めた.CTで遠隔転移なく超低位前方切除術D3郭清を施行した.病理検査ではn1で根治度Aであった.術後は24カ月無再発生存中である.
  • 佐伯 博行, 湯川 寛夫, 韓 仁燮, 樋口 晃生, 玉川 洋, 藤澤 順, 松川 博史, 利野 靖, 益田 宗孝
    2009 年 34 巻 5 号 p. 889-893
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/30
    ジャーナル フリー
     直腸癌症例で卵巣腫大を認めた場合,卵巣転移と卵巣浸潤の鑑別が困難なことがある.われわれは術中所見で子宮,膣,尿管浸潤と卵巣転移を疑った若年性直腸癌に対し合併切除を行い,後に病理組織検査で子宮,膣,尿管,卵巣浸潤と診断され長期無再発生存を得た症例を経験したので報告する.症例は34歳,女性で2002年12月便通異常,性器出血を主訴に当科を受診した.内視鏡検査で直腸癌と診断された.CTで左卵巣の腫大と子宮, 膣への浸潤を疑われたが肝転移肺転移は認めなかった.同月,腹会陰式直腸切断術,子宮,両付属器,膣後壁,左尿管合併切除術を施行した.術中所見では左卵巣は著明に腫大し卵巣転移が疑われた.病理組織検査では高分化腺癌が子宮,膣,左卵巣,左尿管に浸潤していた.リンパ節転移を認め病期はStage IIIbであった.術後補助療法として5-FU/l-LV療法を施行した.術後6年を経過し再発なく外来通院中である.
  • 大目 祐介, 河本 和幸, 池田 博斉, 守本 芳典, 朴 泰範
    2009 年 34 巻 5 号 p. 894-898
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/30
    ジャーナル フリー
     術後8年以上無再発の同時性肝肺転移を伴った直腸癌の1例を経験したので報告する.症例は68歳,男性.2001年2月肝転移(H1),回腸浸潤をきたした直腸癌に対し,高位前方切除,回腸部分切除,肝部分切除術を施行した.2001年3月肺転移(LM1)に対し右肺部分切除術を施行した.術後補助化学療法としてテガフール(UFT)300mg/日の内服を1年間継続した.以後2009年5月現在,再発徴候を認めていない.同時性肝肺転移を伴う直腸癌症例においても外科的切除にて長期生存が得られる可能性がある.
  • 塚本 忠司, 大西 律人, 濱辺 豊, 石田 武
    2009 年 34 巻 5 号 p. 899-904
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/30
    ジャーナル フリー
     症例は75歳の男性.2年前に肝細胞癌の診断のもと肝拡大右葉切除術および横隔膜部分切除術が施行された.肝腫瘍径は14cm,単純結節型で,病理組織検査にて中分化型肝細胞癌,vp1,vv0,im0と診断された.その後残肝再発なく経過観察されていたが,労作時呼吸困難を自覚.術後定期検査の造影CT検査にて右心室に造影効果をうける不整な壁肥厚像が指摘された.血清AFP値は正常値を推移していたが,PIVKA II は236mAU/mlと高値を示し,心臓超音波検査にても右心室内腫瘤が確認され,肝細胞癌の右心室壁転移と考えられた.心筋腫瘍に伴う心不全に対し薬物療法を施行し,症状は軽快した.その後UFTEを内服し,残肝再発やその他の転移再発を認めず心転移診断後2年生存した.肝細胞癌の術後に,孤立性かつ孤発性に右心室転移をきたした報告は少なく,文献的考察とあわせ報告する.
  • 矢野 有紀, 成高 義彦, 島川 武, 五十畑 則之, 浅香 晋一, 村山 実, 山口 健太郎, 塩沢 俊一, 吉松 和彦, 勝部 隆男, ...
    2009 年 34 巻 5 号 p. 905-910
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/30
    ジャーナル フリー
     症例は65歳,女性.食道静脈瘤に対して硬化療法を施行後,経過観察の内視鏡検査で胃前庭部に0-IIc病変を認め手術目的で入院した.既往として25歳より原発性胆汁性肝硬変症(PBC)による通院歴がある.入院時腹水を認めたが,腹水コントロール後にD1+αのリンパ節郭清を伴う幽門側胃切除術を施行した.組織学的には高分化型管状腺癌で,リンパ節転移はなかった.術後4年4カ月を経過した現在,再発は認めていない.また,肝生検の組織像はPBCであった.PBCは中年女性に好発し,肝内小葉間胆管の破壊性炎症を特徴とする疾患である.自験例はPBCの診断から40年後に胃癌の発症を認めた.胃癌の家族歴があり,遺伝的素因が関与している可能性もあるが,自己免疫疾患に伴う免疫防御機構低下の関与も否定できない.PBCと悪性腫瘍の合併例について,本邦における報告例は少ないが,PBC症例では悪性腫瘍に関する精査が必要と考えられる.
  • 坂口 孝宣, 鈴木 淳司, 稲葉 圭介, 中村 利夫, 福本 和彦, 鈴木 昌八, 今野 弘之
    2009 年 34 巻 5 号 p. 911-916
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/30
    ジャーナル フリー
     クローン病に対する大腸全摘後,回腸人工肛門を有するC型肝炎・肝細胞癌症例に対し,人工肛門移動後に肝切除を施行した症例を経験したので報告する.症例は71歳,男性.45歳時に治療抵抗性大腸型クローン病に対して大腸全摘,回腸人工肛門造設術を施行,その際輸血を受けた.64歳よりC型肝炎による肝機能障害で近医通院していた.平成19年,腹部超音波検査で肝右葉に径2cmの腫瘍を発見され,当科に紹介された.単発の肝細胞癌で肝機能良好であったが,陥没した人工肛門が右肋弓下の皮膚切開予定線上にあった.肝動脈塞栓術によって腫瘍抑制した後,人工肛門を右下腹部へ移動し,旧人工肛門部の治癒・瘢痕化を待って肝切除を施行した.人工肛門を有する症例では開腹操作に支障を来すことがあり,綿密な計画をもって治療にあたる必要がある.
  • 中川 国利, 小林 照忠, 遠藤 公人, 鈴木 幸正
    2009 年 34 巻 5 号 p. 917-921
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/30
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     合流部結石を合併した胆嚢結腸瘻症例に対して腹腔鏡下手術を施行したので報告する.症例は54歳の女性で,心窩部痛と発熱を主訴として来院した.CTやMRCPでは胆嚢内に結石とガス像を認め,三管合流部に嵌頓した結石により胆嚢は造影されず,総肝管は軽度ながら拡張していた.以上から合流部結石を合併した気腫性胆嚢炎と術前診断した.腹腔鏡下に手術を行うと,胆嚢は大網に被われ横行結腸と癒着していた.胆嚢結腸瘻を疑い,自動縫合器を用いて胆嚢に癒着した横行結腸を部分切除した.また三管合流部を縦に切開して結石を摘出し,Tチューブを留置した.切除標本では胆嚢底部に結腸との瘻孔を認めた.術後経過は良好で,Tチューブを閉鎖して術後9日目に退院した.合流部結石を合併した胆嚢結腸瘻症例に対しても,手術侵襲が少ない腹腔鏡下手術を試みる意義がある.
  • 大沢 晃弘, 渡邊 学, 浅井 浩司, 松清 大, 金井 亮太, 齋藤 智明, 道躰 幸二朗, 萩原 令彦, 長尾 二郎, 高橋 啓
    2009 年 34 巻 5 号 p. 922-926
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/30
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     今回われわれは術前,術中所見でMirizzi症候群と診断し,術後病理結果で胆嚢癌と診断された1例を経験したので報告する.症例は68歳,女性.脳梗塞にて当院脳神経外科入院中に,血液生化学検査で肝胆道系酵素の上昇を認め,精査目的で外科転科となった.画像所見上,10cmを超える巨大胆嚢結石,総肝管狭窄,肝内胆管拡張を認め,Mirizzi症候群の診断で開腹手術を施行した.術中所見では,Calotの3角が高度の炎症のため剥離困難であり,まず胆嚢底部を部分切除し,結石を除去した.底部より胆嚢内検索したところ術前に留置した内視鏡的胆道ドレナージ(EBD)チューブが確認され,胆嚢胆管瘻と診断した.術中病理で部分切除した胆嚢底部に悪性所見を認めなかったことより胆嚢切開,Tチューブ留置,胆嚢縫縮術を施行した.術後最終病理診断で,管状腺癌と診断されたが,全身状態を考慮し,追加切除を施行せず,経過観察とした.
  • 島崎 朝子, 塩澤 俊一, 金 達浩, 碓井 健文, 吉松 和彦, 勝部 隆男, 成高 義彦, 小川 健治
    2009 年 34 巻 5 号 p. 927-932
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/30
    ジャーナル フリー
     症例は64歳,男性.腹部超音波検査で胆嚢底部の壁肥厚を指摘され,精査治療目的に入院した.CTでは胆嚢底部に径15mmの隆起性病変を認め,胆嚢頸部近傍に径10mm,総胆管・膵頭部背側に径22mmのリンパ節腫大がみられた.なおERCPの際に施行した胆汁細胞診はclass IIであった.以上より,リンパ節転移を伴う胆嚢癌と診断し,肝床切除・亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織学的検査では小型で異型の強い細胞が索状,胞巣状に増殖し,免疫組織染色でCD56,synaptophysin陽性で小細胞癌と診断した.進行度はpT2 pN1 fStage III,根治度Aであった.第33病日よりTS-1の補助化学療法を開始し,第37病日に退院した.現在,術後13カ月経過し無再発であるが,胆嚢原発の小細胞癌の予後は平均約9カ月ときわめて不良で,引き続き厳重な経過観察が必要である.
  • 島崎 朝子, 塩澤 俊一, 金 達浩, 碓井 健文, 土屋 玲, 増田 俊夫, 猪瀬 悟史, 会澤 雅樹, 成高 義彦, 小川 健治
    2009 年 34 巻 5 号 p. 933-938
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/30
    ジャーナル フリー
     症例は71歳,女性.平成17年5月,経過観察していた膵嚢胞が増大傾向を示し,治療目的に当科に入院した.腹部超音波,CT,MRI検査で膵体尾部に68×62×52mmの多房性の嚢胞性病変を認め,内部は最大径3cmの比較的大型の嚢胞が集簇し,隔壁の一部は肥厚し造影効果を認めた.画像所見から粘液性嚢胞腫瘍(mucinous cystic neoplasm:MCN)を疑い,膵体尾部切除術兼脾摘出術,2群リンパ節郭清を施行した.切除標本の嚢胞内容は無色透明の漿液で,病理組織像では嚢胞壁は扁平から立方状の腫瘍細胞が単層に配列し,PAS染色陽性であった.悪性を示唆する所見は認めず,自験例はmacrocystic type(variant)の漿液性嚢胞腫瘍(serous cystic neoplasm:SCN)と最終診断した.SCNは稀に自験例のようなmacrocystic typeの亜型があるため,MCTや膵管内乳頭粘液嚢胞性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm:IPMN)との鑑別に注意が必要と考えられる.
  • 小菅 誠, 大熊 誠尚, 林 武徳, 石山 哲, 小田 晃弘, 衛藤 謙, 渡部 通章, 小川 匡市, 柏木 秀幸, 矢永 勝彦
    2009 年 34 巻 5 号 p. 939-942
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/30
    ジャーナル フリー
     症例は39歳,女性.下血を主訴に前医受診し,下部消化管内視鏡検査で直腸癌を認め精査加療目的に当科紹介受診となった.手術目的に入院後,腹腔鏡下低位前方手術を施行した.術中回腸末端から約100cm口側に約20mm大の腫瘍を認め,小腸癌などの可能性も考えられたため回腸部分切除を併せて施行した.病理組織学的検査ではHeinlichI型の異所性膵の診断であった.異所性膵は胃から空腸までの膵近傍に好発する疾患で,回腸に発生することは比較的稀である.回腸異所性膵は腸重積を引き起こし発症することが多く,無症状で他疾患手術中に発見されることは少ない.開腹手術に比べ腹腔鏡手術では術中の腹腔内検索は触感や視野の制限が多く困難であるが,重要な基本手技であると考えられた.
  • 会澤 雅樹, 塩澤 俊一, 金 達浩, 碓井 健文, 土屋 玲, 久原 浩太郎, 吉松 和彦, 勝部 隆男, 成高 義彦, 小川 健治
    2009 年 34 巻 5 号 p. 943-947
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/30
    ジャーナル フリー
     症例は68歳,女性で,背部痛を主訴に入院した.腹部CT検査,MRI検査の結果,膵体部に造影効果の乏しい径13mmの腫瘍と脾門部に77×50mmの嚢胞を認め,閉塞性の壊死性膵炎と仮性膵嚢胞を併発した膵癌と診断した.開腹時の所見で肝表面に術前の画像で指摘できなかった小結節を認め,迅速病理組織診断で転移性の神経内分泌癌と診断され,膵体尾部切除兼脾摘出術を施行した.病理組織学的所見で索状,巣状に配列する腫瘍細胞の増殖を認め,免疫染色でクロモグラニンA陽性,ソマトスタチンとパンクレアティックポリペプタイド(PP)弱陽性であった.自験例は分化型の非機能性膵内分泌癌と最終診断され,病理学的所見を含めた総合所見はfT3,fN0,fM1,fStage IVbであった.一般に膵内分泌腫瘍は画像上,腫瘍の多血性を反映し強い造影効果を示すことが特徴であるが,自験例は非典型的な所見を呈し浸潤性膵管癌との鑑別が困難であった.
  • 田中 肖吾, 山本 隆嗣, 石原 寛治, 上西 崇弘, 大野 耕一
    2009 年 34 巻 5 号 p. 948-952
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/30
    ジャーナル フリー
     症例は78歳,男性.平成20年6月黄疸を主訴に当院入院となった.腫瘍マーカーではCA19-9のみが上昇していた.内視鏡的逆行性胆道造影にて膵内胆管の閉塞を認めた.腹部造影CT像上膵頭部に径2cm大の淡く濃染を受ける腫瘤像を認め膵内胆管を閉塞していた.また上部消化管内視鏡検査にて胃体中部に0-IIa+IIc型病変を認め,生検にてGroup V,中分化型腺癌であった.以上より膵頭部癌・胃癌の重複癌と診断し胃亜全摘合併膵頭十二指腸切除術,2群リンパ節郭清,Child変法再建術を施行した.切除標本にて膵腫瘍は径2cmの結節浸潤型の病変を認め膵内胆管を閉塞していた.病理組織学的に膵癌は腺扁平上皮癌(pT3N1M0 Stage III)および胃癌は中分化型腺癌(深達度mp,pT2N0M0 Stage I B)であった.術3カ月後のCT像上多発肝転移および腹水を認め塩酸ゲムシタビン投与開始したが病状は急速に進み,術5.5カ月後に永眠された.
  • 鵜瀞 条, 野中 英臣, 山本 哲朗, 瀧田 尚仁, 鈴木 義真
    2009 年 34 巻 5 号 p. 953-956
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/30
    ジャーナル フリー
     症例は65歳,女性.切除不能の膵頭部癌にて胃空腸バイパス術を施行した.手術の8カ月後にNSAIDsのみでの疼痛コントロールが難しくなり,フェンタニルパッチ(デュロテップパッチ(r))2.5mgを1/4枚から貼付し始め,閉塞性黄疸に対し胆道ステントを留置した.フェンタニルパッチ開始後1年間はデュロテップパッチ(r)2.5mgのままほぼ無痛で経過し,外来での疼痛コントロールが有効であった.その後,胆道ステント内の腫瘍のingrowthにより閉塞性黄疸となったが,疼痛コントロールについては,デュロテップパッチ(r)を段階的に10mgまで増量することで,最期まで良好であった.胃空腸バイパス術後2年,フェンタニルパッチ貼付開始後1年4カ月で死亡した.フェンタニルパッチは経口摂取の可否に影響を受けず,消化器がんの緩和医療に特に有用であり,必要であれば早期に開始することで,良好なQOLを保ちうると思われた.
  • 高垣 敬一, 村橋 邦康, 岸本 圭永子, 己野 綾, 西野 光一, 青木 豊明, 曽和 融生
    2009 年 34 巻 5 号 p. 957-960
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/30
    ジャーナル フリー
     症例は63歳,男性.腹痛を主訴として当院を受診された.腹部CT上腹腔内にfree airを認め,消化管穿孔および汎発性腹膜炎との診断で緊急手術を施行した.術中所見上Treitz靭帯から約50cm~80cm肛門側の空腸間膜付着部に気腫を認め,同部位の腸間膜が腫脹していた.その腫脹部に径5mm大の穿孔が認められ,この部位から腹腔への膿性排液の流出が認められた.以上の所見より空腸の腸間膜への穿通による腸間膜膿瘍の穿孔と診断した.腫脹した腸間膜を含めて空腸部分切除術を施行した.摘出標本所見では空腸の腸間膜側に5~6個の憩室が認められ,その内の1個が腸間膜内に穿通し膿瘍形成をきたしていた.空腸間膜内に穿通し膿瘍を形成,その結果腸間膜が穿孔した空腸憩室炎の報告は珍しく,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 杉本 貴昭, 黒田 暢一, 城 大介, 岡本 共弘, 藤元 治朗
    2009 年 34 巻 5 号 p. 961-968
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/30
    ジャーナル フリー
     症例は41歳の女性.主訴は左下腹部痛,左下腿浮腫.腹部骨盤CT検査にて腸腰筋左側から後腹膜,骨盤左下部を占める巨大腫瘍を認めた.背部よりの経皮針生検で扁平上皮癌の所見を得たため転移性腫瘍の可能性を考え全身精査したが,子宮頸部の上皮内癌以外には腫瘍性病変を認めなかった.後腹膜原発扁平上皮癌と診断し,手術を施行した.腫瘍は腹部大動脈左側の後腹膜に200×80mm大の表面不整,充実性,弾性硬の腫瘤として認め,左総腸骨動脈分岐部から左内外腸骨動脈を巻き込み,左尿管の下端に接していた.婦人科医,泌尿器科医,血管外科医と合同で手術に臨み,子宮全摘,左卵巣摘出,左尿管合併切除,左内外腸骨動脈,左総腸骨静脈合併切除による腫瘍摘出術を施行し,尿路変更術,左右大腿動脈バイパス術を行った.病理組織学的には低分化扁平上皮癌で,術後補助療法としてLow dose FP療法に放射線外照射療法を併用したが局所再発を認め,術後5カ月で癌死した.
  • 森脇 義弘, 杉山 貢, 豊田 洋, 小菅 宇之, 岩下 眞之, 鈴木 範行
    2009 年 34 巻 5 号 p. 969-973
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/30
    ジャーナル フリー
     54歳,男性.包丁による左側腹部刺創,ショックで救急搬送された.血圧74mmHg,脈拍数95回/分,呼吸数18回/分,体温34.5度で,受傷73分,来院30分で緊急手術とした.左腎臓の上極側から腎門部に及ぶ刺創と十二指腸水平脚終末部に損傷を認めた.腎門部の止血・修復は困難と判断し,左腎摘出,十二指腸縫合閉鎖を施行したが,低血圧や低体温の遷延,アシドーシスの悪化,肉眼的出血傾向も出現し,DCの方針とし,腎摘出跡と右後腹膜への腸ガーゼ圧迫留置,皮膚のみの一時閉腹を行った.術後集中治療室で代謝失調の補正を行い,初回手術後50時間で再手術とし留置ガーゼを除去した.術後十二指腸縫合不全を認めたが保存的に治療し第70病日に近医へ転院となった.DCは一時回避的戦略であるが,大量出血による致命的代謝失調例には,眼前の死の回避に有用な手段で,本法の適応判断や実践は,緊急事態への対応能力の一つとして重要と思われた.
  • 清水 孝王, 遠藤 和彦
    2009 年 34 巻 5 号 p. 974-978
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/30
    ジャーナル フリー
     子宮広間膜裂孔ヘルニアは子宮広間膜の欠損部に小腸が嵌入して生じる内ヘルニアで,手術既往歴がない腸閉塞症例のなかに,稀にみられる疾患である.今回われわれは,術前にCTで診断を行った後に,腹腔鏡下手術を施行した症例を経験したので報告する.症例は43歳,女性.手術既往歴がない腸閉塞の診断で入院した.腹部CT検査で左側の子宮広間膜前後に腸管を認めた.術前に子宮広間膜裂孔ヘルニアを疑い,腹腔鏡下手術を行った.術中,腹腔鏡下では,嵌入していた回腸が整復しえず,下腹部に約5cmの切開を加え,子宮広間膜の裂孔を切開,開大して,嵌頓腸管の狭窄部位を解除し,腸管切除を行わなかった.子宮広間膜裂孔ヘルニア嵌頓症例は,術前診断が難しく,嵌入腸管の血行不良のため腸切除を要することが多い.本症例のように術前にCT診断ができれば,腹腔鏡下手術は低侵襲で有用な治療法であると考えられた.
  • 瀬戸口 優美香, 平野 明, 道本 薫, 碓井 健文, 清水 忠夫, 小川 健治
    2009 年 34 巻 5 号 p. 979-982
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/30
    ジャーナル フリー
     症例は86歳,女性.主訴は左鼠径部膨隆.2006年4月,左鼠径部の膨隆を自覚し3日後に前医を受診.左鼠径ヘルニア嵌頓疑いで当科に紹介され入院した.左鼠径部に軽度発赤と圧痛を伴う鶏卵大の腫瘤を認めた.腹痛,嘔吐はなく,腹部単純X線像でもイレウスの所見はなかった,腹部超音波では左鼠径部に47mm大のcystic lesionとその内部に腹腔内から連続する構造物を認めた.CTも同様の所見で,大腿ヘルニア嵌頓と診断した.ヘルニア内容は付属器もしくは大網と推定し,緊急手術を施行した.手術診断は大腿ヘルニアで,内容は卵巣と卵管采であった.血流障害はなかったため内容を還納し,ヘルニア嚢を切除してPHS法で修復した.術後経過は良好で術後5日目に退院した.イレウス症状を伴わない嵌頓大腿ヘルニアは,その内容が卵巣などの可能性を念頭に置いて手術を行うことが大切である.
  • 長尾 祐一, 鳥越 貴行, 日暮 愛一郎, 山口 幸二
    2009 年 34 巻 5 号 p. 983-986
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/30
    ジャーナル フリー
     症例は77歳の女性.2008年4月より右下腹部腫瘤を認めており,近医にて経過観察されていた.前医にて,腹壁ヘルニアと診断され,精査加療目的にて当科紹介受診した.初診時,右下腹部腫瘤は認めなかったが,腹部超音波検査,腹部造影CT検査にて,半月状線部の腱膜欠損を認め,Spigelian herniaと診断された.2008年10月,Composix Kugel Patch S sizeを用いた修復術施行した.Spigelian herniaは全腹壁ヘルニアの2%以下と言われており,比較的稀な疾患であるため,若干の文献的考察を加えて報告する.
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