日本外科系連合学会誌
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35 巻, 1 号
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原著
  • 川瀬 仁, 小澤 壯治, 荒川 敏, 熱田 幸司, 大島 久徳, 永田 英俊, 白石 天三, 川辺 則彦, 梅本 俊治, 松本 純夫
    2010 年 35 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     目的:癌化学療法がE-セレクチンの発現に及ぼす影響と,それに対するシメチジンの抑制効果を前向き試験で明らかにする.対象と方法:胃癌6例と大腸癌8例,合計14例を対象とした.化学療法は経口フッ化ピリミジン系薬剤を使用したレジメンとし,シメチジンは6週間以上併用投与した.経時的に静脈血を採取し,血清中の可溶性E-セレクチン濃度を測定した.結果:可溶性E-セレクチン値は,化学療法単独投与で上昇し(p = 0.034),化学療法とシメチジンの併用で低下した(p = 0.043).さらに併用後,シメチジンのみ中止すると上昇する傾向にあった(p = 0.068).結語:化学療法は血清可溶性E-セレクチン濃度を上昇させ,シメチジンはそれを抑制する効果がある.このことから,シメチジンが化学療法による易転移環境の改善に有用である可能性が示唆される.
  • 松永 和秀, 朝村 真一, 和田 充弘, 伊谷 善仁, 磯貝 典孝
    2010 年 35 巻 1 号 p. 8-12
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     【目的】眼窩骨折を自家骨で整復した14例において,術前の外眼筋腫脹と術後1年経過時の予後との関連を検討した.【術後予後分類と外眼筋腫脹評価】術後予後は,グループA:複視なく,眼球運動も正常,グループB:眼球運動限界域で複視を認めるも,眼球運動は正常,グループC:眼球運動限界域で複視を認めるが,眼球運動は改善,グループD:眼球運動限界域で複視を認め,眼球運動改善なし,の4つに分類して判定した.外眼筋腫脹は,術前の冠状断CTにて,非骨折側に対する骨折側の外眼筋腫脹率を算出して評価した.【結果】術後予後は,グループA,B,C,Dが各9例,2例,3例,0例であった.外眼筋腫脹率は,グループAでは1.1以下であったが,グループB,Cでは1.6~2.2であった.【考察】術前の冠状断CTで,骨折側の外眼筋の断表面積が,非骨折側のそれより1.6倍以上腫脹している症例は,術後眼球運動限界域での複視もしくはごく軽度の眼球運動障害が残存する可能性が示唆された.
  • 村山 実, 勝部 隆男, 宮木 陽, 五十畑 則之, 浅香 晋一, 山口 健太郎, 塩澤 俊一, 吉松 和彦, 成高 義彦, 小川 健治
    2010 年 35 巻 1 号 p. 13-16
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     当科ではESDで根治度EBと判定された早期胃癌に対し,病理組織学的にガイドライン病変,適応拡大病変であれば経過観察,適応外病変であればリンパ節郭清を伴う胃切除術を原則としてきた.本稿ではその治療方針の妥当性を検証した.対象は2003年3月より2007年3月までにESDを施行後EBと判定された19例.これらをガイドライン病変8例,適応拡大病変7例,適応外病変4例に大別し,各々の病変ごとにEB判定の要因やESD後の経過を検討した.ガイドライン病変では局所再発を認めた3例で再度のESDを行い,EAの切除が可能であった.適応拡大病変では1例に局所再発を認め,全身状態よりAPCを施行した.適応外病変は3例で追加手術を行い,1例に局所遺残を認め,追加治療拒否の1例は原病死した.以上より,病変を適応別に大別し,追加治療を決定する本治療方針は妥当と考える.
臨床経験
  • 境 雄大
    2010 年 35 巻 1 号 p. 17-20
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     乳癌の術前検査または術後経過観察中に発見された孤立性肺腫瘤(SPN)6切除例を臨床病理学的に検討した.肺切除時の年齢は平均61.2歳,全例女性,乳癌の病期は0期1例,I期2例,II期2例,III期1例であった.組織診断は原発性肺癌,転移性肺腫瘍各3例,原発性は全例とも腺癌であった.診断時期は乳癌術前,術後各3例で,CTで発見された症例が多く,術前診断例は全例が原発性肺癌であった.腫瘤径は原発性肺癌で平均29.0mm,転移性肺腫瘍で平均14.7mm,原発性は全例20mm以上であった.術中迅速組織診断を全例で施行し,結果は永久標本の評価と一致していた.CTで腫瘤辺縁の性状は原発性肺癌,転移性肺腫瘍で同様であったが,内部構造が含気型の腫瘤はいずれも原発性であった.乳癌患者のSPNについて,術前検査で発見された症例,腫瘍径20mm以上の症例,CTで含気型の腫瘍は原発性肺癌の可能性が高いと考えられる.
症例報告
  • 藪内 伸一, 中川 国利, 鈴木 幸正, 遠藤 公人, 小林 照忠, 武田 元博
    2010 年 35 巻 1 号 p. 21-25
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     稀な乳腺原発腺様嚢胞癌(以下,ACC)の1例を経験したので報告する.症例は43歳の女性で,右乳房腫瘤を主訴として当科を受診した.右D領域に圧痛を伴う1cm大の腫瘤を触知した.マンモグラフィでは局所的非対称性陰影カテゴリー3の所見で,乳腺超音波検査では境界が比較的明瞭な低エコーの腫瘤を認め,内部エコーは不均一であった(カテゴリー3).穿刺吸引細胞診ではclass IIIで,針生検でACCと術前診断した.そこで,腋窩リンパ節郭清を省略した乳房温存手術と術後放射線療法を施行した.病理組織所見では,腺上皮細胞と筋上皮細胞からなるACCに特異的な篩状構造を認めた.ACCは全乳癌の0.1%未満と稀な腫瘍で,特異的な病理所見を呈する疾患である.また,ACCは低悪性腫瘍でリンパ節転移は稀とされ,術前診断は術式の決定に有用であった.
  • 阪 龍太, 長谷川 利路
    2010 年 35 巻 1 号 p. 26-29
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     先天性幽門閉鎖症は100万出生に1例程度の発生であり,非常に稀である.このため,出生前診断の報告も少ない.[症例] 母体は21歳,近親婚なし.33週2日,前期破水を認め,当院に母体搬送.来院後の超音波で羊水過多および胎児の胃泡の拡張を認めた.ステロイド投与を行い,子宮収縮抑制を行っていたが,経過中も胎児の胃泡のサイズに変化はみられなかった.34週0日,2,114gで出生,出生後の腹部単純X線写真,上部消化管造影から先天性幽門閉鎖症と診断し,日齢4で幽門形成術施行.術後経過は良好である.出生前に先天性幽門閉鎖症と診断しえた1例を経験したので,文献的考察をまじえ報告する.
  • 松井 康司, 種村 廣巳, 大下 裕夫, 山田 誠, 足立 尊仁
    2010 年 35 巻 1 号 p. 30-33
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     症例は72歳の男性.平成8年に胃癌にて幽門側胃切除術が行われ,BillrothI法で再建されている.平成19年12月に残胃癌のため残胃全摘術,Roux-en Y再建術が施行された.術後第9病日より腹痛と発熱が出現し,第10病日に腹部CT検査を施行した.十二指腸下行脚から水平脚の著明な拡張を認め輸入脚閉塞症と診断し緊急手術を行った.開腹すると癒着が高度で全貌を観察することは困難であったが,Y脚吻合部には異常はなく口側輸入脚が著明に拡張しており,横行結腸より連なる脂肪組織の癒着により閉塞をきたしたものと考えた.脂肪組織の部分切除と可及的な癒着剥離を行った.術後は症状・所見とも徐々に改善し第42病日に軽快退院した.残胃全摘術後早期に輸入脚閉塞症をきたした症例を経験した.稀な術後合併症ではあるが早期診断早期治療が必要な病態として報告した.
  • 今田 慎也, 平尾 素宏, 藤谷 和正, 安井 昌義, 池永 雅一, 宮崎 道彦, 三嶋 秀行, 中森 正二, 竹田 雅司, 辻仲 利政
    2010 年 35 巻 1 号 p. 34-38
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     症例は69歳,女性.上腹部痛を主訴に近医受診した.胃癌と診断され当院紹介された.上部消化管内視鏡で前庭部前壁の広範囲0-IIc+III病変,生検結果から印環細胞癌と診断された.手術は,幽門側胃切除を施行した.術後切除標本の病理所見において,0-IIc+III病変から印環細胞癌,その周辺よりMALTリンパ腫および一部にdiffuse large Bcell lymphoma(DLBCL)を認めた.術後1年10カ月後の上部内視鏡検査時の陥凹性病変の生検結果からDLBCLが検出された.その後化学療法を行いCRが得られた.また,Helicobacter Pylori(HP)陰性であった.今回の症例のように,HP感染を伴わず,印環細胞癌と悪性リンパ腫が合併する症例は非常に稀であり,本邦での累計結果を報告する.
  • 松津 賢一, 池 秀之, 湯川 寛夫, 和田 修幸, 利野 靖, 益田 宗孝
    2010 年 35 巻 1 号 p. 39-44
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     症例は46歳の女性.心窩部痛,腹部膨満感を主訴に近医を受診.抗潰瘍薬を処方されたが嘔吐が出現し,当科に入院.腹部CTで十二指腸第3部の全周性の壁肥厚と口側十二指腸および胃の拡張を認めた.上部消化管造影検査では中心に陥凹を伴う隆起性病変と狭窄を認めた.上部消化管内視鏡検査では十二指腸第3部に全周性の腫瘍と狭窄を認め,生検で中分化腺癌と診断された.十二指腸第3部の原発性十二指腸癌の診断で,膵頭十二指腸切除術を施行.切除標本では十二指腸第3部に全周性,45×35mmの2型腫瘍を認め,病理組織学的には中分化腺癌,深達度は ssで,リンパ節転移は認められなかった.術後経過は良好で,術後2年5カ月間再発は認められていない.
  • 藤川 寛人, 林 勉, 藤井 慶太, 小島 康幸, 成井 一隆, 松津 賢一, 蘆田 明雄, 池 秀之, 利野 靖, 益田 宗孝
    2010 年 35 巻 1 号 p. 45-50
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     癒着や腸回転異常症などに起因しない原発性小腸軸捻転症は,本邦では極めて稀な疾患である.今回成人原発性小腸軸捻転症の2例を経験した.【症例1】67歳の男性.突然の腹部激痛と嘔吐のため当院に入院となった.動脈血液ガスで代謝性アシドーシスと,腹部造影CTでwhirl like patternを認めたため,小腸軸捻転による絞扼性腸閉塞と診断し,緊急手術を施行した.回盲部より70cm口側で小腸間膜が反時計回りに180°捻転しており,壊死腸管を切除し経過は良好だった.【症例2】38歳の女性.腹痛を訴え,腹部造影CTで腹水と腸管拡張を認め,緊急手術を施行した.トライツ靭帯から1m90cmの部分より小腸が時計回りに180°捻転しており,壊死腸管を切除し,術後経過は良好であった.以上2症例につき文献的考察を含めて報告する.
  • 冨田 眞人, 亀山 哲章, 三橋 宏章, 松本 伸明, 長谷川 康, 関本 康人
    2010 年 35 巻 1 号 p. 51-55
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     症例は57歳,男性.十数年来,右鼠径部膨隆を時折自覚していたが自然に改善,消失していた.1日前に鼠径部膨隆を認めたが自然に改善,消失した.その後も心窩部痛,腹満,嘔吐が続き,夜間救急外来受診となる.腹部全体が膨満していたが鼠径部にヘルニアは認めなかった.腹部CTで鼠径ヘルニアを疑ったがイレウスの原因と断定するには乏しい所見であった.保存的治療にて改善がないため,緊急手術を施行した.鼠径ヘルニアがイレウスの原因に関与していることを疑い,手術は鼠径部からアプローチした.同アプローチにてヘルニア門より腹腔内で小腸が嵌頓していることが疑われた.他の原因検索もかね腹腔鏡を用いて検索したところ,腹膜前腔に落ち込んだヘルニア嚢に小腸が嵌頓し偽還納の病態であることを診断した.低侵襲で詳細な検索が可能な腹腔鏡併用手術は本症例のような稀な病態には有用であると考えられた.
  • 松本 敦夫, 吉松 和彦, 横溝 肇, 大澤 岳史, 矢野 有紀, 村山 実, 塩澤 俊一, 勝部 隆男, 成高 義彦, 小川 健治
    2010 年 35 巻 1 号 p. 56-60
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     盲腸に原発した稀な腺扁平上皮癌の1例を報告する.症例は81歳,女性.右側腹部痛,便秘を主訴に来院した.腹部CT検査で上行結腸に腫瘤を認め,精査加療目的で入院した.下部消化管内視鏡検査で同部に2型の全周性腫瘍を認め,生検で高分化腺癌と診断し,手術を施行した.開腹所見は,盲腸から上行結腸に約11cm大の腫瘍を認め,腫瘍は右側横行結腸に直接浸潤していた.結腸右半切除術と3群リンパ節郭清を施行した.病理組織学的所見はSI,ly2,v1,N0(0/23),PM0,DM0,RM0,stage II,手術は根治度A,組織型は腺扁平上皮癌と診断した.補助化学療法は行っていないが,術後84カ月経過した現在,無再発生存中である.自験例の発生機序は,腺癌細胞の扁平上皮化生と考えられた.
  • 向川 智英, 小山 文一, 木下 正一, 中川 正, 藤井 久男, 中島 祥介
    2010 年 35 巻 1 号 p. 61-65
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     症例は85歳,女性.2007年6月,近医で貧血を指摘された.腹部CT検査の結果,上行結腸に同心円状の多層構造を認めた.注腸検査では蟹爪様の陰影欠損像が認められた.大腸内視鏡検査では管腔全体を占める表面不整な隆起性病変を認めたが,重積は送気により容易に整復された.生検の結果はGroup 4で,回盲部腫瘍による腸重積症と診断され,当科に紹介された.自覚症状,腹部所見がないため,待機的に腹腔鏡下回盲部切除術,3群リンパ節郭清を施行した.術中,回盲部が上行結腸に嵌入していたが,終末回腸の牽引により重積は容易に整復され,定型手術を施行しえた.病理組織診断は高分化腺癌,pSS,INF-β,ly0,v0,pN0,pStage IIであった.成人腸重積症の多くは腫瘍性病変に起因するが,急性腹症で発症し,術前診断が不明なまま緊急手術を要することも少なくない.今回,高齢女性の盲腸癌による腸重積に対し待機的に腹腔鏡補助下手術を施行し良好な結果を得たので,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 小杉 千弘, 幸田 圭史, 安田 秀喜, 鈴木 正人, 山崎 将人, 手塚 徹, 今井 健一郎, 平野 敦史, 土屋 博紀, 腰野 蔵人
    2010 年 35 巻 1 号 p. 66-71
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     腸重積を合併した進行上行結腸癌に対して腹腔鏡手術を施行した1例を報告する.症例は42歳,女性.平成20年11月に下腹部痛が出現し当院外来受診.腹部超音波とCTで腸重積症の診断となり入院した.大腸内視鏡検査で上行結腸に隆起性病変を認め,上行結腸腫瘍による腸重積の診断となった.大腸内視鏡の送気により腸重積は整復可能だった.生検で中分化型腺癌の診断となり,経口摂取開始し腹部症状の出現を認めず,待機的手術の予定とし3日目に一時退院となった.腸重積発症後7日目に再入院し,腹腔鏡下結腸右半切除術およびD3郭清を施行した.手術時には腸重積は解除されており,手術操作に難渋することはなかった.成人腸重積症は全腸重積症例の5~10%と稀であり,腫瘍などの器質的疾患が原因となることが多い.腸重積合併進行上行結腸癌に対しても,腸重積整復後に待機的腹腔鏡下根治手術が可能であることが示された.
  • Takahiro Umemoto, Mitsuo Saito, Kazuyoshi Ishibashi, Gaku Kigawa, Hiro ...
    2010 年 35 巻 1 号 p. 72-77
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
    We report a case of a minute rectal carcinoid associated with a huge metastatic retroperitoneal carcinoid. A 65–year–old man was hospitalized because of constipation. Abdominal computed tomography (CT) showed a 130–mm diameter giant tumor with intratumoral necrosis, occupying the pelvic cavity and compressing the rectum. Colonoscopy revealed the primary lesion to be a small, yellowish, submucosal rectal tumor of 8 mm diameter with central collapse, located in the lower rectum. With no alternative diagnostic measures available, a percutaneous biopsy was performed and a diagnosis of carcinoid was made. We performed Hartmann's procedure of the primary tumor with lymph node dissection. Histologically, the retroperitoneal tumor did not display cytologic atypia, but did exhibit extensive necrosis, and was identified as a typical carcinoid by chromogranin A and synaptophysin immunohistochemical markers. For pelvic tumors of unknown origin, the alimentary tract must be examined to rule out the possibility of metastatic carcinoids.
  • 山田 正樹, 小野 誠吾, 石山 隼, 杉本 起一, 高橋 玄, 小島 豊, 五藤 倫敏, 田中 真伸, 冨木 裕一, 坂本 一博
    2010 年 35 巻 1 号 p. 78-84
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     直腸肛門部原発の悪性腫瘍の中で悪性黒色腫は比較的稀であり,極めて予後不良である.今回,直腸肛門部の悪性黒色腫術後早期転移再発に対し化学療法が奏効している1例を経験したので報告する.
     症例は77歳,女性.平成19年8月下旬より排便時出血を自覚し,近医で肛門ポリープの診断を受け経肛門的腫瘍切除術を施行された.病理組織学的検査では中~低分化腺癌で深達度smと診断された.術後のFDG-PETで直腸傍リンパ節に異常集積を認め,手術目的に当科紹介となった.大腸内視鏡検査による生検では確定診断が得られず,前医の病理検体を再検し悪性黒色腫と診断した.平成19年11月に腹会陰式直腸切断術を施行した.病理診断では直腸悪性黒色腫,SM,N2(35/62),ly3,v0であった.術後経過良好で第17病日に退院となったが,術後早期に再発転移をきたした.その後化学療法が奏効し,現在も継続中である.
  • 阪 龍太, 長谷川 利路, 園部 宏
    2010 年 35 巻 1 号 p. 85-88
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     Human tailは,出生時から認められることの多い尾様の突起である.Human tailは腰部から臀部にかけて発生するが,仙尾部に認められることが多く,肛門周囲に発生することは稀である.今回,われわれは,肛門縁に発生したhuman tailの1例を経験したので報告する.症例は2カ月の男児で,出生時より肛門縁に尾様の突起を認めていた.明らかな他の合併奇形はみられず,腫瘤切除を行った.病理組織学的には大部分が脂肪組織より成り,平滑筋成分の増生,索状の横紋筋・神経線維を認めた.本症例はHarrison分類ではcaudal appendageに,Dao分類およびLin分類ではtrue tailに分類される.
  • 碓井 健文, 塩澤 俊一, 金 達浩, 土屋 玲, 久原 浩太郎, 横溝 肇, 吉松 和彦, 勝部 隆男, 成高 義彦, 小川 健治, 相羽 ...
    2010 年 35 巻 1 号 p. 89-93
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     転移性肝癌との鑑別が困難であった肝硬化性血管腫の1例を経験したので報告する.症例は57歳,女性.平成20年2月,直腸S状部癌の診断で高位前方切除術,D3郭清を施行した.術前より肝S2に1.5cm大の腫瘍を認めていたが,術後に増大傾向がみられたため,同年6月転移性肝癌の疑いで肝左葉切除術を施行した.腫瘍の病理組織学的所見では,単層の内皮細胞で裏打ちされた大小の洞様の血管と小動脈,硝子化した膠原線維組織の増生がみられ,肝硬化性血管腫と診断した.本症は海綿状血管腫が退行性変化により線維化,硝子様硬化をきたした比較的稀な疾患で,乏血性の肝悪性腫瘍との鑑別診断が困難とされる.線維成分の多い肝腫瘍の鑑別診断では,本症の可能性も念頭に置き診療にあたる必要がある.
  • 石綱 一央, 南村 圭亮, 平田 泰, 若杉 正樹, 梅村 彰尚, 菊一 雅弘, 坂本 昌義
    2010 年 35 巻 1 号 p. 94-99
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     症例は49歳,男性.2005年7月,検診の腹部超音波検査で脾腫瘤を指摘され当院内科紹介受診.腹部造影CTで脾上極に長径3.8cmの単発性低吸収域の腫瘤を認めたが,身体所見および血液生化学検査で異常を認めず経過観察とした.2006年9月のCTで4.4cmと増大傾向を示しFDG-PETで同部位に集積亢進を認めた.悪性腫瘍を否定できず同年10月,開腹脾臓摘出術を施行した.病理組織学的診断は脾原発の炎症性偽腫瘍であった.
  • 富岡 寛行, 齊藤 修治, 絹笠 祐介, 塩見 明生, 橋本 洋右, 金本 秀行, 坂東 悦郎, 寺島 雅典, 上坂 克彦, 山口 茂樹
    2010 年 35 巻 1 号 p. 100-104
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     患者は55歳,女性.右下腹部痛,嘔気,嘔吐および1年間で14kgの体重減少を認めた.上行結腸に4cm大の2型病変を認め,上行結腸癌cSS,cN1,cH0,cP0,cM0,cStage IIIaと診断した.また腹部造影CTにおいて,十二指腸の下行脚から水平脚が著明に拡張し,上腸間膜動脈と大動脈のなす角の狭小化,十二指腸が通過する部分での上腸間膜動脈と大動脈間距離の短縮化を認めた.上記CT所見に加え,臨床所見,現病歴から上腸間膜動脈症候群(SMA症候群)と診断した.手術は上行結腸癌に対する開腹右結腸切除と同時に,SMA症候群に対する十二指腸空腸吻合を施行した.術後SMA症候群由来と考えられた症状は消失し,術後補助化学療法の早期開始が可能であった.腹部手術を行う担癌患者に合併したSMA症候群に対しては,外科治療が良い適応となる可能性がある.
  • 名久井 雅樹, 中鉢 誠司
    2010 年 35 巻 1 号 p. 105-108
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
     症例は53歳の男性.労作時の軽度の呼吸困難を主訴とし,他院で施行した胸部X線,および胸腹部CTで横隔膜ヘルニアと診断され当院に紹介された.横行結腸および大網をヘルニア内容とするMorgagni孔ヘルニアと診断し腹腔鏡下に手術を行った.胸骨背面右側に約6×4cmのヘルニア門を認め,ヘルニア内容は容易に腹腔内に還納された.ヘルニア門を単純閉鎖した後にBard Composix E/X Mesh®で閉鎖部を覆い固定し手術を終了した.術後経過は良好で第7病日に退院した.術後約2年半の経過観察では再発やseromaは認めていない.比較的稀なMorgagni孔ヘルニアに対して腹腔鏡下に手術を行い良好に経過した症例を経験したので,多少の文献的考察を加えて報告する.
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