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鈴木 俊二
2010 年 35 巻 2 号 p.
131-134
発行日: 2010年
公開日: 2011/04/25
ジャーナル
フリー
硬膜外膿瘍は比較的稀な疾患である.症例は66歳,男性.前医にて急性胆嚢炎を診断され,中心静脈栄養下に保存的治療施行された.症状軽快したのちに当院へ転院となり胆嚢摘出術を施行した.術後に発熱,右頸部の腫脹・疼痛,右上肢の知覚障害および筋力低下が出現した.脊椎MRIおよび頸部CT所見より頸椎硬膜外膿瘍を認め,膿瘍ドレナージを施行した.基礎疾患を有さない患者の消化器手術後に硬膜外膿瘍を発症することは極めて稀である.今回われわれは胆嚢摘出術後に中心静脈カテーテル感染が原因と思われる頸椎硬膜外膿瘍を発症した1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
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井上 寛子, 菅沼 利行, 高島 健
2010 年 35 巻 2 号 p.
135-138
発行日: 2010年
公開日: 2011/04/25
ジャーナル
フリー
症例は20歳,女性.2008年6月中旬に左乳房腫瘤を自覚し母親と来院した.身体所見上左乳房EABCD領域に65×60mmの腫瘤を触知した.マンモグラフィーでは分葉状,境界明瞭な58×47mmの高濃度腫瘤陰影がみられ超音波では左EABCD領域に55.5×39.9mmの境界明瞭な低エコー腫瘤を認めた.針生検を施行したところ境界型葉状腫瘍と診断された.CT所見では同部位に不均一な強い造影効果のある充実性腫瘍がみられた.腫瘤径と画像所見から悪性の可能性が否定できないと判断し手術を施行した.病理組織学的所見では悪性葉状腫瘍と診断された.術後経過は良好で現在再発や再燃はみられていない.
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境 雄大
2010 年 35 巻 2 号 p.
139-143
発行日: 2010年
公開日: 2011/04/25
ジャーナル
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症例は59歳,女性.健診の胸部X線検査で左肺野に異常陰影を指摘された.近医での胸部CT検査で左肺上葉舌区に約4cmの腫瘤を,同時に右側大動脈弓を指摘された.擦過細胞診でclass V(腺癌)と診断され,当科に入院した.諸検査を施行し,左肺癌(cT2N1M0, cStage IIB)と診断し,手術を行った.開胸すると胸膜播種を伴う進行肺癌で,左上葉切除・下葉部分切除術と縦隔リンパ節のサンプリングを行った.肺動静脈,気管支の分岐に異常はなかった.腫瘍径は最大径42mm,病理組織学的に低分化腺癌で,最終診断はpT4N2M0, StageIIIBであった.術後経過は良好で,術後第12病日に退院した.現在,術後5カ月を経過し,化学療法を施行中であるが,腫瘍の進行を認めていない.右側大動脈弓を伴う肺癌の手術では,肺動静脈,気管支の分岐異常はなく,通常と同様に肺葉切除が可能である.文献的に左反回神経の反回部位は動脈管索が多く,縦隔リンパ節郭清時には注意を要する.
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Yoshimasa Mizuno, Yoshihiko Kato, Hiroto Tsujimoto, Kimi Yamauchi, Hir ...
2010 年 35 巻 2 号 p.
144-147
発行日: 2010年
公開日: 2011/04/25
ジャーナル
フリー
We report a case of persistent sciatic artery which occluded spontaneously without lower limb ischemia. A 74–year–old woman presented with painless pulsation in her right buttock. She underwent computed tomographic angiography (CTA), which showed complete persistent sciatic artery. We decided on conservative management with 3–monthly CTA. After 12 months CTA showed that the persistent sciatic artery had developed spontaneous occlusion with thrombi. In conclusion, when there is little ischemia and risk of rupture, conservative treatment can be appropriate. CTA is a very useful imaging modality in the follow–up of persistent sciatic artery.
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浅香 晋一, 成高 義彦, 五十畑 則之, 島川 武, 山口 健太郎, 勝部 隆男, 小川 健治, 仲沢 弘明, 藤林 真理子, 井手 博子
2010 年 35 巻 2 号 p.
148-152
発行日: 2010年
公開日: 2011/04/25
ジャーナル
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今回著者らは,頸部食道癌手術後の遊離空腸の遅発性血流障害による通過障害に対し,大彎側細径胃管による再々建術を施行し,良好な結果を得た1例を経験したので報告する.
症例は70歳の女性.2002年に頸部食道癌に対し化学放射線治療を,2003年に両側頸部リンパ節郭清を施行している.2008年4月より嗄声が出現,精査にて頸部食道癌再燃と診断され,5月に喉頭全摘,頸部食道切除,遊離空腸間置術を施行した.術後経過は良好で6月中旬に退院したが,6月末に気管孔右側の皮膚が自潰し膿の流出を認めた.保存的治療を試みたが,徐々に吻合部の狭窄症状が出現し,8月下旬に遅発性血流障害による遊離空腸の部分壊死,狭窄の診断で遊離空腸切除,胸部食道抜去,後縦隔経路下咽頭胃管吻合,腸瘻造設術を施行した.再手術後の経過は良好で,術後第30病日に軽快退院した.
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山口 晶子, 成高 義彦, 島川 武, 浅香 晋一, 五十畑 則之, 村山 実, 山口 健太郎, 勝部 隆男, 塩澤 俊一, 小川 健治
2010 年 35 巻 2 号 p.
153-157
発行日: 2010年
公開日: 2011/04/25
ジャーナル
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発症後72時間以上経過した高齢女性の特発性食道破裂に対し,二期的手術を施行し救命しえた1例を報告する.
症例は74歳の女性.前日より持続する右胸部痛と呼吸苦を主訴に救急外来を受診.慢性気管支炎増悪の診断で帰宅したが,翌日ショック状態で緊急入院した.画像所見により胸腔内穿破型の特発性食道破裂と診断,手術適応と判断した.一期縫合による閉鎖は困難で,二期的手術を施行した.1回目手術は,胸部食道亜全摘術,食道外瘻造設術,腸瘻造設術,胸腔および後縦郭のドレナージを施行した.術後,MRSA肺炎を合併し治療に難渋したが救命しえた.第122病日,2回目手術として胸壁前経路,頸部食道胃管吻合術を施行した.術後経過は良好で第152病日に軽快退院し,術後12カ月を経過した現在,健在である.
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五十畑 則之, 成高 義彦, 島川 武, 浅香 晋一, 板垣 裕子, 山口 健太郎, 村山 実, 勝部 隆男, 小川 健治
2010 年 35 巻 2 号 p.
158-163
発行日: 2010年
公開日: 2011/04/25
ジャーナル
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同時性に食道小細胞癌と扁平上皮癌の重複を認めた稀な多発食道癌の1例を経験したので報告する.症例は63歳,女性.心窩部痛を主訴に施行した上部内視鏡検査で食道癌と診断され入院した.胸部上部食道(Ut)に2型,胸部下部食道(Lt)に1型の多発食道癌を認めた.術前の生検では,いずれも扁平上皮癌であった.術前のCT検査で明らかなリンパ節転移,遠隔転移はなく,T2 N0 M0 cStage IIの診断で右開胸開腹食道亜全摘術を行った.病理組織診断でLtの腫瘍は扁平上皮癌であったが,Utの腫瘍は小細胞癌で,免疫組織染色でNSE,CD56(NCAM),CEAが陽性,No.105リンパ節に小細胞癌の転移を認めた.術後10カ月目のCT検査で縦隔,肺門部リンパ節転移,多発肝転移,脾転移を認め,術後12カ月で原病死した.これまでの食道小細胞癌の報告と同様に予後は不良であった.
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鈴村 和大, 王 孔志, 矢田 章人, 黒田 暢一, 平野 公通, 佐竹 真, 杉本 貴昭, 今村 美智子, 大橋 浩一郎, 藤元 治朗
2010 年 35 巻 2 号 p.
164-167
発行日: 2010年
公開日: 2011/04/25
ジャーナル
フリー
症例は75歳,男性.近医にて右肺野に結節性陰影を指摘され当院受診.全身精査のためFDG-PETを施行したところ,胸部中部食道に異常集積像を認めた.上部消化管内視鏡検査を施行したところ,胸部中部食道に立ち上がり急峻な腫瘍性病変を認めた.食道腫瘍部の生検にて扁平上皮癌と術前診断し食道亜全摘術およびリンパ節郭清を施行.術後の病理組織学的診断にて食道小細胞型未分化癌であった.術後2カ月後に多発肺転移および多発肝転移を認め,術後3カ月後に多臓器不全にて死亡した.食道原発の小細胞型未分化癌は稀であり,若干の文献的考察を加え報告する.
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岡 哲弘, 藤原 康宏, 田辺 俊介, 野間 和広, 櫻間 一史, 元木 崇之, 高岡 宗徳, 白川 靖博, 山辻 知樹, 猶本 良夫
2010 年 35 巻 2 号 p.
168-173
発行日: 2010年
公開日: 2011/04/25
ジャーナル
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【症例】61歳,男性.【現病歴】めまい・タール便を主訴に内科受診.上部消化管内視鏡検査にて進行胃癌を認め外科紹介となる.【既往歴】特記事項なし.【経過】内科入院後57日目に胃癌に対し胃全摘術,Roux-en-Y再建,脾臓・胆嚢摘出術を施行.術前術中さらに術後3日目までにセファゾリンナトリウムの予防的投与を行った.術後3日目に突然に呼吸不全およびイレウスをきたし,呼吸不全重篤化し,ARDS(acute respiratory distress syndrome)となった.イレウスにて経鼻胃管を挿入し得られた消化液を細菌培養施行したが,結果が判明する前に経験的にカルバペネム系抗菌薬であるメロペネムを投与したところ奏効した.その後ESBL(extended spectrum beta-lactamases)産生大腸菌であることが判明し,メロペネムを継続投与したところ軽快し退院となった.【結語】今回われわれは胃癌により胃全摘術を施行後に早期にESBL感染症をきたし,ARDSを発症したが,経験的なメロペネム投与にて奏効し救命しえた1例を経験したので報告する.
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門川 佳央, 園田 憲太郎, 中嶋 早苗, 川部 篤, 江川 裕人
2010 年 35 巻 2 号 p.
174-177
発行日: 2010年
公開日: 2011/04/25
ジャーナル
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症例は57歳,男性.2009年1月5日夜より腹痛を自覚し,翌日当科紹介受診.腹部CTで中等量の腹水と小腸の拡張,ニボーが認められた.絞扼性イレウスの可能性も否定できず,緊急手術を施行.腹腔鏡による観察にて,混濁腹水と小腸に限局性の発赤,浮腫を認めたが絞扼性イレウスは否定的であり,手術を終えた.発症3週後の抗アニサキスIgG+IgA抗体が陽性となり,小腸アニサキス症と最終診断した.腹腔鏡による観察は,診断の難しい小腸アニサキス症に対して,非常に有用であると考えられた.
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田中 千弘, 國枝 克行, 河合 雅彦, 長尾 成敏, 西科 琢雄, 松橋 延壽, 佐野 文, 佐々木 義之, 山田 敦子, 櫻谷 卓司
2010 年 35 巻 2 号 p.
178-182
発行日: 2010年
公開日: 2011/04/25
ジャーナル
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症例は31歳,男性.心窩部痛と間欠的腹痛から近医受診,CTにて小腸脂肪腫による小腸腸重積症として紹介入院となった.腹部症状が重篤でなく,翌日に,腹腔鏡補助手術を施行した.軽度弛緩拡張した小腸が,蠕動が亢進した肛門側小腸に飲み込まれるような重積部を確認した.カメラ用ポートの臍部を3cmに延長し小開腹し,重積部を体外に導出して整復したところ,内翻Meckel憩室が先進した腸重積症と判明し憩室部を切除した.Meckel憩室の先端は漿膜が引き込まれるように内翻して,2cm大の脂肪腫様腫瘤を形成していた.術後経過は良好であった.体外に病変部を導出できると予測される小腸疾患は,腹腔鏡補助手術が低侵襲であり有用であり,腸重積症に関しては,腸管の軽度拡張を伴う場合でも,小腸の蠕動波の差異をよく観察することで病変部位の同定が容易に可能と思われた.
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Tomoharu Shimizu, Takeshi Tatsuta, Tomohiro Yamaguchi, Eiji Mekata, Ts ...
2010 年 35 巻 2 号 p.
183-188
発行日: 2010年
公開日: 2011/04/25
ジャーナル
フリー
Endotoxin appears to play a major role in the development of toxic symptoms in sepsis. The turbidimetric Limulus amoebocyte lysate (LAL) assay is usually used for the detection of endotoxin ; however, a novel rapid LAL assay for endotoxin has recently been developed that uses a laser light–scattering particle–counting method, called endotoxin scattering photometry (ESP). We report a case of sepsis in a patient with colorectal perforation, in which plasma endotoxin was detected by the ESP but not by turbidimetry. A 70–year–old woman with severe abdominal pain who received tocilizumab, an interleukin–6 receptor antagonist, was diagnosed with diffuse peritonitis caused by intestinal perforation. Emergency surgery revealed perforation of a rectosigmoid diverticulum, and the patient underwent Hartmann′s procedure. She presented with sepsis after surgery ; however, her overall condition rapidly improved. Decreased plasma endotoxin measured by EPS and reduction in plasma interleukin–6 appeared to accompany her improved septic condition. In conclusion, we experienced a successfully treated case of sepsis caused by colorectal perforation, despite tocilizumab administration. Moreover, ESP may more sensitively detect sepsis than the widely–used quantitative turbidimetric endotoxin assay.
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若林 俊樹, 加藤 健, 粕谷 孝光, 吉岡 浩, 丹羽 誠
2010 年 35 巻 2 号 p.
189-192
発行日: 2010年
公開日: 2011/04/25
ジャーナル
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症例は46歳,男性.排尿痛,気尿を自覚.膀胱鏡で膀胱後壁左側に潰瘍を伴う粘膜浮腫像を認めた.腹部CTで多数のS状結腸憩室と結腸周囲の炎症像を認めた.膀胱壁との境界には憩室様のair densityを認め,周囲の膀胱壁が炎症性に肥厚していた.S状結腸憩室炎による結腸膀胱瘻の診断で加療開始した.保存的治療にて症状軽快し,経過をみていたが4カ月後症状再燃し,さらに糞尿を認めたため手術を施行した.S状結腸と膀胱の間の瘻孔は容易に確認でき瘻孔切除を施行した.術後の経過は良好で合併症は認めず,現在まで再発は認めていない.治療方法に関しては,瘻孔を含むS状結腸切除,膀胱部分切除等が報告されているが,本症例では,下行結腸まで憩室を多数認めており,憩室を含む結腸切除は手術侵襲が大きくなること,また術前から前立腺炎,頻尿を認めており膀胱切除は膀胱容量の低下をきたし症状増悪の可能性が考えられたため,瘻孔切除を施行した.
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湯川 寛夫, 利野 靖, 村上 仁, 松浦 仁, 菅野 伸洋, 高田 賢, 小澤 幸弘, 山中 正二, 益田 宗孝
2010 年 35 巻 2 号 p.
193-198
発行日: 2010年
公開日: 2011/04/25
ジャーナル
フリー
近年,カルチノイドと大腸癌の重複症例の報告は増加しているものの,その数はいまだ少ない.今回,われわれは直腸カルチノイドに対して内視鏡的切除を行い,S状結腸進行癌に対しては根治的切除術を施行した同時性重複症例を経験したので報告する.
症例は79歳の男性.既往に高血圧,気管支喘息,心房細動,糖尿病を併存し加療中.2007年10月便潜血陽性を指摘され,11月前医で下部消化管内視鏡検査を施行し肛門縁から25cmのS状結腸に2型腫瘍を,5cmの直腸(Rb)に径1.5cmのIsp型腫瘍を認めた.ポリペクトミーを施行しカルチノイドと診断された.CT検査では肝肺転移はなく,直腸近傍にリンパ節腫大はなかった.翌年1月当科受診.2月S状結腸切除術を施行し,併存症が多く高リスク症例のため郭清はD2とした.病理組織所見はS,tub2,2型,se,n1,fStage IIIa,根治度Aであった.術後経過は順調で術後13日で退院となり,25カ月経過した現在無再発生存中である.
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高垣 敬一, 村橋 邦康, 岸本 圭永子, 己野 綾, 西野 光一, 青木 豊明, 曽和 融生
2010 年 35 巻 2 号 p.
199-204
発行日: 2010年
公開日: 2011/04/25
ジャーナル
フリー
経肛門的直腸異物は,性的嗜好などが原因で肛門から異物が挿入され,抜去不可能となったものである.われわれは平成18年~平成19年の2年間で5例の経肛門的異物を経験した.5例中2例は同一の患者であった.平均年齢は56.2歳(30~67歳),全て男性であった.主訴は5例とも異物摘出困難であった.挿入の動機は不明1例,自慰3例(2名),Sadomasochism(以下SM)行為1例であった.異物はプラスチック製の蓋,電動歯ブラシおよびスプーン,プラスチック製の洗剤容器が2例(同一患者),とうもろこしであった.診断はいずれの症例も腹部単純X線で確認出来た.摘出方法は無麻酔下経肛門的摘出1例,腰椎麻酔下経肛門的摘出3例,全身麻酔開腹下経肛門的摘出術1例であった.術後合併症は特に認められなかった.平均入院期間は5.4日(3~10日)であった.
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末田 聖倫, 池永 雅一, 安井 昌義, 宮崎 道彦, 西塔 拓郎, 三嶋 秀行, 平尾 素宏, 藤谷 和正, 中森 正二, 辻仲 利政
2010 年 35 巻 2 号 p.
205-209
発行日: 2010年
公開日: 2011/04/25
ジャーナル
フリー
当院はHIV/AIDS先端医療開発センターであり,HIV感染者を手術する機会も多い.症例1は54歳,男性.スプレー缶を自ら肛門内に挿入し,抜去不能となり当院を受診した.用手的排出は不可能であり,緊急手術を行った.全身麻酔下,砕石位でE式開肛器とL字鉤を用いてボトルの蓋を確認し,ミュゾー鉗子で蓋を把持し,異物を摘出した.異物は直径5cm,長さ15cmのスプレー缶であった.術後4日目に退院した.症例2は49歳,男性.夜間に肛門から上肢を挿入後,下腹部痛が出現し,症状増悪したため当院を受診した.腹膜刺激症状があり,腹部X線検査でfree airを認め,消化管穿孔に伴う急性汎発性腹膜炎と診断し,緊急手術を行った.腹膜翻転部より口側5cmの直腸前面に裂創を伴う穿孔部位を認め,ハルトマン手術を施行した.術後14日目に退院した.自慰行為による直腸異物は時にみられ,穿孔所見があれば緊急開腹術も必要になる.直腸異物の2例を経験したので報告する.
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岩上 佳史, 森本 芳和, 弓場 健義, 赤丸 祐介, 高橋 佑典, 山崎 芳郎
2010 年 35 巻 2 号 p.
210-215
発行日: 2010年
公開日: 2011/04/25
ジャーナル
フリー
症例は62歳,男性.主訴は右季肋部痛.腹部CTにて肝右葉に広汎な実質内出血を伴う8cm大の腫瘍病変を認め,肝細胞癌破裂と診断した.血管造影検査の結果,腫瘍病変は肝動脈後区域枝ならびに側副血行路として胃十二指腸動脈経由の大網動脈および右第10~12肋間動脈より栄養されており,右肝動脈と側副血行路より塞栓術(TAE)を施行した.TAE後の全身状態は良好であり,31日後に待機手術を施行した.手術は肝右葉切除ならびに横隔膜および胸壁合併切除術を施行した.術後経過として汎血球減少および腹腔内膿瘍を認めたが,抗生剤投与および経皮的ドレナージにて全身状態は改善し,術後80日目軽快退院した.
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小泉 優, 浦出 雅昭, 佐々木 省三, 中野 達夫
2010 年 35 巻 2 号 p.
216-220
発行日: 2010年
公開日: 2011/04/25
ジャーナル
フリー
症例は83歳,女性.高血圧,脂質異常症の既往あり.飲酒,喫煙歴なし.2009年4月15日,心窩部痛,嘔気,食欲不振にて救急外来受診.血液検査にて貧血を指摘され,腹部CTにて肝外側区域の腫瘍と,その破裂による出血を疑われ,肝動脈塞栓術を施行された.術前検査所見ではごく軽度のAST,γ-GTPの上昇を認めたが,肝炎ウィルスマーカーおよび抗核抗体は陰性であった.AFPの著しい高値(44,000)を認めた.肝細胞癌の診断にて同年5月25日肝左葉切除術を施行した.切除標本の癌部は高分化型の肝細胞癌,背景肝は脂肪変性,軽度の繊維化,炎症細胞の浸潤を認めることからsteatohepatitis,また,病歴を踏まえて,非アルコール性脂肪肝炎に合併した肝細胞癌と診断した.本症例のように肝硬変にまで至っていない非アルコール性脂肪肝炎からの肝細胞癌合併についての報告は比較的少ないが,高齢で肥満や糖尿病,脂質異常症などの基礎疾患がみられる場合は注意深い経過観察が必要である.
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川崎 篤史, 加納 久雄, 三松 謙司, 久保井 洋一, 吹野 信忠, 大井田 尚継, 天野 定雄
2010 年 35 巻 2 号 p.
221-224
発行日: 2010年
公開日: 2011/04/25
ジャーナル
フリー
症例は19歳,男性.腹部殴打による上腹部痛を主訴に救急搬送された.来院直後の腹部CTでII型膵損傷(表在性損傷)およびII型肝損傷と診断し入院経過観察とした.受傷8時間後のCTでダグラス窩に腹水貯留と十二指腸周囲にfluid collectionが出現し,腹膜刺激徴候も認めたため,肝損傷および膵損傷による腹膜炎と判断し緊急手術を施行した.術中所見で膵臓が完全断裂(IIIb型膵損傷)していたため,Letton-Wilson手術を行った.術後に腹腔内膿瘍を認めるも穿刺ドレナージ術のみで軽快し退院となった.IIIb型膵損傷に対しては,様々な術式が考案されており,患者の全身状態などを考慮し選択されている.今回われわれは,緊急手術中にIIIb型膵損傷と診断した症例にLetton-Wilson手術を施行したので報告する.
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今田 慎也, 安井 昌義, 池永 雅一, 宮崎 道彦, 三嶋 秀行, 平尾 素宏, 藤谷 和正, 中森 正二, 辻仲 利政
2010 年 35 巻 2 号 p.
225-228
発行日: 2010年
公開日: 2011/04/25
ジャーナル
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症例は76歳の男性.3日前に干し柿を摂取した.2日前より嘔気・嘔吐あり,前日より腹痛が出現し,さらに下血も認めたため当院に救急搬送された.来院時,ショック状態であり下腹部全体に筋性防御を認めた.腹部CT検査では小腸の壁肥厚を認め,同部位より口側腸管の拡張と液体貯留を認めた.ショックの原因として虚血性腸管壊死を疑い,緊急手術を施行した.Treitz靱帯より30cm肛門側の部位から約100cmにわたって小腸の色調不良を認め,その腸管を切除し再建した.切除標本内に,複数の干し柿がみられた.病理組織では,腸管の虚血性,壊死性および出血性変化が分節状で非連続的にみられ,血管の明らかな閉塞像もみられず,非閉塞性腸間膜虚血症の診断であった.術後,積極的治療にも関わらず循環不全から脱却できず死亡した.非閉塞性腸間膜虚血症の原因・病態について文献的考察を加えて報告する.
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木田 和利, 三松 謙司, 吹野 信忠, 川崎 篤史, 久保井 洋一, 加納 久雄, 大井田 尚継
2010 年 35 巻 2 号 p.
229-233
発行日: 2010年
公開日: 2011/04/25
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症例は73歳,男性.6カ月前より糖尿病性腎症による慢性腎不全のために血液透析が導入されていた.入院7日前より腹痛,発熱を認めていた.症状が改善しないために救急搬送された.初診時,38°Cの高熱を認め,腹部所見では腹部全体に圧痛と筋性防御を認めた.腹部CT検査では,肝表面に腹水とfree airを認めた.消化管穿孔による汎発性腹膜炎の診断で,同日緊急手術を施行した.術中所見では,腹腔内は膿性腹水と腸内容を認め,上行結腸が約20cmにわたり完全壊死し,穿孔していた.また,Treitz靭帯から肛門側約90cmの回腸の漿膜が約10cm分節的に黒変し,血流障害が認められた.上腸間膜動脈,右結腸動脈,回腸動脈の拍動は触知されたため,非閉塞性腸間膜虚血症(NOMI)と診断し,右半結腸切除,回腸部分切除術を施行した.血液透析患者では,腸管虚血性疾患の発症リスクが高いため,腹痛を主訴とする患者の診断と対応には十分注意する必要がある.
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荒井 淳一, 黨 和夫, 生田 安司, 内藤 愼二, 岡 忠之
2010 年 35 巻 2 号 p.
234-238
発行日: 2010年
公開日: 2011/04/25
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症例は68歳,女性.腹部腫瘤を主訴に受診した.腹部左側に弾性硬,辺縁整,可動性不良の巨大な腫瘤を触知した.CT,MRI,腹部エコー検査にて後腹膜に左腎下極に接する8×6cmの分葉状の腫瘤を認め,左腎は水腎症を呈していた.後腹膜に発生した脂肪肉腫の診断で腫瘍摘出術を施行した.腫瘍は黄白色調・弾性硬であった.腫瘍組織は,lipoblastを有しlipoma様パターンを呈する分化型脂肪肉腫の組織とlipogenesisを失った紡錘形異型細胞の錯綜増生から成る悪性線維性組織球腫様の組織が共存しており,病理組織学的に脱分化型脂肪肉腫と診断した.
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園原 史訓, 原田 明生, 小西 滋
2010 年 35 巻 2 号 p.
239-243
発行日: 2010年
公開日: 2011/04/25
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症例は54歳,女性,2年前からの左下腿の痺れを主訴に近医の整形外科を受診した.左下腿から足底に至る知覚低下を認めるとともに,MRIで左卵巣付近に腫瘤を認めたため,当院産婦人科に紹介受診した.左卵巣粘液性腫瘍の診断のもと手術が施行されたが,術中所見で子宮,両側付属器に異常を認めず,左骨盤内後腹膜腫瘍を認めた.腫瘍は腸骨と仙骨に接し,弾性硬で骨盤内に強固に固定されていた.腫瘍は閉鎖神経に連続しており,術前の神経症状から閉鎖神経由来と考えられた.摘出された腫瘍の病理組織所見はAntoni A型とB型の混在を示し,免疫染色でs-100蛋白陽性であったため神経鞘腫と診断された.左下肢の痺れは残存したものの,術後経過は良好で術後約8カ月の時点で再発を認めていない.
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杉村 啓二郎, 水野 均, 位藤 俊一, 飯干 泰彦, 山村 憲幸, 藤井 亮知, 楠本 英則, 中川 朋, 岸本 朋也, 伊豆蔵 正明
2010 年 35 巻 2 号 p.
244-247
発行日: 2010年
公開日: 2011/04/25
ジャーナル
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患者は,74歳,男性.早期胃癌に対し,腹腔鏡補助下幽門側胃切除を施行した.閉創時,カメラポート孔は腹膜,筋層を縫合閉鎖し,それ以外の12mmポート孔は筋膜のみを縫合閉鎖した.術後第5病日にイレウス症状が出現し,第7病日のCTで左下腹部12mmポート部位への小腸の嵌頓を認めた.ポートサイトヘルニアによるイレウスと診断し,緊急手術を施行した.腹腔鏡下に観察すると,同ポートの部位に小腸が嵌頓していた.筋膜には縫合糸がしっかりかかっており,その筋膜下に小腸が脱出していた.小腸を腹腔内に還納したところ小腸の色調は改善したため,腸切除は施行しなかった.ヘルニアをおこしたポート孔を腹腔内から確認しながら腹膜,筋層を縫合閉鎖した.その後の経過は良好であった.ポート孔の閉鎖は筋膜縫合が必要とされているが,10mm以上のポート孔の場合は筋膜の縫合閉鎖だけではなく,腹腔鏡観察下での腹膜・筋層の縫合閉鎖が必要と考えられた.
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