日本外科系連合学会誌
Online ISSN : 1882-9112
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ISSN-L : 0385-7883
37 巻 , 6 号
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原著
  • Wataru Izumo, Kenji Furukawa, Masakazu Yamamoto
    2012 年 37 巻 6 号 p. 1075-1079
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    Purpose. The efficacy of ULTRAPROTM HERNIA SYSTEM (UHS) technique was evaluated by comparison with standard Prolene hernia system (PHS) technique and the direct Kugel patch (DKP) technique.
    Methods. Forty-one patients with inguinal hernias treated by using UHS technique. They were compared with 84 patients treated with PHS technique and 116 patients treated by the DKP technique. These 3 groups were compared with respect to postoperative wound pain, wound swelling, and seroma formation.
    Results. The incidence of wound pain at the first outpatient visit after discharge was 7.3%, 17.9%, and 13.8%, in the UHS, PHS, and DKP groups, respectively. It was lower in the UHS group. The incidence of wound swelling was 4.9%, 11.9%, and 15.5%, respectively. The incidence of seroma was 2.4%, 9.5%, and 9.5% respectively. Both of these postoperative complications showed also lower incidence in the UHS group.
    Conclusion. Although we found that postoperative pain, wound swelling, and seroma tended to be less frequent in the UHS group than in the PHS and DKP groups, it did not show significant superiority in this study.
  • 森 毅, 清水 智治, 園田 寛道, 山口 剛, 龍田 健, 仲 成幸, 村田 聡, 目片 英治, 遠藤 善裕, 谷 徹
    2012 年 37 巻 6 号 p. 1080-1085
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    目的;ストーマ閉鎖術における環状皮膚縫合法の有用性を検討した.
    
対象と方法;2004年4月より2010年6月までのストーマ閉鎖術を施行された86例のうち,単純皮膚縫合法(単純法)42例と皮下を環状に縫合する環状皮膚縫合法(環状法)44例の臨床背景,術後合併症,術後在院日数などを,retrospectiveに比較検討した.
    
結果;単純法と環状法の間で年齢,性別,ストーマの種類,吻合法,基礎疾患,併存疾患,ASA score,BMIについて有意差を認めなかった.

    表層部手術部位感染は単純法群で9例(21%),環状法群で1例(2%)と有意に環状法群で少なかった(p<0.01).術後の在院日数においても,単純法群が中央値16日,環状法群が13日と有意に環状法群で在院日数が短かった(p<0.01).

    結語;ストーマ閉鎖術において環状皮膚縫合法は,従来の単純皮膚縫合法に比べ,表層部手術部位感染を減らし,入院期間を短縮できる可能性が示唆された.
臨床経験
  • Nobuyuki Homma, Daisuke Kudo, Shigeki Kushimoto
    2012 年 37 巻 6 号 p. 1086-1090
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    Secondary abdominal compartment syndrome (s-ACS) is a serious complication with high mortality in patients with extensive burns requiring extensive fluid therapy to maintain the hemodynamic state. This report presents 2 cases of extensive burn patients complicated with s-ACS requiring surgical decompression. Fluid resuscitation was administered according to Parkland formula, using urinary output as the primary parameter to assess the volume status and tissue perfusion. The first case had a scald burn with an 80% total burn surface area (TBSA) requiring 28 L over 17 h. The second case was scald burn with a 77% TBSA requiring 31 L over 20 h. These cases required a revision of the institutional fluid resuscitation protocol for burn patients during the initial 24 h after the injury. The revised protocol divided burn patients into ≥ 60% TBSA or < 60%, according to the risk for the development of s-ACS following fluid resuscitation using crystalloids. In addition, the protocol provide mandatory sequential monitoring of intra-abdominal pressure (IAP) by measuring intra-bladder pressure (IBP) and aggressive intervention from the early post-burn period, when the patients required more than 250cc/kg during the first 24 h post-burn period. The revised protocol may reduce the development of s-ACS.
症例報告
  • 岩本 奈織子, 山田 正樹, 石戸 保典, 根上 直樹, 渡部 英, 伴 慎一
    2012 年 37 巻 6 号 p. 1091-1095
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    乳腺原発Neuroendocrine carcinoma(NEC)は比較的稀な疾患である.今回われわれはNECの1例を経験したので報告する.症例は77歳女性.左乳房腫瘤を自覚し当科を受診した.来院時左乳房A領域に1cm大の腫瘤を認めた.穿刺吸引細胞診にてclassVの細胞を認め,左乳房部分切除術および腋窩郭清を施行した.病理組織所見では,好酸性細胞質を有する腫瘍細胞が,敷石状に胞巣を形成して浸潤性に増殖していた.免疫染色では,chromograninA, synaptophysinがほぼびまん性に陽性であった.WHO分類に従って乳腺solid neuroendocrine carcinomaと診断された.術後温存乳房に対し放射線療法を施行し,内分泌療法を施行中で,術後3年3カ月現在再発所見は認めていない.
  • 高塚 聡, 新川 寛二, 貝崎 亮二, 藤原 有史
    2012 年 37 巻 6 号 p. 1096-1101
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    Mohsペーストは塩化亜鉛を主成分とする外用剤で,皮膚科領域の悪性腫瘍に用いられている.今回われわれは,Mohsペーストが著効した局所進行乳癌の1例を経験したので報告する.患者は70歳代女性.2009年7月左乳房腫瘤を主訴に当院を受診した.左乳房に悪臭と大量の滲出液を伴う10cm大の腫瘍を認め,生検で硬癌と診断された.FEC療法を開始したが定期的な通院が困難で,2011年5月に腫瘍からの出血のため入院した.入院後よりMohsペーストによる処置を開始した.腫瘍からの出血は速やかに消失し,滲出液や悪臭も減少した.約1カ月後腫瘍は自然に脱落した.その後全身転移のため2011年11月永眠するまで,quality of life(QOL)は良好に保たれた.Mohsペーストは局所進行乳癌患者のQOLを改善するだけで無く,積極的な局所治療の1つになりえると考えられた.
  • 高木 弘誠, 河本 和幸, 伊藤 雅
    2012 年 37 巻 6 号 p. 1102-1107
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    症例は40歳女性で,嚥下障害で見つかった胸部上部食道癌に対して,術前化学療法として5-FU/CDDP療法1クール施行後,胸部食道摘除術,食道胃管吻合術,空腸瘻造設術を施行した.病理結果は,squamous cell carcinoma(以下,SCCと略記),T3N0M0 Stage ⅡAであった.無再発で経過していたが,術後1年6カ月頃より右恥骨部の疼痛が出現し,PET-CTにて右恥骨筋転移,左腰方形筋転移,肺転移,縦隔リンパ節転移を認めた.診断ならびにQOL改善目的に右恥骨筋腫瘍切除術を施行した.病理結果は,SCCを認め,食道癌の組織と形態的類似性を認めた.食道癌術後の骨格筋転移は稀な再発様式であり,報告する.
  • 竹村 雅至, 眞弓 勝志, 池邊 孝
    2012 年 37 巻 6 号 p. 1108-1113
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    食道癌術後合併症のうちで,胃管穿孔は稀な合併症である.今回,食道再建術後早期にステープルラインの穿孔を生じた1例を経験したので報告する.症例は55歳・女性.胸部中部食道癌に対して,まず腹臥位で胸腔鏡下食道切除術を行い,3週間後に食道再建術を行った.再建術2日後に胸腔ドレーンより1,000ml以上の排液を認め,胸部CTで胃管側壁の穿孔が疑われた.胃管の血流障害はなく,ドレナージのみで保存的に経過をみた.術29日後に経口摂取を開始し,入院74日後に退院となった.胃管のステープルライン穿孔の予防には,自動縫合器・吻合器の特徴および使用方法を良く理解し,適切なステープルの選択と愛護的な胃管操作が望ましい.
  • 羽田 真朗, 須貝 英光, 古屋 一茂, 芦澤 直樹, 滝口 光一, 中山 裕子, 鷹野 敦史, 宮坂 芳明, 中込 博, 勝部 隆男
    2012 年 37 巻 6 号 p. 1114-1119
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    増大傾向を示した2例の胃粘膜下腫瘍に対し,腹腔鏡(補助)下胃局所切除術を施行した.症例1:75歳,男性.胃体下部前壁の45mm大,球状平滑な粘膜下腫瘍に対し,腹腔鏡補助下胃局所切除術を施行した.症例2:58歳,男性.胃体中部後壁の20mm大,球状平滑な粘膜下腫瘍に対し,腹腔鏡下胃局所切除術を施行した.いずれも病理組織学的検索では,S100(+),c-kit(-),CD34(-),MIB-1 labeling index1~2%で,胃神経鞘腫と診断した.胃神経鞘腫の術前診断は困難であり,低侵襲で診断と治療が行える腹腔鏡下手術を積極的に考慮すべきと考えられる.
  • 産形 麻美子, 瀬下 明良, 荒武 寿樹, 三宅 邦智, 天野 久仁彦, 植田 吉宣, 亀岡 信悟
    2012 年 37 巻 6 号 p. 1120-1125
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    進行胃癌治癒切除5年後に多発骨転移・髄膜播種を発症,播種性血管内凝固症候群(DIC)を併発,頭蓋内出血を生じ,急激な転帰をたどった播種性骨髄癌症の1例を経験したので報告する.

    症例は59歳女性.2007年,3型進行胃癌に対し幽門側胃切除(Roux-en-Y)+胆囊摘出術施行した.Stage 3a(por,ss,n2,ly1,v0,INFγ)にて術後補助化学療法としてTS-1を1年間内服した.その後,再発・転移認めず術後経過良好であったが,術後約5年経過した定期検査でALP上昇(ALP1,003U/l)認め,その後の骨シンチグラフィにて多発骨転移が確認された.約4週間後,腰背部痛/顔面・四肢の皮下出血を主訴に外来受診,血液検査所見でDICを発症していたため緊急入院となる.同日,数時間後に突然の頭痛出現,頭部CT/頭部造影MRI検査にて多発髄膜播種・頭蓋内出血が確認され,その後患者の意識レベルはJCSⅢ-200と低下,保存的加療を続けるも第2病日に永眠された.
  • Takahiro Umemoto, Kazuki Shinmura, Yohei Kitamura, Gaku Kigawa, Hirosh ...
    2012 年 37 巻 6 号 p. 1126-1129
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    A 44-year-old woman with a 10-year history of anemia presented to our hospital with anemia. At the Emergency Room, her initial hemoglobin and hematocrit levels were 10.9 g/dL and 33.4 %, respectively. A gastroscopy and contrast-enhanced computed tomographic scan of the abdomen did not identify any bleeding site. A colonoscopy showed a Meckelʼs diverticulum (MD) with an ulcer, at about 60 cm proximal to the ileocecal junction on the antimesenteric side, and few blood clots in the terminal ileum. Therefore, we performed a diagnostic and therapeutic single-incision laparoscopic surgery (SILS). The diverticulum was resected using a gastrointestinal anastomosis stapler, without requiring small bowel resection. Histopathological examination revealed MD with ectopic gastric tissue. The patient was discharged on postoperative day 7 without any complications.
     We report our initial experience from Japan with one patient who underwent SILS for MD.
  • 井上 隆, 高 済峯, 向川 智英, 西和田 敏, 渡辺 明彦
    2012 年 37 巻 6 号 p. 1130-1135
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    症例は62歳の男性で,便潜血陽性で当院内科を受診した.大腸内視鏡検査で横行結腸肝彎曲部に1型腫瘍を認め,手術目的に当科紹介となった.生検で悪性所見は認めなかったが,Positron Emission Tomogrphy(以下,PETと略記)で腫瘍に一致して集積を認め,悪性腫瘍を否定できず,手術施行した.上行結腸の腫瘍が肛門側へ重積しており,結腸右半切除術を施行した.病理組織,および免疫学組織的検索で上行結腸gastrointestinal stromal tumor(以下,GISTと略記)と診断した.今回非常に稀な腸重積を呈した上行結腸GISTを経験したので,文献的考察を加え報告する.
  • 中澤 俊之, 五井 孝憲, 森川 充洋, 小練 研司, 村上 真, 廣野 靖夫, 飯田 敦, 片山 寛次, 山口 明夫, 村井 アトム
    2012 年 37 巻 6 号 p. 1136-1141
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    57歳女性.腹膜播種(P3)と左卵巣転移を伴う横行結腸癌に対し,拡大右半結腸切除,D3郭清,腹膜播種切除(臍部,ダグラス窩,大網),両側卵巣切除,術中温熱化学療法(以下HIPEC)を施行した.最終診断はT,2型,80×35mm,pSE,pN2,sH0,sP3,cM0,fStage Ⅳであった.術後は化学療法(mFOLFOX6半年間,以後1-LV/5FU)を施行した.初回手術から1年3カ月後のCT検査において左右横隔膜下や脾臓周囲などに腹膜再発が出現し,腹膜播種切除(正中創瘢痕部,肝表面,胃前後壁,小網,脾摘,左右横隔膜部分切除),HIPECを施行した.術後は化学療法(mFOLFOX6)を施行した.初回手術から4年後に肝S6に20mm大の転移病変と,肝門部に孤立性リンパ節腫大を認め,肝部分切除,リンパ節郭清を施行したが術中所見では腹膜播種の再発は認められなかった.
    本例は広範囲に腹膜播種が認められながらも積極的な切除とHIPECおよびmFOLFOX6が有効に働き,腹膜播種のコントロールがなされ長期生存が得られた症例と考えられた.
  • 石﨑 哲央, 林田 康治, 久田 将之, 土田 明彦
    2012 年 37 巻 6 号 p. 1142-1146
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    症例は26歳,女性.下血,下腹部痛で発症しホルモン治療を5カ月間行ったが軽快せず手術目的で入院した.骨盤CT,MRIで直腸S状部に左卵巣と接する腫瘤性病変を指摘され,注腸検査で直腸S状部に粘膜下腫瘍様陰影を認めた.大腸内視鏡による生検で直腸S状部子宮内膜症と診断され手術を行った.術中所見では,深部子宮内膜症によりダグラス窩は完全閉塞しており剝離操作に難渋したが,手術手技の工夫により腹腔鏡下高位前方切除術を行った.病理組織結果は直腸S状部子宮内膜症と診断された.術後11日目,経過良好で退院し,6カ月間再発を認めていない.深部子宮内膜症を合併した直腸S状部子宮内膜症に対して腹腔鏡下高位前方切除術を行った症例を経験したので文献的考察を加え報告する.
  • 久田 将之, 勝又 健次, 河北 英明, 石崎 哲央, 高木 融, 土田 明彦, 青木 達哉, 佐藤 永一
    2012 年 37 巻 6 号 p. 1147-1152
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    症例は57歳男性.
    殿部の違和感および腫瘤触知にて外来受診された.
    骨盤CTでは,内部均一な造影効果に乏しい腫瘤性病変として描出された.
    骨盤MRIにおいて腫瘍内部はT1強調画像で低信号,T2強調画像では高信号に層構造状の低信号として描出された.また,腫瘤は前立腺,直腸右側壁に接するように存在し,肛門挙筋を圧排する長径10cm大の腫瘤を認めた.骨盤MRIで侵襲性血管粘液囊腫(aggressive angiomyxoma)(以下AAM)に特徴的な所見を認めたため超音波ガイド下にて経皮的組織診を行いAAMと診断した.
    手術は経会陰的に施行し,経皮的組織診を行った皮下組織を含めまた肛門挙筋と尿管を温存し腫瘍切除術を行った.術後18カ月局所再発の所見なく経過観察中である.
    AAMは良性軟部腫瘍と位置づけられているものの局所浸潤性で再発をきたしやすいため術前診断の重要性が示唆された.
  • 鈴木 隆, 長谷部 行健, 横井 正秀, 種村 宏之, 中崎 晴弘
    2012 年 37 巻 6 号 p. 1153-1157
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    症例は61歳男性.健診にて胆囊壁の石灰化を指摘され,当院受診となった.腹部超音波検査および腹部CT検査で,胆囊の全周にわたる石灰化と頸部に結石を認めた.陶器様胆囊(以下PGB)および胆石症の診断にて手術の方針となり,腹腔鏡下胆囊摘出術を施行した.手術は壁の石灰化により鉗子による把持が困難であったため,胆囊底部に小孔を開け,胆囊の把持・挙上を行った.炎症による線維化が高度であったが,Calot三角の剝離および胆囊管,動脈の露出およびclippingは安全に行えた.病理組織学的検査では,胆囊壁全体が硝子様線維化していた.腫瘍性変化は認めなかった.PGBは比較的稀な疾患であり,従来は胆囊癌の合併を考慮する疾患であった.しかし,部分型の癌合併率が7%なのに対して本症例のような全体型においては0%という報告もあり1),石灰化の性状によっては,今回のように腹腔鏡下手術の選択も可能と考えられた.
  • 野呂 拓史, 川崎 成郎, 大平 寛典, 鈴木 範彦, 鈴木 裕
    2012 年 37 巻 6 号 p. 1158-1162
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
     はじめに:異所性膵は,通常の膵臓との連続性のない場所に存在する膵組織を指す.胆道系に認めることは稀であるとされている.
     症例:68歳,女性.前医のスクリーニング目的のCTにて中部胆管に腫瘤性病変を指摘された.胆管腫瘍の診断で,肝外胆管切除を行った.中部胆管壁に異所性膵組織を認め,腺房細胞と導管から構成されるHeinrichⅡ型であった.
     考察:総胆管異所性膵は稀であり,これまでに自験例を含めて16例の報告がある.年齢の中央値は57.5歳.本邦においては全て女性であった.主訴は,上腹部痛と黄疸が多く,総胆管結石などの併存疾患との関連が考えられ,無症状で発見された例は本症例を含めて2例のみであった.総胆管異所性膵は,胆汁の鬱滞により黄疸,胆管炎などの原因となりえる.また,胆管内での膵液産生による胆道癌の危険群ととらえる報告もあるため,無症状であっても積極的な手術を考慮すべきであると考える.
  • 伊藤 隆介, 三澤 健之, 鈴木 文武, 柴 浩明, 内田 賢, 千葉 諭, 鈴木 正章, 矢永 勝彦
    2012 年 37 巻 6 号 p. 1163-1169
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    40歳代,女性.4年前に右乳癌に対して乳房部分切除と腋窩リンパ節郭清を受けた.今回,偶然に腹部エコーで膵頭部腫瘤を指摘された.CTでは膵頭部表面に早期造影効果に乏しく漸増性に造影される径17mm大の腫瘤として認めた.CT,MRI,EUSでは原発性膵癌と乳癌膵転移との鑑別は困難であり,膵頭十二指腸切除術を施行したが病理所見はadenocarcinomaで,組織型による乳癌と膵癌との鑑別は困難であった.Mammaglobin,GCDFP-15,ホルモンレセプター,CK7/20などの免疫染色では初回手術時乳癌組織とほぼ同様の結果が得られたため,乳癌孤立性膵転移と診断した.
    乳癌孤立性膵転移に対する外科的切除症例は極めて稀であり,転移に対する外科的切除の有効性は未だ不明である.術前画像では原発性膵癌との鑑別が困難なことが多く,原発性膵癌であった場合の転帰を考慮すると,切除,免疫染色による診断確定が重要であると考えられた.
  • 安田 裕美, 大井 正貴, 北嶋 貴仁, 沖上 正人, 岩田 崇, 井上 幹大, 毛利 靖彦, 楠 正人
    2012 年 37 巻 6 号 p. 1170-1175
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    症例は18歳の女性.腹部腫瘤と腹痛を主訴に前医を受診し,精査目的に当院に紹介となった.腹部造影CTで骨盤内に腫大した脾臓を認めた.脾動脈描出は良好で,脾内は均一に造影されたため脾梗塞はないと判断し,待機的に腹腔鏡下脾固定術を行う方針とした.術中所見では,脾周囲靭帯は欠損し,脾臓は骨盤内に遊離していた.左横隔膜下の腹膜外腔にポケットを作成し,脾臓を腹腔外ポケットに収めようと試みた.脾腫により完全に腹膜外腔に収まらなかったため,脾下極を腹膜外腔に収め,露出した脾上極をコンポジックスメッシュで被覆し固定した.
  • 徳永 行彦, 佐々木 宏和, 王 康義
    2012 年 37 巻 6 号 p. 1176-1179
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    子宮内膜症は子宮内膜が異所性に増殖したもので,鼠径部発生例は少なく,なかでも子宮内膜症の症状を欠くsilent typeは非常に頻度が低い.症例は32歳女性.左鼠径部に腫瘤を自覚したが無症状であった.超音波検査で囊胞性部分と充実性部分を持つ直径2cmの腫瘍を認め,周囲組織を含めて摘出した.病理組織所見で子宮内膜腺管を認め,免疫組織染色でエストロゲンレセプター,プロゲステロンレセプター,CD10陽性で,異所性子宮内膜症と診断した.発生機序について子宮内膜組織に由来する説と子宮内膜以外の組織に由来する説がある.前者は機械的移植説,血管やリンパ管経由の転移説,径卵管移植説がある.後者は胎生期組織遺残説や誘導説がある.CD10は急性リンパ芽球性白血病の特異的抗原である.近年,リンパ腫や血液癌に加えて,子宮内膜症診断でもその有用が確認されており,本症例の診断にも有用であった.
  • 中村 優子, 佐藤 豊実, 櫻井 学, 越智 寛幸
    2012 年 37 巻 6 号 p. 1180-1184
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    患者は55歳,女性,癌検診を希望し前医受診.子宮内膜細胞診Class Vにて当科に紹介された.内診および経腟超音波検査で異常所見なく,再施行した子宮内膜細胞診はClass Vであった.骨盤MRI,腹部CTに異常所見なく原発巣は不明で,腫瘍マーカーはCA125;12.3U/ml,CA19-9;0.1U/ml,CEA;1.4ng/mlと基準値内であった.子宮内膜全面掻爬検体に病理学的悪性所見は認めなかった.腹腔鏡下両側付属器摘出術を施行し,骨盤腔,腹腔内に肉眼的異常を認めなかった.両側付属器に病理学的悪性所見はなかったが,腹水細胞診はClass Vで腺癌と診断した.2カ月半後に開腹し,単純子宮全摘術+大網生検+腹膜生検を行い腹膜に腺癌組織を確認し,子宮内膜細胞診を契機に腹膜癌をきわめて早期に発見したことが判明した.術後化学療法を追加したが79カ月後に腹水貯留と腹腔内播種で晩期再発し,現在化学療法を断続的に施行しつつ担癌生存中である.
  • 神 康之, 蓮尾 公篤, 前澤 幸男, 山田 貴允, 韓 仁燮, 熊頭 勇太, 利野 靖
    2012 年 37 巻 6 号 p. 1185-1190
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    症例は82歳,男性.突然の腹痛を主訴に来院し,腹膜炎の診断で入院となった.腹部CTで肝左葉外側区に膿瘍を認めた.腹水の貯留を認めたが,腹腔内遊離ガスはなく,その他に腹膜炎の原因となりうる所見はなかった.肝膿瘍破裂による汎発性腹膜炎の診断で緊急手術を施行した.肝左葉に穿孔部があり,排膿を認めた.膿瘍腔と腹腔内の洗浄とドレナージを行った.起因菌としてKlebsiella pneumoniaeが検出された.術直後は敗血症性ショックの状態であったが改善し,術後35日目に軽快退院となった.肝膿瘍破裂による汎発性腹膜炎は比較的稀な疾患であり,特にガス産生のない症例は近年報告が減少している.このため術前に確定診断することは困難で,手術の判断に苦慮することも多い.糖尿病の合併など,全身的な感染防御機構が低下している症例も増加しており,重症化の危険性が高いので,時期を逸することなく処置を行う必要がある.
  • 清川 貴志, 山口 浩和, 照屋 正則, 清水 誠一郎, 上西 紀夫
    2012 年 37 巻 6 号 p. 1191-1196
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    症例は43歳女性.検診で高血圧,貧血を指摘され近医受診しCTでトライツ靭帯の背側に約6cm大の腫瘤を認めた.小腸Gastrointestinal stromal tumor(GIST)と診断され,手術目的に当院紹介となった.しかし問診で労作性の動悸が判明し,高血圧も認めたため内分泌的精査を行ったところノルアドレナリン高値を認めた.またMetaiodobenzylguanidine(MIBG)シンチグラフィーで腫瘍に高濃度集積を認めたため,後腹膜原発paragangliomaと診断し手術を施行した.当症例は画像上ではGISTとの鑑別が困難であったが,術前の問診と内分泌精査により的確に診断することができた.致死的な合併症の可能性を考えると大動脈周囲後腹膜の腫瘍は常にparagangliomaの可能性を考慮すべきと考えられた.
  • 裵 正寛, 田中 宏, 田中 肖吾, 酒部 克, 洪 晶恵, 田中 さやか, 久保 正二
    2012 年 37 巻 6 号 p. 1197-1201
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    症例は69歳の女性.平成5年2月より後腹膜原発脂肪肉腫に対して4回の腫瘤摘出術が施行されていたが,平成18年1月に再発に対して5回目の手術を行った.組織学的に粘液型が主体であったが,5回目の切除標本では脱分化型へと移行していた.3カ月後に6回目の摘出術が施行されたが,その2カ月後にはすでに再発が認められ,化学療法を施行したが効果なく,初回手術から13年9カ月後に永眠された.後腹膜脂肪肉腫は,surgical marginを確保した切除を行うことで長期予後も期待できるが,再発に伴う複数回の切除で悪性度の高い脱分化型が出現することがあり,厳重な経過観察が必要である.
  • 小森 充嗣, 立花 進, 熊澤 伊和生, 西尾 公利, 佐野 仁哉, 福田 賢也
    2012 年 37 巻 6 号 p. 1202-1207
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    症例は94歳,女性.急激に発症した腹痛と発熱を主訴に当科受診.腹膜刺激症状を認め,脈拍120/min,体温38.9℃,WBC6,100/µl,CRP18.0mg/dl,腹部CT,MRIにて骨盤腔を中心に腹水貯留,S状結腸壁肥厚,右卵巣囊腫,子宮体部壁肥厚を認め,下部消化管穿孔を否定しえない汎発性腹膜炎の診断で緊急手術を施行した.開腹すると混濁した腹水,子宮前壁に約15mm程度の穿孔を2ヶ所認めた.子宮留膿症による子宮穿孔と判断し,子宮広範全摘および腹腔内ドレナージ術を施行した.穿孔性腹膜炎の手術にあたり,消化器外科医は穿孔臓器の切除を第一に考えることが多く,本症例も前述の術式を施行したが救命しえなかった.今回の経験から,超高齢者の子宮瘤膿症による子宮穿孔に対しては,手術侵襲軽減のため,子宮単純縫合閉鎖術や子宮ドレナージ術も考慮すべき術式と考えられる.
  • 飯田 敦, 澤井 利次, 森川 充洋, 五井 孝憲, 片山 寛次, 山口 明夫
    2012 年 37 巻 6 号 p. 1208-1214
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    症例は16歳女性.運動中に心窩部痛で発症.胸腹部CTで左横隔膜背側をヘルニア門としたBochdalekヘルニアと診断した.全身麻酔下に腹腔鏡下ヘルニア修復術を行った.臍にスコープ用トロッカー,上腹部正中と左肋弓下に操作用トロッカーを留置し,ヘルニア内用を還納し,0-Ethibond Xcel糸を用い結節縫合で閉鎖し欠損部を修復した.術後X-Pで左肺の拡張と左横隔膜のシルエットを確認.翌日より離床し食事開始,術後7日目に治癒退院した.新生児期以外のBochdalekヘルニアは極めて稀であり,先天性の要因に加えて頭低位あるいは運動を契機に発症した報告が散見された.腹腔鏡下修復術を施行しえた報告は自験例が本邦4例目であった.診断にはCTが,治療には腹腔鏡下修復術が有用であった.ヘルニアに伴う合併症がない症例では腹腔鏡下修復術は良好な経過が得られ有用な治療法であると推察された.
  • 藤川 寛人, 利野 靖, 福永 哲, 山奥 公一朗, 稲垣 大輔, 佐藤 勉, 山田 六平, 湯川 寛夫, 大島 貴, 益田 宗孝
    2012 年 37 巻 6 号 p. 1215-1220
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    症例は66歳,女性.頻回の嘔吐により2カ月間で6kgの体重減少を認め当科に紹介となった.消化管造影検査,CTで胃体部から前庭部,横行結腸の一部が脱出した傍食道型裂孔ヘルニアを認め,腹腔鏡下手術を施行した.脱出した胃・横行結腸を腹腔内へ還納すると,食道胃接合部の右側に径6cmの食道裂孔によって形成されたヘルニア門を認めた.横隔膜右脚により形成されたヘルニア門を縫合閉鎖した後,吸収性メッシュを用いて補強を行った.術後経過は良好で,術後第2病日に食事を開始し,逆流症状はみられず第5病日に退院した.以上,胃および横行結腸の脱出を伴う傍食道型食道裂孔ヘルニアに対し,メッシュを用いた腹腔鏡下修復術が有効であった1例を経験したので報告する.
  • 澤崎 翔, 林 茂也, 土田 知史, 神 康之, 蓮尾 公篤, 湯川 寛夫, 利野 靖, 益田 宗孝
    2012 年 37 巻 6 号 p. 1221-1225
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    症例は61歳,男性.腹痛を主訴に来院した.腹部は膨満し,心窩部および左臍下部に圧痛を認め,腹部造影CTで小腸の拡張が著明であり腸閉塞の診断で入院となった.開腹手術や外傷の既往はなかった.イレウス管を挿入し保存的治療を開始.イレウス管造影で左下腹部小腸の狭窄像を認めた.保存的治療では改善がみられず,内ヘルニアの診断で入院18日目に手術を施行.腹腔鏡にて腹腔内を観察すると小腸が腸間膜内へと嵌入していた.腹腔鏡下では嵌入を解除できず,開腹すると回盲部より80cmの部位の小腸がS状結腸間膜左葉に嵌入していた.解除すると間膜に径2cm大の欠損部を認め,この欠損部を縫合閉鎖した.腸切除は不要であった.S状結腸間膜内ヘルニアは稀な疾患で内ヘルニア全体の5%に過ぎず術前診断に難渋することが多い.今回われわれは診断に腹腔鏡が有用であったS状結腸間膜内ヘルニアの1例を経験したので文献的考察とともに報告する.
  • 西條 文人, 徳村 弘実
    2012 年 37 巻 6 号 p. 1226-1230
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    症例は59歳,男性.右陰囊部腫大と疼痛を主訴に近医受診後,当院紹介となった.膀胱造影検査,腹部CT検査にて膀胱壁が陰囊まで達する鼠径ヘルニアと診断され,膨潤麻酔併用による腹腔鏡下経腹的腹膜前鼠径ヘルニア修復術(tTAPP)を施行した.内鼠径輪から滑脱した膀胱を認めたが,膀胱壁を切除することなく還納し,ポリプロピレンメッシュで鼠径床を被覆した.本手術は膨潤麻酔を腹膜前腔に注入することで層構造と解剖を理解しやすくし,またエピネフリンによる止血効果により良好な視野で手術が可能となり,膀胱損傷回避の面でも,安全な術式と考えられた.膀胱ヘルニア修復に対するtTAPP法は,正確な診断と治療として有効な術式と考えられた.
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