日本外科系連合学会誌
Online ISSN : 1882-9112
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38 巻, 1 号
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原著
  • 山岡 雄祐, 池永 雅一, 安井 昌義, 宮崎 道彦, 池田 正孝, 三嶋 秀行, 吉川 宣輝, 関本 貢嗣
    2013 年 38 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/28
    ジャーナル フリー
    【目的】当院での大腸癌手術症例の時代変遷について検討し近年の大腸癌の特徴を明らかにすることを目的とした.【対象と方法】1965年から2011年までに当院で施行した大腸癌手術症例4,887例を5つの年代に分け臨床病理学的因子,病期別の予後について検討した.【結果】最近20年間で手術症例の年齢中央値は10歳上昇しており,75歳以上の症例の割合は2000年代では20%以上を占め1990年代の2倍以上であった.1980年代より右側結腸癌が増加していた.1990年代では0型・M癌・Stage 0の症例の割合が増加していたが,2000年代では減少していた.Stage Ⅰ・Ⅱの予後は各年代でほぼ同様であったが,Stage Ⅲ・Ⅳでは2000年代の予後が他の年代と比較し良好であった.【結語】高齢化社会,検診の導入,全大腸内視鏡検査の普及,内視鏡的切除や化学療法の進歩を反映する結果と考えられた.
  • 筒井 信浩, 三澤 健之, 伊藤 隆介, 鈴木 文武, 後町 武志, 柴 浩明, 脇山 茂樹, 矢永 勝彦
    2013 年 38 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/28
    ジャーナル フリー
    【はじめに】当科における単孔式腹腔鏡下胆囊摘出術(TANKO胆摘)の手術成績や術後疼痛,器材コストを従来の腹腔鏡下胆囊摘出術(LC)と比較検討した.
    
【対象および方法】対象は,当科で施行したTANKO胆摘27例(TANKO群)とLC 127例(LC群).両群間で手術時間,周術期合併症,術後疼痛,術後在院日数,器材コストを比較した.術後疼痛の評価はNumeric Rating Scale(NRS)を使用した.
    
【結果】TANKO群の手術時間,術後在院日数は113.8±41.1分,3.4±1.8日で,術後疼痛を含めてLC群と有意差を認めなかった.周術期合併症は,TANKO群1例(3.7%),LC群2例(1.6%)で,有意差を認めなかった.器材コストは,TANKO胆摘が146,000円でLCに比較して40,800円高額であった.
    
【結論】TANKO胆摘は従来のLCと比較して整容性に優れ,手術成績も同等である.このため,器材コストを抑えることができれば,今後良性胆囊疾患に対する術式の選択肢の1つとなりうる可能性がある.
  • 高橋 祐輔, 岸本 浩史, 笹原 孝太郎, 吉福 清二郎, 沖 一匡
    2013 年 38 巻 1 号 p. 16-20
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/28
    ジャーナル フリー
    目的:非閉塞性腸間膜虚血症(Non occlusive mesenteric ischemia:以下NOMI)の臨床的特徴から,手術の絶対適応となる腸管全層壊死の早期発見の可能性について検討をした.対象および方法:2006年1月から2011年8月までに腹部造影CT検査および手術所見からNOMIと診断され腸管切除が施行された11例を対象とした.11例を病理組織学的に,腸管粘膜壊死群と腸管全層壊死群に分類し,それぞれ臨床検査所見,転帰などについて検討した.結果:平均年齢は78歳で11例中,在院死は1例であった.腸管全層壊死群は腹膜刺激症状を呈しやすく,血液検査上はCRP値が高値を示す傾向にあり,腸管全層壊死症例の早期発見の手がかりになりうると思われた.結語:NOMI11例について検討を行い,文献的考察を加えて報告した.
  • 太田 智之, 加納 宣康, 草薙 洋, 柳田 剛
    2013 年 38 巻 1 号 p. 21-26
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/28
    ジャーナル フリー
    緒言:2009年,日本ヘルニア学会分類:Japanese Hernia Society分類(以下,JHS分類)は新分類に改定され,普及が進みつつある.
    
対象と方法:鼠径部ヘルニア自験例366症例を対象とし,症例全体,性別,再発症例毎のJHS分類における各分類型の頻度を調査し,その結果を分析した.
    
結果:症例全体の各分類型の頻度はⅠ-1:13.1%,Ⅰ-2:48.4%,-3:10.7%,Ⅱ-1:6.8%,Ⅱ-2:
13.3%,Ⅱ-3:4.9%,Ⅲ:9.0%,Ⅳ:3.6%,Ⅴ:0%であった.Ⅰ-1は判定ミスを含み,想定より高頻度となった.再発症例ではⅡ-1,Ⅲが多く,女性症例では,Ⅲが4割を占めていた.
    
結論:Ⅰ-1は改定された内容を正確に理解する必要がある.Ⅰ型は全体の7割を占めていた.Ⅱ-1とⅢは再発予防の点から重要な分類である.特に女性症例は,Ⅲが高頻度であり,大腿輪の開大を必ず確認すべきである.
特集
  • 藤 也寸志
    2013 年 38 巻 1 号 p. 27-
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/28
    ジャーナル フリー
  • 北川 雄一
    2013 年 38 巻 1 号 p. 28-35
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/28
    ジャーナル フリー
    せん妄は,意識,認知機能,知覚,注意が障害される病態である.術後比較的早期に錯乱状態に陥った患者が,錯覚や幻覚を訴えたり,医療従事者や介護者の指示を理解できなかったりそれに従うことができないなどの症状があれば,せん妄と診断できる.しかし,傾眠や抑うつ状態と類似の症状を呈することもあるため,診断に注意が必要な場合がある.術前からの精神神経疾患の既往などがある場合には,より診断が困難となる可能性もある.客観的な診断を行い,せん妄の程度を評価するために各種のスケールなどが用いられる.発症頻度は4~87%と報告により様々である.発症には,疼痛や麻酔,各種薬物などが危険因子として挙げられている.
    
国立長寿医療研究センターでの調査では,80歳以上の待機手術患者での発症率は73.9%で,高齢,術前MMSE低値,術前JNCS低値,興奮・多動の既往が術後せん妄発症の危険因子であった.
  • 小坂 正明
    2013 年 38 巻 1 号 p. 36-44
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/28
    ジャーナル フリー
    褥瘡は「床ずれ」とも呼ばれ,手術とは無縁の浅いキズのような印象を受けやすいが,皮下組織を超える深い褥瘡は難治性である.潰瘍から体液が絶えず漏出し低タンパク血症や創感染を繰り返し,時には年余にわたり患者のQOLを傷害する.

    生体防御力が低下した高齢者では入院が長期化し,身体機能の廃用委縮を増悪させるなどの悪循環が懸念される.早く褥瘡を閉鎖して全身状態を改善させることは,早期社会復帰やQOL向上ばかりでなく看護・介護の省力化にもつながる.褥瘡原因の改善,薬物治療,創傷被覆材,体圧分散寝具などの保存的治療以外の選択肢に手術治療がある.
    
術式には様々な方法があり,とくに高齢者では個々の患者の状態や治療目的を考慮して侵襲の軽い手術を選択するが,治癒阻害因子を減らす工夫も治癒率向上につながる.
    
本論文では1998年から現在までに経験した仙骨部褥瘡手術125例を分析し,高齢者褥瘡手術の成績向上における様々な工夫を解説した.
  • 成宮 孝祐, 太田 正穂, 工藤 健司, 佐藤 拓哉, 白井 雄史, 井手 博子, 山本 雅一
    2013 年 38 巻 1 号 p. 45-50
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/28
    ジャーナル フリー
    (はじめに)高齢化社会の到来となり,高齢者の食道癌患者も増加している.食道癌に対する外科治療は従来,侵襲が高い手術であったが,近年では小開胸開腹手術や鏡視下手術の導入でより低侵襲な手術が行われ,手術成績も安定してきた.高齢者食道癌患者に対し,今後の治療方針を決定することを目的に,2006年以降に東京女子医科大学消化器病センターで経験した高齢者食道癌手術施行例について検討した.
    
(対象)2006年から2011年に当施設で手術を施行した食道癌226例中,75歳以上の高齢者食道癌33例(14.6%,高齢者群)と75歳未満の193例(85.4%,非高齢者群)を比較検討した.
    
(結果)術前の併存疾患は,高齢者群では呼吸機能異常,心疾患,脳血管障害を高率に認めた.高齢者群では,食道癌手術以前の重複癌の頻度は24.2%と高率で,主病巣の深達度はT1+T2が51.6%占め,占拠部位は下部食道の割合が72.7%で,左開胸や開腹によるアプローチが有意に多かった.手術成績は,術後累積生存率は両群間に有意差はなかった.
    
(考察)今回の検討では,小開胸開腹手術や鏡視下手術など低侵襲手術の導入により75歳以上の高齢者に対しても手術適応の拡大が示唆され,しかも非高齢者と遜色のない治療成績が得られた.しかし,非高齢者と同レベルの手術適応までは到達できておらず,今後も術前の併存疾患の評価,再建臓器の重複癌の有無を正確に診断した後に手術適応を決めることが重要と思われる.そして,手術の精度を落とさない低侵襲術式の選択と術後の患者のquality of lifeを確保できる家庭環境の整備が必要と考える.
  • 前原 伸一郎, 池田 泰治, 大垣 吉平, 南 一仁, 坂口 善久
    2013 年 38 巻 1 号 p. 51-55
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/28
    ジャーナル フリー
    2006年1月から2011年12月に当院で施行した肝細胞癌切除91例中,80歳以上の10例(高齢者群)について,背景因子,手術因子,術後合併症などを80歳未満の81例(非高齢者群)と比較検討した.高齢者群の平均年齢は81.2歳,術前肝機能は全例肝障害度Aと良好であった.ウイルス感染は非B非C型肝炎4例,B型肝炎2例,C型肝炎4例であり,他臓器悪性腫瘍の合併(同時性,異時性を含む)を4例に認めた.術式は部分切除4例,亜区域切除4例,2区域切除2例で,全例根治切除が施行された.術後合併症はせん妄2例,胸水・腹水3例,胆汁漏1例であったが,全て保存的に治療可能で,術死,在院死はなく,平均在院日数は23.8日であった.術後経過は非高齢者群との有意差は認めなかった.80歳以上の高齢者肝細胞癌に対して,適切な術前評価と手術により安全に根治切除が可能と考えられる.
  • 梶山 潔, 播本 憲史, 永田 茂行, 平山 佳愛, 中ノ子 智徳, 由茅 隆文, 吉田 倫太郎, 西田 康二郎, 古賀 聡, 甲斐 正徳
    2013 年 38 巻 1 号 p. 56-61
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/28
    ジャーナル フリー
    目的:80歳以上の高齢者に対する膵頭十二指腸切除術(Pancreaticoduodenectomy;PD)の早期退院に関与する因子を検討した.対象・方法:PDを施行した80歳以上の高齢者12例に対し,年齢,性,診断,手術術式,膵消化管再建法,膵管ドレナージ法,手術時間,出血量,PD経験豊富な外科医の関与,膵液瘻,胃内容排泄遅延,創感染,術前併存症,術後合併症,経腸(経管)栄養などの有無,術後在院日数,在院死亡を解析した.また術後30日以内に退院した短期入院群と術後31日以降に退院した長期入院群に分け,比較検討した.結果:早期退院群では,PD経験豊富な外科医の関与が有意に多く,Grade B/Cの膵液瘻が有意に少なかった.膵管ドレナージ法では,膵管ロストステントの有用性が示唆された.結語:80歳以上の高齢者に対するPDにおいては,PD経験豊富な外科医の関与が術後膵液瘻を減少させ,結果的に早期退院に寄与する可能性があると思われた.
臨床経験
  • 利野 靖, 湯川 寛夫, 山田 六平, 佐藤 勉, 稲垣 大輔, 藤川 寛人, 長谷川 慎一, 大島 貴, 吉川 貴己, 益田 宗孝, 今田 ...
    2013 年 38 巻 1 号 p. 62-66
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/28
    ジャーナル フリー
    【目的】十全大補湯は病後の疲労倦怠,食欲不振,貧血に処方される漢方薬の一つである.再発胃癌の抗癌剤治療中の白血球減少,貧血,食思不振に悩んでいた症例に十全大補湯を処方したところ改善した症例を経験した.そこで胃癌の診断で抗癌剤治療を施行した症例で十全大補湯を処方した症例をretrospectiveに解析し,抗癌剤の副作用の発現率を検討することとした.
    
【対象と方法】進行再発胃癌の診断で抗癌剤治療を施行した症例で31例に十全大補湯を処方した.抗癌剤の副作用発現と,十全大補湯の副作用について検討した.
    
【結果】十全大補湯が不味くて飲めない症例が1例.17例の血液毒性では,11例(64.7%)でGradeの低下がみられ,有効と判定した.10例の非血液毒性(食思不振,倦怠感など)では,7例(70.0%)で効果がみられた.

    【結語】抗癌剤治療の副作用に十全大補湯は有効であることが考えられた.
  • 山本 訓史, 塚本 忠司, 金沢 景繁, 清水 貞利, 櫻井 克宣, 高台 真太郎
    2013 年 38 巻 1 号 p. 67-74
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/28
    ジャーナル フリー
    【目的】肝両葉に存在する複数個の肝癌に対しての開腹術は単発の時に比べ更に大きな皮切を要することが多い.われわれは両葉多発の肝腫瘍に対し腹腔鏡下手術をベースに他の肝切除術を併用するコンビネーション肝切除術を行っているので報告する.
    【症例】同時性に両葉に発生した肝細胞癌3例を対象とした.それぞれ完全腹腔鏡下肝切除+開胸開腹下肝切除,完全腹腔鏡下肝切除+用手補助腹腔鏡下肝切除,腹腔鏡補助下肝切除+小切開下肝切除を予定した.
    【結果】3例とも予定通り安全に手術を完了し術後合併症もなくそれぞれ術後14,5,7日目に退院許可となった.
    【結語】腫瘍が肝両葉に複数個存在した場合,腹腔鏡下肝切除術を念頭に個々の腫瘍へのアプローチを考え,すべてを完全腹腔鏡下に切除しえない場合,他のアプローチとのコンビネーションで低侵襲な手術を行いうると考えられた.
症例報告
  • Tomoharu Shimizu, Toru Obata, Hiromichi Sonoda, Hiroya Akabori, Tohru ...
    2013 年 38 巻 1 号 p. 75-79
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/28
    ジャーナル フリー
    We report two cases of septic shock in which plasma endotoxins were detected by a novel endotoxin detection method, named endotoxin scattering photometry (ESP) method. Case1: An 85-year-old female was diagnosed with peritonitis caused by sigmoid colon perforation. The patient presented with septic shock after Hartmann’s procedure. Reduction in the elevated endotoxin levels was observed accompanied with the improvement of hemodynamic condition by standard treatment. A temporal elevation of endotoxin at POD3 was observed by ESP but not by turbidimetric method, relating with a decreased blood pressure and requirement of catecholamine. Case2: Since a 73-year-old man with necrotic pancreatitis presented with septic shock, a direct hemoperfusion with a polymyxin B-immobilized fiber column (PMX) was employed. Plasma endotoxins measured by ESP method were markedly reduced by PMX. This reduction of endotoxin measured by ESP method but not by turbidimetric method was related with the improvement of hemodynamic condition. In conclusion, since the alteration in plasma endotoxin measured by ESP method could be in parallel with the improvement of patient’s condition, ESP method may be able to sensitively evaluate endotoxins than the widely used ordinary turbidimetric method. Further study needed to clarify the diagnostic significance of ESP method.
  • 矢島 浩, 高橋 直人, 河原 秀次郎, 柳澤 暁, 小村 伸朗, 矢永 勝彦
    2013 年 38 巻 1 号 p. 80-83
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/28
    ジャーナル フリー
    症例は30歳代男性.19歳時に松果体部腫瘍とそれに伴う水頭症に対し,脳室腹腔(VP)シャント術および化学放射線療法を施行され,再発はなかった.平成22年2月意識障害と歩行障害が出現し近医を受診,頭部CTで水頭症と診断され,当院脳神経外科を紹介された.頭部単純X線検査でVPシャントカテーテルの断裂を認め,腹部単純X線検査と腹部CTでVPシャントカテーテルが断裂し,腹腔内に迷入していたため,摘出目的で当科紹介となり,単孔式腹腔鏡下手術によるVPシャントカテーテル摘出術を施行した.本症例のような場合,単孔式腹腔鏡下手術は低侵襲で有用性が高いと考えられた.
  • 山片 重人, 西村 重彦, 野田 諭, 加藤 幸裕, 中澤 一憲, 妙中 直之
    2013 年 38 巻 1 号 p. 84-89
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/28
    ジャーナル フリー
    悪性腫瘍にネフローゼ症候群は稀ながら合併するが,乳癌での報告例は極めて少ない.今回われわれは,ネフローゼ症候群と診断された後,全身検索で乳癌が発見された2症例を経験したので文献的考察を加えて報告する.症例1:46歳女性.健診で蛋白尿と高脂血症を指摘され,腎生検にて膜性腎症と診断された.右乳房に16mm大の腫瘍を認め,細胞診で乳癌と診断した.乳房温存術と腋窩郭清の後,ホルモン療法を施行した.2年後に膜性腎症は寛解し,9年無再発生存している.症例2:53歳女性.主訴は両下腿浮腫.蛋白尿,低アルブミン血症,高脂血症を認め,腎生検で膜性腎症と診断された.右乳房に8mm大の腫瘍を認め,細胞診で乳癌と診断した.乳房切除術と腋窩郭清を施行し,リンパ節転移を認めたため,化学療法とホルモン療法を施行した.術後1年5カ月で骨転移をきたし,その4カ月後に永眠された.経過中に膜性腎症が改善することはなかった.
  • 三塚 裕介, 高山 忠利, 窪田 信行, 山崎 慎太郎, 大久保 力, 間遠 一成, 神野 大乗, 小林 槇雄
    2013 年 38 巻 1 号 p. 90-94
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/28
    ジャーナル フリー
    胃癌のリンパ節転移経路には固有の経路があると報告されている.跳躍転移は経路のいずれかを欠く不連続な転移とされ,特に胃癌では稀である.個数を主体とした胃癌取扱い規約への変更となったが,跳躍転移の表現は変わらず難しいままである.症例は68歳女性.上部消化管内視鏡で胃噴門部に1型腫瘍を認め,高分化型腺癌と診断された.CT,Positron emission tomographyで胃癌の大動脈周囲リンパ節転移が示唆された.易出血性の腫瘍であったため胃全摘出術を選択し,大動脈周囲腫瘤は生検のみ施行した.所属リンパ節全てに転移を認めず(0/14),No.16b1のみの跳躍転移と診断された.規約14版の変更に伴い本症例の跳躍転移は大動脈周囲のみの転移(M1)でありT2(MP),N0,M1(LYM)となる.
    
この様な病態の跳躍転移の予後に対する報告は少なく症例を集積して検討する必要がある.
  • 長谷川 慎一郎, 森本 芳和, 弓場 健義, 藤井 眞, 赤丸 佑介, 山崎 芳郎
    2013 年 38 巻 1 号 p. 95-99
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/28
    ジャーナル フリー
    症例は52歳,女性.主訴は腹部膨満感,嘔気.上部消化管内視鏡検査にて十二指腸球部全体を占める隆起性病変を認め,生検結果はGroup Ⅳであった.病変からVater乳頭部までの距離は約4cmであり,超音波内視鏡にて深達度は粘膜内と判断した.以上から十二指腸球部癌と診断,内視鏡的完全切除は困難と判断し,外科的切除を行う方針とした.早期癌であり膵頭十二指腸切除術を回避し根治性を保持した縮小手術を考慮した.則ち,幽門側胃切除および十二指腸部分切除を施行した.Vater乳頭の機能的温存を図るため,胆囊管より胆道チューブを挿入し色素注入にて直視下にVater乳頭を同定し,術中胆道造影にて乳頭部への流出が良好であることを確認した.さらに減圧目的に胆道チューブを留置し,十二指腸断端の補強目的に大網を被覆した.病理組織学的所見では腺腫内に一部高分化腺癌を認め,UICCの分類に準ずると,T1N0M0,Stage Ⅰであった.術後3年6カ月が経過し,現在無再発生存中である.
  • 中山 真緒, 吉松 和彦, 横溝 肇, 大谷 泰介, 大澤 岳史, 藤本 崇司, 松本 敦夫, 矢野 有紀, 成高 義彦, 小川 健治
    2013 年 38 巻 1 号 p. 100-103
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/28
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,過去の虫垂炎手術創からの排膿を契機に診断した腹壁浸潤盲腸癌の1例を経験したので報告する.症例は83歳,女性.17歳時に虫垂切除術の既往がある.虫垂炎手術創の疼痛,排膿を主訴に受診,外来で創処置を施行していたがイレウスで入院した.腹部CT検査で回盲部に約50mm大の腫瘤を認め,腫瘤は手術創に一致する皮膚に連続していた.大腸内視鏡検査で盲腸に全周性の2型腫瘍を認め,生検で腺癌と診断された.以上より,腹壁浸潤を伴う盲腸癌と診断し,結腸右半切除術および腹壁合併切除術を施行した.最終診断はtub1,SI(腹壁),ly0,v0,N0,H0,P0,M0,P0,fStage ZⅡ,pCurAであった.術後5年経過した現在,無再発生存中である.大腸癌が過去の手術創に浸潤し,同部からの排膿が初発症状となることは稀と考えられる.
  • 湯川 寛夫, 利野 靖, 玉川 洋, 佐藤 勉, 菅野 伸洋, 稲垣 大輔, 藤川 寛人, 山奥 公一朗, 大島 貴, 益田 宗孝
    2013 年 38 巻 1 号 p. 104-110
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/28
    ジャーナル フリー
    症例は68歳男性.上行結腸癌,肝転移に対し右半結腸切除術,胆囊摘出術,肝部分切除術,十二指腸部分切除術を施行.病理は2型,tub2,pSi(十二指腸),ly0,v1,pN1,pH1,sP0,cM0,fStage Ⅳであった.初回手術後3年のCTで膵頭部リンパ節再発出現,FOLFIRI療法を開始した.8回施行後のCTで腫瘍の増大はなかったが腫瘍マーカーが再上昇したため,mFOLFOX6に変更.その後計4回施行するも腫瘍マーカー上昇し,CTで増大がみられたため,初回術後3年9カ月で膵頭部リンパ節切除術を施行.病理は高分化腺癌,viableで抗癌剤の効果は認められず断端陽性が疑われた.初回術後4年のCTで膵頭部に転移再燃したため,同部に化学放射線療法開始.転移はやや縮小し腫瘍マーカーも減少したが,やがてCTで増大,腫瘍マーカーも上昇した.根治切除を目的に初回術後4年6カ月で膵頭十二指腸切除術を施行した.病理検査では膵頭部に腫瘍を認め,大腸癌からの転移と診断した.術後補助化学療法としてUFT+ユーゼル+クレスチンを1年2カ月施行し,最終切除より2年10カ月経過し再発を認めていない.
  • 湯川 寛夫, 利野 靖, 玉川 洋, 佐藤 勉, 山本 直人, 長谷川 慎一, 藤川 寛人, 大島 貴, 吉川 貴己, 益田 宗孝
    2013 年 38 巻 1 号 p. 111-116
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/28
    ジャーナル フリー
    症例は73歳男性.2009年8月右結腸切除術D3施行.病理所見ではA,Circ.,tub2,pType2,pSE,ly0,v2,pN2(計16/45個),sH0,sP0,cy0,cM0.EGFR(+),K-ras変異なし.補助化学療法としてmFOLFOX6を計8回施行.2010年5月CT,6月USにて肝S5転移が出現.本人希望もあり同年7月消化器内科に依頼しRFA施行.2011年5月CTで肝転移再燃確認(径6cm大),CEAも上昇.同年6月よりmFOLFIRI+パニツムマブ開始.4回終了時のCTでPRとなり,8回終了時のCTでさらに縮小しCEAも3.4と正常化した.2011年11月肝S5亜区域切除術を施行.切除断端は肝右葉前区域枝に近接していた.術後経過は順調で,退院後同レジメンを6回追加投与し現在まで外来通院中である.

    K-ras変異のない再発大腸癌に対しパニツムマブを含む療法は有効と思われ,特に肝転移については投与後の肝切除率を向上させる可能性が示唆された.
  • 宗像 慎也, 河合 雅也, 嵩原 一裕, 杉本 起一, 小見山 博光, 小島 豊, 五藤 倫敏, 冨木 裕一, 坂本 一博, 齋藤 剛
    2013 年 38 巻 1 号 p. 117-123
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/28
    ジャーナル フリー
    比較的稀な大腸腺扁平上皮癌の症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
    症例は51歳,男性.血便,便秘を主訴に受診した.大腸内視鏡検査を施行し,2型のS状結腸癌を認め,生検の結果は高分化管状腺癌であった.精査の結果,S状結腸癌,多発性肝転移と診断した.S状結腸は主病巣による狭窄が強く通過障害を呈していたため,S状結腸切除術を施行した.病理組織診断では腺扁平上皮癌の診断であった.術後化学療法を施行したが,肝転移の増大を認め,術後35病日に癌死した.
  • 斉田 芳久, 榎本 俊行, 髙林 一浩, 大辻 絢子, 高橋 亜紗子, 中村 陽一, 片桐 美和, 長尾 さやか, 長尾 二郎, 草地 信也
    2013 年 38 巻 1 号 p. 124-128
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/28
    ジャーナル フリー
    直腸癌術後の縫合不全が再燃し難治性な症例に対して新しい内視鏡治療機器OTSC®(Over the Scope Clip)systemにより瘻孔を閉鎖しえた1例を経験した.70歳代男性,2年前に発症した縫合不全瘻孔部の閉鎖傾向が悪いため,内視鏡的・透視下にOTSC® systemにて瘻孔部の閉鎖を行った.瘻孔閉鎖翌日に38℃の発熱を認めたが一日で解熱,その後は炎症所見なく,骨盤CTでも膿瘍は消失した.留置後5カ月目の現在膿瘍腔の再燃は認めていない.直腸癌術後の縫合不全瘻孔部位は炎症のための線維化で肥厚化し従来の金属クリップでは閉鎖困難である.新しい瘻孔閉鎖用のOTSC®では内視鏡の口径以上の大きさのクリップを,瘻孔部に留置することが可能であり難治性の縫合不全部でも閉鎖が可能であった.2011年から保険適用され,今後の縫合不全の治療の新しい治療選択として有用である.
  • 太田 智之, 加納 宣康, 草薙 洋
    2013 年 38 巻 1 号 p. 129-134
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/28
    ジャーナル フリー
    症例は30歳代男性.腸閉塞の診断で入院となった.腸閉塞で3回の入院歴があるが,開腹歴はない.long tubeを留置し,保存的加療で改善した.繰り返す腸閉塞の原因精査のために,小腸内視鏡検査を施行した.回腸に狭窄部位を認めたが,粘膜面には異常はなく,内視鏡の通過は可能であった.狭窄の原因が不明であったため,診断と治療の目的で,腹腔鏡下手術を施行した.回腸末端から約150cmの小腸にMeckel憩室が存在し,後腹膜と腸間膜に癒着していたことから,Meckel憩室の炎症性癒着による腸閉塞と診断した.Meckel憩室を含めた小腸部分切除術を小開腹下に施行した.術後経過は良好であり,その後腸閉塞の再発は認めていない.繰り返す腸閉塞症例ではMeckel憩室も鑑別におくべきであり,本疾患に対して,腹腔鏡下手術は有用である.
  • 吉井 真美, 竹村 哲, 道上 慎也, 由井 三郎
    2013 年 38 巻 1 号 p. 135-139
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/28
    ジャーナル フリー
    症例は51歳の男性で,平成21年5月,就寝中に突然の腹痛が出現し,増悪するため当院を受診した.臍部中心に圧痛があり,反跳痛および筋性防御を著明に認めた.CT上,遊離ガス像や液体貯留は認めなかったが,腹部所見から汎発性腹膜炎と診断し,同日緊急手術を施行した.腹腔内には膿性腹水が貯留し,回盲部から約70cm口側の腸間膜付着反対側に約8cm大の憩室を認めた.憩室先端に母指頭大の腫瘤様病変を認め,その表面に膿苔が付着し,同部位に数条の小腸が癒着していた.Meckel憩室炎微小穿孔による汎発性腹膜炎と診断し,Meckel憩室切除術を施行した.Meckel憩室は,腸閉塞,憩室炎,出血,穿孔などが生じると,急性腹症として緊急を要することがある.今回われわれは,比較的稀なMeckel憩室炎微小穿孔により汎発性腹膜炎を生じた1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
  • 安西 紘幸, 丸山 常彦, 永井 雄三, 酒向 晃弘, 上田 和光, 奥村 稔
    2013 年 38 巻 1 号 p. 140-143
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/28
    ジャーナル フリー
    今回われわれは急性腹症にて発症した回腸脂肪腫に対して単孔式腹腔鏡下腫瘍切除術を施行した症例を経験したので報告する.症例は24歳,男性.右下腹部痛を主訴に救急外来を受診し,腹部CTで回腸終末部に近い回腸に23mm大の脂肪腫を認めた.下部消化管内視鏡検査を施行し,回腸の脂肪腫が上行結腸内に逸脱した腫瘤を認めたため,内視鏡下に回腸側への整復を行った.腹痛の原因と考えられたことと,腸重積をきたす可能性があると考え腫瘍切除の適応と診断した.内視鏡的切除が困難であり,待機的に外科的腫瘍切除術の方針とした.良性腫瘍であり,若年者発症であることから単孔式腹腔鏡下に腫瘍切除術を施行した.単孔式腹腔鏡手術は低侵襲性と整容性に優れており,若年者の良性腫瘍に対しては,最も適した手術法と考えられた.
  • 山本 隆嗣, 倉島 夕紀子, 大畑 和則, 橋場 亮弥, 田中 肖吾, 石原 寛治, 上西 崇弘
    2013 年 38 巻 1 号 p. 144-151
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/28
    ジャーナル フリー
    症例は60歳,女性.数年前より多発肝囊胞を経過観察されていたが,突然の腹痛で来院した.来院時血液検査はWBC:23,680/μL,Ht:34.8%,Hb:12.1g/dL,CRP:8.7mg/dL,T-bil:2.0mg/dL,CEA:1.1ng/mL,CA19-9:4,028ng/mLで,CTで肝右葉後区域の直径15cmの囊胞に出血を認めた.肝動脈右後下枝を塞栓後,経皮経肝ドレナージで血性の囊胞液を排出した.画像検査上,いずれも単純囊胞で,内腔に結節性病変は認めなかった.外科的な血管処理と囊胞の確定診断が必要と判断,腹腔鏡下囊胞天蓋切除術を施行,画像上の出血部と一致する血餅の付着する隔壁を凝固焼灼した.囊胞液のCEAは209ng/mL,CA19-9は76,205ng/mLで,細胞診は陰性,隔壁は結合組織の増生で,囊胞壁は異型のない単層円柱上皮の病理診断であった.出血をきたす肝囊胞のほとんどは炎症や膿瘍の囊胞化や,囊胞腺腫や腺癌で,単純性囊胞は稀である.そのため出血性囊胞は切除を考慮すべきであるが,自験例の様な場合,経過や検査・画像を熟慮し,低侵襲な治療も模索すべきであると考えられた.
  • 斉藤 良太, 島田 淳一, 北村 博顕, 田辺 義明, 遠山 洋一, 柳澤 暁, 小林 進, 矢永 勝彦
    2013 年 38 巻 1 号 p. 152-158
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/28
    ジャーナル フリー
    先天性胆道拡張症に対する分流手術後に併発した肝内結石に対する肝切除3例を経験した.症例1は62歳男性で,分流手術後2年で肝内結石を併発し,除石術を施行した.16年後に左葉型の肝内結石を再発し,肝左葉切除を施行した.症例2は32歳女性で,胆道拡張症に対する内廔術後20年で肝内結石を併発し,分流手術を施行した.9年後に左葉型の肝内結石を再発し,肝外側区域切除を施行した.症例3は56歳男性で,分流手術後10年で肝内結石を併発し,除石術を施行した.12年後に両葉型の肝内結石の再発および肝内胆管癌併発にて,拡大肝右葉切除を施行した.3症例ともに肝内胆管拡張を伴う充満結石を認め,肝切除の適応であった.先天性胆道拡張症に対する分流手術後に発生する肝内結石は再発を繰り返し,また胆道癌発生の要因となるため慎重な経過観察が必要である.分流手術後に再発する肝内結石では,肝切除による結石除去が有効である.
  • 児玉 肇, 渡邉 学, 浅井 浩司, 松清 大, 齋藤 智明, 萩原 令彦, 長尾 二郎, 横内 幸, 高橋 啓, 草地 信也
    2013 年 38 巻 1 号 p. 159-163
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/28
    ジャーナル フリー
    悪性腫瘍の臍転移はSister Mary Josephʼs nodule(SMJN)と呼ばれ,比較的稀な転移である.今回われわれはSMJNを契機に発見された膵癌の1例を経験したので報告する.
    
症例は70歳代の女性.2カ月前からの臍部の発赤,腫脹を主訴に当科外来を受診した.当初は臍炎の診断のもとに外来経過観察を行っていたが,症状の寛解・増悪を繰り返し,20mm大の有痛性腫瘤を認めるようになった.腫瘍マーカーの上昇を認めたことから,腹部造影CT検査を施行したところ,膵体尾部に40mm大の腫瘍性病変を認めた.臍部にも20mm大の腫瘤を認め,生検で腺癌と診断され,膵体尾部癌の臍転移と診断した.根治術は不可能で,S-1による化学療法を開始し,10カ月間継続したが徐々に全身状態悪化し,初診から12カ月後に永眠された.
  • 大中臣 康子, 佐藤 勉, 利野 靖, 稲垣 大輔, 菅野 伸洋, 山田 六平, 大島 貴, 湯川 寛夫, 今田 敏夫, 益田 宗孝
    2013 年 38 巻 1 号 p. 164-168
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/28
    ジャーナル フリー
    1998年7月左腎癌の診断で,左腎摘出術(淡明細胞腎癌,pT1bN0M0)施行.2006年2月右肺転移(2病変)出現.胸腔鏡下肺部分切除施行.2006年6月両肺に多発転移が出現し,インターフェロン療法開始.2006年10月に膵腫瘍が出現.腫瘍増大傾向のため転移と考え,2008年5月ソラフェニブを導入.2008年1月CTにてS状結腸の腫瘍指摘.下部消化管内視鏡で直腸S状部に粘膜下腫瘍.狭窄,出血なく経過観察.2010年2月脳転移出現,γ-ナイフ施行.2010年3月血便.下部消化管内視鏡にて粘膜下腫瘍の増大.他の転移巣は病勢のコントロールが出来ているため,出血コントロール目的で,2010年5月腹腔鏡補助下直腸高位前方切除術施行.病理組織学結果は,淡明細胞癌であり,直腸S状部転移と診断.術後39病日からソラフェニブ内服を再開し,術後1年経過した現在も再燃なく外来通院中.
  • 石井 佳子, 吉松 和彦, 横溝 肇, 大谷 泰介, 大澤 岳史, 松本 敦夫, 中山 真緒, 成高 義彦
    2013 年 38 巻 1 号 p. 169-173
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/28
    ジャーナル フリー
    創感染やストーマ後壁の陥没でストーマ管理が困難となった症例に対し,医師と認定看護師の協働でストーマサイトマーキングを行い,それに基づきストーマを再造設して良好な結果を得たので報告する.
    症例は70歳,女性.当院産婦人科で両側卵巣癌に対する手術後,直腸穿孔による汎発性腹膜炎を併発して横行結腸ループストーマを造設した.手術部位感染により正中創が哆開,ストーマ管理,排便管理困難の状態に陥った.様々な処置を行ったが改善がみられず,ストーマ再造設を検討した.現在のストーマの中心から1.5cm外側として正中創から3cm以上離し,腸骨からの距離も考慮して,医師と認定看護師の協働でストーマサイトマーキングを行った.術式は単孔式ストーマ造設術とした.肛門側腸管は閉鎖し,マーキングに基づき正中創より3.5cm外側に高さのある円形のストーマを造設した.術後は正中創とストーマの管理が別々にできるようになり,ストーマ管理が良好となった.
  • Makiko Sakata, Takehiro Umemoto, Tetsuhiro Goto, Gaku Kigawa, Hiroshi ...
    2013 年 38 巻 1 号 p. 174-177
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/28
    ジャーナル フリー
    We report 65-year-old woman with a tumor in the rectal wall. Seven years ago, she was operated on for stage Ia endometrial adenocarcinoma. In spite of a CT-guided biopsy, we could not diagnose whether the tumor was primary or metastatic. We performed the surgical operation to diagnose and remove the rectal tumor. The surgically removed rectal tumor was examined by an expert pathologist. It would be the most probable that the rectal tumor was derived from the endometrial adenocarcinoma of uterus. We discuss how does it relapse. We considered that the rectal tumor might be the result of perioperative implantation.
  • 豊田 翔, 市川 剛, 今川 敦夫, 山本 昌明, 小川 雅生, 出村 公一, 山﨑 圭一, 川崎 誠康, 堀井 勝彦, 亀山 雅男
    2013 年 38 巻 1 号 p. 178-183
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/28
    ジャーナル フリー
    症例1:35歳の女性で,左下腹部痛を主訴に当院を受診した.腹部CT像上,S状結腸間膜関連の内ヘルニアによる絞扼性イレウスと診断し発症から14時間で緊急手術を施行した.術中所見で内容を回腸としたS状結腸間膜窩ヘルニアと診断した.嵌頓腸管は腹腔鏡下に整復可能であり,壊死所見を認めなかったためヘルニア門の縫合閉鎖のみを施行した.

    症例2:37歳の男性で,左下腹部痛を主訴に当院を受診した.腹部CT像上,S状結腸間膜窩ヘルニアと診断し,発症から10時間で緊急手術を施行した.S状結腸間膜窩に回腸が約75cm嵌頓していたが,壊死所見を認めなかったため同様にヘルニア門の縫合閉鎖のみを施行した.
    
本症は発症から長時間を経過していても腸管壊死を認めないことも多く,ヘルニア門の閉鎖のみで治癒する症例が多いことを考慮すると鏡視下手術の良い適応疾患であると考えられた.
  • 鳥越 貴行, 沢津橋 佑典, 荒瀬 光一, 上原 智仁, 山口 幸二
    2013 年 38 巻 1 号 p. 184-189
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/28
    ジャーナル フリー
    絞扼性イレウスをきたした子宮広間膜裂孔ヘルニアに対してreduced port surgery(以下RPS)を施行した1例を報告する.症例は40歳,女性.夕食後に突然の下腹部痛および嘔吐が出現し,当院に緊急入院となった.腹部CT検査にて骨盤内に拡張した小腸ループと子宮の腹側への圧排・右側偏位を認めた.左子宮広間膜裂孔ヘルニアの診断でRPSを施行した.異常裂孔に回腸が陥頓し,腸管壊死をきたしていた.回腸部分切除と異常裂孔の縫合閉鎖を行い,手術を終了した.より低侵襲で,美容上優れたRPSは本症に対して有用な術式であると考えられた.
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