日本外科系連合学会誌
Online ISSN : 1882-9112
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38 巻, 2 号
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原著
  • 小林 照忠, 中川 国利, 月館 久勝, 遠藤 公人, 鈴木 幸正
    2013 年 38 巻 2 号 p. 197-202
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
    目的:腹腔鏡下虫垂切除術(Laparoscopic appen-dectomy:以下,LA)の有用性について検証した.方法:当科で手術を施行したLA 154例,開腹虫垂切除術(Open appendectomy:以下,OA)86例を,病理組織学的所見による炎症程度に基づいてカタル性,蜂窩織炎性,壊疽性に分類し,臨床的事項について比較検討した.結果:LAとOAでは手術時間に差はなかったが,術後合併症,特に創感染はLAがOAに比べて有意に低率であった.特に壊疽性では,その傾向が顕著であり,術後の絶食期間や在院期間もLAで有意に短縮していた.結語:LAはOAに対して,壊疽性のような高度炎症例においても術後合併症が有意に少なく,急性虫垂炎に対するLAの有用性が示唆された.
特集
  • 木村 真樹, 關野 考史, 荒川 信一郎, 小椋 弘樹, 東 敏弥, 關野 誠史郎, 名知 祥, 村瀬 勝俊, 竹村 博文
    2013 年 38 巻 2 号 p. 203-208
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
    はじめに:高齢者に対して膵頭十二指腸切除術は施行されるが安全性は証明されていない.目的:高齢者に対する膵頭十二指腸切除術の安全性を検討する.対象と方法:2007年3月から2011年10月までに膵頭十二指腸切除術を施行した27例を対象とした.75歳以上の9例をO群,74歳以下の18例をY群とし,両群の手術および周術期の成績を比較検討した.結果:両群で手術時間と出血量に有意差はなく,術前の白血球数,CRP値,リンパ球数,アルブミン値に有意差はなかった.O群でFFPが有意に多く使用されていた(p<0.05).膵液瘻やDGEを含む術後合併症の発症頻度に有意差はなかった.O群の術後アルブミン値は14日目にY群より有意に低値であった(p<0.05).O群の術後体温は7日目にY群より有意に高値であった(p<0.05).術後にはじめて排ガスと排便を認めた日に有意差はなかった.結論:O群はY群より術後栄養状態や炎症所見の回復が遅れる傾向はあるが,手術成績や合併症の発症率に差はなく高齢者に対する膵頭十二指腸切除術は安全であった.
  • 五嶋 孝博, 津田 祐輔, 池上 政周, 山川 聖史, 穂積 高弘, 福田 由美子, 加藤 生真, 元井 亨
    2013 年 38 巻 2 号 p. 209-217
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
    高齢者人口が増加し,高齢者の悪性骨軟部腫瘍が増加している.本稿では,高齢患者における治療成績向上のために筆者らが行っている工夫を紹介する.治癒が期待できる場合は根治性が最も重要であり,治癒的広範切除を行う.ただし,広範切除が高齢者にとって侵襲が大きすぎる場合には縮小手術を行い,補助療法として術中または術後の放射線照射や光線力学療法を併用している.手術の代わりに重粒子線療法を行うこともある.原発性腫瘍では全身状態を考慮しながら補助化学療法を行うことが多い.治癒が期待できない場合は,ADLやQOLの改善が最重要目標である.この代表が転移性骨腫瘍である.多くは病的骨折を生じるが,長管骨の病的骨折では内固定術でADLの改善を図り,放射線照射を行うことが多い.高齢者では,術後のADL低下が重大な問題で,リハビリテーションの早期開始が重要である.
  • 辻田 英司, 前田 貴司, 武石 一樹, 中島 雄一郎, 郡谷 篤史, 吉永 敬士, 松山 歩, 濱武 基陽, 筒井 信一, 松田 裕之, ...
    2013 年 38 巻 2 号 p. 218-223
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
    【目的】80歳以上の高齢者肝細胞癌患者に対する肝治癒切除の治療成績を検討.【対象】1989年3月より2012年8月までに肝治癒切除を施行した初発/再発肝細胞癌患者845例.【方法】対象を高齢者群(80歳以上,n=59)と若年者群(79歳以下,n=786)に分け,臨床病理学的因子,手術因子,術後合併症,長期予後を比較した.【結果】高齢者群では高血圧,心疾患の有病率が有意に高く,栄養学的リスクもみられた.手術因子では赤血球輸血率が有意に低く,術後合併症はせん妄が有意に多かった.術後在院日数は両群間に差はなかった.長期予後は初発例,再発例の5年累積生存率,5年無再発生存率とも両群間に差はなかった.【まとめ】80歳以上の高齢者肝細胞癌についても,79歳以下と同等の長期予後が得られた.ただし,術前併存疾患の適正な評価,栄養学的リスクや術後せん妄への対策を中心とした周術期管理が重要と考えられた.
  • 海堀 昌樹, 松井 康輔, 石崎 守彦, 坂口 達馬, 松島 英之, 菱川 秀彦, 中竹 利知, 津田 匠, 福井 淳一, 松井 陽一, 權 ...
    2013 年 38 巻 2 号 p. 224-231
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
    はじめに:肝細胞癌の発症年齢は徐々に増加しており,今後高齢者の手術症例の増加が推察される.当科における高齢者(75歳以上)および超高齢者(80歳以上)肝細胞癌肝切除症例の術後短期および長期成績を非高齢者(75歳未満)と比較検討した.また最近10年間の高齢者肝細胞癌切除に関する10論文を検討した.
    
方法:1)2010年までに当科で肝細胞癌に対して根治的肝切除を行った600例を対象に解析した.
    2)PubMedにて「elderly」,「Hepatocelullar carcinima」,「hepatectomy」をkey wordとして最近10年間論文を検索し,10論文に関して検討した.
    
結果:1)術後合併症発生率および死亡率とも,超高齢者群,高齢者群,非高齢者群の3群間に有意差を認めなかった.術後せん妄は超高齢者群,高齢者群に有意に多かった.無再発および累積生存率も3群間に有意差を認めなかった.超高齢者で8例中5例,高齢者群で16例中6例ずつ肝癌以外の他病死がみられた.2)高齢者の年齢区分は70歳が多かった.術後合併症発症率,入院死亡率は高齢者と非高齢者で有意差を認めなかった.無再発生存率および累積生存率でも10論文で両者に有意差を認めなかった.

    考察:高齢者肝細胞癌肝切除において,術後短期および長期成績は非高齢者と比較して有意差を認めなかった.高齢者肝細胞癌肝切除は非高齢者と同等の基準で手術適応を決定でき,安全な手術が可能で,根治性も期待できると考えられた.
  • 丸山 常彦, 酒向 晃弘, 永井 雄三, 安西 紘幸, 吉岡 佑一郎, 上田 和光, 奥村 稔
    2013 年 38 巻 2 号 p. 232-234
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
    (目的)当科の後期研修医は一定の大学の出身者ではなく,数大学からの派遣と当院独自の研修医で構成されている.そのため研修の公平性を示すことは,各研修医のモチベーションを保つために非常に重要と思われる.当科で行っている公平性を重視した外科後期研修システムを紹介する.(方法)手術執刀件数が公平かつ十分であることが重要と考え,当科では原則として後期研修医が執刀医となるが,その決定は術式の程度により最低限の基準を設け,順番に回ってくるように取り決めている.星取り表と呼ぶ表を作り,医局員全員が順番や過去の執刀数を確認できるような形とし,公平性,公然性を保っている.(結果)現在研修している卒後5年目の後期研修医は,2年10カ月間で410例の執刀を行った.主な内訳は胃切除術45例,結腸・直腸切除術65例(うち腹腔鏡下3例),胆囊摘出術54例(うち腹腔鏡下26例),肝切除術4例,膵頭十二指腸切除術4例であった.高度進行癌や併存疾患合併例なども順番に執刀医となるが,術後合併症率は他施設と遜色ない結果である.このシステムに対する後期研修医の評価も良好であり,モチベーションを保ちつつ充実した研修が行われている.同時に指導医も手術や周術期管理についてより高度な技量が必要となり,研修医と共に医局全体が成長している.
  • 石橋 由朗, 三澤 健之, 小村 伸朗, 大熊 誠尚, 芦塚 修一, 尾高 真, 杉本 公平, 山田 祐紀, 柏木 秀幸, 森川 利昭, 矢 ...
    2013 年 38 巻 2 号 p. 235-242
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
    東京慈恵会医科大学では,2004年より内視鏡外科手術に対するトレーニングコースとして学内技術認定制度を発足させた.この制度は学内で内視鏡外科手術を行うすべての医師を対象としている.発足後8年を経過して現在では受講の対象は研修医が中心となっており,若手医師に対する教育プログラムへと移行している.本学の初期研修医は,研修開始時にから本技術認定制度に参加し,後期研修医の時点で術者資格の技術認定を受けるシステムが稼働している.アンケート調査の結果から,本技術認定制度は研修医からは肯定的に受け止められていた.今後もより安全な内視鏡外科手術を遂行していくために検討を続け,この制度を発展させていきたいと考えている.
  • 福本 和彦, 今野 弘之, 平松 良浩, 山本 尚人, 倉地 清隆, 神谷 欣志, 坂口 孝宣, 海野 直樹, 中村 利夫, 鈴木 昌八
    2013 年 38 巻 2 号 p. 243-246
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
    【背景】教室では手術教育を軸においた卒前卒後消化器外科医育成教育プログラムを構築している.

    【プログラムの実際】
    
1)卒前臨床教育:従来の講義に加えて,各種シミュレーターや教育資材などを使った実習を行っている.手術の助手から始まり,十分な準備ができたと認められた医学生には指導医の監督下に開腹操作を体験させている.
    
2)手術手技向上のためのセミナー:医学部生を対象に糸結びや縫合手技の習得を,研修医を対象に腸管や血管吻合トレーニングを行っている.入局希望者または医局員を対象に腹腔鏡手術セミナーを定期開催している.
    
3)関連病院での外科研修:執刀手術件数の多い施設を中心に研修し,同時に学会発表や論文作成の指導を受けている.
    
4)消化器外科専門医取得:関連病院の経験で消化器外科専門医を取得しやすい環境を整えた上で,卒後7~8年目を目安に教室に帰局し,受験のための準備に入る.本プログラムの最終目標は消化器外科専門医取得であり,2007年以降は19名の受験者全てが合格している.
    
【今後の展望】教室の新規入局員数は回復の兆しをみせつつあり,本プログラムは一定の効果が得られている.今後もさらなる卒前卒後教育システムの充実・発展を図っていきたいと考える.
  • 永田 茂行, 平山 佳愛, 由茅 隆文, 播本 憲史, 梶山 潔
    2013 年 38 巻 2 号 p. 247-251
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
    目的:若手外科医の手術参加は重要な教育の一環であるが,手術の質を落とすことは許されない.腹腔鏡下胆囊摘出術(LC)において,研修医の参加が手術の安全性や有効性に影響を与えるかどうかを検討した.
    
方法:対象は同一術者が行ったLC 39例.手術は術者と助手2名にて施行し,指導医と研修医(初期・後期含む)が助手に加わった群(S群,16例)と研修医のみが助手に加わった群(R群,23例)に分けて,患者背景,手術因子,術後因子に関して比較検討した.
    
結果:両群の患者背景,術中出血量や術後合併症発生率,術後在院日数に差はなかった.手術時間はR群がS群に比べて有意に長く,とくに胆囊炎非合併症例で長かった.
    
考察:LCにおいて研修医のみを助手にした場合,手術時間は有意に長くなるが合併症が増えることはなかった.指導医と共に研修医が手術に参加すれば,手術の質を落とすことなく,教育にも有用と考えられた.
  • 池田 英二, 黒田 雅利, 山本 典良
    2013 年 38 巻 2 号 p. 252-258
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
    一般病院で良質を担保した腹腔鏡下大腸切除術の教育は難問であり,当院での取り組みを紹介する.修練医の執刀対象は盲腸,上行結腸,S状結腸,直腸Rs部の病変で,良性かがんならば深達度SS以浅でリンパ節転移がなく,高度の肥満や癒着がない症例としている.術者となる前準備として日本内視鏡外科学会技術認定医(当院指導医)作成の手術書,教育用DVDで手技の流れや留意点を予習し,腹腔鏡下胆囊摘出術20例執刀,腹腔鏡下大腸切除術30例助手の経験を必要とする.手術は小切開(globe法で3金属ポート)+5mm,3mm各1ポートを標準とし,手技は細かく定型化している.指導医の推定手術時間+1時間を目安に修練医に執刀させ,症例の難易度に応じ段階的にポートは増設する.指導医が技術認定取得後に執刀した210例と,修練医が少なくとも部分的には執刀した126例で手術成績に差はなかった.腹腔鏡下大腸切除術で,低侵襲追及と後進育成は両立すると思われる.
  • 竹村 雅至
    2013 年 38 巻 2 号 p. 259-265
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
    胸腔鏡下食道切除術の導入後20年以上が経過し,様々な施設で導入されているが,本術式のトレーニングシステムの報告は少ない.今回,本邦における本術式の現状,われわれの術式とそのトレーニングシステムについて述べる.われわれは2010年4月より気胸を併用した左側臥位下胸腔鏡下食道切除術を導入し,術式の工夫を行うとともにトレーニングシステムを構築してきた.われわれのトレーニングシステムでは,鏡視下手術の特徴や鉗子操作の基本を学んだ後に,術者へのトレーニングに移行する.術者へのトレーニングでは,腹腔鏡操作から開始し,上縦隔操作へと段階的に進むことが特徴である.食道癌に対する胸腔鏡下手術の有用性に関する報告は増加しているが,術式の普及と安定化のためにトレーニングシステムの構築が急務である.
  • 師井 洋一
    2013 年 38 巻 2 号 p. 266-
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
  • 畑 泰司, 竹政 伊知朗, 水島 恒和, 山本 浩文, 土岐 祐一郎, 森 正樹
    2013 年 38 巻 2 号 p. 267-271
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
    Panitumumab(Pmab)は上皮増殖因子受容体(epidermal growth factor receptor;EGFR)をターゲットとする完全ヒト化型モノクローナル抗体製剤である.2006年9月に米国で承認され,本邦では2010年4月に承認された.Pmabを含む抗EGFR抗体薬はKras遺伝子野生型の治癒切除不能な進行再発大腸癌に対し高い効果が期待できる.しかし,抗EGFR抗体薬は従来よくみられていた有害事象は少なく認容性はよいものの80%以上の患者に皮膚障害を認める.本稿ではPmabに関する現在までの臨床試験をレビューし,市立豊中病院での治療成績と皮膚障害について述べる.
  • 玉川 浩司, 松田 宙, 岩瀬 和裕, 青野 豊一, 吉田 洋, 野村 昌哉, 西川 和宏, 出口 貴司, 川田 純司, 長谷川 順一, 田 ...
    2013 年 38 巻 2 号 p. 272-278
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
    抗EGFR抗体薬を使用する際,皮膚障害のマネージメントは治療の継続性にかかわる問題である.2009~2011年に当施設で抗EGFR抗体薬を使用した大腸癌患者44例を対象とし,副作用チェックシート導入前(33例)と導入後(11例)に2分し,皮膚障害の状態とマネージメントの状況を後ろ向きに解析した.44例中40例(91%)に皮膚障害の出現を認め,グレード1/2/3別の発現頻度は各41%/32%/18%であった.チェックシート導入前後で皮膚障害の出現頻度は変わらなかったが,グレード3の出現頻度は低下傾向にあった.また抗EGFR抗体薬導入前すでに手足症候群などの皮膚障害が生じている症例が33%存在し,抗EGFR抗体薬導入によりさらに皮膚障害が増悪した症例を認めた.抗EGFR抗体薬の使用にあたって,副作用チェックシートの導入により,患者,医療スタッフともに皮膚障害に対する共通認識を持つことができ,その診断基準と予防や治療法の統一がはかられ,皮膚障害重症化のリスクを低減する可能性がある.
  • 深澤 貴子, 宇野 彰晋, 神藤 修, 松本 圭五, 落合 秀人, 鈴木 昌八, 北村 宏
    2013 年 38 巻 2 号 p. 279-285
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
    目的:抗EGFR抗体薬治療時の皮膚障害マネジメントについて検討する.
    
方法:対象は抗EGFR抗体薬を投与した進行・再発大腸癌30例で,抗腫瘍効果,治療成功期間(time to treatment failure;TTF),皮膚障害のGradeとその対策について検討した.
    
結果:Cmabが27例,Pmabが6例に投与され,抗腫瘍効果はPR8例,SD4例,PD19例,NE2例で奏効率は24.2%,病勢コントロール率は36.4%であった.皮膚障害は25例に発生しGrade 3以上は3例であったが,皮膚障害が治療中止理由となった症例はなかった.全症例のTTF中央値は4.7カ月で,皮膚障害に対する予防的処方が行われた症例では延長する傾向がみられた.

    結語:80%以上の症例で皮膚障害が発生したが,外用薬の予防的処方,継続的な生活指導,皮膚科医へのコンサルテーションなどにより皮膚障害の重篤化による治療中断例はなく,良好にマネジメント可能であった.
  • 手塚 徹, 幸田 圭史, 安田 秀喜, 鈴木 正人, 山崎 将人, 小杉 千弘, 村田 聡一郎, 今井 健一郎, 平野 敦史
    2013 年 38 巻 2 号 p. 286-291
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
    【目的】当科にて2010年12月から2012年3月までに切除不能進行再発大腸癌に対しPanitumumab(P-mab)を投与した19例を対象とし,投与状況,治療成績,有害事象について検討した.
    【方法】投与ラインは1st/2nd/3rd/4th:3/8/6/2例,投与レジメンはFOLFIRI+P-mab/mFOLFOX7+P-mab/P-mab単剤:13/4/2例であった.
    【結果】治療成績はCR/PR/SD/PD/NE:0/1/2/12/4例で奏効率5.3%,腫瘍制御率15.8%,生存期間中央値は9.74カ月であった.有害事象は皮膚障害/infusion reaction/低Mg血症/頑固なめまい:7(G1:3例,G3:4例)/1/1/1例に認められた.
    【結語】P-mabの治療成績は,良好とは言えない結果であった.さらに抗EGFR抗体薬特有の皮膚障害が高率に出現した.皮膚障害は患者のQOLを著しく低下させ,投薬コンプライアンスを低下させる可能性があるため,外来医のみならず皮膚科医,薬剤師,看護師などとの連携でより細やかな経過観察が必要である.
臨床経験
  • 高木 弘誠, 河本 和幸, 岡部 道雄, 朴 泰範, 伊藤 雅
    2013 年 38 巻 2 号 p. 292-296
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
    当院で経験した食道穿孔手術症例に対する治療成績を報告する.対象と方法:2002年1月から2012年7月までに食道穿孔と診断され外科的治療を要した13例につき検討を行った.結果:平均年齢66.9歳,男性11例,女性2例,成因は特発性食道破裂10例,ベーチェット病による食道穿孔1例,胸部動脈瘤破裂による食道穿孔2例であった.死亡例は2例であり,いずれも胸部動脈瘤破裂の症例であった.結論:特発性食道破裂に関しては,的確な診断と治療方針の決定により救命率は良好であると考えられた.胸部動脈瘤破裂に関連する食道穿孔は,全身状態も不良であり,救命困難であった.
  • 坂本 太郎, 三澤 健之, 矢永 勝彦
    2013 年 38 巻 2 号 p. 297-301
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
    はじめに:Ventralexはexpanded polytetrafluoroethylene(ePTFE)コーティングによって腹腔内臓器との癒着を最小限にとどめる人工膜材であり,比較的小さな腹壁ヘルニアに対して使用される.われわれは本邦承認当初から積極的に用いており,これまで良好な臨床成績を得ているので報告する.
    
対象と方法:2005年12月から2009年9月までに当科および一部関連施設で腹壁ヘルニアに対してVentralexによる修復術を行った31人,32例.ヘルニア門直上で2~5cmの皮膚切開をおき,ヘルニア囊を切開して開腹し,腹壁への癒着を最小限剝離した.Ventralexをヘルニア門から挿入し,腹腔内で展開,2本のストラップをヘルニア門に各1針固定した.
    
結果:平均手術時間は53分,術後平均入院期間は4.6日であった.術後平均観察期間は24カ月であるが,seromaを1例に認めたのみで,その他の合併症・再発を認めていない.
    
結論:小さな腹壁ヘルニアに対して,Ventralexは簡便・安全なデバイスである.
症例報告
  • 蒲池 健一, 小澤 壯治, 林 勉, 千野 修
    2013 年 38 巻 2 号 p. 302-306
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
    患者は67歳,男性.のどのつかえ感を主訴に近医を受診し,食道癌の診断で当院を紹介受診となった.術前検査で頸部胸部上部食道に長径15cm大の1型腫瘍を認めた.生検で癌肉腫と診断し,腹臥位胸腔鏡下食道切除術,胸壁前経路頸部食道胃管吻合術,D3郭清を施行した.摘出標本では頸部食道に150×55×50mmの巨大な腫瘍が存在し,病理組織学的所見では大型紡錘形細胞よりなる癌肉腫と扁平上皮癌を認めた.術後経過は良好で術後25日目に退院となった.食道入口部に伸展する腫瘍は治療方針の決定に難渋することが多い.術式を工夫することにより喉頭温存しえた頸部胸部上部食道に発生した巨大癌肉腫の1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.
  • 椎名 伸充, 奥野 厚志, 若林 康夫, 越川 尚男
    2013 年 38 巻 2 号 p. 307-313
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,腹膜播種を伴う切除不能進行胃癌に対して術前化学療法によりPRを得て,原発巣切除に至り,播種病変に対しても術後補助化学療法により画像上のCRを得ている症例を経験したので報告する.
    症例は66歳男性で,心窩部痛を主訴に進行胃癌の診断となり,手術を施行した.T4b,N3,M1 PER cy+,Stage Ⅳと判断され,試験開腹に終わったが,S-1+cisplatinを4サイクル施行してPRが得られたため局所切除可能と判断し,胃全摘術と腹腔内ポート留置術を施行した.病理組織診断では中分化腺癌で,HER2強陽性の結果を得た.そこで,術後補助化学療法として,S-1+paclitaxel+trastuzumabにpaclitaxel腹腔内投与を併用した.切除できなかった骨盤底などの腹膜播種性病変はその後のCT検査にても,継続して病変は指摘できず,消失したと思われる.
  • 紙谷 直毅, 頼木 領, 大住 周司, 吉村 淳
    2013 年 38 巻 2 号 p. 314-318
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
    近年,腹腔鏡下手術は技術の進歩に伴い普及し,悪性腫瘍のみならず粘膜下腫瘍に対しても報告例が散見される.今回われわれは径8cmの巨大な胃脂肪腫に対し,腹腔鏡下手術を施行した1例を経験したので報告する.症例は74歳,男性.心窩部不快感を訴え,近医を受診,上部消化管内視鏡検査で前庭部に巨大な粘膜下腫瘍を認め当科へ紹介された.CT,MRI検査で同部位に腫瘤を認め,内部は脂肪組織と同じCT値を示した.画像所見上は脂肪腫と診断したが,腫瘍径の観点より脂肪肉腫を否定しえず,腹腔鏡補助下幽門側胃切除術を施行した.病理組織学的検査で脂肪腫と最終診断した.過去の報告例では胃脂肪腫に対し腹腔鏡下手術を施行した症例は5例あり,径5cm以上のものは2例のみであった.自験例は6例目の報告であり,中でも腫瘍径は最大であった.胃脂肪腫に対して腹腔鏡下手術は有用と考えられ,今後の積極的な活用が期待されると考えられた.
  • 竹山 廣志, 中場 寛行, 野呂 浩史, 吉川 浩之, 有馬 良一
    2013 年 38 巻 2 号 p. 319-324
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
    今回,稀な疾患である小腸間膜原発デスモイドの1切除例を経験したので報告する.症例は55歳の男性で,人間ドックで腹部腫瘤を指摘され,精査・加療目的で当科紹介となった.腹部超音波・CT・MRI・血管造影検査で比較的境界明瞭な腫瘤を認め,注腸造影からは腸管内の狭窄を認めず,腸管原発よりも腸間膜原発が考えられた.小腸間膜原発腫瘍と診断し腫瘤摘出術を施行した.腫瘤は14×12×8cmの白色充実性腫瘍で,組織学的には,免疫染色では,c-kit(-),CD34(-),NSE(-),S-100(-),α-SMA(-),Desmin(-),Calretinin(-)であった.HE染色で腫瘍細胞は核異型性に乏しい紡錘形細胞を呈し,束状・交錯状増生を認め,間質は膠原線維に富み,小腸間膜原発デスモイド腫瘍と診断された.現在,術後2年無再発で経過観察中である.
  • 戸田 桂介, 遠藤 芳克, 渡邉 貴紀, 松本 祐介
    2013 年 38 巻 2 号 p. 325-331
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
    症例1:57歳,男性.繰り返す下腹部痛,下血を主訴に当科受診した.精査にてS状結腸にfat densityで6cm大の腫瘍と,腫瘍を先進部にした腸重積が認められ,単孔式腹腔鏡補助下S状結腸切除術を行った.症例2:89歳,男性.腹痛で前医を受診し,イレウス症状が増悪したため紹介となった.腹部造影CTにて回腸の腸重積と,先進部にfat densityで2cm大の腫瘍が認められ,単孔式腹腔鏡補助下回腸部分切除術を施行した.いずれの症例も術後病理組織学的検査で脂肪腫と診断された.本疾患に対する手術治療として,低侵襲で整容性に優れた単孔式腹腔鏡下手術は有用な術式であると考えられた.
  • 神谷 純広, 田中 久富
    2013 年 38 巻 2 号 p. 332-335
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
    腸重積症は小児では多いが成人では比較的稀な疾患である.成人の腸閉塞では小腸に多く大腸は少ない.大腸の腸重積では大腸癌が原因となることが多い.下行結腸など後腹膜に固定された結腸では腸重積を起こしにくいと考えられている.今回90歳男性の下行結腸癌による腸閉塞の症例を経験し手術を施行した.原因となった腫瘍は2型で大きさは2.5×2.0cmであった.これまでの報告例と比べて腫瘍径が小さいと考えられた.高齢で組織がぜい弱で異常な蠕動が加わったため腸重積を起こしたと考えられた.
  • 木下 淳, 服部 晃典, 宮内 竜臣, 服部 俊弘, 吉松 和彦, 勝部 隆男, 成高 義彦, 小川 健治
    2013 年 38 巻 2 号 p. 336-340
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
    逸脱した胆道ステントによる結腸穿孔は,内視鏡的胆道ステント留置術(EBS)における稀な偶発症である.われわれは,逸脱したプラスチック胆道ステントにより2カ所でS状結腸の穿孔をきたし骨盤内膿瘍を形成した74歳の女性に対して緊急手術を施行し,良好な結果を得たので報告する.1年前,他院で総胆管結石による胆管炎に対してEBSが施行されていた.2日前より発熱,下腹部痛が出現し当院に緊急搬送され,腹部単純X線およびCT検査で骨盤内のS状結腸内に逸脱したステントと骨盤内膿瘍を認め,緊急開腹手術を施行した.S状結腸に2カ所の穿孔とステントを認め,子宮の背側とS状結腸との間に巨大な膿瘍を認めた.ハルトマン手術および腹腔内ドレナージ術を施行した.EBSは比較的安全な手技であるが,時にステントの逸脱やそれによる消化管穿孔が認められるため,術後は注意深い経過観察が必要と考えられる.
  • Takahiro Umemoto, Yoshikuni Harada, Makiko Sakata, Gaku Kigawa, Hirosh ...
    2013 年 38 巻 2 号 p. 341-344
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
    We describe here the case of a 75-year-old woman who underwent emergency laparoscopic surgery for recurrent hemorrhages caused by diverticulosis of the right colon with subsequent anemia. At admission, physical examination revealed stable vital signs, and the abdomen was soft, non-tender, and non-distended. The hemoglobin level was 10.6 g/dL. No fresh blood clots were observed in the right colon lumen on colonoscopy. Ileocecal resection was planned; however, at 10 days after hospital admission, the patient presented with severe gastrointestinal bleeding; the hemoglobin level decreased to 7.2 g/dL, with the subsequent development of hemorrhagic shock. Blood transfusion (4 U of blood) was immediately performed; however, a second episode of massive hematochezia occurred after emergency angiography. Therefore, an emergency laparoscopic right colectomy was performed for resection of the diverticulosis of the right colon, followed by reconstruction with end-to-end anastomosis. The patient remained asymptomatic at 8 months of follow-up.
  • 岸本 朋也, 中野 博史, 五福 淳二, 吉田 哲也, 川崎 勝弘, 西 敏夫
    2013 年 38 巻 2 号 p. 345-349
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
    われわれは直腸周囲膿瘍に対して直腸内シートンドレナージが著効した1例を経験したので報告する.症例は73歳,女性.近医にてグリセリン浣腸を処方され家人に挿肛された.挿肛後に出血し,以後肛門痛が持続していた.1週間後より発熱,排尿困難が出現したため近医を受診した.CTにて直腸周囲膿瘍を認め,加療目的に当科へ紹介となった.損傷部から持続的な膿汁排出を認めたため,まず,自然軽快を期待し抗生剤による治療を行った.第6病日に再度CTを施行するも膿瘍の縮小は認めず,ドレナージ術を行うこととなった.直腸損傷部からシートン法によるドレナージを行った.術後3日目には解熱し,肛門痛も軽快した.また,炎症所見も低下し,CTでは膿瘍は著名に縮小したため食事を開始した.経過は良好で術後10日目に退院となり,外来にてドレーンを抜去した.直腸内シートンドレナージは低侵襲かつ有用な治療法の1つであると考えられた.
  • 大熊 誠尚, 満山 善宣, 阿南 匡, 衛藤 謙, 小川 匡市, 藤田 哲二, 柏木 秀幸, 墨 誠, 大木 隆生, 矢永 勝彦
    2013 年 38 巻 2 号 p. 350-355
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
    症例は55歳男性.下痢,下血を主訴として2009年9月に近医を受診,直腸癌が強く疑われたため精査加療目的で当科に入院した.中下部直腸癌と診断し,10月に低位前方切除術,双孔式回腸人工肛門造設術を施行した.その際,プリーツドレーンを挿入し先端を吻合部近傍に留置した.縫合不全を併発したが,保存的治療で緩解した.術後22日目,ドレーンの抜去直後に同部位から大量の出血を認めたため,選択的血管造影を施行した.造影剤の漏出が疑われた右下臀動脈および右内陰部動脈の分枝にコイル塞栓術を行った.術後32日目にドレーン挿入部から再出血を認めた.CT血管造影で左外腸骨動脈瘤の形成を認め破裂による再出血と診断し,動脈瘤の切除と単閉鎖を行った.その後の経過は良好で術後54日目に退院した.直腸癌術後の合併症として,ドレーンの圧迫によると思われる外腸骨動脈瘤の形成および破裂は非常に稀であるので報告する.
  • 山田 敦子, 長田 真二, 今井 寿, 佐々木 義之, 高橋 孝夫, 山口 和也, 吉田 和弘
    2013 年 38 巻 2 号 p. 356-360
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
    症例は53歳男性.2008年9月頃に左頸部腫瘤を自覚し翌年1月に当院耳鼻科に紹介された.
    MRI上左舌扁桃の腫大と左頸部に多数のリンパ節腫大を認め,生検で扁平上皮癌との結果から中咽頭癌(T1-2,N2b,M0,Stage Ⅳ)との診断で化学療法後に左頸部郭清術を施行した.術後に放射線化学療法を1クール施行後外来経過観察されていた.術後11カ月後の画像検査上肝転移を疑う所見があり化学療法を施行したところ転移巣は一旦縮小したが,その後再度増大傾向に転じた.PET-CTでは他臓器に遠隔転移は確認しえず,患者の強い希望を踏まえて肝内側区域切除+S8部分切除術を施行した.病理所見では扁平上皮癌の肝転移として矛盾しないとの結果であった.中咽頭癌の頻度は低く,肝転移例の報告は稀である.本症例のように,化学療法の効果が乏しい場合や腫瘍の遺残なく切除可能な例においては,手術も治療の選択肢となりえると考えられた.
  • 高橋 遍, 上田 和光, 安西 紘幸, 安田 幸嗣, 三島 英行, 酒向 晃弘, 丸山 常彦, 杉田 真太郎, 奥村 稔
    2013 年 38 巻 2 号 p. 361-366
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
    症例は64歳,女性.1988年に膵神経内分泌腫瘍に対し,当院にて膵頭十二指腸切除を施行した.2012年4月に急性膵炎にて緊急入院し,急性膵炎の精査中に肝S7に腫瘍性病変を認めた.画像所見からの確定診断は困難であったため,肝生検を施行した.免疫染色ではchromograninA(+),synaptophysin(+),CD56(+),hepatocyte(-),pankeratin(+),CK7(-)を示し,神経内分泌腫瘍の染色動態を呈した.術前検索にて肝外病変を認めず,肝S7部分切除を施行した.病理組織学的には原発巣に類似した組織像を呈し,既往の膵神経内分泌腫瘍による肝転移の診断を得た.
    
本症例は膵神経内分泌腫瘍切除後の遠隔転移再発までの期間としては最長であった.原発巣切除後,長期間経過後に肝転移再発をきたした稀な症例を経験したので,文献的考察を交えて報告する.
  • 中川 暁雄, 佐竹 信祐, 中島 幸一, 山崎 良定
    2013 年 38 巻 2 号 p. 367-372
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡下胆囊摘出術を行った際の術中落下結石による腹腔内膿瘍に対して手術を施行したので報告する.症例は67歳の女性で,急性胆囊炎に対して経皮経肝胆囊ドレナージ後に腹腔鏡下胆囊摘出術を施行した.軽快退院したが,1カ月後,右側腹部の違和感が出現したため来院し,精査にてモリソン窩および右横隔膜下に膿瘍貯留とその内部に結石様陰影を認めた.モリソン窩膿瘍に対しては小切開下に,横隔膜下膿瘍に対しては腹腔鏡下にそれぞれ手術を施行した.共に膿瘍腔内に落下結石と思われる黒色結石を認めた.術中落下結石による腹腔内多発膿瘍は比較的稀であり,侵襲の少ない手術で治療しえた.
  • 館 正仁, 國枝 克行, 河合 雅彦, 長尾 成敏, 西科 琢雄, 田中 千弘
    2013 年 38 巻 2 号 p. 373-376
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
    症例は52歳,男性.突然の心窩部痛,嘔吐が出現したため近医に救急搬送となった.CT検査では肝,脾周囲にdensityの高い液体貯留を認めたため,腹腔内出血を疑い当院救命救急センターに転院搬送となった.当院での造影CTでは腹水の増量と,さらに胃体上部大彎側に接して,造影剤がpoolする30mm大の結節影を認めた.内臓動脈瘤破裂を疑い血管造影検査を行った.脾動脈造影において短胃動脈瘤破裂を疑ったが,流入,流出血管が非常に細くisolationが不可能であったため緊急手術を施行した.術中所見より病変は脾動脈から分岐する無名動脈瘤破裂と診断した.病理組織学的には中膜変性を伴った動脈瘤でありsegmental arterial mediolysis(以下SAM)による動脈瘤破裂と考えた.今回SAMによる内臓動脈瘤破裂の1例を経験したので文献的考察を交えて報告する.
  • 筒井 信浩, 柴 浩明, 北村 博顕, 伊藤 隆介, 三澤 健之, 矢永 勝彦
    2013 年 38 巻 2 号 p. 377-381
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
    症例は38歳,女性.2011年4月心窩部痛を主訴に当院受診.腹部超音波では膵体部背側,上腸間膜動脈右側に接して径30mm,境界明瞭で不整形のhypoechoic massを認めた.腹部MRIではT1WIで低信号,T2WIで一部淡い高信号を示し,腹部造影CTでは境界明瞭,内部濃度均一で軽度の遅延濃染を認めた.MIBGシンチグラフィでは集積を認めなかった.上部,下部消化管内視鏡検査では異常を認めず,胆囊内結石,総胆管結石も認めなかった.以上より後腹膜腫瘍,神経節細胞腫疑いで腫瘍摘出術を施行した.手術は腹腔鏡下手術で開始したが上腸間膜動脈との剝離が困難であり,開腹手術に切り替えた.摘出標本は35×20mmの境界明瞭な腫瘍であった.病理診断は,紡錘形細胞の増生が主体で散在性に神経節細胞が存在しており,神経節細胞腫の診断であり,明らかな悪性所見は認めなかった.術後1年で腫瘍の再発,心窩部痛の再燃は認めていない.神経節細胞腫は交感神経節由来の腫瘍で,比較的稀な疾患であるため文献的考察を加えて報告する.
  • 松橋 延壽, 岩田 至紀, 館 正仁, 前田 健一, 田中 千弘, 長尾 成敏, 河合 雅彦, 國枝 克行
    2013 年 38 巻 2 号 p. 382-386
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
    症例は62歳,女性.既往歴は15歳時,急性虫垂炎術後腹膜炎.C型肝炎.主訴は胃部不快感で近医を受診し上部消化管精査において胃体下部大彎に0-Ⅱc病変を指摘され,当院消化器内科に紹介となった.生検結果でpor2と診断された.また腹部CTで下腸間膜動脈の腹側に近接する3cm大の内部充実した腫瘍を認めた.当科手術目的に紹介され,腹腔鏡下幽門側胃切除術および腫瘍摘出術を施行した.手術時間は4時間53分,出血量は24mlで終了した.術後経過は順調で術後10日目に退院となった.腹腔鏡下幽門側胃切除術と同時に下腸間膜動脈神経叢に存在した神経鞘腫を施行した症例はなく,今回われわれは貴重な症例を経験したため報告する.
  • 白坂 健太郎, 船橋 公彦, 松田 聡, 鏡 哲, 甲田 貴丸, 長嶋 康雄, 島田 英昭, 金子 弘真
    2013 年 38 巻 2 号 p. 387-393
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
    傍ストーマヘルニアは,消化管ストーマの約30%以上にみられ,保有者のQOLの低下をきたす晩期合併症の一つである.今回,われわれは直腸癌術後に発生した10cmを越える傍ストーマヘルニアに対してDUALMESH(GORE®)を用いた修復法にて良好な結果を得た2例を経験したので報告する.
    
症例は,ともに腹会陰式直腸切断術時に経腹的に造設されたストーマで,ヘルニア門はそれぞれ10×8cm,15×7cmであった.傍ストーマヘルニアが原因と考えられる腹痛を認めたため,手術とした.手技は,開腹でSugarbacker法に準じて施行し,1例に術後絞扼性イレウスで再開腹を要したが,ヘルニア修復との関連性は認められなかった.術後1年を経過したが,現在までに特に再発は認めておらず,本術式は簡便で有効な方法と考えられた.
  • 池上 政周, 五嶋 孝博, 津田 祐輔, 山田 直樹, 山川 聖史, 穂積 高弘, 福田 由美子, 加藤 生真, 元井 亨, 比島 恒和
    2013 年 38 巻 2 号 p. 394-401
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
    【はじめに】上肢の原発性悪性骨腫瘍の広範切除後の骨欠損に対し,術中体外放射線処理骨による再建を行った2例を報告する.【症例1】53歳,女性.右上腕骨の軟骨肉腫に対し,上腕骨骨幹部をintercalaryに広範切除した.切除骨を100Gyの術中体外放射線処理の後に還納し固定した.術後6カ月の時点で処理骨に骨折を生じ,その後に偽関節となった.術後4年の現在,局所再発や遠隔転移はなく,装具を使用し洗顔や食事が可能である.【症例2】17歳,男性.左尺骨近位端骨肉腫に対して尺骨近位半分を広範切除した.切除骨を60Gyの術中体外放射線処理の後に還納し固定した.術後4年6カ月現在,骨癒合が得られ,局所再発や遠隔転移はなく,疼痛なく日常生活を送っている.【考察】本法は,感染や偽関節,骨折などが問題となるが,処理骨からの再発の報告はない.適応症例を厳選すれば,低侵襲で有用な再建法である.
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