日本外科系連合学会誌
Online ISSN : 1882-9112
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ISSN-L : 0385-7883
40 巻, 2 号
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原著
  • Mamiko Ubukata, Michio Itabashi, Simpei Ogawa, Tomoichiro Hirosawa, Yo ...
    2015 年 40 巻 2 号 p. 163-168
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/30
    ジャーナル フリー
    Introduction: The risk factors for postoperative complications after surgery for rectal cancer were compared between late elderly people and non-elderly people.
    Materials and Methods: A total of 139 patients who underwent surgery for upper and lower rectal cancer at our department between January 1, 2008 and March 31, 2013 was investigated. These patients were divided into elderly (≥75 years old) and non-elderly (<75 years old) groups, and their clinicopathological factors, surgery-related factors, E-PASS, and PNI were compared.
    Results: In the elderly group, 13 of 27 patients (48.1%) developed postoperative complications, and this proportion was significantly greater than in the non-elderly group (27.7%, p=0.0401). In elderly patients, univariate and multivariate analyses showed that E-PASS SSS (p=0.048) and elevated peripheral blood lymphocyte count (p=0.026) were independent risk factors for complications. In the non-elderly group, E-PASS SSS was the independent risk factor for complications (p=0.0398).
    Conclusion: E-PASS SSS was found to be a useful index for assessing risks for postoperative complications in both the elderly and non-elderly groups. When performing surgery to treat rectal cancer in elderly people, paying careful attention to the preoperative peripheral blood lymphocyte count and minimizing surgical invasiveness may reduce the development of postoperative complications.
特集
  • 川瀬 和美
    2015 年 40 巻 2 号 p. 169
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/30
    ジャーナル フリー
  • 高須 千絵, 金本 真美, 松本 規子, 岩田 貴, 吉川 幸造, 東島 潤, 中尾 寿宏, 西 正暁, 江藤 祥平, 島田 光生
    2015 年 40 巻 2 号 p. 170-173
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/30
    ジャーナル フリー
    【目的・方法】当院大外科に所属する女性外科医15名(消化器移植外科6名)を対象にアンケートを行い,女性外科医の問題点の抽出,キャリアアップ支援について報告する.
    【結果】当科では2003年以降女性が5名入局し,全体の67%が結婚,うち75%が育児中である.上司,同僚ともに理解を感じるとの答えは80%にのぼった一方で,バックアップ制度の有無,利用しやすさ,満足度は50%前後と環境整備の課題は多い.キャリアとして全員が臨床での経験を積むことを挙げた一方,学会・論文発表などの業績,学会や大学でのポスト,留学に対する意識は低かった.子育て期間に仕事に対する情熱を持ち続けることは困難で,仕事を続けることに精一杯でキャリアにまで意識が届いていない現状がわかった.
    【結語】外科を志した情熱を持続可能な環境整備の促進と,女性自身の意識の再改革が必要である.
  • 崎村 千香, 黒木 保, 江口 晋, 南 貴子, 伊東 昌子
    2015 年 40 巻 2 号 p. 174-179
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/30
    ジャーナル フリー
    妊娠・出産は女性特有のライフイベントであり,その後の育児の主軸は女性である現状から,キャリア継続の障害となりえる.われわれは,女性医師のキャリア形成には何が必要かを明らかにすることを目的とし,アンケート調査を行った.対象は長崎大学病院に勤務する女性医師で,2013年10月に紙面によるアンケートを施行した.結果は160人中106人(66%)より回答を得た.外科系医師(消化器外科,乳腺・内分泌外科,整形外科,産婦人科,形成外科,眼科,耳鼻咽喉科,泌尿器科,皮膚科)の回答率は88%(50人中44人)であった.年齢は30代が最多であった.外科系女性医師は,専門選択時に出産・育児を考慮しない傾向にあり,緊急手術や日当直の免除より,育児サポートなどを望む傾向があった.また,内科系医師と比較し,外科系医師は仕事の免除より,勤務可能となるサポートを希望する傾向があり,育児サポートシステムの強化を考慮すべきであると思われた.
  • 宮城 悦子, 奥田 美加, 澤 倫太郎, 北澤 正文
    2015 年 40 巻 2 号 p. 180-186
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/30
    ジャーナル フリー
    【目的】2000年代前半に加速した病院勤務の産婦人科医師の離脱と周産期医療の危機的状況と女性医師の増加に対して,医師団体や行政が行ってきた対策の効果を検証した.【方法】産婦人科医師の卒後就労状況の調査,日本産科婦人科学会の新規会員数の推移,産婦人科新専門医を対象としたアンケート結果,横浜市立大学産婦人科の教育関連病院の医師配置数のデータを用いた.【結果】医師側・行政側からの多角的方策により,若手産婦人科女性医師が卒後11年目に分娩を扱う施設で就労している率は2006年調査の46%から2013年調査の66%へと上昇し,継続的就労意欲や専門性の高い仕事への意欲も高まっていた.しかし一旦上昇に転じた産婦人科を志望する医師数が,初期研修の産婦人科必修の中止以降,再び減少傾向にある.【結語】女性医師の継続就労への取り組みが実効性を示すデータとして示された.しかし,施設間や地域間の較差など取り組むべき課題も多く残されている.
  • 野村 幸世, 川瀬 和美, 萬谷 京子, 明石 定子, 神林 智寿子, 柴崎 郁子, 葉梨 智子, 竹下 恵美子, 田口 智章, 山下 啓子 ...
    2015 年 40 巻 2 号 p. 187-195
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/30
    ジャーナル フリー
    日本では外科を選択する医師は減少していますが,日本外科学会に新規入会する女性医師は年々増加しており,2008年新入会の22%が女性でした.ところが,日本の女性の年齢別就労人口をみると,M字カーブを描き,30,40代での離職が目立ち,医師も例外ではありません.
    この現状を打破するために必要な支援を探るため,日本外科学会女性外科医支援委員会と日本女性外科医会が中心となり,2011年6月下旬~8月末に日本医学会分科会に対し,専門医,認定医制度,評議員,役員,委員会委員,男女共同参画,女性医師支援に関しアンケートを行いました.
    その結果,多くの学会で女性医師支援の活動は行われつつあることがわかりました.しかし,役員,評議員,委員会委員といった意志決定機構における女性の割合は低いままにとどまっています.
    あらゆる意思決定機関に女性を参入させることが,女性外科医の活動を,ひいては我が国の外科医療そのものを加速させるのではないかと思われました.
  • 奥野 妙子
    2015 年 40 巻 2 号 p. 196-199
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/30
    ジャーナル フリー
    日本耳鼻咽喉科学会専門医制度委員長としての立場から,日本耳鼻咽喉科学会専門医制度の統計をもとに耳鼻咽喉科女性医師のキャリア形成の現状と対策について述べる.
    耳鼻咽喉科の専門医の受験資格は,2年間の医師臨床研修の後,4年間の専門研修を終了し,5年目となる.耳鼻科の女性医師の専門医取得率は男性に比し同等であるが,専門医取得までの年数は明らかに女性が長く,その理由は育児が主なものである.
    さらに,subspecialtyや指導医などより高度のキャリアを築くために専門医の更新が必要となるが,診療実績(手術件数),論文,学会発表の実績もないと継続はできない.
    一方,女性医師の37.3%が開業医で,勤務医は54%を占めていたが,そのうちの35.4%が非常勤であった.キャリアアップが可能となる診療を女性医師が行っていける体制をどのように整えるかは今後の重要な課題となろう.
  • 高山 かおる
    2015 年 40 巻 2 号 p. 200-204
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/30
    ジャーナル フリー
    我が国の女性皮膚科医師の割合が多くなり,その就業の在り方に関して様々な問題が生じている.日本皮膚科学会ではこれらの問題に対処するために,キャリア支援委員会(発足時の名称は皮膚科女性医師を考える会)を発足させた.この委員会が主導して年に4回開催されている支部総会期間中にメンター&メンティ会を開催し,施設間を超えたメンターを持つことにより若手医師の養成に取り組んでいる.また年に1度の総会ではキャリアアップしていく意味などについて議論を行っている.今年度は初の取り組みであるリーダーシップワークショップを開催し,将来のリーダー育成のための活動が開始された.
    皮膚科学会におけるキャリア支援委員会活動についてまとめた.
  • 藤巻 高光
    2015 年 40 巻 2 号 p. 205-208
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/30
    ジャーナル フリー
    筆者は卒後33年になる脳神経外科医である.小児科の女性医師を妻として3人の子育てをしながら医師を続けてきた.また大学病院の診療科の科長として女性医師の「上司」の立場にある.所属する脳神経外科学会では男女共同参画検討委員会委員を務めている.前半では個人的歴史を記載し「共働き医師夫婦」が直面してきた問題点を記述した.後半では脳神経外科という科で女性医師のライフイベントに直面する上司としての立場,また既報されている統計データより若手医師,医学生のワークライフバランスに関する感覚と現実の乖離を指摘し,産休・育休での代員制度の確立など早急に改善すべき点を指摘した.医学部学生の女性の比率が増加するなか,喫緊の課題は多い.
  • 巴 ひかる
    2015 年 40 巻 2 号 p. 209-210
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/30
    ジャーナル フリー
臨床経験
  • 岸本 浩史, 笹原 孝太郎, 小田切 範晃, 吉福 清二郎, 大森 隼人
    2015 年 40 巻 2 号 p. 211-216
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/30
    ジャーナル フリー
    諸言:術後合併症のリスクが高い胃全摘症例に対し,術後早期経腸栄養を行ってきたので,その臨床的意義を明らかにすることを目的とした.対象と方法:胃全摘術を行った201例を対象とし,拡大手術,術前化学療法,PS不良,年齢80歳以上の54例に術後早期経腸栄養を行い,末梢静脈輸液のみを行った147例と術後合併症につき比較した.結果:両群の背景因子が異なるため比較は困難であるが術後合併症発生率には差を認めなかった.術前化学療法症例に限ると,術後早期経腸栄養を行った15例は,末梢輸液のみの8例より術後肺炎の発生率が少なかった(p<0.05).PS不良例や年齢80歳以上では,術後早期経腸栄養の適否で感染性合併症率に差を認めなかった.結語:術後早期経腸栄養は,術前化学療法を行った胃全摘症例において術後肺炎の発症がなく有用と考えられた.しかし今回は背景因子が異なる検討であり,今後さらなる検討が必要である.
  • 武藤 亮, 佐藤 耕一郎, 阿部 隆之, 太田 嶺人
    2015 年 40 巻 2 号 p. 217-221
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/30
    ジャーナル フリー
    膵切除再建術年間症例数と合併症率は相関するとの報告があり,症例数の少ない施設での膵管空腸吻合では膵管ステントを留置する場合が多いと推察する.当院で2006年4月から2012年3月まで34例の膵頭十二指腸切除を施行し,19例にステントを留置(stent群)し,15例は留置しなかった(no stent群).膵瘻の発生はstent群がGrade A 5例,Grade B 6例,no stent群が各々2例,3例で,Grade Cは両群とも認めず,両群間で有意差を認めなかった.術後在院日数はstent群の41日に対してno stent群が23日で有意に短かった.膵管径3mm以下かつ正常膵の症例に限定しても同様の結果が得られた.症例数の少ない施設におけるno stent法も膵瘻発生率に差はなく,術後在院日数が有意に短縮する可能性があることから有用であると考えられた.
症例報告
  • 戸松 真琴, 佐藤 真輔, 永井 恵里奈, 瀧 雄介, 渡邉 昌也, 大端 考, 金本 秀行, 大場 範行, 新井 一守, 高木 正和
    2015 年 40 巻 2 号 p. 222-226
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/30
    ジャーナル フリー
    症例は58歳,女性.逆流性食道炎でフォロー中に胸部下部食道左側壁に2cm大の粘膜下腫瘍を認めた.CT検査,超音波内視鏡検査では明らかな悪性所見を認めなかった.超音波内視鏡下穿刺生検(EUS-FNA)は大きさから困難と判断し,良性粘膜下腫瘍の診断で気胸併用右側臥位胸腔鏡下腫瘍核出術を施行した.術中に内視鏡を併用し,食道内腔から腫瘍を圧出することで腫瘍の牽引を要さなかった.また人工気胸を併用することで術野の展開は容易であり,出血をほとんど認めなかった.術後経過は良好であり第7病日に退院となった.病理診断は低リスクのGISTであった.胸腔鏡下食道粘膜下腫瘍核出術において,人工気胸と上部消化管内視鏡下でのバルーンによる食道内腔からの圧出は有用であると考えられた.
  • 東 勇気, 柄田 智也, 木下 淳, 伏田 幸夫, 藤村 隆, 太田 哲生
    2015 年 40 巻 2 号 p. 227-231
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/30
    ジャーナル フリー
    症例は,全身性強皮症に対して加療中であった75歳女性.全身精査で,早期胃癌を認め, 当科に紹介受診となり,幽門側胃切除術D1+を施行した.術後高血圧を認め,術後10日目に目のかすみを自覚し,術後14日目に著しい視力の低下を認めた.髄液所見では特記すべき異常はなく,頭部CT,MRI検査では左右の中大脳動脈から後大脳動脈領域にまたがる血管支配領域には一致しない梗塞巣を認めた.臨床経過,画像所見より可逆性後頭葉白質脳症(PRES:posterior reversible encephalopathy syndrome)と診断した.PRESの背景因子として高血圧,悪性腫瘍,薬剤,子癇,膠原病などが挙げられるが,今回の症例のように悪性腫瘍や膠原病などを背景にもつ手術患者においては,周術期における過度の血圧変動に注意が必要である.
  • 坂田 和也, 髙森 啓史, 生田 義明, 中原 修, 田中 洋, 馬場 秀夫
    2015 年 40 巻 2 号 p. 232-237
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/30
    ジャーナル フリー
    肝臓は,二重血流支配を受けており,梗塞を起こりにくい臓器であるが,一旦肝梗塞をきたした場合には致死的な経過を辿ることもある.症例は75歳,女性.定期血液検査時に高アミラーゼ血症を認め,腹部CTにて膵病変を認めた.精査にて膵管内乳頭粘液性腫瘍由来膵癌と診断した.術前の血管造影にて正中弓状靭帯圧迫症候群による腹腔動脈幹の狭窄を認めた.亜全胃温存PD後2日目にトランスアミナーゼの著明な上昇を認めた.腹部造影CTでは肝左葉,尾状葉および脾臓の造影不良域を認め,肝脾虚血と診断した.また,左胃動脈領域の粘膜にも造影不良域を認めた.抗凝固療法,プロスタグランディン製剤投与による保存的加療を行い,膿瘍形成なども認めず,軽快退院となった.
    正中弓状靭帯圧迫症候群による腹腔動脈狭窄を有する症例に対するPDでは,術前・術中に血流動態を評価し,正中弓状靭帯開放や腹腔動脈幹のバイパス術の追加手術も念頭に置き,手術を行うことが術後の内臓虚血予防に重要であると考えられた.
  • 鳥居 翔, 宇野 彰晋, 深澤 貴子, 福本 和彦, 神藤 修, 稲葉 圭介, 松本 圭五, 落合 秀人, 鈴木 昌八, 北村 宏
    2015 年 40 巻 2 号 p. 238-243
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/30
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,男性.便秘,腹痛,食欲低下,左肩の痛みを主訴に近医を受診した.胸部X線検査で左肺の腫瘤陰影を指摘され,当院に入院となった.CT検査では左肺上葉に胸壁浸潤を伴った原発性肺癌を疑う径4.8cmの腫瘤と小腸腫瘤を先進部とする腸重積によるイレウス所見を認めた.イレウス管からの造影検査で回腸末端付近に小腸腫瘤を確認した.イレウス解除目的で開腹術を行った.回腸末端から約40cm口側の小腸腫瘍が先進部となり重積を惹起していたため,回腸部分切除を施行した.小腸腫瘍は病理組織学的に肺腺癌の転移病変と診断された.術後27日目に退院となったが,PSが低下したため左肺腫瘍への放射線治療のみを行った.術後98日目に癌死するまで自宅で経口摂取が可能であった.腸重積をきたす肺癌の小腸転移例の予後は不良であるが,手術適応を十分見極めた上での外科治療は,限定的ながらも生活の質を改善させる可能性がある.
  • 松井 俊樹, 加藤 弘幸, 湯浅 浩行, 林 昭伸
    2015 年 40 巻 2 号 p. 244-250
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/30
    ジャーナル フリー
    症例は84歳女性.入院2日前より続く左下腹部痛が増強し,近医を受診した.腹膜刺激症状を認めたため,精査加療目的に当院紹介となった.CTで左下腹部の小腸の壁肥厚,腸管外ガス,周囲脂肪織の濃度上昇を認め,小腸腸間膜膿瘍が疑われた.原因は不明であるが,小腸穿通による腸間膜膿瘍の診断で,入院同日緊急手術を施行した.開腹所見として,トライツ靭帯から約100cmの部位に小腸腸間膜膿瘍を認め,小腸部分切除を施行した.切除標本を開くと,腸間膜付着側に複数の憩室が散在し,その一つが腸間膜内に穿通していた.病理組織学的所見では,憩室は筋層を欠く仮性憩室の穿通および,腸間膜膿瘍と診断された.小腸憩室の多くは仮性憩室であり,腸間膜付着側に発生することが多く,穿孔した場合は腸間膜内に穿通し,腸間膜膿瘍を形成することが多い.原因不明の小腸腸間膜膿瘍を認めた場合,鑑別疾患として小腸憩室よる腸間膜穿通を念頭に置く必要がある.
  • 渡邉 彩子, 稲田 涼, 永坂 岳司, 八木 朝彦, 松本 聖, 戸嶋 俊明, 母里 淑子, 近藤 喜太, 岸本 浩行, 藤原 俊義
    2015 年 40 巻 2 号 p. 251-255
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/30
    ジャーナル フリー
    症例は70代男性.2004年12月,当院で盲腸癌に対し回盲部切除術(D3)を施行した(病理:pT3pN0cM0,pStage Ⅱ,Cur A).その後2007年3月より腸閉塞を繰り返していたが,保存的に加療されていた.2007年12月,発熱と筋性防御を伴う右側腹部痛を認め受診.血液検査にて炎症反応高値であり,腹部CT検査にて後腹膜膿瘍を認めた.小腸穿通に伴う限局性腹膜炎と診断し,緊急手術を施行した.術中所見にて回腸に後腹膜への穿通を伴う腫瘍性病変を認めたため,小腸部分切除および洗浄ドレナージを施行.病理組織診断にて,粘液成分を伴う腺癌細胞を認め盲腸癌の小腸再発と診断された.術後補助化学療法を施行するも,2008年11月後腹膜再発をきたし,以後集学的治療を行うも,初回再発手術より5年11カ月後に原病死となった.今回われわれは頻度の低い,大腸癌の孤立性小腸転移の症例を経験したので,文献的考察を加え報告する.
  • 石丸 啓, 鈴木 秀明, 湯汲 俊悟, 古田 聡, 菊池 聡, 山本 祐司, 児島 洋, 水野 洋輔, 山田 耕治, 渡部 祐司
    2015 年 40 巻 2 号 p. 256-261
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/30
    ジャーナル フリー
    症例は50歳,女性.2013年5月に右下腹部痛を自覚.近医にて大腸内視鏡検査を施行したところ上行結腸に輪状潰瘍を認め,腸結核が強く疑われた.6月下旬,急激な腹痛を主訴に当院に来院し,イレウスと診断され緊急入院・緊急手術となった.腸結核が疑われた上行結腸の狭窄部を含めた腸管切除術を施行した.切除標本で腸結核による狭窄部に椎茸がはまり込みイレウスを呈しているのが確認された.
    腸結核の患者を診察する際は,常にイレウスの危険性を念頭に置いた早期治療が重要であり,さらには狭窄の強い症例では食事指導も必要と考えられた.
  • 畑 太悟, 大町 貴弘, 鈴木 衛, 水崎 馨, 吉田 和彦, 矢永 勝彦
    2015 年 40 巻 2 号 p. 262-265
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/30
    ジャーナル フリー
    症例は30歳,男性.脳性麻痺患者で床上生活の状態であった.前日から出現した腹部膨満にて近医を受診し,投薬を受けたが改善しないため,当院を受診した.横臥による腰椎の前彎が高度で,下腹部に著明な膨満と腹膜刺激徴候があり,腹部単純レントゲンにて骨盤腔に拡張した腸管ガス像,またCTではwhirl sign様の,骨盤内に大腸の拡張および腹水を認めた.これらの所見から腸軸捻転を疑い緊急手術を施行した.盲腸は著明に拡張,壊死をきたしており,腸間膜を軸として反時計回りに360°捻転していた.壊死腸管を切除,吻合して手術を終了した.術後経過は良好で術後3日目より経口摂取を開始,術後20目に退院となった.盲腸捻転は比較的稀な疾患であり,重症心身障害児や超高齢者での発症が多く理学所見に乏しいことが多い.絞扼による腸管壊死を伴うことも多く,迅速な診断,手術が必要である.
  • 正司 裕隆, 今 裕史, 石川 隆壽, 柴崎 晋, 本間 重紀, 川村 秀樹, 高橋 典彦, 武冨 紹信
    2015 年 40 巻 2 号 p. 266-272
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/30
    ジャーナル フリー
    虫垂goblet cell carcinoid(虫垂GCC)の大多数は虫垂切除後に診断されるが,追加切除の適応には定まった基準がないのが現状である.今回,虫垂GCCの1例を経験し,本邦での虫垂GCC報告例の集計よりリンパ節転移頻度と追加切除の適応基準を検討したので報告する.症例は80歳男性.腹痛の精査加療目的に当院紹介となり,CTで急性虫垂炎穿孔と診断され腹腔鏡下虫垂切除術が施行された.術後病理組織学的検査所見で深達度SSの虫垂GCCと診断され,2期的に腹腔鏡補助下回盲部切除,D3郭清が施行された.切除検体に遺残病変はなく,所属リンパ節に転移は認めなかった.本邦報告例の集計による検討では,虫垂GCCは壁深達度の進行とともにリンパ節転移の頻度が上昇し,SSでは13%にリンパ節転移を認めた.追加切除基準のひとつに壁深達度を考慮し,SS以深ではリンパ節郭清の追加を検討すべきと考えられた.
  • 鬼塚 幸治, 福山 時彦, 大坪 慶志輝, 櫻井 翼, 長尾 祐一, 山内 潤身, 江上 拓哉, 北原 光太郎, 中村 賢二, 八谷 泰孝
    2015 年 40 巻 2 号 p. 273-276
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/30
    ジャーナル フリー
    症例は61歳,男性.健診でCEA軽度上昇を指摘され当科受診した.腹部造影CTで虫垂根部に直径30mm大の囊胞性病変を認めた.注腸造影,下部消化管内視鏡も施行し,虫垂粘液囊腫と判断した.悪性を否定できず,病変部位,サイズも考慮し,リンパ節郭清を伴う腹腔鏡下回盲部切除術を施行した.術後経過は良好で,術後14日目に退院となった.病理組織学的所見では虫垂粘液囊胞腺腫であった.本症に対する腹腔鏡下手術は,愛護的に手術操作を行えば安全施行できると考えられた.
  • 西川 元, 山本 聖一郎, 藤田 伸
    2015 年 40 巻 2 号 p. 277-280
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/30
    ジャーナル フリー
    急性骨髄性白血病治療中の骨髄移植当日に急性虫垂炎を発症した症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.症例は18歳,男性.急性骨髄性白血病と診断され,寛解導入療法施行後,骨髄破壊的前処置を行い骨髄移植予定であった.骨髄移植予定日に,右下腹部痛が出現し急性虫垂炎と診断された.保存的治療が奏効しない場合,予測される骨髄抑制状態では致死的な感染症を併発する可能性が危惧され,また施行予定の骨髄移植を延期することも困難であり,同日に腹腔鏡下虫垂切除術を施行,術直後に骨髄移植を施行した.術後経過は良好で,術後18日目に好中球の生着を確認し,骨髄移植後156日目に退院となった.白血病患者に発症する骨髄移植の際の外科的対応は,患者が骨髄抑制状態であるため慎重な判断が必要であるが,本症例は早急に診断,治療を行うことで骨髄移植を遂行しえた症例である.
  • 河野 眞吾, 宮野 省三, 町田 理夫, 北畠 俊顕, 藤澤 稔, 児島 邦明
    2015 年 40 巻 2 号 p. 281-285
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/30
    ジャーナル フリー
    症例は61歳の男性で,下痢を主訴に当院内科受診した.両下肢に色素沈着が出現し,脱毛も認めた.また,血中アルブミン値は1.8g/dl著明な低下を認めた.下部消化管内視鏡検査で上行結腸に狭窄を認めた.精査の結果,Cronkhite-Canada症候群と診断し高カロリー輸液による保存的治療を開始したが改善せず,腸閉塞,低アルブミン血症改善目的に拡大結腸右半切除術を施行した.術後経過は良好で,術後2年後内視鏡検査で残存結腸にpolypなく,血中アルブミンも正常範囲内である.保存的治療抵抗性のCronkhite-Canada症候群に対する手術治療が奏効した1症例を経験したので報告する.
  • 田島 ジェシー雄, 加藤 浩樹
    2015 年 40 巻 2 号 p. 286-292
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/30
    ジャーナル フリー
    メッシュプラグによる左鼠径ヘルニア手術を施行後,S状結腸穿通を発症した1例を経験したため報告する.症例は80歳代の男性,10年前に左鼠径ヘルニアに対し,ヘルニア手術を施行されている.来院1週間前より左鼠径部手術瘢痕からの排膿を自覚し,平成24年6月に当科初診となった.手術瘢痕より便汁の流出を認め,CTにてS状結腸と皮膚の瘻孔を認めた.メッシュに起因するS状結腸穿通と判断し,手術を施行した.メッシュプラグがS状結腸に穿通し,左鼠経瘢痕部腹壁に一塊となって強固に癒着しており,穿通部S状結腸をメッシュ,瘻孔とともに切除した.切除標本ではプラグ先端がS状結腸内に埋入し,皮膚瘻を形成していた.術後はSurgical Site Infection(以下SSI)を起こすも保存的に軽快した.鼠経ヘルニア手術後の大腸穿通例は本邦では報告例が少なく比較的稀であるため,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 岩崎 謙一, 森谷 雅人, 宮田 祐樹, 水村 泰夫, 和田 敏史, 土田 明彦
    2015 年 40 巻 2 号 p. 293-297
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/30
    ジャーナル フリー
    症例は80歳代の女性.2014年6月に腹痛を主訴に当院外来受診.腹部は軽度膨満,左下腹部に限局する圧痛を認めたが,著明な腹膜刺激症状は認めなかった.腹部CT検査では,横行結腸の遠位部からS状結腸近位部にかけて腸管壁の著名な浮腫と連続しない広範な漿膜下の気腫像を認めた.このほか少量の腹水の貯留を認めたが,腹腔内遊離ガスや門脈ガスは認めなかった.血液検査所見において白血球数,CRPの上昇は認めず,他に異常値はなかった.虚血性腸炎に伴う腸管気腫症の診断で,保存的治療の方針となった.入院加療9日目の腹部CT検査で同部位の壁肥厚および漿膜下のガス像は消失していた.入院加療13日目に退院となった.腸管気腫症は様々な背景疾患と関連する稀な状態であり,消化管壊死・穿孔の疑いから緊急手術も考慮される.本症例のように腹水貯留および漿膜下に広汎にガス像を伴う症例では,全身状態・腹部所見・各種検査所見を参考にして治療方針を決定するべきであると考えられた.
  • 田邉 和孝, 藤田 眞一, 田中 宏和
    2015 年 40 巻 2 号 p. 298-302
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/30
    ジャーナル フリー
    悪性黒色腫の中でも粘膜型悪性黒色腫は早期に自覚症状が出難く血流が豊富な消化管粘膜などに多く転移を生じやすいため特に予後不良である.今回われわれは局所切除術後に診断された直腸肛門部悪性黒色腫の1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.症例は84歳の女性で下血を主訴に来院した.精査で直腸肛門部にポリープを認めたため経肛門的に切除したが,術後の病理検査結果にて悪性黒色腫であり垂直断端陽性が疑われた.追加切除を施行したが今度は口側断端陽性の疑いがあり,根治切除目的に腹会陰式直腸切断術を提案したが希望されず.化学療法も生命予後改善のエビデンスがないことから希望されなかった.遠隔転移がなく高齢であることなどからFeron維持療法を施行したが,初回手術から6カ月後に直腸局所再発を,8カ月後には多発肝転移を認めた.積極的な化学療法を施行しなかった点を考慮しても,本疾患の悪性度の高さを再確認する結果となった.
  • 鈴村 和大, 麻野 泰包, 末岡 英明, 栗本 亜美, 橋本 貴彦, 劉 寧寧, 造住 誠孝, 廣田 誠一, 山本 新吾, 藤元 治朗
    2015 年 40 巻 2 号 p. 303-308
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/30
    ジャーナル フリー
    腎細胞癌の膵転移は比較的稀な疾患である.今回われわれは,腎細胞癌の同時性膵転移の1切除例を経験したので報告する.症例は74歳の女性で,近医にて右腎腫瘍および膵腫瘍を指摘されたため当院紹介入院となる.造影CTでは右腎,左副腎,膵頭部および膵体部に造影効果を有する腫瘍性病変を認めた.MRIでは,CTでみられた腫瘍性病変のいずれもT1強調画像でlow intensity,T2強調画像でhigh intensityであった.以上の所見より,右腎細胞癌の左副腎転移および多発膵転移の診断にて右腎摘出術と左副腎摘出術および幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織検査では腎腫瘍,副腎腫瘍,膵腫瘍ともにclear cell carcinomaの所見であった.術後は順調に経過し,第30病日に退院となった.腎細胞癌および同時性膵転移の場合における腎・膵の同時切除は手術侵襲が大きくなるも,安全に施行できる術式であると考えられた.
  • 島田 翔士, 出口 義雄, 木田 裕之, 佐藤 好信, 日高 英二, 石田 文生, 工藤 進英
    2015 年 40 巻 2 号 p. 309-314
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/30
    ジャーナル フリー
    症例は64歳,女性で腹痛,下痢,口渇を自覚し前医受診した.血液生化学検査で膵酵素,HbA1cの上昇を認め,慢性膵炎の疑いにて精査加療目的に当院紹介となった.腹部造影CTにて膵頭部に直径25mm大の腫瘤を認め,膵癌が疑われたため同部位より超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診施行し,破骨細胞様巨細胞型退形成性膵管癌の診断となった.全身精査を施行し右乳癌,甲状腺乳頭癌の同時性3重複癌と診断された.右乳癌,甲状腺乳頭癌の進行度は低く,患者の予後規定因子となる退形成性膵管癌に対する治療を優先する方針とし,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.退形成性膵管癌は比較的稀で予後も非常に不良とされている.退形成性膵管癌を含む同時性3重複癌は本邦での報告例は過去に1例のみで非常に稀であり若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 久原 浩太郎, 塩澤 俊一, 碓井 健文, 土屋 玲, 宮内 竜臣, 山口 健太郎, 横溝 肇, 島川 武, 吉松 和彦, 勝部 隆男, 成 ...
    2015 年 40 巻 2 号 p. 315-320
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/30
    ジャーナル フリー
    症例は60歳男性.スクリーニングの腹部CTにて膵体尾部の囊胞性腫瘍を指摘され,1年後のフォローアップでわずかながら増大傾向が認められた.血清CEA,CA19-9値は著明な上昇を認めた.ERCPでは膵管と囊胞との間に交通は認めなかった.腫瘍マーカー高値を伴った増大傾向のため,悪性膵囊胞性疾患が否定できないことから手術の方針とし,悪性腫瘍の可能性を考慮して脾摘を伴う膵体尾部切除,D2リンパ節郭清を施行した.病理学的には囊胞は重層扁平上皮で裏打ちされ,上皮直下はリンパ濾胞の散在する豊富なリンパ性組織からなり,膵リンパ上皮囊胞と診断した.免疫染色では扁平上皮にCEA,CA19-9が陽性であった.術後経過は良好で,3カ月後の血清CA19-9値は18U/mlと正常値化した.膵囊胞性疾患の鑑別診断として,膵リンパ上皮囊胞の可能性も考慮する必要がある.
  • 丸山 岳人, 大谷 泰介, 渡辺 英二郎, 宮木 陽, 只野 惣介, 福沢 淳也, 松尾 亮太
    2015 年 40 巻 2 号 p. 321-327
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/30
    ジャーナル フリー
    症例は39歳,男性.人間ドックにて胃粘膜下腫瘍を指摘され,当科紹介となった.腹部造影CTで十二指腸球部腹側に境界明瞭で多血性の25mmと12mm大の2つの腫瘤を認め,胃や十二指腸との連続性は判然としなかった.腹部MRIでは,T1強調画像で脾と同程度の低信号,T2強調画像で脾より軽度の高信号を呈していた.術前診断ではCastleman病,消化管間質腫瘍,神経内分泌腫瘍,悪性リンパ腫などを念頭に置き,悪性疾患も否定できなかったため,診断的治療として腹腔鏡下腫瘤摘出術を行った.腫瘤は十二指腸球部近傍の胃結腸間膜内に存在し,病理組織検査で限局型のCastleman病(hyaline vascular type)と診断された.本疾患には特異的な症状や画像所見がないため,他の充実性腫瘍との鑑別が困難である.本疾患のように明らかな悪性所見を呈していない腹腔内腫瘍では,診断的生検の意義もあり,低侵襲の腹腔鏡手術は有用と考えられる.
  • 原村 智子, 藤田 文彦, 虎島 泰洋, 崎村 千香, 黒木 保, 江口 晋
    2015 年 40 巻 2 号 p. 328-332
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/30
    ジャーナル フリー
    症例は腹部手術歴のない83歳女性.急激な腹痛を主訴に近医を受診した.腹部CTで小腸イレウス,左閉鎖孔ヘルニア嵌頓の診断となり,当科に紹介され,緊急で腹腔鏡下イレウス解除術を施行した.腹腔内所見で左閉鎖孔にヘルニア門を認めたが,イレウスの原因は大網と横行結腸間膜の癒着による内ヘルニア(横行結腸間膜裂孔ヘルニア)の嵌頓であった.嵌頓解除後の腸管血流は良好.術後経過は順調で,術後8日目に退院となった.内ヘルニアは体腔内の異常な窩や裂孔に腸管が入り込む病態で,イレウスの原因としては稀であり,特に横行結腸間膜裂孔ヘルニアは術前に正確に診断された症例の報告は少ない.本症例は閉鎖孔ヘルニアが疑われたため術前診断が困難であったが,腹腔鏡でアプローチすることで腹腔内をくまなく検索でき,診断・治療まで行うことができた.術前に確定診断のできないイレウスでは,腹腔鏡下手術が診断・治療に有用と考えられた.
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