日本外科系連合学会誌
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42 巻 , 5 号
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臨床経験
  • 西村 泰司, 渡辺 晃秀, 森川 泰如, 李 哲洙, 一ノ瀬 義雄, 栗田 晋, 木村 剛, 近藤 幸尋
    2017 年 42 巻 5 号 p. 763-767
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/10/30
    ジャーナル フリー

    気腫性腎盂腎炎(Emphysematous pyelonephritis:EPN)は死亡率が高く適切な治療を迅速に行うことが求められるが,外科的処置適応の判断となる予後予測因子は諸家によってことなる.また,今回われわれの経験した5症例で上記予後予測因子と治療結果を検討した結果,少ない症例の検討ではあるものの,諸家の唱える因子は治療方針の決定に必ずしも有用とは思われなかった.以上の結果からEPNの診断がつき,かつ穿刺可能な大きさの腎および腎周囲の気腫性病変を認めれば,諸家の唱える予後予測因子に関係なく,経皮的腎瘻術によるドレナージを施行してよいと思われた.経皮的腎瘻術によるドレナージは,熟練した医師が施行すれば極めて安全な手技である.

    またその際に患者および家族への説明と同意はこの手技に詳しくない他科の主治医より,経皮的ドレナージが極めて安全で簡単な処置であると自信を持って説明できる熟練した泌尿器科医が行った方がよいと思われた.

症例報告
  • 西村 絵美, 星野 澄人, 須田 健, 粕谷 和彦, 勝又 健次, 土田 明彦
    2017 年 42 巻 5 号 p. 768-773
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/10/30
    ジャーナル フリー

    症例は31歳男性.上腹部痛を主訴に当院を受診した.2日前にフライドチキンに混入した鶏骨を誤飲した.腹膜刺激症状は認めなかったが異物誤飲の可能性から腹部CT検査を施行した結果,胃前庭部小彎の胃壁に棒状のHigh densityな異物を認めた.異物による胃穿孔を疑い上部内視鏡検査を施行した結果,異物は確認できなかったが,異物の刺入部と予測される部位を中心に粘膜下隆起を認め,同部位の粘膜欠損部から圧迫による排膿を認めた.以上より胃異物による胃穿通および胃壁膿瘍と診断した.経時的CT検査で胃壁膿瘍の増大を認め,異物先端が腹腔内にあり摘出が必要と判断し手術を施行した.腹腔鏡下で,胃膿瘍の局在確認は可能であったが,異物の特定が困難だったため,開腹手術へ移行した.直視下で幽門輪近傍小彎側に2.0mm×20.0mm大の鶏骨を確認し,摘除した.さらに穿通部位を縫縮および大網被覆を施行し手術終了とした.術後経過は良好で,第11病日に退院となった.

  • 上田 正射, 池永 雅一, 田中 淳, 太田 勝也, 津田 雄二郎, 中島 慎介, 足立 真一, 遠藤 俊治, 山田 晃正
    2017 年 42 巻 5 号 p. 774-782
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/10/30
    ジャーナル フリー

    症例は83歳の男性で,既往歴は脳性麻痺と高血圧症を認めた.S状結腸軸捻転に対し緊急で大腸亜全摘術,単孔式回腸人工肛門造設術を施行した.第23病日,排ガスの消失と腹部膨隆,第24病日に末梢循環不全,回腸人工肛門より粘血便の流出を認めた.腹部単純CT検査で肝両葉の門脈内ガス,広範囲な小腸拡張を認め,腸閉塞による門脈ガス血症(HPVG)と診断した.保存的加療を施行し,7時間後の腹部造影CT検査では,人工肛門付近でcaliber change,whirl signを認め,HPVGは減少していた.人工肛門挙上部付近の小腸捻転と診断し,バルーンカテーテルで減圧し小腸捻転を整復した.全身状態は改善し,第76病日に退院した.HPVGは従来腸管壊死を示唆する所見とされてきたが,近年画像診断の進歩により報告例が増えており,保存的治療が奏効した報告も散見される.今回,われわれはHPVGを併発した単孔式回腸人工肛門造設後の小腸捻転に対し,経人工肛門で緊急減圧を施行した症例を経験したので文献的考察を加えて報告する.

  • 橋本 至, 山田 貴允, 瀬上 顕貴, 大島 貴, 湯川 寛夫, 塩澤 学, 森永 聡一郎, 利野 靖, 益田 宗孝
    2017 年 42 巻 5 号 p. 783-788
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/10/30
    ジャーナル フリー

    症例は21歳女性で,腹痛・嘔気を主訴に受診した.腹部造影CTでイレウスと診断され,イレウス管挿入による保存的治療で軽快した.開腹手術歴がなく,小学生の頃より腹痛を繰り返していたため,小腸バルーン内視鏡を施行し,Meckel憩室によるイレウスが疑われた.後日診断および治療目的に腹腔鏡補助下手術を行った.手術所見では回腸末端より約50cm口側の回腸に腸間膜より卵黄血管の遺残を伴うMeckel憩室を認めた.卵黄血管により回腸狭窄をきたしていたため,同血管を切離し狭窄解除した後に,Meckel憩室を切除した.

    今回われわれは腹腔鏡補助下手術で確定診断および治療したMeckel憩室卵黄血管遺残による腸閉塞の1例を経験した.Meckel憩室に対する腹腔鏡補助下手術は診断および根治性と整容性の面で有用であると考えられる.

  • 浦野 尚美, 三方 彰喜, 水谷 伸
    2017 年 42 巻 5 号 p. 789-794
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/10/30
    ジャーナル フリー

    症例は101歳女性.嘔吐を主訴に当院受診.イレウスの診断にて入院となった.イレウスチューブを挿入後症状は改善したが,チューブの先端が進行せず,イレウスチューブ造影検査で先進部に狭窄部位があると診断した.保存的治療の限界であり,手術適応と判断した.手術のリスクを評価すると,合併症発症や死亡のリスクが非常に高いが,ご家族に十分に説明を行い,同意を得たため手術を施行した.大網による索状物によって,回腸末端より約10cmの部位から約50cmにわたりclosed loopを形成し絞扼されていた.腸管の色調は比較的良好であったが,索状物を切離した後も瘢痕狭窄が残存したため,小腸を部分切除した.術後は合併症もなく経過良好にて術後21日目に退院された.今回われわれは超高齢者101歳のイレウスの手術を施行し,良好な経過を得た症例を経験したので報告する.

  • 太田 勝也, 池永 雅一, 上田 正射, 津田 雄二郎, 中島 慎介, 足立 真一, 遠藤 俊治, 山田 晃正
    2017 年 42 巻 5 号 p. 795-801
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/10/30
    ジャーナル フリー

    症例は76歳男性.201X年1月に餅の摂取3日後に下腹部腹痛が出現した.徐々に増強し,救急搬送された.腹部単純CT検査で回腸遠位部から小腸全体が腫大し,食餌性腸閉塞を疑った.イレウス管による腸管減圧を行った.挿入5日後,イレウス管から小腸造影検査を行うと回腸に長径20cm大の腫瘍性病変を認めた.腹部単純MRI検査で病変は,T1,T2強調像で低信号,拡散強調像で高信号を示した.回腸原発悪性リンパ腫による腸閉塞と診断し,緊急手術を行った.開腹すると回腸末端から20cmの位置に表面平滑な白色の腫瘍を認め,小腸部分切除を行った.病理組織学的には,腫瘍により粘膜が欠損し内腔を閉塞させ,回腸の腸管壁全層にわたり大型の核を有する腫瘍性細胞がびまん性に浸潤性増殖していた.CD20陽性,CD3陰性を示し,びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫と診断した.術後9カ月現在,化学療法は行わず経過観察中である.今回,腸閉塞症状で発症した回腸原発悪性リンパ腫の1例を経験したので報告する.

  • 坂本 譲, 蔵谷 大輔, 植村 一仁, 川村 秀樹, 高橋 宏明
    2017 年 42 巻 5 号 p. 802-808
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/10/30
    ジャーナル フリー

    大腸における神経鞘腫は極めて稀である.症例は45歳,男性で,心窩部痛と血便を主訴に当院を受診し,大腸内視鏡検査にて横行結腸に潰瘍を伴う30mm大の隆起性病変を認めた.生検の結果神経鞘腫と診断し,腹腔鏡下横行結腸切除術を施行した.病理組織検査にて,固有筋層を主体として紡錘形細胞が束状に増殖していた.免疫染色ではS-100蛋白が陽性,CD34,α-SMA,desmin,c-kitがいずれも陰性であり,横行結腸神経鞘腫に矛盾しない所見であった.大腸神経鞘腫は術前に確定診断を得られないことが多いが,自験例は術前診断しえたため不必要な系統的切除やリンパ節郭清を回避することが可能であった.

  • 市川 英孝, 岡田 恭穂, 赤澤 直也, 土屋 誉
    2017 年 42 巻 5 号 p. 809-815
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/10/30
    ジャーナル フリー

    症例は42歳男性,下痢・血便を初期症状とし,1週間後上腹部痛・発熱を呈し当院救急外来を受診.採血検査で炎症反応は高度,CT検査では下行結腸憩室炎と後腹膜気腫,腹腔内遊離ガスと縦隔気腫を認めた.汎発性腹膜炎・縦隔炎所見は認めず,全身状態も安定しており,まずは保存的治療を行い必要な術式を検討することとした.翌日,炎症反応および症状の改善を認め保存的治療を継続した.第3病日,炎症反応の上昇は認めず,CT検査では縦隔気腫は消失したが,下行結腸腸間膜背側に限局した膿瘍形成を認めた.結腸切除と膿瘍ドレナージ術の適応と判断,下行結腸部分切除,双孔式回腸人工肛門造設を行い,術後合併症はなく第19病日に退院した.結腸憩室穿孔は多くの症例で重篤な糞便性腹膜炎を併発するが,稀に腸間膜側・後腹膜側へ穿通し,腸管ガスが後腹膜腔を上行して縦隔気腫を呈する.縦隔気腫は必ずしも縦隔炎の併存を示さず,原疾患に対する治療で改善しえる.

  • 清水 将来, 小川 淳宏, 金森 浩平, 山口 拓也, 廣岡 紀文, 森 琢児, 丹羽 英記
    2017 年 42 巻 5 号 p. 816-822
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/10/30
    ジャーナル フリー

    症例は44歳女性.2011年頃より排便時出血を認め近医で下部消化管内視鏡検査を施行したところS状結腸に狭窄を認め経過観察されていた.1年後の内視鏡検査では狭窄部の生検から子宮内膜症の診断を得,ホルモン療法を開始した.2014年某日,腹部膨満を主訴に前医受診し腹部CT検査を施行し,大腸閉塞の診断で当院紹介受診となった.当院で施行した内視鏡検査ではS状結腸に高度狭窄を認め,経肛門的イレウス管を留置した.その後イレウスの改善を認め留置7日目に抜去した.入院13日目に腹腔鏡下S状結腸切除術施行.病理所見では狭窄部に一致して異所性の子宮内膜組織を認めた.経過は良好で術後16日目に軽快退院となった.術後2年経過した現在再発を認めていない.子宮内膜症による大腸閉塞は比較的稀であり,今回われわれは腹腔鏡下手術を施行したS状結腸子宮内膜症の1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.

  • 岩田 至紀, 福田 賢也, 須原 貴志, 古田 智彦, 宮崎 龍彦
    2017 年 42 巻 5 号 p. 823-828
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/10/30
    ジャーナル フリー

    症例は83歳,女性.36年前に直腸癌に対してHartmann手術施行.以後,外来で経過観察していた.牛乳を飲んだ後から急激な腹痛が出現し,当院外来を受診した.来院時バイタルは安定していたが,下腹部に軽度の膨隆を認め,同部位に圧痛があり,反跳痛と筋性防御を認めた.単純CTで胃背側から膵背側,左骨盤部に後腹膜気腫を認め,人工肛門部で腸管外への便の漏出を認めた.また,傍ストーマヘルニアを認めた.S状結腸後腹膜穿通と診断し,緊急手術を施行した.腹腔内には混濁した腹水を中等量認めたが,便塊はS状結腸間膜内に留まっており,遊離腹腔内への漏出は認めなかった.結腸切除と人工肛門再造設術を施行した.術後経過は良好で特に合併症は認めなかった.病理組織学的検査では,憩室や腫瘍は認めず特発性大腸穿孔と診断した.傍ストーマヘルニアの併存により腹直筋貫通部での屈曲と腹腔内圧の急激な上昇が局所的腸管内圧の上昇をもたらしたと考えた.人工肛門部における特発性大腸穿孔は稀であり,文献的考察を加えて報告する.

  • 上田 正射, 池永 雅一, 田中 淳, 津田 雄二郎, 中島 慎介, 太田 勝也, 足立 真一, 遠藤 俊治, 山田 晃正
    2017 年 42 巻 5 号 p. 829-834
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/10/30
    ジャーナル フリー

    腰椎腹腔シャントを有する直腸癌に対し腹腔鏡下低位前方切除術を施行した症例を経験したので報告する.症例は60歳の男性で,既往歴としてクモ膜下出血と続発性水頭症に対しクリッピング術,腰椎腹腔シャント術を施行された.肺転移を伴う直腸癌を指摘され,当科へ紹介された.大腸内視鏡検査で歯状線より6cmの直腸に全周性腫瘍を認め,生検で中分化腺癌であった.胸部CT検査で右肺転移を認めた.シャントに対し処置は行わず,通常気腹圧下で腹腔鏡下低位前方切除術を施行した.シャント先端は左側腹部から腹腔内に認め,気腹圧10mmHgで型通りに手術を行い,diverting ileostomyを造設し,吻合部後面にドレーンを留置した.術中にシャントに異常は認めなかった.術後経過は良好で,術後第5病日にドレーンを抜去し,シャントに異常は認めず,第17病日に退院した.逆流防止機構付きの脳室(腰椎)腹腔シャントを有する大腸癌患者に対して,腹腔鏡下手術を安全に施行可能と考えられた.

  • Matsuda Keiji, Ohno Kohei, Okada Yuka, Yagi Takahiro, Tsukamoto Mitsuo ...
    2017 年 42 巻 5 号 p. 835-840
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/10/30
    ジャーナル フリー

    Background: A non-operative treatment strategy including chemoradiation (CRT) for rectal cancer, that is to say, watch and wait, is not currently recommended in Japan. However, some rectal cancer patients show a pathologically complete response after CRT. Watch and wait has been gradually applied in the U.S. and Western countries.

    Case presentation: This case report describes a case report of a clinically complete response in a rectal cancer patient after CRT with a 2-year watch and wait approach. A 40-year-old woman suffered from cancer of the lower rectum without metastasis. Preoperative neoadjuvant CRT was thought to be indicated. The total dose of preoperative radiotherapy was 50.4 Gy, which was given in a fractionated manner over a long time period (1.8 Gy×28 Fr over 6 weeks). She took tegafur-uracil (300-500mg/day) and leucovorin (75mg/day) concurrently with radiotherapy. Two months after the end of CRT, colonoscopy showed a remarkable reduction of the tumor. Although we explained to the patient the content of the surgical therapy with lymph node dissection and the possibility of stoma creation, she refused to undergo the surgery. Therefore, we planned to perform a follow-up including measurement of tumor markers, colonoscopy, and CT. She has kept a clinically complete response for two years since the end of CRT.

    Conclusions: The present case showed the possibility that a watch and wait strategy might be applicable to some rectal cancer cases.

  • 村上 昌裕, 清水 潤三, 古賀 睦人, 川端 良平, 廣田 昌紀, 能浦 真吾, 池永 雅一, 長谷川 順一
    2017 年 42 巻 5 号 p. 841-845
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/10/30
    ジャーナル フリー

    症例は66歳男性.S状結腸癌による膀胱浸潤と診断され,閉塞性大腸癌のため準緊急で人工肛門造設術の上,二期的に骨盤内臓全摘術および回腸導管造設術を施行した(T4b(SI)N0H0P0M0 Stage Ⅱ).閉腹時に癒着防止吸収性バリア(セプラフィルム®)を創部直下中心に貼付し手術を終了した.術後に無治療で経過観察中,肝S6の大腸癌肝転移と診断され,術後8カ月目に腹腔鏡下肝S6部分切除術を施行した.下腹部正中創,消化管および尿路ストーマを避けて,臍左上部にOptical view法を用いて5mm径トロッカーを留置し,気腹しえた.腹腔内に癒着はほとんどなく,予定通り肝切除術を行った.病理組織学的検査結果で大腸癌肝転移と診断され,術後11日目に退院し,現在も無再発生存中である.今回,いわゆるダブルストーマが造設された症例に対して,安全に腹腔鏡下肝切除術が可能であった症例を経験した.

  • 隈本 智卓, 小山 友己, 川村 雅彦, 川村 武, 池上 雅博, 矢永 勝彦
    2017 年 42 巻 5 号 p. 846-852
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/10/30
    ジャーナル フリー

    症例は88歳女性.2カ月前からの食思不振,嘔気を自覚し近医受診後,精査目的に当院紹介となった.当院初診時,症状は心窩部の圧痛のみであった.上部消化管内視鏡検査にて胃穹窿部前壁,体下部小彎側に壁外性圧迫を認めた.単純腹部CTでは,胃小彎側に膵・肝に囲まれるように11cm大の腫瘤性病変を認めた.超音波内視鏡検査にて,胃体下部に筋層と境界が不明瞭な領域があり,胃原発の消化管間質腫瘍(Gastrointestinal stromal tumor)との診断で手術を施行した.術中所見にて,腫瘍は胃小彎側・膵体尾部に接しており,幽門側胃切除術,膵体尾部切除術,脾臓摘出術を施行した.術後病理診断にてMixed acinar-endocrine cell carcinoma of the pancreasとの診断に至った.術後半年の時点で再発,転移なく経過している.

  • 津田 雄二郎, 山田 晃正, 板倉 弘明, 高山 碩俊, 上田 正射, 中島 慎介, 太田 勝也, 足立 真一, 遠藤 俊治, 小野 豊, ...
    2017 年 42 巻 5 号 p. 853-859
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/10/30
    ジャーナル フリー

    症例は70歳,男性.前医で右腎細胞癌に対して右腎摘出術を施行し,経過観察中であった.術後5年7カ月後の腹部造影CTで膵鉤部と膵尾部に35mm大の腫瘤影を指摘され,腎癌の多発膵転移と診断した.前医でスニチニブを導入されていたが,転居に伴い当院を紹介受診した.スニチニブ導入1年後であり,腫瘍はそれぞれ18mmと20mmと著明に縮小し,膵以外の転移は認めなかった.スニチニブは,副作用のため本人の強い希望で継続困難であった.根治切除が可能と判断し膵全摘を施行した.腫瘍の病理組織像は腎癌の膵転移として矛盾しない所見であった. 術後経過は良好で,術後補助化学療法は施行せず,術後1年6カ月無再発生存中である.腎癌膵転移に対する外科的切除は膵以外に転移を認めない場合に推奨されているが,膵全摘と膵部分切除のどちらを選択すべきか定まった見解がない.今回,腎癌術後の多発膵転移に対して膵全摘を施行した1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

  • 西村 泰司, 李 哲洙, 栗田 晋, 布村 眞季, 三浦 剛史, 高橋 さゆり, 木村 剛, 近藤 幸尋
    2017 年 42 巻 5 号 p. 860-863
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/10/30
    ジャーナル フリー

    比較的稀とされる転移性陰茎癌は現在本邦137例を数えるが,そのうち腎細胞癌からの転移は稀である.症例は86歳の男性で左腎細胞癌に対し左腎部分切除術を施行後15年して亀頭部に直径約15mmの乳頭状の突出した無痛性腫瘤に気づき当院泌尿器科外来を受診した.切除した腫瘍組織の免疫染色で腎細胞癌からの転移と診断された.高齢で自覚症もなかったため追加治療は行わず経過観察とし,術後3カ月で特に異常を認めていない.本邦における腎癌陰茎転移は自験例を含め9例のみの報告であったため,貴重な症例と思われ報告する.

  • 原 仁司, 立川 伸雄, 佐藤 宏喜
    2017 年 42 巻 5 号 p. 864-867
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/10/30
    ジャーナル フリー

    症例は20歳代後半の男性.発熱と腰腹部痛にて近医へ緊急入院され,腹部造影CT検査にて後腹膜膿瘍を疑われ当院に転院となった.発熱を認め,臍右下に圧痛を伴う手拳大腫瘤を触知した.腰痛は右下肢の拳上にて増強した.腹部造影CT検査では回盲部の腸間膜内に多房性囊胞性病変を認め,最も背側の囊胞が膿瘍様に描出された.腹部超音波検査でも多房性囊胞性腫瘤として描出された.感染により炎症を生じた腸間膜リンパ管腫と診断し抗菌薬による保存的治療を開始したが,腰腹部痛は増悪し転院第4病日目に手術を施行した.手術は腸間膜腫瘤を含めた回盲部切除術とした.病理組織診断にて腸間膜リンパ管腫と診断され,感染のみならずリンパ管腫の自壊や出血が炎症の原因であったと推測された.経過良好にて術後第14病日目に退院された.腸管膜リンパ管腫は比較的稀な疾患であるが,腰痛を伴う急性腹症においては本疾患も念頭に置いた治療が必要である.

  • 江藤 誠一郎, 藤原 佑樹, 野秋 朗多, 中林 幸夫, 矢永 勝彦
    2017 年 42 巻 5 号 p. 868-873
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/10/30
    ジャーナル フリー

    症例は40歳代,男性.摂食時のつかえ感,左腹部のしこりを主訴に当院を受診した.造影CTでは左上腹部に8cm大の腫瘤を認め,腫瘤は小腸壁に連続して造影効果を伴っていた.消化管造影検査では小腸内粘膜内病変は認めなかった.壁外発育性GISTの疑いにて診断・加療目的に手術の方針となり,腫瘤摘出術を施行した.病理組織学検査では境界明瞭,紡錘形細胞の束状増殖,拡張血管のstaghorn状の形態が認められ,免疫染色ではc-kit(-),CD34+,S100(-),Desmin(-)であった.形態および免疫染色からGISTには合致せず,solitary fibrous tumor(孤立性線維性腫瘍:以下SFT)と診断された.術後第4病日に軽快退院となり,術後1年9カ月現在,再発所見はない.SFTは大部分が胸膜に発生し,胸膜外発生は稀である.治療は外科的切除が第一選択であり,SFTの12~37%が悪性,また良性でも再発した症例が報告されており,完全切除となるように注意が必要である.今回,術前画像にて壁外発育性GISTと鑑別が困難であった腸間膜原発SFTの1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.

  • 栄 政之, 新庄 幸子, 福原 研一朗, 寺倉 政伸
    2017 年 42 巻 5 号 p. 874-880
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/10/30
    ジャーナル フリー

    症例は79歳女性.C型肝硬変に対して近医に通院加療中であった.今回,下血を主訴に当院に紹介となった.初診時に臍に発赤・疼痛を伴う硬結を触知した.精査の結果,臍転移を伴うS状結腸癌と診断し,S状結腸切除および臍切除術を施行した.術後,化学療法を行ったが,血球減少の副作用が出現し,中断せざるを得なかった.術3カ月後に多発腹壁転移を呈し,術7カ月後に死亡した.肝硬変のために発達した側副血行路に沿った血行性転移と考えられた.

    内臓悪性腫瘍の臍転移はSister Mary Josephʼs Noduleと呼ばれ,比較的稀であるが,予後不良な兆候として知られている.今回,臍転移を伴ったS状結腸癌の切除術後に多発腹壁転移を呈した1例を経験したので,文献的考察を含めて報告する.

  • 村木 隆太, 佐藤 真輔, 永井 恵里奈, 瀧 雄介, 渡邉 昌也, 大端 考, 金本 秀行, 大場 範行, 鈴木 誠, 高木 正和
    2017 年 42 巻 5 号 p. 881-885
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/10/30
    ジャーナル フリー

    症例は40代,女性.右鼠径部痛と同部の腫瘤を自覚して近医を受診し,鼠径ヘルニア嵌頓の可能性が疑われたために同日当院に紹介受診となった.右鼠径部に圧痛を伴う30mm大の弾性軟な腫瘤を触知した.腫瘤の可動性は不良で,還納は不可能であった.CT検査,MRI検査,超音波検査では右鼠径部に腹腔と非交通性の囊胞性病変を認めた.Nuck管水腫を疑い,鼠径部痛は徐々に軽快していたが待機的に鼠径部切開法による囊腫切除術を施行した.術後,鼠径部痛は消失した.病理診断はNuck管水腫であり,悪性所見や子宮内膜症の併存は認められなかった.本症はこれまで痛みを伴わないことが多いと報告されてきたが,本邦の報告例の73.7%で疼痛を自覚していた.自験例のように鼠径ヘルニア嵌頓と鑑別を要するような強い症状を呈することもあり,成人女性の鼠径部痛,鼠径部腫瘤の鑑別として念頭に置くべきである.

  • 遠藤 俊治, 山田 晃正, 池永 雅一, 足立 真一, 太田 勝也, 中島 慎介, 上田 正射, 津田 雄二郎, 板倉 弘明, 山内 周
    2017 年 42 巻 5 号 p. 886-891
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/10/30
    ジャーナル フリー

    症例は77歳女性.左鼠径部の腫瘤を自覚し,穿刺吸引細胞診で低分化癌と診断された.PETで頸椎,左鎖骨下リンパ節,両側肺野・肺門,傍大動脈リンパ節,左腸骨動脈リンパ節,左鼠径部リンパ節などに集積を認めた.左鼠径部リンパ節摘出生検を行ったが,原発不明癌と診断された.カルボプラチン+エトポシド療法を開始したが効果なく永眠した.病理解剖では下腹部,左鼠径部に多発性の皮下腫瘤,両肺,縦隔リンパ節,胸膜,横隔膜,肝,腸管漿膜面,腸間膜,大動脈周囲リンパ節,骨盤内組織にも多数の結節が認められた.組織学的にはいずれも同じ組織型を示す腫瘍で,腫瘍細胞は大型で類円形,紡錘形,不整形の核と,顆粒状の豊富な細胞質を認めた.Vimentin陽性,S-100陽性,NSE陽性,Laminin陽性,CD68一部陽性で,鼠径部皮下組織原発の悪性顆粒細胞腫と考えられた.悪性顆粒細胞腫は稀であり,若干の文献的考察を加え報告する.

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