日本外科系連合学会誌
Online ISSN : 1882-9112
Print ISSN : 0385-7883
ISSN-L : 0385-7883
43 巻 , 2 号
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臨床経験
  • 木村 豊, 栗生 明博, 川端 良平, 安田 卓司
    2018 年 43 巻 2 号 p. 163-169
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/04/30
    ジャーナル フリー

    【目的】内視鏡的に止血が困難な出血性の進行胃癌に対する血管塞栓術(TAE)の有用性について検討した.

    【方法】出血性進行胃癌に対してTAEを行った9例を対象とし,30日以上輸血なく,退院できた場合を止血成功として,治療後の経過(止血,有害事象,予後)について検討した.

    【結果】止血成功例は5例(56%)で,3例に化学療法,1例に手術を行った.有害事象はGrade 3の脾梗塞1例,幽門狭窄1例,Grade 2の発熱1例,腹痛3例であった.TAE後の生存期間の中央値は止血成功例で8.1カ月,不成功例で1.4カ月であった.

    【結語】出血性胃癌に対するTAEは,止血が得られれば,退院や化学療法が可能となるため有用である.

  • 金沢 亮, 石川 隆壽, 横山 良司, 西川 眞, 井川 義英, 塩崎 正樹
    2018 年 43 巻 2 号 p. 170-174
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/04/30
    ジャーナル フリー

    全国的に病理医は不足しており,特に中規模以下の病院では病理医が不在であることも珍しくない.一方乳癌領域ではセンチネルリンパ節生検での術式決定や,乳腺断端での追加切除決定のため術中迅速診断は不可欠である.テレパソロジーは病理医が不在な病院でも術中迅速診断を行うことが出来るシステムで有り,当院では2007年よりこのシステムを導入している.当院でのテレパソロジーの成績は全国と比較して劣っておらず,今後病理医不在の病院でテレパソロジーの導入が進む可能性を示した.

症例報告
  • 小関 佑介, 佐藤 真輔, 永井 恵里奈, 瀧 雄介, 京田 有介, 渡邉 昌也, 大端 考, 金本 秀行, 大場 範行, 高木 正和
    2018 年 43 巻 2 号 p. 175-179
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/04/30
    ジャーナル フリー

    症例は74歳女性.交通事故にて多発外傷のため,当院にて保存的加療後,他院へ転院した.受傷後4カ月で突然の背部痛,呼吸苦を認め,当院に転院搬送された.来院時,ショックバイタルであった.腹部は軟で腹膜刺激症状は認めなかった.胸腹部単純CT検査では,右横隔膜ヘルニアを認め,脱出腸管の絞扼が疑われた.以上より,外傷性横隔膜ヘルニア嵌頓の診断にて緊急手術を施行した.ヘルニア門は右肝冠状間膜に近接しており,ヘルニア内容は小腸であった.ヘルニア門を5mm切開し,嵌頓していた腸管を用手的に引き出した.腸管は壊死していたため切除し,吻合を行った.横隔膜は3-0Proleneで結節縫合閉鎖した.術後経過は良好で術後17日目に退院となった.絞扼・閉塞期の外傷性横隔膜ヘルニアは比較的稀と報告されてきたが,近年本邦では頻度が増加している.絞扼・閉塞期の外傷性横隔膜ヘルニアでは臓器切除が必要となることが多く,迅速な診断,治療が必要である.

  • 清水 康博, 杉田 光隆, 中嶌 雅之, 小野 秀高, 馬場 裕之
    2018 年 43 巻 2 号 p. 180-183
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/04/30
    ジャーナル フリー

    症例は25歳,男性.精神疾患の既往があった.右下腹部痛を主訴に当院に救急搬送された.来院時,右下腹部を中心に強い圧痛と腹膜刺激症状を認めた.腹部単純CTで回腸内に並走した2本の棒状の異物を認め,それらの異物を起点に口側腸管が拡張していた.3D再構築によりそれらの異物は匙と歯ブラシであると判明した.保存的加療は困難であり,穿孔のリスクが高いと判断し,同日緊急手術を行った.異物の先端は回盲部に陥入し閊えている状態であった.小腸を切開し異物除去し,切開部は単純縫合閉鎖した.術後経過は良好で第5病日に退院となった.問診より,それらの異物は1年前に嚥下したものであった.回腸異物は腸閉塞や消化管穿孔の原因となりうる病態であり異物の形状や状態を把握することが重要であり,診断にはMDCTによる3D再構築像が非常に有用であった.また,精神疾患患者の腹痛の診察には異物嚥下も念頭に置き,十分な病歴聴取・問診が重要と考えられた.

  • 井口 健太, 玉川 洋, 藤川 寛人, 湯川 寛夫, 益田 宗孝
    2018 年 43 巻 2 号 p. 184-189
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/04/30
    ジャーナル フリー

    83歳男性.腹痛,嘔気を主訴に当院を受診.CTで小腸内に異物を認め,同部位より閉塞しイレウスとなっていた.胆囊と十二指腸に境界不明瞭な部位を認め,胆囊十二指腸瘻による落下結石に伴うイレウスと診断した.イレウス管による保存加療を行い減圧は得られたが,胆石の嵌頓所見は著変なく,外科手術の方針とした.入院4日目に単孔式腹腔鏡下イレウス解除術を施行し小腸内の胆石を摘出した.術後の上部消化管内視鏡検査で,十二指腸球部前壁に瘻孔を認めたが,臨床症状を認めないため瘻孔の閉鎖は行わず経過観察の方針とした.術後15日目に退院となった.退院後も胆囊炎や胆管炎を発症することなく外来で定期観察を行っている.術前診断とイレウス管減圧により合併症なく,患者背景を考慮した低侵襲な単孔式腹腔鏡手術を行うことが可能であった.

  • Hisataka Fujiwara, Takayuki Suto, Seika Nakamura, Fumitaka Endo, Ichir ...
    2018 年 43 巻 2 号 p. 190-195
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/04/30
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    Introduction: Paracecal hernia on the lateral side of the cecum is one of the least common types of internal hernia. We report herein a case of paracecal hernia on the lateral side of the cecum that was successfully diagnosed preoperatively by computed tomography (CT) and treated laparoscopically.

    Case presentation: A 95-year-old man with a history of appendectomy was referred to our hospital for further evaluation. He was admitted with a diagnosis of small bowel obstruction (SBO) and was treated conservatively with placement of a long intestinal tube. Symptoms and abdominal findings immediately improved, but a large amount of fluid continued to be drained. We therefore carefully reevaluated the obstruction. CT revealed SBO caused by paracecal hernia resulting from intestinal invagination into a pouch on the lateral side of the cecum. Laparoscopic surgery was performed on hospital day 8, and we intraoperatively confirmed and repaired lateral paracecal hernia. The patient was discharged without major complications.

    Conclusions: Preoperative diagnosis of internal hernia, including paracecal hernia, is relatively difficult. CT represents the most successful diagnostic modality, but requires careful examination, and laparoscopic surgery can play a useful role in definitive diagnosis and repair of SBO. Moreover, preoperative decompression facilitates safe laparoscopic surgery.

  • 市川 英孝, 大石 英和, 赤澤 直也, 岡田 恭穂, 土屋 誉
    2018 年 43 巻 2 号 p. 196-203
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/04/30
    ジャーナル フリー

    症例は48歳女性,発熱と腹痛を主訴に当院を救急受診.右下腹部に限局した圧痛・反跳痛を認め,血液検査では炎症反応の上昇,CT検査では虫垂腫大,壁肥厚と周囲の膿瘍形成と回結腸動脈に沿うリンパ節の腫大を認めた.膿瘍形成性虫垂炎・限局性腹膜炎と診断し,全身状態は安定のため,保存的治療を行い,症状軽快後に精査を行う方針とした.入院後,禁食・抗生剤投与で,症状・炎症反応の改善を認め退院とした.後日の大腸内視鏡では異常所見は認めないものの,CT検査では虫垂壁肥厚と内腔の液体貯留,リンパ節腫大の残存を認めた.虫垂腫瘍を疑い,十分なInformed consent後に回盲部切除術(D3郭清)を施行.リンパ節転移を伴う虫垂粘液癌の最終診断を得た.膿瘍形成性虫垂炎は虫垂癌合併の可能性があり,保存的治療で虫垂炎症状の改善を図り,その後の精査でも虫垂内の液体貯留や壁肥厚,リンパ節腫大などの画像所見が改善しない場合は,待機的手術を積極的に考慮すべきである.

  • 村上 弘大, 三宅 正和, 植村 守, 宮崎 道彦, 池田 正孝, 西川 和宏, 宮本 敦史, 平尾 素宏, 中森 正二, 関本 貢嗣
    2018 年 43 巻 2 号 p. 204-209
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/04/30
    ジャーナル フリー

    低異型度虫垂粘液性腫瘍(Low-grade appendiceal mucinous neoplasm,LAMN)はWHO分類に準じて大腸癌取扱い規約第8版にも掲載されたが,未だ標準治療は定まっていない.今回,われわれは腹腔鏡下に切除を行った2例を経験した.症例1:75歳女性.婦人科疾患精査中に虫垂に囊胞性病変を指摘され虫垂粘液囊腫と診断し,腹腔鏡下虫垂切除術を施行した.摘出標本の内部に豊富な粘液を認め,病理組織学的診断はLAMNであった.症例2:36歳女性.右下腹部腫瘤を自覚し,虫垂から連続する囊胞性病変を指摘され虫垂粘液囊腫の診断にて腹腔鏡下虫垂切除術を施行した.摘出標本の内部には粘液が充満し,病理組織学的診断はLAMNであった.今回経験した2例はいずれも虫垂先端に限局した病変で根部は正常虫垂であったことから,虫垂切除のみを施行した.本疾患について若干の文献的考察を加え報告する.

  • 高山 碩俊, 池永 雅一, 太田 勝也, 上田 正射, 津田 雄二郎, 中島 慎介, 足立 真一, 遠藤 俊治, 山田 晃正
    2018 年 43 巻 2 号 p. 210-215
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/04/30
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    症例は40歳代,女性.主訴は下腹部痛.検診目的で上部消化管造影検査を施行された.検査後5日目に下腹部痛を主訴に近医を受診し,腹部X線検査にて結腸内にバリウムの貯留を認めた.下部消化管内視鏡下でスネアにて硬便の破砕を行われた後に,グリセリン浣腸でのバリウム便の排出を試みられたが奏効せず.翌日の腹部CTにてFree airを認めたため,当院に救急搬送された.腹部造影CTでS状結腸を中心にバリウム便貯留を認め,腹腔内全体の腹水貯留を認めた.バリウム貯留を起因とした大腸穿孔と診断し,緊急手術を行った.腹腔内は便汁性腹水で満たされており,S状結腸中央に穿孔部を認めた.Hartmann手術を行い,術後は合併症をきたす事なく術後28日目に退院した.バリウム検査後の大腸穿孔は稀であり,救命できたとしても著しくQOLが低下するので,本疾患に留意した上での検査後の排便状態の管理が求められる.

  • 島田 岳洋, 岡林 剛史, 長谷川 博俊, 鶴田 雅士, 蔵本 純子, 北川 雄光
    2018 年 43 巻 2 号 p. 216-221
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/04/30
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    症例は82歳,女性.大動脈弁狭窄症と貧血の精査でS状結腸癌を指摘され,根治術を施行した.術後病理組織学的検査にて,腫瘍には粘膜下層から筋層に存在する中分化型管状腺癌成分と,これに連続し周囲・深部への浸潤を認める内分泌細胞癌成分が共存しており,内分泌細胞癌と診断された.内分泌細胞癌の成分は全体の約90%,腺癌成分は約10%であり,大腸癌取り扱い規約第8版では内分泌細胞癌,2010年WHO分類ではNeuroendocrine carcinoma(以下NEC)に相当する大腸癌であった.内分泌細胞癌成分ではp53陽性,Ki-67indexは80~90%であり腺癌成分よりも高値であった.腺癌の併存した内分泌細胞癌は一般的な大腸癌と比較して内分泌細胞癌成分の影響により悪性度が高く予後不良であるが,患者は術後48カ月の現在,無再発生存中である.

  • 三島 圭介, 塩谷 猛, 南部 弘太郎, 渡邉 善正, 小峯 修, 渋谷 肇, 鈴木 英之
    2018 年 43 巻 2 号 p. 222-228
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/04/30
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    症例は70歳男性.左下腹部の腫瘤を主訴に外来を受診した.腹部単純CT検査にて手拳大の腹壁膿瘍を認めたため,経皮的ドレナージを行った.さらに下部消化管内視鏡検査を行ったところ,SD junctionに狭窄を伴う全周性の腫瘍性病変を認め,生検にて腺癌と診断された.経肛門的イレウス管を留置したのちにS状結腸切除および腹壁合併切除術を施行した.病理学的組織所見は,S,circ,type2,70×50mm,tub1>muc,pT3,pN0,H0,P0,M0,pStage Ⅱで,腹壁内に腫瘍細胞は認めなかった.

    原因不明の腹壁膿瘍に遭遇した際には大腸癌を鑑別にあげ,その治療法としてまずドレナージを先行し,炎症を軽快させてから手術治療を行うことが望ましいと考えられた.

  • 西垣 大志, 金城 達也, 伊禮 靖苗, 西巻 正
    2018 年 43 巻 2 号 p. 229-234
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/04/30
    ジャーナル フリー

    症例は59歳,女性.腹部膨満感のため,近医を受診.骨盤内腫瘍の診断で精査加療目的に当院産婦人科へ紹介受診となる.骨盤内造影CTおよびMRIでは骨盤内に20cm大の分葉状腫瘤を認め,強い造影効果を伴い,内部構造は不均一で,一部に壊死あるいは囊胞状構造の所見を認めた.また,粘膜下静脈および下腸間膜静脈の高度拡張を認めた.S状結腸直腸間膜原発腫瘍と診断し,手術を施行.摘出標本は20×15×7cm,重量1,740gの表面平滑な分葉状腫瘤であった.病理所見では紡錘形細胞が血管増生を伴いながら増殖しており,CD34,vimentin,bcl-2が陽性で,solitary fibrous tumor(SFT)と診断された.術後15カ月が経過し,無再発生存中である.腸間膜由来SFTは非常に稀であり,31例の報告があるのみである.組織学的に悪性度の高い症例は少ないが,完全切除および長期的経過観察が重要である.

  • 中本 裕紀, 石川 隆壽, 横山 良司, 西川 眞, 武冨 紹信
    2018 年 43 巻 2 号 p. 235-238
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/04/30
    ジャーナル フリー

    症例は70代女性.下血を主訴に当院内科受診.下部消化管内視鏡検査にて下部直腸(Rb)に30mm大の0-Ⅰ型腫瘍を認めた.生検を施行しgroup4と診断されたため切除の方針とした.腫瘍は肛門管上縁を越えて肛門側へ進展しており,ESDでは肛門管領域の静脈叢からの出血の対処が難しいことがあり,またTARでは腫瘍口側の視認性が悪いことがあり,それぞれの利点を生かし難点を補う目的でESDとTARを合同で行うこととした.手術はESDによる肛門管上縁までの切離を先行し,その後TARにより肛門管部分を切離し腫瘍を一括摘出した.病理組織検査でadenocarcinomaが検出されたが,水平断端,垂直断端ともに陰性であった.

    本症例のような肛門管上縁を越えるような直腸腫瘤に対しては内視鏡的処置と経肛門的処置を組み合わせることにより安全にかつ確実に切除可能となり得る.

  • 甲田 祐介, 大目 祐介, 嵯峨 謙一, 河本 和幸
    2018 年 43 巻 2 号 p. 239-246
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/04/30
    ジャーナル フリー

    神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor;NET)は消化管や膵に発生することが多く,肝原発は非常に稀である.今回われわれは肝原発NETに対して肝切除術を施行した2症例を経験した.症例1は65歳の男性で肝囊胞腺腫の術前診断で肝部分切除術を施行した.術後病理診断でWHO分類のNET G2と診断した.症例2は72歳の男性で,肝細胞癌の術前診断で腹腔鏡下肝部分切除術を施行した.術後病理診断でWHO分類のneuroendocrine carcinoma:NEC G3と診断した.2症例ともに術後再発をきたしているが,化学療法を行い現在生存中である.

  • 嵯峨 謙一, 大目 祐介, 河本 和幸
    2018 年 43 巻 2 号 p. 247-252
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/04/30
    ジャーナル フリー

    十二指腸乳頭部癌に肝転移伴った場合,従来予後不良とされ,非切除因子の一つである.

    症例は55歳の女性で,検診発見の十二指腸乳頭部の腺腫のフォロー中に,CA19-9上昇を認めた.精査で肝S5に5cm大の腫瘍を認め,開腹肝部分切除(S5)を施行した.病理結果は転移性肝腫瘍(腺癌)が疑われ,原発巣の検索を行い,十二指腸乳頭部の腺腫の一部癌化を認めた.

    初回手術2カ月後に膵頭十二指腸切除術を行い.病理結果はSM,N0,H1 Stage Ⅳ(胆道癌取扱い規約第5版)であり,TS-1による補助化学療法を開始した.

    膵頭十二指腸切除術後6カ月後に3箇所の肝転移疑われたが,化学療法(CPT-11+CDDP)により画像上CRとなった.初回手術2年4カ月後にS5,初回手術5年4カ月後にS3,初回手術8年8カ月後にS5に再発したが,肝外病変の合併を認めないこと,いずれも単発であったことから肝切除を積極的に行い,初回手術含めて4回の肝切除術を行った.

    現在,初回手術から13年4カ月無再発生存中である.

  • 阿部 恭平, 二川 康郎, 岡本 友好, 兼平 卓, 矢永 勝彦
    2018 年 43 巻 2 号 p. 253-257
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/04/30
    ジャーナル フリー

    症例は81歳男性.健診にて異常を指摘され当科紹介受診となった.左肝を占拠する5cm大の腫瘤を認め,同腫瘤の末梢側胆管は拡張し,リンパ節腫大や遠隔転移は認めなかった.腫瘤形成型肝内胆管癌の診断にて左肝切除を施行し,術後第8日に軽快退院となった.摘出検体の肉眼所見では5cm大の境界不明瞭な黄白色の硬化腫瘤を認め,最終病理診断は肝炎症性偽腫瘍(以下,肝IPT)であった.本症は診断が得られれば保存加療や経過観察が第一選択とされるが,①症状が持続する,②腫瘍により重要臓器が圧排される,③確定診断がつかない,などで手術が検討される.しかし画像的特異所見はなく,また炎症の時期により造影パターンが多様に変化するため,肝悪性腫瘍との鑑別は困難であるとされる.今回,術前画像では肝IPTの診断が困難であり肝切除を行った1例を経験した.肝IPTは肝腫瘍を認めた際に鑑別診断として挙げるべき疾患の一つと考えられた.

  • 阿部 恭平, 二川 康郎, 柴 浩明, 宇和川 匡, 石田 祐一, 矢永 勝彦
    2018 年 43 巻 2 号 p. 258-264
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/04/30
    ジャーナル フリー

    症例は83歳女性.既往歴として,8年前に十二指腸乳頭部癌に対して膵頭十二指腸切除術と2年前に横行結腸癌に対し右半結腸切除を施行されている.今回は貧血と下血を主訴に当院受診した.腹部CTにて主膵管内に腫瘍を認め,小腸内視鏡にて膵空腸吻合部に腫瘍出血を認め,経カテーテル的血管塞栓術を施行し止血,軽快退院となった.小腸内視鏡の生検結果は高分化型管状腺癌であったが,免疫組織学的染色で結腸癌の発現形式とは異なること,CT上主膵管を主病変としていることより,結腸癌の転移再発は否定的であった.また,乳頭部癌再発は初発乳頭部癌がリンパ管浸潤,静脈浸潤なども認めず,pStage ⅠAであることから否定的と評価し,残膵癌と診断した.乳頭部癌に対する膵頭十二指腸切除術後の異時性残膵癌は稀ではあるが,同病態の発症を念頭にした長期の経過観察が必要であると考える.

  • 西村 泰司, 渡辺 晃秀, 森川 泰如, 李 哲洙, 一ノ瀬 義雄, 栗田 晋, 近藤 幸尋
    2018 年 43 巻 2 号 p. 265-268
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/04/30
    ジャーナル フリー

    精巣囊胞は稀な疾患である.症例は74歳男性透析患者で血便と下腹部痛の精査中に施行したCTで偶然に両側精巣囊胞を指摘され当科を受診した.超音波検査では単純性精巣囊胞に特徴的な,辺縁が整で明瞭,内部エコーはなく均一に低エコーであり,腫瘍マーカーは陰性で,burned-out tumorに特徴的な転移性腫瘍を認めなかったため両側単純性精巣囊胞と診断し,穿刺や精巣摘除術は施行せず経過観察となった.本邦における単純性精巣囊胞は自験例を含め24例のみの報告であったため,貴重な症例と思われたので若干の文献的考察を加えて報告する.

  • 西村 泰司, 渡辺 晃秀, 森川 泰如, 李 哲洙, 一ノ瀬 義雄, 栗田 晋, 棚橋 善克, 近藤 幸尋
    2018 年 43 巻 2 号 p. 269-272
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/04/30
    ジャーナル フリー

    単純性腎囊胞は健康診断で頻回に認められる疾患であるが,自然消失することは極めて稀である.症例は57歳男性,検診における腹部超音波検査で右腎中極の腎囊胞を指摘され,当科でCT検査により2.5cm×2.3cmの同部の単純性腎囊胞と診断されて1年おきの外来経過観察となった.初診から8年後の超音波検査で右腎囊胞を確認できなかったためCT検査を施行したところ,囊胞が存在した腎中極外側に囊胞壁の残存組織を認めるのみで囊胞は消失していた.超音波検査で囊胞が認められた最後の診察から1年の間に外傷の既往や疼痛,発熱などの症状がなく囊胞が消失したので,囊胞の自然消失と診断した.単純性腎囊胞の自然消失は本邦3例目で貴重な症例と思われるので若干の文献的考察を加えて報告する.

  • 池田 耕介, 長 晴彦, 中島 哲史, 山田 貴允, 尾形 高士, 吉川 貴己
    2018 年 43 巻 2 号 p. 273-278
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/04/30
    ジャーナル フリー

    症例は80歳,男性.胃癌に対し腹腔鏡補助下胃全摘術を施行.T1aN0M0,Stage ⅠAの病理診断で経過観察となった.手術26カ月後,CT検査で骨盤腔に75mm大の境界明瞭で造影効果の乏しい腫瘤性病変を認め,開腹手術を施行した.腫瘍は表面平滑だが小腸間膜内にあり,小腸の部分合併切除を要した.免疫組織染色でβ-cateninが核内陽性を示し,デスモイド腫瘍と診断された.デスモイド腫瘍は外傷や手術部位に発生しやすいことが知られているが,腹腔鏡下手術との関連については明らかではない.腹部手術後は,腹腔内デスモイド腫瘍の発生を念頭において経過観察することが重要と考えられた.

  • 佐々木 義之, 明石 諭, 杉森 志穂, 山田 行重
    2018 年 43 巻 2 号 p. 279-284
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/04/30
    ジャーナル フリー

    症例は40歳代女性.腹痛のため内科を受診.腹部造影CT検査では左側小腸間膜に多発性の低吸収域囊胞状腫瘤性病変を認めた.またMRI検査では同部位にT1強調像で低信号,T2強調像で高信号を呈する多房性囊胞状腫瘤を認めた.以上より小腸間膜リンパ管腫が疑われ当科紹介となった.受診時,腹部は平坦,軟で圧痛や腹膜刺激症状も認めなかった.一旦は経過観察の方針となったが,腸捻転などのリスクを考慮し,手術加療を希望されたため単孔式腹腔鏡下での手術を施行した.術中所見では,上部小腸間膜に内部が透見される多房性の囊胞性病変を認めた.同病変を含めて小腸部分切除を施行した.病理所見でリンパ管腫と診断した.リンパ管腫は若年者に発生することが多い疾患で,本症例のように成人の腸間膜に発生するのは比較的稀である.単孔式腹腔鏡下で切除された例はなく,文献的考察を加えて報告する.

  • 船水 尚武, 中林 幸夫
    2018 年 43 巻 2 号 p. 285-290
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/04/30
    ジャーナル フリー

    症例は86歳の女性.前医で1週間持続する発熱に対し,肺炎疑いで入院抗菌薬治療が行われた.解熱せず胸部CTを施行したところ,腹腔内遊離ガスを認め,消化管穿孔疑いで当院へ緊急搬送された.画像上,S状結腸に多発する憩室と腸管壁の肥厚,および脂肪織の混濁を認めた.また子宮壁の肥厚,および内部に液体の貯留を認めたが,これは憩室穿孔による二次的変化と考え,術前診断をS状結腸憩室穿孔による子宮穿破とし,緊急手術を施行した.S状結腸は子宮を囲むように癒着し,剝離すると,壊死した子宮壁より大量の膿を認めた.多発憩室を伴うS状結腸に穿孔部位を認めなかった.婦人科医により,子宮留膿症穿孔の診断で子宮腟上部切断術および両側付属器切除術を施行した.術後は敗血症になるも,集学的治療により状態安定し,第18病日に軽快転院となった.子宮留膿症は高齢女性に多く,稀に穿孔性腹膜炎となり得る.本症例のように腹腔内遊離ガスを呈することで,術前に消化管穿孔と診断される報告例も多い.従って,高齢女性における腹腔内遊離ガスを伴う急性腹症の鑑別診断として子宮に炎症所見を伴う場合は,穿孔性子宮留膿症を考慮する必要がある.

  • Temma Soga, Takeaki Sato, So Sampei, Shigeki Kushimoto
    2018 年 43 巻 2 号 p. 291-294
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/04/30
    ジャーナル フリー

    Background: A concurrent underlying infection must be considered when immunocompromised patients present with multiple muscle abscesses. Disseminated nocardiosis is a rare infectious disorder that may disseminate to the muscle and other tissues, including the central nervous system. Here we describe the case and management of an immunocompromised patient who presented with disseminated nocardiosis and multiple muscle abscesses. In such cases, the by surgical drainage of muscle abscesses and subsequent early diagnosis and identification of the causative organism may facilitate appropriate treatment.

    Case Presentation

    A 70-year-old woman was admitted with general fatigue and left lower abdominal and hip pain. She had a 10-year history of treatment with azathioprine and prednisolone for AQP4-antibody-related neuromyelitis optica spectrum disorders. Although her vital signs were normal, laboratory data indicated a C-reactive protein concentration of 22.9mg/dL, and computed tomography revealed a coin-sized lesion in her right lung and abscesses in the left abdominal oblique and gluteal muscles. A blood culture was positive for multidrug-resistant Staphylococcus epidermidis. We surgically drained the multilocular abscesses and conducted a bacteriological evaluation, which revealed the presence of Nocardia spp. The patient recovered and was given a plan of sulfamethoxazole–trimethoprim therapy for 6 months.

    Conclusions

    Regardless of the positive result of blood culture consistent with multiple abscess formation, we should consider for disseminated nocardiosis in immunocompromised patients. To prevent central nervous infection and relapse, aggressive bacteriological evaluation and appropriate antibiotics therapy may be essential.

  • Takeaki Sato, Motoo Fujita, Shigeki Kushimoto
    2018 年 43 巻 2 号 p. 295-299
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/04/30
    ジャーナル フリー

    Background

    The component separation technique (CST) allows reconstruction of large ventral defects, which may be beneficial under contaminated conditions, but the rate of surgical site infection is relatively high. Negative pressure wound therapy (NPWT) potentially offers better wound closure in such conditions.

    We present a patient having multiple complex incisional hernias with parastomal hernias who underwent ventral herniorrhaphy with the combined use of CST and NPWT.

    Case presentation

    This 78-year-old woman had a history of Hartmannʼs operation 5 years previously. She was complicated with median incisional hernia and parastomal hernia. We performed herniorrhaphy with stoma closure simultaneously, with CST and NPWT. After colon anastomosis and simple suture repair of the parastomal hernias, her median abdominal wall defects were assessed as 180mm at upper and 150mm at lower abdomen. Although fascial closure was completed by CST with some tension, dead space remained under the skin and subcutaneous fat layer. Therefore, we combined NPWT on the fascial plane. There was no severe surgical site infection and there was no evidence of hernia recurrence for a year after the operation.

    Conclusions

    CST followed by NPWT may be an effective alternative for repair of huge and complex incisional hernias, particularly in contaminated conditions.

  • 内藤 滋俊, 山田 進, 安部 雄, 永易 希一, 中谷 晃典, 北島 政幸, 渡部 智雄, 落合 匠, 西村 和彦
    2018 年 43 巻 2 号 p. 300-304
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/04/30
    ジャーナル フリー

    症例は70歳代,女性.疼痛を伴わない左鼠径部膨隆を自覚し,近医を受診した.還納は容易であり,鼠径ヘルニアの診断にて当科紹介となった.初診時に鼠径部腫瘤は還納できないものの,Computed Tomography(CT)にて腸管の嵌頓を認めず,Nuck管水腫疑いであったため,待機的にNuck管水腫根治術の方針とした.手術診断は大腿ヘルニアで,内容は左卵管であった.肉眼的に一部虚血の所見を認めたため,左卵管切除術を施行し,大腿輪にPlugを挿入後,大腿輪を縫縮し手術を終了した.現在,5カ月まで再発なく経過している.ヘルニア内容が卵管であった大腿ヘルニアの1例を経験したので報告する.

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