中毒研究
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症例報告
  • 小川 菜生子, 弦切 純也, 佐野 秀史, 沼田 儒志, 奈倉 武郎, 守屋 まりこ, 織田 順
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 36 巻 1 号 p. 27-31
    発行日: 2023/03/10
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

    メトホルミン服用患者に生じる乳酸アシドーシスを総じてメトホルミン関連乳酸アシドーシス(metforminassociated lactic acidosis,以下MALA)と称し,合併時の死亡率は高い。今回われわれは,メトホルミン過剰摂取を原因とした乳酸アシドーシスに対して血液透析の早期導入により良好な転帰を得た症例を経験した。46歳,男性,糖尿病の既往をもつ患者。来院8時間前から自殺目的にメトホルミンを計54.5 g,レパグリニドを計7.5 mg服薬し当院に救急搬送された。来院時,乳酸アシドーシス(pH 7.299,血中乳酸値10.4 mmol/L),腎機能障害を認めた。支持療法を行ったが乳酸値が上昇したため,重症化を考慮して来院8時間後より間欠的血液透析を導入した。計2回の血液透析によりアシドーシスは改善し集中治療室を退室した。本症例のようにメトホルミン服用患者でメトホルミンを原因に生じた乳酸アシドーシスでは,遅発性腎機能障害やアシドーシスによる重症化を考慮し,早期の血液透析導入を検討すべきであると考えられた。

  • 三村 悠, 大井 博貴, 高田 武人, 三村 將, 船山 道隆
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 36 巻 1 号 p. 32-37
    発行日: 2023/03/10
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

    一酸化炭素中毒による遅発性脳症を発症したが3回のステロイドパルスおよびステロイド後療法とリハビリテーションに反応し退院へつなげることができた症例を経験したので報告する。

    【症例】患者は30代男性。一酸化炭素曝露後第29病日の朝に意識障害が悪化し,一酸化炭素中毒による遅発性脳症と診断した。同日より髄液中のミエリン塩基性蛋白(MBP)の推移をみながらステロイドパルスおよび後療法で加療をした。第108病日にはMBPは検出感度以下となり,緩徐ではあったが意識レベルとADLは改善した。その後もリハビリテーションを行い第154病日には自発語も認め,第190病日にはADLは自立レベルへ改善した。

    【考察】典型的な遅発性脳症の長期経過を追うことができた。継続的なステロイド加療およびリハビリテーションは脱髄の抑制に寄与し,髄液中のMBPに反映され,意識レベルの改善につながったと考えられた。

  • 櫻間 啓基, 井口 有紀, 高村 和弘, 松原 崇一朗, 山﨑 啓之, 甲斐 豊
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 36 巻 1 号 p. 38-43
    発行日: 2023/03/10
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

    78歳,女性。頭痛の原因であった脳膿瘍に対する穿頭膿瘍ドレナージ術後よりメトロニダゾール1,500 mg投与された。術後約2カ月後より,頭痛の再発,嘔吐,筋力低下,立位保持困難,構音障害を認め入院となった。頭部MRI FLAIR検査で,両側小脳歯状核に高信号を認めた。これらのことからメトロニダゾール誘発性脳症と診断しメトロニダゾールを中止した。また,入院時にメトロニダゾールおよびその代謝物であるヒドロキシメトロニダゾールの血清中濃度測定を行ったところ,それぞれ41.5 μg/mL,15.9 μg/mLと高値を示した。薬剤中止後,いずれの血清中濃度も急激に減少し,症状も改善した。また,頭部MRIの小脳歯状核病変も消失した。これらのことから,メトロニダゾールならびにヒドロキシメトロニダゾールがメトロニダゾール誘発性脳症に関与していると考えられた。また,これらの血清中濃度の測定が,脳症発症の防止あるいは発症後の臨床経過の予測に有用である可能性が示された。

症例短報
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