日本心臓血管外科学会雑誌
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21 巻, 1 号
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  • 血栓内膜摘除術とバイパス術
    福村 好晃, 黒上 和義, 北川 哲也, 江川 善康, 加藤 逸夫
    1992 年 21 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 1992/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1978年から1990年10月までに大腿膝窩動脈領域閉塞性動脈硬化症75症, 97肢に対して血行再建手術を施行した. Risk factor として喫煙歴と高血圧が高率で, 他に心臓, 脳, 腎臓に合併症を持つものも多く認められた. 手術は大腿膝窩動脈の血栓内膜摘除術 (TEA) 31肢, またはバイパス術 (バイパス) 66肢である. 累積開存率はTEAが5年および10年が72.6%, バイパスが5年48.1%, 10年36.1%と, TEAがバイパスに比し遠隔期において有意に良好で, TEAで閉塞した症例は全て1年以内であった.また, 近位部病変合併例においては近位部を解剖学的に再建した方が, 大腿膝窩動脈領域の開存率は良好であった. TEAには, 早期閉塞を防ぐための慎重な手術と術後の厳密な抗凝固療法が重要であるが, 良好な遠隔期の開存率からみて, 大腿膝窩動脈領域の血行再建術として優れた術式である.
  • 磯村 正, 久富 光一, 平野 顕夫, 犬塚 宏人, 鈴木 重光, 小須賀 健一, 大石 喜六
    1992 年 21 巻 1 号 p. 6-10
    発行日: 1992/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    術前に低心機能を示した虚血性心臓病 (IHD) に対し, 冠動脈バイパス術 (CABG) を行った16例について, 手術法, 術前, 術後の心機能の推移を検討した. 術前の冠動脈病変数は, 全例三枝病変で, 術前の左室駆出率 (EF) は40%以下, 心係数 (CI) は平均1.97l/min/m2であった. このうち動脈グラフトを用いたもの (AG群) 10例, 静脈グラフトのみを使用したもの (SVG群) 6例であった. 体外循環時間, 大動脈遮断時間, 末梢冠動脈吻合枝数は両群間に有意差を認めず, 人工心肺離脱時大動脈バルーンパンピングを必要としたものはSVG群1例で, 術後のカテコールアミンの使用率はSVG群に有意に多かった. 術後のCIはAG群, 3.1±0.4l/min/m2, SVG群3.3±0.3l/min/m2 (平均3.16l/min/m2)で, NYHAも全例I°~II°へ改善し, その改善度には両群間に有意差をみとめなかった. 以上の結果より, 低心機能を有するIHDに対するCABGにおいても, 動脈グラフトは安全かつ積極的に使用できるものと考えられた.
  • Na+-Ca2+交換機構の観点から
    松田 成人
    1992 年 21 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 1992/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    虚血心再灌流障害の発生機序を明らかにすることを目的に, 細胞膜Na+-Ca2+交換機構の観点から実験的検討を行った. ラット摘出心を用いた isolated working heart model を使用した. 37℃-15分間の global ischemia の後, 再灌流の初期10分間の冠灌流液中Na+濃度, Ca2+濃度を段階的に変化せしめ, 再灌流後の心機能, 心筋代謝に及ぼす影響を検討した. その結果, 再灌流障害はNa+濃度25~135mMにおいて濃度依存性に軽減され, Ca2+濃度0.5~1.5mMにおいて濃度依存性に増悪した. また, 細胞膜Na+-Ca2+交換阻害物質として amiloride を再灌流の初期に投与した結果, 心筋障害は有意に抑制された. 以上の結果より, 再灌流障害発生機序の原因として細胞膜Na+-Ca2+交換機構の役割は重要であり, 交換阻害物質を投与し, Ca2+の細胞内流入を抑制することは, 再灌流障害の発生予防に有効な手段になりうると考えられた.
  • 葉玉 哲生, 調 亟治, 高崎 英巳, 森 義顕, 岡 敬二, 重光 修, 木村 龍範, 宮本 伸二, 内田 雄三
    1992 年 21 巻 1 号 p. 17-23
    発行日: 1992/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    著者らは, 1981年11月より1990年12月までに非破裂性56例, 破裂性21例の計77例に手術を施行した. 非破裂性では手術死亡, 病院死亡はみられないが, 破裂性では4例 (19%) が手術死した. 手術成績向上のため, 手技の改良を図りあわせて出血量の減少に努めた. 大動脈瘤頸部の剥離は最小限とし, 中枢側・末梢側ともテープは通さず血管鉗子を装着した. 動脈瘤中枢側吻合は内挿法を用い, 末梢側は総腸骨動脈が多少瘤状に拡大していても総腸骨動脈分岐部内腔より縫合閉鎖し, 人工血管のY脚はそれぞれ外腸骨動脈に端側吻合する方法を標準術式としてきた. 術後造影にて, 中枢・末梢とも吻合部動脈瘤は認めず, 空置した総腸骨動脈瘤は血栓化による縮小化がみられた. 破裂性においても非破裂性と同様の手技を用いてきた. これらの術式の工夫により出血量は減少し, 非破裂性56例中, 無輸血手術は25例 (45%) となった. Kaplan-Meier 法による累積生存率は, 5年生存率よりみると非破裂性が87%, 破裂性が49%であり, 非破裂性の方が良好であった.
  • 四万村 三恵
    1992 年 21 巻 1 号 p. 24-34
    発行日: 1992/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    急性動脈閉塞症をCPK値をパラメーターにして軽症から重症に分類し, おのおのの腎臓の糸球体基底膜と動脈, とくに虚血部である大腿動脈と非虚血部である頸動脈の病理組織学的変化を検討した. 雑種成犬23頭の腎動脈下腹部大動脈を結紮し, 急性動脈閉塞犬を作成した. 24時間後に血流を再開し, 血流再開後180分の腎臓および大腿動脈と頸動脈の光顕ならびに電顕所見を検索した. 腎臓の変化として糸球体基底膜の肥厚に着目し, その肥厚度はCPK値の上昇に伴い高度になる傾向を認めた. とくにCPK値70,000IU/l以上では病理組織学的変化は顕著であった. 動脈では内皮細胞の変性や消失とそれに伴う中膜変性を認めた. これらの変化は虚血部のみならず非虚血部においても同様に認められた. この腎臓および血管の所見より, 急性動脈閉塞症が早期より, またすでに軽症においても全身的変化がおよんでいることを示唆した.
  • 桜田 徹, 栗林 良正, 関根 智之, 相田 弘秋, 関 啓二, 後藤 由和, 柴田 芳樹, 目黒 昌, 林 龍司, 阿部 忠昭
    1992 年 21 巻 1 号 p. 35-40
    発行日: 1992/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    内科的に治療困難なRDS合併の24例を含む未熟児PDA 36例に対してPDA結紮術を施行し, 手術死亡を10例認めた (死亡原因が直接手術に起因するものはない). 残りの耐術26例を対象に, その遠隔成績を調査するとともに, 用紙あるいは電話によるアンケート予後調査を加え, 未熟児PDA結紮術の妥当性について検討した. 遠隔期死亡はBPDに起因する肺性心による1例 (術後2年4か月後死亡) のみであり, 脳性小児麻痺, 精神発達遅滞の合併を1例認めるものの, 耐術例の生存率は96.2%と良好であった. 幼小児期に上気道感染症を繰り返す頻度が多く認められ, また視力障害, 斜視の合併が多いが, 身体, 精神発育もほぼ良好で, 通常の健康児と同様の学校生活が可能であった. 以上より, BPD合併が遠隔期生命の予後を左右することが示唆されるが, 手術成績ならびに遠隔期成績がほぼ満足しうるものであることより, 未熟児に対するPDA結紮術の妥当性が示された.
  • Crystalloid cardioplegia 液における diltiazem 添加の影響
    賀嶋 俊隆, 井上 恒一, 横川 秀男, 久米 誠人, 高場 利博, 久光 正
    1992 年 21 巻 1 号 p. 41-48
    発行日: 1992/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    摘出拍動心を用い細胞外電位記録法にて20℃, 60分間の単純遮断における心筋の活動電位を測定した. さらに, Ca2+拮抗剤 (diltiazem) を St. Thomas 液に添加 (Ia群: 0μg/ml, Ib群: 1μg/ml, Ic群: 5μg/ml, Id群: 10μg/ml) し, 心筋収縮とCa2+の電気的動向について検討した. 20℃, 60分間の単純遮断では, 再灌流後再分極時に振幅の50%までに要する時間 (MAPD50) の延長によりCa2+の細胞内異常流入が推測されたが, diltiazem を添加することでCa2+の異常流入は抑制された.また, Ic群, Id群では, 心筋収縮力, 刺激伝導抑制作用が強く, MAPD50, 心拍数, 大動脈流量の回復は遅延した. しかし, Ib群の心拍数, 大動脈流量の回復はIa群とほぼ同等であり, MAPD50が短縮されることから1μg/mlの濃度でもCa2+の細胞内異常流入による心筋障害を予防しうると考えられた.
  • 石川 進, 飯島 哲夫, 坂田 一宏, 大谷 嘉己, 市川 秀昭, 高橋 徹, 安斉 徹男, 森下 靖雄
    1992 年 21 巻 1 号 p. 49-53
    発行日: 1992/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    膜様部および漏斗部孤立型心室中隔欠損症 (VSD) 104例中, 大動脈弁逸脱17例, 大動脈弁逆流 (AR) 10例を認めた. 症例の病態および手術成績から逸脱およびARの発生機序と手術適応について検討した. 術前では逸脱・AR群では大動脈弁正常群に比して, 左-右短絡率, 肺体血流比は小で, 術中計測によるVSD径も大動脈弁正常群よりも小であり, 大動脈弁逸脱, ARの発生における血流作用の関与が示唆された. 手術は27例中4例に弁形成術, 1例に弁置換術, 22例にVSD閉鎖のみを行った. ARは10例中3例で術後残存した. 術前AR I度の7例中6例は術後にARが消失したが, AR II度の2例では共にI度のAR残存がみられた. それ故, 術前の注意深い経過観察とAR発症前の早期手術が重要と考えられた.
  • Lipo PGE1 one shot 静注の効果
    瀬山 厚司, 古谷 彰, 竹中 博昭, 久我 貴之, 藤岡 顕太郎, 大原 正己, 善甫 宣哉, 江里 健輔
    1992 年 21 巻 1 号 p. 54-58
    発行日: 1992/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    間歇性跛行症状を客観的, 定量的に評価することは難しく, このため重症度の比較や治療効果判定は容易でない. 今回われわれは, Lipo PGE1の治療効果をトレッドミルを用い客観的に判定しようと試みた. 閉塞性動脈硬化症による間歇性跛行肢20症例に対し, Lipo PGE1を one shot 静注 (10μg, 1回/日, 1週間投与) し, トレッドミルを用いた運動負荷を行った. 疼痛出現距離 (m) は, Lipo PGE1投与前72.5±41.4, 投与1週間後92.0±53.7と有意に延長した. しかし, 運動負荷により歩行不能に至る距離, 安静時API, 運動負荷前後の足関節部血圧差は, Lipo PGE1投与によって有意な変動を示さなかった. 間歇性跛行症状を客観的に評価する1方法として, トレッドミルを用いた跛行距離の測定は, 疼痛出現距離をマーカーとして用いれば有用であった.
  • 山口 明満, 北村 信夫, 川島 雅之, 野地 智, 三木 太一, 大滝 正己
    1992 年 21 巻 1 号 p. 59-61
    発行日: 1992/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    大動脈弁疾患の開心術時における心筋保護法は, 左右冠動脈口より選択的に行われるのが一般的であるが, 心筋保護液注入の間は外科的操作を一時中断せざるをえない. また最近その有用性の報告が散見される冠状静脈洞よりの逆行性冠灌流法 retrograde coronary sinus perfusion (RCSP) は外科的操作を中断することはないが, 従来の方法では右房切開を必要とし, 右房-下大静脈1本脱血 (以下1本脱血) で行いうる開心術でもわざわざ上・下大静脈よりの2本脱血を必要とする. 今回われわれはスタイレット付きRCSP用カテーテルを使用し, 1本脱血により Cabrol 手術を施行し良好な結果を得たので報告する.
  • 楠原 健嗣, 三木 成仁, 上田 裕一, 大北 裕, 田畑 隆文, 山中 一朗
    1992 年 21 巻 1 号 p. 62-67
    発行日: 1992/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1979年より施行した僧帽弁置換術216例のうち発症した左室破裂4例 (MS 3例, MR 1例), 1.9%を報告する. さらに救命しえた最近の2例の経験から対策を検討した. 手術は全例SJM弁で置換した. 左室破裂は, 1例は手術中, 他の3例はICU帰室後約40~90分後に発症した. 破裂部位は Treasure 分類I型が2例, II型が2例であった. 破裂修復は, 全例, 体外循環, 心停止下に行った. 1例は破裂部を心外膜側より縫合し, 止血に成功したが, MOFで死亡した. 他の3例は, 弁をはずし, 破裂部を心内膜側より縫合止血を行った. 直接縫合の1例は止血できず, 台上死したが, 他の2例は破裂部を心内膜側より心膜パッチにて閉鎖し, さらに心外膜側からも心膜パッチにて覆い, 止血に成功した. 左室破裂に対する術式としてこの方法が有効であり, 推奨できるものと考える. さらにICUでの発症が多いことから, ICUでの緊急手術態勢が重要である.
  • 渡辺 正明, 浜田 修三, 板橋 邦宏, 星野 俊一
    1992 年 21 巻 1 号 p. 68-72
    発行日: 1992/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    術前その原因が結核性か外傷性か同定できなかったが, 術中所見および病理学的検討にて外傷後の心タンポナーデが主因と考えられた収縮性心膜炎を経験したので報告する. 症例は52歳の男性. 約30年前に左胸部を刺され, 心タンポナーデに陥り約2か月入院し軽快退院した. その後症状がないため放置していたが術後約25年後に全身倦怠感, 浮腫が出現し, 諸検査にて収縮性心膜炎と診断された. 内科的療法を施行したが症状の改善が認められないため, 約30年後に心膜剥皮術を施行し, 症状の改善を認めた. 受傷後30年経過した遠隔期に収縮性心膜炎の発症をみたことは興味深く, 外傷後の心タンポナーデに対し, 積極的なドレナージの重要性を痛感した.
  • 広岡 茂樹, 石原 良
    1992 年 21 巻 1 号 p. 73-77
    発行日: 1992/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    右下腹部痛, ショック症状にて発症した右腎動脈瘤破裂に対して, 右腎臓摘出術を施行し, 良好な結果を得た. 本疾患は非常に稀であり, 本邦文献報告例は自験例を含め14例に過ぎない. 今回われわれは, 自験例を報告するとともに, 本邦報告例を集計し治療方針を中心に検討し若干の知見を得たので報告した.
  • 堤 泰史, 大中 正光, 大橋 博和, 高橋 政夫, 田中 孝
    1992 年 21 巻 1 号 p. 78-81
    発行日: 1992/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は69歳男性である. 以前より高血圧を指摘されていたが, とくに症状なく経過していた. 1990年7月になり, 嗄声が出現し, 耳鼻咽喉科にて声帯ポリープと診断され治療を受けるも軽快せず, 呼吸器内科にて弓部大動脈瘤を疑われ当科紹介となった. 胸部レントゲン像では左第1弓と左肺門の間に突出する異常陰影を認め, CT, DSA, 大動脈直接造影所見を総合し, 動脈管憩室動脈瘤が疑われた. 手術は胸骨正中切開にて行われ, 右房脱血, 右大腿動脈送血で部分体外循環とし, 左総頸動脈と左鎖骨下動脈との間で遮断, さらに鎖骨下動脈および下行大動脈を遮断した. 瘤は直径約45mmで肺動脈と索状物で繋がっており, 動脈管靱帯と考えられた. 瘤切開後, 大動脈側開口部をパッチ閉鎖し手術を終了した. 経過は順調である. 本邦での手術例の報告は未だ少なく, 貴重な1例と考えられるので報告した.
  • 渡辺 泰徳, 布施 勝生, 小西 敏雄, 高沢 賢次, 石綿 清雄, 加藤 健一, 中西 成元, 関 顕
    1992 年 21 巻 1 号 p. 82-86
    発行日: 1992/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    上行大動脈に高度の石灰化病変がある54歳の女性症例に対して, 上行大動脈にまったく操作を加えずに冠動脈バイパス術を行った. 大腿動脈より送血カニューレを挿入して体外循環を行い, cardioplegia 液を使用せず大動脈非遮断低体温心室細動下に, 両側内胸動脈と右胃大網動脈の3本の動脈グラフトを使用して3枝バイパス術を施行した. 術後は脳合併症など起こすことなく順調に経過した. 上行大動脈の高度石灰化症例に対してはこの aortic no touch technique が安全かつ確実な手術方法と考えられた.
  • 弁所見を中心として
    桜井 与志彦, 稲村 俊一, 南 智之, 小出 司郎策, 川田 志明, 正津 晃
    1992 年 21 巻 1 号 p. 87-90
    発行日: 1992/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    Dove-coo 雑音を聴取した大動脈弁閉鎖不全の2例に大動脈弁置換手術を行い, 弁の形態と雑音の成因について考察した. 第1例は原因不明の小穿孔が無冠尖に2か所, 右冠尖に1か所あった. 第2例は感染性心内膜炎が原因で, 左冠尖に穿孔, 右冠尖に小穿孔が各1か所あり, また弁輪下仮性動脈瘤を伴っていた. Dove-coo 雑音を伴う大動脈弁閉鎖不全の報告では, 1955年以前は梅毒による弁尖辺縁の後反が多かった. 1960年以降は梅毒は減少し, 各種の原因による弁尖の穿孔, 亀裂, あるいは後反に起因している. 自験例を含め, いずれの場合も弁尖の石灰化がなく, 柔軟性が比較的よく保たれていることが, この雑音発生に関与している.
  • 剖検所見よりみた破裂部位について
    大滝 正己, 川島 雅之, 山口 明満, 北村 信夫
    1992 年 21 巻 1 号 p. 91-93
    発行日: 1992/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は60歳女性. 僧帽弁膜症にて僧帽弁人工弁置換術を施行したところ, Treasure 分類I型の左室破裂を併発した. 心内からの修復にて破裂部位の修復は可能であったがIABP挿入に伴い逆行性動脈解離が総腸骨動脈から左鎖骨下動脈まで生じ, 術後7日目多臓器不全にて死亡した. 剖検所見では, 僧帽弁前尖直下の心室中隔膜様部より房室間溝さらに左室後壁にいたる広範な血腫の存在を認めた. 以上よりI型左室破裂を伴う血腫の伸展形式につき文献的考察を加え自験例を報告する.
  • 深沢 学, 折田 博之, 阿部 寛政, 内野 英明, 中村 千春, 鷲尾 正彦, 佐藤 哲雄
    1992 年 21 巻 1 号 p. 94-98
    発行日: 1992/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    3か月女児, 左側房室弁閉鎖, 左室型単心室, 右側房室弁挿入, 大血管転位, 大動脈縮窄症に対する姑息手術症例を経験した. 術前カテーテル検査で, 右房圧3/1/1mmHg (A/V/M) 左房圧17/14/12mmHgと左房圧の上昇を認め, 心エコー上両心房間での flow verosity (V) は1.57m/sec (10mmHg) であった. 血管造影は上記診断所見を呈し, また大動脈弁は正常と考えられた. BASを施行したが無効であったため両側開胸にて Blalock-Hanlon 心房中隔切除術, subclavian flap aortoplasty, 肺動脈絞扼術を同時に行った. 術後, 腎不全に陥ったが腹膜透析にて回復し, その後の経過は良好である. 本症例は稀な先天性心奇形であり, また術後経過は縮窄症術後の特異な血行動態を示唆する興味深い症例と思われた.
  • 傍大動脈リンパ嚢胞と乳糜腹水
    鈴木 衛, 上山 武史, 明元 克司, 湖東 慶樹, 西出 良一
    1992 年 21 巻 1 号 p. 99-103
    発行日: 1992/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    傍大動脈リンパ嚢胞, ならびに乳糜腹水は, 比較的稀な術後合併症である. 最近, われわれは腹部大動脈手術後の2例を経験した. 1例目は53歳, 男性, 上腸間膜動脈解離で, 大動脈-上腸間膜動脈バイパス術を施行後, 傍大動脈リンパ嚢胞を発症した. 腹痛, 嘔吐等の症状があり, 約1か月間の保存的治療によっても症状は緩解せず, 外科的ドレナージを施行した. 2例目は, 48歳, 男性, IIIb型解離性大動脈瘤で, 左腎動脈血行再建術と腹部大動脈人工血管置換を施行し, 3週後に乳糜腹水をみた. 2回の腹腔穿刺と1か月間の絶食, 高カロリー輸液で保存的に治癒せしめた. 腹部大動脈の剥離操作が必要な手術では, リンパ系合併症があることを認識し, 術中は, 適切なリンパ管の結紮を行い, またリンパの漏出に注意し, 発見した場合は, 確実な結紮が必要である. また術後は早期診断に心がけ, 速やかに保存的治療を行うべきである.
  • 猪狩 次雄, 岩谷 文夫, 萩原 賢一, 丹治 雅博, 佐戸川 弘之, 渡辺 正明, 緑川 博文, 佐藤 洋一, 小野 隆志, 星野 俊一
    1992 年 21 巻 1 号 p. 104-107
    発行日: 1992/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    教室の腹部大動脈瘤手術160例中4例の急性血栓症を経験したので報告する. 症例は52歳から83歳の男性で大動脈瘤の横径は4例中3例が7cm以下であり, 他の1例も10cm以下と考えられた. 4例中3例に末梢の閉塞性疾患の合併がみられ, 他の1例も右下肢のしびれ感や冷感の既往があった. 4症例ともに他疾患にて通院・加療中であり, 主治医は腹部大動脈瘤の存在を認識ずみと考えられた. 初発症状はいずれも臍下部の虚血症状である. 4例中1例のみ救命したが発症から手術までの時間が3時間と早い症例であった. 早期に血行を再建したにもかかわらずMNMSに陥り, 容量負荷と血漿交換療法にてことなきを得たものの, 本症の治療にはMNMSの病態の把握と対策が重要と考えられた. また4例中1例は血栓性閉塞化した腹部大動脈瘤の破裂である. 破裂のみでなく血栓症の観点からも腹部大動脈瘤は発見されたなら直ちに手術すべきと考えられた.
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