日本心臓血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1883-4108
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ISSN-L : 0285-1474
21 巻, 3 号
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  • 血栓弁に対する治療を中心に
    佐々木 昭彦, 安倍 十三夫, 深田 穰治, 田口 晶, 塚本 勝, 木村 希望, 山田 修, 数井 暉久, 小松 作蔵
    1992 年 21 巻 3 号 p. 217-222
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1985年3月より1988年5月までに, 当科で Duromedics (D-M) 弁を用いて, 房室弁位の86症例に92個の弁置換術を施行した. 今回は, 遠隔期の問題点, とくに血栓弁について検討した. 累積追跡期間は313.6患者・年で, 早期死を含む実測生存率は術後6年で83.4±4.1%であった. 弁由来の合併症は, 末梢性塞栓症3例 (1.0%/患者・年), 血栓弁7例 (2.2%/患者・年), 出血, 弁周囲逆流各1例 (0.3%/患者・年) で, 弁由来の全合併症は12例 (3.8%/患者・年) であった. 弁由来の合併症に対する再手術は, 血栓弁の5例 (1.6%/患者・年) にのみ施行した. 僧帽弁位4例, 三尖弁位3例の計7例に血栓弁をみ, 血栓弁の event free rate は術後6年で89.1±4.0%であった. 血栓弁は三尖弁位で高率に発症し, その使用に問題を残した. また, 二葉弁では, 一葉のみの開閉障害の時期に, 早期に外科治療を施すべきと考えた.
  • 岡本 浩, 関 章, 星野 元昭, 朝倉 貞二, 小川 裕, 保浦 賢三, 松浦 昭雄, 秋田 利明, 阿部 稔雄
    1992 年 21 巻 3 号 p. 223-228
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    最近9年間に当院および関連施設で手術を行った感染性心内膜炎37例について治療上の問題点につき検討した. 罹患部位は大動脈弁位17例, 僧帽弁位10例, 大動脈弁+僧帽弁10例, 2例は人工弁感染で, 他の35例は自然弁感染であった. 起炎菌は Streptococcus が最も多く20例, Staphylococcus 5例, グラム陰性桿菌3例で10例は培養陰性であった. 術式に大きな影響を及ぼす弁輪部膿瘍は大動脈弁位で10例に認めた. 弁輪の再建は欠損の小さな4例ではマットレス縫合で縫合し, 欠損の広範な4例では自己心膜パッチを縫着し良好な結果を得た. 人工弁付人工血管で translocation を行ったPVEの2例は救命できなかった. 最近は逆行性冠灌流法を採用し顕著な術後LOSの発生をみていない. 術後早期死亡を4例に, 遠隔死亡を3例に認めたが, 感染性動脈瘤破裂による脳出血が2例であり, 今後の検討を要する課題である.
  • 三澤 吉雄, 長谷川 嗣夫, 加藤 盛人
    1992 年 21 巻 3 号 p. 229-232
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    生体弁を用いて三尖弁置換術を施行した11例を検討した. 平均年齢51±12歳で, 男性3例, 女性8例であった. 合併手術は, 僧帽弁置換10例, 大動脈弁置換1例であった. 術後はワーファリン, dipyridamole を投与し, トロンボテストで10~20%をコントロールの基準とした. 平均観察期間は40±40か月であった. 術後30日以内の早期死は2例 (18%) で, 遠隔期死亡2例であった. 早期死を含めた5年後, 9年後の生存率はそれぞれ70±14%, 54±18%であった. その他術後の合併症としては, 右房内血栓が2例にみられた. 死亡例を除くNYHA心機能分類では, 術前III°2例, IV°5例で, 術後はIV°1例で他はI°~II°に改善した. 死亡はいずれもIV°であった. 術前後の心胸郭比を経時的にみると, 術後5年までに有意な変化を示さず, 巨大な心拡大の改善はみられなかった. 以上より, 三尖弁置換を要する症例では術後の心機能は長期的にみても十分には回復しないことが示唆された.
  • 北村 惣一郎, 河内 寛治, 森田 隆一, 西井 勤, 谷口 繁樹, 川田 哲嗣, 浜田 良宏, 西岡 宏彰, 長谷川 順一, 吉田 佳嗣
    1992 年 21 巻 3 号 p. 233-237
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    内胸動脈 (ITA) グラフトによる冠動脈多枝バイパス手術を110例に行い, 手術・入院死亡率0.9%であった. 24~76歳, 平均54±9歳の男性102例, 女性8例で, 平均グラフト数は3.2±0.8本/患者であった. 両側内胸動脈 (BITA) 使用87例, sequential バイパス (SQ-ITA) 31例, 両者の併用8例であった. 遠隔期死亡は非心臓死の1例で5年目までの生存率は98%であった. この間PTCAを11例 (10%) に施行したが minor lesion に対する危険度の低いPTCAであり, 再手術例はなかった. グラフト開存率はBITAでは左右のITAで差はなく約97%, SQ-ITAは近, 遠位とも100%で術後の臨床所見の改善は良好であった. BITA使用で懸念される胸骨感染症はなく, これは閉胸前の十分な洗滌 (縦隔, 胸骨, 皮下組織) 操作が有効であったものと考えている. この合併症の予防は手術成績の向上にも大きく関係している. BITA症例ではRITA-LAD, LITA-LCXの組み合わせが多かったが, 本法ではRITAが大動脈前面を斜走するため, 正中切開よりの再手術ではグラフト損傷の危険がある. これを少しでも安全とするため, 最近施行しているEPTFE人工血管 (8mm径, 約8~10cm) によるITA被覆法を示した. 未だITAによる多枝バイパス例中に再手術が出現していないため, 本法の再手術時の真の有効性に関しては未知であるが再正中切開時の安全性は高めうると考える.
  • 中山 正吾, 伴 敏彦, 岡本 好史
    1992 年 21 巻 3 号 p. 238-244
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    ブタ大動脈弁および肺動脈弁を用い凍結保存同種弁を作製し凍結保存処理による細胞生存性と組織学的変化について検討した. 採取した弁は抗生物質 (CFX, IPM/CS, PCG, SM) を含む Dulbecco minimum essential medium+10% fetal calf serum 内にて37℃で6時間抗生物質処理した. 抗生物質処理にて菌培養は陰性となり, また細胞生存性も低下しなかった. 凍結保存には1分間に-1℃の一定の割合で凍結する program freeze 法と液体窒素により急速に凍結する rapid freeze 法を用いた. 併せて凍害保護液として dimethylsulfoxide (DMSO) の効果も検討した. 10% DMSO使用 program freeze 法により大動脈, 肺動脈とも細胞生存性は低下せず, 組織変化もなく3か月まで保存可能であった. 本法はヒト保存弁の臨床に応用しうると思われた.
  • 抗凝血状態を維持する管理法の薦め
    河野 博之, 松井 完治, 深江 宏治, 梅末 正芳, 内田 孝之, 篠崎 啓一, 真弓 久則
    1992 年 21 巻 3 号 p. 245-249
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    人工弁置換術後抗凝血薬療法中の20例に外科的処置を施行した. 10例に20回の抜歯を行ったが, ワーファリンは減量せず, 抜歯時のトロンボテスト (TT) は平均16%であった. 非開腹手術7例と開腹手術3例においてはワーファリンを減量してTT 40%前後で手術を施行した. 術中止血困難例はなく, 血栓性合併症も認めなかったが, 術後ヘパリン皮下注により活性凝固時間 (ACT) が200秒以上に延長した開腹手術の1例において開腹創からの出血を認めた. 人工弁置換術後の外科的処置に際しては, 血栓塞栓症や血栓弁を防止するためできるだけ抗凝血状態を維持することが望ましいが, 今回の検討から, 抜歯にはワーファリンの減量は不要であり, 開腹手術もTT 40%前後で十分可能であることが判明した. なお, ワーファリン減量中の補助療法としてヘパリンを使用する際は, ACTの過度の延長をきたさないように, 術前にその使用量を検討しておく必要がある.
  • 石丸 新, 河内 賢二, 清水 剛, 首藤 裕, 小長井 直樹, 平山 哲三, 古川 欽一
    1992 年 21 巻 3 号 p. 250-254
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    解離性大動脈瘤11例 (I型4例, II型1例, III型5例および弓部限局解離1例) に対して entry 閉鎖を目的としたフェルト内挿補強パッチ形成術を試案した. 血流遮断時間は平均84±19分で, 解離腔内にもフェルトを挿入した初期の1例を除き entry 部の完全閉鎖が得られた. III型の1例を遠心ポンプ離脱直後の不整脈にて失ったが, 術式に起因した死亡はみられなかった. 術後1か月以上の経過において, 解離腔はI型およびII型で上行部に, III部では下行部に血栓閉鎖が得られ, 弓部解離例は完全閉鎖した. 術後平均16か月の経過で全例良好な社会生活を送っている. 本法は, 解離性大動脈瘤における entry 閉鎖を目的とした簡便かつ確実な術式であり, 症例により試みるべきものと考える.
  • 栗林 良正, 桜田 徹, 相田 弘秋, 後藤 由和, 関 啓二, 林 龍司, 目黒 昌, 佐藤 護, 猪股 昭夫, 熱海 裕之, 阿部 忠昭
    1992 年 21 巻 3 号 p. 255-260
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1975年から1990年までに外科治療を行った四肢および腹部臓器の末梢動脈瘤症例は34例であった. 動脈瘤の発生部位は, ほぼ全身にわたっていたが, 下肢が最も多かった. その成因としては動脈硬化が半数以上を占め, 次いで医原性が24%のほか, 外傷, Behçet 病, aortitis などがあった. 動脈硬化性のものは左右両側に発生する多発例が多かった. 全体の破裂の頻度が26%と高率であるのと, 体表から深い位置にある腹部臓器動脈瘤や内腸骨動脈瘤などが激しい突発症状で発症するのが診断上の問題であった. 末梢動脈瘤の手術成績は良好であるが, 遠隔期に心血管系の続発症が多いので, 術後も注意深い経過観察が必要である.
  • 芳賀 佳之, 吉津 博, 羽鳥 信郎, 奥田 恵理哉, 瓜生田 曜造, 志水 正史, 三丸 敦洋, 田中 勧
    1992 年 21 巻 3 号 p. 261-266
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1988年1月から1991年6月までに20℃以下の超低体温下循環停止法を用いて, 8例の上行-弓部大動脈再建術を行った. 平均年齢62.0±11.8歳, 男女比3:5で, 4例が緊急手術であった. 病型は Stanford A型解離性大動脈瘤7例, 上行-弓部大動脈の真性動脈瘤1例であった. 手術時間432.6±147.3分, 体外循環時間191.9±66.1分, 循環停止時間31.0±10.8分 (16~47分) であった. 全例胸骨正中切開下に上行-弓部大動脈人工血管置換術を施行し, 2例に腕頭動脈再建術を行った. 出血量4,685±2,943ml, 輸血量4,659±2,779mlであった. ICU帰室後2~19時間で全例覚醒し, 脳合併症はみられなかった. 術後に薬剤性腎機能障害, 洞性不整脈および軽度の肝機能障害各1例を認めたが手術死亡, 遠隔死亡ともなかった. 上行-弓部大動脈再建術における補助手段としての超低体温下循環停止法は十分な安全性を持つ有効な方法であることが示唆された.
  • 武 彰, 松崎 茂, 大木 伸一, 山口 勉, 斎藤 力, 長谷川 伸之, 掘見 博之, 三沢 吉雄, 加藤 盛人, 長谷川 嗣夫
    1992 年 21 巻 3 号 p. 267-273
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    僧帽弁疾患の70例を対象に術前CTと手術所見とを比較した. 左房血栓の診断率はCTで79.2% (19/24), エコーで62.5% (15/24) で, CTでの偽陰性は5例とも3g以下の血栓であった. 左房壁の石灰化はCT上15例にあり, うち10例に術中に左房血栓を認め, うち9例に内膜の粗鬆化を認めた. 左房壁石灰化のうち, 10例に術後早期にCTを行い, 4例に術後左房血栓を認めた. 僧帽弁の石灰化のCTによる診断率は95.2% (40/42) で, エコーでの81.0% (34/42) より優れていた. CT上での僧帽弁の石灰化群の40例では弁の変形や肥厚が高度で, 全例にMVRを必要としたが, 非石灰化群30例中では9例にOMCが行われた. 大動脈弁の石灰化は大動脈弁狭窄のある11例中9例にみられ, 全例で術前CTで診断できた. 石灰化群の大動脈弁置換率は65.0% (13/20) と非石灰化群の14% (7/50) より有意に高かった. 以上より, CTは左房血栓や僧帽弁, 大動脈弁, 左房壁の石灰化が的確に診断でき, 弁や壁の障害度を推察するのに有用な診断法と思われた.
  • 吉川 義朗, 河内 寛治, 井上 毅, 亀田 陽一, 金田 幸三, 近藤 禎晃, 萩原 洋司, 北村 惣一郎
    1992 年 21 巻 3 号 p. 274-277
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    大動脈炎症候群による頸動脈閉塞症は, 広範囲かつ進行性であることよりその外科治療は容易でない. 著者らは大動脈炎症候群による高度の両側頸動脈閉塞をきたした症例に, 上行大動脈-両側同時頸動脈バイパス術を施行し, 術後 hyperperfusion による可逆性脳障害をきたした症例を経験した. 症例は23歳, 女性で19歳より大動脈炎症候群と診断され, プレドニゾロンを投与されていた. 動脈造影にて, 左総頸動脈, 左鎖骨下動脈の閉塞, 右総頸動脈, 右椎骨動脈起始部の高度狭窄を認め, 意識消失発作が増悪したため, 手術となった. 手術は直径7mmリング付 EPTFE グラフトを用い上行大動脈より両側内頸動脈への同時バイパス術を行った. 術中 transcranial Doppler 法により中大脳動脈血流速度をモニターし有用であった. 術後 hyperperfusion による一過性脳障害を認めたが良好に回復し, 後遺症を認めず術後65日目に退院し, 現在, 通常生活を送っている.
  • 中山 芳夫, 北村 惣一郎, 河内 寛治, 川田 哲嗣, 水口 一三, 長谷川 順一
    1992 年 21 巻 3 号 p. 278-282
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    子宮原発で右内腸骨静脈, 下大静脈を経て右房に達した intravenous leiomyomatosis の1摘除例を経験した. 症例は54歳, 女性. 子宮筋腫の手術を受けた10年後に3回の意識消失発作を呈した. 精査にて右内腸骨静脈より右房まで連続する腫瘍を認め, intravenous leiomyomatosis の診断のもと体外循環を用いた開心, 開腹による一期的手術にて腫瘍を摘出した. Intravenous leiomyomatosis と呼ばれる子宮筋腫を原発とし, 静脈内に伸展する良性の平滑筋腫はまれな疾患である. 心腔内に達し開心術を施行した報告例は過去20例あり, われわれは21例目を経験し, これら症例をあわせて検討した. 過去の20例中9例は術前に右房内腫瘍, とくに粘液腫を疑い手術を開始しており, 5例が部分切除に終わっている. 本症例では術前より腫瘍の全貌をほぼ明らかにし開心, 開腹による一期的手術にて腫瘍を摘出しえた. 一期的手術報告は意外に少なく, わずかに21例中5例 (24%) のみであった.
  • 猪狩 次雄, 岩谷 文夫, 萩原 賢一, 丹治 雅博, 佐戸川 弘之, 渡辺 正明, 緑川 博文, 佐藤 洋一, 小野 隆志, 星野 俊一
    1992 年 21 巻 3 号 p. 283-286
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は44歳, 女性で主訴は背部痛と前胸部痛である. 6歳のときリウマチ熱に罹患し, 19歳のときに軽度の大動脈弁閉鎖不全を伴う僧帽弁狭窄症の診断のもと直視下僧帽弁交連切開術を受けた. さらに, 40歳時には心不全症状が出現したため, 当科に入院し, 大動脈弁, 僧帽弁二弁置換術 (Medtronic Hall 弁27M, 21A) を施行された. その後経過良好であったが4年後の平成3年2月, 背部痛と前胸部痛にて緊急入院し, 冠状動脈造影中大動脈弁位の Medtronic Hall 弁が開放位で stuck valve の状態にあることがわかり, 再弁置換術を行い救命した. 原因は大動脈弁位代用弁が流入側の pannus formation により開閉が障害されたためと考えられた. 遠隔期の大動脈弁位使用の代用弁の開放位 stuck valve は希なので報告した.
  • 落 雅美, 山内 仁紫, 池下 正敏, 田中 茂夫, 庄司 佑, 田村 浩一
    1992 年 21 巻 3 号 p. 287-291
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    Axillo-femoral bypass 術後8年で発生した鈍的外傷による人工血管断裂の1例を報告した. ダクロン線維の恐らくは構造上の欠陥により長年月を経て変性・脆弱化した人工血管が皮下を通す術式であるがゆえに転倒による打撲で断裂した. 文献上同様の報告はなく, まれな合併症である. グラフトは全体に拡張し, 瘤形成も認められた. 断裂部は病理組織学的には比較的構造が保たれた部位で起こり, 線維の変性, 劣化はそれ自体でグラフトを脆弱にすると考える. ダクロングラフトは心臓血管外科領域で不可欠の人工材料であるが, 線維の変性, 劣化を念頭に置いたグラフトの選択と, 患者の生涯にわたる観察が必要である.
  • 芳賀 佳之, 吉津 博, 羽鳥 信郎, 奥田 恵理哉, 瓜生田 曜造, 志水 正史, 三丸 敦洋, 田中 勧
    1992 年 21 巻 3 号 p. 292-295
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は胸部下行および腹部大動脈の重複大動脈瘤の67歳女性である. 胸部下行大動脈の病変は直径5.0cmで連珠状であり, 腹部大動脈の病変は腎動脈下で屈曲する直径7.8cmの瘤であった. いずれも手術適応と考えられ, 二期的手術を行って一方を残すことは遺残動脈瘤破裂の危険が大きいと判断し, 一期的手術を施行した. 右側臥位で大腿動静脈から部分体外循環を施行, 左開胸下に胸部下行大動脈の人工血管置換術を行った. さらに体外循環離脱, 閉胸後, 仰臥位とし腹部正中切開により腹部大動脈人工血管置換術を行った. 術後経過は順調で一過性の軽度の排尿障害と嗄声が出現したが, 術後45日目に軽快退院した. 胸部下行および腹部大動脈の重複大動脈瘤症例の一期的手術は手術侵襲が大きいが, 患者が手術に耐えうると判断されれば, 遺残動脈瘤破裂の危険が回避でき, 確実な治療法であると考えられた.
  • 守月 理, 小塚 裕, 竹田 誠, 登 政和, 進藤 俊哉
    1992 年 21 巻 3 号 p. 296-299
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は55歳の女性で全身皮膚にカフェオレスポット, 神経線維腫を認めるレックリングハウゼン病の患者である. 突然の左胸痛で発症し, 左血胸, ショック状態となり, 緊急手術を施行した. 左開胸にて下行大動脈両側の胸膜下に血腫があり, 血腫からの動脈性出血を認めた. 大動脈裏面の肋間動脈からの出血が疑われたが同定できず, アンスロンチューブでバイパス下に大動脈を遮断し, 下行大動脈人工血管置換を行った. 術前のショック状態, 大量輸血に起因すると思われる肝不全, 呼吸不全のため, 長期のICU管理を要したが, 術後5か月目, 元気に退院した. 切除した大動脈の病理学的検索では, 大動脈外膜への神経線維腫の侵潤および中膜弾性線維の走行の乱れが認められた. この血管病変により肋間動脈の自然破裂をきたしたものと推察された. レックリングハウゼン病に合併した自然動脈破裂例は自験例を含め19例であり, これらを集計して報告する.
  • 佐藤 友昭, 水元 亨, 和田 潔人, 高尾 仁二, 片山 芳彦, 水谷 哲夫, 矢田 公, 湯淺 浩, 草川 實
    1992 年 21 巻 3 号 p. 300-303
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    動脈硬化症は全身性の進行性疾患であるため, 胸部大動脈瘤に虚血性心疾患を合併することは希ではない. したがって胸部大動脈瘤の手術成績の向上をはかるためには虚血性心疾患に対する正確な術前評価を加えた上での手術適応の決定, 手術手技, 補助手段の選択が非常に重要なものとなると思われる. 最近われわれは, 下行大動脈瘤および心室瘤に対し, 後側方切開からのアプローチと, 補助手段として肺動脈脱血・大腿動脈送血による部分左心バイパスを行い, 軽度低体温補助循環下に一期的に安全に手術を施行しえた. 本アプローチおよび補助手段は, 下行大動脈瘤切除とA-Cバイパス術を一期的に行う場合にも応用可能な, 有用な手段であると考えられる.
  • 佐藤 尚司, 櫻井 温, 平石 泰三, 筆本 由幸, 小林 亨
    1992 年 21 巻 3 号 p. 304-308
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    近年, 経皮的挿入法の導入により, IABPの使用例は急増している. しかし合併症の発生は依然として多く, その対策が問題となっている. われわれはIABP留置中に腸骨動脈の狭窄や蛇行により発生する下肢血流障害に対し, 下肢血流温存を目的としたIABP用内シャントシースを開発した. 腸骨動脈に狭窄や, 蛇行を認め, 従来のIABPシステムでは下肢血流障害の発生が危惧された3例において, IABP用内シャントシースを用い良好な結果を得た. IABP用内シャントシースはIABP留置中の下肢血流温存に有用であり, またIABP留置中の下肢血流障害の病態の診断, 処置にも有用であると考えられた.
  • 須藤 義夫, 高原 善治, 村山 博和, 瀬崎 登志彰, 中村 常太郎
    1992 年 21 巻 3 号 p. 309-313
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    開心術後の縦隔洞炎はまれではあるが治療の難しい合併症である. われわれは開心術後遠隔期に発生し慢性に経過した難治性の縦隔洞炎の2例に対し, 体外循環を用いた郭清と大網移植を行い良好な結果が得られた. 症例1は僧帽弁交連切開術の8年半後に, 胸骨上端から排膿し, 3か月後に手術を行った. 症例2は大動脈弁置換術後, 合併症による再手術を繰り返し, 感染の機会が多く, 退院5か月後から前胸骨部の瘻孔から排膿がみられ, 7年半にわたり排膿を続けていた. 2例とも大動脈壁に縫着されたダクロンフェルトが膿瘍に含まれており, 体外循環下に感染組織とダクロンフェルトを除去し, 感染の再発防止のために縦隔に大網を移植した. 術後それぞれ1年2か月と10か月経過しているが, 再発の兆候はみられない. 大網移植は開心術後のこのような合併症の治療に大変効果的な方法であると考えられる.
  • 葉玉 哲生, 木村 龍範, 高崎 英巳, 森 義顕, 重光 修, 宮本 伸二, 迫 秀則, 野口 隆之, 内田 雄三, 調 亟治
    1992 年 21 巻 3 号 p. 314-318
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は54歳, 男性, 急性心筋梗塞発症後, 心原性ショックに陥り, 約6時間後, 心マッサージを行いIABP駆動のもとに, 緊急冠動脈バイパス手術を行った. 67分の大動脈遮断により左前下行枝・第1対角枝・右冠動脈後下行枝の3枝バイパスを行ったが, 術後, 重症の低心拍出量症候群となりIABPと大量のカテコールアミンを用いても人工心肺離脱困難になった. 膜型肺と遠心ポンプによる両心バイパス回路を作成し, 21Fカニューレを経皮的に右大腿静脈より右心房まで進め脱血, 右鎖骨下動脈より送血し補助循環を71時間行い救命できた症例を経験したのでVAバイパス法を中心に報告した.
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