日本心臓血管外科学会雑誌
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22 巻, 1 号
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  • 小林 繁夫, 高橋 英世, 矢野 孝, 池澤 輝男, 桜井 恒久
    1993 年 22 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1993/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    腹部大動脈瘤の人工血管置換術後に発症した下肢の知覚・運動麻痺を伴う3症例に対して高気圧酸素治療を施行した. これらの症例のうち2例は腰髄の, 1例は下肢の虚血による低酸素性神経障害であると考えられた. それぞれの症例に対して2絶対気圧75分間および3絶対気圧90分間の高気圧酸素治療を, 連日, 各1回の条件で施行し, 全例, 自立歩行が可能となるまでに回復させることができた. 従来, 本手術後の下肢麻痺は治療に難渋するものが多く, 可及的早期に診断を確定し, 高気圧酸素治療を開始することによって良好な結果を得ることができる.
  • 安達 秀雄, 尾本 良三, 横手 祐二, 木村 壮介, 許 俊鋭
    1993 年 22 巻 1 号 p. 7-13
    発行日: 1993/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    弓部大動脈瘤に対する手術時の補助手段として, 16℃の冷却酸素加血液で脳を選択的に灌流する落差方式の選択的脳冷却灌流法を考案し, 1988年7月より臨床応用を開始した. 1991年5月までに本法を用いて23例の弓部大動脈瘤手術を実施したので, これらを対象として本法の有用性について検討した. 動脈瘤破裂に対する緊急手術の2例と待機手術の1例の計3例 (13%) を失ったが, 他は生存し, 生存例では1例に脳梗塞を合併したが他の19例は中枢神経系に異常はなく日常生活に復帰した。本法は選択的に脳を冷却灌流するので必要に応じて循環停止を行うことができ, また全身を超低体温とする必要がないため体外循環時間を短縮できる利点がある. 本法は緊急手術時にも容易に対応でき, 従来の脳分離体外循環法と低体温下循環停止法の両者の利点を兼ね備えた弓部大動脈瘤手術時の有用な補助手段と考えられた.
  • 連続腹膜灌流と持続的血液濾過法の比較検討
    山崎 一也, 近藤 治郎, 井元 清隆, 梶原 博一, 星野 和実, 坂本 哲, 鈴木 伸一, 磯田 晋, 石井 正徳, 松本 昭彦
    1993 年 22 巻 1 号 p. 14-20
    発行日: 1993/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    体外循環による手術後1週間以内に急性腎不全 (ARF) に陥った症例のうち, 保存的治療が無効の16例に対し血液浄化療法として連続腹膜灌流 (CPD) および持続的血液濾過 (CAVH) を行った. CPDのみを行った7例をCPD群, CPD施行中にCAVHに移行した5例をCPD→CAVH移行群, 最初からCAVHを行った4例をCAVH群とした. 各群の離脱, 生存率をみると離脱率はCPD群33%, CPD→CAVH移行群20%, CAVH群67%で, 生存率はCPD群33%, CPD→CAVH移行群20%, CAVH群0%と不良であった. 除水量と血清カリウム値のコントロールに関しては両方法とも十分有効であった. クレアチニンクリアランス (Ccr) はCAVHがCPDに勝る傾向にあったが, CAVHのCcrも平均11.3ml/minと低値であり, 血清クレアチニン値, 血清尿素窒素値のコントロールは両方法とも不十分であった. 合併症はCPD施行例では12例中3例に低蛋白血症がみられたのに対してCAVH使用例にはより重篤な合併症である出血症状が9例中7例にみられた.
  • 劉 鵬, 長谷川 隆光, 北村 信三, 進藤 正二, 折目 由紀彦, 原田 泰, 鈴木 修, 塚本 三重生, 大畑 正昭, 瀬在 幸安
    1993 年 22 巻 1 号 p. 21-25
    発行日: 1993/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1991年7月までに当教室で施行された虚血性心疾患に対する外科療法447例中, CABG再手術10例(2.2%), 当科で施行した術後PTCA 8例 (1.8%) を経験した. 年齢, 性差に有意差はなかった. 症状としては両群とも狭心痛の再発であり, 冠危険因子では, 術後喫煙習慣, 高脂血症のコントロール不良な症例が多かった. 初回術式では, 再手術群では, 平均グラフト本数は2.1本, PTCA群では3.5本と差が認められ, 初回手術からの期間も再手術群81.8か月, PTCA群55.7か月と有意の差があった. 再手術症例では, 2例の手術死と2例の遠隔死 (非心臓死) が認められたが, 生存例6例は症状もなく社会復帰している. 一方, PTCA群では, 死亡例はないが, 4例で平均2.3か月後に狭心痛の再発を認め, そのうち2例に再PTCAを施行した.
  • 松田 捷彦, 田村 暢成
    1993 年 22 巻 1 号 p. 26-29
    発行日: 1993/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    GRF (gelatin-resorcin-formalin) はゼラチンをゲル状にしレゾルシンを混ぜたもので, これにフォルマリンを加えることによりGRFの接着作用が強固となる. われわれはこのGRFを用い微小血管吻合を行いGRFの有用性を検討した. 体重200~300gの14匹のラットの腹部大動脈の吻合を行った. 7群に分け, 光顕的および走査電顕的に吻合部を観察した. 光顕的には吻合後2週間目でほぼ内膜の連続性が完成することが明らかとなった. また走査電顕の所見では従来の手縫いによる方法や, レーザーによる吻合に比べ内膜の損傷が少なく, フィブリン等の浸潤も少ないことが明らかとなった. 以上の結果より接着剤GRFは血管吻合に有用であることが示唆された.
  • 投与方法についての実験的検討
    山本 典良, 池田 英二, 竹尾 正彦, 中山 頼和, 妹尾 嘉昌, 寺本 滋
    1993 年 22 巻 1 号 p. 30-35
    発行日: 1993/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    心筋の再灌流障害に対するh-SODの効果を投与方法の差異により比較検討した. 雑種成犬24頭を用い, 完全体外循環下に120分の大動脈遮断とその後60分の再灌流を行った. h-SODの投与法で3群-局所投与L群, 全身投与G群, 非投与C群-に分けた. 大動脈遮断解除後5分の過酸化脂質の冠動静脈較差はL群-0.029±0.11nmol/ml, G群0.025±0.04, C群-0.28±0.22で, 心機能は遮断解除60分後の値と体外循環前値の比で検討すると, 心拍出量はL群1.03±0.17, G群0.96±0.19, C群0.53±0.08, LV max dp/dtはL群0.87±0.20, G群0.82±0.07, C群0.55±0.17, で, 遮断解除60分後の心筋水分含有量はL群79.86±0.62%, G群80.37±1.17, C群81.82±0.63, となり, それぞれC群に対してL群G群で有意に良好であった. 以上より, h-SOD全身投与法はより簡便な方法であり, 局所投与と同様に再灌流後の過酸化脂質の産生が抑制され浮腫も軽減し心機能回復も良好であった.
  • 林 載鳳, 浜中 喜晴, 末田 泰二郎, 渡橋 和政, 呑村 孝之, 森田 悟, 香河 哲也, 松浦 雄一郎
    1993 年 22 巻 1 号 p. 36-40
    発行日: 1993/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    Prostaglandin E1 (PGE1) が有効であった blue toe syndrome を2例経験した. 症例1は80歳の男性で, 左足第5趾の疼痛と潰瘍病変を訴えて受診した. 血管造影にて大動脈, 腸骨動脈の拡張性病変からの微小塞栓子が原因と推測された. Lipo PGE1を10μg/日×30日使用し, 傷は治癒した. 症例2は54歳の男性で, 左手第3, 4指の疼痛と皮膚色調変化を訴えて受診した. 経胸壁心エコーでは血栓の存在は明らかでなかったが, 経食道心エコーにて左心耳内の血栓が確認された. PGE1を60μg/日×20日使用し, 病変の軽快をみた. Blue toe syndrome は末梢小動脈の微小塞栓症であり, これまで線溶剤, 抗凝固剤が治療に用いられてきた. 今回, われわれはこれまで報告されていない新たな試みとしてPGE1製剤を, 側副血行路の血管拡張作用と血小板凝集抑制作用による二次血栓予防の目的で使用し, 良好な成績が得られた.
  • 城間 賢二, 須磨 幸蔵, 金子 秀実, 今西 薫, 向井 藤夫
    1993 年 22 巻 1 号 p. 41-44
    発行日: 1993/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    Ebstein 奇形2例に対して Carpentier 法による手術を行った. 手術法は心房化心室の心尖部に対する縦軸への縫縮を行い, 三尖弁前尖および後尖を切離後, 解剖学的三尖弁輪へ再縫合する方法である. 1例目は16歳男児で1990年9月5日に行い, 2例目は13歳女児で1991年7月24日に行った. 大動脈遮断時間は平均で96分であった. 手術は比較的容易で, 術後経過はいずれも順調であった. 心胸郭比は1例目は68%から54%へ, 2例目は64%から52%へと縮小した. Ebstein 奇形に対する Carpentier 手術法は良い結果の得られる手術として推奨できる.
  • 田畑 隆文, 三木 成仁, 楠原 健嗣, 上田 裕一, 大北 裕, 酒井 哲郎
    1993 年 22 巻 1 号 p. 45-48
    発行日: 1993/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    総腸骨動静脈瘻を伴った腹部大動脈瘤を2例経験した. いずれも拍動性の腹部腫瘤と進行性の心不全を認めた. 1例は腹部の連続性雑音とDSAにて術前診断が可能であり, 他の1例は緊急手術例であったが術中の動脈瘤の触診で thrill を認め, 診断しえた. 1例は瘻孔閉鎖, 他の1例は左総腸骨静脈を縫合閉鎖したのち, ともにY型人工血管置換術を施行した. 腹部大動脈瘤はまれに動静脈瘻を伴うことがあり, 多彩な症状のため診断に苦慮するが, 常に動静脈瘻の合併を念頭に置き, 対処する必要がある.
  • 山田 眞, 舟波 誠, 横川 秀男, 賀嶋 俊隆, 井上 恒一, 高場 利博
    1993 年 22 巻 1 号 p. 49-53
    発行日: 1993/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    後腹膜腔にゼラチン様物質の貯留を伴った, 動脈瘤切迫破裂の一例を経験した. 症例は69歳, 男性. 左下腹部の膨満感と軽い疼痛があり, CTにて左総腸骨動脈瘤を認めた. 5日後, 急激な疼痛の増強がみられたため再度CTを施行し, 左後腹膜腔の low density mass を認めた. 緊急手術によりY型人工血管移植術を施行した. 手術時, 左後腹膜腔に約600cm3の無色透明ゼラチン様物質の貯留を認めたが瘤破裂の所見はなかった. 術後42日目のCTでは low density mass は消失していた. ゼラチン様物質の電解質は, Na+ 115.8mEq/l, K+ 6.11mEq/l, Cl- 102.6mEq/lであり, 瘤壁を通じ血漿成分が後腹膜腔へ漏出貯留したものである, と推論した. きわめて特殊な症例であると判断したので, ここに報告する.
  • 伊藤 敏明, 澤崎 優, 高味 良行, 宮田 義彌, 有木 弘, 石原 智嘉
    1993 年 22 巻 1 号 p. 54-57
    発行日: 1993/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    肝臓の動静脈奇形 (AVM) はまれな疾患であり主に遺伝性出血性毛細血管拡張症に合併し, 国内では画像診断に関する報告を散見するのみである. 症例は69歳女性, 心不全を主訴に来院し肝の両葉に多発したAVMによる高拍出性心不全と診断された. 診断にはドップラー法を含めたエコー検査と血管造影, 心臓カテーテル検査が有効であった. 金属コイルによる肝動脈塞栓術を二回に分けて施行し心不全症状の改善をみた. 塞栓療法の方法につき検討し報告する.
  • 吉谷 克雄, 入沢 敬夫, 横沢 忠夫, 岩松 正
    1993 年 22 巻 1 号 p. 58-61
    発行日: 1993/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    喉頭癌のため喉頭全摘後, 永久気管口を形成された64歳の男性に対し, 胸骨正中切開では術後の胸骨正中創感染の危険が高いと考え, 大腿動静脈より送脱血し, 大動脈非遮断低体温心室細動下に, 左開胸により左前下行枝, 回旋枝への2枝バイパスを行った. 左開胸による冠動脈バイパス術は, 胸骨裏面の強固な癒着のある再手術例や本症例のように胸骨正中切開を避けたい症例, さらに左肺との同時手術に対して有効な手術方法であると考えられた.
  • 佐藤 洋, 岡村 雅雄
    1993 年 22 巻 1 号 p. 62-64
    発行日: 1993/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    血液透析のために造設された内シャントと同側の鎖骨下静脈狭窄症のため上肢の腫大, 疼痛をきたした慢性透析患者に対し, 局所麻酔下にて外頸静脈-橈側皮静脈バイパス術を施行し良好な結果が得られた. 本術式は局所麻酔下に施行でき, 吻合箇所も1か所であり手術も短時間でかつ減圧効果も十分であった.
  • 中山 義博, 真方 紳一郎, 岡崎 幸生, 夏秋 正文, 伊藤 翼
    1993 年 22 巻 1 号 p. 65-67
    発行日: 1993/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    動脈瘤-腸瘻は動脈瘤の合併症の1つであり, 頻度こそ少ないがひとたび発症した場合は致死的な疾患である. 今回われわれは孤立性腸骨動脈瘤-S状結腸瘻の1例を経験した. 症例は68歳男性, 下血を主訴に近医を受診し注腸造影にてS状結腸憩室の診断を受けS状結腸切除術を受けた. その後も大量下血が生じショック状態となるため当科に緊急入院となった. 本院での血管造影所見にて左総腸骨動脈瘤破裂像が得られS状結腸瘻と診断, 緊急手術を施行した. 手術は瘤切除と extraanatomical bypass として大腿-大腿動脈バイパスを造設した. 本症例は敗血症より多臓器不全となり術後8日目に失った. 本病態の最大の問題点は致死率が高い疾患にもかかわらず確定診断が非常に困難であるという点である. この場合最も大切なことは, 出血点不明な消化管出血症例を診察する上で動脈瘤-腸瘻の可能性を常に考えておくことと思われた.
  • 金岡 祐司, 杭ノ瀬 昌彦, 種本 和雄
    1993 年 22 巻 1 号 p. 68-72
    発行日: 1993/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1981年から1990年までに5例の胸腹部大動脈瘤 (TAA) 手術を施行した. 今回, 壁在血栓により総肝動脈閉塞をきたし, 腹部アンギーナ発作を伴ったTAAを経験した. 症例は, 58歳男性で約半年間不定の腹痛を繰り返し, 一過性に肝酵素の上昇を認めた. 血管造影等により総肝動脈閉塞をきたした胸腹部大動脈瘤と診断し, 遠心ポンプを用いた部分左心バイパス下に人工血管置換術を施行した. 総肝動脈, 上腸間膜動脈は Crawford 法にて再建した. 腹部アンギーナは比較的稀な疾患であるがTAAがその原因となっているものは非常にまれである. 手術に際しては完全に血行を再建する必要はないといわれており, 術前血管造影による正確な血流分布の把握が必要である.
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