日本心臓血管外科学会雑誌
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23 巻, 1 号
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  • 山本 晋, 笹栗 志朗, 弘岡 泰正, 田原 稔, 菊地 憲男, 川崎 志保理, 渡部 幹夫, 田中 淳, 細田 泰之
    1994 年 23 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 1994/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    慢性透析患者に対する冠動脈再建術において, 体外循環中の血液濾過法 (以下HF) により, 血液希釈率と電解質の管理を試みた. 対象は1988年1月より1989年12月までの間に当科で施行した慢性透析患者に対する冠動脈再建術7例であり, 症例の平均年齢は53歳, 性別はすべて男性であった. 慢性腎不全に対しては全例で術前より血液透析 (以下HD) を施行していたがこのうちの1例は入院後, さらに持続的腹膜透析 (以下CAPD) を施行し, HDとの併用によって管理した. 術中は体外循環回路にダイアライザーを組み込み, 回路内輸血 (1,270±372ml) および大量の輸液 (12,657±3,966ml) と限外濾過による除水 (18,300±5,628ml) によって電解質および血液希釈率の調整を行った. 術後は第3病日までの間に全例で2回以上のHDを施行した. 1例で術後低K血症を認めたほかは手術中および手術当日の電解質は適正に保たれ, 周術期の大きな血行動態の変化はみられなかった. 体外循環中のHFは, 術中HDと比較してより簡便であり, 短時間で施行できる点からも慢性透析患者における心臓手術に安全かつ有用な方法と考える.
  • ことに冠血行再建合併施行例の治療方針について
    倉岡 節夫, 入沢 敬夫, 春谷 重孝, 金沢 宏, 小熊 文昭, 三浦 正道, 坂下 勲
    1994 年 23 巻 1 号 p. 6-10
    発行日: 1994/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    腹部大動脈瘤120例の手術治療を経験した. 台上死を除く全例にグラフト置換術を施行し, 13例 (11%) の症例に合併疾患に対する同時手術を施行した. 合併異時手術として, 9例 (7.5%) に虚血性心疾患に対する冠血行再建を施行した. 虚血性心疾患合併例は冠動脈病変の評価に従い冠血行再建を先行する方針をとった. 待機手術例の手術死亡は1例 (1.1%), 遠隔生存率は待機手術例において術後平均51か月追跡で78%, 緊急手術例において術後平均46か月追跡で52%であり, 遠隔死亡原因としては悪性腫瘍, 心筋梗塞をはじめとする動脈硬化性病変の増悪が多数を占めた. 冠血行再建合併施行例における生存率は術後平均51か月追跡で89%であった. 遠隔成績向上のためには虚血性心疾患の合併に留意した術後患者の慎重な追跡が重要であると考えられた.
  • 腹部大動脈瘤手術例での検討
    石川 進, 相崎 雅弘, 大滝 章男, 柳沢 肇, 大谷 嘉己, 坂田 一宏, 高橋 徹, 佐藤 泰史, 吉田 一郎, 森下 靖雄
    1994 年 23 巻 1 号 p. 11-14
    発行日: 1994/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    術中自己血回収による輸血量削減効果と術後経過に及ぼす影響を腹部大動脈瘤症例で検討した. 対象は回収群47例と非回収群25例で, 回収には, ローラーポンプと人工心肺用フィルター装置による非洗浄式を用いた. 自己血回収量は待機手術例で平均1,109ml, 総出血量に対する回収率は47%であった. 待機例での他家血輸血量は, 回収群が平均712mlと非回収群の1,405mlに比べて有意に (p<0.05) 少なかった. 回収群では輸血量1,200ml以下が全体の86%を占めたが, 無輸血症例では23%にすぎなかった. 回収量1,000ml以上の例では, 術後の血清総ビリルビン値が高い傾向にあった. 回収量10,000ml以上の3例 (破裂例) は, 術中出血および術後合併症で死亡した. 無輸血手術には, 800~1,200mlの術前自己血貯血と術中の自己血回収輸血の併用が必要で, 成績の向上には術中の出血量削減が重要である.
  • 川人 宏次, 井手 博文, 井野 隆史, 安達 秀雄, 水原 章浩, 山口 敦司
    1994 年 23 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 1994/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    通常の心肺蘇生では心拍再開が得られなかった心肺停止例11例 (男性5例, 女性6例, 平均年齢59.3歳) に対して, 緊急経皮的心肺補助システム (PCPS) による心肺蘇生を行った. 対象は手術への bridge とした症例が2例, PTCAへの bridge とした症例が2例, 蘇生後も心肺補助を継続した症例が7例であった. 循環補助時間は10.5±9.1 (mean±S. D.)時間, 補助流量は2.5±0.7l/分, 心停止からPCPS開始までは5分から70分, 平均24.9分であった. 回路はヘパリンコーティングを主とした抗血栓性材料でコーティングし, activated coagulation time を約150秒で維持した. これら10例中30日以内の早期生存は6例 (54.5%), 長期生存は4例 (36.4%) であった. 合併症として脳神経後遺症2例, 縦隔炎1例, 人工弁感染1例, 敗血症1例が発生した. PCPSによる救急蘇生は, 慢性期の脳合併症, 感染が問題となるが, 従来の心肺蘇生に反応しない心肺停止例を救命できる可能性が高く, 新しい心肺蘇生法としての有用性が示唆された.
  • 柳沢 肇, 須藤 憲一, 大滝 章男, 小石沢 正, 林 信成, 田所 雅克, 小久保 純, 池田 晃治, 水野 明
    1994 年 23 巻 1 号 p. 21-27
    発行日: 1994/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1987年4月から1990年3月までの3年間の体外循環を用いた体外循環症例90例 (平均年齢51.8歳) と非体外循環症例 (腹部大動脈瘤および閉塞性動脈硬化症) 29例 (平均年齢58.1歳) のうち, 術前より腎機能低下を伴っていた症例について, 手術成績, 術後合併症等について比較検討した. 術前腎機能低下は血清クレアチニン値を1.4mg/dl以上また術後腎機能低下症例は血清クレアチニン値を2.0mg/dl以上の症例とした. 結果: 1) 両群の急性期死亡率について, 有意差はなかった. 2) 腎機能低下および人工透析による合併症が, 直接の死因となった症例はなかった. 3) 両群間では, 術前後の腎機能不全の程度, 人工透析の効果には, 有意差はなかった. 4) 腎機能低下例に対して術中術後の人工透析療法を行うことにより積極的に手術適応を決めることが可能であると考えられた.
  • 小熊 文昭, 林 純一, 土田 昌一, 岡崎 裕史, 宮村 治男, 江口 昭治
    1994 年 23 巻 1 号 p. 28-32
    発行日: 1994/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    解離性大動脈瘤4例, 胸部大動脈瘤3例, 胸部大動脈瘤術後の再狭窄1例の計8例に対して上行大動脈-腹部大動脈 bypass 術を施行した. 解離性大動脈瘤の4例に対しては, thromboexclusion 法を行ったが, 胸部大動脈中枢側の大動脈遮断だけでは瘤の血栓化は得られず, 胸部大動脈の遠位側に遮断を追加した1例でのみ瘤は血栓化し長期生存が得られた. 感染性胸部大動脈瘤の2例にも thromboexclusion 法を行ったが, 瘤の中枢側と遠位側での大動脈遮断にもかかわらず, 瘤の血栓化は得られず破裂死亡した. 上行大動脈-腹部大動脈 bypass 術と瘤切除を施行した胸部大動脈瘤の1例は, 呼吸不全と対麻痺を合併し, 在院死亡となった. 解離性大動脈瘤と胸部大動脈瘤に対する thromboexclusion 法は, 瘤の血栓化が不確実で破裂を予防しえず, 直達手術の困難な poor risk 症例に適応を限定すべきである.
  • 佐戸川 弘之, 岩谷 文夫, 猪狩 次雄, 萩原 賢一, 丹治 雅博, 渡辺 正明, 緑川 博文, 佐藤 洋一, 高瀬 信弥, 星野 俊一
    1994 年 23 巻 1 号 p. 33-37
    発行日: 1994/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    体外循環を用いた手術後に生じた汎血管内凝固症候群 (DIC) に対して, nafamostat mesilate を投与し, その有用性についてDIC score と凝固線溶系項目から検討した. 対象は最近3年間の体外循環使用手術例293例中, DICと診断した12例. 敗血症を合併した1例を除き全例で, FUT投与により血小板数の改善を認め, DICから回復, 7例の生存が得られた. 血小板数, フィブリノーゲン, FDPの改善により, DIC score は最高値に比しFUT投与終了時には有意に減少した (p<0.01). トロンビン-アンチトロンビンIII複合体, D-ダイマー, プラスミン-α2プラスミンインヒビタ-複合体が, FUT投与終了時にも高値を示していたことから, 体外循環後に生じるDICでは, 線溶系の亢進が高度のものが多く, FUT投与によってもその抑制は完全ではなかった.
  • 八巻 文貴, 土田 弘毅
    1994 年 23 巻 1 号 p. 38-41
    発行日: 1994/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    自動車事故によるハンドル外傷に起因する急性腹部大動脈閉塞症例を経験した. 閉塞部位は腎動脈下腹部大動脈であり, 内膜, 中膜が全周性に解離し大動脈内腔を閉塞していた. 腎動脈下腹部大動脈より両側総腸骨動脈までの人工血管置換術を施行した. 術後, 急性心不全, 呼吸不全, myonephropathic metabolic syndrome (MNMS) を発症し術後管理に難渋したが救命しえた. 外傷性腹部大動脈損傷は比較的稀であるが, 時機を失した場合救命は困難であり迅速な診断と血管損傷の修復が必要である.
  • 鎌田 誠, 栗林 良正, 関根 智之, 相田 弘秋, 関 啓二, 目黒 昌, 飯島 啓太郎, 阿部 忠昭
    1994 年 23 巻 1 号 p. 42-45
    発行日: 1994/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    大動脈弁置換術 (AVR) に際し, 選択的冠灌流カニューレによる内膜損傷に起因すると思われる高度左冠動脈入口部狭窄症例に対し冠動脈バイパス術を施行し良好な結果を得た. 症例は, 67歳男性で, AVR後4か月ごろより狭心痛発作が頻発するようになり, 冠動脈造影で左冠動脈入口部に99%狭窄を認めた. 逆行性冠灌流法による心筋保護下, 大伏在静脈グラフトを用い, 左冠動脈前下行枝へのバイパスを行った. 術後経過は順調で, 狭心痛発作は消失した. AVR後早期に狭心痛発作や重症不整脈を認めた場合には, 本症を念頭に置き, 早急な対策が必要である.
  • 古賀 正哲, 湯田 敏行, 宮崎 俊明, 豊平 均, 平 明
    1994 年 23 巻 1 号 p. 46-49
    発行日: 1994/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    心臓超音波検査の普及などにより心臓粘液腫は術前診断が容易となり手術症例も増加しているが, 今回70歳の女性に発生した右房粘液腫を経験した. 腫瘍は石灰化が著明で硬く, 有茎性で茎は下大静脈弁に付着していた. 記載の明らかな右房粘液腫の本邦報告はこれまで35例で下大静脈弁より発生したものは自験例を含め2例であった. また, 70歳以上のものも過去1例しか報告がない. 手術時の脱血カニューレの操作に若干の工夫が必要であったが術後経過は順調であった.
  • 櫻井 雅浩, 前山 俊秀
    1994 年 23 巻 1 号 p. 50-53
    発行日: 1994/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    きわめて稀とされる大動脈原発悪性腫瘍の1例を経験した. 症例は54歳男性で, 維持透析患者であった. 間欠性跛行を主訴として入院, 閉塞性動脈硬化症の診断で手術を行った. 大動脈内には寒天様物質が充満しており, 迅速診断で悪性細胞が指摘された. 術後, 免疫組織学的検索により, 平滑筋肉腫の確定診断を得た. 大動脈原発の悪性腫瘍は, 診断, 治療に, 多くの問題を抱えているため, 文献的考察を加え報告する.
  • 荻野 均, 山里 有男, 花田 正治, 中山 正吾
    1994 年 23 巻 1 号 p. 54-58
    発行日: 1994/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    左室 (自由壁) 破裂, 心室中隔穿孔 (VSP), 仮性心室瘤など急性心筋梗塞 (AMI) 後の機械的合併症に対し, 三度の修復術を施行し救命しえた. 症例は70歳女性で, AMI (広範前壁) を発症し他院にて経皮的冠動脈形成術 (PTCA) と tissue plasminogen activator (t-PA) 治療を受けた. その数時間後に左室破裂 (oozing type) を合併し, 本院へ緊急転送され梗塞部心膜被覆術を施行した. しかし, 術後2日目にVSPを合併し穿孔部パッチ閉鎖および左室パッチ形成術を施行した. その後, 心エコーにて仮性心室瘤の合併が認められ, 部分体外循環および左開胸下に修復術を施行した. 術後, おおむね順調に回復し無事退院した. AMI後の機械的合併症の診断には心エコーが有用であり, 適切な時期に, 適切かつ確実な手術をしたことが良好な結果につながったと考える.
  • 木村 龍範, 葉玉 哲生, 高崎 英巳, 森 義顕, 重光 修, 宮本 伸二, 迫 秀則, 穴井 博文, 添田 徹, 内田 雄三
    1994 年 23 巻 1 号 p. 59-62
    発行日: 1994/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    われわれは, 51歳男性でCABG後, 1か月目のグラフト造影で米粒大の静脈グラフト瘤を認め, 経過観察中8か月目に狭心痛が出現, 再造影で瘤の増大と同部位のグラフトの狭窄を認めたため, 再CABGを施行, 良好に経過した症例を経験した. CABG後の静脈グラフト瘤は比較的まれな合併症であり, 本症例の場合, その原因として, 初回CABG後合併した縦隔炎によるグラフトの脆弱化が最も考えられた. 瘤内には血栓が形成されており, 心筋梗塞や破裂などに至る危険があった. したがって, グラフト瘤に対しては, 発見次第早期の再CABGを検討する必要があると考えられる.
  • 大井 勉, 金森 由朗, 倉田 直彦, 庄村 赤裸, 磯島 明徳
    1994 年 23 巻 1 号 p. 63-67
    発行日: 1994/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    膠原病においては冠動脈病変の合併は少なく, 冠動脈バイパス術の報告は稀であり, とくに進行性全身性硬化症との合併例の報告はいまだみられていない. 今回われわれは進行性全身性硬化症に合併した狭心症症例に対し冠動脈バイパス術を施行したので報告する. 症例は60歳の女性で, 1988年2月より進行性全身性硬化症の診断でステロイド治療を受けていたが, 1989年10月より労作性狭心症が出現した. 冠動脈造影の結果, 前下行枝と右冠動脈に有意な狭窄がみられ, 内科的治療では胸部症状が消失しないため, 大伏在静脈を用いて前下行枝と右冠動脈に2枝バイパス術を施行した. 術後グラフト造影では, グラフトは2本とも開存していたが, 右冠動脈へのグラフト体部に軽度の狭窄性変化が認められたことより, ステロイド投与例に対するCABGではグラフトの選択に注意を要すると考えられた. また術中術後はステロイドの投与により進行性全身性硬化症の進行もなく順調に経過し, 術後胸部症状も消失した.
  • 桜田 徹, 鎌田 誠, 柴田 芳樹, 山岸 逸郎, 阿部 忠昭
    1994 年 23 巻 1 号 p. 68-71
    発行日: 1994/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は有痛性多発性左下腿潰瘍を主訴とした65歳, 男性である. 四肢, 体幹に魚鱗様の紋理を認め, 同様の魚鱗癬を有する男子が家系内に6名いること, ステロイドサルファターゼが10pmol/DHEA/mg・protein/hr未満で, 本酵素の欠損と考えられたことより, 伴性遺伝性魚鱗癬と診断された. 下肢動脈造影では左腸骨動脈, 両浅大腿動脈の閉塞, 右腸骨動脈に狭窄を認めた. 以上より, 伴性遺伝性魚鱗癬に発症した閉塞性動脈硬化症による下腿潰瘍と診断した. 腹膜外アプローチにて Gelseal®人工血管 (直径8mm) による腹部大動脈-左総大腿動脈バイパス, 自家静脈による左大腿動脈-膝窩動脈バイパス術を行った. 術後経過は良好で, 前脛骨部潰瘍の治癒は遷延したが, その他の潰瘍はほぼ1か月にて治癒した. 伴性遺伝性魚鱗癬では, 皮膚潰瘍の治癒機転はほぼ正常と考えられ, 潰瘍を有する閉塞性動脈硬化症でも通常人と同様に対処してよいものと考えられた.
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