日本心臓血管外科学会雑誌
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24 巻, 2 号
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  • 杵渕 忠司, 大熊 恒郎, 佐藤 成, 金田 寛之, 高橋 光浩, 大江 大, 森 昌造
    1995 年 24 巻 2 号 p. 71-79
    発行日: 1995/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    大動脈再建時に大動脈と人工血管の吻合部を止血および補強の意味でラッピングをすることがしばしばある. 効果は短期間のもので, 長期間のラッピングによる血管壁の変化については, 報告されていない. そこでラッピングによる大動脈の経時的変化を観察し, その要因を性状を変えることで解析し, 安全なラッピング材料および手技の確立を目的とした. 雑種成犬26頭を用いラッピングによる大動脈壁の変化を, 経時的に観察し検討を行った. ラッピング材料は woven Dacron 人工血管を使用し4週後, 4か月後に標本を採取し, それぞれの血管壁の変化を比較検討した. この実験で長期例に変化が認められたため, 観察の期間を4か月に設定し, ラッピング材料による porosity の違いおよび大動脈壁にかかる圧の違いで, 始めの woven Dacron 群と合わせ Mesh 群, E-PTFE群の3群に分け比較検討した. その結果, 大動脈壁の菲薄化にはラッピングによる圧迫の影響が強く関与していると考えられた. 以上から臨床で吻合部補強, 止血を目的としてラッピングを行うときは大動脈壁の中膜の菲薄化を防止するため, ラッピング周径は壁周径に比べて必要以上に小さくせず, 大動脈壁を長期間不必要に圧迫しない配慮が大切と考える.
  • 檜原 淳, 古山 正人, 竹尾 貞徳, 池尻 公二
    1995 年 24 巻 2 号 p. 80-84
    発行日: 1995/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    糖尿病 (DM) を合併した閉塞性動脈硬化症 (ASO) では, DM非合併例に比べ発症年齢が約5歳若く, 臨床的に重症の傾向を示した. また, 血管造影, 趾尖容積脈波にて末梢動脈の病変が強く, 下肢・足趾切断に至る例が少なくなかった. GHb高値の症例に重症例が多く, DMコントロールの不良は動脈硬化を促進すると考えられた. 一方, DMの治療法, 羅病期間と肢趾切断の割合の間には一定の傾向は認められなかった. これらの結果より, DMをコントロールし, 合併症を軽減させた上で可及的に血行再建術を行い, 少しでも多くの血流を末梢に送るようにすることが治療上重要であると考えた.
  • 開腹法か腹膜外到達法か
    石坂 透, 安藤 太三, 中谷 充, 安達 盛次, 高本 眞一, 川島 康生
    1995 年 24 巻 2 号 p. 85-88
    発行日: 1995/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1988年から1991年の腹部大動脈瘤手術231例中, 待機的に行った定型的Y字型人工血管置換術症例132例を対象に, 開腹法 (51例) と腹膜外到達法 (81例) の手術成績を比較検討した. 両群間の手術時間, 術中出血量, 術中輸血量, 総輸血量, 自己血輸血量は有意な差がなかった. 術後挿管時間, 術後鎮痛剤の使用回数, 術後入院日数は有意な差がなかった. 術後胃管排液量は開腹群で有意に多く, 飲水開始までの日数, 食事開始までの日数は開腹群で有意に長かった. 胸腹部に遺残した瘤のある症例, 両側総腸骨動脈瘤症例, 心疾患合併症例は開腹法のよい適応であるが, それ以外の待機的腹部大動脈瘤手術においては, 腹膜外到達法は術後の腸管蠕動の回復が早く, 第一選択とするのが望ましいと考えられた.
  • 東 健一郎, 広瀬 一, 松本 興治
    1995 年 24 巻 2 号 p. 89-94
    発行日: 1995/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    下肢閉塞性動脈硬化症 (ASO) の外科治療時, 虚血性心疾患 (IHD) の合併が問題となる. 今回ASO例における, (1)アームエルゴメーター負荷 (Arm E) 法を用いたIHDのスクリーニング法と, (2)IHD合併例における Leaman らの coronary score (CS) を用いた外科治療法選択の有用性について検討した. Arm E法と冠動脈造影 (CAG) を施行したASO24例を対象とした. IHDの合併は24例中16例(67%) に認めた. (1): Arm E法の感度は94%, 特異度75%, 正確度88%であった. (2): 次に外科治療法の選択を検討した. CS16以上の3例は, 冠動脈と下肢の血行再建術を一期的に施行した. CS5.5以下の12例は, 下肢血行再建術のみを施行した. この治療方針にて, 周術期にIHDに基づく合併症を認めなかった. 以上より, ASOの外科治療時, IHDのスクリーニング検査法として, Arm E法は有用な方法と考えられた. またその結果に基づく外科治療法の選択により, 良好な結果を得た.
  • 舟波 誠, 饗場 正宏, 成澤 隆, 数馬 博, 田中 弘之, 村上 厚文, 山田 眞, 高場 利博, 堀 豪一, 山本 登
    1995 年 24 巻 2 号 p. 95-100
    発行日: 1995/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    39症例の胸部・腹部大動脈血行再建術に Gelseal knitted Dacron graft を臨床応用しその有用性について検討した. 胸部大動脈瘤 (TAA) 10例, 腹部大動脈瘤 (AAA) 19例, 腸骨動脈領域疾患 (IAL) 10例に Gelseal graft 直管16本, Y graft 23本を用い血行再建術を施行した. 人工血管壁の針通過,吻合面の密着, 縦方向の伸展性などは良好で人工血管壁の漏血はみられなかった. さらに従来から用いていた knitted Dacron (Intervascular MICRON®) と Gelseal graft を非破裂性腹部大動脈瘤症例にて比較検討した. その結果, 出血量, 他家血輸血量, 血液生化学的検査, 血液凝固系検査で両群間に有意の変化は認められなかった. 以上より従来の knitted Dacron graft と比較し, 手術手技的に良好な吻合操作性を有し, preclotting が不必要であり, 十分な抗漏血性を持ち, 臨床に十分使用できる優れた人工血管であることが示唆された.
  • 町田 政久, 大滝 憲二, 高平 真
    1995 年 24 巻 2 号 p. 101-103
    発行日: 1995/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    左無名静脈は通常大動脈弓の前上方を走行するが, ごくまれに上行大動脈の背側を走行する, いわゆる post aortic left innominate vein (PALIV) という先天奇形が報告されている. われわれは4歳の男児で, PALIVを合併したPDAの手術例を経験した. 文献上PALIVの本邦報告例は14例にすぎず, そのうち画像上診断しえた症例は5例のみであった. 本症は, 心エコー法によりPALIVを明瞭に描出することができた. PALIVは臨床的にそれ自体問題にはならないが他の心奇形を合併することが多いこと, 肺動脈との誤認, 肺静脈還流異常症との識別, 手術の際の損傷の可能性などが問題になると考えられた.
  • 河内 秀幸, 橋本 宇史, 中村 昭光, 中路 進
    1995 年 24 巻 2 号 p. 104-107
    発行日: 1995/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    脾動脈瘤は比較的稀な疾患であり, 本疾患を念頭に置かなければ無症状例を診断することは困難である. 近年, 画像診断技術の進歩により無症状例の脾動脈瘤でも腹部超音波検査や腹部CT検査で発見されるようになってきた. 今回われわれは検診時の腹部超音波検査で脾門部腫瘤を疑われ, カラー超音波検査で腫瘤内腔の動脈血流波形を検知することで脾動脈瘤であるとの術前診断を得た44歳女性の症例を経験した. 脾動脈瘤は嚢状で, 大きさは20×16×13mmであった. 手術は脾動脈瘤切除を施行し, 患者は術後第18病日に全治退院した. 今後, カラー超音波検査は腹部内臓動脈瘤の診断に有力な情報を提供するものと考えられる.
  • 高山 鉄郎, 宮入 剛, 小銭 健二, 長田 信洋
    1995 年 24 巻 2 号 p. 108-111
    発行日: 1995/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    4例の手術の危険性が高いと考えられた小児期僧房弁置換術を warm heart surgery を導入して行い良好な結果を得た. 3例では1~3回の弁形成術の既往があり, 他の1例は感染性心内膜炎急性期症例であり, 術前NYHA IV度の症例が3例であった. 常温体外循環下大動脈遮断, 体外循環酸素加血3ml/kg/minで持続冠灌流を行いつつ, 冠灌流血に塩化カリウムを追加注入することにより心停止として弁置換を行った. 大動脈遮断時間は79~216分に及んだが術後の最大使用 dopamine 2~6μg/kg/min, 術後第1病日のCK-MB値の上昇も認めず全例順調に経過した. Warm heart surgery を導入したことにより心筋保護は良好に行われたが, 一方持続冠灌流の維持や大動脈遮断解除時の空気塞栓の予防にはとくに配慮が必要であると考えられた.
  • 松田 均, 太田 稔明, 小澤 修一, 岡田 昌義
    1995 年 24 巻 2 号 p. 112-116
    発行日: 1995/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は, 73歳女性. 呼吸困難を訴え, 右房粘液腫の疑いで緊急入院となった. 来院時の心エコーでは右房内の腫瘤は消失しており, 肺動脈造影で両肺動脈内に巨大な血栓が確認された. ショックは伴わず, t-PAの投与により呼吸困難は改善し, 肺動脈圧も66から43mmHgに低下した. しかし, その後の肺動脈造影で血栓の形態が不変であったことから, 緊急に肺塞栓除去術を施行した. 手術により肺動脈内の巨大な血栓は除去されたが, 人工心肺の装着中に容易に心室細動に陥ったり, 体外循環からの離脱時には著明な低酸素血症を認めたが, これらの際には, 部分体外循環が有効であった. 術後の肺動脈造影では明らかな陰影欠損は認められず, 肺動脈圧も正常に復した. 急性肺塞栓症の治療に関しては, 線溶療法や抗凝固療法の報告が多いが, 塞栓除去術により良好な結果を得たので文献的考察を加えて報告する.
  • 伊東 博史, 岡田 治彦, 鈴木 一弘, 西田 一也, 浜野 公一, 古永 晃彦, 藤村 嘉彦, 壺井 英敏, 江里 健輔
    1995 年 24 巻 2 号 p. 117-120
    発行日: 1995/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    右心系の感染性心内膜炎 (IE) を合併した成人の心室中隔欠損症 (VSD) の2例を経験した. 症例1はVSDに肺動脈弁IEを合併し肺動脈弁閉鎖不全を生じた. 炎症は活動期であったが疣贅による肺梗塞を併発したため緊急手術を行った. 肺動脈弁切除とVSDのパッチ閉鎖を行った. 症例2はVSD+心房中隔欠損症 (ASD) に三尖弁IEを合併し三尖弁閉鎖不全を生じた. 炎症の寛解した時点でVSD, およびASDは直接閉鎖, 三尖弁は切除後 Björk-Shiley 弁で置換した.
  • 周術期持続的血液濾過透析の有用性
    小野 裕逸, 百川 健, 鈴木 宗平, 鯉江 久昭
    1995 年 24 巻 2 号 p. 121-124
    発行日: 1995/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は44歳男性で, 13年の血液透析歴を有していた. 感染性心内膜炎による大動脈弁および僧帽弁閉鎖不全症に対して機械弁による二弁置換術を施行した. 本症例の術中・術後の腎不全対策として, 持続的血液濾過透析 (CHDF) を用いた. 術後第12病日までCHDFを行ったが, BUN, クレアチニン, カリウム値を至適濃度に維持できた. CHDFは集中治療領域において注目を集めている血液浄化法の一つであり, 循環動態の不安定な症例に対しても安全に濾過と透析を行いえる手段である. 自験例の場合は術前からの低心機能を考慮し, CHDFによる周術期管理を選択したが, 本症例の多臓器不全への進展を回避できたものと考えている.
  • 今井 雅尚, 山口 眞弘, 大橋 秀隆, 大嶋 義博, 熊本 隆之, 尾崎 喜就, 三戸 壽, 鄭 輝男, 黒江 兼司
    1995 年 24 巻 2 号 p. 125-129
    発行日: 1995/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    St. Jude Medical (SJM) 弁を用いた小児期僧帽弁置換後に一葉血栓弁をきたした2例を経験し, ウロキナーゼを用いた血栓溶解療法により良好な結果を得た. 症例1: 2歳11か月, 女児, CAVC根治後のMRに対してMVR (SJM25mm) を施行. 術後1か月, 2か月, 3か月時にそれぞれ一葉血栓弁が判明し, ウロキナーゼ投与でその都度血栓弁の動きは良好となった. 症例2: 1歳5か月, 女児, VSD, MR, PHに対し, VSDパッチ閉鎖, MVR (SJM23mm) を施行した. 術後11日目, 一葉血栓弁が判明し, 同療法で血栓弁の動きは良好となった. 本例では一葉血栓弁発生前の左心機能は極めて悪かった. なお, 症例1, 2において同療法施行後, 3年7か月, 1年を経過し一葉血栓弁の再発をみていない. 以上から, 一葉血栓弁に対する血栓溶解療法は幼小児例においても有効で, また繰り返し行えることから, 試みるべき治療法であり, 術後の低左心機能は一葉血栓弁発生の要因となることが示唆された.
  • 秦 絋, 岡部 学, 松岡 正紀, 牧野 茂行
    1995 年 24 巻 2 号 p. 130-132
    発行日: 1995/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    患者は74歳男性で, 腹部大動脈瘤を合併した右総腸骨動脈下大静脈瘻である. 2年前から腹部大動脈瘤と診断されていたが, その後下腹部の thrill を伴う連続性血管雑音と心不全症状および右下肢間欠性跛行が出現して動静脈瘻と診断された. 手術は瘤切除, 人工血管置換と瘻孔閉鎖を行い治癒した. 瘻孔閉鎖に際しすべての瘻孔への血流を遮断し, 手術は容易で, 出血も少なかった. 腸骨動脈瘤に合併する動静脈瘻は稀な疾患であるが, 確定診断がつきしだい, 早期に手術を行えば腹部大動脈瘤の手術と変わりがない.
  • 有泉 憲史, 金渕 一雄, 稲村 俊一, 小田桐 重遠, 小出 司郎策, 正津 晃
    1995 年 24 巻 2 号 p. 133-135
    発行日: 1995/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    Three-channeled aortic dissection を手術で確認したので報告する. 60歳, 男性. 突然の背部痛を主訴に救命救急センターに搬送された. 22年前 (38歳時) に強烈な背部痛を起こした既往歴があるが, 確定診断は得られていなかった. 来院時の胸部CTスキャンでは, 胸部下行大動脈が three channel を呈していた. Debakey III b型解離性大動脈瘤に再解離が生じた症例と診断し, 緊急手術を施行した. 手術は胸部下行大動脈人工血管置換術を行い, 術中所見で大動脈内腔の three channel を確認した. 新たに生じた解離腔に残存した中膜は薄く, 脆弱であった.
  • 蜂谷 貴, 金子 寛, 三岡 博, 中村 達, 馬塲 正三, 小谷野 憲一
    1995 年 24 巻 2 号 p. 136-139
    発行日: 1995/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は52歳男性. 1986年, 両下肢に皮疹が出現し結節性紅斑と診断された. 1989年8月ごろより左下腿に潰瘍を形成, 静脈達影で左膝窩静脈から大腿静脈までの深部静脈血栓症と診断した. 穿通枝結紮術を行い潰瘍は治癒した. 1991年11月, 52歳時, 右頸部腫瘤を自覚. CTで壁在血栓を伴った直径4cmの動脈瘤を認め, 血管造影にて動脈瘤は内外頸動脈分岐に存在した. 1992年2月, Dacron 人工血管で血行再建術を施行したが人工血管周囲に無菌性膿瘍を併発, 1992年9月やむなく人工血管除去, 頸動脈を結紮した. 頸動脈瘤を呈した Behçet 病の本邦報告例は7例で, 5例において血行再建術がなされていたが他の2例は合併症により頸動脈結紮となった. 本症の特徴を考慮し瘤切除のみにとどめ血行再建を行わない術式も考慮されよう.
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