日本心臓血管外科学会雑誌
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24 巻, 4 号
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  • 三室 治久, 瀬在 幸安
    1995 年 24 巻 4 号 p. 209-216
    発行日: 1995/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    虚血心筋に対し, 冠循環補助の assist device としてSCSRを用い, さらにIABPとの同時駆動法による心補助効果について実験的に検討した. ブタ28頭を用いて, 左前下行枝分枝を結紮した心筋梗塞モデルを作成し, 対象群, IABP群, SCSR群, およびSCSRとIABP併用群の4群に分け, 経時的な血行動態的変化, 心筋局所血流量, 心外膜マッピング心電図からみた梗塞領域の評価, 形態学的評価を行った. 補助装置使用群では, 対象群に比し血行動態の改善が認められ, 梗塞領域の評価では, 併用群で最も著しい回復がみられた. 形態学的にも併用群は, 他に比して梗塞境界領域の虚血所見の改善が認められた. SCSRとIABPの同時駆動法は, 順行性の冠血流が十分得られない重症虚血性心疾患に対し, 有効な補助循環になりうることが示唆された.
  • 笠島 史成, 明元 克司, 手取屋 岳夫, 上山 武史
    1995 年 24 巻 4 号 p. 217-221
    発行日: 1995/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    内腸骨動脈の虚血により生ずる臀筋跛行に対し, 種々の下肢血行再建術を施行し良好な結果を得ているので, 本症の病態と治療について考察する. 症例は当科で経験した5例で, いずれも足関節圧比の低下が著明でないにもかかわらず, 歩行時に激しい臀部痛を生じていた. 動脈造影上は内腸骨動脈狭窄の他に骨盤部動脈の広範囲な病変が認められ, また疼痛部位の対側の下肢動脈病変が主体である症例も存在した. 手術は主幹動脈病変の再建を優先し下肢血行の回復を計り, 可能なものは内腸骨動脈再建を加えた. その結果, 全例で疼痛は消失した. 本症の発症には骨盤領域と下肢の動脈病変の合併, 側副血行の形成形態が複雑に関係しており, 運動時の下肢への血流 steal が主因をなしていると思われた. このような病変多発例で steal の関与している場合には, 下肢血行再建術が有効であると考えられる.
  • 青見 茂之, 橋本 明政, 中野 清治, 大石 喜六, 青柳 成明, 田中 攻, 西 義勝, 宮本 忠臣, 嶋田 一郎, 小柳 仁
    1995 年 24 巻 4 号 p. 222-226
    発行日: 1995/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    上行大動脈置換術に使用するSJM弁つき人工血管の有効性と安全性に対して, 薬事法に基づき3施設32例において評価を行った. 人工血管の preclotting の方法は, アルブミンを塗布し autoclave を行うか血液を用いて行った. 冠動脈再建法として Bentall 法が4例, Cabrol 法が14例, 両側の interposition graft 法が8例, ボタン状にくり抜く方法が6例であった. また, 合併手術として弓部大動脈瘤の1例には弓部大動脈の人工血管置換術を, 僧帽弁閉鎖不全症の2例に僧帽弁置換術を行った. 病院死は, 1例 (3%) で人工心肺開始前の心原性ショックによる多臓器不全であった. 術中術後の合併症として, 術中の心筋梗塞を2例, 輸血後肝炎を1例, 胆石症を1例認めた. 遠隔期合併症として急性期よりの人工弁周囲逆流を1例に認めたが, 弁つき人工血管に関連した合併症は認めなかった. 遠隔死は認めなかった. 退院後の臨床症状をNYHAにて評価したがほぼ全例に改善を認めた. SJM弁つき人工血管は優れた臨床成績よりその有効性と安全性が確認された.
  • とくに体外循環使用の意義について
    山下 長司郎, 莇 隆, 吉田 正人, 安宅 啓二, 岡田 昌義
    1995 年 24 巻 4 号 p. 227-231
    発行日: 1995/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    下大静脈内腫瘍塞栓のため腎摘出後下大静脈の形成術を行った症例は23例であった. 腫瘍塞栓が腎静脈付近に限局していた15例では, 塞栓の中枢側と末梢側のIVCを遮断した後, バルーンカテーテルまたは指を用いて摘出した. 塞栓が肝部下大静脈および右房近傍まで進展した8例では胸骨縦切開を追加し, 部分体外循環下に塞栓を摘出した. IVCの再建方法は12例に直接縫合, 10例にパッチ形成術, 1例に人工血管置換術を行った. 術前より遠隔, 局所リンパ節転移あるいは腎被膜外浸潤のあった8例は1年以内に死亡したが4年以上生存が4例あり3年生存率37.5%, 5年生存率18.8%であった. 結論1) 腎癌の下大静脈腫瘍塞栓が肝静脈流入部まであり, 下大静脈の最大径が40mm以上のときは静脈壁の浸潤が予想され, 摘出時に体外循環を応用する方が出血をコントロールでき安全である. 2) 術前に遠隔転移, 局所リンパ節転移や腎被膜外浸潤の認められない症例では長期生存が得られ, 本術式は有意義と考えられた.
  • 西元寺 秀明, 森山 由紀則, 増田 宏, 古賀 正哲, 下川 新二, 豊平 均, 平 明
    1995 年 24 巻 4 号 p. 232-237
    発行日: 1995/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    弁膜症581例の周術期にIABPを使用した42例を検討した. 適応は術後LOS, 体外循環離脱困難, 不整脈, 心不全の各19, 11, 11, 1例で使用時期は術前, 術中, 術後が各4, 18, 20例であった. 42例中26例 (62%) がIABPより離脱, 16例 (38%) が生存し, 16例が離脱不能であった. IABP離脱可能群と不能群間には体外循環時間, 大動脈遮断時間, IABP使用24時間後の心係数に有意差がみられた. IABP離脱後生存群, 死亡群間では術後腎不全, 感染の発生頻度に差がみられた. 46%は多臓器不全で死亡した. 弁膜症に対するIABPの治療効果は不良で, 成績には術中, 術後因子が深く関与した. 治療成績の向上には術後腎不全, 感染の防止, さらに多臓器不全への進展防止に努めることが肝要である.
  • とくに Leriche 症候群における問題点に関して
    井上 毅, 河内 寛治, 川田 哲嗣, 小林 修一, 西岡 宏彰, 濱田 良宏, 亀田 陽一, 多林 伸起, 北村 惣一郎
    1995 年 24 巻 4 号 p. 238-242
    発行日: 1995/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    当科で手術を行った閉塞性動脈硬化症 (ASO) 110例における虚血性心疾患 (IHD) の合併に関して検討を行った. 男性99例, 女性11例, 平均年齢66.0±8.8 (32~82) 歳であった. IHDのスクリーニングには, 原則として全例ジピリダモール注負荷心筋シンチグラムを行い, 冠状動脈造影により50%以上狭窄病変を有する症例をIHD合併とした. その結果, IHDは48例 (44%) に合併していた. 冠状動脈バイパス術 (CABG) を先行させた症例は10例, CABG同時施行症例5例, 経皮的経管的冠状動脈形成術 (PTCA) 施行症例8例, ニトログリセリン注のみで対応した症例は25例であった. さらにASOのうち, Leriche 症候群15例とそれ以外の症例95例とを比較検討した. Leriche 症候群のほうが平均年齢は若く (59.7±9.7歳 vs 67.0±8.2歳), 高脂血症 (73% vs 40%)(p=0.0254) とIHD (73% vs 39%) (p=0.0225) の合併率は有意に高かった. ASO, とくに Leriche 症候群の外科治療においてIHDの合併には, 十分な配慮と対策が必要である. また, ASOとIHDのどちらもが早期に治療を要すると判断された場合には, 同時手術を行うことを原則としている.
  • 富田 伸司, 坂田 隆造, 梅林 雄介, 宮田 昭, 寺井 弘, 植山 浩二, 上江洲 徹
    1995 年 24 巻 4 号 p. 243-247
    発行日: 1995/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    虚血性心疾患と末梢血管病変とくに大動脈腸骨動脈閉塞症 (aortoiliac occlusive disease: 以下AIOD) の合併例では, 冠血行再建術 (以下, CABG) に用いる内胸動脈 (以下, ITA) の虚血下肢への側副血行路としての役割や術後の呼吸器合併症などの問題が存在する. 今回われわれは, この点をふまえて術式, 治療方針の決定に関する考察を行った. 対象は, 1991年7月から1992年3月までのCABG87例のうちAIOD合併例6例(6.9%, 平均年齢58.7歳, 全例男性) であった. 手術内訳は, 下肢血行再建同時施行例4例, 二期的施行例2例であった. 全例で術後合併症を起こすことなく軽快し現在も経過観察中であるが, 狭心痛, 間欠性跛行などの症状はない. 心臓および下肢の血行再建が必要な場合, 周術期心筋梗塞を予防するためにも心臓を優先することを基本としたうえで, 下肢の血流確保に留意することが肝要と考えられた.
  • 白神 幸太郎, 大毛 宏喜, 河内 和宏, 今井 克彦, 河野 智, 小宮 達彦, 神崎 義雄
    1995 年 24 巻 4 号 p. 248-252
    発行日: 1995/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1980年から1993年の期間に大腿膝窩動脈領域の閉塞性動脈硬化症に対して人工血管バイパス手術を施行し, 長期追跡が可能であった122例 (追跡率96.7%, 平均追跡期間45.1月) 159肢について長期遠隔成績を検討した. 手術時平均年齢69.1歳, 手術死亡率0.8%であった. 全症例のグラフト10年開存率75.1%であった. 開存率に影響を及ぼす因子として1) run off 不良 (p<0.01, run off 不良群5年開存率55.8%), 2) 術後トロンボテストコントロール不良 (p<0.01, 5年開存率61.7%), 3) 高コレステロール血症 (p<0.05, 5年開存率63.9%) の3因子を認めた. 良好な長期開存性と術後自覚症状の著明な改善を認めたことから間欠性跛行肢に対しても積極的早期外科治療が推奨される. またワーファリン投与を含む外来フォローでの慎重な管理が今後の課題であると思われた.
  • 宇藤 純一, 宮内 好正, 後藤 平明, 大林 弘幸, 平田 智美
    1995 年 24 巻 4 号 p. 253-256
    発行日: 1995/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は18歳の男性, 検診時に胸部異常陰影を指摘され当科入院となった. 左橈骨動脈の拍動は微弱で, 赤沈, CRPともに亢進しており大動脈炎症候群と診断. 胸部大動脈瘤は径6cmで, 左鎖骨下動脈は根部で閉塞していた. また上腹部大動脈にも嚢状の真性動脈瘤が認められた. ステロイドによる炎症のコントロールの後, まず胸部大動脈瘤に対し, 脳分離体外循環を併用した低体温体外循環下に遠位弓部大動脈置換を, また腹部大動脈瘤に対しては, 約1か月後, 腹部主要動脈の分離循環を併用した部分体外循環下に大動脈置換と四分枝再建を行い, 経過良好で, 軽快退院した.
  • 小野 隆志, 岩谷 文夫, 猪狩 次雄, 萩原 賢一, 丹治 雅博, 佐戸川 弘之, 渡辺 正明, 緑川 博文, 佐藤 洋一, 星野 俊一
    1995 年 24 巻 4 号 p. 257-259
    発行日: 1995/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    8歳女児の左単冠動脈右室瘻を経験した. 単冠動脈に冠動脈瘻を合併した症例は極めて稀であり調べえた文献上18例を数えるにすぎなかった. これら報告例を含め, 本疾患の問題点につき考察した.
  • 鎌田 聡, 川田 忠典, 菊地 慶太, 宮本 成基, 西村 晃一, 遠藤 慎一, 中村 聰, 武井 裕, 舟木 成樹, 山手 昇
    1995 年 24 巻 4 号 p. 260-263
    発行日: 1995/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は16歳, 女児. 主訴は拍動性頭痛と両下肢の間歇性跛行. 大動脈炎症候群による異型大動脈縮窄症, 両側腎動脈狭窄, 腎血管性高血圧と診断した. 手術は上行大動脈と腎動脈以下腹部大動脈に14mmの woven Dacron 人工血管でバイパスを行った後, 両側の腎動脈のバイパスを行った. 術後は高血圧, 頭痛, 間歇性跛行は消失した. 術後3年で行った血管造影では右腎動脈に用いた4mmのEPTFE人工血管は閉塞していたが, 左側に用いた5mmの Sauvage, Bionit 人工血管は良好に開存していた. 本症における上行大動脈-腹部大動脈ロングバイパスは手術手技が比較的容易で治療効果は良好であった. 小口径 Sauvage, Bionit 人工血管は腎動脈バイパスに有用であった.
  • とくに持続血液濾過透析の有用性について
    大場 淳一, 椎谷 紀彦, 松居 喜郎, 合田 俊宏, 佐久間 まこと, 安田 慶秀
    1995 年 24 巻 4 号 p. 264-267
    発行日: 1995/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    慢性腎不全を有し, 血液透析 (以下透析) を受けている52歳男性に対して僧帽弁大動脈弁置換術と冠動脈バイパス術を施行した. 手術前日に透析を行い, 術中, 術直後は過剰な輸液を避けて溢水を回避した. 高カリウム血症に対しては, グルコースインスリン療法で対処した. 血清カリウムが6.0mEq/lを超え, クレアチニンが9.0mg/dlとなった術後2日目から持続的血液透析濾過 (CHDF) を開始した. CHDFにより, 循環動態に影響を及ぼすことなく, 除水, 高カリウム血症の管理が容易にできた. 術後5日目には血液透析に移行, 術後6日目に一般病棟に移った. 開心術後の透析の手段としてCHDFは溶質の除去効率が良い, 循環動態に及ぼす影響が少ないなどの利点を有する優れた方法であると考えられた.
  • 中嶋 康彦, 杉田 隆彰, 渡田 正二, 尾上 雅彦, 野島 武久, 勝山 和彦, 田畑 良宏, 松野 修一, 森 渥視
    1995 年 24 巻 4 号 p. 268-271
    発行日: 1995/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    後腹膜領域の吻合部仮性動脈瘤 (AFA) は大動脈瘤や閉塞性動脈疾患に対する人工血管置換術後の, 頻度は少ないが重要な遠隔期合併症の一つである. 今回われわれは15年前に他院にて解離性大動脈瘤 (DeBakey IIIb) にて胸部下行大動脈人工血管置換術を施行された際, 補助手段として用いられた上行大動脈-右外腸骨動脈一時バイパスの末梢側吻合部に発生した外腸骨動脈吻合部仮性動脈瘤の1手術例を経験した. 症例は60歳女性. 急速に拡大する右下腹部腫瘤にて紹介入院し, CT・血管造影検査にて外腸骨動脈仮性動脈瘤と診断し手術を施行した. 開腹にてアプローチし, 仮性動脈瘤を損傷せずに外腸骨動脈と一塊として摘出, 人工血管によって解剖学的に外腸骨動脈を再建した. 術後経過は良好で再発等を認めていない. 人工血管置換術後は一生涯にわたる定期的な経過観察が必要であると考える.
  • 若木 伸夫, 川崎 寛, 奥 秀喬, 城谷 均
    1995 年 24 巻 4 号 p. 272-275
    発行日: 1995/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    Right aortic arch with retroesophageal left subclavian artery に合併した真性弓部下行大動脈瘤に対する弓部4分枝再建を含む extra-anatomic bypass 並びに瘤曠置を経験した. 症例は48歳女性で, 弓部から右側胸部下行大動脈にかけて Kommerell の憩室瘤を含む最大径67mmの真性大動脈瘤を認め, これらが食道および気管の背部を走行し, 動脈管索, 肺動脈などとともに血管輪を形成していた. また, 横隔膜の高さで下行大限脈は正中を越え, 左側に走る形態を示していた. このような解剖学的複雑性をもつ本症に対して弓部4分枝再建を含む弓部下行真性大動脈瘤に対する手術例は文献上認められなかったので若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 末広 茂文, 柴田 利彦, 南村 弘佳, 佐々木 康之, 服部 浩治, 木下 博明, 清水 幸宏
    1995 年 24 巻 4 号 p. 276-279
    発行日: 1995/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    冠動脈バイパス術 (CABG) 後の遠隔期に発症した近位下行大動脈瘤に対し手術を施行した. 症例は61歳, 男性. CABG後8年を経過し, 冠動脈造影で静脈グラフトの閉塞を認め, 左前下行枝に吻合された左内胸動脈のみが開存していた. 瘤は左鎖骨下動脈分岐部直下に存在し, 瘤の中枢側遮断を要する手術手技は, 左内胸動脈の血流を障害するため不適当と判断した. そこで, 瘤への到達は前回手術の癒着を避けるために左第4肋間開胸で行い, 補助手段として中枢側大動脈遮断を要しない超低体温循環停止法を用いた. 大腿動静脈から送脱血管を挿入した体外循環下に全身冷却を行い, 脳波が平担化した時点 (直腸温24℃) で循環停止とし, 人工血管置換術を行った. 循環停止は17分, 体外循環時間は139分であった. 体外循環からの離脱は容易で, 術後の覚醒遅延もなく経過は良好であった.
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