日本心臓血管外科学会雑誌
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25 巻, 4 号
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  • 鈴木 一弘, 江里 健輔, 加藤 智栄, 浜野 公一, 郷良 秀典, 藤村 嘉彦, 壺井 英敏, 田所 正路
    1996 年 25 巻 4 号 p. 213-216
    発行日: 1996/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    Fogarty 2Fr IMAG Kit®を用いて行った冠動脈バイパス術14例 (IMAG群) とこれを用いなかった13例 (対照群) について, 内胸動脈 (ITA) を拡張前後のITA流量, 術直後, 術後第1日および2日目の心拍出量係数, カテコラミン使用量, 術後1か月目の冠動脈造影所見を比較検討した. ITA拡張前の free flow は14±7ml/minであったが, 拡張後には103±39ml/minと7.4倍に増加した (p<0.0001, paired t). しかし, 術後の心拍出量係数, カテコラミン使用量は両群間に差がなかった. 術後1か月後の冠動脈造影ではIMAG群4例にITAの“やせ”がみられたが, 対照群にはなかった. Fogarty 2Fr IMAG Kit®によるITA拡張は限られた症例にのみ使用すべきである.
  • 心エコー法による房室弁の半定量的評価法を用いて
    中村 雅則, 安喰 弘, 森川 雅之, 馬場 雅人, 小松 作蔵
    1996 年 25 巻 4 号 p. 217-223
    発行日: 1996/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    部分型心内膜床欠損症 partial artioventricular septal defect (以下P-AVSD) は手術成績の良好な疾患であるが, 遠隔期房室弁逆流, 不整脈に関してはいまだ問題が多い. まず心エコー法によって, 僧帽弁逆流(MR), 三尖弁逆流 (TR) を心室造影と比較し, 半定量的評価を行った. カラードプラ法によるMR, TRの最大逆流面積をBSAで除したMRA/BSA, TRA/BSAは, 心室造影のMR, TRとよく相関し, 逆流の重症度分類を行った. MRA/BSAは, 0.5, 2, 4, 8cm2/m2, TRA/BSAは1.0, 2.5, 5, 10cm2/m2にて0~IV度に分類した. この分類に基づいて心内修復時僧帽弁は裂隙縫合のみとした小児P-AVSD14症例 (平均4.2歳) の遠隔期MR, TRを評価した. 術後7か月~7年5か月 (平均4年) に心エコー, ホルター心電図を施行し, 遠隔期MRは全例II度以下, NYHA I度で, 無投薬であり, 発作性上室性頻拍の1例以外は不整脈も認めず, 弁輪縫縮を行わない術式でほぼ満足する結果をえた. このことから, 少なくとも小児期のP-AVSDにおいては僧帽弁の弁輪縫縮は必要なく, 裂隙縫合のみで十分と考えられた.
  • 岩隈 昭夫, 松吉 哲二, 木村 道生, 中村 正直, 山田 隆司, 立川 裕
    1996 年 25 巻 4 号 p. 224-229
    発行日: 1996/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1985年から1993年までに二次性三尖弁閉鎖不全症 (TR) に対し122例の強めの DeVega 法 (縫縮径25~27mm) による三尖弁弁輪縫縮術 (TAP) を経験した. このうち5年を経過した50例について術後のTR残存を心臓超音波検査を中心に検討した. TR有意 (2度以上) 残存率は術後1年で6%, 術後5年以降も12%であった. 術後遠隔期における安静時三尖弁位 peak velocity は0.53~1.04m/sで平均0.72m/s, pressure half time は平均76.7msecであった. 以上より, 強めの DeVega 法によるTAPは術後遠隔期においてもTR残存率は高くなく, TSの発生がない点で二次性TRに有効であることが示唆された. 一方, 当方法による術後のTR残存の原因として, 手術操作の不確実さや遠隔期における縫合糸の弁輪組織からの離脱が考えられるとともに, 適応そのものが問題となり今後の検討が必要と考えられた.
  • 栗本 義彦, 数井 暉久, 中村 雅則, 高木 伸之, 森下 清文, 田中 利明, 小松 作蔵
    1996 年 25 巻 4 号 p. 230-234
    発行日: 1996/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    傾斜円板弁 (Lillehei-Kaster 弁, Omniscience 弁, Omnicarbon 弁) を用いて教室で行われた大動脈弁置換術227例のうち, 1995年1月までに再弁置換術を53例に施行した. 再弁置換術の適応は, non-structural dysfunction 35例, stuck valve 2例を含む血栓弁8例, 人工弁感染 (以下PVE) 7例, 人工弁周囲逆流 (以下PVL) 3例であった. 再手術までの期間は, 開放不全と血栓弁がそれぞれ平均112・118か月であり, PVEおよびPVLは平均21・25か月であった. 手術成績は, 早期死を含め病院死7例 (13.2%) であった. 活動期 root abscess 症例および stuck valve 緊急手術例は病院死50%以上であったが, 開放不全による再手術例は病院死3%であり, 再手術自体は risk となりえなかった. 再手術の適応の2/3を占めた開放不全の原因として人工弁左室側 minor orifice への pannus 増生によるディスク開放制限が示唆された. 傾斜円板弁では, これら合併症を考慮し, 安全な再手術を計画することが重要である.
  • 坂本 吉正, 黒澤 博身, 中野 雅道, 鈴木 和彦, 高倉 宏充
    1996 年 25 巻 4 号 p. 235-239
    発行日: 1996/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1980年4月から1984年10月までに Ionescu-Shiley Pericardial Xenograft (ISPX) により僧帽弁置換術73例を施行した. 経過観察期間は最長14年余となりこれらの長期遠隔成績, 再弁置換術の現況につき検討した. 従来, 生体弁ではみられないと考えられていた弁尖の亀裂による弁機能不全例の報告が相次ぎ, 教室でも術後3年後に同様な症例を経験した. 術後5年を経過するころより徐々に進行する弁尖の変性による弁機能不全に対し心エコー検査を主体とした厳重な経過観察のもとに再手術を行ってきた. %reoperation free rate は, 5年で88.5±8.7%, 10年で55.7±14.5%であった. 再手術は, 他の生体弁と同様, 術後5年以降徐々に増加する傾向にあった. 実測生存率は, 10年で67.2±12.1%, 血栓塞栓症非発生率は10年で84.6±9.8%であった. 待機的再弁置換術の予後は良好で, 今後も時期を失することなく可及的に再手術をすすめていく予定である.
  • 野間 史仁
    1996 年 25 巻 4 号 p. 240-244
    発行日: 1996/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    心移植後の拒絶反応の程度は炎症細胞浸潤と心筋細胞障害の程度により決定され, 種々のスコアーが用いられている. 今回, われわれは心移植後の心筋残量定量により客観的に拒絶反応の評価ができるか否かを検討した. ラット心移植モデルを用いF344ラットをドナー, Lewis ラットをレシピエントとした組合せを用い, 移植後20日間サイクロスポリンを投与した. 移植後30, 40, 50, 60日目に移植心を摘出し, 拒絶反応の程度を Lurie らの方法で評価した. また, 同時に連続切片に azan-Mallory 染色を行い, 残存心筋量をイメージスキャナーで測定した. 拒絶反応の程度は移植後の経過とともに進行し, 残存心筋量は減少した. さらに, 拒絶反応の程度と残存心筋量の間には有意の相関関係を認めた (r=0.76). 残存心筋量の定量は拒絶反応の程度判定に有用な一つの客観的な方法であると考えられた.
  • 河合 隆寛, 和田 行雄, 圓本 剛司, 大川原 潤, 小野 眞, 戸田 省吾, 北浦 一弘, 岡 隆宏
    1996 年 25 巻 4 号 p. 245-251
    発行日: 1996/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    小児開心術における術前後の左心機能につきドプラエコー法を用いて検討した. 対象は95例で左室容量負荷群-A群 (VSD43)-, 非負荷群-B群 (ASD37), C群 (TOF15)-の3群に分類した. 術前および術後早期 (平均11.6日) に心エコーを施行し, ドプラエコーでは右主肺静脈および左室流入部に sample volume をおき, 順行波の最大流速値を計測した. A, B群では欠損孔閉鎖による肺血流量減少を反映して術後肺静脈血流速度の有意な低下がみられたが, 両群間の差は左房のコンプライアンスの関与が示唆された. またA群では術後早期に左室拡張機能が有意に改善された. 同群では術後左室駆出率, 左室内径短縮率が有意に低下したが正常域にとどまり, 前負荷の減少と後負荷の増大に対して収縮能が良好に維持されていると考えられた. さらにB, C群では術前後で左室機能を示す各指標に有意差を認めなかった.
  • 金岡 祐司, 種本 和雄, 杭ノ瀬 昌彦
    1996 年 25 巻 4 号 p. 252-254
    発行日: 1996/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    当院で経験した孤立性腸骨動脈瘤の3症例について報告する. 症例1は, 28歳男性で左腸骨動脈破裂により仮性動脈瘤を形成し, ショック状態で救急来院した. 緊急で左腸骨動脈人工血管置換術を施行した. 症例2は60歳男性で右下肢腫脹を主訴に来院. 動静脈瘻を合併した右総腸骨動脈瘤と診断し, Yグラフト置換および瘻孔部閉鎖術を施行した. 症例3は55歳男性で肝炎の経過観察中に腹部超音波検査で両側腸骨動脈瘤を指摘された. 両側の総腸骨動脈瘤の診断でYグラフト置換術を施行した. 孤立性腸骨動脈瘤は臨床症状に乏しく, 破裂, 動静脈瘻などの合併症ではじめて発見される場合も多い. 画像診断の進歩とともに今後は無症状での発見例も増加すると思われる.
  • 斎藤 文美恵, 坂本 吉正, 黒澤 博身
    1996 年 25 巻 4 号 p. 255-257
    発行日: 1996/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    急速に拡張した Stanford A型, DeBakey II型慢性解離性大動脈瘤, 大動脈閉鎖不全症, 腹部大動脈瘤を伴う不全型 Marfan 症候群の41歳の女性に対して, 大動脈基部 (Bentall 変法) および弓部全置換術を一期的に施行した. 本症例ではすでに腹部大動脈瘤を合併しており, 現在健常な血管が瘤化する可能性を考慮して, 解離の及んでいない遠位弓部まで人工血管に置換した. Marfan 症候群等の結合組織異常を伴う疾患を合併した解離性大動脈瘤の場合, 遺残解離腔からの再発や新たな病変の出現により遠隔期に再手術を要することは多い. このような症例ではつねに再手術を念頭におくことが重要であり, 再手術で同じ到達経路をとらないですむように, 必要最小限の切開で, できるだけ遠位まで人工血管に置換することは肝要である.
  • 山根 正隆, 石合 省三, 塩田 邦彦, 多胡 護, 神野 偵次
    1996 年 25 巻 4 号 p. 258-260
    発行日: 1996/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は77歳, 女性で, 76歳の時に再生不良性貧血と診断され, 副腎皮質ホルモンが投与されていた. 1994年3月腹部大動脈瘤と診断された. 入院時の血液所見では赤血球数216×104/mm3, 白血球数2,900/mm3, 血小板数7.1×104/mm3と汎血球減少がみられた. 術前4日前から濃厚赤血球, G-CSFおよび濃厚血小板剤を投与し, 血液所見の改善の後に手術を施行した. 術中出血量は840mlで, 濃厚赤血球9単位, FFP6単位投与した. 術直後に濃厚血小板9単位投与し, 術後は感染予防のため, γ-グロブリンを3日間, また抗生剤は2剤併用した. 術後の経過は全く良好であった. 再生不良性貧血合併症例に対して, 術前血液所見が改善してから手術を行うことが重要であることを強調した.
  • 大淵 俊朗, 丹原 圭一, 小塚 裕, 柳生 邦良, 川内 基裕, 河野 匡, 平田 和彦, 古瀬 彰
    1996 年 25 巻 4 号 p. 261-263
    発行日: 1996/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    再発した孤立性三尖弁閉鎖不全症 (以下, 孤立性TR) に対し再三尖弁形成術を施行しえた一例を経験したので報告する. 症例は56歳男性で, 8年前当科で弁輪拡大を伴わない孤立性TRと診断され, 三尖弁形成術によりTRは軽快していた. 他院で経過観察されていたが1年前より心不全症状が出現し増悪したため, 1994年9月1日当科に再入院した. 諸検査より腱索延長と三尖弁輪拡大を伴った4度のTRと診断し, 同年9月7日人工心肺下に人工腱索による三尖弁形成術および Carpentier Edward's ring (以下, CEリング) による三尖弁輪形成術を施行した. 術後TRは改善し平均右房圧も15mmHgから7mmHgに低下した. 孤立性TRに対し弁形成術を施行する場合, 腱索延長には人工腱索が有用であり, 弁輪拡大を伴わない症例でも積極的に弁輪形成術を施行するべきだと考えられた.
  • 田中 慶太, 宮入 剛, 松本 順, 村川 知弘, 水野 明, 齊藤 寛文
    1996 年 25 巻 4 号 p. 264-267
    発行日: 1996/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    右胃大網動脈を用いた冠状動脈バイパス術 (5枝) 後2年目にグラフトを温存しつつ胃切除, 胆嚢摘出術を施行した69歳の男性の症例を経験した. 早期胃癌であったため, リンパ節郭清を極力控えた縮小手術を選択することで, グラフトを温存しえた. RGEA使用症例では, 術後胃病変の早期発見がきわめて重要であり, 当院では定期的な上部消化管内視鏡検査を義務づけている.
  • 山村 光弘, 宮本 巍, 前田 信証, 山下 克彦, 中田 誠介, 八百 英樹, 安岡 高志, 向井 資正, 和田 虎三, 村田 正典
    1996 年 25 巻 4 号 p. 268-270
    発行日: 1996/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は1992年3月24日に胸腹部大動脈瘤 Crawford III型に対し胸腹部大動脈人工血管置換術 (Gelseal Triaxial 直型26mm)・腹腔動脈・上腸間膜動脈・左腎動脈再建術を施行した慢性血液透析療法中の61歳男性である. 術後1年10か月目に左下腹部痛にて緊急入院し精査にて吻合部仮性瘤と診断した. 同日緊急手術を施行したところ, 左腎動脈と人工血管との吻合部が約2/3周離開していた. そしてこの離開部を直接吻合・閉鎖し左腎動脈は結紮した. 患者は術後18日目には軽快退院した. 近年 preclotting が不要である porosity 0の人工血管の使用が増加しているが, knitted Dacron 人工血管を使用する際, 術後人工血管の拡大により端側吻合部の離開をきたし仮性瘤を形成する危険性があることが示唆された.
  • 和田 朋之, 葉玉 哲生, 森 義顕, 重光 修, 宮本 伸二, 迫 秀則, 吉松 俊英, 内田 雄三, 森 宣, 清末 一路
    1996 年 25 巻 4 号 p. 271-274
    発行日: 1996/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    55歳女性で, 両側肺動静脈瘻に僧帽弁狭窄症を合併した比較的珍しい症例を経験した. 肺高血圧を認めず手術適応と考え, 肺動静脈瘻に対してまず経カテーテル塞栓療法を施行した. その約2か月後に人工弁による僧帽弁置換術を施行し, 良好な成績が得られた. 心疾患を合併した肺動静脈瘻に対しては手術療法と塞栓療法の併用が有効だと思われる.
  • 上江洲 徹, 古謝 景春, 国吉 幸男, 伊波 潔, 赤崎 満, 宮城 和史, 下地 光好, 久高 学, 草場 昭
    1996 年 25 巻 4 号 p. 275-278
    発行日: 1996/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    比較的まれな右大動脈弓に合併した解離性大動脈瘤 (DeBakey III a型) 破裂の1例を経験したので報告する. 症例は54歳, 男性で, 背部痛にて近医へ救急搬送された. 胸部X線写真とCTにて右血性胸水が疑われ, 胸腔穿刺で出血を確認し, 解離性大動脈瘤破裂の診断で当院紹介となった. CTにて気管分岐部付近に造影剤の漏出を認めたため, 血管造影を行わずに緊急手術となった. 手術は右第4肋間にて開胸し, FFバイパスによる部分体外循環下にて人工血管置換術を施行した. 術後経過は良好で4週後に退院となった. 右大動脈弓に合併した大動脈瘤の手術では, 左鎖骨下動脈起始異常や, 下行大動脈の蛇行のため, 術式や到達法選択の困難さが指摘されており, 破裂例では到達法を含めて的確な判断が要求されると思われた.
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