部分型心内膜床欠損症 partial artioventricular septal defect (以下P-AVSD) は手術成績の良好な疾患であるが, 遠隔期房室弁逆流, 不整脈に関してはいまだ問題が多い. まず心エコー法によって, 僧帽弁逆流(MR), 三尖弁逆流 (TR) を心室造影と比較し, 半定量的評価を行った. カラードプラ法によるMR, TRの最大逆流面積をBSAで除したMRA/BSA, TRA/BSAは, 心室造影のMR, TRとよく相関し, 逆流の重症度分類を行った. MRA/BSAは, 0.5, 2, 4, 8cm
2/m
2, TRA/BSAは1.0, 2.5, 5, 10cm
2/m
2にて0~IV度に分類した. この分類に基づいて心内修復時僧帽弁は裂隙縫合のみとした小児P-AVSD14症例 (平均4.2歳) の遠隔期MR, TRを評価した. 術後7か月~7年5か月 (平均4年) に心エコー, ホルター心電図を施行し, 遠隔期MRは全例II度以下, NYHA I度で, 無投薬であり, 発作性上室性頻拍の1例以外は不整脈も認めず, 弁輪縫縮を行わない術式でほぼ満足する結果をえた. このことから, 少なくとも小児期のP-AVSDにおいては僧帽弁の弁輪縫縮は必要なく, 裂隙縫合のみで十分と考えられた.
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