日本心臓血管外科学会雑誌
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26 巻, 3 号
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  • 許 俊鋭, 上田 恵介, 横手 祐二, 朝野 晴彦, 木村 壮介, 尾本 良三
    1997 年 26 巻 3 号 p. 135-140
    発行日: 1997/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    Stanford A型急性大動脈解離 (DAA) は緊急手術を必要とするが, 心筋虚血合併例では手術リスクは極めて大きい. 本報告は冠動脈バイパス (CABG) を同時施行した緊急DAA手術成績の検討を目的とする. 過去6年間にCABG同時施行DAA緊急手術は7例 (♂: ♀=5:2, 年齢=47±16)あり, 心筋虚血の原因は冠動脈口への解離進展5例, 冠動脈狭窄合併が2例であった. 入院時6例がショック状態で3例に Bentall 型手術, 4例に上行大動脈置換が施行され, CABGは1枝5例, 2枝2例であった. 脳分離体外循環を要した1例 (73歳♂) が術後10日目に腎不全・意識障害で死亡した. 1例で術後補助人工心臓による循環補助を必要としたが7例中6例 (86%) が生存退院した. 心筋虚血を伴った急性大動脈解離の外科治療は極めて困難であるが, 積極的な冠動脈再建および補助循環治療により良好な手術成績が得られると考えられた.
  • 急性動脈閉塞症の実験的検討
    梅澤 久輝
    1997 年 26 巻 3 号 p. 141-149
    発行日: 1997/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    イヌ急性動脈閉塞再灌流障害モデルを作製し, 白血球除去フィルター群と白血球活性化物質である Leukotrien B4 (以下LTB4) の拮抗物質の投与群における再灌流時の白血球の関与を明らかにする目的で実験を行った. 雑種成犬28頭の腎動脈下腹部大動脈を結紮し, 12時間後に血流を再開した. 血流再開直前に白血球除去フィルターを使用した群 (8頭) と再灌流直前にLTB4拮抗物質を投与した群 (8頭) およびコントロール群 (12頭) を作製し, 経時的にCPK, イヌ-Myoglobin. GOTを測定して比較検討した. フィルター群, LTB4投与群ともに各測定項目はコントロール群と比して低値を示し, 再灌流障害が軽減されるものと考えられた. 以上の結果より白血球除去やLTB4の抑制により再灌流障害が軽減されたものと推察され, 本症の組織障害増大に白血球が関与していることの証明であると思われた.
  • 超微形態的研究
    鈴木 克行
    1997 年 26 巻 3 号 p. 150-157
    発行日: 1997/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    急性動脈閉塞症の再灌流障害である Myonephropathic metabolic syndrome (以下MNMS) の病態解明の一助とすべく, 雑種成犬で下肢虚血再灌流モデルの実験により超微形態学的検討を行った. ネンブタール麻酔下に開腹, 腎動脈下腹部大動脈を結紮, 24時間後に結紮解除した後, 再灌流3時間後の心臓および肺を摘出して透過型電子顕微鏡にて観察した. また, 経時的に採血したCPK値で3群に分類し各群間を比較検討した. 心臓と肺, ともに活性酸素の傷害による超微変化と類似した組織傷害の所見を呈していた. CPK高値群では明らかにCPK低値群と比較して心臓, 肺ともに組織障害の程度は高かった. 下肢虚血後再灌流による心臓および肺の障害と活性酸素の関係について考案を加え, 下肢虚血後再灌流障害は, 虚血部位より発生する活性酸素によるものがその一因をなすと考えた.
  • 佐々木 秀, 川本 純, 林 載鳳
    1997 年 26 巻 3 号 p. 158-162
    発行日: 1997/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1995年5月から1996年7月までに当科で治療方針を決定した閉塞性動脈硬化症25症例 (33病変) について, 三次元CT血管造影法 (3D-CTA) と経動脈性DSA (IA-DSA) の所見を比較し3D-CTAの有用性と問題点について検討した. 腸骨動脈領域と大腿動脈領域では両検査法による病変の描出能に有意差を認めなかった. 3D-CTAは閉塞性病変の診断には有用であったが, 狭窄性病変の診断能は低かった. 血行再建後の確認造影は3D-CTAのみでも目的を達することができた. 3D-CTAは任意の方向から画像を得られる, 石灰化や血栓を描出できる, 比較的低侵襲であるといった特徴があり他の検査法と組み合わせることで精度の高い診断が得られると考えられた.
  • 正木 久男, 稲田 洋, 村上 泰治, 森田 一郎, 福広 吉晃, 田淵 篤, 石田 敦久, 遠藤 浩一, 藤原 巍
    1997 年 26 巻 3 号 p. 163-168
    発行日: 1997/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1976年1月から1995年12月までに当科で経験した閉塞性動脈硬化症の重症阻血肢は261例, 273肢で, 75歳以上を高齢者群 (82例, 83肢) とし, 74歳以下の症例 (179例, 190肢) と比較検討した. 1)高齢者重症阻血肢は, 女性と Fontaine IV度の占める割合ならびに来院時大切断せざるをえない症例が多い. とくに大切断例には脳血管障害合併例が多く, 術後早期死亡率も高いため早期診断, 早期治療の必要性があげられる. 2)血行再建例では, 高齢者であっても若年者と比較して開存率, 救肢率には差はないが, 術後近接期のグラフト閉塞が多く薬物療法を含めた十分な管理が必要である. 3)術後合併症では感染症 (創部感染, 肺炎), 心不全に注意する必要がある. 4)生命予後に関しては術前, 術中, 術後を含め長期にわたり, 虚血性心疾患の存在を常に念頭にいれた十分な治療が要求される.
  • 工藤 龍彦, 川瀬 光彦, 川田 志明, 黒澤 博身, 小柳 仁, 竹内 靖夫, 細田 泰之, 鰐渕 康彦
    1997 年 26 巻 3 号 p. 169-174
    発行日: 1997/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    東京地区の心臓血管外科の8施設において, 過去5年間に発生した機械弁置換症例の血栓塞栓症と出血性合併症について検討した. 血栓塞栓症は21例, 出血性合併症は15例であった. これらの症例を抗凝血療法の面から分析した結果によるとイベント発生時にトロンボテストが10~25%の治療域内にあった症例が, 血栓塞栓症の71%, 出血性合併症の47%に認められた. したがって, 人工弁症例に関しては, トロンボテストの治療域についての再検討が必要であると思われた. 本調査はTAS trial のレトロスペクティブ調査であるがわれわれは今後, プロスペクティブ調査により, トロンボテストとPT-INRの治療域について検討する予定である.
  • 谷口 巌, 山家 武, 芦田 泰之, 岡田 稔
    1997 年 26 巻 3 号 p. 175-178
    発行日: 1997/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    患者は58歳, 女性で, 胃内視鏡の偶発症として頸部フレグモーネを起こし, 感染の直接波及によりペースメーカーリード感染をきたした. さまざまな局所治療にて根治できず最終的に三尖弁疣贅を伴う感染性心内膜炎になった. これに対して開心術下リード摘出を行い治癒できた. ペースメーカー患者では感染を誘発する可能性のある検査処置時には予防的抗生剤の投与が必要である. また, ペースメーカー感染には感染早期にリード摘出を積極的に行うべきであり, 敗血症をきたせば開心術下摘出も躊躇すべきではない.
  • 関 寿夫, 萩原 洋司
    1997 年 26 巻 3 号 p. 179-181
    発行日: 1997/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    低左室機能を有する虚血性心疾患 (CAD) と腹部大動脈瘤 (AAA) を合併した49歳男性患者に対し, 一期的同時手術を施行した. 左室駆出率24%, 左室拡張末期圧25mmHg, 平均肺動脈圧33mmHgであり, AAAは最大瘤径6cmで両側総腸骨動脈瘤を伴っていた. 手術は, 二枝冠動脈バイパス術に続き常温体外循環下にAAA人工血管置換術を行った. 本法はAAA周囲の剥離やテーピングが容易であるとともに大動脈遮断に関連した血行動態の変動を認めず, 低左室機能を有するCADとAAAの合併例に対する有用な手術方法と考えられた.
  • 河内 康博, 宮本 正樹, 林 由浩, 宮下 洋, 郷良 秀典, 江里 健輔
    1997 年 26 巻 3 号 p. 182-185
    発行日: 1997/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    稀な疾患である右鎖骨下動脈起始異常に発生した真性動脈瘤の1手術例を経験したので報告する. 症例は71歳, 男性. 胸部X線写真で上縦隔異常陰影を指摘された. 血管造影, MRI, CTでは右鎖骨下動脈は第4枝として遠位弓部大動脈から分枝し, 気管・食道の背側を走行し, 起始部から気管右側まで最大径5cmに拡大し壁在血栓を伴っていた. Aberrant right subclavian artery aneurysm と診断され, 手術は胸骨正中切開・選択的脳灌流下に大動脈弓部を縦切開し, 瘤中枢側を内側からパッチで, 末梢側を外側から縫合閉鎖した. 右鎖骨下動脈は人工血管を用いて再建した. 脳合併症なく, 術後経過は良好であった.
  • 高野 環, 深谷 幸雄, 西村 和典, 中野 博文, 三輪 裕通, 篠原 正典, 恒元 秀夫, 黒田 秀雄, 天野 純, 野原 秀公
    1997 年 26 巻 3 号 p. 186-189
    発行日: 1997/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例1は62歳女性. 胸背部痛で発症し, 急性心筋梗塞の診断で冠状動脈造影を施行された. 右冠状動脈seg. 1の完全閉塞および Stanford A型急性解離性大動脈瘤と診断され, 発症より約8時間後に緊急手術を行った. 術中超音波検査で右冠状動脈seg. 1~seg. 3の完全閉塞を認め, 冠状動脈バイパス術および上行大動脈人工血管置換術を施行した. 右室梗塞による右心不全のために遠心ポンプを用いた右心補助下に pump off としたが, 第8病日右心機能の回復が得られず死亡した. 症例2は72歳男性. 胸背部痛で発症しCT検査で解離性大動脈瘤と診断された. 心エコー検査中に心電図でSTの上昇を認めたため切迫心筋梗塞と判断し, 約1時間後に緊急手術を施行した. 右冠状動脈に解離が及んでおり, 右冠状動脈seg. 2にCABGを行った後, 上行大動脈および大動脈弓部部分置換術を施行した. 術後経過は良好で第50病日退院となった. 大動脈解離が冠状動脈起始部の近くに及んでいる場合, 心筋虚血の可能性を十分念頭に置き, できるだけ早期に冠血行再建を伴う手術を行うことが重要であると考えられた.
  • 保坂 茂, 鈴木 章司, 片平 誠一郎, 井上 秀範, 進藤 俊哉, 吉井 新平, 神谷 喜八郎, 多田 祐輔
    1997 年 26 巻 3 号 p. 190-192
    発行日: 1997/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    感染性心内膜炎 (IE) に合併する動脈塞栓において, その塞栓部位が瘤化し感染性動脈瘤となることは少なく, その部の炎症遷延のためIEに起因した僧帽弁閉鎖不全 (MR) に対する手術時期を延ばさざるをえなかった1例を経験した. 症例は64歳の男性で, 右膝窩動脈, 左膝窩動脈, 左外腸骨動脈に異時性に塞栓症が生じ, その後の検査で重症MRが認められたが, 起因菌は同定できなかった. 6週間の抗生剤投与にもかかわらず炎症所見がつづき, 左外腸骨動脈塞栓閉塞部が瘤化していたため, 僧帽弁置換術と左外腸骨動脈瘤切除兼大腿-大腿動脈間バイパス術を一期的に行った. 僧帽弁の vegetation は既に器質化していたが, 瘤壁は活動期感染像を認めた. 塞栓症を合併したIEの外科治療に際しては, 術前に感染性動脈瘤の潜在を頭蓋内ばかりでなく全身的にも十分に検索すべきと考える.
  • 本邦報告例を含めて
    荒川 和久, 大滝 章男, 石川 進, 高橋 徹, 長谷川 豊, 小谷野 哲也, 山岸 敏治, 荻野 隆史, 大木 聡, 森下 靖雄
    1997 年 26 巻 3 号 p. 193-196
    発行日: 1997/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    Fallot 四徴症 (TOF) 根治術後22年と18年目の長期遠隔期におのおの遺残病変と慢性期合併症に対して再手術を要した2例を経験した. 症例は36歳の男性と23歳の女性で, おのおの15歳と4歳時に右室流出路異常筋束切除, 右室流出路直接閉鎖および心室中隔欠損 (VSD) パッチ閉鎖の根治術を受けた. 前者は, 根治術22年目に感染性心内膜炎で発症し, 肺動脈狭窄および大動脈弁閉鎖不全の診断で, 右室流出路異常筋束切除, 流出路パッチ形成および大動脈弁置換術を受けた. 後者では, 根治術18年目に肺動脈狭窄およびVSD遺残の診断で, 右室流出路異常筋束切除, 流出路パッチ形成およびVSD直接閉鎖術の再手術が行われた. 両症例とも術後経過は良好で, 根治術後の遺残病変に対しては, 早期の積極的な外科治療を考慮すべきである.
  • 大内 浩, 岡部 英男, 長田 信洋, 金子 幸裕
    1997 年 26 巻 3 号 p. 197-199
    発行日: 1997/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は13歳, 女性で無脾症候群に合併したチアノーゼ性複雑心奇形に対し左側両方向性 Glenn shunt 術後肺血管床減少をきたしたため, 同シャントを take down したのちに左上大静脈を一部間置した体肺動脈短絡術を施行した. 術後高肺血流量性心不全が出現しさらに術後17か月の血管造影にて上大静脈が径22mmの Venous aneurysm となっていたため人工血管の経皮的コイル塞栓術を行い心不全は軽快し瘤は退縮した. Glenn shunt 後の体肺動脈短絡術であっても上大静脈の間置は避けるべきと思われた.
  • 大木 茂, 石川 進, 大滝 章男, 高橋 徹, 佐藤 泰史, 小谷野 哲也, 山岸 敏治, 荻野 隆史, 大木 聡, 森下 靖雄
    1997 年 26 巻 3 号 p. 200-203
    発行日: 1997/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    大動脈二尖弁による大動脈弁狭窄症をきたした Klippel-Feil 症候群の1手術例を経験した. 症例は52歳の男性で, 石灰化を有する大動脈弁狭窄症の診断のもとに器械弁を用いて弁置換を行った. 麻酔導入時および術中・術後に, 短頸や頸部運動障害が支障になることはなかった. Klippel-Feil 症候群症例での心臓手術の報告は, 著者らの調べた限り, 自験例を含め5例と少なく, 他の4症例はいずれも心臓の他に合併奇形を有する. 自験例のように大動脈二尖弁以外に他の合併奇形のない Klippel-Feil 症候群症例はないことより, 若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 服部 隆司, 渡辺 泰徳, 金本 真也
    1997 年 26 巻 3 号 p. 204-206
    発行日: 1997/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    比較的まれな静脈奇形である左側下大静脈を伴った腎動脈下腹部大動脈瘤の1例を報告した. 症例は72歳, 男性. 下大静脈は腎動脈分岐直下の腹部大動脈の前面を横切って左側に移行していた. 下大静脈に taping をして頭側に牽引しながら大動脈を遮断, 中枢側吻合を行った. 術中血圧等の変動はなく, Y型人工血管置換術を行い, 術後の経過も順調であった.
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