日本心臓血管外科学会雑誌
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26 巻, 4 号
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  • 福本 仁志, 西本 泰久, 得丸 智弘, 冨士原 彰
    1997 年 26 巻 4 号 p. 207-212
    発行日: 1997/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    来院時心肺停止例 (CPAOA), 心肺蘇生後例, 非手術死亡例を含めた破裂性腹部大動脈瘤50例の治療成績や問題点を検討した. 状態別症例数と死亡率は非 shock は17例で5.9%, shock は21例で57.1%, 蘇生後は3例で66.7%, CPAOAは9例で88.9%, 合計は46%であった. 人工血管置換術40例ではそれぞれ5.9%, 52.6%, 66.7%, 66.7%で合計は35.7%であった. 治療成績に影響する術前因子は人工血管置換術例では shock 持続時間, 血圧の最低値であった. 非手術例を含む全例ではさらに年齢, 動脈血の base excess 値で有意差がみられ, 高齢者では術前に死亡する症例が多かった. 紹介搬送47例中19例で前医の初期診断が誤っており, これが搬送の遅れと状態の悪化を招いていた. 治療成績向上には的確な初期診断と迅速な術前対応が重要である.
  • 林 載鳳, 佐々木 秀, 川本 純
    1997 年 26 巻 4 号 p. 213-216
    発行日: 1997/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1994年10月から1996年4月までに末梢動脈バイパス術を施行した17症例26グラフトについて術後DSAと術後3D-CTAを施行し比較検討を行った. グラフト開存17例ではすべての症例で(1)3D-CTAにおける人工血管あるいは大伏在静脈の描出, (2)3D-CTAにおけるバイパス末梢側 native 血管の描出, (3)CT横断像にてグラフト内腔の造影剤充満の3条件が満たされていた. グラフト閉塞9例では, 閉塞にもかかわらずグラフトの描出されたものが5例にみられ, グラフトが描出されかつ末梢側血管も描出されたものが3例にみられた. ただしCT横断像にてグラフト内腔の造影剤充満を認めた症例はなかった. (1)(2)(3)の3条件はグラフト開存診断のための必要条件であると考えられた.
  • 知久 信明
    1997 年 26 巻 4 号 p. 217-223
    発行日: 1997/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    ラット急性動脈閉塞症再灌流障害モデルを作製し, ラット Interleukin-8 (IL-8) と Intercellular adhesion molecule-1 (ICAM-1) を用いて再灌流障害への関与につき実験を行った. Wistar 系ラットを使用し腎動脈下腹部大動脈と両側総大腿動脈を6時間血行遮断後に再灌流を行った群と同様の動脈に剥離操作のみを加えた群を作製した. 経時的にCPKとIL-8を測定し, また各種臓器を摘出して抗ラットICAM-1抗体 (1A29) による免疫染色を行い, 比較検討した. CPKとIL-8は, 虚血再灌流群で有意に高値を示した. 免疫染色では各臓器とも虚血再灌流群でICAM-1の発現が亢進していた. これは, 各臓器における好中球と血管内皮細胞の活性化を示すものであり, それに続く好中球の浸潤が各臓器の組織障害を引き起こしているものと推測され, サイトカインおよび好中球が再灌流障害であるMNMSの発症原因となる可能性を示唆するものと思われた.
  • 佐藤 了, 小須賀 健一, 熊手 宗隆, 磯村 正, 青柳 成明
    1997 年 26 巻 4 号 p. 224-229
    発行日: 1997/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1990年8月より95年6月までに当科で開心術を行った1歳未満の先天性心疾患95例中術後24時間以上胸骨開放し二期的胸骨閉鎖した9症例 (9.4%) を検討した. 1) 閉胸までの日数は2~8 (平均4.3) 日で体外循環時間と正の相関 (r=0.64) を認めた. 2) 閉胸直前の呼吸循環動態は改善しドーパミン投与量, 吸入酸素濃度の有意な減量が可能であった. 3) 閉胸までの水分出納の推移は徐々に負へ傾き閉胸前日には±0以下とすることが必要であった. 臨床所見上も強制利尿により術直後の全身浮腫の経時的改善を認め水分管理の重要性が示唆された. 4) 遠隔期死亡は3例で明らかな胸骨開放に伴う感染症による死亡は認めなかった. 以上胸骨開放後の胸骨二期閉鎖症例の予後は比較的良好であり長時間体外循環を余儀なくされた症例に対しては躊躇なく胸骨開放かつ二期閉鎖とすることで手術成績改善が望めると思われた.
  • 加藤 智栄, 江里 健輔, 藤村 嘉彦, 郷良 秀典, 浜野 公一, 壷井 英敏, 善甫 宣哉, 古川 昭一, 小田 達郎, 宮本 正樹
    1997 年 26 巻 4 号 p. 230-234
    発行日: 1997/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1990年4月から1995年8月までに当科と関連施設で行った連続44手術例の Stanford A型大動脈解離の成績をQOL (quality of life) を中心にして検討した. 術後30日生存率は84%で, 病院死の関与因子は手術時間 (p<0.01), 付加手術 (無, 冠状動脈バイパス術, 大動脈基部置換, 大動脈弁吊り上げ術, これらを検定しp<0.05), 術後心不全 (p<0.02), 呼吸不全 (p<0.01), 脳障害 (p<0.01), 腸管虚血 (p<0.02) であった. 術後早期を乗り切った32例のQOLはほぼ良好であったが, 術後QOLを低下させた因子は術前の腎障害 (p<0.05), 脳血管障害 (p<0.02), ショック (p<0.02), 術後の腎不全 (p<0.02), 脊髄障害 (p<0.02), 残存解離 (p<0.02) であった. 手術術式としての上行大動脈置換術と, 上行弓部大動脈置換術には生命予後, 術後QOLに差はなく, 広範解離に対しては残存解離に起因する合併症が少ない傾向にあった上行弓部置換術が有利と考えられた.
  • 手術成績からの検討
    横川 雅康, 鈴木 衛, 深原 一晃, 山口 敏之, 三崎 拓郎
    1997 年 26 巻 4 号 p. 235-241
    発行日: 1997/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    これまでの血行再建成績より閉塞性動脈硬化症の治療方針を再検討した. 対象は下肢閉塞性動脈硬化症430例582肢である. 間歇性跛行血行再建例368肢で早期肢切断はなく, 手術死亡率は1.1%であった. 遠隔期では改善86.4%, 悪化5.9%で, 5肢1.4%が肢切断となった. 非再建例36肢では5.6%が悪化した. 重症虚血肢血行再建例151肢では早期肢切断3.3%, 手術死亡率5.1%であった. 遠隔期では改善62.3%, 悪化12.6%で, 8.6%が肢切断となった. 非再建例27肢では33.3%が肢切断となった. 10年累積生存率は間歇性跛行例57.6%, 重症虚血肢例41.5%で, 重症虚血肢で不良であった. 間歇性跛行の再建成績は良好であったが, 末梢再建の適応決定は慎重にすべきである. 重症虚血肢の血行再建は救肢に有用であったが, 厳重な周術期管理が必要である. 重症虚血肢の救肢率, 生命予後は不良であり, 高度間歇性跛行の段階での血行再建が有用と考える.
  • 大橋 博和, 堤 泰史, 河合 隆寛, 上山 圭史, 川瀬 裕志, 上山 克史, 大中 正光
    1997 年 26 巻 4 号 p. 242-247
    発行日: 1997/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    緊急CABGを施行した acute coronary syndrome の84症例について検討した. 不安定狭心症35症例においては, 手術死亡は5例 (14%) であった. 5例中4例はポンプ失調が死因で, そのうち3例はPMIが原因であった. 急性心筋梗塞症42症例では, 手術死亡は14例 (33%) で, そのうち10例はポンプ失調による死亡であった. 術前ショック状態例 (死亡率41%), 心肺停止状態例 (死亡率100%) の成績がとくに不良で, また術前に再疎通に成功していなかった症例での成績は不良であった. 梗塞後早期狭心症7症例では, 手術死亡はなかった. 今後成績向上のためにはPMIの予防, ポンプ失調例に対する対策が鍵となっており, さらなる心筋保護手段の改善, 術後のより強力な機械的循環補助手段の積極的導入などが必須と考えられた.
  • 馬 拉提, 達吾 来提
    1997 年 26 巻 4 号 p. 248-253
    発行日: 1997/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    骨髓細胞を虚血心筋に移植し, 血管新生に及ぼす効果を検討した. 雑種成犬26頭を用い, 左冠動脈前下行枝第1対角枝分岐直後と回旋枝鈍縁枝分岐直後を結紮することにより虚血心モデルを作製した. 生存しえた20頭のうち10頭に自家骨髄0.5mlを虚血心筋部分に注入した. 他の10頭を対照として両群を比較検討した. 骨髓注入1週と3週後に観察したところ, 骨髓の注入部分では毛細血管が全例で増生した. bFGFの発現を免疫染色でみると移植した部位では血管の内皮細胞, 移植された骨髓細胞の周囲組織細胞が陽性であったのに対して骨髓移植を行わなかった対照群では毛細血管の少ない瘢痕組織がみられ, bFGF免疫染色でマクロファージが陽性を示した. 以上の結果より, 骨髓細胞を虚血心に移植すれば, 側副血行路形成を促進させうる可能性が示唆された.
  • 高野 環, 長谷川 朗, 深谷 幸雄, 恒元 秀夫, 渡辺 邦芳, 後藤 博久, 中野 博文, 黒田 秀雄, 天野 純
    1997 年 26 巻 4 号 p. 254-257
    発行日: 1997/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は47歳, 女性. 心臓超音波検査で冠静脈洞型心房中隔欠損症と診断し, 手術を施行した. 術中所見では通常の冠静脈洞の位置に径3cmの欠損口と左房内に三つの冠状静脈開口部を認め, completely unroofed coronary sinus と考えられた. 左上大静脈遺残および他の合併奇形は認めず, patch にて欠損口を閉鎖した. 本症は心房中隔欠損症のなかでも極めて稀であり, 術前に本症を診断しえた症例の報告はわずかである. 本症例では術前に冠状動脈造影による確認はできなかったものの, 超音波検査で本症と診断し, 術後の冠状動脈造影で, 別々に心房へ還流する3本の静脈を確認することができた. 本症の術前診断には超音波検査と冠状動脈造影が有用であると考えられた.
  • 米須 功, 福永 周司, 田山 慶一郎, 榎本 直史, 川野 博, 石原 健次, 田中 厚寿, 明石 英俊, 小須賀 健一, 青柳 成明
    1997 年 26 巻 4 号 p. 258-261
    発行日: 1997/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は59歳, 男性. 突然の左背部痛, 両下肢しびれ感にて発症した. 乏尿, 顔面浮腫が出現し, 急性腎不全と診断され血液透析を導入された. DSAにて左鎖骨下動脈の末梢側約5cmに entry を認め, 解離腔は腎動脈直上まで及び, Stanford B型解離性大動脈瘤と診断された. 腎動脈直上で解離腔による真腔の著明な圧排を認め, このため腎不全をきたしたと考え, まず Axillo-Femoral bypass を施行した. 術後1週間目に腎機能の著明な改善を認め血液透析から離脱した. 初回手術から8か月後に部分体外循環下に, 下行大動脈置換術を施行した. 術後は極めて順調に経過し, 22日目に退院となった. 解離腔の圧排による臓器虚血に対し, バイパス術により全身状態が改善し, 慢性期に血行動態を評価し, 安全かつ確実な手術を行うことができたと考えられた.
  • 須田 優司, 竹内 靖夫, 五味 昭彦, 中谷 速男, 河野 康治, 島袋 高志, 永野 直子
    1997 年 26 巻 4 号 p. 262-264
    発行日: 1997/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は61歳, 女性. 嚥下障害を主訴に近医を受診し, 右鎖骨下動脈瘤を診断された. 当院入院後のCTでは, 連続した二つの鎖骨下動脈瘤が診断され, 選択的鎖骨下動脈造影では, 中枢側の動脈瘤は三つの部分より成り立っていることが明らかになった. 手術は鎖骨上横切開で行い, 可及的に瘤を切除後, 鎖骨下動脈の端端吻合で血行再建を行った. 片側に多発した鎖骨下動脈瘤の報告は極めて少ない. また, 手術方法として瘤空置血行再建術が安全との報告もあるが, 本症例においては, 多発する大きな動脈瘤が気管, 食道を直接圧迫しており, 瘤切除を行う必要があると考えられた.
  • 佐々木 昭彦, 馬見 知大, 道井 洋吏, 杉木 健司, 大野 猛三
    1997 年 26 巻 4 号 p. 265-267
    発行日: 1997/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は64歳, 女性で石灰化大動脈弁狭窄症に不安定狭心症を合併. CTでは大動脈弁は弁輪まで及ぶ全周性の石灰化を伴い, 上行大動脈も左右側壁, 後壁に石灰化を認めた. 大動脈弁の圧較差70mmHgと冠動脈造影では右冠動脈優位型で, RCは#1に90%狭窄を, LCXは#13に100%閉塞を伴いRCより側副血行を受けていた. 手術はSVG2本を用いてLCXとLADに sequential 吻合を行って, RCの末梢側吻合も行い, 次に冠動脈口を閉鎖し composite graft を上行大動脈に移植し最後に graft 側孔にSVGの中枢側吻合を行った. 術後の大動脈造影でも composite graft 吻合部に異常を認めずSVGは2本とも良好に開存していた. 弁輪まで波及した石灰化大動脈弁狭窄症の狭小弁輪に対していわゆる translocation 手術は有用と思われた.
  • 島本 健, 松田 捷彦, 佐藤 達朗, 池田 義, 腰地 孝昭, 西村 和修, 野本 慎一, 伴 敏彦
    1997 年 26 巻 4 号 p. 268-270
    発行日: 1997/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は胸部圧迫感を主訴とする43歳. 20年前に大動脈炎症候群の診断を受け, 2年前に Sellers III度のARにて大動脈弁置換術を受けた. 術後炎症は沈静化していたが, 最近になり胸部圧迫感を自覚し心臓エコー検査にて人工弁周囲からの逆流を, 心臓カテーテル心血管造影にて心収縮周期に人工弁の振り子様運動を認めた. 人工弁逸脱と診断し緊急手術を行った. 人工弁は右-無冠動脈尖に全周の約1/3に付着しているのみであった. 大動脈炎症候群のため大動脈内壁が脆弱であると考え, 縫合糸を外壁から通針して人工弁を縫着した. 大動脈炎症候群に対する人工弁置換術後においては, 人工弁逸脱を予防するために炎症の慎重なコントロールが重要であり, 仮に逸脱が生じ再手術が余儀なくされたときには, 弁縫着には慎重な手技を要する.
  • 柴田 隆一郎, 高木 正剛, 宮川 尚孝, 山内 秀人, 橋谷田 博, 野口 学, 多田 誠一, 釘宮 敏定
    1997 年 26 巻 4 号 p. 271-274
    発行日: 1997/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    冠動脈に有意病変を有しない僧帽弁膜症患者で, 初回手術時, 再手術時の2回にわたり高度の術中冠攀縮を発生したまれな1例を経験した. 患者は56歳女性. 7年前 (49歳時) の僧帽弁交連切開術の際にも術中に強い冠攀縮をきたし, IABP駆動下にようやく救命できた. 再手術時には, 麻酔導入時から心電図上STの高度上昇を伴う徐脈と低血圧の発作が頻回に生じ, ニトログリセリン静注も効果が少なく, そのまま体外循環に移行して僧帽弁置換術を施行した. 人工心肺離脱後も冠攀縮発作が頻発したが, ニトログリセリン, ノルエピネフリン, IABPなどの併用により救命できた. 術中術後の全経過を通じて心筋逸脱酵素の上昇を認めなかった.
  • 阪越 信雄, 佐藤 重夫, 鬼頭 義次
    1997 年 26 巻 4 号 p. 275-277
    発行日: 1997/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    非常に稀な不規則抗体 (抗Fya抗体+抗E抗体+抗P1抗体) のため他家血輸血が不可能であった腸骨動脈瘤切迫破裂の1例を経験した. 本例は慢性腎不全のため貧血を合併していた. 安静と降圧剤による血圧コントロールにより瘤破裂は予防され, 4週間の間に自己血を800ml貯血することにより待機的に手術を施行することができた. 術中は回収洗浄式自己血輸血装置を併用し, 他家血輸血を行わず安全に手術を遂行できた.
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