日本心臓血管外科学会雑誌
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27 巻 , 6 号
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  • 林田 信彦, 炊江 秀幸, 丸山 寛, 田山 栄基, 友枝 博, 尾田 毅, 川良 武美, 青柳 成明
    1998 年 27 巻 6 号 p. 335-340
    発行日: 1998/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチドである carperitide の僧帽弁手術症例に対する効果を検討した. Carperitide を投与したHANP群 (n=11), あるいは非投与の Control 群 (n=10) の2群に無作為分類し循環動態, 利尿作用および腎機能より両群を比較検討した. HANP群では carperitide を体外循環終了3時間後より0.05μg/kg/minの速度で3時間投与した. HANP群は Control 群に比較して投与後の末梢血管抵抗および末梢-中枢温度較差が有意に低値で心係数は有意に高値を示しcarperitide の後負荷軽減作用およびそれに伴う心機能の改善効果が示唆された. さらにHANP群での分時尿量は Control 群に比較して有意に高値を示し carperitide の強力な利尿作用が認められた. このような効果より carperitide が開心術後心不全に対して新たな治療薬の一つとなる可能性が示唆された. しかし血管内脱水症例では carperitide 投与中止後の一過性乏尿が認められ, このような症例での投与および中止は慎重な観察を要する.
  • 廣谷 隆, 亀田 正, 城田 庄吾, 藤原 弘佳
    1998 年 27 巻 6 号 p. 341-344
    発行日: 1998/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    外壁が胸骨に接する巨大胸部大動脈瘤の手術では, アプローチ法や補助手段の選択に苦慮する場合が多い. われわれは, 大腿動静脈からVAバイパスを行い, 体外循環冷却により超低体温としてから開胸する方法を行っている. 現在までに5例 (慢性II型大動脈解離1例, 人工血管置換術後吻合部仮性動脈瘤4例) に対し本法を行ったが, その内4例において, 開胸時に瘤破裂を来した. いずれの場合も, 破裂後すみやかに瘤の末梢側で遮断可能で, 5~10分後に循環を再開できた. 手術は, 上行弓部人工血管再置換術3例, 上行部分のみの人工血管再置換術1例, hemiarch repair 1例であった. 術後MOFを来した1例を6カ月後に失ったが, 他は社会復帰している. 本法は, 無血視野が得られ, 瘤破裂を来した場合でも容易に対処でき, 中等度以上のARがない症例では, 有用な方法と考えられた.
  • 小山 照幸, 遠藤 慎一, 北中 陽介, 西村 晃一, 舟木 成樹, 武井 裕, 稗方 富蔵
    1998 年 27 巻 6 号 p. 345-350
    発行日: 1998/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    鈍的外傷による心臓損傷は, 体表外傷が著明でない場合や, 他臓器損傷があってそちらに注意がそらされる場合, 診断は困難である. 即座の治療を必要とするため救命率は低いが, 迅速な対応により救命できる症例もある. 当院では過去10年間に16例の心臓損傷を経験し, うち4例を救命し得た. しかし来院時心肺停止例は蘇生できなかった. また来院時, 心拍のある例でも, 他臓器損傷が重篤な例は出血性ショックのため救命できなかった. 心臓の損傷部位を同定できた症例を検討すると, 右心系に多い傾向が認められた. 右心系の損傷例は救命可能で, 左心系の損傷例には救命例はなかった. 救命のポイントは, まず心破裂を疑うこと, 心エコーによる即座の診断と経時的心嚢液量の変化の観察, できるだけ迅速な他臓器損傷の把握が重要であると考えられた.
  • 林田 信彦, 米須 功, 榎本 直史, 川良 武美, 丸山 寛, 田山 栄基, 友枝 博, 尾田 毅, 炊江 秀幸, 青柳 成明
    1998 年 27 巻 6 号 p. 351-356
    発行日: 1998/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    冠動脈バイパス術後の心不全症例に対する phosphodiesterase III阻害剤である milrinone の効果を検討した. 術後の心係数が2.0l/min/m2以下あるいは肺動脈楔入圧が12mmHg以上の心不全を有する20例を対象とし, milrinone (0.5μg/kg/min) を投与した Milrinone 群 (n=10), 非投与の Control 群 (n=10) の2群に分類し, 循環動態および臨床成績より比較検討した. 肺動脈楔入圧および全身血管抵抗は milrinone 投与により有意 (p<0.05) に低下した. 心係数は Control 群に比較し Milrinone 群で有意 (p<0.05) に高値で左室1回拍出仕事係数の上昇も同群で早期であった. Rate pressure product は有意な変化は認めなかった. Milrinone 群は Control 群に比較し中枢-末梢の温度較差も有意に (p<0.05) 低値であり, 術後のカテコールアミン必要量も同群で有意 (p<0.05) に低値であった. 本検討では milrinone 投与に伴う有意な副作用の増加は認められなかった. 以上の結果より冠動脈バイパス術後の心不全症例に対して milrinone は陽性変力作用および血管拡張作用を有していた. 従来の心不全の治療薬であるカテコールアミン製剤および血管拡張薬とともに本薬剤が有効な治療薬となることが示唆された.
  • 梅澤 久輝, 根岸 七雄, 石井 良幸, 新野 成隆, 前田 英明, 河野 秀雄, 知久 信明, 長 伸介, 瀬在 幸安
    1998 年 27 巻 6 号 p. 357-359
    発行日: 1998/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    一般に末梢動脈瘤の発生頻度は大動脈瘤と比較し少ないとされている. われわれは, 末梢動脈瘤の一つである膝窩動脈瘤に着目し, 1974年より1998年1月までに当教室にて経験した膝窩動脈瘤14例18肢を対象とし初発症状, 合併症, 手術術式などに対して検討を加え報告する. 本症は, 14例中6例 (42.9%) に急性動脈閉塞症の合併を認めた. 14例中4例 (28.6%) は動脈瘤破裂1例であった. 一般的に本症の合併症の発生により初めて診断および治療されることが多い疾患である. また生命予後に影響することが少ないが, 下肢切断を余儀なくされる例もあり, その治療には十分な注意が必要である疾患と思われた. 本症は体表面からの触知が可能であることも多く, 本症の認識の高まりにより, より適切かつ早期の治療例が増加するものと考えられる.
  • 齊藤 力, 川人 宏次, 長谷川 伸之, 三澤 吉雄, 加藤 盛人, 布施 勝生
    1998 年 27 巻 6 号 p. 360-363
    発行日: 1998/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    術中予期せぬ弓部大動脈近傍の大血管損傷により, 修復に超低体温循環停止法 (一部逆行性脳灌流法を併用) を用いた5例について検討した. 症例の内訳は出血性損傷3例, 急性解離2例であった. 修復および手術遂行に要した体外循環時間は159~367分 (平均199分), 循環停止時間は20~44分(平均32分), 循環停止温度は膀胱温19.5~22.0℃ (平均21.0℃), 脳保護補助手段として逆行性脳灌流法を2例に使用した. 術後覚醒までの時間は持続鎮静降圧療法を施行した症例1を除き4~9時間で, 全例神経学的合併症はみられず退院した. 超低体温循環停止法は, (1) 血管壁の緊張緩和. (2) 良好な無血視野. (3) 自己血回収が可能. (4) 低体温による臓器保護. などの利点がある. 従って本法は弓部大動脈近傍の大血管損傷の修復に際して, 重大な合併症を回避しうる可能性があり, 遮断鉗子下での修復が困難な場合には速やかに選択すべき方法と考えられた.
  • 平井 伸司, 末田 泰二郎, 今井 克彦, 岡田 健志, 森田 悟, 渡橋 和政, 松浦 雄一郎
    1998 年 27 巻 6 号 p. 364-366
    発行日: 1998/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例はASDに合併する慢性心房細動 (Af) に対して右房分割手術を行った53, 67, 74歳の3例である. 全例心不全の既往があり右房負荷所見を認めたが, いずれも肺高血圧症の合併はなかった. 手術は全例ASDを直接縫合した. 右房分割手術は, 術後 atrial kick を保つために分割右房が収縮する様に工夫しただけでなく, 右房自由壁にも電気的刺激が伝わる様に右房を3分割する術式である. 3例とも術後洞調律に復し, atrial kick も良好に出現した. この手術手技は右房のみの手術のため簡便で, 成人ASDに合併したAf症例に対して, 有効な治療法となりうることが示唆されたので, 考察を加え報告する.
  • 長谷川 順一, 門場 啓司, 豊田 芳郎, 久保田 洋, 豊山 広勝, 長谷 一郎
    1998 年 27 巻 6 号 p. 367-371
    発行日: 1998/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    患者は68歳, 男性で左下肢の浮腫と労作時呼吸困難を主訴とした右総腸骨動脈瘤破裂による腸骨動脈-下大静脈瘻を来していた. 総腸骨動脈瘤の径は, 71×70mmで肺対体血流比は1.36であった. 手術は, 瘻孔 (φ10×5mm) を閉鎖し, 瘤を人工血管で置換した. 術後経過は良好で心不全症状もなく, また血行動態上も肺動脈平均圧は32から18mmHg, 心係数も9.81から3.66l/min/m2と低下した. 動静脈瘻を伴う腸骨動脈瘤の報告は少なく, 血行動態の変化を術中・術後にかけて観察したので報告した.
  • 土井 一義, 伊藤 翼, 夏秋 正文, 乗田 浩明, 内藤 光三, 堺 正仁, 蒲原 啓司, 米満 伸久
    1998 年 27 巻 6 号 p. 372-375
    発行日: 1998/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は72歳, 男性. 胸部X線写真で異常陰影を指摘され, 胸部CTや血管造影検査などによる精査の結果, 弓部と胸部下行大動脈に存在する, 重複嚢状大動脈瘤の診断となった. 手術は左開胸, F-F bypass 下, 超低体温循環停止を併用し open proximal method で, 弓部~胸部下行大動脈の人工血管置換術を施行した. 脳合併症は認めなかった. 病理学的には大動脈の硬化性変化が著明で, 大動脈瘤の開口部は内膜が欠損していた. 大動脈瘤の壁は動脈壁の三層構造を欠き, 線維性結合組織のみより構成されていた. この所見は penetrating atherosclerotic ulcer (PAU) の所見に一致し, PAUが原因となった重複仮性大動脈瘤症例と考えられた. かかる症例は稀であるが, 手術方法の選択に際し, 3次元CTは有用で, かつ, 病変の主座が胸部下行大動脈にあるような症例に対しては open proximal method は有用な手術方法と考えられた.
  • 里 学, 樋口 真哉, 小迫 幸男, 片山 雄二, 伊藤 翼
    1998 年 27 巻 6 号 p. 376-379
    発行日: 1998/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    大動脈弁二尖弁に巨大非破裂バルサルバ洞動脈瘤を合併した稀な症例を経験した. 症例は47歳, 男性. 小児期より弁膜症を指摘されていたが精査は受けておらず, 最近生じてきた嚥下時の違和感により受診した. 検査の結果, 心右側に突出した70×70mm大の巨大非破裂バルサルバ洞動脈瘤と高度の大動脈弁閉鎖不全および狭窄を認めた. 術中所見で弁尖の硬化を伴った大動脈弁二尖弁を認め, 上行大動脈最大径は42mmと拡張しており, modified Bentall 手術 (Carrel patch 法) を行った. 病理所見は硬化性病変が主体で一部に中膜の変性を認めた.
  • 矢野 浩巳, 石丸 新, 石川 幹夫, 小櫃 由樹生
    1998 年 27 巻 6 号 p. 380-382
    発行日: 1998/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は69歳, 男性. Crawford III型の胸腹部大動脈瘤に対して人工血管置換術を行った. 術後8日目より炎症所見が著しくなり, 創部皮下膿瘍を形成した. 排膿および胸腔ドレーン排液よりMRSAが検出され創部から胸腔内への感染と診断し, 再開胸術を施行した. 感染組織を掻爬した後, 人工血管除去による再建術を選択せず大網充填術を行い, 術後3日間は1%イソジン液による持続胸腔内洗浄を行った. 炎症は鎮静化し, 軽快退院した. 近年, MRSAによる人工血管感染は増加し治癒例も散見されるが, 本例のごとく胸腹部における人工血管を温存しえた例は稀であることから, 文献的考察を加えて報告した.
  • 蒲原 啓司, 池田 和幸, 湊 直樹
    1998 年 27 巻 6 号 p. 383-386
    発行日: 1998/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    急性心筋梗塞後左室自由壁破裂のなかでも, blow-out 型は救命困難である. 左室自由壁破裂の救命には, 手術まで, どう循環動態を保つかが極めて重要である. 当院では, 診断を得たら, ただちに, 経皮的心肺補助装置 (PCPS), 大動脈内バルーンパンピング (IABP) を装着し, 体循環の維持と左室減圧をはかる方針としている. また, 術後は再破裂防止のためIABPを最低5日は留置するよう努めている. 今回, 回旋枝起始部完全閉塞後6日目に起こり, 心室細動となった左室後側壁の blow-out 型破裂例に対し, PCPSおよびIABPの補助循環下に, 心拍動のまま, 破裂部被覆術 (破裂部縫合閉鎖, フィブリン糊-オキシセル綿固定およびウマ心膜被覆) を施行し良好な結果を得たので報告する.
  • 服部 隆司, 渡辺 泰徳, 金本 真也, 上西 祐一朗, 鴨志田 俊郎, 高橋 敦
    1998 年 27 巻 6 号 p. 387-389
    発行日: 1998/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    脾膿瘍を合併した活動期大動脈弁感染性心内膜炎の1例を報告した. 症例は25歳, 男性. 抜歯後の発熱を主訴に来院. 血液培養で Streptococcus viridans を検出, 心臓超音波検査で大動脈弁に1cm大の疣贅と大動脈弁閉鎖不全を認めた. 多剤抗生剤治療にもかかわらず発熱は続いた. 左上腹部痛が出現したため腹部造影CTを行ったところ広範囲の脾梗塞像を認めた. 心不全が急激に悪化したため, 感染性心内膜炎の活動期に大動脈弁置換術と脾臓摘出術を同時に行った. 大動脈弁は2尖弁であった. 脾臓は菌塊による広範囲の塞栓, 膿瘍の所見であった. 術後経過は順調で現在2年が経過したが感染の再燃はない.
  • 久貝 忠男, 知花 幹雄
    1998 年 27 巻 6 号 p. 390-394
    発行日: 1998/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は38歳, 男性である. TAPVR (Darling Ia 型) による急性心不全で緊急入院した. 肺静脈レベル (垂直静脈は短頸, 肺静脈閉塞なし), 心房レベル (ASDは28×24mm) に還流障害はなく肺血流増多であった. 根治手術は上方経路で行い, 術後3カ月目の心臓カテーテル検査で吻合部狭窄の所見はなかった. 心臓の脱転や両心房切開を行わない上方経路は視野も良く, 自然な位置での左房・総肺静脈吻合が可能である. また, 長期生存の最大の要因として肺血管抵抗の上昇がなかったことが考えられた.
  • 山城 聡, 坂田 隆造, 中山 義博, 浦 正史, 摩文仁 克人, 新井 善雄, 杉本 亮大
    1998 年 27 巻 6 号 p. 395-399
    発行日: 1998/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    Aortic root aneurysm にARを伴った2例に対し大動脈弁を温存, バルサルバ洞を切除後, その断端にあわせて人工血管を縫合する Remodeling 法を施行した. 冠状動脈は Carrel patch 法を用いて再建し良好な結果を得た. いずれも術前, 術中所見にて弁尖は正常で弁輪拡大も認めず, Sinotubular junction (以下STJ) の拡大がARの主因と考えられ, 人工血管にてSTJ修復後, commissure の吊り上げにて弁尖接合状態は良好であった. David らの計算式を参考に術中計測所見から20mm人工血管を用い, 中枢側を scallop 状に切除する Yacoub 法にて自己大動脈弁温存大動脈基部再建術を施行した. 術後の超音波検査, 大動脈造影検査にて1例にARI度の残存を認めたが, 共に症状の改善を認め軽快退院した. 抗凝固療法等の観点からも本術式は正常弁を有する大動脈基部病変に対しては推奨される術式と考えられた.
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