日本心臓血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1883-4108
Print ISSN : 0285-1474
ISSN-L : 0285-1474
27 巻, 4 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
  • 小野口 勝久, 蜂谷 貴, 佐々木 達海, 橋本 和弘, 高倉 宏充, 長堀 隆一, 竹内 成之
    1998 年 27 巻 4 号 p. 197-200
    発行日: 1998/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    真性嚢状型の遠位弓部大動脈瘤2症例に対して施行した手術術式につき, 補助手段を中心に報告する. まず, 完全体外循環下に上行大動脈を遮断, その際, 分離冠状動脈灌流を併用することで心拍動を維持する. この間に, 心臓以外の全身体温を25℃まで冷却し, 一時的な循環停止状態ののち, 大動脈内側より3分枝にカニューレを挿入, 選択的な脳灌流を開始する. またフォガティ・バルーンカテを利用して, 下行大動脈への送血を再開, ひき続いて, 瘤のパッチ閉鎖術を施行した. 分離冠状動脈灌流に関しては灌流圧・灌流量関係に検討の余地があるところではあるものの, 瘤の位置的な問題, あるいは, 心筋保護の問題を考慮したとき, 心停止操作を必要とせずに施行しうる本補助手段の選択は, 検討に値するものと考えられる.
  • 古川 博史, 畑 隆登, 津島 義正, 松本 三明, 濱中 荘平, 吉鷹 秀範, 藤原 恒太郎, 黒木 慶一郎, 増田 善逸
    1998 年 27 巻 4 号 p. 201-206
    発行日: 1998/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    近年, 大動脈弁病変と合併する他の心疾患に対する複合開心術が増加傾向にある. 1990年1月から1996年11月までに当科で施行した (1) AVR+CABG同時施行例25例 (男:女=19:6, 年齢54~77歳, 平均年齢67.1±7.2歳) と, (2) AVR+TAP+Maze 同時施行例2例について検討を加えた. (1) AVR+CABG 25例の病院内死亡はなかった. AVRは全例SJM弁を使用した. CABGでは平均グラフト本数は1.41/症例で, 積極的に動脈グラフトを31本中20本 (64.5%) に使用し, 術後早期開存率は100%であった. (2) AVR+TAP+Maze 症例ではTAPは DeVega 法を用いて行い, Maze 手術は cryoablation を併用した modified Maze 手術を行い2例とも術後は洞調律が得られた. 大動脈弁手術と同時に冠動脈疾患や不整脈に対する手術を積極的に併用することにより良好な手術成績が得られると考えられた.
  • 長 伸介, 大平 政人, 井上 龍也, 秦 光賢, 奈良田 光男, 畑 博明, 瀬在 幸安
    1998 年 27 巻 4 号 p. 207-211
    発行日: 1998/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    過去6年間に当施設にて施行されたCABG 102例中, 術中心筋保護法として terminal warm blood cardioplegia (TWBCP) を用いたT群41例とTWBCPを用いなかったnon-T群61例を対象に, CABGにおけるTWBCPの有用性について比較検討した. この2群を平均年齢, バイパス数, 手術時間, 人工心肺離脱時間, 大動脈遮断時間 (ACCT), 人工心肺駆動時間 (CPBT), 復温時心室細動の発生の有無, 術後MaxCPK-MB, 心機能において比較検討した. バイパス数はT群で有意に多く, 大動脈遮断解除から人工心肺離脱までの時間はnon-T群で有意に長かった. ACCTはT群で有意に長く, 復温時心室細動の発生はT群で少なかった. 術直後, 術後第1病日のCIはT群で有意に高かった. 以上よりT群の方が術中の risk が高いと判断されるにもかかわらず, 術後心機能が良好であったことから, TWBCP使用により心筋も良好な機能回復が得られたと考えられた.
  • 鈴木 憲, 澤 芳樹, 大竹 重彰, 今川 弘, 竹谷 哲, 松田 暉
    1998 年 27 巻 4 号 p. 212-216
    発行日: 1998/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    大動脈二尖弁に伴う大動脈弁閉鎖不全 (AR) の3例に対し弁形成術を行った. 手術は raphe の楔状切除・縫合, cusp plication, commisural annuloplasty, 感染性心内膜炎 (IE) による穿孔の patch 閉鎖などを組み合わせて行った. 超音波検査によるAR評価および術後経過は良好であった. また, 人工弁置換術を施行されていた症例も含めた過去19例の二尖弁AR症例に対する弁形成術の適応について retrospective に検討した. 弁形成術の非常によい適応と考えられる, IEによる弁破壊も弁の石灰化や硬化もない弁尖の逸脱によるAR症例11例と, IEによる弁破壊を認めるものの修復が可能な程度で, 弁の硬化は認めない症例4例の計15例 (79%) に弁形成術が可能であったと考えられた. 今後も長期成績などさらなる検討が必要であるが, 二尖弁のARに対して弁形成術は有用な術式になりうると考えられた.
  • 鈴木 憲, 大竹 重彰, 今川 弘, 松田 暉
    1998 年 27 巻 4 号 p. 217-221
    発行日: 1998/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    偽腔間に交通のない複数の解離性大動脈瘤が存在する重複解離性大動脈瘤 (重複DAA) に関し4例の手術例を中心に検討した. 頻度は全DAA手術例125例中の3.2%で Marfan 症候群は1例のみであった. 形態的には全例が慢性の DeBakey II+III型であった. 症例1には Bentall 手術, 症例2には二期的に Bentall 手術と entry 閉鎖+瘤縫縮, 症例3には二期的に上行大動脈人工血管置換+3CABGと胸腹部大動脈人工血管置換, 症例4は一期的に上行大動脈-hemiarch の人工血管置換+III型 entry 閉鎖+大動脈弁つり上げを施行した. III型に対する処置が不十分であったと思われる2例ではIII型が急速に拡大・破裂した. 重複DAAに対する手術に際して, 特に二期的手術となる場合には残存瘤に対して通常よりも厳格な経過観察と早期の手術が必要であると考えられた.
  • 曽川 正和, 斉藤 憲, 名村 理, 大関 一, 諸 久永, 林 純一
    1998 年 27 巻 4 号 p. 222-226
    発行日: 1998/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    心拍動下冠状動脈バイパス術は吻合時の無血視野を得るために, 冠状動脈の閉塞が必要となる. 閉塞部遠位での心筋虚血を予防するために, 冠状動脈内シャントチューブを用い, その有用性を正常ブタ心にて検討した. 冠状動脈シャントチューブを用いたS群 (n=3) と用いないC群 (n=4) で検討したところ, S群では吻合直後に心電図上, 1例にSTの上昇を認めたほかは, STの変化を認めなかった. また, 酵素上は, CPK-MB, トロポニンTともにほぼ不変であった. 手技上の点からシャントチューブは吻合の妨げにはならなかった. 他方, C群では, 1例を除き, 吻合中に心室細動となり, 電気的除細動にても調律を回復し得なかった. 以上の点から, 冠状動脈内シャントチューブは有用と考えられた.
  • 長時間大動脈遮断症例での有用性
    林田 信彦, 丸山 寛, 田山 栄基, 友枝 博, 尾田 毅, 川野 博, 川良 武美, 青柳 成明
    1998 年 27 巻 4 号 p. 227-232
    発行日: 1998/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    長時間大動脈遮断症例に対する間欠的微温血液心筋保護法の効果を検討した. 120分以上の大動脈遮断を必要とした冠動脈バイパス術40例を対象とし, 心筋保護液により4℃の低温晶質心筋保護液群 (Cold 群) あるいは30℃の微温血液心筋保護液群 (Tepid 群) に分類し, その心筋保護効果を心機能, 心筋逸脱酵素および臨床成績により比較検討した. 平均大動脈遮断時間は Cold 群: 150±10, Tepid 群: 149±4分で体外循環時間, 未梢吻合数および動脈グラフト数にも有意差を認めなかった. 大動脈遮断解除後の自然心拍再開率は Tepid 群で高率 (p=0.01) で, 術後の左室-回拍出仕事係数も同群で有意に良好に回復した (p=0.02). 術後挿管時間 (Cold 群: 71±26, Tepid 群: 20±2時間, p=0.04), 術後48時間までの総CK-MB遊出量 (Cold 群: 1,244±141, Tepid 群: 726±85IU×hr/l, p=0.01), 総カテコールアミン必要量 (Cold 群: 21.4±4.5, Tepid 群: 10.0±1.4mg/kg/48hr, p=0.02) および術後低心拍出量症候群の発生率 (Cold 群: 45%, Tepid 群: 10%, p=0.03) はTepid 群で有意に低値であった. 術後早期死亡を Cold 群に3例 (15%) 認め, Tepid 群には認めなかった (p=0.12). 以上より, 間欠的微温血液心筋保護法は長時間大動脈遮断症例に対しても安全に使用でき, 従来の低温晶質心筋保護法に比較し良好な心機能および臨床成績をもたらし, この方法の有用性が示唆された.
  • 佐々木 秀, 川本 純, 林 載鳳
    1998 年 27 巻 4 号 p. 233-236
    発行日: 1998/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は62歳男性, 3年前に急性心筋梗塞で入院した際に心房中隔欠損症 (ASD) と慢性心房細動 (Af) を指摘され経過観察されていたが, 今回さらに狭心症を合併し手術適応となった. 手術は一期的に冠状動脈バイパス術と心房中隔欠損孔閉鎖術に加えメイズ手術の変法である右房分割手術を施行した. 術後急性期は洞調律を維持していたが, 第8病日にAfを再発し薬物的, 電気的除細動に反応しなかった. 術後の左心負荷がAf再発の原因ではないかと考えられた. ASDに合併するAfは主に右房に原因があると考え, また本症例のように虚血性心疾患を合併している場合にも簡便, 安全に施行しうると考え右房分割手術を選択したが, 術前左心機能低下例や左房拡大を認める症例では本法の適応は慎重に決定する必要があると考えられた.
  • 杉村 裕志, 渡邊 浩次, 杉村 修一郎, 入山 正, 服部 良信, 根木 浩路, 山下 満, 星野 竜, 山本 徹, 飯沼 由嗣
    1998 年 27 巻 4 号 p. 237-240
    発行日: 1998/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    患者は東南アジア渡航歴の多い58歳の男性である. 軽度耐糖能低下を指摘されていた. 平成6年11月から平成7年7月に2度の東南アジア渡航を経験し, 渡航先で高熱を発し, 帰国後肺炎で入院した. 腹部CTで傍腎動脈部に非定型の腹部大動脈瘤がみられ, 遷延する発熱の原因として細菌性腹部大動脈瘤が疑われた. 経過観察中に, 発熱に引き続いて, CTで瘤の急速な増大を認めたため, 平成8年3月21日, 動脈瘤切除人工血管置換術を施行した. 術後12日目に発熱し, 血液培養で Burkholderia pseudomallei を検出した. メリオイドーシスと診断し, 感受性試験に基づき抗生剤の長期投与を行った. 術後55日目に感染の再燃徴候なく退院した.
  • 尾崎 喜就, 大瀧 義郎, 脇田 昇, 志田 力
    1998 年 27 巻 4 号 p. 241-244
    発行日: 1998/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    両下肢慢性閉塞性動脈硬化症を合併する不安定狭心症例に対し, 先行させた冠状動脈バイパス術の際の体外循環による末梢循環不全が原因と考えられる下肢虚血病変の急性増悪によりMNMSを引き起こした1例を経験した. 症例は70歳, 男性. 胸痛および両下肢間歇性跛行を主訴に来院した. 精査の結果, 不安定狭心症, 慢性閉塞性動脈硬化症と診断された. 不安定狭心症に対する治療を後回しにすることは難しく, また, 手術侵襲も考慮し, 冠状動脈バイパス術を先行させる二期的手術を行うことにした. バイパス術後順調に経過していたが, 術後2日目に突然強度の両下肢痛が出現, CPKは17,560IU/lと上昇した. 術後3日, 両下肢虚血に対して血行再建術を行ったが, 再灌流後5時間で呼吸停止, 心室細動を来たし, 心肺蘇生にもかかわらず死亡した.
  • 島本 健, 松田 光彦, 添田 健, 青田 正樹, 洞井 和彦
    1998 年 27 巻 4 号 p. 245-248
    発行日: 1998/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は55歳, 男性. 24歳時に左腎動脈狭窄に対しテフロン代用血管による左腎動脈血行再建術を他院にて施行された. 当院における狭心症精査の際にそのグラフトを造影したところ, 径約4cmの吻合部仮性動脈瘤と診断され, 再手術を施行した. 瘤を切開し離開した初回手術吻合孔を閉鎖したのち, あらかじめ腹部大動脈に端側吻合した人工血管に左腎動脈へのグラフトを端々吻合した. 術後の経過も順調であった.
  • 樋口 和彦, 原田 厚, 小西 敏雄, 深田 睦, 秋島 信二
    1998 年 27 巻 4 号 p. 249-252
    発行日: 1998/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は65歳, 男性. 僧帽弁閉鎖不全症に合併した心房細動に対し, 僧帽弁形成術と同時に術中心房マッピングで反復興奮部位の認められた左心耳とその周囲に凍結凝固を行った. 術直後より薬剤の投与なしに正常洞調律に回復した. 僧帽弁疾患に合併した心房細動に対し, 弁手術と同時に凍結凝固を施行し, 除細動可能なことが示された. また僧帽弁形成術との同時手術は比較的容易であり, 術後正常洞調律に回復すれば抗凝固が不要となり患者の社会復帰に有利であると考えられた.
  • 川本 純, 佐々木 秀, 林 載鳳
    1998 年 27 巻 4 号 p. 253-255
    発行日: 1998/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は71歳の男性で, 主訴は歩行時の右下肢痛である. 動脈造影にて右総腸骨動脈の高度狭窄を認めた. 人工血管を用いて左大腿動脈-右大腿動脈バイパス術を施行した. 人工血管との吻合に右側は定型的な手縫い吻合を用い, 左側は新しい血管吻合器であるVCS clip (VCS: vascular closure staples) を用いた. このVCSクリップの利点はその特徴的な構造により血管内膜の傷害を最小限にすることである. 術後狭窄を認めず手術時間も短縮でき, 良好な結果を得た.
  • 平井 雅也, 牧 葆雄, 安田 敬志, 近藤 正文, 服部 正樹
    1998 年 27 巻 4 号 p. 256-259
    発行日: 1998/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    59歳, 女性. 主訴は易疲労感. 20歳で高血圧を指摘され, 51歳時に, 他医で大動脈炎症候群による異型大動脈縮窄症と診断された. 上肢血圧は降圧剤投与下で200mmHg前後で, 1年前から家事のみで容易に疲労するようになった. 大動脈造影では, 横隔膜レベルと腎動脈レベルに高度な狭窄を認め, 右腎動脈は閉塞していた. 胸部CTでは, 下行大動脈以下に広範な石灰化を認めた. 手術は胸骨正中切開を恥骨上部まで延長して開腹し, 径16mmの人工血管にて上行大動脈から腹部大動脈へのバイパス術を行った. 吻合部瘤を防ぐため, 縫合は石灰化のないなるべく健常と思われる部分にフェルトで補強しながら行った. 術後6カ月で上肢血圧は, 130mmHgに低下し, 易疲労感も消失し, 良好な結果が得られた.
  • 松山 克彦, 上田 裕一, 荻野 均, 杉田 隆彰, 酒井 哲朗, 榊原 裕, 松林 景二, 野本 卓也
    1998 年 27 巻 4 号 p. 260-262
    発行日: 1998/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は64歳, 女性で, 労作時呼吸困難を主訴とし, CTで慢性B型大動脈解離と診断され, 紹介された. 遠位弓部大動脈は最大径7cmに達し, 偽腔の一部に血栓を伴っていた. 手術は循環停止下, 大小4箇所の intimal tear を直接閉鎖し, 解離内膜, 外膜を偽腔遠位側で固定した後, 下行大動脈の aortic tailoring を施行した. 術後経過は良好で無輸血で経過し, 第22病日に退院した. 術後3年後に施行したCTでは, 遠位弓部から下行大動脈にかけての偽腔は消失し, 胸腹部大動脈の限局した解離が残存したものの, 大動脈の拡大は認めなかった. 手術侵襲, 術後合併症を軽減する本術式は, 慢性B型大動脈解離手術の一つの option として有効であった.
feedback
Top