日本心臓血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1883-4108
Print ISSN : 0285-1474
ISSN-L : 0285-1474
28 巻, 1 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
  • 特に Stanford A型早期血栓閉塞型大動脈解離の治療方針について
    池田 宜孝, 藤村 嘉彦, 伊藤 博史, 郷良 秀典, 浜野 公一, 野田 寛, 加藤 智栄, 善甫 宣哉, 江里 健輔
    1999 年 28 巻 1 号 p. 3-6
    発行日: 1999/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1990年4月から1996年7月の期間に当教室で経験した Stanford A型急性大動脈解離のうち発症後超急性期 (48時間以内) に手術を施行しなかった6例を検討した. これは同時期に経験した全 Stanford A型急性大動脈解離症例 (22例) の27.3%であった. 内訳は男性1例, 女性5例で, 年齢は52歳から82歳であり, 6例中4例は早期血栓閉塞型であった. 保存的治療にて軽快したものは早期血栓閉塞型 (画像診断上, 解離とは交通を認めないもの) の1例のみであった. 他の早期血栓閉塞型は急性期, あるいは慢性期に手術を必要とした.解離腔開存型の2例は発症後1カ月以内に再破裂のため死亡した. Stanford A型急性大動脈解離では早期血栓閉塞型であってもその急性期, 慢性期において再解離を来すことが多く, 外科治療が必要と思われた.
  • 大澤 宏, 土屋 幸治, 栗原 寿夫, 斉藤 博之, 松村 剛毅, 飯田 良直
    1999 年 28 巻 1 号 p. 7-12
    発行日: 1999/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1992年から1996年の5年間の70歳以上のASに対するAVR症例22例 (♀: ♂=15:7, 年齢70~84, 平均73.0歳) の手術成績および遠隔成績について, 70歳未満の症例と比較検討した. 術前のNYHA分類はIII度16例, IV度6例で, 術式はAVR単独: 15例 (3例に人工弁傾斜縫着法), AVR+CABG: 5例, AVR+MVP: 1例, AVR+上行大動脈形成術: 1例であった. 手術死亡, 入院死亡を認めなかった. 現在生存中の21例のNYHA分類はI度またはII度に改善し, 術後UCGでは心機能およびLVHの改善が認められた. 70歳未満の症例との比較では, 体表面積と輸血量で有意差を認めたが, 大動脈遮断時間, 体外循環時間, ICU滞在日数, 術後入院日数に有意差を認めなかった. 高齢者ASに対するAVRは small size の人工弁が多いが, 術後良好に経過している. 高齢者の狭小弁輪に対して人工弁傾斜縫着法は一つの有効な手段と考えられた.
  • 柳沼 厳弥, 阿部 和男, 岡田 嘉之, 乙供 通稔
    1999 年 28 巻 1 号 p. 13-18
    発行日: 1999/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    われわれはPCPSシステムの利点を残しながら, 一般的な体外循環も可能な方法を考案し, すべての胸部大動脈手術に使用している. 回路は, 閉鎖循環による体外循環と落差脱血による通常の体外循環をクランプ1本で変更できるようにした. また, 閉鎖循環回路での部分体外循環中でも吸引した血液をハードシェル・リザーバーに回収し大量の出血にも対応できるようにした. 現在までに, 胸部大動脈瘤手術26例に使用した. 本回路を使用した体外循環法について検討したので報告する.
  • 山城 聡, 坂田 隆造, 中山 義博, 浦 正史, 摩文仁 克人, 新井 義雄, 杉本 亮大
    1999 年 28 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 1999/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    大動脈基部病変30例に対し根治的基部再建術を施行した. 平均年齢は52.9±16.9歳, 男女比は22: 8であった. 上行大動脈病変の診断はAAE14例, root aneurysm 10例, 解離性大動脈瘤2例, 真性上行大動脈瘤4例 (うち2例は上行弓部大動脈瘤) で, 併存病変として僧帽弁閉鎖不全3例, 虚血性心疾患3例であった. 30例中28例において Bentall 変法を, root aneurysm+ARの2例において Yacoub 法を施行し, 冠状動脈の再建は全例 Carrel patch 手技を用いた. 病院死亡は1例 (3.3%) で, 耐術29例は術後造影にて冠動脈吻合部狭窄および仮性瘤の形成等は認めなかった. 平均追跡期間23.2±26.0カ月で遠隔死亡および再手術例はなかった. 1例に術後5年目に脳出血を認めたのみで, 心事故自由率は75% (6年, n=1) であった.
  • 大内 浩, 上田 恵介, 横手 祐二, 渡辺 拓自, 朝野 晴彦, 小柳 俊哉, 許 俊鋭, 尾本 良三
    1999 年 28 巻 1 号 p. 25-29
    発行日: 1999/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1988~1997年の破裂性腹部大動脈瘤35例の手術成績を検討した. 平均年齢69.9歳, ショック19例, 意識障害9例, 瘤径平均79mm, Hb値平均9.1g/dlであった. 大動脈遮断は胸腔内3例, 腎動脈上6例, バルーン閉鎖4例, 腎動脈下22例であった. 1994年以降は周術期に心筋虚血対策と早期持続血液透析を積極的に行った. 病院死亡は7例 (20%) で死因は術中心停止1例, 多臓器不全4例, 肺炎・敗血症2例であった. 病院死亡の単因子解析では術前意識障害 (p=0.033) と心電図異常(p=0.018), ショック持続5時間以上 (p=0.019) が有意な危険因子で多変量解析では心電図異常(p=0.065), ショック持続5時間以上 (p=0.084) が予後悪化傾向を示し術前の重篤な血行動態破綻を示すと思われた.
  • 白澤 文吾, 濱野 公一, 伊東 博史, 郷良 秀典, 加藤 智栄, 藤村 嘉彦, 江里 健輔
    1999 年 28 巻 1 号 p. 30-33
    発行日: 1999/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    移植心において冠動脈硬化病変の抑制に移植時の low dose 放射線照射が有効であるか否かを病理学的所見より検討した. ラット異所性心移植モデルを用い, 移植前のドナー心に7.5Gy, 15Gyの放射線照射を行った. 移植後20日間 cyclosporine A を投与し, 移植後90日目に移植心冠動脈の血管断面積に占める内膜の割合を算出した. 血管断面積に占める組織学的に計測された内膜の割合は対照群23.1%, 7.5Gy群34.3% (p<0.01), 15Gy群37.0% (p<0.01) と対照群に比して有意に内膜肥厚が認められた. 心移植後の冠動脈硬化病変の抑制に移植時の放射線照射は有効ではなかった.
  • 従来の人工血管置換術との比較
    島崎 太郎, 石丸 新, 川口 聡, 小泉 信達, 横井 良彦
    1999 年 28 巻 1 号 p. 34-38
    発行日: 1999/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    腎動脈下腹部大動脈瘤で待機的にステントグラフト内挿術を施行した21例 (SG群) と, Y型人工血管置換術を施行した69例 (OS群) を対象として手術成績を比較検討した. SG群の成功率は21例中16例 (76%) で, 術後2週以内に瘤内血栓化を得た. 入院死亡はSG群で2例 (10%), OS群では1例 (1%) にあり, 死亡率では有意差はみられなかった. 手術時間および出血量は, SG群が各々242分と427mlで, OS群の各々354分, 1,178mlに比し有意に小さかった (p<0.01). また, 経口摂取はSG群で早期に開始することができた. ステントグラフト内挿術は低侵襲であるが, 現時点では確実性の面で人工血管置換術に及ばず, 症例を選び施行するべきであると思われた.
  • 松山 南律, 麻田 邦夫, 近藤 敬一郎, 小玉 敏宏, 蓑原 靖一良, 長谷川 滋人, 澤田 吉英, 岡本 順子, 衣笠 誠二, 岡本 健 ...
    1999 年 28 巻 1 号 p. 39-43
    発行日: 1999/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1981年1月から1996年12月までに, 二葉弁を用いて僧帽弁置換あるいは三尖弁置換を行った281例中10例 (僧帽弁位7例, 三尖弁位3例) に血栓弁を認めた. 血栓弁の原因は, ワーファリン内服不規則1例, 合併疾患などのため内服中止4例, 原因不明5例であった. ウロキナーゼまたは組織プラスミノゲンアクチベータ (tissue Plasminogen Activator; 以下tPA) を用いた血栓溶解療法を行い, 有効5例 (僧帽弁位4例, 三尖弁位1例), 無効5例 (僧帽弁位3例, 三尖弁位2例) であった. 僧帽弁位無効例に再僧帽弁置換術を行ったが, 2例をLOSにて失った. 三尖弁位無効例の1例に血栓除去術を行い, 残り1例は症状なく経過観察中である. 血栓弁の治療は手術が原則であるが, 二葉弁弁葉の固定位置によっては急激な循環動態の悪化を生じない場合もあり, 血栓溶解療法が有効な症例もあると考える. また, 血栓弁の早期診断にドプラー心エコー法が有効であった.
  • 開存率, 患者のQOLからの検討
    原田 俊郎, 中山 健吾, 北野 忠志, 阪口 仁寿, 南 一明
    1999 年 28 巻 1 号 p. 44-49
    発行日: 1999/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1986年2月から1997年11月の間に施行した腋窩-大腿動脈バイパス術50例の, 短期, 長期成績について検討した. 平均年齢は70.3±9.6歳で, 男性45例, 女性5例であった. 対象疾患は閉塞性動脈硬化症41例, Leriche 症候群7例, 大動脈縮窄症2例であった. 追跡期間中の全ての死亡例は22例で, 手術死1例, 病院死2例, 遠隔期死亡19例であった.グラフトの開存性は, 一次開存率で5年・66.4%, 二次開存率で5年・78.3%であった. 下肢切断は71肢中1肢 (1.4%) であった. 遠隔期転帰は生存例について行い, 78.6%の症例で Fontaine 分類上改善を認めた. 術後のQOLでは患者の満足度, 活動状況について検討し, ともに75.0%の症例で良好との回答を得た. 以上のことより, 全身状態不良の症例に対する腋窩-大腿動脈バイパス術は, 開存率, 症状の改善, QOLの向上などからみて, 有用な術式であると考えられた.
  • 脇田 昇, 南 裕也, 尾崎 喜就, 坂田 雅宏, 志田 力
    1999 年 28 巻 1 号 p. 50-52
    発行日: 1999/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    僧帽弁位の Carpentier-Edwards Pericardial Bioprosthesis の使用後に一過性の逆流と溶血を生じた症例を経験したので報告する. 症例は, 69歳女性で手術後より収縮期雑音を認め, 心エコー検査にて生体弁中央からの逆流が認められた. 同時に溶血 (LDHの上昇と貧血の進行) を来し, 再弁置換を考慮したが, 術後12日目に逆流は消失した. 弁縫着時のステントディストーション (stent distortion) によるものと思われるが, 詳細についての報告は少なく, 生体弁置換後の逆流においては鑑別すべき病態と考えられた.
  • 小長井 直樹, 前田 光徳, 佐伯 直純, 中井 宏昌, 工藤 龍彦, 石丸 新
    1999 年 28 巻 1 号 p. 53-55
    発行日: 1999/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    緊急冠動脈バイパス術後に生じた急性腎不全に対し, 持続血液濾過透析 (以下CHDF) による急性期治療を行い, 救命ならびに腎機能の改善を得た. 症例は糖尿病を合併した58歳の男性で, 虚血性心不全を呈し, 緊急にて冠動脈バイパス術を行った. 体外循環の離脱は容易で良好な心機能を得たが, 体外循環開始時から無尿が続いたため, 手術終了5時間後からCHDFを開始した. 循環動態は安定しており, 腎機能も徐々に改善して第7病日にはCHDFから離脱できた. CHDFは循環動態に対する影響が少なく, 高 cytokine 血症に基づく腎障害の増悪を予防する効果もあり, CHDFの早期導入が有効であったと思われた.
  • 山田 靖之, 望月 吉彦, 岡村 吉隆, 飯田 浩司, 森 秀暁, 田渕 賢治, 井上 有方, 杉田 洋一, 嶋田 晃一郎, 中村 譲
    1999 年 28 巻 1 号 p. 56-60
    発行日: 1999/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    他の心血管奇形を合併しない孤立性大動脈弓離断症の7歳男児例を経験した. 生後1カ月より心雑音を指摘されるも心不全症状等ないため放置された. 学校検診にて心電図異常を指摘され精査目的に受診. 上肢左右, 上下肢間での血圧較差を認めた. Magnetic resonance angiography (MRA), 大動脈造影検査より本症の確定診断を得て, 人工血管による大動脈弓再建術を施行した. 術後の血圧較差は消失し経過良好であった.
  • 吉鷹 秀範, 畑 隆登, 津島 義正, 松本 三明, 濱中 荘平, 高本 眞一
    1999 年 28 巻 1 号 p. 61-64
    発行日: 1999/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    近位下行および胸部下行大動脈に嚢状動脈瘤を併発した患者に対して術中直接エコーで大動脈を評価し, その結果に基づき左開胸逆行性脳循環 (RCC) 下 open proximal 吻合法 (OP) にさらに open distal 吻合 (OD) を用いて下行大動脈置換術を行い良好な結果を得た. 症例は62歳, 男性. 近位下行大動脈に45mm, 胸部下行大動脈に60mmの嚢状瘤を認めた. 手術は左開胸でアプローチし, 小型エコープローブを大動脈に直接あてて大動脈壁の性状を評価した. その結果, 左鎖骨下動脈分枝部の大動脈に浮動性の壁在血栓を認めた. 以上より左鎖骨下動脈付近の大動脈に遮断鉗子をかけるのは血栓塞栓症を引き起こす可能性が高いと判断しRCC下OPを行い, さらに末梢側吻合もODで行った. 術後経過は良好であった.
  • 小山 照幸, 舟木 成樹, 北中 陽介, 西村 晃一, 稗方 富蔵, 吉丸 昌秀, 豊川 達記, 川田 忠典, 山手 昇
    1999 年 28 巻 1 号 p. 65-68
    発行日: 1999/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    幼児の医原性両側外腸骨動脈閉塞の症例を経験した. 症例は6歳女児で, 主訴は間歇性跛行と寒冷時下肢痛であった. 既往歴として, 大動脈縮窄複合に対して生後1カ月と1歳3カ月時にそれぞれ右および左大腿動脈穿刺によるカテーテル検査を施行した. 4歳時に縮窄部切除端々吻合術と心室中隔欠損直接縫合閉鎖術を二期的に施行した. 今回血管造影検査時, 大腿動脈を穿刺したところ, 両側外腸骨動脈が閉塞しており, 内腸骨動脈の分枝を側副血行路として大腿動脈が造影された. 成長期に下肢虚血があり, 寒冷時下肢痛があるため, 下肢血行再建の適応とした. 手術は開腹し, 両側とも外腸骨動脈に伴走して, 6mmの expanded polytetrafluoroethylene (ePTFE) グラフトを用いて, 内腸骨動脈と総大腿動脈間に端側吻合によりバイパスを作成した. 術後, 両側とも足背動脈触知可能となり, 自覚症状は消失した. MR-angiogram でもグラフトはよく開存していた.
  • 良本 政章, 宮本 巍, 八百 英樹, 南村 弘佳, 井上 和重, 和田 虎三, 田中 宏衞, 平井 康純, 杉本 智彦, 稲井 理仁
    1999 年 28 巻 1 号 p. 69-72
    発行日: 1999/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    Congenital kinking of the aorta に合併した弓部大動脈瘤の1例を経験した. 症例は31歳, 女性. めまいを主訴に来院した. 大動脈造影検査にて弓部大動脈瘤を認めた. 手術は左第4肋間にて開胸, 大動脈瘤は左総頸動脈の遠位部に存在する嚢状瘤で, 左鎖骨下動脈は大動脈瘤の遠位側より起始していた. 循環停止下に inclusion 法により人工血管置換術を施行した. congenital kinking of the aorta は発生学的な異常に基づいた疾患であり, 左総頸動脈と左鎖骨下動脈の間で弓部大動脈は著明に伸展する. 動脈瘤はこの脆弱な動脈壁より発生するため, 左鎖骨下動脈が動脈瘤の遠位側から分岐していることは本疾患において特徴的な所見である. 手術報告例は本邦では自験例を含め11例あるのみであった. われわれは人工血管置換術を施行し, 術後1年たった現在も良好に経過している.
feedback
Top