日本心臓血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1883-4108
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29 巻, 1 号
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  • 鉢呂 芳一, 菊地 誠哉, 伊藤 真義, 小林 武志, 高橋 一泰, 松井 俊尚, 安倍 十三夫, 佐藤 真司
    2000 年 29 巻 1 号 p. 1-4
    発行日: 2000/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1992年1月から1998年6月まで施行した小児心臓手術 (15歳以下) 501症例のうち, 横隔神経損傷が疑われた症例に対し術直後に横隔神経伝導検査を施行し, 誘発筋電計により複合活動電位が描出されなかった6例 (1.2%) に対し横隔膜縫縮術を施行した. 全症例早期抜管が可能となった. 経皮的電気刺激による横隔神経伝導検査は, 臨床症状および放射線学的検査からは判定の困難な横隔神経機能の直接的な評価が可能であった. 本法は簡便かつ非侵襲的で, 横隔神経麻痺の治療方針の決定および予後判定に有用であった.
  • とくに糖尿病について
    増田 善逸, 畑 隆登, 津島 義正, 松本 三明, 濱中 荘平, 吉鷹 秀範, 藤原 恒太郎, 袖長 安積, 古川 博史, 南 一司
    2000 年 29 巻 1 号 p. 5-9
    発行日: 2000/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    内胸動脈 (IMA) を使用した冠動脈バイパス術 (CABG) 後の縦隔炎について検討した. 過去5年間における当施設での単独CABGは400例であり, その内IMA使用の386例を対象とした. 両側, 片側IMA使用群はおのおの97例, 289例であった. 縦隔炎を (1) 創傷治癒遷延, (2)-(1)創部表層感染と(2)-(2)創部深層感染 (狭義の縦隔炎) に分類した. 狭義の縦隔炎は認めず, 両側, 片側IMA使用各群における縦隔炎の発生率は, おのおの7.2% (7例), 7.3% (21例) であり, 初回, 再手術症例においても有意差を認めなかった. 縦隔炎の発生率は, 糖尿病患者かつ両側IMA使用群では,12.0% (4/33), 片側IMA使用群では, 12.0% (14/117) であり有意差を認めなかった. 同様に非糖尿病患者かつ両側IMA使用群では, 4.7% (3/64), 片側IMA使用群では, 4.1% (7/172) であり有意差を認めなかった. 各IMA使用群において, 糖尿病の合併は非合併の約3倍の創傷治癒遅延の発生率の増加傾向を認めた.
  • 胸骨ないし縦隔感染との関係を中心に
    稲田 洋, 村上 泰治, 正木 久男, 森田 一郎, 田淵 篤, 石田 敦久, 遠藤 浩一, 菊川 大樹, 藤原 巍
    2000 年 29 巻 1 号 p. 10-16
    発行日: 2000/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    われわれの経験した胸部大動脈瘤手術224例のうち, 胸骨ないし縦隔から排膿した13例に, 創部に感染所見なく術後血中から細菌が検出された1例を含めて14例を人工血管感染例として取り上げ検討した. 10例で胸骨ないし縦隔から, 6例で血中から, 細菌が検出された. 14例中13例に対し病変の深達度が浅ければ感染部位の除去を, 深ければ, それに持続洗浄を, また最近では, さらに大網充填を組み合わせる方針で再手術を施行した. 4例が在院死亡となった. 死亡例はすべて血中から細菌が検出されていた. 結局感染が制御され, 退院できたのは10例であった. 本深在性創部感染は, すでに人工血管に感染しているか, その危険性が高度と考えられ, われわれは早急に再手術を施行してきたが, 3例が死亡したことは本合併症の重篤なことを示している. またとくに血中に細菌が認められると非常に危険といえよう.
  • 安元 浩, 中村 都英, 中嶋 誠司, 早瀬 崇洋, 中村 栄作, 福島 靖典, 鬼塚 敏男
    2000 年 29 巻 1 号 p. 17-20
    発行日: 2000/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は59歳男性, 突然の背部痛により近医を受診し, 血管造影にて真性胸部下行大動脈瘤と左鎖骨下動脈から総腸骨動脈分岐部までの DeBakey IIIb型大動脈解離を認めた. また, 左総腸骨動脈は閉塞し, 左下肢の疼痛, チアノーゼが増強したためF-Fバイパスを行った. 3カ月後, 胸部大動脈瘤に対して人工血管置換術を行った. エントリーは瘤内に存在し, 解離は後壁側を中心に3/5周に及んでおり, 真性胸部大動脈瘤に解離を合併したまれな症例であった. 本症は破裂の危険性が高く, 積極的な外科治療が必要である.
  • 山本 平, 細田 泰之, 笹栗 志朗, 高澤 賢次, 後藤 昌弘, 川崎 志保理, 山崎 元成, 佐藤 博, 福田 智信
    2000 年 29 巻 1 号 p. 21-24
    発行日: 2000/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    小切開心拍動下冠状動脈バイパス術 (MIDCAB) が急速に広まり, 内胸動脈を用いた左前下行枝 (LAD) への1枝バイパス術では左前小開胸 (LAST) アプローチが一般的になった. しかし内胸動脈の剥離, 術野の stabilizing, 術後の疼痛などまだ問題点も多い. 当科では手術をより安全・確実に施行するため, また疼痛の軽減を目的として, 胸骨小切開によるMIDCABを4例施行した. 症例は58歳から75歳の男性で, このうち3例がLAD1枝病変で, 1例が脳血流障害を合併した3枝病変であった. 全例手術中に体外循環への移行もなく, 合併症なく終了し, 術後のグラフト造影は全例良好に開存していた. 疼痛の訴えは軽度で創部の問題もなく, 術後5~11病日に全員退院した. 胸骨小切開法はLAST手術に比べ手術手技が容易で, 痛みも少なく美容上も満足できるものであった.
  • 舩津 俊宏, 岸本 英文, 川田 博昭, 三浦 拓也, 上野 高義, 盤井 成光, 小野 正道, 北 知子, 中島 徹, 中田 健
    2000 年 29 巻 1 号 p. 25-28
    発行日: 2000/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    重篤なショック状態に陥った右肺動脈上行大動脈起始の1例に対し, 右肺動脈絞扼術後に修復術を行い救命した. 症例は生後2日目にショック状態で緊急搬送され, 呼吸管理や内科的治療にもかかわらず低血圧, 無尿状態が持続し, アシドーシスが改善しないため, 同日緊急に右肺動脈絞扼術を施行した. 絞扼直後より血圧の上昇, 利尿が得られショック状態を脱した. 修復術は生後48日, 体外循環下で心拍動下に右肺動脈と肺動脈幹の直接吻合を行い経過良好である.
  • 上野 正裕, 森山 由紀則, 井畔 能文, 久富 光一, 戸田 理一郎, 松元 仁久, 小林 彰, 四元 剛一, 福元 祥浩, 平 明
    2000 年 29 巻 1 号 p. 29-32
    発行日: 2000/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    僧帽弁形成術中に生じた急性大動脈解離に対し上行大動脈置換術を施行した1例を報告する. 症例は74歳, 男性. 僧帽弁形成術の体外循環終了後, cardioplegia 針刺入部から出血が持続, 上行大動脈の膨隆, 色調変化が出現した. 経食道心エコーおよび術野からのエコーで上行大動脈から胸部下行大動脈の解離を確認し, 術中大動脈解離の診断を得た. ただちに体外循環を再開し, 超低体温, 循環停止下に上行大動脈置換を行った. 術後経過は順調で, 弓部, 下行大動脈の解離腔も血栓閉鎖していた. 術中大動脈解離は体外循環に伴う稀な合併症であるが, 病態は重篤であり, 迅速な診断と的確な処置が重要である.
  • 依田 真隆, 廣田 潤, 斉藤 聡, 冨岡 秀行, 上杉 英之, 岡村 達, 村田 明, 川合 明彦, 八田 光弘, 小柳 仁
    2000 年 29 巻 1 号 p. 33-36
    発行日: 2000/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    心臓原発の乳頭状弾性線維腫 (papillary fibroelastoma: PFE) は非常に稀な疾患であり, 手術時や剖検時に偶然発見されることが多かった. 最近は心エコーの精度の上昇に伴い他の原疾患の精査中に偶然発見される症例が増えている. 今回, リウマチ性連合弁膜症の経過観察中に偶然心エコーで発見された左室中隔壁発生のPFEを経験した. 症例は50歳, 男性. 10年前よりリウマチ性弁膜症の治療を受けていた. 今回, 微熱と全身の皮疹を主訴に, IE疑いの精査中, 心エコーで左室内異常腫瘤が発生された. 術中所見では, 左室中隔壁に, 直径1cmの無茎性で乳頭状組織を有する腫瘍を認めた. これに対し心内膜と一部筋層を含め切除した. 病理組織学的にはPFEであった. 発生部位から見て弁膜症の血行動態による慢性刺激による過護腫が示唆された. 連合弁膜症に対しDVRとTAPを同時に施行した.
  • 川妻 史明, 大木 伸一, 三澤 吉雄, 布施 勝生
    2000 年 29 巻 1 号 p. 37-40
    発行日: 2000/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    慢性関節リウマチの心病変は無症候性のことが多く治療の対象となることは少ない. とくに慢性関節リウマチに起因した大動脈弁閉鎖不全は比較的稀であり, 文献的にも本邦における報告例はこれまで3例しかない. われわれは, 急性左心不全にて発症した rheumatoid granuloma による大動脈弁閉鎖不全の53歳男性に対し, 大動脈弁置換術を施行し良好な結果を得たので報告する.
  • 近藤 智昭, 草川 均, 秦 紘
    2000 年 29 巻 1 号 p. 41-44
    発行日: 2000/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    右冠動脈から左房に流入する稀な先天性冠動脈瘻の1例を経験した. 症例は45歳女性. 健康診断で心雑音を指摘され, 精査されるにいたった. 選択的冠動脈造影にて, 拡張した右冠動脈と segment 1から左房に交通する太い冠動脈瘻を認め, 右冠動脈-左房瘻と診断, 左室の容量負荷を認めたため手術適応となった. 手術は体外循環下に瘻の結紮切離と, 左房内腔から直視下に瘻流入孔の閉鎖を行った. 術後経過は良好で, 6カ月後の冠動脈造影では, 右冠動脈の入口部は拡張したままであったが, 瘻分岐部まで拡張していた右冠動脈は, 正常径となった.
  • 川田 哲嗣, 亀田 陽一, 多林 伸起, 上田 高士, 木村 通孝, 安川 元章, 谷口 繁樹
    2000 年 29 巻 1 号 p. 45-48
    発行日: 2000/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    胸骨正中切開心拍動下に Octopus 2を用いて, 多枝冠状動脈バイパス (LITA-LAD, SVG-Dx, SVG-4AV) を行い, つづいて腹部大動脈瘤 (最大径6cm), 両側総腸骨動脈瘤人工血管置換術を施行した例を経験したので報告する. 症例は76歳男性. CAGではRCA dominant で, RCA seg. 1: 95%, seg. 2: 25%, LAD seg. 6: 99%, seg. 9: 99%の狭窄を認めた. 手術は, 胸骨正中切開下に左上肺静脈から, 下大静脈の間の心膜に支持糸をかけ, 右胸腔を開放した. 吻合は(1)SVGとDxの吻合,(2)SVG-Dxグラフトの中枢側吻合, (3)LITAとLADの吻合, (4)SVGとAVの吻合, (5)SVG-AVグラフトの中枢側吻合の順で行った. DxおよびLADとの吻合では支持糸を軽く牽引し, AVとの吻合では, 強い牽引により心臓後面を露出させて吻合した. 閉胸後, 腹部正中切開で人工血管置換術を施行した. 術後経過も良好であり, 冠状動脈多枝病変, 腹部大動脈瘤合併例では考慮すべき術式と思われた.
  • 松本 三明, 畑 隆登, 中村 浩己, 津島 義正, 濱中 荘平, 吉鷹 秀範, 篠浦 先, 南 一司, 大谷 悟
    2000 年 29 巻 1 号 p. 49-52
    発行日: 2000/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は11歳, 女児. 内径5mmの動脈管開存症 (PDA) に対して, 胸腔鏡下にクリッピング術を行った. この症例は, 経肺動脈コイル塞栓術の困難症例であった. 手術は片肺換気下に左胸腔に4カ所のポートを作製し, 閉鎖長11mmのチタン製クリップにてクリッピングした. 術中は経食道心エコーを使用し, PDAの位置や残存短絡の有無を確認した. 術後は反回神経麻痺や出血も認めず, 経過は良好で術後9日目に退院した. 胸腔鏡下手術, VATS (video-assisted thoracoscopic surgery) によるPDA遮断術は石灰化のない外径7mmまでの症例に適応でき, 低侵襲かつ確実で術後のQOLも高く優れた手技であると考えられた.
  • 林 載鳳, 川本 純
    2000 年 29 巻 1 号 p. 53-56
    発行日: 2000/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    大動脈弁輪拡張症 (AAE) に対する大動脈基部再建術において, 一般的には人工血管を大動脈弁輪 (hemodynamic ventriculoaortic junction) へ逢着する術式が行われる. 今回われわれは anatomic ventriculoaortic junction を縫合線として composite グラフトを全層縫合する術式を施行し良好な結果を得たので報告した. 症例1は28歳の男性. 症例2は31歳の男性で, 兄弟である. 前者は4度の大動脈弁閉鎖不全を伴った, 大動脈基部径120mmの症例であり, 後者は大動脈基部最大径54mmの症例である. 本術式は, 縫合線が直線のため縫合が簡単であり, 全層縫合であるため縫合が確実な利点がある.
  • 須藤 義夫, 高原 善治
    2000 年 29 巻 1 号 p. 57-59
    発行日: 2000/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    背部痛を主訴に来院した81歳男性例で, CT上真性弓部大動脈瘤を認めたが, 食道後方を通る異常血管が認められ, 右鎖骨下動脈起始異常の合併が疑われた. 背部痛があったので準緊急手術とした. 術前大動脈造影で弓部分枝の状態を確認した. 手術は胸骨正中切開で順行性脳分離体外循環を用い, 弓部全置換を行った. 手術所見で瘤壁の破綻した部分が認められ, 外膜下に血腫ができており切迫破裂の状態であった. 右鎖骨下動脈は起始部の動脈硬化性変化が強かったため気管の前方を通した人工血管と食道の右側で吻合した. 術後経過は順調であった. 右鎖骨下動脈起始異常を合併した症例でも, 弓部置換は胸骨正中切開のみで安全に行うことができた.
  • 金光 尚樹, 岡部 学, 割石 精一郎, 中村 隆澄
    2000 年 29 巻 1 号 p. 60-62
    発行日: 2000/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は50歳男性. 食事, 排便に関係しない腹痛を訴えて来院した. 精査の結果, 上腸間膜動脈 (SMA) の狭窄による腹痛と診断した. 血管造影上は腹腔動脈, 下腸間膜動脈に閉塞, 狭窄所見は認めなかった. しかし, これらの血管と内腸骨動脈からの側副血行路が乏しく症状発現の原因と考えられた. 大伏在静脈グラフトを用いて狭窄部のバイパス術を施行し良好な結果を得たので報告する.
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