日本心臓血管外科学会雑誌
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30 巻, 6 号
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  • 七条 健, 大庭 治, 柚木 継二, 井上 雅博
    2001 年 30 巻 6 号 p. 277-279
    発行日: 2001/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    SJM弁を用いて三尖弁置換術を行った12例の遠隔成績について検討した. 対象は, 男性5例, 女性7例で, 手術時年齢は6~62歳, 平均40±19歳, 15歳以下の小児例は3例で, 術後観察期間は1~16年, 平均11年であった. 早期死亡はなく, 3例が遠隔期に死亡し, 死因は心不全・突然死・再僧帽弁置換術後の術後呼吸不全であり, 累積生存率は5年100%, 10年80%, 15年60%であった. 4例が9~14年10カ月, 平均11年5カ月で再弁置換術を要した. いずれも血栓弁で, 再手術回避率は5年100%, 10年78%, 15年29%であり, 10年以降急速に低下する傾向がみられた. SJM弁による三尖弁置換術後は, 抗血小板剤を併用するなど, 厳重な抗凝固療法が必要であると思われる.
  • 大保 英文, 志田 力, 小沢 修一, 麻田 達郎, 向原 伸彦, 樋上 哲哉, 岩橋 和彦, 山下 輝夫, 小川 恭一
    2001 年 30 巻 6 号 p. 280-284
    発行日: 2001/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1998年までの4年間に, 早期に上行大動脈の解離腔の閉塞を認めたA型解離21例を対象とした. 原則的に降圧療法を行ったが, 上行大動脈径が50mmを超えるかまたは再解離をきたした時点で手術を行った. Entry の部位をCT, 血管造影, 手術所見などから判定し, 症例を DeBakey 分類のI型 (n=8), II型 (n=6), III型の逆行性解離 (IIIR, n=7) に分けて検討を加えた. 急性期死亡は2例あり, 内訳はII型の上行大動脈破裂1例, IIIR型の心房細動に起因する塞栓が1例であった. 発症2週間以内の急性期に4例, 発症2カ月以内の亜急性期に6例が手術となった. 病型はI型, II型が9例で, IIIR型は1例のみであった. 遠隔死亡は2例で, 1例はI型の遠隔期手術死亡, 他の1例は脳梗塞であった. 最長4年での手術の回避率はI型25%, II型21%, IIIR型83% (p=0.07) であった. A型解離は早期血栓閉塞型でも手術を前提として治療するべきであるが, 下行大動脈に明らかに entry を認めIIIR型と判断しうる場合には降圧療法を試みる価値があると考える.
  • 古川 博史, 青見 茂之, 野地 智, 上部 一彦, 木原 信一郎, 栗原 寿夫, 川合 明彦, 西田 博, 遠藤 真弘, 小柳 仁
    2001 年 30 巻 6 号 p. 285-289
    発行日: 2001/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    腹部大動脈瘤を合併した胸部大動脈瘤に対する外科治療の優先順位や手術時期, 手術方法, 補助循環法, 手術成績について検討した. 症例は1982年1月から1999年3月までの24例を対象とした. 治療方針はいっぽうの瘤径の拡大が軽度であれば分割手術を基本とし, 両方に6cm以上の拡大を認めた場合は一期的手術を考慮し, 腹部大動脈瘤が4cm前後であれば経過観察とした. 手術は弓部大動脈瘤では上行大動脈送血を基本とし, 脳保護法としては逆行性脳灌流法を使用した. 病院内死亡は24例中3例 (12.5%) であった. 腹部大動脈瘤を合併した胸部大動脈瘤症例に対し, 人工心肺における順行性送血の使用と aortic no touch technique の使用が脳合併症対策として重要であると考えられた. また, 瘤径に応じた分割手術の選択によって良好な成績が得られたが, 画像診断による厳重な経過観察が必要であった.
  • 無輸血症例と輸血施行症例についての検討
    宮本 和幸, 米永 國宏, 平山 統一, 出田 一郎
    2001 年 30 巻 6 号 p. 290-294
    発行日: 2001/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    当施設で施行された体重15kg以下の小児根治的開心術86例について, modified ultrafiltration (MUF) の効果を無輸血症例 (34例) と輸血施行症例 (52例) とに分け検討した. 無輸血症例, 輸血施行症例ともにMUF施行群は, MUF未施行群に比べて体外循環終了20分後 (MUF終了後) のヘマトクリット値と血清蛋白値を有意に上昇させた. また両群とも, 左房圧を上昇させずに体外循環終了20分後の収縮期動脈圧を上昇させ, 左心機能を改善させた. 輸血施行症例において, MUF施行群はMUF未施行群に比べて大動脈遮断解除6, 12, 24時間後の肺酸素化能 (PaO2/FiO2) を有意に改善させ, 輸血量も少ない傾向にあった. 小児開心術症例において, 無輸血症例, 輸血症例ともにMUFは非常に有用な手段と考えられた.
  • 佐々木 昭彦, 坂田 純一
    2001 年 30 巻 6 号 p. 295-298
    発行日: 2001/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    High risk な89歳の腹部大動脈瘤被覆破裂の患者にステントグラフト内挿術を施行し良好な結果が得られた. 既往歴にASOがあり左I-Fバイパス, F-Fバイパス, 両側F-Pバイパスを受けている. 腹部大動脈瘤は腎動脈から2.5cm末梢に始まり径は4cm, 長さは3.5cmで分岐より中枢4cmで瘤は終わっている. 腹部大動脈の径は20mmで動脈瘤の頭側端より後腹膜腔へ造影剤の漏出がみられた. 30mm径, 長さ7.5cmの3連Zステントを中枢側は約1cmステントを裸にし, 24mm超薄型ウーブングラフトで被覆し中枢と末梢端を固定した. 左大腿動脈の人工血管よりデリバリーシースの先端を腎動脈の直下まで進めて内筒を固定しながら外筒を引き抜きステントグラフトを血管内に留置し, さらに大動脈閉塞バルーンにてステントを拡張固定した. 直後の造影ではリークもなく良好にステントグラフトが造影された.
  • 福田 宏嗣, 宮本 裕治, 高見 宏, 大西 健二
    2001 年 30 巻 6 号 p. 299-301
    発行日: 2001/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は32歳, 女性. 幼児期より心雑音を指摘され, 小学時まで経過観察されていたが以後は放置しており, NYHA II度であった. 31歳時会社検診で心雑音を指摘され当院を受診. 超音波検査にて僧帽弁閉鎖不全を認め手術を勧められたが拒否. 32歳時心不全のため入院となった. 細長体型, くも指, 水晶体亜脱臼, 胸椎側弯を認め Marfan 症候群完全型と診断した. 胸部レ線で心胸郭比74%, 超音波検査で後尖の僧帽弁逸脱を認め高度僧帽弁逆流であった. 胸部CTで上行大動脈の拡大はなかった. 以上から大動脈病変を伴わない孤立性僧帽弁閉鎖不全症の Marfan 症候群と診断し, 機械弁による僧帽弁置換術を施行した. 成人 Marfan 症候群で孤立性僧帽弁閉鎖不全症に対し手術を施行した症例は希であると考えられるので報告する.
  • 四方 裕夫, 坂本 滋, 西澤 永晃, 庄野 真次, 松原 寿昭, 松原 純一
    2001 年 30 巻 6 号 p. 302-304
    発行日: 2001/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は3歳時にファロー四徴症の根治術を受けた15歳男児. 周期性ACTH-ADH放出症候群による反復性嘔吐による瘢痕性食道狭窄のため経口摂取量不十分となり, 12歳時より venous port を右上腕部皮下に埋没し, 穿刺針による経皮的中心静脈栄養管理を行っていた. 最近狭窄症状が強くなり, ブジーによる拡張目的に小児外科に入院. そのさい, 経胸壁心エコーでカテーテル端右房内血栓が発見され, 肺血流シンチグラムで両側多発肺梗塞が判明したため, 右第4肋間開胸, PCPS回路を用いてVf下での右房切開, 血栓カテーテル摘出術を施行した. 本法の有効性と長期留置型カテーテルの合併症に関し若干の知見を得たので報告する.
  • 村田 升, 山本 登
    2001 年 30 巻 6 号 p. 305-307
    発行日: 2001/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    冠状動脈瘻に合併したと思われる冠状動脈瘤破裂の1例を緊急手術を行うことで救命した. 症例は70歳, 女性. 突然ショックとなり搬送された. 心タンポナーデを認めたため緊急手術を行った. 原因は右室流出路の左側に存在した冠状動脈瘤の破裂であり, 周囲の異常血管の存在から冠状動脈瘻に伴う冠状動脈瘤が最も疑われた. 体外循環下に瘤内から流入, 流出血管を閉鎖した, 瘤を縫縮し, さらに異常血管を結紮した. 術後の冠状動脈造影では冠状動脈瘻は認めなかった.
  • 木地 達也, 山口 明満, 熊野 浩
    2001 年 30 巻 6 号 p. 308-310
    発行日: 2001/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    Freestyle 弁を用いたAVR後にPVLをきたし, 術後7カ月目に再弁置換を行った1例を経験した. 症例は67歳の男性. 1999年3月, ARのためAVR施行. Freestyle 弁を complete subcoronary 法により移植した. 術後 trivial ARを認めたが, 無症状に経過していた. 同年7月より心雑音が増強し, 労作時呼吸困難も出現したため再入院. 大動脈造影でIII度のPVLを認めたため10月に機械弁による再弁置換を施行した. 人工弁は自己右冠尖の中枢側吻合が2針カッティングを起こしていた. Subcoronary 法で Freestyle 弁を移植するさいに最も重要なことは geometry を崩さないことであり, 無理な縫着は術後PVL発生の原因となりうるので細心の注意が必要である.
  • 中島 恒夫, 北原 博人, 河野 哲也, 太田 敬三, 高野 環, 長谷川 朗, 後藤 博久, 中野 博文, 黒田 秀雄, 天野 純
    2001 年 30 巻 6 号 p. 311-313
    発行日: 2001/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は52歳, 男性. 抗リン脂質抗体症候群 (APS), 慢性腎不全, 重症筋無力症に対する加療中に発症した急性大動脈解離 (DeBakey I型) に対し, 当科で上行弓部大動脈人工血管置換術を施行した. 無尿に対し, 術直後から腹膜透析を行い有効であった. 術後2日目 (2POD) に一度抜管したが, 9時間後に再挿管し, 3PODに再抜管した. APSの再燃に対しステロイドを増量したが, サイトメガロウイルス感染から敗血症, DIC, 多臓器不全を併発し, 74PODに死亡した. APSのなかには治療抵抗性の群もあり, ステロイド増量による日和見感染には厳重な対策が重要である.
  • 中島 恒夫, 中野 博文, 渡辺 邦芳, 高野 環, 長谷川 朗, 後藤 博久, 北原 博人, 黒田 秀雄, 天野 純
    2001 年 30 巻 6 号 p. 314-316
    発行日: 2001/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は63歳男性. 1980年から高γグロブリン血症を伴う多発性単神経炎で加療中だったがしだいに増悪し, 1992年には独歩困難となった. 1997年2月28日, 排便後に呼吸困難を自覚した. 翌日の心臓超音波検査で右房から右室に連続する血栓と胸部CTで左右肺動脈に血栓を認め, 急性肺動脈血栓塞栓症と診断, 体外循環下に緊急血栓除去術を施行した. 血栓は, 右房右室内にはなく, 左右肺動脈内に存在した. 術後に行った下肢静脈造影で右総腸骨静脈に血栓を認めたため, IVC内に Greenfield filter を留置した. 術後経過は良好で, 現在まで再発を認めていない. 本例は長期臥床による深部静脈血栓が直接の原因と考えられるが, 高γグロブリン血症による hyperviscosity が血栓の形成に関与した可能性が示唆された.
  • 小林 正洋, 伊従 敬二, 進藤 俊哉, 神谷 喜八郎, 多田 祐輔
    2001 年 30 巻 6 号 p. 317-320
    発行日: 2001/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    上腸間膜動脈閉塞を合併した急性大動脈解離 (DeBakey I型) で上行大動脈置換術後4日目に腹痛, 下血にて腸管虚血を発症した症例に対して, 右内腸骨-上腸間膜動脈バイパス術を施行した. その後も腹痛, 下痢が軽快せず second look, third look の意味で2回の開腹術を行い, 腸管壊死のないことを確認した.
  • 篠永 真弓, 金沢 宏, 中澤 聡, 氏家 敏巳, 山崎 芳彦, 織田 暁寿, 木下 秀則, 広瀬 保夫
    2001 年 30 巻 6 号 p. 321-323
    発行日: 2001/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は80歳, 男. 屋根から転落し受傷. 造影CTで前縦隔血腫, 弓部大動脈の内膜亀裂と仮性動脈瘤が認められ, 頸椎・腰椎骨折, 両肺挫傷, 血気胸を合併した胸部大動脈損傷と診断した. 呼吸不全と脊椎骨骨折の固定化のため術前人工呼吸器管理を行い, 受傷後12日目に手術を行った. 鎖骨下動脈起始部の大動脈内膜が半周にわたって断裂, 解離しており, 選択的脳灌流・低体温循環停止を併用して弓部置換術を施行した. 救命したが, 術後も呼吸不全が遷延した. 脳梗塞を併発したが全身状態は改善し, 130病日リハビリのために転院した.
  • 星野 祐二, 岩谷 文夫, 猪狩 次雄, 佐戸川 弘之, 小野 隆志, 高瀬 信弥, 佐藤 一也, 三澤 幸辰, 渡邊 俊樹
    2001 年 30 巻 6 号 p. 324-326
    発行日: 2001/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    左冠状動脈肺動脈起始症 (ALCAPA) のなかでも非常に希な大動脈壁内走行を呈した5歳女児例を経験した. 4歳時に初めて心雑音を指摘され, 心エコー検査にて僧帽弁閉鎖不全症, 左右の冠状動脈の拡張, および左冠状動脈の肺動脈起始を認めた. 右冠状動脈造影にて逆行性に造影された左冠状動脈は, 特徴的な走行を呈して肺動脈に開口しており, 大動脈壁内走行が疑われた. 術中, 大動脈壁内に流入する左冠状動脈を認めたため, 大動脈内腔より左冠状動脈を大動脈に開窓させる術式を選択した. 術後経過は良好で, 術後の造影では大動脈より左右両側の冠状動脈の灌流を認め, 狭窄病変なども認めなかった.
  • 緒方 孝治, 土屋 幸治, 小澤 英樹, 佐々木 英樹, 日比野 成俊
    2001 年 30 巻 6 号 p. 327-330
    発行日: 2001/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は40歳男性. 上行大動脈の全周性高度石灰化を伴う冠動脈2枝病変と Leriche 症候群を合併していた. 上行大動脈および大腿動脈は体外循環の送血カニューレの挿入部位として不適切であり, 通常の体外循環の確立は困難と考えられた. したがって, 手術は, 万一の体外循環への移行に備え, 下肢血行再建用の人工血管を右腋窩動脈にあらかじめ吻合しておいてから off pump CABGを行った. その後で下肢血行再建を完成させた. 術後の経過は良好であった. 上行大動脈に石灰化を伴いかつ, 下行大動脈以下に狭窄病変を合併する症例に対し off pump CABG は有用である.
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