日本心臓血管外科学会雑誌
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32 巻, 6 号
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  • 木山 宏, 今関 隆雄, 入江 嘉仁, 村井 則之, 垣 伸明, 権 重好, 斎藤 政仁, 汐口 壮一
    2003 年 32 巻 6 号 p. 325-328
    発行日: 2003/11/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    低侵襲を目的に10cm以下の皮膚小切開,腹膜外到達法で,腹部大動脈領域の手術を行い,その手術成績を検討した.2001年5月から2002年3月までに10cm以下の皮膚小切開,腹膜外到達法で試みた腹部大動脈瘤11例,総腸骨動脈瘤2例,閉塞性動脈硬化症5例の合計18例を対象とした.1例は皮膚切開を延長したが,そのほかの17例は皮膚切開を6~10cm(平均8.3±1.4cm)で手術を完遂させた.手術時間,出血量の平均値はそれぞれ275.2±62.9分,968.5±473.8mlで,歩行開始と経口摂取開始の平均値はそれぞれ1.4±0.9日と1.6±0.5日だった.全例が手術室で抜管し,入院期間中は無他家血輸血で経過した.イレウスなどの重篤な合併症はなく,平均12.8±5.6日の術後入院期間で,全例軽快退院した.皮膚小切開,腹膜外到達法で行った腹部大動脈領域の手術は有効な低侵襲手術と考えられた.
  • Semi-skeletonization法との比較
    青木 淳, 大崎 悟
    2003 年 32 巻 6 号 p. 329-332
    発行日: 2003/11/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    左内胸動脈の術中グラフト流量と術後造影によるグラフト径をsemi-skeletonization法とskeletonization法の二つの採取法で比較した.対象は1999年10月から2年6ヵ月の間にLITA-LAD吻合が行われた52例で,semi-skeletonization法が23例(Semi群)に,skeletonization法が29例(Skeleton群)に行われた.グラフト流量はCardio Med Flowmeter BF1001により閉胸直前に計測し,グラフト径は術後平均16日目に行われた冠動脈造影により計測した.結果はグラフト流量がSemi群36.9±12.8ml/min,Skeleton群50.4±21.7ml/minとSkeleton群で有意に多かった(p=0.019).グラフト径はSemi群2.38±0.42mm,Skeleton群2.46±0.44mmと有意差を認めなかった.これらの採取方法はLITAをより長く使用しうるが,吻合部直前のグラフト径に有意差を認めなかったことからその程度は同程度と考えられた.しかし,術中流量はSkeleton群で有意に多く,採取時に生じるspasmはSkeleton法のほうが少ないと推測された.
  • 西村 好晴, 東上 震一, 森 俊文, 岩橋 正尋, 畑田 充俊
    2003 年 32 巻 6 号 p. 333-336
    発行日: 2003/11/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    腹部大動脈瘤(AAA)手術症例における周術期の血中心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP),脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)値の変動からみた心機能の評価につき検討を行った.AAA手術症例34例を対象とし,虚血性心疾患を合併した群(IHD合併群:22例)と非合併群(12例)の2群に分類した.ANP,BNP値を術前,術後1日目,術後2日目に測定した.全症例でANP,BNP値は術後有意に上昇した(p>0.05).IHD合併群ではANP,BNP値ともにいずれの時期でも非合併例より高値を示した(p<0.05).ANP,BNP値の変化からみてAAAの周術期には心筋への負荷が認められ,術後管理に注意を要すると思われた.
  • 破裂後非手術例を含めた検討
    藤原 等, 菅野 隆彦, 染谷 毅
    2003 年 32 巻 6 号 p. 337-342
    発行日: 2003/11/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    8年間に手術を受けた腹部大動脈瘤139例(非破裂107例,破裂後32例)を,患者年齢の高齢化に注目して分析した.また,同時期に破裂性腹部大動脈瘤と診断された,非手術例10例を分析した.手術例では80歳未満100例と80歳以上39例との間に,手術死亡率は待機手術(0%対0%),破裂後手術(28.5%対13.3%)とも差がなかった.しかし,破裂後手術は各群に16例あり,80歳未満群の16.0%に対して,80歳以上では41.0%を占め,有意に高率だった.破裂以前に動脈瘤と診断されていたのは10例のみであり,破裂後手術では,未診断の場合より死亡率は低い傾向にあった.同期間中に,破裂後蘇生困難な心肺停止4例,主として他疾患による衰弱を理由として4例を手術非適応とし,ほかに2例が剖検時に破裂による死亡と診断された.高齢者の腹部大動脈瘤では,若年者と同様に待機手術で安全に手術しうることから,破裂以前に発見する啓蒙と積極的治療が肝要である.破裂後に手術非適応とするさいは,破裂前後の診療情報を基に,慎重に決定すべきである.
  • 渋谷 卓, 川崎 富夫
    2003 年 32 巻 6 号 p. 343-346
    発行日: 2003/11/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は59歳,男性.早朝より誘因のない腹部圧迫感,背部痛が出現したため来院した.膵炎,腹部手術および外傷の既往はなかった.腹部造影CTで膵頭部背面の造影される腫瘤を認め,血管造影により上前膵十二指腸動脈領域の動脈瘤破裂と診断した.血管内治療により塞栓術を試みたが病変部のみの塞栓は困難であり,腹腔動脈幹は描出されず,虚血による甚大な臓器障害が懸念されたため中止し,緊急手術を行った.Kocherの授動術を行い十二指腸外側より進入し,膵背面から出血点をコントロールした.そののち血腫を除去し,出血点を直視下に確認し病変部のみを縫合止血した.膵頭部,肝臓など周辺臓器の血流は十分に保たれていたため血行再建などの追加手術を行わなかった.術後経過は良好である.後腹膜血腫の診断には造影CTが有用であったが,確定診断には血管造影が必要であった.膵十二指腸動脈領域の動脈瘤は虚血による灌流領域臓器の障害が重篤となりやすいため,術式の選択にはこの点を十分考慮する必要がある.
  • 福村 文雄, 安藤 廣美, 梅末 正芳, 長野 一郎, 朴 範子, 谷口 賢一郎, 木村 聡, 田中 二郎, 中村 権一
    2003 年 32 巻 6 号 p. 347-349
    発行日: 2003/11/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    腹部大動脈瘤術後早期のMRSAグラフト感染に対して,閉鎖式カテーテル洗浄ドレナージが有効であった2例を経験した.症例1は,71歳男性で術後11日目から高熱を認め,グラフト周囲貯留液穿刺からMRSAを検出し,CTガイド下に6Frカテーテルを留置した.症例2は,77歳男性で術後2日目から高熱出現し,5日目から閉鎖式ドレーン抜去部から排膿ありMRSAを認め,右後腹膜経路でY-graft右脚部から洗浄用チューブを留置した.2例とも0.5%ポピドンヨード液と生理食塩水による閉鎖式間欠的洗浄およびバンコマイシンの局所注入を行った.抗生剤の全身投与を継続し,2例とも約4ヵ月後に治癒退院した.それぞれ退院後2年および1年3ヵ月を経過し再燃を認めていない.閉鎖式カテーテル洗浄ドレナージ法は,腹部大動脈瘤術後のグラフト感染に対し,有用な治療法であった.
  • 過去20年の文献的考察を含めての検討
    國重 英之, 村下 十志文, 大岡 智学, 加藤 裕貴, 上久保 康弘, 安田 慶秀
    2003 年 32 巻 6 号 p. 350-354
    発行日: 2003/11/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    末端肥大症における心血管系の合併症として心肥大,高血圧などが知られているが,弁膜疾患の報告は希である.末端肥大症に合併した僧帽弁閉鎖不全症に対し弁形成術を行った症例を経験したので,過去20年の文献検索を行い末端肥大症と弁膜疾患の因果関係,外科治療について考察した.症例は62歳,女性.57歳時,顔面四肢の浮腫が出現し近医にて急性心不全と診断された.理学所見,内分泌学的精査から末端肥大症と診断され,脳MRIにて下垂体腫瘍が認められたため,58歳時に下垂体腫瘍摘出術が施行された.そのときの心エコーでは中等度の左室機能低下があるものの弁機能異常は認めなかった.62歳時心雑音を指摘され,心エコーにて僧帽弁後尖逸脱による逆流を認め手術を施行した.後尖の腱索断裂部を切除し同部を縫合後,弁輪形成術を行った.病理所見では著明な粘液様変性を認めるも,酸性ムコ多糖の沈着は認めなかった.過去20年の文献検索から,末端肥大症における弁膜疾患の手術報告例は21例で,僧帽弁,大動脈弁病変が各10例,僧帽弁兼大動脈弁病変が1例であった.僧帽弁病変は全例閉鎖不全症であり腱索断裂によるものが多く,大動脈弁は7例が閉鎖不全症,3例が狭窄症であった.病理所見からは,GH過剰による酸性ムコ多糖類沈着を認める例は少なく,粘液様変性といった非特異的な所見のみであった.僧帽弁手術では,1990年代までは末端肥大症における僧帽弁の脆弱性などを考慮し弁置換術が選択されていたが,最近の報告では,弁形成術が施行されており現在のところ再発の報告はない.
  • 水元 亨, 安達 勝利, 畑中 克元, 木下 肇彦
    2003 年 32 巻 6 号 p. 355-357
    発行日: 2003/11/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は86歳,女性.2002年1月14日,胸痛および発語障害,左不全麻痺が出現し近医を受診し,脳梗塞の診断にて入院となる.1月18日,胸部CT検査にて,解離性大動脈瘤(DeBakey II型)と診断され当院へ搬送された.精査にて,虚血性心疾患・慢性閉塞性動脈硬化症(ASO)の合併が認められた.脳梗塞合併のため慢性期に手術を行うこととし,3月12日上行大動脈置換術・冠動脈バイパス術・両側大腿動脈バイパス術を施行した.術後経過は良好で術後23日目に退院した.
  • 大音 俊明, 塚越 芳久, 浮田 英生
    2003 年 32 巻 6 号 p. 358-361
    発行日: 2003/11/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は生来の脳性麻痺があり12歳時に気管切開術を受けている18歳の男性であり,気管腕頭動脈瘻による大量の気管内出血に対して2度の緊急手術を行った.初回手術では胸骨正中切開にて,気管と腕頭動脈に生じた瘻孔をそれぞれ直接閉鎖した.再出血予防を意図して両者の接触面には胸鎖乳突筋の有茎皮弁と自己心嚢膜を間置したが,術後20日目に再出血を生じた.第2回手術では出血の再発を避けるため腕頭動脈の離断術を行った.術野が汚染野であることを考慮し縫合糸以外の人工物は一切使用しなかったが,術後2年の時点で創部皮下膿瘍を生じた.幸い膿瘍腔は縦隔内には達しておらず切開排膿と抗生剤の投与にて軽快した.気管腕頭動脈瘻は外科的処置なしには救命不能であるが,再出血および感染に関する合併症により予後はきわめて不良である.術式には直接閉鎖,人工血管置換,単純離断などがあるが,出血に関しては初回手術時から離断術を行っておくべきであったと思われた.感染に関しては自己心嚢膜を利用し,縫合糸以外の人工物は用いない術式が有効と思われた.気管腕頭動脈瘻は緊急手術を余儀なくされるが,術後の再出血と感染に対する予防を十分配慮したうえで術式を選択すべきである.
  • 鴛海 元博, 石井 信一, 長沼 宏邦, 墨 誠, 橋本 和弘
    2003 年 32 巻 6 号 p. 362-365
    発行日: 2003/11/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    腎動脈下腹部大動脈瘤手術の脊髄虚血の合併はまれで,待機例で0.1~0.2%,破裂例ではその約10倍とされるが,われわれの調べえた限りでは本邦では破裂例の症例報告が散見するのみである.今回,待機的腎動脈下腹部大動脈瘤手術にて対麻痺合併症例を経験した.死亡率が高く,またリハビリテーション以外有効な治療法がないことからきわめて重篤な合併症である.脊髄虚血の予防は,できるだけ大動脈遮断時間を短くすること,radicular artery magnaが腎動脈以下にあったとしてもほかのradicular arteryや側副血行路から十分な血流を供給できるように術中後を通じ血圧を十分保つことが重要であると考えられる.
  • 横山 幸房, 玉木 修治, 加藤 紀之, 横手 淳, 六鹿 雅登, 大畑 賀央
    2003 年 32 巻 6 号 p. 366-369
    発行日: 2003/11/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    大動脈弁尖が大動脈壁と癒合し,冠動脈起始部を閉塞したと思われるまれな症例を経験したので報告する.症例は75歳,女性.労作時の胸痛を主訴に入院精査された.大動脈弁狭窄,左冠動脈起始部異常と診断され手術となった.手術所見では,大動脈弁は三尖弁であったが,左冠尖が大動脈壁と癒合し嚢胞を形成していた.この嚢胞に直径約1.5mmの小口が存在し,ここから左冠動脈への血流が維持されていた.嚢胞を切開,切除すると底部に左冠動脈主幹部がほぼ正常に開口していた.大動脈弁を切除後,人工弁置換術を施行した.術後経過は良好で,狭心症状もなく軽快退院した.
  • 内川 伸, 村田 升, 林 和秀
    2003 年 32 巻 6 号 p. 370-373
    発行日: 2003/11/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    冠動脈二枝病変をもつ重度糖尿病患者に対し,ステント挿入術後,動脈穿刺部に止血ディバイスを用いた.その後,右大腿動脈MRSA感染,動脈破裂をきたしたため,大伏在静脈を用いて血管形成術を施行した.しかし,動脈感染は制御不能となり再動脈破裂をおこしたため,閉鎖孔バイパス術と厳重な血糖管理を行い改善にいたった.大腿三角部重症感染に対し,閉鎖孔バイパス術は有用であったとともに,患者背景の熟知,基礎疾患の十分な管理下に先進諸治療はなされるべきである.
  • 西田 洋文, 高原 善治, 茂木 健司, 櫻井 学
    2003 年 32 巻 6 号 p. 374-377
    発行日: 2003/11/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は53歳の女性.乗用車で停車中の大型トラックに衝突し受傷した.半昏睡の状態で事故発生より30分後当センターへ搬送された.来院時胸部X線撮影で上縦隔の拡大を認め,胸部造影CTにて外傷性大動脈損傷と診断した.しかし,左側脳室内に外傷性の脳出血も併発していたため,降圧療法による全身管理を先行した.受傷後2日目に頭部CTにて脳出血が止血されていることを確認し,受傷後3日目,低体温循環停止下に下行大動脈置換術を施行した.術後脳合併症を起こすことなく救命することができ,術後44日目に独歩退院した.他臓器損傷を伴う場合の外傷性胸部大動脈損傷の手術適応とその時期および手術法について,文献的考察を加え報告する.
  • 村山 順一, 濱田 正勝, 麓 英征
    2003 年 32 巻 6 号 p. 378-381
    発行日: 2003/11/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は41歳,女性.胸痛と呼吸苦を主訴に来院.CTにて慢性B型三腔解離に重複した急性A型解離と診断し,緊急手術を施行した.右腋窩動脈の内腔が狭小化していたため,大腿動脈からのみ送血し,上行大動脈を人工血管にて置換した.病理組織上,中膜壊死や血管炎などの所見は認めなかった.経過は良好で,現在外来で二期手術に対し経過観察中である.三腔解離は通常の解離と比べ残存解離腔の拡大をきたしやすく,また破裂の可能性も高いとされており,可及的早期の二期手術が必要である.三腔構造を伴う重複大動脈解離に対する手術を行うさいには,malperfusion防止のため主要分枝の分岐の確認と,体外循環の送血部位の選択が重要である.
  • 顔 邦男, 脇田 昇, 坂田 雅宏, 井上 亨三
    2003 年 32 巻 6 号 p. 382-384
    発行日: 2003/11/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は92歳の女性で心不全を契機に重症の大動脈弁狭窄症と診断された.心不全に対する内科的治療の後も軽労作にて容易に浮腫を生じるため手術を勧められた.本人,家族の強い希望に加え,心臓超音波検査上の左室収縮能は維持されており,全身状態も良好と判断されたため大動脈弁置換術を施行した.術後-過性のrapid afとなった以外は経過良好で術後25日目に軽快退院した.超高齢者というだけで手術を避けるべきではないと考える.
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