従来,人工弁機能の指標として圧較差(PG)と有効弁口面積(EOA)などが使用されてきたが,これらはエネルギー損失や仕事量の増加を正確には示していない.今回,SJM弁による大動脈弁置換術施行40例(19HP6例,21mm16例,23mm14例,25mm4例)を対象に,これらの指標とGarciaらが提唱したエネルギー損失指数(ELI)のを超音波検査にて測定し,弁機能を検討した.手術から今回の検討までの期間は平均6.2±4.6年であった.術前後の比較では左室心筋重量,SV1+RV5,左室後壁厚が有意に減少したが,これらの減少率は人工弁のサイズによる差を認めず,左室に対する負荷の減少程度は同じであった.左室流出路径(19HP:18±2mm,21mm:21±2mm,23mm:23±4mm,25mm:27±3mm,
p<0.01),体表面積(19HP:1.5±0.2m
2,21mm:1.5±0.2m
2,23mm:1.7±0.1m
2,25mm:1.8±0.1m
2,.
p<0.01),EOA(19HP:1.2±0.4cm
2,21mm:1.9±0.7cm
2,23mm:2.2±0.9cm
2,25mm:3.5±1.1cm
2,
p<0.01)に人工弁のサイズによる有意差を認めたが,ELI(19HP:1.01±0.41cm
2/m
2,21mm:1.87±1.03cm
2/m
2,23mm:1.83±1.09cm
2/m
2,25mm:3.08±1.21cm
2/m
2,
p=0.055)には差を認めなかった.小口径人工弁は有意に左室流出路径や体表面積が小さい症例に用いられ,EOAは小さいが有効な左室肥大や心筋重量の減少を認めた.適切な症例の選択を行えば小口径人工弁による大動脈弁置換でも良好な弁機能であり,エネルギー損失も少なかった.ELIは人工弁の機能評価に有効であると思われた.
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