日本心臓血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1883-4108
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33 巻, 2 号
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  • 山口 敦司, 野口 権一郎, 安達 秀雄, 川人 宏次, 村田 聖一郎, 井野 隆史
    2004 年 33 巻 2 号 p. 73-76
    発行日: 2004/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    冠動脈疾患(IHD)を有する腹部大動脈瘤(AAA)症例に対するわれわれの治療戦略を明らかにするとともに,その治療の妥当性について検証した.1990年1月~2001年11月の間に自治医大大宮医療センターで手術適応とされたAAA待機手術症例388例のうち,術前に冠動脈造影(CAG)を施行した382例(98.5%)を対象とした.CAGの結果IHDと診断された124例のうち46例(D群;12.0%)は,薬物治療のみにてAAA手術の周術期管理を行った.冠血行再建が必要とみなされた78例(20.4%)のうち,PCI適応例(P群;18例)にはPCIを先行させたのちAAA手術を施行した.冠動脈バイパス手術(CABG)適応例において大動脈瘤径が6cmを超える症例(C群;24例)ではon-pump CABG(13例)あるいはoff-pump CABG(11例)との同時手術を施行し,瘤径が6cm以下の症例(S群;36例)ではCABGを先行し二期的手術の方針とした.IHD合併例のAAA術後死亡率は1.6%(2/124例)であり,内訳はD群,P群各1例ずつで,C群,S群での死亡はなかった.非IHD合併例の死亡率は1.2%(3/258例)であった.心筋虚血が証明されたIHD症例においては,AAA手術に先行してIHDの治療を行うことによって手術危険率を軽減するものと思われる.大動脈瘤径が6cmを超えたCABG適応症例についてはoff-pump CABGを念頭においた同時手術を考慮すべきである.
  • Energy loss indexにも着目して
    中村 都英, 矢野 光洋, 矢野 義和, 斎藤 智和, 新名 克彦, 古川 貢之, 榎本 雄介, 西村 正憲, 鬼塚 敏男
    2004 年 33 巻 2 号 p. 77-80
    発行日: 2004/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    従来,人工弁機能の指標として圧較差(PG)と有効弁口面積(EOA)などが使用されてきたが,これらはエネルギー損失や仕事量の増加を正確には示していない.今回,SJM弁による大動脈弁置換術施行40例(19HP6例,21mm16例,23mm14例,25mm4例)を対象に,これらの指標とGarciaらが提唱したエネルギー損失指数(ELI)のを超音波検査にて測定し,弁機能を検討した.手術から今回の検討までの期間は平均6.2±4.6年であった.術前後の比較では左室心筋重量,SV1+RV5,左室後壁厚が有意に減少したが,これらの減少率は人工弁のサイズによる差を認めず,左室に対する負荷の減少程度は同じであった.左室流出路径(19HP:18±2mm,21mm:21±2mm,23mm:23±4mm,25mm:27±3mm,p<0.01),体表面積(19HP:1.5±0.2m2,21mm:1.5±0.2m2,23mm:1.7±0.1m2,25mm:1.8±0.1m2,.p<0.01),EOA(19HP:1.2±0.4cm2,21mm:1.9±0.7cm2,23mm:2.2±0.9cm2,25mm:3.5±1.1cm2,p<0.01)に人工弁のサイズによる有意差を認めたが,ELI(19HP:1.01±0.41cm2/m2,21mm:1.87±1.03cm2/m2,23mm:1.83±1.09cm2/m2,25mm:3.08±1.21cm2/m2,p=0.055)には差を認めなかった.小口径人工弁は有意に左室流出路径や体表面積が小さい症例に用いられ,EOAは小さいが有効な左室肥大や心筋重量の減少を認めた.適切な症例の選択を行えば小口径人工弁による大動脈弁置換でも良好な弁機能であり,エネルギー損失も少なかった.ELIは人工弁の機能評価に有効であると思われた.
  • Power WebTM systemの多施設臨床治験成績
    石丸 新, 川口 聡, 星野 俊一, 緑川 博文, 小出 司郎策, 志村 信一郎, 江里 健輔, 善甫 宣哉, 青柳 成明, 田中 厚寿
    2004 年 33 巻 2 号 p. 81-86
    発行日: 2004/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    全国5施設において,腎動脈下腹部大動脈瘤を対象に分岐型ステントグラフト(SG)であるPower WebTM system(Endologix社,USA)を用いて待機的治療を実施した.治療は適応判定委員会によって選択された症例につき,各施設のIRBが承認した説明と同意手順のもとに施行された.対象60例(うち男性53例)のSG運搬成功率は96.7%であった.術中にtype Iのエンドリーク(EL)を2例に認め,技術的成功率は93.3%であった.手術時間は193±55分,出血量は440±240gで,対照とした人工血管置換手術97例(うち男性83例)のおのおの303±88分,1,496±2,025gと比較し有意に短時間,少量であった.退院時または術後1ヵ月のCTで4例にEL(type I3例,type II1例)を確認した.Type IのELは,SG固定部が短く,かつ屈曲した症例にみられた.左腎動脈閉塞と,内腸骨動脈閉塞による一過性の臀筋痛を各1例に認めたが,入院死亡はなかった.術後6ヵ月では,他病死1例と追跡不能1例を除いた56例のうち1例にSGの脚閉塞を認めたが,ほかに新たなELや重篤な有害事象の発生はなかった.瘤径は縮小26例,不変30例で,拡大例はなかった.Power WebTM systemは腹部大動脈瘤に対する低侵襲治療として臨床使用可能なSGであり,今後の長期間にわたる成績が待たれる.
  • MKステントの使用経験
    赤坂 純逸, 熊谷 紀一郎, 田林 晄一
    2004 年 33 巻 2 号 p. 87-89
    発行日: 2004/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    高度他臓器障害を合併した遠位弓部大動脈瘤症例に対しMKステント(Matsui-Kitamura stent-graft)を使用し,良好な結果を得たので報告する.対象症例は3例で,年齢は52~76歳であり,うち1例は重度の肺機能障害,ほかの2例は高度の腎機能障害を合併していた.手術は胸骨正中切開を行い,左心バイパスによる弓部分枝灌流下に上行大動脈と弓部3分枝のバイパス術を施行した.弓部3分枝中枢断端の縫合閉鎖後,経カテーテル的にMKステントを留置した.全例でステント内腔は良好に保たれ,endoleak,migrationはなかった.ハイリスクを有する遠位弓部大動脈瘤に対する左心バイパス下弓部3分枝バイパス後のMKステント留置術は有用な方法である.
  • 坂口 尚, 國友 隆二, 出田 一郎, 片山 幸広, 平山 亮, 川筋 道雄, Mutsuo Tanaka
    2004 年 33 巻 2 号 p. 90-93
    発行日: 2004/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    全身性エリテマトーデス(SLE)に合併した冠動脈病変に対する冠動脈バイパス術(CABG)を報告する.症例は24歳女性,SLEに対しステロイドおよび免疫抑制剤を使用されていた.安静時の胸部圧迫感が出現し,冠動脈造影で,左前下行枝(7番)の完全閉塞があり,右冠動脈より側副血行路を認めた.左回旋枝(11番)に90%狭窄を認めた.狭心症発作が頻発したため,両側内胸動脈を用いたCABGを施行した.3D-CTによる術後検査にてグラフトは開存しており,経過は良好であった.今後も,ステロイド,免疫抑制剤の継続のもと,十分な経過観察が必要である.
  • 花田 智樹, 大保 英文, 森本 直人, 松久 弘典, 圓尾 文子, 南 裕也, 中桐 啓太郎, 吉田 正人, 向原 伸彦, 志田 力
    2004 年 33 巻 2 号 p. 94-97
    発行日: 2004/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は81歳,女性.不安定狭心症に対するoff-pump CABG術後に腹痛を生じ,術翌日の腹部X線およびCTにて麻痺性イレウスの所見を認めた.緊急試験開腹術を行ったが,腸管には明らかな虚血を認めなかった.以後も腹痛が改善しないため,腹部血管造影を行ったところ,上腸間膜動脈(SMA)の高度の攣縮を認めた.このため非閉塞性腸管虚血(nonocclusive mesenteric ischemia: NOMI)と診断し,SMAへの塩酸パパベリン持続動注を開始した.動注開始後,血管造影では攣縮の著明な改善を認めたが,12日目に腸管壊死による穿孔性腹膜炎を生じたため,広範囲小腸切除,S状結腸切除を余儀なくされた.腸切除後は呼吸不全のため人工呼吸器からの離脱が困難となり,約5ヵ月後に多臓器不全にて死亡した.人工心肺を使用しないoff-pump CABG術後でもNOMIを発症する可能性があるため,術中の良好な血行動態の維持,注意深い術後管理,早期診断,治療が必要と考えられた.
  • 古澤 武彦, 和田 有子, 瀬戸 達一郎, 中島 恒夫, 高野 環, 北原 博人, 塩沢 丹里, 天野 純
    2004 年 33 巻 2 号 p. 98-101
    発行日: 2004/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    Intravenous leiomyomatosis (IVL)は子宮平滑筋腫が静脈内に伸展した疾患で,比較的まれな疾患である.組織学的には良性であるが,心臓まで達したものは体外循環使用下に摘出手術が必要となる.症例は50歳の女性で,失神発作を主訴に来院した.心臓超音波検査で下大静脈から心臓内に達する多房性の腫瘍が認められ,造影CTでは子宮の左側から卵巣静脈,左腎静脈,下大静脈に伸展し肺動脈内に達する内部不整の腫瘍が認められた.手術は心臓血管外科,消化器外科,婦人科の合同チームで人工心肺使用下に一期的に完全摘出術を施行した.術後経過は順調であり,2年経過しても再発の兆候は認めない.Helical CTによる3次元画像(3D-CT)が診断手術計画に有用であった.心臓から子宮までの領域にかかわる疾患なので各科の連携が重要である.
  • 須藤 幸雄, 牧野 裕, 村上 達哉
    2004 年 33 巻 2 号 p. 102-105
    発行日: 2004/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    特発性血小板減少性紫斑病(ITP),右鎖骨下動脈起始異常,大動脈四尖弁を合併した弓部大動脈瘤切迫破裂のきわめて希な1例を経験したので報告する.症例は64歳,女性.ITP,高血圧の治療で他院入院中に突然背部痛出現,その後血痰あり,CTで弓部大動脈瘤を認め当院へ搬送された.CTで右鎖骨下動脈起始異常を認め,弓部大動脈瘤の切迫破裂と診断し緊急的に弓部全置換術を施行した.大動脈四尖弁による大動脈弁閉鎖不全症を合併していたため大動脈弁置換術も同時に施行した.ITPは術前ステロイド療法でコントロールされていたため,術中術後のステロイドカバーと濃厚血小板輸血で対処した.術後早期は良好に経過したが,術後3週目にITPの再燃をきたし,ステロイド増量による免疫力低下のためグラフト感染をきたし,吻合部出血による喀血で術後60日目に死亡した.われわれが検索したかぎりITP患者の超低体温人工心肺を用いた大動脈瘤の手術は本邦2例目であり,大動脈四尖弁と右鎖骨下動脈起始異常を合併した症例の報告は本邦1例目である.
  • 村山 順一, 伊藤 翼, 夏秋 正文, 岡崎 幸生, 古川 浩二郎, 大坪 諭, 力武 一久
    2004 年 33 巻 2 号 p. 106-109
    発行日: 2004/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,女性.逆行性急性A型解離に対し上行置換術施行後,42日目に背部痛にて発症した.CT上B型解離を認め,腹部では真腔は狭小化していた.DSAでは腹腔動脈,上腸間膜動脈は真腔より分岐していたが,両側腎動脈は描出されなかった.急性腎不全に対し発症6日目に腎動脈下腹部大動脈内膜開窓術を施行した.正中切開にて開腹し,腸管虚血の所見がないことを確認した.腎動脈下腹部大動脈を遮断後離断し,中枢側内膜を大きくU字型に切除した.末梢側は偽腔を閉鎖し,中枢側との間は人工血管にて置換した.術中epiaortic echoにより,内膜開窓作製後の真腔拡大の様子を観察しえた.術後しばらくの間持続血液濾過(CHF)を行ったが,腎機能改善に伴い離脱できた.術後CTでは真腔は拡大しており,左腎の部分的な梗塞以外,他臓器の虚血を示唆する所見は認めなかった.DSA上,両側腎動脈は内膜開窓部を介した真腔より描出されていた.術後1年10ヵ月経過した現在,解離腔の拡大や新たな虚血の所見を認めていないが,今後も厳重な経過観察が必要である.
  • 桜井 学, 高原 善治, 茂木 健司
    2004 年 33 巻 2 号 p. 110-113
    発行日: 2004/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    Stanford A型急性大動脈解離は比較的安定した成績を得られるようになってきたが,近年,GRF glueによる問題が生じ注目されてきている.今回,われわれはStanford A型急性大動脈解離に対し上行弓部置換術を施行し,術後3~5年目に吻合部再解離,仮性瘤を生じた2症例を経験したので報告する.症例1は71歳,男性.A型急性大動脈解離に対し上行弓部置換術施行後3年目より吻合部2ヵ所に仮性瘤,下行大動脈に再解離を認め,人工血管部分再置換術を施行した.症例2は67歳,男性.同様にA型急性大動脈解離に対し上行弓部置換術施行後5年目に大動脈基部再解離を生じ,modified Bentall手術を施行した.2症例とも仮性瘤,再解離発生部位が初回手術時のGRF glue使用部位に一致していたため,要因の一つとしてGRF glueの関与を疑った.急性大動脈解離の初回手術におけるGRF glueの使用については合併症の危険も考慮したうえでの慎重な使用が望まれ,GRF glueを使用した大動脈壁は正常な波状構造を失っているため,手術近接期だけでなく,長期遠隔期にも瘤形成や再解離を念頭においた経過観察が必要であると思われた.
  • 富永 崇司, 高橋 幸宏, 小林 信之, 仁科 大, 菊池 利夫, 星野 竜, 山城 理仁, 柴崎 郁子, 小林 香代子, 黄野 皓木
    2004 年 33 巻 2 号 p. 114-117
    発行日: 2004/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    体重4.1~11.0kgの5症例(両大血管右室起始症:2例,大血管転位症:3例)に対し,同種血非使用の二期的Jatene手術を施行した.術後の循環および呼吸動態は良好で,ICU帰室時の中心静脈圧は9.0~14.5cmH2O(平均12.5cmH2O),術後の人工呼吸器管理時間は3.5~18.0時間(平均7.8時間)であった.麻酔導入後の自己血貯血と人工心肺回路の低容量化は,とくに本術式のような長時間体外循環を必要とする同種血非使用開心術に有用な手段であった.
  • 山本 祐司, 山村 晋史
    2004 年 33 巻 2 号 p. 118-120
    発行日: 2004/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は59歳,男性.約1年前より左下肢の間欠性跛行を自覚していた.左膝下打撲後に左下腿の蜂窩織炎をきたし,近医で加療されていたが改善傾向なく,打撲部の皮膚壊死も出現したため当科紹介された.左大腿動脈以下の拍動を触知せず,術前血管造影で左側に不完全型の遺残坐骨動脈を認めた.壊死部を切除し,局所の炎症所見の消退を待って,6mmリング付きePTFEグラフトを用いた左総腸骨-膝上膝窩動脈バイパス術を施行した.術後皮膚欠損部に分層植皮を行い良好に治癒,間欠性跛行も消失した.遺残坐骨動脈は希であり,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 西田 洋文, 高原 善治, 茂木 健司, 櫻井 学
    2004 年 33 巻 2 号 p. 121-124
    発行日: 2004/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は16歳,女性.学校検診にて心電図異常を指摘され精査目的に当センター受診,心臓超音波検査と心血管造影検査より重症大動脈弁閉鎖不全症の診断で,弁置換術の適応となる.入院時の身体所見で皮膚の過伸展と関節の過可動性を認め,皮膚生検よりEhlers-Danlos症候群II型と診断した.若年女性であり将来の妊娠の可能性を考慮して生体弁置換術を選択した.その後23歳時に第1子を経膣分娩で出産.この妊娠期間中に生体弁機能不全が進行し,出産3ヵ月後,当センターヘ再入院し機械弁を用いた再置換術を行った.術後は順調な経過をたどり10日目に退院した.組織の脆弱性を特徴とする疾患に対し,初回時より妊娠を念頭において生体弁を選択し,妊娠分娩後の生体弁機能不全に対しては機械弁を用いた再置換術を行い良好な結果が得られた1例を経験した.型診断を正確に行えばEhlers-Danlos症候群症例に対しても本症例のように生体弁を用いて安全な妊娠管理,再開心術が施行しうると考える.
  • 金岡 健, 松浦 弘司
    2004 年 33 巻 2 号 p. 125-128
    発行日: 2004/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は84歳,女性.ショックのため当院へ入院となった.心電図で広範囲の誘導にSTの異常を認めたが有意なQ波はみられなかった.心臓超音波検査では後尖の逸脱による重症僧帽弁閉鎖不全が,冠動脈造影では3枝相当の2枝病変がそれぞれ明らかとなった.術前から人工呼吸器による管理とIABPを必要とし,緊急で冠動脈血行再建と僧帽弁置換の同時手術を施行した.術後経過は良好で,術後第18日目に退院となった.80歳以上の高齢者における虚血性僧帽弁閉鎖不全症でショックを伴う場合はきわめて予後不良である.本症例では臨床症状は非常に重症であったが,乳頭筋は部分断裂であり心内膜下梗塞であったことなどが良好な結果をもたらしたと考えられる.
  • 松村 洋高, 佐々木 達海, 蜂谷 貴, 小野口 勝久, 高倉 宏充, 橋本 和弘
    2004 年 33 巻 2 号 p. 129-132
    発行日: 2004/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    本態性血小板血症は慢性骨髄増殖性疾患に属する希な疾患であり,末梢血の持続的な血小板増多とその機能障害に起因する血栓形成傾向と易出血性傾向を併せもつ疾患である.今回,われわれは本態性血小板血症を合併した大動脈弁狭窄症に対し,生体弁による大動脈弁位人工弁置換術を施行した.術前の血小板数は80万/μlであったが,特別な処置を施行せずに手術を行った.術中はヘパリンにてACTを400秒以上に維持した.術後,抗血小板療法としてバイアスピリンを投与した.また,人工弁に対する抗凝固療法としてワーファリンを投与し,TTを30%前後に管理していたが血小板数が130万/μlまで上昇したためヒドロキシウレア(ハイドレア)による化学療法を開始し血小板数を100万/μl前後にコントロールした.術中,術後ともに出血,血栓の合併症もなく良好な経過を示した.
  • 石山 智敏, 稲沢 慶太郎
    2004 年 33 巻 2 号 p. 133-135
    発行日: 2004/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,男性.1993年12月13日,左変形性股関節症にて人工股関節置換術を施行された.2001年8月ごろより左下肢間歇性跛行が出現して受診.APIは左側0.56と低下し,DSAでは手術操作部に一致して限局性の外腸骨動脈閉塞を認めた.2002年5月29日に左外腸骨動脈-総大腿動脈バイパス術を施行し,APIも1.04と改善した.人工股関節置換術後の血管損傷は重篤な合併症の一つではあるが報告例は少なく,とくに動脈閉塞例は希であるため注意が必要と思われた.
  • 石神 直之, 堀場 公寿
    2004 年 33 巻 2 号 p. 136-139
    発行日: 2004/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は64歳,男性.5年前に胸部圧迫感で入院精査のさい,偶然右バルサルバ洞動脈瘤を指摘された.経過観察中に瘤拡大による右室流出路狭窄を呈し,大動脈弁閉鎖不全の進行を認めたため,手術目的で入院した.手術は右バルサルバ洞動脈瘤入口部をパッチ閉鎖,大動脈弁置換,右内胸動脈の右冠動脈へのバイパスを行い,瘤壁は一部切除し縮小縫合閉鎖した.術後の経過は順調であった.術後造影でバルサルバ洞動脈瘤は造影されず,右内胸動脈グラフトは良好に開存していた.術直後に右室-肺動脈間圧較差は軽減し,術後5ヵ月のCTでは動脈瘤の消失に伴い右室流出路狭窄は完全に解除されていた.
  • 森田 英幹, 吉田 英生, 神野 禎次, 多胡 護, 山根 正隆
    2004 年 33 巻 2 号 p. 140-142
    発行日: 2004/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は77歳,女性.平成14年2月6日上行大動脈瘤(最大径7.0cm)に対して手術を行うため,全身麻酔を導入したところ,アナフィラキシーショックとなった.同日の手術を中止し,皮内テストを行ったところ,ベクロニウム,パンクロニウム,プロタミン,ファモチジンが陽性であった.5月22日あらためて上行大動脈人工血管置換術を行った.体外循環時の抗凝固剤は,ヘパリンとメシル酸ナファモスタット(FUT)を併用した.体外循環直前にヘパリンを投与し,体外循環中はFUTを持続投与した.プロタミンによる中和は行わず,体外循環を終了した.体外循環中,抗凝固のモニターとして,活性化凝固時間(ACT)だけではなく,適宜,プロトロンビン時間(PT)も測定した.手術時間は4時間30分,体外循環時間は1時間26分であった.ICU帰室後一時的に出血量が増加したため,MAP4単位,FFP8単位を投与した.その後,経過は良好で術後35日目に退院した.
  • 症例報告と本邦報告例の集計
    清水 雅行, 近江 三喜男, 大内 將弘, 渋谷 拓見, 川本 俊輔, 中目 貴彦
    2004 年 33 巻 2 号 p. 143-146
    発行日: 2004/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は55歳,男性で,8歳時に転落事故による右上腕打撲傷の既往がある.20歳ごろから同部に腫瘤を自覚していたが,受診前数ヵ月の間に急激に腫大し手拳大となった.当院整形外科で上腕動脈瘤を疑われ,手術目的で当科を紹介された.手術は全身麻酔下に上腕動脈瘤を切除し,自家大伏在静脈で血行再建を行った.病理組織所見では動脈瘤壁における内膜の著明な肥厚と中膜の断裂を認めたが,真性動脈瘤であると考えられた.本症は希な動脈瘤で,今回の症例を含め本邦では21例が報告されているに過ぎない.
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