破裂性腹部大動脈瘤術後の腹腔内圧と病態の関連は明らかでない.平成12年4月~平成15年1月に腹部大動脈瘤手術を109例(非破裂性71例,破裂性38例)経験し,破裂例のうち30例で腹腔内圧を計測し検討対象とした.最高腹腔内圧20mmHg以上の12例をH群,20mmHg未満の18例をL群とし,両群間の周術期諸因子を比較した.破裂例の在院死亡は38例中5例(13%)で,検討対象30例中ではH群で1例(MOF),L群で1例(循環不全)を失った.年齢はH群79.3±7.6yr,L群70.7±10.1yr(
p=0.019),術前急性循環不全はH群83.3%,L群61.1%(
p=0.26)で,意識障害はH群50.0%,L群23.5%(
p=0.15)であった.腹腔内圧の最高値はH群22.3±2.0mmHg,L群15.4±2.4mmHg,術後挿管時間はH群87.7±110.0h,L群25.1±29.2h(
p=0.04),摂食開始はH群14.4±11.2d,L群8.5±4.8d(
p=0.094),ICU滞在はH群6.7±6.5d,L群2.9±2.1d(
p=0.033),術後入院日数はH群54.1±25.8d,L群25.2±6.8d(
p=0.001)であった.合併症はH群73%(急性腎不全2例,腸閉塞2例,呼吸不全2例,腹壁裂開1例,胃潰瘍1例,急性動脈閉塞1例),L群18%(上肢不全麻痺1例,下肢不全麻痺1例,急性腎不全1例)(
p=0.0024)で認められた.腹腔内圧計測は破裂性腹部大動脈瘤術後の病態把握と方針決定に有効であった.
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