日本心臓血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1883-4108
Print ISSN : 0285-1474
ISSN-L : 0285-1474
33 巻, 5 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
  • 再発例に対するopen stent法の有効性
    森田 一郎, 宍戸 英俊, 正木 久男, 石田 敦久, 田淵 篤, 福廣 吉晃, 濱中 荘平, 久保 裕司, 種本 和雄
    2004 年 33 巻 5 号 p. 309-313
    発行日: 2004/09/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    2001年7月までに当科で経験した胸部真性大動脈瘤に対して,パッチ形成術を施行した24例を対象に検討した.部位およびサイズは,上行が1例,6.0cm,弓部が4例,2.5±0.5cm,遠位弓部が11例,4.7±1.7cm,下行が8例,3.7±0.5cmであった.病院死亡は3例,12.5%で,弓部,遠位弓部,下行がそれぞれ1例ずつ死亡した.その原因は,多臓器不全,脳梗塞,敗血症であった.遠隔成績は,追跡できた16例に対して検討したが,遠位弓部の2例で術後4年と術後6年で再発しただけで,そのほかには瘤再発に起因した死亡症例は認めなかった.再発症例に対しては,高度癒着の予想と呼吸機能低下により,open stent法を施行して,良好な経過を得た.遠位弓部の瘤再発症例においては,open stent法が有用と考えられた.
  • 磯田 晋, 沖田 将人, 坂本 哲, 相馬 民太郎, 井元 清隆, 鈴木 伸一, 内田 敬二, 小菅 宇之, 高梨 吉則
    2004 年 33 巻 5 号 p. 314-318
    発行日: 2004/09/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    破裂性腹部大動脈瘤術後の腹腔内圧と病態の関連は明らかでない.平成12年4月~平成15年1月に腹部大動脈瘤手術を109例(非破裂性71例,破裂性38例)経験し,破裂例のうち30例で腹腔内圧を計測し検討対象とした.最高腹腔内圧20mmHg以上の12例をH群,20mmHg未満の18例をL群とし,両群間の周術期諸因子を比較した.破裂例の在院死亡は38例中5例(13%)で,検討対象30例中ではH群で1例(MOF),L群で1例(循環不全)を失った.年齢はH群79.3±7.6yr,L群70.7±10.1yr(p=0.019),術前急性循環不全はH群83.3%,L群61.1%(p=0.26)で,意識障害はH群50.0%,L群23.5%(p=0.15)であった.腹腔内圧の最高値はH群22.3±2.0mmHg,L群15.4±2.4mmHg,術後挿管時間はH群87.7±110.0h,L群25.1±29.2h(p=0.04),摂食開始はH群14.4±11.2d,L群8.5±4.8d(p=0.094),ICU滞在はH群6.7±6.5d,L群2.9±2.1d(p=0.033),術後入院日数はH群54.1±25.8d,L群25.2±6.8d(p=0.001)であった.合併症はH群73%(急性腎不全2例,腸閉塞2例,呼吸不全2例,腹壁裂開1例,胃潰瘍1例,急性動脈閉塞1例),L群18%(上肢不全麻痺1例,下肢不全麻痺1例,急性腎不全1例)(p=0.0024)で認められた.腹腔内圧計測は破裂性腹部大動脈瘤術後の病態把握と方針決定に有効であった.
  • 血管内超音波によるステント内部位別再狭窄評価
    熊倉 久夫, 金井 宏義, 市川 秀一, 荻野 隆史, 小谷野 哲也, 三井 幾東
    2004 年 33 巻 5 号 p. 319-324
    発行日: 2004/09/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    閉塞性動脈硬化症(ASO)の腸骨動脈病変に対するパルマッツステント留置術前後および6ヵ月後のステントおよび血管内腔面積につき血管内超音波(IVUS)を用い検討した.ASO患者43例47病変を対象とした.ステント術前後および6ヵ月後にIVUSを用い,ステント近位部,中央部,遠位部で血管内腔およびステント断面積を測定した.病変部内腔面積は術前9.9±7.1mm2からステント留置後32.7±9.4mm2と改善した.術直後のステント断面積は,中央部でやや小さいものの部位別に差を認めなかった.6ヵ月後のステント断面積は32.8±8.4mm2とステントのrecoilを認めず部位別にも差を認めなかった.6ヵ月後の内腔面積はステントの変形と内膜増殖によりいずれの部位でも術直後より小さくなり,部位別では中央は近位に対して小さい傾向があった.内膜増殖による内腔変化は,ステントの遠位ほど内腔断面積が小さくなる傾向があった.血管造影上の開存率は6ヵ月92.3%,1年89.5%と良好だった.腸骨動脈に対するパルマッツステント留置はステント自体のrecoilは認められず,内膜増殖率は遠位部ほど多い傾向にあったが,術直後および6ヵ月後においても,最も内腔の小さい部位はステント中央であった.ステントは腸骨動脈狭窄性病変に対して有効な治療法と考えられる.
  • 汐口 壮一, 入江 嘉仁, 垣 伸明, 斎藤 政仁, 岡田 修一, 田中 恒有, 今関 隆雄
    2004 年 33 巻 5 号 p. 325-328
    発行日: 2004/09/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    Minimary invasive cardiac surgery (MICS)による大動脈弁置換術(AVR)においては一般的にupper ministernotomyが選択されることが多い.しかし,retograde cardioplegia cannulaが挿入できないことなどがある.当科でCTをもとに検討したところ日本人の大動脈弁の位置はlower ministernotomyでも手術可能な場合が多いことがわかった.そこでこの2種のアプローチの有用性について検討した.1997年1月から2002年3月までに大動脈弁疾患に対しMICSによるAVRを施行した68症例を対象としupper ministernotomy施行症例をU群,lower ministernotomy施行症例をL群とした.Retrograde cardioplegiaは一般にAVRでの心筋保護法として頻用されている.L群は心筋保護および術野確保の点でもfull sternotomyへの移行した症例はなく有効であった.L群ではMAZE手術も施行でき大動脈遮断時間,人工心肺時間,手術時間,出血量,そのほかの因子でも有意差を認めなかった.Lower ministernotomyはupper ministernotomyと比較しMICS AVRにおいてretrograde cardioplegiaによる心筋保護および術野確保に有効であった.
  • 西田 洋文, 須藤 義夫, 浮田 英生, 中島 伸之
    2004 年 33 巻 5 号 p. 329-332
    発行日: 2004/09/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は75歳,女性.労作時胸痛を主訴に精査目的で当院を受診した.冠動脈造影検査で2枝病変を認め手術適応となるが,心臓超音波検査で心房間に最大径32mmの腫瘤像を認めた.腫瘤内部には血流エコーを認めなかった.CT検査では右房と左房の間に径35×40mmの辺縁明瞭な低吸収域を認め,そのCT値は-122 Hounsfield unitsで脂肪のCT値に相当した.MRI検査のT1,T2強調画像ともにこの腫瘤は高信号を示し,脂肪の信号強度と一致した.腫瘤に対する術前診断は脂肪腫を強く疑い,冠動脈バイパス術と腫瘍摘出術を同時に行った.腫瘍は右肺静脈入口部前方の心房間溝で右房方向に突出しており心房中隔まで連続した黄色の脂肪性組織であった.完全摘出に固執すると心房中隔を穿破し,手術が困難になる恐れがあったため,大動脈弁近傍の心房中隔内腫瘍組織が残存することを許容した.術後の病理検査で悪性所見はなく,成熟した脂肪細胞で構成された被膜をもたない浸潤性脂肪腫(infiltrating lipoma)と診断した.経過は良好で術後22日目に退院した.心房中隔に発生したinfiltrating lipomaはきわめて希であり,術前のCT検査とMRI検査,カラードップラー法を用いた超音波検査が質的診断に非常に有用であった.
  • spiral LAPの治療経験
    道井 洋吏, 杉木 宏司, 安池 純士, 椎久 哉良, 大川 洋平, 杉木 健司, 大野 猛三
    2004 年 33 巻 5 号 p. 333-336
    発行日: 2004/09/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    巨大左房(GLA)を伴った僧帽弁閉鎖不全(MR),三尖弁閉鎖不全(TR)症例に,僧帽弁形成(MVP)および三尖弁輪縫縮(TAP)にあわせてspiral plication methodによる左房縫縮術(LAP)を行い,良好な結果を得たので若干の文献的考察を加え報告する.症例は66歳,男性で,胸部X線写真では,心胸郭比(CTR)92%,右側CTR88.4%,心エコー上,左房径(LAD)は107mmで,IV度のMRとII度のTRを認めた.手術ではsuperior transseptal approachの切開線より,左肺静脈の外側から左心耳を切除しつつ僧帽弁輪をまわり,右側左房にいたる連続した線を描きながら左房壁を切除,縫縮した結果左房の螺旋形縫縮(spiral plication)となった.術後32日目の胸部X線写真ではCTR71%,右側CTR54.5%と縮小,心エコー上もLADは67mmと短縮し,このspiral LAPは,有効な縫縮術と考えられた.
  • 青木 賢治, 渡辺 弘, 登坂 有子, 林 純一
    2004 年 33 巻 5 号 p. 337-340
    発行日: 2004/09/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は32歳,男性.10歳時に内臓逆位,房室錯位,DORV,VSD,PSに対し,機能的二心室修復術であるVSD閉鎖+Rastelli手術が施行された.しかし体心室である解剖学的右室の機能低下,房室弁逆流(TR)のみならず肺心室房室弁逆流(MR)が進行,重症心不全に陥っていた.このような症例に対し,これら2弁の同時置換術を施行,心不全を軽減させた.房室錯位症のTVRは多いがMVRまで要するのは希で,本症例では肺心室-肺動脈間の弁なし導管とTRによる肺高血圧がMRの原因であると推察された.
  • 牛島 輝明, 伊藤 祥隆, 出村 嘉隆
    2004 年 33 巻 5 号 p. 341-343
    発行日: 2004/09/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は67歳,女性.6年前より心筋症,心房細動に対し治療を受けていた.今回,右腎梗塞を発症し,精査にて左房内血栓を指摘され転院となった.心エコー上,球状の血栓を左心耳に認め,また左室拡張末期径,収縮末期径の拡大および左室駆出率の低下を認めた.手術は体外循環下,心拍動下で血栓摘除および高周波アブレーションによるMaze手術を施行した.術後の心機能は良好であり,早期に-過性心房細動を認めたもののその後は洞調律を維持している.
  • 名村 理, 諸 久永, 登坂 有子, 曽川 正和, 林 純一
    2004 年 33 巻 5 号 p. 344-347
    発行日: 2004/09/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    13歳時,先天性二尖弁大動脈弁狭窄症,動脈管開存症に対して大動脈弁交連切開術,動脈管結紮術を施行された43歳,男性.軽度の胸痛自覚後1ヵ月ごろから咳漱,呼吸困難が出現し近医を受診した.大動脈弁の再狭窄および気道圧迫を伴う最大径12cmのDeBakey II型解離性大動脈瘤を指摘され当院に入院した.準緊急的にinclusion法により大動脈基部および上行弓部大動脈置換術を施行した.術後,換気不良に陥り,胸部CTでは人工血管周囲とラッピングに用いた瘤壁の偽腔内に血腫を認め,気道の圧迫が残存していた.第7病日に血腫除去,ラッピングに用いた瘤壁の縫縮を行い,気道圧迫は解除された.初回手術後第12病日に人工呼吸器を離脱,第67病日退院した.なお,動脈瘤壁の病理組織診断では嚢胞状中膜壊死を認めた.
  • 森田 英幹, 吉田 英生, 森本 徹, 神野 禎次, 多胡 護, 山根 正隆
    2004 年 33 巻 5 号 p. 348-351
    発行日: 2004/09/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    な症例は31歳,女性.大動脈炎症候群に伴い,右総頸動脈,鎖骨下動脈まで及ぶ腕頭動脈瘤(最大径25mm)と大動脈弁閉鎖不全症(Sellers分類IV度)を認めた.CRPが27.5mg/dlと高値であったため,ステロイドによる治療でCRPが陰転化したのち,腕頭動脈人工血管置換術,大動脈弁置換術を一期的に施行した.術中,脳内局所酸素飽和度(rSO2)をモニターし,脳虚血に注意しながら頸部の動脈を遮断したが,rSO2は低下しなかった.術後,Horner症候群が出現したものの,そのほかの経過は良好で術後28日目に退院した.将来,出産を希望する患者であったが,本人が再手術を希望しないため,妊娠・分娩時に抗凝固療法を考慮することとし,機械弁を用いて大動脈弁置換術を行った.
  • 鴛海 元博, 橋本 和弘, 奥山 浩, 長堀 隆一, 篠原 玄, 中野 雅道
    2004 年 33 巻 5 号 p. 352-355
    発行日: 2004/09/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    右冠動脈-右房瘻に伴う右房内に限局して発生した巨大冠動脈瘤の1例を経験した.右房内に巨大冠動脈瘤を有する右冠動脈-右房瘻の報告はきわめてまれで,現在まで調べえたかぎり国内外含め3例の報告があるのみである.本症例では冠動脈瘤の内腔は完全に器質化血栓となって閉鎖していたため心雑音を聴取せずまた瘻管の拡張も認めず心臓内腫瘍との鑑別がきわめて困難であった.
  • 竹内 一馬, 中村 克彦, 森重 徳継, 芝野 竜一, 財津 龍二, 岩橋 英彦, 林田 好生, 田代 忠
    2004 年 33 巻 5 号 p. 356-358
    発行日: 2004/09/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,男性.62歳時に冠動脈左主幹部狭窄に対して左内胸動脈-左冠動脈前下行枝の冠動脈バイパス手術を受けた.約3年後に左鎖骨下動脈閉塞による狭心症が再発,鎖骨下動脈-鎖骨下動脈バイパス術を施行した.術後約3年5ヵ月後の現在も狭心症の再発はなく良好に経過している.本手術は,左内胸動脈を用いた冠動脈バイパス術後に左鎖骨下動脈閉塞を招いた症例において,安全かつ良好に血行再建を施行することができ有用であった.
  • 松原 宗明, 平松 祐司, 今水流 智浩, 佐藤 真剛, 徳永 千穂, 野間 美緒, 軸屋 智昭, 榊原 謙
    2004 年 33 巻 5 号 p. 359-362
    発行日: 2004/09/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    肺血栓塞栓摘除術後の大量肺出血に対してnon-heparinized extracorporeal life supportを使用して救命しえた1例を経験した.症例は63歳,女性.胃全摘術後から数週間にわたって,徐々に呼吸困難感が増悪した.胸部CTおよび心臓超音波検査で右房内浮遊血栓を伴った亜急性の中枢型肺動脈血栓塞栓症と診断され,体外循環下に血栓摘除術を行った.肺血流再開後間もなく,再灌流性肺障害によると考えられる大量の肺出血を生じ,ヘパリンを含めた抗凝固非使用下でのextracorporeal life supportの維持を行った.術後12時間で肺出血は幸い鎮静化し,術後20時間でextracorporeal life supportから,48時間で人工呼吸器から離脱しえた.残存する下肢静脈血栓に対して下大静脈フィルターを留置したのち退院した.Non-heparinized extracorporeal life supportの功罪については慎重な議論を要するが,本法は肺再灌流障害による致死的肺出血に対して,救命のために考慮されるべき手法であると考えられた.
  • 毛利 亮, 畑 隆登, 津島 義正, 松本 三明, 吉鷹 秀範, 濱中 荘平, 大谷 悟
    2004 年 33 巻 5 号 p. 363-365
    発行日: 2004/09/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    18歳の弁輪部破壊を伴った大動脈弁位人工弁感染症患者に対し自己肺動脈弁グラフトを用いた大動脈基部置換(Ross手術)を施行した.術後メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)縦隔洞炎を合併したが,大網充填術にて軽快した.現在,術後約3年で感染徴候なく,グラフト機能も良好である.
  • 奥村 悟, 大川原 潤
    2004 年 33 巻 5 号 p. 366-369
    発行日: 2004/09/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,男性.高血圧および甲状腺機能亢進症に対し加療中であった.左側腹部から下腹部にかけての激痛で発症した.発症から4日後の腹部CT検査で左水腎症と左総腸骨動脈瘤および動脈瘤による尿管の閉塞を認めた.左腎盂辺縁の不整像から左腎盂障害が疑われ,左総腸骨動脈瘤による尿管閉塞から急性左水腎症を発症したものと診断した.尿管に対する圧迫を解除する目的で左総腸骨動脈瘤人工血管置換術を行った.尿管剥離は行わなかった.術後尿路閉塞は解除され,良好に経過した.
feedback
Top