日本心臓血管外科学会雑誌
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34 巻, 6 号
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  • 加藤 泰之, 末広 茂文, 柴田 利彦, 佐々木 康之, 平居 秀和, 文元 建宇, 尾藤 康行, 元木 学, 高橋 洋介
    2005 年 34 巻 6 号 p. 389-394
    発行日: 2005/11/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    高齢者大動脈弁狭窄症(AS)に対する大動脈弁置換術(AVR)の早期,遠隔成績を検討した.対象は1990年10月~2004年10月に行った70歳以上ASに対する初回AVR73例で,年齢は平均75.7±3.6歳,使用人工弁は機械弁37例,生体弁36例であった.手術死亡は1例(1.4%)のみで,NYHA機能分類は死亡例を除き術後全例II度以下に改善した.遠隔死亡を16例に認め(5.9%/patient-year,平均観察期間3.7年),弁関連死亡を6例に認めた.累積生存率は5年74.2±6.5%,10年44.3±12.4%で,機械弁,生体弁別の累積生存率に差はみられず,小口径人工弁群(≦19mm)と大口径人工弁群(>19mm)間においても差はみられなかった.弁関連事故非発生率は5年78.8±6.6%,10年78.8±6.6%で,機械弁と生体弁の比較,小口径人工弁群と大口径人工弁群の比較でも両群間に差はみられなかった.70歳以上のAS症例に対するAVRの手術成績は早期,遠隔成績ともに良好で,高齢者に対しても若年者と同様の基準で手術適応を判断すべきと考えられた.また,生体弁は血栓塞栓症,出血性合併症を認めず高齢者にとって有利といえるが,抗凝固療法の継続が可能であれば機械弁使用でも問題なく,高齢者狭小大動脈弁輪症例においては小口径人工弁使用は許容されると考えられた.
  • 従来手術との比較検討
    井畔 能文, 山本 裕之, 荒田 憲一, 小林 彰, 上野 正裕, 峠 幸志, 末廣 章一, 坂田 隆造
    2005 年 34 巻 6 号 p. 395-400
    発行日: 2005/11/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    1999年1月から2004年3月までの待機的腹部大動脈瘤(AAA)手術症例131例を対象とし,ステントグラフト(SG)内挿術24例(EVAR群)と従来手術107例(OP群)に分け,比較検討した.平均年齢,男女比,術前瘤径はEVAR群74.1±7.8歳,20/4,50.4±6.6mm,OP群71.7±10.5歳,89/18,54.6±11.1mmと有意差はなく,術前危険因子として閉塞性呼吸障害がEVAR群に有意に多く(p<0.04),開腹歴がEVAR群で有意に多かった(p<0.001).SGは全例自作で直型およびtaper型を使用しbifurcated typeは用いなかった.Taper型の場合は反対側の総腸骨動脈に閉塞用SGを用い,F-F bypassを置いた.初期成績:手術時間(EVAR群131±53min,OP群250±76min),輸血量(EVAR群0ml,OP群238±345ml)で有意にEVAR群が短く,少なかった(p<0.01).EVAR群での完全な瘤血栓化は21例(87.5%)に認めた.合併症はEVAR群でSG閉塞と創感染を1例ずつ認め,OP群では麻痺性イレウス6例,呼吸不全1例,虚血性腸炎1例,出血再開腹1例を認めた.病院死亡はEVAR群ではshower embolieによる腸管虚血で1例(4.1%)を失い,OP群では術後誤嚥性肺炎で1例(0.9%)を失った.遠隔成績:生存率はEVAR群1年88.0±6.5%,2年88.0±6.5%,3年80.6±9.2%,OP群1年99.0±0.9%,2年94.1±2.6%,3年87.7±3.9%と有意差はなかった.EVAR群において遠隔期に瘤拡大によるsurgical conversion4例,感染による瘤破裂1例,aorto-enteric fitula1例を認め,手術関連合併症回避率はEVAR群1年81.3±8.5%,2年61.4±11.9%,3年47.8±12.6%であった.OP群では手術関連合併症はなく,有意にOP群で少なかった.現段階でのAAAに対するEVARは手術早期成績は従来手術と同等に良好であった.しかし,遠隔期の合併症が多く長期的有用性には問題が残ると考えられた.
  • 服部 努, 前田 英明, 梅澤 久輝, 五島 雅和, 中村 哲哉, 和久井 真司, 西井 竜彦, 根岸 七雄
    2005 年 34 巻 6 号 p. 401-405
    発行日: 2005/11/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    近年,急性期深部静脈血栓症に対するカテーテル血栓溶解療法(CDT)や血栓吸引療法を含めた血管内治療の有効性が報告されている.今回,2003年1月より2004年8月までに当科で経験した深部静脈血栓症のうち,血管内治療を行った20例について検討した.血管内治療の適応は,発症から2週間以内,腸骨大腿静脈血栓閉塞型の深部静脈血栓症を対象とした.内訳は男性11例,女性9例,平均年齢56.4(30~78)歳,発症からの治療開始までの期間は平均4.4(1~12)日であった.血栓存在部位は左側15例,右側5例であり,血栓が存在する最も中枢側の静脈は下大静脈5例,腸骨13例,大腿2例であった.一時型下大静脈フィルターを留置したのちに,膝窩静脈よりシース挿入,カテーテルは多孔式を用い,ウロキナーゼは24万単位を1日量としてdrip infusion法と1日3~5回のpulse-spray法を併用とした.抗凝固療法はヘパリンを使用し,また,間欠的マッサージ(IPC)で患肢血流うっ滞を予防した.再造影にて血栓が残存する場合には機械的血栓吸引療法を施行し,iliac vein compression syndrome (IVCS)や器質化血栓に対しては金属ステントを留置した.治療前後の静脈造影にてvenographic severity score(VSスコア)と四肢周囲径にて治療効果判定とした.治療期間は5.0±0.28(2~9)日,総ウロキナーゼ使用量は102.5±5.7(36~168)万単位であった.総腸骨静脈にIVCSで1例,器質化血栓に対して2例に金属ステントを留置した.治療中2例に一時下大静脈フィルター内に血栓を捕捉したことが確認されたが,肺塞栓症は認めなかった.血栓性素因は2例に認められ,1例に抗リン脂質抗体症候群,もう1例にプロテインS欠乏症がみられた.早期再発を1例に認め,再度血管内治療を要した.VSスコアは術前26.2±6.3から治療後6.2±2.5と有意に(p<0.0001)低下した.急性期深部静脈血栓症に対して血管内治療は有効であり,満足しうる結果であると思われた.
  • 佐伯 宗弘, 中嶋 英喜, 広恵 亨, 中村 嘉伸, 松田 成人, 金岡 保, 石黒 真吾, 應儀 成二
    2005 年 34 巻 6 号 p. 406-408
    発行日: 2005/11/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は77歳,男性である.腹部大動脈瘤術後9年目に中枢側吻合部瘤のため入院した.吻合部瘤は腎動脈より3cm末梢側に存在し,最大径55mmであった.再手術症例で脳梗塞の既往があり,また解剖学的にも適応があったためステントグラフト内挿術を施行した.術後endoleakやmigrationは認めず,現在外来通院中である.ステントグラフト内挿術は腹部大動脈瘤の再手術症例に対し有効な手段であり,解剖学的に可能であれば積極的に試みるべき治療手技であると考えられた.
  • 吉本 公洋, 椎谷 紀彦, 国原 孝, 安田 慶秀
    2005 年 34 巻 6 号 p. 409-412
    発行日: 2005/11/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は70歳,男性,胃切除術および膵頭十二指腸切除術の既往がある.歩行中に腹痛が出現し当院救急部に搬送され,到着直後にショックを呈した.血行動態確保ののち造影CT施行,傍腎動脈腹部大動脈瘤破裂の診断となり緊急手術となった.腹腔内に大量の血腫が存在,腹部分枝の起始部が近接し腎動脈直上での大動脈遮断は困難と考えられ,また,後腹膜郭清を伴う開腹手術の既往より腹腔内および大動脈周囲の強固な癒着が推測された.これらより後腹膜経路での大動脈到達を選択,腹腔動脈上遮断の方針で手術開始した.左腎動脈直下から総腸骨動脈分岐手前までの直型人工血管置換術を施行,経過良好にて術後25日で退院となった.腹腔内に高度癒着が予想される傍腎動脈腹部大動脈瘤破裂緊急手術症例に対し,開胸・拡大後腹膜経路が有用であった.この術経路は大動脈のコントロールを迅速,安全,確実に施行可能であり,破裂瘤緊急手術のさいの有用なオプションとなると考えられた.
  • 横山 雄一郎, 鈴木 健夫, 山下 洋一, 前田 肇
    2005 年 34 巻 6 号 p. 413-417
    発行日: 2005/11/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は57歳,女性.11年前に右乳癌に対しHalsted手術ならびに放射線治療を施行した.半年ほど前より右鎖骨上部に皮膚潰瘍が出現し,同部より間歇的に出血と膿の排泄をきたすようになった.精査の結果,腕頭動脈仮性瘤皮膚瘻であり,緊急手術を施行した.胸骨正中切開と右頸部切開で仮性瘤に到達し,2本の大伏在静脈を1本化して径を拡大したのち,腕頭動脈を置換した.また,感染創であったため大網を充填した.瘻孔部の皮膚を切除したため閉創困難となり,有茎皮弁を用いて閉鎖した.術後経過は良好で,約1ヵ月後に退院となった.放射線治療の遠隔期合併症として皮膚変化や血管変化がいわれているが,これらが交通をもつという珍しい症例を経験したので報告した.
  • 茶谷 成, 渡橋 和政, 濱本 正樹, 今井 克彦, 岡田 健志, 末田 泰二郎
    2005 年 34 巻 6 号 p. 418-421
    発行日: 2005/11/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,男性.CABGの7ヵ月後に両上肢痛を主訴としたA型解離を発症した.開胸によるRITAグラフト損傷を危惧し保存的治療を選択したが,アシドーシス,上肢痛が軽快せずエコーで腸管虚血も認めたため,緊急で左総腸骨動脈-上腸間膜動脈バイパス(大伏在静脈),両側腋窩動脈断端形成を施行した.アシドーシス,上肢痛とも軽快し経過良好であったが,1週間後突然胸痛,血圧低下を認め,心タンポナーデと診断した.緊急で上行大動脈置換,大動脈弁吊り上げ,橈骨動脈グラフト再建を行った.術後経過は良好であった.本症例では臓器虚血に対する治療をcentral operationより優先して行い,不可逆的な臓器虚血を防ぐことができた.また,壊死にいたる前の腸管虚血がエコーで診断でき,CTによる「開存」の診断のなかに虚血がありうることが明らかとなった.
  • 加藤 亙, 田嶋 一喜, 寺澤 幸枝, 田中 啓介, 岩瀬 仁一, 井尾 昭典
    2005 年 34 巻 6 号 p. 422-424
    発行日: 2005/11/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は58歳,男性で,大動脈弁輪拡張症(AAE),大動脈弁逆流(AR)のため大動脈基部置換術が施行された.術後3ヵ月目に,中枢側吻合部の破綻による仮性動脈瘤を生じ再手術を行った.再手術時に除去した人工血管から表皮ブドウ球菌を検出した.再手術後8日目から発熱し,炎症反応も上昇した.術後16日目の造影CTで仮性動脈瘤の再発が確認され再々手術となった.感染性仮性動脈瘤であり,人工血管感染を防ぐためにrifampicin-bonded gelatin-sealed Dacron graft (GELSEAL®;Sulzer Vascutek,UK)を用いて大動脈基部置換術を行った.術後経過は良好で,術後12ヵ月を経過し感染の再燃は認めていない.人工血管感染でin situの再建が必要である場合,rifampicin-bonded GELSEAL®は一つの選択肢になりうる.
  • 遊佐 裕明, 戸島 雅宏, 小沼 武司, 星野 修一, 西谷 泰
    2005 年 34 巻 6 号 p. 425-428
    発行日: 2005/11/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,男性.近医で高血圧に対して加療中のところ腹部大動脈瘤(AAA)の指摘を受け,当科紹介受診した.3D-CTにて左腎動脈分岐下に最大径95mmのAAAを認めた.右腎動脈は3本認め,うち最も太いものはAAAから分岐し,残る2本は左腎動脈とほぼ同じ高さで瘤中枢から分岐していた.主幹動脈灌流領域にあたる腎中極実質に陰影欠損を認めた.手術はAAA直上で大動脈を遮断し,AAA切除,人工血管置換,右腎動脈再建を施行した.右腎虚血時間短縮を目的に,あらかじめ人工血管右脚をトリミングして,腎動脈再建グラフトの準備工夫を行った.術後経過は良好で,レノグラム,3D-CTにて腎機能の改善を認めた.右腎動脈分岐異常を伴うAAAの手術例は希で,診断,腎血流評価,術式選択に3D-CTは有用と考え,報告した.
  • 升本 英利, 島本 光臣, 山崎 文郎, 藤田 章二, 中井 真尚, 濱路 政嗣
    2005 年 34 巻 6 号 p. 429-431
    発行日: 2005/11/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,女性.1993年に自己免疫性溶血性貧血を指摘され,2002年よりプレドニゾロンおよびアザチオプリン内服加療を行われていた.1994年心エコーにて軽度の大動脈弁狭窄(AS)を指摘された.2003年12月心不全出現,人工呼吸管理を要した.2004年2月の心エコーでは左室-大動脈最大圧較差115.8mmHgと,ASの進行を認めた.4月6日大動脈弁置換術(Carpentier-Edwardsウシ心嚢膜弁19mm)を施行した.術当日までプレドニゾロン内服は継続した.術中人工心肺より洗浄赤血球を,術後MAPを使用したが,それぞれ使用直前にハプトグロビンおよび注射用コハク酸プレドニゾロンナトリウムを投与し,溶血を予防しえた.術後3日目よりプレドニゾロンおよびアザチオプリン内服を再開した.術後感染,溶血の増悪ともに認めず,良好に経過した.術後30日目に軽快退院となった.
  • 澤田 康裕, 草川 均, 小野田 幸治, 下野 高嗣, 新保 秀人
    2005 年 34 巻 6 号 p. 432-434
    発行日: 2005/11/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    心タンポナーデの患者に対してドレナージ目的で心嚢内に挿入したカテーテルにより,右室-心室中隔-左室と損傷した症例の手術を経験した.手術は,カテーテルを抜去しつつ左室,右室の順にフェルト補強下2-0モノフィラメント糸マットレス吻合を用いて心臓を修復した.医原性の心臓損傷は希である.適切な方法を用いれば今回のような致死的な合併症は防ぐことができたと考えられた.本邦において医原性心臓損傷に対する手術報告例は少なく報告した.
  • 松田 成人, 中嶋 英喜, 丸本 明彬, 中村 嘉伸, 上平 聡, 金岡 保, 石黒 真吾, 應儀 成二
    2005 年 34 巻 6 号 p. 435-439
    発行日: 2005/11/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    完全左脚ブロックを伴う重症虚血性心筋症に対して,冠動脈バイパス術に自己骨髄単核球細胞移植術(BMCI)による血管新生療法と両心室ペーシング(BVP)を用いた心臓再同期治療を同時施行し,良好な結果を得たので報告する.症例は67歳,男性.心不全増悪による呼吸困難を主訴とし,左冠動脈の広範囲びまん性閉塞病変に起因する虚血性心筋症に対する外科的治療目的で当科紹介となった.心臓超音波検査ではLVDd 71mmと左室腔の拡大を認め,心電図検査はQRS幅180msの完全左脚ブロックを呈していた.冠動脈造影検査で#5:50%,#6,7,8:90%(ステント内多発病変),#12:100%(枯れ枝状末梢性びまん性閉塞),#14:75%の有意狭窄病変を認めた.当大学倫理委員会の承認を得て,冠動脈バイパス術(1枝:#14)と同時に,末梢性びまん性閉塞病変を有する左室高側壁領域へのBMCIとBVPを施行した.術後15ヵ月が経過,自覚症状および心機能の著明な改善を認めた.
  • 鈴木 暁, 橋詰 賢一, 芳賀 佳之
    2005 年 34 巻 6 号 p. 440-444
    発行日: 2005/11/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,女性.8年前左腎細胞癌(pT3hpN0 pM0 Stage III A)のため根治的左腎摘除術を施行した.近医の心エコーで右室腫瘍を認め入院した.心エコー,CT,MRI,CAG,右室腫瘍生検にて腎細胞癌の下大静脈から連続進展のない右室転移と診断した.右室流出路狭窄をきたしたため手術を施行した.手術所見は心室中隔から成長した腫瘍が右室流出路においては肺動脈弁から手前1cmまで浸潤,流入路では三尖弁の中隔尖と前尖の一部まで浸潤していた.根治的摘除術は不可能のため腫瘍部分切除と肺動脈右室流出路パッチ拡張術を施行した.病理組織診断で腎細胞癌根治的摘除術後の右室転移と確定診断した.術後インターロイキン-2の投与を行った.術後8ヵ月で施行した心エコーでは右室腫瘍の増大が見られたものの流出路狭窄は認められなかったが,術後11.5ヵ月に腫瘍による右室流出路閉塞をきたし死亡した.きわめてまれな左腎癌摘除術後の下大静脈から連続進展のない右室転移症例を経験した.治療は腫瘍部分切除・肺動脈右室流出路パッチ拡張術とインターロイキン-2の投与を行い,延命効果があったと考えられたが治療の限界も認めざるを得なかった.
  • 片岡 剛, 泉本 浩史, 小泉 淳一, 石原 和明, 川副 浩平
    2005 年 34 巻 6 号 p. 445-448
    発行日: 2005/11/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は14歳,女性.Alagille症候群で,肝小葉間胆管減少症による肝不全と大動脈弁狭窄による心不全が進行し,他院で9歳時に生体肝移植を,11歳時にRoss手術とCABGを施行した.その後,大動脈基部の拡大が原因と思われる大動脈弁閉鎖不全の増悪と,冠動脈吻合部狭窄による前壁中隔の虚血が生じ,当施設にて大動脈弁置換術と再CABGを施行した.再手術時,術前後の肝機能は正常で,肝臓に対して特別な処置を施す必要はなく,18病日に退院となった.欧米において肝移植後患者の0.4~1.3%に開心術が施行されているにもかかわらず,初の生体肝移植以来14年,2,200を超える移植例をもつ本邦において,肝移植患者の開心術の報告がほとんどない.本症例の経験から,肝移植後患者であっても,通常と同じ適応で開心術が施行できると考えられ,周術期管理も肝機能に問題がなければ,通常と同様の管理でよいと思われた.
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