日本心臓血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1883-4108
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35 巻 , 5 号
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  • 山本 正樹, 村山 博和, 鬼頭 浩之, 松尾 浩三, 林田 直樹, 浅野 宗一, 平野 雅生, 龍野 勝彦
    2006 年 35 巻 5 号 p. 255-260
    発行日: 2006/09/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    1994年1月から2004年10月までに経験した80歳以上の高齢者群(O群)11例と80歳未満の若年者群(Y群)76例の胸部大血管緊急手術症例を比較検討した(以下,O群:Y群で記載).診断はA型大動脈解離(6例:52例),B型大動脈解離(0例:5例),胸部大動脈瘤破裂(4例:17例),その他(1例:2例)であった.術式,手術時間,体外循環時間,心停止時間に有意差なく,死亡率27.2%:19.7%,術後合併症は,循環不全27.3%:22.4%,呼吸不全27.3%:25.0%,脳梗塞18.2%:14.5%と両群間に有意差はなかった.中期生存率は1年100%:98.3%,2年83.3%:95.1%であった.術前後のADL(activity of daily life)はBarthel indexにより評価し,各群の75%,90%が術前と同程度のADLを回復した.本検討では高齢者に対する胸部大血管緊急手術例の手術成績,中期成績および術後ADLは満足のいく結果であった.
  • 尾崎 公彦, 北條 浩, 河内 和宏, 横手 祐二, 許 俊鋭
    2006 年 35 巻 5 号 p. 261-263
    発行日: 2006/09/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は59歳,女性.自宅2階のベランダより転落し,意識消失しているところを発見され救急車で搬送となった.体表面上は擦過傷程度であったが,画像診断により脳出血,第11胸椎椎体骨骨折および両側胸水貯留,右第4~6肋骨骨折,右肩甲骨骨折を認め緊急入院となった.入院翌日に,精査目的のため再びCT検査を施行したところ,脳出血の進行と,さらに遠位弓部大動脈より始まる急性の大動脈解離が認められた.外傷性の胸部大動脈損傷は,時間の経過とともに死亡率が増加するとの報告もあり,発見された時点で緊急手術を考慮するが,今回の症例では脳出血および胸椎骨折を伴っており全身ヘパリン化により脳出血が増悪すること,また体位変換により脊髄神経が障害されることを考慮し,十分な降圧管理のもと待期手術の方針とした.受傷後55日目に,大動脈損傷に対して24mmの直型人工血管(Hemashield Gold)を用いて下行大動脈人工血管置換術を施行した.術後経過は良好で,麻痺などの神経障害も認めず,術後27日目に独歩退院となった.
  • 園田 拓道, 城尾 邦彦, 梅末 正芳, 松崎 浩史, 松井 完治
    2006 年 35 巻 5 号 p. 264-267
    発行日: 2006/09/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    心臓原発悪性リンパ腫は心臓または心外膜に限局する節外性悪性リンパ腫でありきわめて希な疾患である.今回,完全房室ブロックを初発症状とし,そののち上大静脈症候群を呈した心房中隔由来と思われる心臓原発悪性リンパ腫の1例を経験したので報告する.症例は65歳,女性.完全房室ブロックのため永久ペースメーカー植込み術を施行した.術前の心エコー検査では心臓内腫瘤は認めなかったが,その約6週間後に上大静脈症候群を発症した.心エコー検査では,心房中隔を中心とし右房内を占拠する巨大な腫瘤(径6×5cm)を認め,その一部が上大静脈-右房接合部に嵌頓していた.体外循環下に腫瘤を部分切除し上大静脈症候群を解除するとともに病理組織学的検査を行い悪性リンパ腫(diffuse large B-cell type)と診断した.術後諸検査により心臓以外のリンパ腫病変を認めなかったため,心臓原発悪性リンパ腫と診断し化学療法(T-COP療法)および自家末梢血幹細胞移植を行い完全寛解を得た.
  • 棟方 護, 板谷 博幸, 小野 裕逸
    2006 年 35 巻 5 号 p. 268-270
    発行日: 2006/09/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は64歳,男性.1995年からの慢性透析症例.1996年10月に冠動脈バイパス術(CABG,4枝)を施行されていた.2005年5月胸痛により発症し,急性心筋梗塞の診断で当科入院となり,内科で緊急心臓カテーテル検査を施行した.右冠動脈が責任病変と考えられたが,石灰化が強くカテーテル治療は困難であり,大動脈内バルーンパンピングを開始した.準緊急的に手術を行った.手術は大伏在静脈を用い,脾動脈から#4PDと#4AVへsequentialで経横隔膜的にOPCAB(off-pump CABG)を行った.術後,症状および心機能は改善し,第15病日退院となった.経横隔膜的OPCABで脾動脈をinflowとしたものはまれであり,この方法は右冠動脈病変に対し,再手術症例や石灰化で大動脈からinflowをとれない症例において奏功すると考えられる.
  • 木村 知恵里, 小宮 達彦, 田村 暢成, 坂口 元一, 小林 平, 中村 裕昌
    2006 年 35 巻 5 号 p. 271-274
    発行日: 2006/09/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は49歳,女性.他院で胸部X線写真の異常陰影を指摘され,精査の結果未破裂Valsalva洞動脈瘤を認めた.Valsalva洞は全体的に瘤化していたが大動脈弁の異常はなく,remodeling法による大動脈基部再建術を施行した.瘤壁の病理組織像は大動脈炎後の瘢痕形成期像を呈していた.経過は良好で術後20日目に退院した.非活動期の大動脈炎例や弁輪拡大,弁変性を伴わない例では自己弁温存大動脈基部再建術も可能と思われる.
  • 松崎 賢司, 椎谷 紀彦, 山下 知剛, 国原 孝
    2006 年 35 巻 5 号 p. 275-277
    発行日: 2006/09/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は77歳,男性.膀胱癌に対し10ヵ月前に膀胱全摘,両側尿管皮膚瘻造設術施行.某泌尿器科病院で外来通院中であったが,左尿管カテーテル交換時に動脈性の出血を反復し,腹部CTで10ヵ月前にはみられなかった腹部大動脈瘤,両側総腸骨動脈瘤が認められた.左総腸骨動脈尿管瘻,および感染性動脈瘤を疑われ,当科に紹介となった.術前の尿培養で多剤耐性緑膿菌が検出された.人工血管の感染巣内走行をすこしでも避けるため,Yグラフト両脚を右内外腸骨動脈に吻合し,人工血管を大網で被覆,左下肢は開腹に先立ち確立した大腿-大腿動脈バイパスで血行再建した.尿路再建は尿管を切除し左腎瘻を造設した.術中の瘤壁,壁在血栓の培養からも多剤耐性緑膿菌が検出されたが術後経過は感染兆候なく良好であった.
  • 木田 直樹, 渡邊 孝, 村山 弘臣, 矢野 隆, 大原 啓示, 小林 淳剛
    2006 年 35 巻 5 号 p. 278-280
    発行日: 2006/09/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は56歳,男性.右大腿に異和感が出現した2週間後,同部に突然の激痛を自覚した.右下肢動脈造影の結果,右大腿深動脈に7cm大の動脈瘤を認めた.カテーテルインターベンション治療を選択し,大腿深動脈中枢側から瘤流入部までをコイル塞栓した.その後,症状の出現はなく,3年後の現在まで再発を認めていない.
  • 立石 実, 小出 昌秋, 打田 俊司, 渡邊 一正
    2006 年 35 巻 5 号 p. 281-285
    発行日: 2006/09/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は12歳,女児.純型肺動脈閉鎖症と診断され,2歳時に大動脈弁狭窄(弁性)に対してバルーン拡大術,5歳時に両方向性Glenn手術と大動脈弁形成術を行ったが,7歳時の心臓カテーテル検査の結果,当時のFontan手術適応外と判断された.その後,チアノーゼの悪化と運動耐容能の低下を認め,治療方針を再検討し,まず,体肺側副血行に対してコイル栓塞術を行い,ひきつづき根治手術を行った.可能なかぎり低侵襲で行うため,末梢性肺動脈狭窄に対して術中ステント留置を併用し,人工血管を用いた心外導管による心拍動下fenestrated Fontan手術を行った.術後経過は良好で,運動耐容能も飛躍的に改善した.Fontanの手術成績は安定し,その適応は拡大しつつあるが,依然Fontanに到達せず,適応外とされる症例が少なからず存在する.今回,末梢性肺動脈狭窄を有し,PA index 89mm2/m2のハイリスク症例に対し,いくつかの工夫により根治術に到達することができたので報告する.
  • 吉田 聖二郎, 茂泉 善政
    2006 年 35 巻 5 号 p. 286-288
    発行日: 2006/09/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は90歳,男性.平成17年7月28日深夜より腰背部痛を訴え,翌朝に当院救急外来を受診した.CT検査により右側後腹膜腔に大量の血腫と右内腸骨動脈に動脈瘤を認め,内腸骨動脈瘤破裂と診断された.検査終了直後ショック状態となり,呼吸停止となったため,ただちに緊急手術となった.手術は内腸骨動脈の末梢側を縫合閉鎖,総腸骨動脈と外腸骨動脈を端々吻合した.術後はICUで11日間の人工呼吸管理を要したが,重篤な合併症はなく第27病日に独歩退院することがきた.孤立性内腸骨動脈瘤は希な疾患であるが,骨盤腔の底深くにあるため高い破裂率を呈し,技術的にも血管外科手術のなかでは難しくmortalityの高い疾患である.
  • 吉田 和則, 戸部 智, 山口 眞弘
    2006 年 35 巻 5 号 p. 289-291
    発行日: 2006/09/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    腹部大動脈高位閉塞による,両下肢閉塞性動脈硬化症(ASO)で右腋窩-両大腿動脈バイパス術施行後,外来経過観察中の症例が労作時胸痛を自覚し,当院に救急来院された.冠動脈造影および左室造影検査を施行し,左主幹部病変および高度虚血性僧帽弁逆流を認めたため,手術目的で当科紹介となった.手術は,冠動脈バイパス術および僧帽弁輪形成術(Physio ring 26mm)を施行した.術前からの低左心機能のため,体外循環離脱困難を認めた.そこで,上行大動脈からの大動脈内バルーンパンピング(IABP)挿入により,体外循環から離脱し,皮膚のみの閉創で手術終了とした.術後2日目にIABP抜去および閉胸を行い同日抜管した.以降,経過良好で,術後冠動脈造影検査によりグラフト開存を確認し,術後16日目に軽快退院した.
  • 黄 義浩, 森田 紀代造, 松村 洋高, 木ノ内 勝士, 中村 賢, 橋本 和弘
    2006 年 35 巻 5 号 p. 292-294
    発行日: 2006/09/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は9ヵ月の男児で,DORV, PAPVR, VSD, PH, polysplenia, azygos connectionに対し,生後6ヵ月時に当院で肺動脈絞扼術を施行した.術後の肺血流のコントロールは良好であったが,術後10日目に多剤耐性表皮ブドウ球菌による敗血症を呈し,2ヵ月後の胸部CT検査で細菌性心内膜炎による感染性肺動脈瘤および主肺動脈右肺動脈瘻を認めた.内科治療中に心不全の急性増悪を呈したため準緊急的に動脈瘤切除,肺動脈再建術および再肺動脈絞扼術を施行した.術後長期にわたる抗生物質治療ののち,Glenn手術を経てFontan手術を施行,合併症なく良好な経過を得た.肺動脈絞扼術後の感染性肺動脈瘤,肺動脈瘻はきわめて希であり,文献的考察を加えてここに報告する.
  • 濱路 政嗣, 河野 智, 石上 雅之助, 御厨 彰義, 北野 満, 松田 光彦
    2006 年 35 巻 5 号 p. 295-298
    発行日: 2006/09/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    鈍的胸部外傷による外傷性心破裂の原因は交通事故であることが多く,救命率は15%以下と低いが,本邦でも右心系損傷の救命例の報告が散見される.われわれは10代の若年者の自動車事故による右房破裂に対する緊急手術を2例経験した.症例1は18歳,男性.受傷後に搬送された救急病院で,心タンポナーデと診断され心嚢穿刺後,当院へ転送された.ICUに収容して間もなく,徐脈,血圧低下が再び出現したため剣状突起下で心膜開窓施行後,手術室で開胸止血術を行った.右心耳先端に約1cmの裂傷を認め,縫合閉鎖した.術後経過は良好であった.症例2は19歳,男性.受傷後,1次救急病院からの搬送中に救急車内で呼吸停止,徐脈となり,当院到着時は心室細動であった.蘇生後,ICUで開胸した.右房と上大静脈および下大静脈の移行部のそれぞれに約2cmの裂傷を認め,縫合閉鎖した.術後血行動態は改善したが,意識は回復せず救命にはいたらなかった.心タンポナーデが診断されたら,気道確保と心嚢ドレナージを行いつつ対応可能な救急施設へ救急搬送することにより救命率の向上が期待できると考えられた.
  • 篠原 玄, 白鳥 一明
    2006 年 35 巻 5 号 p. 299-303
    発行日: 2006/09/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は57歳,男性.大動脈基部置換術後第10病日ハロペリドール使用後から39℃台の高熱と横紋筋融解症が出現し,呼吸,循環動態の悪化にいたった.診断に苦慮し精神科医の診察を経て悪性症候群(NMS)不全型の診断のもと,第17病日よりダントロレン投与を開始した.ダントロレン使用後速やかなCKの低下をみた.NMSは強い全身状態の悪化をひき起こすため,とくに心臓手術周術期においては早期診断,治療の開始が望ましい.原因薬剤をはじめ起こりやすい状況の認識のうえで,筋強剛や精神症状といった早期段階の症状に注意すること,そして疑われれば速やかに他科の介入のもと薬物治療を検討することが重要と思われた.また,人工弁置換術後の場合は人工弁感染(PVE)との鑑別が問題となり,熱型,炎症反応などが鑑別に重要な所見と思われた.
  • 嶋田 徳光, 内田 直里, 柴村 英典, 岩子 寛, 小澤 優道
    2006 年 35 巻 5 号 p. 304-307
    発行日: 2006/09/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    急性B型大動脈解離に腹部臓器虚血を合併した場合の予後は不良であり,臓器虚血の予測・手術時期の決定が重要である.症例は40歳,女性.Marfan症候群.急性III b型解離に対して保存的治療を行っていたが,経過中にabdominal anginaをくり返した.CT・大動脈造影で,胸部大動脈の真腔が高度狭小化し,また,腹部大動脈が上腸間膜動脈分枝直下で真腔が完全閉塞していた.高めの血圧コントロール,ヘパリン・Prostaglandin E1投与で,腹部臓器虚血を予防し,準緊急的に弓部大動脈置換術・open stent graftingを施行した.術後は症状が軽快し,経過良好であった.
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