日本心臓血管外科学会雑誌
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36 巻 , 6 号
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  • 松村 剛毅, 新岡 俊治, 日比野 成俊, 斎藤 聡, 坂本 貴彦, 市原 有起, 保々 恭子, 宮本 真嘉, 黒澤 博身
    2007 年 36 巻 6 号 p. 309-314
    発行日: 2007/11/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    2001年9月より2004年12月の間に再生血管を用いて外科手術を行った44症例につき,その中期遠隔期の成績を検討した.ポリl乳酸(24例)またはポリグリコール酸(20例)を補強材とし,内外側にスポンジ状のポリカプロラクトンとポリ乳酸の共重合体を塗布したハイブリッドポリマーをパッチまたは導管として使用した.術当日にFicoll法により骨髄単核球細胞を分離し,ポリマー上に播種,移植した.再生血管を用いて,肺動脈形成または右室流出路形成術を16例に,フォンタン型手術を28例に行った.対象は,男性(児)19例,女性(児)25例で,手術時平均年齢は7.4±6.4歳,術後在院平均日数は42±23日であった.再手術時に再生血管を使用した例は18例で,うち14例が先行手術時に自己心膜やウシ心嚢膜パッチにより肺動脈形成術が行われており,4例がAPCフォンタン術,Björk,Septationからの転換例であった.病院死亡は認められなかった.全症例の最終経過観察日ないしイベントまでの平均観察期間は3.0±1.3年であった.再生血管に関連しない心不全死を遠隔期に3例,脳出血死を1例認めた.再生血管に関連する再手術例は2例であった.再生血管に関連しない再手術1例,グラフトの閉塞1例,グラフトの狭窄などに対するPTA介入例5例を認めた.生分解性ポリマーと自己細胞による再生血管は,再手術時などに使用できる有用な代用生物(生体適合性)補填物である.内皮化など組織学的にも既存の人工物よりも有利であり,ワーファリンの回避や血栓の防止などに寄与すると考えられる.
  • 岡田 健次, 田中 裕史, 森本 直人, 宗像 宏, 浅野 満, 松森 正術, 北川 敦士, 川西 雄二郎, 中桐 啓太郎, 大北 裕
    2007 年 36 巻 6 号 p. 315-320
    発行日: 2007/11/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    最近7年間に施行した大動脈基部手術97例のうち,9例(9.3%)に大動脈弁輪破壊を伴った.男性8例で,平均年齢は55歳であった.うち4例が活動期自己弁感染性心内膜炎であった.一方,4例に人工弁感染性心内膜炎(PVE)を認め全例が活動期であった.4例中2例は大動脈弁置換術後,2例では大動脈基部置換術後のPVEであった.残りの1例は大動脈炎に対する大動脈弁置換術後症例で人工弁の約3/4周が離脱し,心室中壁に大きな空洞を認めた.手術は膿瘍腔を有する場合には最大限にデブライドメントし,弁輪に大きな欠損部位が存在すれば心膜パッチで弁輪を再構築した.基部再建には組織に対して機械的適合性の良好な自己肺動脈グラフトやステントレス生体弁を選択し,4例にRoss手術,5例にステントレス生体弁を使用した.病院死亡,遠隔死亡は認めず,術後5年の心事故回避率は66.7%と良好な結果が得られた.
  • 小野口 勝久, 橋本 和弘, 東 茂樹, 高倉 宏充, 蜂谷 貴, 川田 典靖, 井上 天宏, 高橋 辰郎, 佐々木 達海
    2007 年 36 巻 6 号 p. 321-324
    発行日: 2007/11/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    1994~1999年の間に単独冠動脈バイパス術を施行され術後の冠動脈造影を完了している症例中,再造影の承諾が得られた60症例に対して冠動脈造影を施行した.術後の平均観察期間は84ヵ月,バイパス総数134本,吻合総数162ヵ所であった.84ヵ月時の左内胸動脈グラフト:静脈グラフトの開存率は0.85:0.82で両群に有意差はなかった.また,吻合部位別にみた場合の開存成績は,前下行枝:回旋枝:右冠動脈それぞれ0.84:0.78:0.76であり,前下行枝へのバイパス開存成績が優れているものの3者間に有意差はなかった.標的冠動脈の狭窄度が75%以下:90%以上で分類した場合のグラフト開存成績は0.69:0.86と有意差(p=0.0003)を認めるが,この差は急性期の開存成績の差に起因するものであった.60症例中10例に心症状の再発を認め,うち6例はグラフト不全に起因するものであったが,残り4例は右冠動脈の新規病変に起因するものである.また,12例(20%)は無症状ながら今回造影時に新規の冠動脈病変を指摘され,PCIを施行されている.
  • 中村 浩己, 齋藤 洋輔, 浅井 友浩, 村上 美樹子, 須田 優司, 山口 裕己
    2007 年 36 巻 6 号 p. 325-328
    発行日: 2007/11/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    冠動脈肺動脈瘻に冠動脈瘤を合併するのは希である.今回われわれは,上記合併例に対する1手術例を経験したので報告する.症例は73歳,女性.胸部圧迫感があり,前医で縦隔腫瘍が疑われたため紹介された.心臓カテーテル検査で,左前下行枝より分枝する太い流入血管を介して最大径5cmの冠動脈瘤が造影され,さらに肺動脈に流入する像が認められた.また,右冠動脈にも冠動脈肺動脈瘻がみられた.以上により,冠動脈肺動脈瘻を伴った巨大冠動脈瘤と診断された.手術は,胸骨正中切開・人工心肺・心停止下に,冠動脈瘤切除・縫合閉鎖および冠動脈肺動脈瘻閉鎖術を施行した.経食道心エコーでシャントの消失を確認した.術後経過は良好で,冠動脈造影で冠動脈瘤と異常血管の消失を確認し,術後11日目に独歩退院された.人工心肺を用いることにより冠動脈瘤を安全に切除することができ,異常血管の同定や術後のシャント消失確認には経食道心エコーが有用であった.
  • 遊佐 裕明, 西谷 泰, 村田 明, 齋藤 典彦, 星野 修一
    2007 年 36 巻 6 号 p. 329-332
    発行日: 2007/11/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は39歳,女性.37歳のときに心雑音を指摘され,当院循環器内科を受診した.心エコー上,僧帽弁逆流(MR)と大動脈弁逆流(AR)をmild認め,定期的に経過観察を受けていた.39歳時に心エコー上MRはsevereに,ARはmoderateになったため,手術適応とされた.混合性結合織病のためステロイド内服中で,また,深部静脈血栓症の既往があったため,合併症の精査を行ったところ,抗リン脂質抗体症候群(APS)の診断を得た.術前にステロイドパルス療法と血漿交換療法を行い,手術に臨んだ.手術は生体弁による2弁置換術を行った.術翌日に,血小板数の急激な減少を認めたため,劇症型APSと診断し,ステロイドパルス療法,大量免疫グロブリン療法,血漿交換療法を併用したところ,術後3日目に血小板数は増加に転じた.APSは手術などを契機に劇症化し,多臓器不全に陥ることがあり,その診断は難しく,また治療法もいまだ確立されておらず,厳重な周術期管理が必要である.
  • 南 智行, 井元 清隆, 鈴木 伸一, 内田 敬二, 軽部 義久, 伊達 康一郎, 郷田 素彦, 初音 俊樹, 益田 宗孝
    2007 年 36 巻 6 号 p. 333-336
    発行日: 2007/11/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は74歳,女性,主訴は労作時息切れ.心臓超音波検査では左室壁運動は良好であり(LVELF70.2%),左房左室の拡大を認めた(LAD53.4mm,LVDd58.5mm).僧帽弁は後尖の肥厚,可動性の低下を認め,弁輪にエコー輝度の増強する部分を認めた.カラードップラーでは,左房後尖側に向かう逆流jetを認めたが,前尖の逸脱は認めなかった.高度僧帽弁閉鎖不全症の診断で手術施行した.僧帽弁を観察すると限局した後尖弁輪の石灰化によって後尖P2が短縮しており,この部位が逆流の原因と考えられた.弁尖矩型切除,弁輪縫縮による僧帽弁形成術を施行した.術後経過は良好であり,術後の心臓超音波検査で僧帽弁閉鎖不全はtrivialまで改善していた.弁輪石灰化を伴う僧帽弁閉鎖不全症に対しては,形成術は不向きとされていたが,本症例のように石灰化が限局している症例に対しては弁尖切除,弁輪縫縮によって形成術は可能であると考えられた.
  • 松本 拓也, 福田 篤志, 前原 喜彦, 岡留 健一郎
    2007 年 36 巻 6 号 p. 337-341
    発行日: 2007/11/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    超高齢者のショックを伴った腹部大動脈瘤破裂例を救命したので報告する.症例は96歳,女性.老健施設入所中,突然の上腹部痛,血圧低下,意識消失を認めたため,近医を受診しエコーで腹部大動脈瘤破裂を疑われ当院救急搬送となった.入院後CTを施行し,後腹膜腔に血腫を認め,腹部大動脈瘤破裂と診断した.手術室搬送準備中,ショック状態となり急速輸液を行い血圧を維持しながら即搬送し,緊急手術を行った.開腹時,腎動脈上より左側腹部を中心に後腹膜血腫を認めFitzgerald分類III型であった.手術は,腎動脈下大動脈の剥離中,血圧測定不能となったため即座に用手的に腎動脈下大動脈を圧迫し,血圧の回復と同時に腎動脈下大動脈をひき続き剥離し,鉗子で遮断した.瘤側壁に径1cmの破裂口を認めた.18×9mm InterGard woven polyester graftを用いた人工血管置換術を行った.破裂から病院到着までは180分,病院到着から手術開始までは137分,ショック状態に陥ってから大動脈遮断までは65分,大動脈遮断時間は100分,手術時間は4時間3分,術中出血量は1,850mlであった.術後,虚血性腸炎,胆のう炎を発症したが,いずれも保存的治療により軽快し術後20日で転院した.超高齢者でショック状態にあっても的確なチーム医療により救命することができた.
  • 濱田 聡, 渡邉 善則, 塩野 則次, 川崎 宗泰, 藤井 毅郎, 小澤 司, 益原 大志, 小山 信彌
    2007 年 36 巻 6 号 p. 342-344
    発行日: 2007/11/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,本態性血小板血症(essential thrombocythemia: ET)を合併した冠動脈バイパス術(CABG)を経験した.症例は73歳の男性,狭心症精査入院でLMT(左主幹部)を含む3枝病変を認め,CABGを予定したが血液データ上,3系統の血球異常を認め,ETと診断された.ETは慢性骨髄増殖性疾患に分類され血小板異常による出血傾向,血栓傾向の両面を併せもつ疾患である.ETを合併する虚血性心疾患は血栓による心筋梗塞の例が多く,狭心症で冠動脈の血行再建を要する症例は少ない.ETを合併する症例に対するCABGでは周術期の出血と術後のグラフト閉塞が問題となる.DNA合成阻害剤であるヒドロキシカルバミドを用い血小板数,機能をコントロールし,CABGを施行し良好な経過を得た.術後7年を経過した今も心事故およびETによる合併症もなく元気に社会生活を営んでおり,若干の文献的考察を加え報告した.
  • 小野 公誉, 竹本 直明, 黒田 弘明
    2007 年 36 巻 6 号 p. 345-347
    発行日: 2007/11/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    肺動脈瘤は,動脈管開存症などの先天性シャント疾患に合併することが多いが,その発生頻度は不明確で治療法も確立されたものはない.われわれは心房中隔欠損症(ASD)術後に続発したと思われた肺動脈瘤に対し手術を行ったので,文献的考察を加えて報告する.症例は47歳女性で,9歳時にASDに対する閉鎖術を受けた既往がある.甲状腺腫瘤の精査中に,肺動脈主幹部の拡張を指摘され入院した.精査で肺動脈弁閉鎖不全症と,肺動脈主幹部から両側主肺動脈に及ぶ70mm大の肺動脈瘤の診断を得て,肺動脈弁置換および肺動脈T字型人工血管置換術を行った.術後2年経過し,元気に外来通院中である.
  • 高本 やよい, 國友 隆二, 佐々 利明, 坂口 尚, 萩原 正一郎, 森山 周二, 高志 賢太郎, 川筋 道雄
    2007 年 36 巻 6 号 p. 348-351
    発行日: 2007/11/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    細菌性眼内炎は予後不良で失明にいたることが多いが,感染性心内膜炎と眼内炎の合併は希であり文献的にも報告は少ない.今回われわれは,眼内炎と三尖弁位感染性心内膜炎を合併した症例を経験したので報告する.症例は66歳,男性.Adams-Stokes発作を伴う完全房室ブロックの診断でペースメーカー植込み術を受けたあと,発熱のため再入院し抗菌薬を投与されていた.植込み術1ヵ月後に視力障害,意識障害,血小板数低下を認めたため当院紹介となった.入院時に両眼周囲発赤・腫脹と著明な結膜浮腫を認め,経食道心エコーでは三尖弁輪部に18×13mmの可動性に富むvegetationを認めた.DIC治療後にペースメーカー抜去,三尖弁後尖切除・形成術と同時に両側眼球摘出術を施行した.ペースメーカーは心外膜リード式とした.経過は良好で術後43日目に退院した.感染性心内膜炎は失明の危険が高い細菌性眼内炎を合併することがあり,治療経過中の眼症状出現に注意する必要があると思われた.
  • 大倉 一宏, 菊池 洋一, 椎久 哉良, 光部 啓治郎
    2007 年 36 巻 6 号 p. 352-355
    発行日: 2007/11/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    われわれは再弓部全置換術を2例経験したので報告する.症例1は76歳,男性.3回の弓部大動脈手術の既往がある.喀血をきたし,弓部全置換術後の末梢側吻合部仮性瘤破裂,肺内穿破と診断,同日緊急手術となった.症例2は77歳,男性.弓部全置換術および下行置換術の既往がある.嗄声が出現し,遠位弓部大動脈瘤と診断,手術目的に入院した.2症例ともまず体外循環を確立した.冷却開始後に胸骨正中切開し,癒着剥離を施行した.前回の弓部分枝人工血管を一部残すように離断し,ここから選択的脳灌流を行い,再弓部全置換術を施行した.症例1は誤嚥性肺炎のため第150病日目に失った.症例2は現在リハビリ目的に入院中である.再胸骨正中切開を必要とする胸部大動脈瘤再手術成績はいまだ良好とはいえず,術前の詳細な術式の検討と術後の厳重な呼吸器管理が重要と思われた.
  • 横川 雅康
    2007 年 36 巻 6 号 p. 356-360
    発行日: 2007/11/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    医原性仮性動脈瘤に対しては,これまで外科的修復術や超音波プローブによる圧迫といった治療が行われてきた.しかしこれらの治療法には,手術侵襲,治療中の不快感や再発といった難点があった.今回報告する超音波ガイド下トロンビン注入療法は短時間に治療が終了し,また,副作用や患者の不快感もほとんどなく,再発率も低いなどの長所を有するとされている.カテーテル操作後の医原性大腿仮性動脈瘤3例に対し超音波ガイド下トロンビン注入療法を試みた.カテーテルサイズはそれぞれ6Fr,8Fr,11.5Frで,2例は抗凝固療法施行中であった.発症から治療までの期間は1~42日であった.いずれも超音波ガイド下に経皮的穿刺でヒトトロンビンを注入した.2例は1回の治療で治癒し再発を認めなかったが,1例は再発をくり返し最終的に外科的修復術を必要とした.末梢動脈塞栓やトロンビンに起因するアレルギーなど手技に伴う合併症は認めなかった.カテーテル操作後に生じた大腿仮性動脈瘤に対し超音波ガイド下トロンビン注入療法は最初に試みてよい治療法と考えられた.
  • 本橋 雅壽, 安達 昭, 瀧上 剛, 安田 慶秀, 佐々木 重幸, 松居 喜郎
    2007 年 36 巻 6 号 p. 361-365
    発行日: 2007/11/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は22歳,男性.心不全のため他医に入院,精査により拡張型心筋症,僧帽弁逆流III度と診断された.内科的治療でやや軽快しNYHA IIとなったが,僧帽弁逆流は改善せず,また,β-プロッカーの導入が困難で手術目的で当科転科となった.僧帽弁逆流の改善による左室壁運動の改善,両心室ペーシングによる左室壁運動の改善,さらに術中の判断で左室形成術も考慮し手術に臨んだ.エホバの証人派信者の症例で無輸血が絶対条件であることも,手術適応の重要な要素と判断し手術を施行した.僧帽弁複合体形成術(mitral complex reconstruction),両心室pacing generator挿入術を無輸血で施行した.左室形成術は施行しなかった.術前のエリスロポイエチンの投与,人工心肺の回路の短縮,陰圧脱血併用による回路のsize down,限外ろ過の施行および術後の造血剤の投与を必要としたが,術中,術後を無輸血で経過し,良好な経過でNYHA Iと改善,術後13日で転科となった.僧帽弁複合体形成術による僧帽弁逆流の改善が臨床症状を改善し,また,NYHA IIと比較的早期の症例に対する手術が無輸血手術を可能にした.しかし,患者は22歳と若年であり,その長期予後は慎重な観察が必要である.
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