日本心臓血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1883-4108
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36 巻, 4 号
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  • 升本 英利, 島本 光臣, 山崎 文郎, 中井 真尚, 藤田 章二, 糸永 竜也
    2007 年 36 巻 4 号 p. 175-179
    発行日: 2007/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
  • 久世 真悟, 藤田 広峰
    2007 年 36 巻 4 号 p. 180-183
    発行日: 2007/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,男性.特発性血小板減少性紫斑病(ITP)のため脾臓摘出術を行った.術後,血小板の増加をみたが,血小板は再び減少した.以前より指摘されていた腹部大動脈瘤がしだいに増大し,γ-グロブリンを投与したのち,腎動脈下腹部大動脈瘤に対してYグラフト人工血管置換術を施行した.血小板減少はみられるもののステロイドの投与は行わず経過観察されていたが,Yグラフト1年後に左下肢深部静脈血栓症を発症した.ITPでは血小板数は減少しているが血小板凝集活性は亢進しており,血栓症の発生も念頭に入れた治療が必要である.
  • 泉 賢太, 江石 清行, 橋詰 浩二, 多田 誠一, 山根 健太郎, 高井 秀明, 谷川 和好, 三浦 崇, 中路 俊
    2007 年 36 巻 4 号 p. 184-187
    発行日: 2007/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は63歳,男性.20年前より肥大型心筋症(HCM)として加療されていた.2年前より,抗不整脈薬投与にもかかわらず心室頻拍(VT)をくり返し,ICD (implantable cardioverter defibrillator)植込み術を施行した.また,拡張相肥大型心筋症の病態を呈していた.その後もVTをくり返しICDが頻回に作動した.薬剤抵抗性であり,アブレーションを行うため,EPS (electrophysiological study)を施行した.CARTO system (electroanatomical mapping system)によるactivation mapでは,VTは左室後側壁の一部を最早期興奮部位として周囲に広がった.心内膜下からの計2回のアブレーションでもVTは停止せず,起源は心外膜側のリエントリーと考えられ,左室後側壁部分切除術を施行した.術後,VTの出現はなくなった.心外膜側起源と考えられた拡張相肥大型心筋症による薬剤抵抗性のVTに心筋切除が著効した症例を経験したので報告する.
  • 丸田 一人, 尾本 正, 石川 昇, 廣田 真規, 大井 正也, 福隅 正臣, 大野 正裕, 川田 忠典, 手取屋 岳夫
    2007 年 36 巻 4 号 p. 188-192
    発行日: 2007/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は6ヵ月間の発熱病歴を有し,小児期より心室中隔欠損症(VSD)と診断されていた44歳の男性である.平成16年7月,VSDに伴った感染性心内膜炎による大動脈弁閉鎖不全症と診断し,生体弁による弁置換術およびVSDのパッチ閉鎖術を施行した.しかし術後,炎症反応は陰転化せず,術後3ヵ月目に血中からCandida albicansが検出された.人工弁感染が疑われたため,術後3.5ヵ月でFree styleブタ大動脈弁により大動脈基部置換およびVSDの再閉鎖術を行った.その後,抗真菌剤の内服を継続して外来経過観察していたが,平成17年5月に再び発熱が出現,CTで左総腸骨動脈瘤を認め,Candida albicansによるmycotic aneurysmを疑い手術を施行した.活動型感染性心内膜炎では抗生剤投与が長期にわたると真菌症を併発することを認識すべきである.真菌性感染性心内膜炎は感染制御の困難性から長期予後は不良とされ,術後の経過観察は長期間,厳重に行うことが必要である.
  • 篠原 玄, 橋本 和弘, 坂本 吉正, 奥山 浩, 花井 信, 井上 天宏, 中村 賢
    2007 年 36 巻 4 号 p. 193-197
    発行日: 2007/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    20歳時に脳梗塞の既往をもち,プロテインC欠乏を伴った修正大血管転位症,左側房室弁閉鎖不全の20歳男性に対しCarpentier-Edwards牛心膜弁により人工弁置換術を施行した.周術期はヘパリンで厳格な抗凝固療法を行い,その後ワーファリンへの移行を行った.血液検査上,ワーファリン移行時に-過性のα2プラスミンインヒビター・プラスミン複合体(PIC),トロンビン・アンチトロンビンIII複合体(TAT)の上昇がみられた.これに対してヘパリンの増量を行ったがAPTTの十分な延長が得られず,潜在的凝固優位状態が示唆された.しかし,臨床的な血栓症の発症は認めなかった.術後経過は良好で2年経過した現在までに血栓性イベントはなく経過しており,PT-INR2.5~3.5でワーファリンを調節している.周術期抗凝固療法,遠隔期血栓イベントを考慮した人工弁選択の点から,文献的考察を加えて報告する.
  • 安宅 啓二, 坂田 雅宏, 宗実 孝, 岩橋 和彦
    2007 年 36 巻 4 号 p. 198-201
    発行日: 2007/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は75歳,男性.心筋梗塞,多発性脳梗塞,胃癌根治術の既往を有す腹部大動脈瘤症例のためbifurcate型井上ステントグラフト内挿術を施行,術後4年目にendoleakを認めたが,瘤拡大はなく,厳重な経過観察を受けていた.術後5年目に突然の両下肢の急性動脈閉塞症状が出現,緊急来院した.大動脈造影により,ステントグラフト留置部直上で,血流は完全に途絶していたことから,グラフト閉塞による急性大動脈閉塞と診断した.緊急腋窩-両大腿動脈バイパス術を施行し良好に経過した.術後2年が経過するが,大動脈瘤は完全に血栓化したままで,瘤拡大も認めず順調に経過している.
  • 前田 剛志, 戸谷 直樹, 金子 健二郎, 黒澤 弘二, 根岸 由香, 金岡 祐司, 大木 隆生
    2007 年 36 巻 4 号 p. 202-205
    発行日: 2007/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は53歳,男性.平成10年ころより左足趾痛を認めた.半年後,同部位に潰瘍が生じたために他院で左第5趾をデブリードメントし抗血小板薬などによる保存的治療を行ったが,改善しないため当院を紹介された.腹部CTで腎動脈下腹部大動脈に限局性で全周性の石灰化病変を認め,動脈造影検査でも同部位に一致して石灰化を伴う狭窄病変を認めた.病変より末梢の血管に閉塞性病変を認めなかったことからcoral reef aortaを塞栓源とするblue toe syndromeと診断した.手術は後腹膜経路により塞栓源である病変を切除したのち,人工血管置換術と腰部交感神経節切除術を行った.術後経過は良好で第37病日に退院した.薬物療法は継続し,術後47日目で潰瘍は治癒した.Coral reef aortaの治療戦略としては石灰化の局在位置,下肢虚血症状やblue toe syndromeなどの有無を考慮し決定すべきであると考えられた.塞栓症を合併しかつ高度の石灰化を伴う本症例に経皮的血管形成術(PTA)は禁忌と考えられる.Coral reef aortaと足趾潰瘍合併症例に対して,塞栓源切除術,血行再建と腰部交感神経節切除術を行い良好な結果を得た.
  • 國重 英之, 明神 一宏, 石橋 義光, 石井 浩二, 岡 潤一
    2007 年 36 巻 4 号 p. 206-210
    発行日: 2007/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,男性.突然胸苦が出現し,CT施行で急性大動脈解離と診断され当院へ救急搬送された.解離は上行大動脈から両側総腸骨動脈にまでいたり偽腔は開存していた.来院時,右大腿動脈触知不能で右下肢全体蒼白で疼痛・痺れを訴えており,右下肢全体の虚血を合併していた.緊急手術は選択的脳分離体外循環下上行置換+F-Fバイパス術を施行した.術後,虚血下肢再灌流による血行再建後症候群(MNMS)が発症し持続血液透析を開始した.術後3日目に脳梗塞・下肢F-Fバイパス閉塞を発症した.脳梗塞治療およびグラフト内血栓摘除術を施行し対応した.術後6日目に血小板数は1.1万まで著明に低下,ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)を疑いヘパリン中止,アルガトロバン投与を開始した.術後12日目での抗ヘパリン-PF4複合体抗体価は強陽性であった.以降,血栓塞栓症の増悪は認めず,血小板数も徐々に増加した.ワーファリン内服による抗凝固治療ののち,リハビリテーション治療目的に転院となった.ヘパリン使用時におけるHIT発症の可能性を念頭におき,その病態を認識し適切な治療法の選択により,重篤な血栓合併症を防止することが重要である.
  • 大川 洋平
    2007 年 36 巻 4 号 p. 211-214
    発行日: 2007/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    心室中隔解離を伴うValsalva洞動脈瘤に対して外科治療を施行し良好な結果を得たので若干の文献的考察を加え報告する.症例は44歳,女性.43歳時に完全房室ブロックのためペースメーカー植込みをされている.その1年後に動悸,意識消失などの症状が出現したため精査したところ心室中隔解離を伴うValsalva洞動脈瘤ならびに大動脈弁閉鎖不全III度を認めた.このため外科治療目的で当科へ紹介となった.手術は完全体外循環下に大動脈弁置換術ならびにValsalva洞動脈瘤開口部パッチ閉鎖術を施行した.さらに心内膜リードの抜去および,心外膜リードの移植を行い,新たにペースメーカー植込み術を施行した.術後経過は良好であり術後の心エコーでは人工弁ならびに弁置換部には異常を認めず,Valsalva洞動脈瘤の閉鎖を認めた.本症は世界的にも希であり,完全房室ブロックなどの伝導障害により初発することがある.外科治療として瘤開口部パッチ閉鎖ならびに大動脈弁置換術が有用であると考える.
  • 中村 浩己, 須田 優司, 齋藤 洋輔, 村上 美樹子, 浅井 友浩, 山口 裕己
    2007 年 36 巻 4 号 p. 215-217
    発行日: 2007/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    冠動脈バイパス術(CABG)術後の急性大動脈解離は希であるが重篤な合併症である.今回われわれは,CABGを施行した翌日に急性大動脈解離を発症し,緊急手術を行い救命しえた1例を経験したので報告する.症例は73歳,女性.狭心症のため,オフポンプCABG(3枝:RITA-LAD,LITA-OM,SV-PDA)を施行した.静脈グラフトの中枢側は上行大動脈に吻合した.術翌日,呼吸リハビリを行っていたときに,突然,著明な高血圧(200mmHg前後)となり,ほぼ同時に背部痛を訴えた.造影CT検査を行い,大動脈解離(Type A)と診断した.ただちに緊急手術で上行大動脈置換術を施行した.解離のエントリーは静脈グラフトの中枢側吻合部であった.術後経過は良好で,術後24日目に独歩で前医に転院となった.CABGのさいには,グラフトの中枢側吻合が大動脈解離の原因となり,かつ術後超急性期に発生しうることを知っておくべきである.
  • 中村 浩己, 村上 美樹子, 浅井 友浩, 齋藤 洋輔, 須田 優司, 山口 裕己
    2007 年 36 巻 4 号 p. 218-220
    発行日: 2007/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,男性.胸部レントゲン写真上,異常陰影を指摘され,精査目的で紹介された.胸部造影CT検査を行ったところ,最大径4cmの胸腔内左鎖骨下動脈瘤が認められ,手術適応と判断された.手術は,分離肺換気下,左後側方開胸(第4肋間)により行われた.左大腿動静脈より人工心肺を確立し,25℃で循環停止(選択的脳灌流)とした.1分枝付き人工血管(Hemashield 26mm)を用いて遠位弓部置換を行い,8mmの人工血管を間置して左鎖骨下動脈を再建した.術後経過は良好で,同日夜に抜管し,翌日にICUを退室した.術後7日目に行った胸部造影CT検査で良好な結果を確認し,術後13日目に独歩退院された.
  • 浅野 竜太, 小寺 孝治郎, 須田 優司, 佐々木 章史, 池田 昌弘, 片岡 豪, 竹内 靖夫
    2007 年 36 巻 4 号 p. 221-224
    発行日: 2007/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は50歳,男性.平成11年に当科でCABG(LITA-LAD,RA-RCA,SVG-OM-PL)を施行されていた.今回,急性I型大動脈解離を発症し緊急手術を行った.術前のCTで冠動脈バイパスはすべて開存していた.手術は再胸骨正中切開アプローチで,右腋窩動脈送血,上下大静脈の2本脱血で人工心肺を確立したのち,超低体温循環停止(直腸温23.6℃),逆行性脳灌流下に上行大動脈置換術を行った.心筋保護は間歇的逆行性冠灌流を使用した.RAおよびSVGは無傷であったため動脈壁ごと一塊に島状に切離して人工血管壁に再吻合した.人工心肺からの離脱は容易であり術後の心機能も問題なかった.また,術後の胸部CTで冠動脈バイパスの開存を確認できた.冠動脈バイパス術後遠隔期に発症した急性I型大動脈解離に対して超低体温循環停止と間歇的逆行性冠灌流を用いて良好な心筋保護が得られ,かつ再建を工夫することですべてのグラフトを温存することができた.
  • 佐々木 昭彦, 中島 慎治, 藤井 明, 宮島 正博
    2007 年 36 巻 4 号 p. 225-227
    発行日: 2007/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    2001年1月から2006年9月までに,腹部大動脈の全周性の石灰化を伴った大動脈腸骨動脈閉塞症(AIOD)の患者4例(透析患者2例含む)と高位大動脈閉塞症(HAO)の5例に対して,胸部大動脈(上行大動脈8例および下行大動脈1例)から両側大腿動脈へ非解剖学的バイパス手術を施行した.年齢は46~80歳,平均69歳,男6例,女3例で,HAOの2例は急性閉塞で,うち1例は下肢の麻痺を伴っていた.AIODの2例はsmall aorta syndromeを示した.手術時間は平均2時間25分で出血はほとんどなかった.腹膜透析患者のAIODの1例をCAPDチューブによる腹膜炎併発のため術後2週目に失ったが,そのほかは生存,HAOの下肢の麻痺も術後改善した.術後3例に人工血管そのものの合併症であるperigraft seromaを合併した.人工血管の開存率は術後2年で100%と良好であった.
  • 西本 昌義, 土田 隆雄, 秋元 寛, 月山 芙蓉, 羽森 貫, 福本 仁志
    2007 年 36 巻 4 号 p. 228-232
    発行日: 2007/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は52歳,男性.呼吸困難を主訴に他院に救急搬送された.緊急気管挿管下にCTを施行したところ,右側大動脈弓を認め弓部に気管と食道の後方で左方に突出する最大径約10cmの大動脈瘤が存在し,また,縦隔内血腫を伴っており,破裂の判断で当センター搬送とされた.降圧と鎮静下に解剖学的検討を十分に行い,来院後5日目に手術を行った.胸骨正中切開で到達し,超低体温循環停止下に右鎖骨下動脈末梢側を切開し,open stent法により直径34mm,長さ15cmのstent graftを留置,中枢側吻合後,左鎖骨下動脈を非解剖学的に再建した.経過は良好であったが,第12病日に突然の発熱,CT,食道造影で大動脈食道瘻が確認された.抗生剤で感染コントロールを十分に行い,初回術後26日に食道亜全摘術+食道胃管吻合+瘤内大網充填術を行った.これにより感染は制御され,初回術後73日に転院,術後1年半の現在感染徴候なく社会復帰している.
  • 緑川 博文, 菅野 恵, 石川 和徳, 森島 重弘, 小野 隆志
    2007 年 36 巻 4 号 p. 233-236
    発行日: 2007/07/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    外傷性胸部大動脈破裂に対しステントグラフト内挿術を施行し救命しえた症例を経験したので報告する.症例は54歳,男性.交通外傷による右鎖骨骨折を伴う外傷性胸部大動脈破裂のため救急搬送となった.大動脈狭部付近に仮性瘤およびその周囲に血腫を認めた.解剖学的にステントグラフト内挿術が可能と判断した.全身麻酔下でステントグラフトを作製し,留置に成功した.術後造影CTで破裂部位の修復および血腫の消失を認め,術後13日に退院となった.外傷性胸部大動脈破裂に対するステントグラフト内挿術は,早急にかつ低侵襲に行うことが可能であり,有効な治療法であると考えられた.
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