超高齢者のショックを伴った腹部大動脈瘤破裂例を救命したので報告する.症例は96歳,女性.老健施設入所中,突然の上腹部痛,血圧低下,意識消失を認めたため,近医を受診しエコーで腹部大動脈瘤破裂を疑われ当院救急搬送となった.入院後CTを施行し,後腹膜腔に血腫を認め,腹部大動脈瘤破裂と診断した.手術室搬送準備中,ショック状態となり急速輸液を行い血圧を維持しながら即搬送し,緊急手術を行った.開腹時,腎動脈上より左側腹部を中心に後腹膜血腫を認めFitzgerald分類III型であった.手術は,腎動脈下大動脈の剥離中,血圧測定不能となったため即座に用手的に腎動脈下大動脈を圧迫し,血圧の回復と同時に腎動脈下大動脈をひき続き剥離し,鉗子で遮断した.瘤側壁に径1cmの破裂口を認めた.18×9mm InterGard woven polyester graftを用いた人工血管置換術を行った.破裂から病院到着までは180分,病院到着から手術開始までは137分,ショック状態に陥ってから大動脈遮断までは65分,大動脈遮断時間は100分,手術時間は4時間3分,術中出血量は1,850mlであった.術後,虚血性腸炎,胆のう炎を発症したが,いずれも保存的治療により軽快し術後20日で転院した.超高齢者でショック状態にあっても的確なチーム医療により救命することができた.
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