日本心臓血管外科学会雑誌
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42 巻 , 6 号
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巻頭言
第43回日本心臓血管外科学会学術総会を主催して
原著
  • 日隈 智憲, 岩城 隆馬, 深原 一晃, 山下 昭雄, 土居 寿男, 武内 克憲, 名倉 里織, 大高 慎吾, 芳村 直樹
    2013 年 42 巻 6 号 p. 457-461
    発行日: 2013/11/15
    公開日: 2013/12/04
    ジャーナル フリー
    【背景】Fontan症例では静脈圧の上昇による遠隔期のうっ血性肝炎・肝硬変が報告されている.近年,その指標として肝線維化マーカーが測定され始めているが,それらとFontan循環との関連性はいまだ明らかではない.【方法】当院で経過観察されているFontan術後患者(Fontan completion : 1994年3月~2010年7月)で肝線維化マーカー(ヒアルロン酸:HA,レチノール酸結合蛋白:RBP,P-III-P,IV型コラーゲン7S : 4C7S,IV型コラーゲン:4Cの5種類)が測定され,かつカテーテル検査(肺動脈圧:PAP,PA index : PAI,肺血管抵抗:Rp,駆出率:EF,房室弁逆流:AVVR,心係数:CI)が行われている51例(計57回の検査)を対象とした.全症例(57件),術後1~2年(31例),術後4~6年(17例)および術後8~11年(9例)のカテーテル検査データと線維化マーカーとの相関を検討し,さらに全症例で線維化マーカーの正常群と異常群のカテーテル検査値の差を単変量および多変量にて解析した.【結果】全体ではHAでRp,4C7SでPAPと相関が認められた.また,HAでPAPとEF,4C7SでRp,4CでPAPと弱い相関が認められた.術後1~2年ではHAにRp,4C7Sと4CにPAPとの相関が認められ,術後4~6年では4C7Sと4CにPAPとの相関が認められた.術後8~11年ではHAにPAPとEF,4C7SにAVVRとの強い相関が認められた.HAと4C7Sでは経年的にPAPとの相関が強くなる傾向があった.その他のマーカーには一貫した傾向は認められないものの,PAP,Rpとの相関が比較的強いものが多く,Fontan循環を反映した結果となった.短期・中期遠隔期では明らかではないが,術後10年前後の長期遠隔期には心機能の指標となるEFやAVVRとの強い相関がHAや4C7Sで見られた.HA,RBP,P-III-P,4C7S,4Cの各カットオフ値を50 ng/ml,2.5 mg/dl,1.0 U/ml,6.0 ng/ml,200 ng/mlとし,各マーカーの正常群と異常群との間で,血行動態の指標を比較検討した.単変量解析では,4C7SにのみPAPに2群間での有意差が認められた.多変量解析では4C7SでPAPのみに有意差が認められた.また,各マーカーの重回帰分析ではHAはRpとEF,4C7Sと4CはPAPで予測されることが判った.【結語】HA,4C7Sはフォンタン術後遠隔期の肝線維化の指標となる可能性があり得ると考えられた.また,長期遠隔期には心機能をも反映する可能性が示唆された.
症例報告
  • 細田 進, 磯村 彰吾, 椎川 彰
    2013 年 42 巻 6 号 p. 462-465
    発行日: 2013/11/15
    公開日: 2013/12/04
    ジャーナル フリー
    遺残坐骨動脈は稀な血管奇形であり,頻度は0.01~0.06%と報告されている.今回われわれは遺残坐骨動脈慢性閉塞の1手術例を経験したので報告する.症例は59歳,女性.約50 m歩行での左下肢間欠性跛行を主訴として当院を受診した.来院時,左下肢の膝窩動脈,足背動脈,後脛骨動脈の拍動は触知しなかった.Ankle brachial index(ABI)は右1.05,左0.65であった.CT検査および血管造影検査では左内腸骨動脈より遺残坐骨動脈が認められ,直接膝窩動脈と交通していたが,坐骨レベルから左膝窩部まで閉塞していた.また,左浅大腿動脈は低形成であった.以上より完全型左遺残坐骨動脈の慢性閉塞による下肢虚血と診断し,血行再建術を施行した.手術は自家静脈グラフトを用いて,左総大腿動脈-膝上部膝窩動脈間バイパス術を行った.術後経過は良好で,ABIも左0.89と改善が認められた.
  • 瀧本 真也, 羽生 道弥, 新井 善雄, 長澤 淳, 御厨 彰義, 中根 武一郎, 寺西 宏王, 渡邊 隼, 辻 崇
    2013 年 42 巻 6 号 p. 466-470
    発行日: 2013/11/15
    公開日: 2013/12/04
    ジャーナル フリー
    症例は58歳,男性.大動脈弁閉鎖不全症に対し手術適応と判断されたが,既往のなかで歯科治療のさいの補綴物が原因の金属アレルギーの既往が判明した.当時の記録では金,鉄,白金,コバルト,クロム,銅,亜鉛に対しパッチテストで陽性を示していた.胸骨正中切開で行う開心術において通常使用される金属製の手術材料のうち,長期間体内に留置される可能性のある,胸骨サージカルワイヤーや一時的ペーシングワイヤー,血管結紮クリップと金属一般においてパッチテストを施行した.胸骨ワイヤーとペーシングワイヤーにアレルギー反応を認めた.他金属ではアルミニウム,錫,パラジウム,インジウム,イリジウムに陽性反応が出た.機械弁含有金属データより,CarboMedics社製機械弁とOn-X機械弁は使用可能と判断した.手術は本人希望にて胸骨正中切開アプローチとし,上行大動脈送血・右房脱血にて体外循環を確立後,CarboMedics社製機械弁(27 mm)で大動脈弁置換術を施行した.一時的ペーシングワイヤーは離脱のさいに必要であったため留置としたが術翌日に抜去した.胸骨は5号Ethibond糸を用いて閉鎖した.術後急性期および術後1年経過時点でアレルギー反応なく,経過良好である.
  • 奥田 紘子, 清水 幸宏, 生田 剛士, 小谷 真介, 藤井 弘史
    2013 年 42 巻 6 号 p. 471-474
    発行日: 2013/11/15
    公開日: 2013/12/04
    ジャーナル フリー
    症例は78歳,女性.20歳代から高血圧症に対し内服加療中であった.3カ月前より呼吸苦や動悸を伴う心不全症状が出現し,精査にて心房中隔欠損症,三尖弁閉鎖不全症,心房細動を伴う大動脈縮窄症と診断され当科に紹介された.手術は胸腹部正中切開にて心房中隔欠損閉鎖術,三尖弁輪縫縮術,左房Maze手術,上行大動脈-腹部大動脈(腹腔動脈上)人工血管バイパス術を一期的に施行した.術後経過は良好で,心不全症状と上下肢の血圧差は消失し,高血圧は1剤の降圧薬内服にてコントロール可能となった.78歳の心疾患を伴う大動脈縮窄症に対し一期的手術を行った自験例は,文献的には国内外を問わず最高年齢であった.70歳以上で大動脈縮窄症と診断される症例は稀であり,診断の遅延や手術方法に関し,文献的考察を加えて報告した.
  • 関 功二
    2013 年 42 巻 6 号 p. 475-479
    発行日: 2013/11/15
    公開日: 2013/12/04
    ジャーナル フリー
    63歳男性.2008年12月に腹部大動脈瘤に対し当科においてY型人工血管(16×8 mm Hemashield Gold®)置換術が施行されたが,2010年12月に右水腎症の診断で他院において右尿管ステントが留置された.水腎症は軽快し2011年7月に尿管ステントが抜去されたが,10月に腹部膨満感と肉眼的血尿が出現し,右水腎症再発の診断で尿管ステントが再留置された.しかし,その後も肉眼的血尿が持続するため精査加療目的に当院泌尿器科に紹介入院となった.造影CTでは明らかな瘻孔や尿管への造影剤漏出などの所見は認められなかったが,尿管ステント長期留置の既往があることや,尿路内に明らかな出血性病変が存在しないにもかかわらず肉眼的血尿が持続することから,人工血管右脚と右総腸骨動脈の吻合部での尿管動脈瘻形成が強く疑われた.感染の合併を疑わせる所見を認めなかったため,尿管動脈瘻に対して止血を目的に血管内治療を施行した.内腸骨動脈をコイル(TORNADO® 7 mm×3, 5 mm×2)塞栓し,人工血管右脚から右外腸骨動脈にかけてカバードステント(fluency plus® 10 mm×80 mm)を留置し,血尿は消失した.尿管動脈瘻に対する血管内治療によるカバードステント留置は長期成績が不明であるが,迅速かつ低侵襲で有効な方法であり,開腹手術に加えて治療方法のひとつとして検討されるべきと考える.
  • 村上 文彦, 市川 誠二, 碓氷 章彦
    2013 年 42 巻 6 号 p. 480-484
    発行日: 2013/11/15
    公開日: 2013/12/04
    ジャーナル フリー
    難治性の拡張障害による心不全症状を呈した心膜悪性中皮腫の1例を経験した.症例は67歳,男性.下腿浮腫を中心とした右心不全症状で発症し,入院加療を行い心不全は軽減したが,3カ月後に顔面浮腫,胸水が出現し,心不全の悪化として再入院管理となった.急速に進行したびまん性心膜肥厚による収縮性心膜炎により心不全が増悪するため,心膜開窓を目的に手術を行ったが心膜は全周にわたり肥厚著明で心筋組織と強固に癒着していたため,前面を広い範囲で開窓するにとどまった.術中診断はできず病理検査のカルレチニン染色陽性で悪性中皮腫と診断したが,術後心不全が増悪し術後22日に永眠された.心膜悪性中皮腫はきわめて稀であり,また術前診断は困難であり,予後不良である.しかし,心膜悪性中皮腫は発生増加が予想されるため,収縮性心膜炎治療においてつねに念頭に置かなくてはならない疾患である.
  • 猪狩 公宏, 工藤 敏文, 豊福 崇浩, 地引 政利, 井上 芳徳
    2013 年 42 巻 6 号 p. 485-488
    発行日: 2013/11/15
    公開日: 2013/12/04
    ジャーナル フリー
    高安動脈炎による動脈瘤に対する手術治療では,吻合部仮性瘤を高率に形成する傾向がある.今回,われわれは高安動脈炎に発生した胸部下行大動脈瘤に対しステントグラフト内挿術を施行し,良好な治療経過が得られている1例を経験したので報告する.症例は19歳,女性.11歳時に高安動脈炎と診断され,その際に胸部下行大動脈瘤を指摘されていたが,経過観察のために施行したCT検査にて,胸部下行大動脈瘤は最大短径60 mmと拡大傾向を認めたことよりステントグラフト内挿術を施行した.ステントグラフトはオリジナルZステントを骨格とし,被覆人工血管にthin wall polytetrafluoroethyleneを用いた自作ステントを使用した.これにより動脈瘤は血栓化が得られ,現在術後4年が経過したが,瘤径の縮小が得られ経過観察中である.血管炎に対するステントグラフト内挿術の長期成績はまだ不明であり,今後も長期間の経過観察が必要であるものの,安全にかつ有効に行いうる術式である.
  • 達 和人, 上江洲 徹, 洲鎌 盛一, 山口 明満, 春藤 啓介, 熊野 浩, 加藤 誠也
    2013 年 42 巻 6 号 p. 489-493
    発行日: 2013/11/15
    公開日: 2013/12/04
    ジャーナル フリー
    症例は66歳,女性.高血圧・高脂血症にて前医通院中.2009年11月,心雑音を指摘され当院を紹介され受診した.CT検査にて右室心尖部に最大径26 mmのlow density mass,心臓超音波検査にてhigh echoic massを認めた.辺縁明瞭,内部均一の腫瘤であり脂肪腫が考えられたため,軽度の大動脈弁狭窄兼閉鎖不全症(ASR),II度の僧帽弁閉鎖不全症(MR)と併せて内科的に経過観察していた.2012年3月,労作時胸痛・易疲労感が出現した.ASRの増悪はなく,右心室腫瘤の性状・大きさも不変であったが,MR III度と弁膜症の進行を認め手術施行の方針とした.僧帽弁形成術,大動脈弁置換術,右室腫瘤摘出術を施行した.病理診断はintramyocardial lipomaであった.右心室原発脂肪腫は比較的稀な症例であり,文献的考察を加えて報告する.
  • 浅井 英嗣, 新宮 康栄, 内藤 佑嗣, 若狭 哲, 大岡 智学, 橘 剛, 久保田 卓, 松居 喜郎
    2013 年 42 巻 6 号 p. 494-498
    発行日: 2013/11/15
    公開日: 2013/12/04
    ジャーナル フリー
    心臓悪性腫瘍は一般に予後不良で稀な疾患である.多様な画像検査によりその診断率は上昇しているが確定診断が得られず治療方針の決定に難渋する症例が多い.今回,局所麻酔下・剣状突起下アプローチによる心膜生検と心嚢液細胞診の心臓腫瘍,特に悪性リンパ腫の確定診断における安全性と有用性について検討した.対象は心臓腫瘍の確定診断が得られないため治療が開始できなかった5例.無症状が2例,有症状が3例であった.男性3例,女性2例で平均年齢74歳(60~81歳)であった.局所麻酔下・剣状突起下アプローチ手術は全例で合併症なく短時間で安全に行えた.心嚢液細胞診の診断率は60%(5例中3例)であった.心膜生検は3例に施行したが陽性例はなかった.最終診断は4例で悪性リンパ腫,1例でリンパ腫であった.局所麻酔下・剣状突起下アプローチによる心嚢液細胞診は開胸を要さず安全かつ簡便に行え,診断に難渋する心臓悪性腫瘍,特に悪性リンパ腫において有効な一診断手段であると考えられた.また悪性リンパ腫の診断には心膜生検は必ずしも必要でないことが示唆された.
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