日本心臓血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1883-4108
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ISSN-L : 0285-1474
42 巻, 3 号
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巻頭言
総説
症例報告
  • 瀨田 博允, 盆子原 幸宏, 東舘 雅文
    2013 年 42 巻 3 号 p. 175-178
    発行日: 2013/05/15
    公開日: 2013/06/06
    ジャーナル フリー
    閉塞性肥大型心筋症に対する外科的治療としてseptal myectomyや僧帽弁手術などが行われているが,その術式選択は議論が分かれるところである.今回われわれは高度僧帽弁逆流を伴う閉塞性肥大型心筋症に対し,septal myectomyおよび僧帽弁置換術の同時手術を施行し,良好な術後経過を得たので報告する.症例は75歳,女性.労作時息切れ,収縮期前方運動を伴う高度僧帽弁逆流,DDDペーシングで減少しない左室流出路最大圧較差130 mmHgを認めたため手術加療目的に当科紹介となった.手術は経大動脈弁でアプローチし,隆起した肥厚中隔心筋を15×6×15 mmの直方体状に切除した.また,僧帽弁に器質的病変を認めたため,SJM 25 mm(St. Jude Medical)による僧帽弁置換術を同時施行した.術後最大圧較差は12.5 mmHgに減少した.閉塞性肥大型心筋症の手術において左室流出路圧較差解除を得るためには,術前,術中に心筋切除範囲および僧帽弁病変を慎重に評価したうえで,必要十分な肥厚中隔心筋の切除が重要であり,僧帽弁病変によっては僧帽弁置換術も選択されるべきと考えられた.
  • 大熊 新之介, 三角 隆彦, 伊藤 努, 吉武 明弘, 石田 治, 平野 暁教
    2013 年 42 巻 3 号 p. 179-182
    発行日: 2013/05/15
    公開日: 2013/06/06
    ジャーナル フリー
    症例は62歳男性.パラグライダーから転落し全身強打,鈍的胸部外傷の診断で近医に入院し保存的治療にて退院した.退院後心不全を発症,精査にて大動脈弁閉鎖不全症と診断された.胸部造影CTにてValsalva洞に仮性瘤を認めた.外傷性大動脈弁閉鎖不全症と診断し,心不全コントロールの後に手術を施行した.手術所見では,左冠尖と右冠尖の交連部近傍において内膜に水平方向に亀裂が入り哆開し,一部外膜側に仮性瘤を形成していた.交連が左室側に変位することで大動脈弁逆流が生じており,形成が困難と判断し,Bentall型手術を施行した.外傷性大動脈弁閉鎖不全症は非常に稀であり,文献的考察を含め報告する.
  • 阿部 貴行, 野村 耕司, 木ノ内 勝士, 黄 義浩
    2013 年 42 巻 3 号 p. 183-185
    発行日: 2013/05/15
    公開日: 2013/06/06
    ジャーナル フリー
    症例は1歳女児.生直後にチアノーゼを指摘され,当院搬送となり精査で総動脈幹遺残,心室中隔欠損,卵円孔開存,総動脈幹弁狭窄兼閉鎖不全,右鎖骨下動脈起始異常,Peter's-plus症候群の診断に至る.病型はVan Praagh A1 型,Collet-Edward I型であり,総動脈幹弁は5尖であった.主肺動脈分岐部狭窄のため肺血流低下をきたしており,2カ月時にBTシャントを施行した.1歳時に総動脈幹弁,三尖弁逆流による急性心不全状態となり総動脈幹弁形成術を伴う心内修復手術を施行し良好な経過を得た.5尖弁形態をもつ総動脈幹弁の手術報告は稀であり,考察をふまえ報告する.
  • 原田 英之, 鈴木 政夫
    2013 年 42 巻 3 号 p. 186-189
    発行日: 2013/05/15
    公開日: 2013/06/06
    ジャーナル フリー
    異型大動脈縮窄症は胸部下行大動脈に多くみられるが,拡大を伴う胸腹部大動脈完全閉塞例は稀である.今回われわれは51歳男性で,吐き気および間歇性跛行を主症状として発見された,腹部分枝動脈閉塞を伴った異型大動脈縮窄症の症例に,腹部分枝動脈再建と上行大動脈-腹部大動脈(分岐部直上)バイパス術を施行し,上肢の高血圧の軽減と下肢血流の改善が得られ,さらに腎機能の改善も認められた.炎症反応は陰性であったが,血管造影所見とHLA-B52陽性であることから成因として高安動脈炎が考えられた.術後3年目の現在,経過良好であるが,胸部下行大動脈のさらなる拡大や,腹腔動脈が閉塞する可能性があり,今後ともきめ細かい外来フォローアップが重要と思われる.
  • 早川 真人, 木下 武, 内藤 志歩, 高島 範之, 畔柳 智司, 乃田 浩光, 鈴木 友彰, 浅井 徹
    2013 年 42 巻 3 号 p. 190-192
    発行日: 2013/05/15
    公開日: 2013/06/06
    ジャーナル フリー
    大動脈四尖弁は非常に稀な疾患であり,その発生頻度は剖検例の検討で0.008~0.033%,また大動脈弁置換術症例の検討では0.85~1.46%と報告されている.今回われわれは大動脈四尖弁による大動脈閉鎖不全症(AR)に僧帽弁閉鎖不全症(MR),三尖弁閉鎖不全症(TR)を合併した1症例を経験したので報告する.症例は66歳男性.5年ほど前より呼吸苦を認めるようになり,同時期に心不全にて入院加療となる.いったん軽快するも再度呼吸苦が出現し,心不全の増悪にて再入院した.薬物療法でも改善を認めず,精査にてAR,MR,TRを認めたため手術目的に当科紹介となる.手術は胸骨正中切開にてアプローチした.人工心肺を確立,完全体外循環とした後,まず僧帽弁形成術を行った.次に大動脈に切開を加え大動脈弁を確認すると,右冠尖と左冠尖の間に過剰弁尖のある4尖弁であった.弁尖,弁輪に石灰化も認めた.特に冠動脈入口部異常などは認めなかった.弁尖を切除し,生体弁にて大動脈弁置換術を施行した.最後に三尖弁形成術を行った.術後経過は良好であり20日目に退院となった.
  • 石川 和徳, 浜崎 安純, 阿部 和男, 柳沼 厳弥
    2013 年 42 巻 3 号 p. 193-196
    発行日: 2013/05/15
    公開日: 2013/06/06
    ジャーナル フリー
    症例は79歳,男性.5年間の血液透析歴あり.腹痛を主訴に前医受診,単純CTで腹部大動脈瘤破裂が疑われ当院へ搬送された.造影CTにて腎動脈下腹部大動脈瘤の破裂と診断した.腹部大動脈から両側総腸骨動脈まで著明な石灰化を認め通常の人工血管置換術が困難と判断したこと,形態的に腹部ステントグラフト内挿術(EVAR)が可能と判断したことから緊急EVARを施行した.中枢側からのendoleak(EL)に対し追加デバイスを留置しても消失しなかったことから,ステントグラフトの血管壁への圧着を増強する目的で金属ステントを上腸間膜動脈分岐部直下まで留置した.金属ステント留置によりELは消失したが,上腸間膜動脈の造影が著しく不良となった.ただちに開腹し大伏在静脈を用いて右外腸骨動脈-中結腸動脈バイパス術を併術した.術後CTでELのない良好な留置形態とバイパス血管の開存を確認した.術後2年経過した現在もバイパス血管は開存し,ELや瘤径の拡大は認めていない.
  • 浅見 冬樹, 山口 裕己, 中尾 達也, 大島 祐, 德永 宜之, 中村 裕昌, 糸原 孝明, 門脇 輔, 砂田 将俊, 植野 恭平
    2013 年 42 巻 3 号 p. 197-199
    発行日: 2013/05/15
    公開日: 2013/06/06
    ジャーナル フリー
    症例は68歳男性.胃癌手術,膀胱癌に対してBCG膀胱内注入療法の既往があった.早期胃癌術後の経過観察のため当院消化器外科で撮影したCTにて不整な径64 mmの腹部大動脈仮性瘤を指摘された.活動性の感染瘤と考え,両側腋窩大腿動脈バイパス,瘤切除,大網充填術を行った.術中組織培養よりガフキー陽性,その後の遺伝子解析にてウシ型結核菌Mycobacterium bovisであることが判明した.術後イソニアジド,リファンピシン,エタンブトールの内服を開始した.術後腹壁離開のため再縫合を要した他は経過に問題なく退院された.BCG膀胱内注入療法は表在性膀胱癌の再発予防や尿路上皮内癌に対する有効な治療として確立されているが,稀ながら重篤な有害事象も報告されており,注意が必要であると考えられた.
  • 坂本 滋, 清澤 旬, 坂本 大輔
    2013 年 42 巻 3 号 p. 200-203
    発行日: 2013/05/15
    公開日: 2013/06/06
    ジャーナル フリー
    症例は39歳,男性.仕事中に突然胸背部痛が出現,救急車にて搬送された.来院時,胸背部痛は消失,臨床的には高血圧の所見を認める以外に異常が認められなかった.入院4日後,心エコーで心嚢液貯留とARが軽度あるとの診断で,再度CT検査が施行された.大動脈基部は約3 cmと拡大していたが,緊急手術の依頼はなかった.約3週間後のMD-CTの所見では大動脈基部径は拡大(約5cm),外科に転科された.また,Marfan症候群の身体的特徴は認められなかった.手術は胸骨正中切開で開胸,心膜をあけると約300 mlの血性心嚢液を認めた.心基部は約7 cmに拡大,外見はAAEの形態を呈していた.心停止後,心基部を切開すると,解離は左右冠動脈口近くまで及んでいたが,冠動脈入口部には波及していなかった.無冠尖のバルサルバ洞上部が嚢状に拡大,大動脈弁尖のcoaptationには問題なかった.Woven Dacron 28 mmの人工血管でグラフトを舌状にトリミングしValsalva洞の形態を保ちながら弁輪部に確実に針を掛け,外側を薄手のフェルトで補強し,出血を回避するために縫合部位の人工血管にBioGlue® を少量塗布した.また,ARの程度を評価するためにValsalva洞を形成した人工血管内腔に生理食塩水を満たし,ARが認められないことを確認した.左右冠動脈再建はCarrel patch法で再建した.術後経過は順調で,術後3週間で退院した.Marfan症候群のような結合組織異常を伴わなく,また,自己大動脈弁に変化のない大動脈解離および基部動脈瘤の症例では自己大動脈弁温存手術は積極的に採用できる術式と考えられる.
  • 伊從 敬二, 三森 義崇, 有泉 憲史, 橋本 良一
    2013 年 42 巻 3 号 p. 204-206
    発行日: 2013/05/15
    公開日: 2013/06/06
    ジャーナル フリー
    症例は85歳の男性で,2年前に3 cmの左大腿深動脈瘤が確認されていた.突然,左大腿上部の腫脹と疼痛が出現し,2日後に来院した.CT所見より大腿深動脈瘤の破裂と診断したが,動脈瘤は血栓閉塞していたため経過観察を行った.1カ月後も疼痛を認めたため手術を行った.動脈瘤内の血栓を除去して止血されていることを確認してドレナージ術を行った.破裂性動脈瘤が血栓閉塞するという稀な経過をとった.
  • 島田 亮, 小西 隼人, 本橋 宜和, 福原 慎二, 打田 裕明, 垣田 真里, 神吉 佐智子, 大門 雅広, 小澤 英樹, 勝間田 敬弘
    2013 年 42 巻 3 号 p. 207-210
    発行日: 2013/05/15
    公開日: 2013/06/06
    ジャーナル フリー
    症例は48歳男性.38歳時に大動脈縮窄症に対して左鎖骨下動脈-下行大動脈バイパス術を施行された.この4年後より縮窄部中枢側および末梢側に大動脈瘤を発症し,術後10年目に中枢側は最大径60 mm,末梢側は47 mmとなり,部分弓部および下行大動脈人工血管置換術(左鎖骨下動脈再建)を施行した.胸骨を横断する拡大左開胸法を用い,胸腔経由上行大動脈送血,右心房脱血で深低体温体外循環を確立し,循環停止を併用した.術前上下肢圧較差は40 mmHgであったが,術後の圧較差は10 mmHgに改善した.縮窄部は器質化した血栓により完全に閉塞しており,この結果バイパス単独による中枢側大動脈の除圧が不十分であり,同部の瘤化に関与していると考えられた.縮窄部が高度な場合,非解剖学的バイパス術後の血流変化により,縮窄部は血栓閉塞する可能性があり,これを機とする動脈瘤形成の可能性を示唆する症例であった.成人期大動脈縮窄症には,解剖学的根治術が推奨される.
  • 湯浅 毅, 堀内 和隆, 寺田 貴史, 中田 俊介, 長谷川 雅彦, 保浦 賢三
    2013 年 42 巻 3 号 p. 211-214
    発行日: 2013/05/15
    公開日: 2013/06/06
    ジャーナル フリー
    僧帽弁位の活動期感染性心内膜炎に対して積極的に僧帽弁形成術が行われ,若年者では成長と遠隔成績を考慮して可能な限り弁形成術を行うことが望ましい.症例は15歳の男性で発熱と全身倦怠を主訴に受診した.既往にアトピー性皮膚炎と気管支喘息があった.血液培養検査にてStaphylococcus aureusが同定された.心エコー検査では,前交連部に15×18 mmの疣腫と高度の僧帽弁逆流を認めた.入院後に抗菌薬治療を開始し,10日目に手術を施行した.前交連部の疣腫を超音波手術器で吸引除去し,破壊された弁尖を切除した.Compression sutureで弁尖が欠損した前交連の弁輪部の一部を縫縮し,folding plasty手技を用いて弁尖や弁輪を縫合して人工材料なしで弁形成術を行った.術後経過は良好で,術後2年を経過観察し,心エコー検査で軽微な僧帽弁逆流を呈するのみで,元気に高校生活を送っている.手術手技を工夫することで活動期感染性心内膜炎に対して可及的に弁尖を温存し,人工材料なしで僧帽弁形成術を行うことが可能であった.
  • 赤城 治彦, 入江 寛, 中尾 佳永, 酒井 敬, 阪口 昇二
    2013 年 42 巻 3 号 p. 215-218
    発行日: 2013/05/15
    公開日: 2013/06/06
    ジャーナル フリー
    症例は77歳の男性.健診の腹部超音波検査にて腹部大動脈瘤を指摘され,当院に紹介された.胸腹部MDCT検査を施行したところ,腹部大動脈瘤に加え,左鎖骨下動脈の基始部および遠位弓部大動脈に動脈瘤が存在することが判明した.腹部大動脈瘤は最大短径40 mmであったが,鎖骨下動脈瘤は最大短径30 mmで嚢状の形態であったため,胸部手術を先行して行うこととした.手術は,血管内治療を行う方針とし,腕頭・左総頸動脈共通幹直後から近位下行大動脈内にステントグラフト(TEVAR)を留置した後,左鎖骨下動脈の瘤遠位部をコイルを用いて塞栓した.術後経過は良好で,特に合併症なく術後12日目に退院した.鎖骨下動脈瘤は稀な疾患である.胸腔内に存在する左鎖骨下動脈瘤の手術は,弓部全置換となる場合もあり,末梢血管の手術としては侵襲が大である.今回われわれが施行したTEVARおよびコイル塞栓術による治療は,侵襲が少なく,今後,本疾患に対する外科的治療の有用な選択肢のひとつとなると考える.
  • 吉田 稔, 打田 俊司, 西村 好晴, 戸口 幸治, 本田 賢太朗, 岡村 吉隆
    2013 年 42 巻 3 号 p. 219-222
    発行日: 2013/05/15
    公開日: 2013/06/06
    ジャーナル フリー
    症例は79歳,女性.54歳時にリウマチ性僧帽弁狭窄兼閉鎖不全症・三尖弁閉鎖不全症に対し,僧帽弁置換術(Omnicarbon(OC)弁31 mm)・三尖弁形成術(Kay & Reed法)が施行された.置換弁に起因した合併症も認めず良好に経過していたが術後25年目に,突然の高LDH血症を伴う貧血と軽度胸水貯留が出現した.経胸壁心臓超音波検査にて経過中に認められていなかった僧帽弁周囲逆流を認め,心不全・溶血性貧血の増悪を認めたため再手術となった.手術では弁周囲組織は全体にわたり肥厚し,前交連の近傍に部分的な組織欠損を認めた.術前診断からも同部位からの弁周囲逆流が考えられ,生体弁による僧帽弁再弁置換術(CEP 25 mm)と三尖弁輪形成術(MC3 28 mm)を施行した.経過良好で,術後28日目に軽快退院した.OC弁の長期成績は非常に良好であり,本症例においても合併症なく25年間経過した.今回,僧帽弁置換術術後25年目に弁の機能不全を伴わない突然顕在化した弁周囲逆流による溶血性貧血をきたし,再手術となった稀な1例を経験したので報告する.
  • —その特殊性と術式の工夫—
    安田 章沢, 徳永 滋彦, 町田 大輔, 磯松 幸尚, 益田 宗孝
    2013 年 42 巻 3 号 p. 223-227
    発行日: 2013/05/15
    公開日: 2013/06/06
    ジャーナル フリー
    大動脈弁置換術後2年で弁座の動揺および弁周囲逆流を来し,大動脈基部置換術を要した大動脈炎症候群患者症例を経験したためその特殊性と術式の工夫を含め報告する.症例は65歳男性.大動脈炎症候群に伴う重症大動脈弁閉鎖不全症のため3年前に機械弁による大動脈弁置換術を施行した.術後ステロイドは投与されていなかった.術2年後より弁座の動揺,その1年後に弁周囲逆流を認め再手術の方針となった.バルサルバ洞と上行大動脈は拡大し,大動脈縫合線の仮性瘤を認めた.また,中等度の僧帽弁閉鎖不全も合併していた.手術は機械弁による大動脈基部置換術(J-graft shield® 24 mm+SJM regent® 21 mm),近位大動脈弓部置換術(J-graft shield® 24 mm),僧帽弁輪形成術(IMR ET logix® ring 28 mm)を施行した.術中所見では上行大動脈周囲の癒着が非常に強く,大動脈基部から上行大動脈にかけ著明な壁の肥厚を認めた.機械弁を除去すると弁輪は非常に脆弱であった.自己心膜で弁輪の補強を行い,さらに弁輪下部は短くtrimingした人工血管リングで補強し基部置換術を遂行した.術後ステロイドを投与,現在炎症反応は安定し外来経過観察中である.大動脈炎による炎症が強く弁輪が脆弱な場合は組織の補強と術後の炎症のコントロールが肝要である.
  • 片山 郁雄, 田中 正史, 荻野 秀光, 伊藤 智, 嶋田 直洋, 橋本 和憲, 大城 規和, 白水 御代
    2013 年 42 巻 3 号 p. 228-231
    発行日: 2013/05/15
    公開日: 2013/06/06
    ジャーナル フリー
    上腸間膜動脈以下腹部大動脈閉塞を伴うCrawford I型胸腹部大動脈瘤に対してdebranching TEVARを施行して良好な結果を得た1例を報告する.症例は維持透析中の64歳男性.特発性門脈圧亢進症の既往と腹部慢性大動脈閉塞を伴っており腹腔内,腹壁の静脈の怒張と側副血行路の発達が著明であった.開胸開腹での胸腹部大動脈人工血管置換術は出血を含めリスクが高いと判断し,腹腔動脈,上腸間膜動脈の腹部分枝debranchingを先行させ,それに続くステントグラフト内挿術でのハイブリッド手術を行った.術後はエンドリークや対麻痺など合併症は認めず経過良好であった.開胸開腹のリスクが高い症例には有用なオプションとなりうると考えられた.
  • 今井 健太, 大野 暢久, 夫津木 綾乃, 羽室 護, 吉澤 康祐, 吉川 英治, 藤原 慶一
    2013 年 42 巻 3 号 p. 232-235
    発行日: 2013/05/15
    公開日: 2013/06/06
    ジャーナル フリー
    症例は41歳男性.4日間続く発熱を主訴に受診した.心臓超音波検査で高度び慢性心収縮力低下を認め,急性心筋炎と診断した.入院3日目の心臓超音波検査で,左室内に可動性のある4 cm大の血栓を認めた.左室駆出率(LVEF)が14%であったため経過観察したが,4日目には27%と回復が見られたため5日目に経左室前壁切開で血栓除去を行った.視野は非常に良好で,微小血栓を含め確認し得るすべての血栓を摘除した.術後経過は良好で,手術後6日目LVEFは60%と回復していた.左室内血栓の再発および血栓塞栓症は認めず,術後2年の経過は良好である.われわれの経験を手術時期と術式を中心に文献的考察を含めて報告する.
  • 古野 哲慎, 赤須 晃冶, 税所 宏幸, 平田雄 一郎, 高木 数実, 小須賀 智一, 友枝 博, 有永 康一, 明石 英俊, 田中 啓之
    2013 年 42 巻 3 号 p. 236-240
    発行日: 2013/05/15
    公開日: 2013/06/06
    ジャーナル フリー
    症例は8歳男児で,生後2カ月目にVSDに対してパッチ閉鎖術を施行された.1年後の心臓カテーテル検査にて大動脈弁輪拡大を指摘された.また2歳時に身体所見と併せて,TGFBR2の変異からLoeys-Dietz症候群と診断された.その後も当院小児科にて定期的に経過観察されていたが,今回バルサルバ洞径46.5 mmと拡大を認め,中等度の大動脈弁閉鎖不全も認めたため,手術目的に当科紹介となった.大動脈弁は3尖で器質的変性は認めず,自己弁温存が可能と判断し,自己弁温存大動脈基部置換術を施行した.術後経過に問題を認めず,術後18日目に自宅退院となった.小児期の大動脈基部病変に対する手術で人工弁を用いた場合,将来的な再手術の可能性やワーファリンコントロールの問題もあり,その術式選択は慎重になされなくてはならない.弁の変形のない症例では自己弁温存大動脈基部置換術は有用な術式であると考える.
  • 小野原 大介, 久冨 一輝, 山田 卓史
    2013 年 42 巻 3 号 p. 241-245
    発行日: 2013/05/15
    公開日: 2013/06/06
    ジャーナル フリー
    症例は74歳,男性.1週間前に強い前胸部痛があり近医整形外科を受診するも経過観察となっていた.再度強い胸部痛があり近医内科を受診したところ,心電図異常を認めたため急性心筋梗塞疑いで当院救急搬送となった.外来の心エコーにて左室心尖部に左-右短絡があり,緊急心カテーテル検査では,前下行枝#6の完全閉塞を認めた.急性心筋梗塞後の心室中隔穿孔の診断で当科紹介,同日緊急手術となった.術中所見では心臓は全周性に癒着しており,癒着剥離を行っている際に左室心尖部に心室破裂を認めた.心室中隔穿孔部はInfarct exclusion法に準じて異種心膜パッチを大きくあて,フェルトをパッチ閉鎖部と同じような形にトリミングし心室中隔とパッチ内に内挿した.左室破裂部は左室壊死変性部を縫縮するようにフェルト帯でサンドイッチし,心室中隔にあてたパッチとフェルトと合わせて縫合閉鎖した.最後に左内胸動脈を前下行枝#7に吻合し終刀した.術後経過はおおむね良好で,大きな合併症を認めることなく術後36日目で自宅退院となった.
  • 秋本 剛秀, 北野 満, 寺西 宏王
    2013 年 42 巻 3 号 p. 246-248
    発行日: 2013/05/15
    公開日: 2013/06/06
    ジャーナル フリー
    脾動脈瘤は腹部内臓動脈瘤のなかでも頻度の高い動脈瘤で,破裂まで無症状で経過し,破裂した場合の病態がさまざまなため診断・治療も多岐にわたる.今回われわれは,長期経過観察中であった小径脾動脈瘤に対し,破裂時期と破裂形態が不明のまま,貧血の精査をしてようやく診断・治療が可能であった稀な破裂例を経験したので報告する.74歳男性.2006年に当科で腹部大動脈瘤に対し人工血管置換術を受けた.このとき,最大径16 mmの脾動脈瘤が指摘され,年1回のCTにより経過観察していた.2010年12月まで脾動脈瘤径に著変はなかった.2011年5月に極度の貧血と便潜血を呈し,消化器科にて造影CT検査や上部,下部消化管内視鏡,カプセル内視鏡検査を施行したが出血源が不明であった.同年8月脾動脈瘤破裂による膵管内出血を想定し,同年9月カテーテル塞栓術により,貧血は改善した.今後,画像診断の普及により小径内臓動脈瘤が指摘されることが多くなると予想され,心臓血管外科への診察依頼が増加すると思われる.成長の経過,近接臓器との密着具合などから管腔内出血の可能性も念頭に置き,経過観察することが必要と考えられた.手術の場合,周辺臓器の切除や再建が必要となることがあり,他科との連携を図り,治療介入時期を逃さないよう努めることが肝要と思われた.
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