日本心臓血管外科学会雑誌
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45 巻, 2 号
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巻頭言
原著
  • 黒田 悠規, 南方 謙二, 山崎 和裕, 阪口 仁寿, 平尾 慎吾, 瀧本 真也, 坂本 和久, 中田 朋宏, 池田 義, 坂田 隆造
    2016 年 45 巻 2 号 p. 67-72
    発行日: 2016/03/15
    公開日: 2016/04/09
    ジャーナル フリー
    [目的]僧帽弁手術後に生じる溶血性貧血症例の発症原因,発症時期および術後経過について検討した.[対象と方法]2009年から2014年に施行した僧帽弁手術後に生じた溶血性貧血に対する再手術症例11例を対象とした.平均年齢は72.2±6.8歳,男性5例であった.[結果]術前の僧帽弁逆流は8例が中程度以下で,平均LDH 2,454±415 IU/lであった.溶血の原因として8例は僧帽弁置換術(MVR)後の弁輪周囲逆流(PVL),2例は僧帽弁形成術(MVP)後の遺残逆流,1例は生体弁MVR後の構造的劣化であった.MVR後の溶血性貧血に対しては全例で再MVRを施行した.MVP後の2例のうち,1例はMVR,1例は再MVPを施行した.MVR後の弁輪周囲逆流の原因としては8例全例で縫合糸による弁尖・弁輪部の組織切れを認め,MVP後の溶血性貧血は遺残逆流のジェットが内膜で覆われていない人工弁輪に当たることによって生じたと考えられた.前回手術から溶血までの期間はMVR後のPVL症例で14.1±9.4年,MVR後の生体弁の構造的劣化例で8年,MVP後の2例で2.0±1.9年であった.11例中10例で溶血性貧血の治癒を認めた.遠隔死亡は3例あり,うち1例が心臓関連死(肺炎による心不全増悪)であった.また,PVLによる溶血性貧血の再発を1例に認め,再々手術を要した.[結論]僧帽弁手術後の溶血性貧血は稀であるが,逆流の程度が軽度であっても重篤な溶血性貧血をきたすことがあり,術後遠隔期においても慎重な経過観察が必要である.
症例報告
[先天性疾患]
[成人心臓]
  • 吉野 邦彦, 阿部 恒平, 中西 祐介, 伊藤 丈二, 三隅 寛恭
    2016 年 45 巻 2 号 p. 76-79
    発行日: 2016/03/15
    公開日: 2016/04/09
    ジャーナル フリー
    経カテーテル的バルーン大動脈弁形成術(BAV)は,手術リスクの高い高度大動脈弁狭窄症(AS)患者に対し行われる治療である.処置時にはRapid pacingにより自己心拍出を減少させバルーン拡張を行うが,その際心筋虚血や致死的不整脈が起こる可能性がある.今回,ASに伴う重症心不全患者に対し経皮的心肺補助(PCPS)使用下でBAVを施行した.PCPS回路に貯血漕を設け,脱血を行うことで自己心拍出を減少させ,安全に施行し得た.今後周術期の循環不全リスクが高い患者においてBAV施行時にPCPSを使用することが有効な選択肢となり得る.
  • —本邦破裂報告23例の検討を含めて—
    石井 廣人, 中村 都英, 中村 栄作, 遠藤 穣治, 西村 征憲, 白崎 幸枝, 森 晃佑
    2016 年 45 巻 2 号 p. 80-83
    発行日: 2016/03/15
    公開日: 2016/04/09
    ジャーナル フリー
    症例は89歳,女性.倦怠感,呼吸苦を主訴に近医に救急搬送された.搬送時はショック状態でCTにて約5 cmの冠動脈瘤と心嚢液貯留を認め,冠動脈瘤破裂の診断で当院へ搬送となり緊急手術を行った.手術は人工心肺使用下に心停止し,冠動脈瘤を開放して右冠動脈からの流入口および肺動脈への流出口を確認してそれぞれを結紮処理した.冠動脈肺動脈瘻に併発した冠動脈瘤の自然破裂は自験例を含めて本邦では23例の報告しかない稀な疾患であり,文献的考察を含めて報告する.
[大血管]
  • 今井 伸一, 澤田 健太郎, 中村 英司, 吉田 尚平, 福田 勇人, 飛永 覚, 鬼塚 誠二, 廣松 伸一, 明石 英俊, 田中 啓之
    2016 年 45 巻 2 号 p. 84-88
    発行日: 2016/03/15
    公開日: 2016/04/09
    ジャーナル フリー
    右胃大網動脈(RGEA)を用いたCABG手術歴のある感染性腹部大動脈瘤に対し,解剖学的人工血管置換および大網充填術を行うことができ,良好な結果が得られた1例を報告する.症例は60歳,男性.慢性腎不全で維持透析中に発熱,腹痛,全身倦怠感を生じ当院に入院した.造影CTで感染性腹部大動脈瘤と診断し,感染の鎮静化を図る目的で抗生剤の静脈投与を開始した.手術は,術前に大網が残存しているか不明であったため,非解剖学的血行再建である左腋窩-両側大腿動脈バイパス術を先行した.開腹後,in situ人工血管を被覆するための大網が確認され,脆弱な大動脈壁を切除できたため,リファンピシン浸漬人工血管による腹部大動脈置換術と大網充填術を施行した.術中検体からはEnterobacter aerogenesが検出された.術後は,抗生剤を25日間静脈内投与した.内服投与に移行した後はCRPが正常化するまで継続し,以後1年間,感染の再発は認められなかった.
  • 山﨑 琢磨, 高 英成, 加久 雄史, 藤田 周平, 片桐 絢子
    2016 年 45 巻 2 号 p. 89-93
    発行日: 2016/03/15
    公開日: 2016/04/09
    ジャーナル フリー
    症例は64歳女性.仕事中に突然の胸背部痛を自覚し救急要請.造影CT施行したところ左冠状動脈主幹部(LMT)へ及ぶStanford A型急性大動脈解離を認めた.CT直後からショックバイタルとなり,心電図にて心室頻拍および心室細動を繰り返したため,経皮的補助人工心肺装置(PCPS)を挿入し緊急冠動脈造影(CAG)を施行した.CAGおよび血管内超音波(IVUS)所見から解離によるLMTの灌流障害と診断した.LMTに対して冠状動脈ステント留置術(PCI)を行い,可及的速やかに再灌流を得た後に緊急手術を行った.エントリーはLMT上縁から約5 mmの位置まで及んでおり,左冠尖および無冠尖の逸脱による中等度大動脈弁閉鎖不全を認めたが,左右冠動脈を温存する形で中枢側断端を形成していた.交連部を吊り上げて上行大動脈人工血管置換術を行った.逆行性脳灌流下に手術を行い,SVG-LAD 1本バイパスを追加した.術後経過は良好で術後24日で退院となった.本症例ではLMT解離に対して,PCPSを挿入後PCIを行い,LMTを早期に再灌流することで心筋虚血を最低限にできたため救命可能であった.
  • 元春 洋輔, 新本 春夫, 乗松 東吾, 田端 実, 福井 寿啓, 高梨 秀一郎
    2016 年 45 巻 2 号 p. 94-99
    発行日: 2016/03/15
    公開日: 2016/04/09
    ジャーナル フリー
    症例は80歳男性,近医にて高血圧,糖尿病で加療中の患者.胸部造影CTで遠位弓部から下行大動脈にかけて最大短径54 mmの紡錘状瘤を認めたため手術方針となった.冠動脈造影検査にてLAD,Diagonal branchに病変を認めたため,まずは全弓部置換術(Triplex 24 mm)および冠動脈バイパス術(LITA-LAD,SVG-D)を施行し,約2カ月後に胸部ステントグラフト内挿術(TEVAR)を施行した.中枢側はelephant trunkにZENITH® TX2®(ZTEG-2P-30-200-JP)をランディングさせ,末梢側にZENITH® TX2®(ZTEG-2P-34-152-JP)を留置した.TEVAR 10カ月後に瘤径の拡大(最大短径90 mm)と貧血の進行(Hb 7.7)を認め,CTおよび大動脈造影検査でtype II endoleakが疑われたため左開胸による止血術を施行した.大動脈は肺にsealingされていたが破裂所見を認め,内腔には気管支動脈や肋間動脈など計5カ所からの出血があり,縫合止血した.その後,瘤径の拡大はなく経過したがTEVAR約28カ月後に持続する高熱があり,胸部CTでTEVARのグラフト感染の所見が描出された.上部消化管内視鏡で食道穿孔を認めたため,右側開胸で食道亜全摘と胃管による食道再建術を施行し,約1カ月後に下行大動脈置換術を施行した.循環停止下にopen proximalとし,可能な限りステントグラフトを中枢側まで剥離して切除後に,elephant trunkと新たにJ graft 24 mmを吻合した.術後脳梗塞による右上肢の麻痺を認めたものの経過は良好でリハビリ加療中で人工血管置換術後第69病日にリハビリ目的で転院となった.
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