症例は80歳男性,近医にて高血圧,糖尿病で加療中の患者.胸部造影CTで遠位弓部から下行大動脈にかけて最大短径54 mmの紡錘状瘤を認めたため手術方針となった.冠動脈造影検査にてLAD,Diagonal branchに病変を認めたため,まずは全弓部置換術(Triplex 24 mm)および冠動脈バイパス術(LITA-LAD,SVG-D)を施行し,約2カ月後に胸部ステントグラフト内挿術(TEVAR)を施行した.中枢側はelephant trunkにZENITH
® TX2
®(ZTEG-2P-30-200-JP)をランディングさせ,末梢側にZENITH
® TX2
®(ZTEG-2P-34-152-JP)を留置した.TEVAR 10カ月後に瘤径の拡大(最大短径90 mm)と貧血の進行(Hb 7.7)を認め,CTおよび大動脈造影検査でtype II endoleakが疑われたため左開胸による止血術を施行した.大動脈は肺にsealingされていたが破裂所見を認め,内腔には気管支動脈や肋間動脈など計5カ所からの出血があり,縫合止血した.その後,瘤径の拡大はなく経過したがTEVAR約28カ月後に持続する高熱があり,胸部CTでTEVARのグラフト感染の所見が描出された.上部消化管内視鏡で食道穿孔を認めたため,右側開胸で食道亜全摘と胃管による食道再建術を施行し,約1カ月後に下行大動脈置換術を施行した.循環停止下にopen proximalとし,可能な限りステントグラフトを中枢側まで剥離して切除後に,elephant trunkと新たにJ graft 24 mmを吻合した.術後脳梗塞による右上肢の麻痺を認めたものの経過は良好でリハビリ加療中で人工血管置換術後第69病日にリハビリ目的で転院となった.
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